説明

電池用ラミネート外装材及びラミネート電池

【課題】電池用ラミネート外装材として、別途に粘着テープやホットメルト接着剤を使用することなく、電池本体への接着を容易に確実に行うことができ、端部補強用のプラスチック部品に対しても強固に接着できるものを提供する。
【解決手段】ベースフィルム1の一面側に金属箔2が貼着され、ベースフィルム1の他面側に、該ベースフィルム1の幅方向の両端縁部にベースフィルムが露出した露出縁部1a、1aを残した態様で、電池本体の表面フィルムに対して熱接着可能な軟化点160℃以下の熱接着性樹脂からなる塗膜層4が形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ等のモバイル電気機器の電源に使用される電池の本体を包むラミネート外装材と、このラミネート外装材を用いたラミネート電池に関する。
【0002】
なお、この明細書及び特許請求の範囲において、「アルミ」という語は、純アルミニウムとアルミニウム合金を含むものとする。
【背景技術】
【0003】
近年、モバイル電気機器の小型化、軽量化に伴い、これらに搭載されるリチウムイオン電池やリチウムポリマー電池についても、その外装材として旧来の金属缶に代えて、厚さ20〜100μm程度のアルミ箔の両面にプラスチックフィルムを張り合わせたラミネート外装材を使用することで軽量化が図られている。
【0004】
ところが、このラミネート外装材は、プレス成形による型付けができるように、焼鈍で軟化させた軟質アルミ箔を使用するので、材料強度が弱くなり、外部からの衝撃で破れたり、ピンホールが発生し易いという欠点がある。このため、従来のラミネート外装材を使用したラミネート電池では、外装の強度を補う目的でプラスチックの射出成形容器に装填されることが多いが(特許文献1参照)、その結果として電池単位の重量が増すと共に部品点数も多くなってしまう。
【0005】
そこで最近では、電池本体に、焼鈍していない硬質アルミ箔、もしくはその片面又は両面にプラスチックフィルムを貼着したものを巻き付けると共に、両端部にプラスチック部品を嵌め込んで補強する方法が登場している。
【特許文献1】特開平11−185728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、硬質アルミ箔は材料強度が強過ぎて曲げ加工や型付けを行った際に元の状態に戻り易いため、電池本体に巻き付けた上から粘着テープで止めたり、電池本体とアルミ箔との間に、両面粘着テープを介在させて圧着したり、ホットメルト接着剤の融液やフィルムを介在させて熱接着する必要があった。従って、前記方法では、電池外装の構成要素が多くなる上、粘着テープやホットメルト接着剤の供給・接着機構の組み込みにより、電池製造ラインが複雑化すると共に設備コストも増大するという問題があった。
【0007】
この発明は、上述の事情に鑑みて、電池用ラミネート外装材として、別途に粘着テープやホットメルト接着剤を使用することなく、電池本体への接着を容易に且つ確実に行うことができ、端部補強用のプラスチック部品を用いる場合でも当該部品に対して強固に接着できるものを提供し、もってラミネート電池の部品数を少なくすると共に、電池製造ラインの簡素化を可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0009】
[1]ベースフィルムの一面側に金属箔が貼着されると共に、前記ベースフィルムの他面側に、該ベースフィルムの幅方向の両端縁部にベースフィルムが露出した露出縁部を残した態様で、電池本体の表面フィルムに対して熱接着可能な軟化点160℃以下の熱接着性樹脂からなる塗膜層が形成されていることを特徴とする電池用ラミネート外装材。
【0010】
[2]前記塗膜層の熱接着性樹脂がエチレン−酢酸ビニル共重合体である前項1記載の電池用ラミネート外装材。
【0011】
[3]前記ベースフィルムがラミネート電池の端部補強用プラスチック部品に対して熱接着可能な熱可塑性樹脂からなる前項1または2に記載の電池用ラミネート外装材。
【0012】
[4]前記金属箔のベースフィルム貼着側とは反対側の表面に、厚さ8〜40μmの延伸フィルムが貼着されてなる前項1〜3のいずれかに記載の電池用ラミネート外装材。
【0013】
[5]前記金属箔のベースフィルム貼着側とは反対側の表面に、厚さ0.5〜5μmの熱硬化樹脂層が形成されてなる前項1〜3のいずれかに記載の電池用ラミネート外装材。
【0014】
[6]前記金属箔が硬質アルミ箔である請求項1〜5のいずれか1項に記載の電池用ラミネート外装材。
【0015】
[7]電池本体に前項1〜6のいずれかに記載の電池用ラミネート外装材が前記塗膜層側で接して巻付けられて熱接着されると共に、電池本体の両側にはみ出た該ラミネート外装材の余剰部分で構成される各筒状部に端部補強用プラスチック部品の少なくとも一部が挿嵌されて該端部補強用プラスチック部品が前記筒状部内面のベースフィルム露出縁部に熱接着されてなることを特徴とするラミネート電池。
【0016】
なお、硬質アルミ箔とは、加工(圧延)を施して加工硬化させた状態のアルミ箔を意味し、例えば、加工硬化上がりの箔、加工硬化後に適度な熱処理を施した箔等が挙げられ、一般的にJIS規格(JIS H0001)で用いられている質別記号HX1、HX2、HX3、HX4、HX5、HX6、HX7、HX8、HX9のもの(ただし、X:1〜3)が挙げられる。これに対し、軟質アルミ箔は、上記の硬質アルミ箔以外のアルミ箔を意味し、例えば、完全焼き鈍しにより軟化させた状態の箔等が挙げられ、一般的にJIS規格(JIS H0001)でO材と称されているものが挙げられる。
【発明の効果】
【0017】
[1]の発明に係る電池用ラミネート外装材は、それ自体が電池本体の表面フィルムに対して熱接着可能な塗膜層を備えるため、電池本体への装着に際し、別途に粘着テープやホットメルト接着剤を使用することなく、該電池本体に対して直接に容易に熱接着でき、それだけラミネート電池の部品数を少なくできると共に、電池製造ラインの簡素化を可能にする。しかして、その塗膜層は軟化点160℃以下の熱接着性樹脂からなるため、ラミネート外装材を該塗膜層側で接するように電池本体に巻き付けた状態で、160℃以下の低温加熱によって接着固定でき、もって電池本体内のセパレータの融解や電解液の分解等の熱劣化を回避でき、高い電池性能を維持できる。また、端部補強用プラスチック部品を使用する際は、外装材のベースフィルムの露出縁部と該プラスチック部品とを熱圧着することにより、外装材とプラスチック部品とを強接着することができる。
【0018】
[2]の発明によれば、上記塗膜層の熱接着性樹脂がエチレン−酢酸ビニル共重合体であるから、電池本体の表面フィルムに対して低温圧着でも優れた熱接着性を発揮する。
【0019】
[3]の発明によれば、電池用ラミネート外装材の前記塗膜層が特定の厚みを有することから、電池本体との熱接着を低温で短時間で行うことができる。
【0020】
[4]の発明によれば、電池用ラミネート外装材のベースフィルムがラミネート電池の端部補強用プラスチック部品に対して熱接着可能であり、外装材のベースフィルムの露出縁部とプラスチック部品とを強接着できる。
【0021】
[5]の発明によれば、電池用ラミネート外装材の金属箔の外面側表面に貼着された特定厚さの延伸フィルムが保護層として機能するから、ラミネート電池の外装に耐摩耗性、耐衝撃性、耐薬品性が付与される。
【0022】
[6]の発明によれば、電池用ラミネート外装材の金属箔の外面側表面に形成された特定厚さの熱硬化樹脂層が保護層として機能するから、ラミネート電池の外装の耐摩耗性、耐衝撃性、耐薬品性が向上する。
【0023】
[7]の発明によれば、金属箔として硬質アルミ箔を用いているから、より軽量化することができる。
【0024】
[8]の発明に係るラミネート電池は、上記の電池用ラミネート外装材が電池本体に対して確実に接着固定されると共に、電池の両端部において端部補強用プラスチック部品がラミネート外装材のベースフィルムに強固に接着されたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1(A)〜(C)は、この発明を適用するラミネート電池の外装形成を工程順に示している。このラミネート電池は、図1(A)の如く直方体形状の電池本体10をそれよりも幅広の矩形状のラミネート外装材11の熱接着性樹脂塗膜層4の上に載せ、図1(B)の如く該ラミネート外装材11で電池本体10を包み込んで電池本体10の表面フィルムにラミネート外装材11の塗膜層4を熱接着すると共に、ラミネート外装材11の両側余剰部にて構成される両端の長方形の各筒状部11a内に、図1(C)の如く直方体形状の端部補強用プラスチック部品12の一部を挿嵌し、該プラスチック部品12と、筒状部11aの内面のベースフィルムの露出縁部1a(ベースフィルム1が露出した縁部、即ち熱接着性樹脂が未塗布の縁部)とを熱接着によって接着固定したものである。図中の10aは電池の端子を示す。
【0026】
なお、電池本体10は、リチウムイオン電池やリチウムポリマー電池であり、その表面がポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリアミド(ON)フィルム、ポリプロピレン(OPP)フィルム等の延伸フィルムにて構成されている。
【0027】
そして、ラミネート外装材11は、図2に示すように、ベースフィルム1の一面側に金属箔2が接着剤層3を介して貼着されると共に、該ベースフィルム1の他面側に、該ベースフィルム1の幅方向の両端縁部にベースフィルムが露出した露出縁部1a、1aを残した態様で、熱接着性樹脂の塗膜層4が形成されたものを基本構成としている。
【0028】
ここで、ベースフィルム1としては、ポリプロピレン(CPP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)フィルム、12ナイロンの如き接着性ポリアミド(ON)フィルム等の熱可塑性樹脂フィルムが使用されるが、端部補強用プラスチック部品12に対して小さい接着面積でも強固に熱接着できるように、この端部補強用プラスチック部品12と同系の熱可塑性樹脂からなるフィルムが好ましく,特に加工性及び絶縁性に優れたオレフィン系樹脂フィルムが好適である。
【0029】
しかして、このベースフィルム1の厚みは、電池本体10の凹凸のある表面に対しても圧力緩衝作用で確実に接着できるように20〜100μm程度にするのが好ましい。薄過ぎては圧力緩衝作用が不充分であるために凹凸のある電池表面には接着不完全になり、厚過ぎてもフィルムが硬くなって接着不完全になるので、好ましくない。
【0030】
金属箔2としては、特に限定されないが、例えばステンレス箔、鉄箔、銅箔、ニッケル箔、硬質アルミ箔等が挙げられる。これらの中でも硬質アルミ箔(硬質アルミニウム箔)が好適である。
【0031】
金属箔2としては、厚さが40〜200μm程度のものが好適であり、薄過ぎては材料強度に劣る一方、厚過ぎては加工が著しく困難になる。また、接着剤層3の接着成分としては、ポリエステル−ウレタン系やポリエーテル−ウレタン系のものが好ましく使用される。
【0032】
塗膜層4の熱接着性樹脂としては、電池本体10の表面フィルムに対して熱接着可能な軟化点160℃以下のものであればよいが、特に延伸フィルムに対する接着性に優れるエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと略称する)が好適である。しかして、この熱接着性樹脂の軟化点が160℃より高くなると、電池本体10に対する熱接着の温度が高くなるため、電池本体10内のセパレータの融解や電解液の分解等の熱劣化を生じる懸念がある。
【0033】
この塗膜層4に用いるEVAとしては、酢酸ビニル含量が30〜95質量%、MI(メルトインデックス)が3以上のものが好ましい。これは、酢酸ビニル含量が30質量%未満ではアルコール等の溶媒に溶けにくく、ベースフィルム1への塗布が困難になることによる。なお、塗工性を向上するために、EVAを一部ケン化変性し、アセトオキシ基、カルボキシル基、水酸基等を含むグラフトポリマーとして、アルコール等の溶媒に対する溶解性を高めてもよい。また、延伸フィルムとの接着性をより向上させるために、エチレン−酢酸ビニル共重合体に少量のエチレン−アクリレート共重合体(EEA)を添加することもできる。
【0034】
更に、この塗膜層4には、ベースフィルム1との密着性とホットタック性を向上させる粘着付与成分、ならびにラミネート外装材11の巻回状態でのブロッキングを防止するためのブロッキング防止剤を、それぞれ樹脂に対して1〜20質量%程度の範囲で含有させることが推奨される。
【0035】
上記の粘着付与成分としては、テルペンフェノール樹脂、ロジン及びロジンエステル、石油樹脂等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよいが、特に軟化点60〜160℃で平均分子量3000以下のものが好ましい。これは、軟化点が60℃未満ではブロッキングを生じ易く、160℃より高くなると低温下での熱接着性が発現せず、また平均分子量が3000より大きくなると溶解性ならびにエチレン−酢酸ビニル共重合体との相溶性の悪化を招くことによる。
【0036】
上記のブロッキング防止材としては、SiO2、CaCO3、BaCO3、TiO2、タルク等の無機質粒子が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよいが、特に平均粒子径が1〜10μmで比重3以下のものが推奨される。すなわち、平均粒子径が1μm未満になると、ブロッキング防止材の粒子同士が凝集密着して樹脂中で分散しにくくなり、逆に10μmを越える粒子になると、塗膜層4を形成するためのグラビアコート時にグラビア版の目詰まりが発生するので、好ましくない。また、比重が3を越えると、塗布後の乾燥で熱が加わった時に樹脂中で沈降し易く、ブロッキング防止効果を発現しない懸念があるので、好ましくない。
【0037】
ベースフィルム1上に塗膜層4を形成するには、前記のエチレン−酢酸ビニル共重合体の如き樹脂成分と要すれば粘着付与成分及びブロッキング防止材をアルコール中に添加混合して乳化し、これをグラビアコート方式等でベースフィルム1上に塗布して乾燥すればよい。この時、塗膜層4を形成する樹脂成分に有機系顔料、無機系顔料、色素等の着色剤を樹脂成分100質量部に対し0.1〜5質量部の範囲で添加しても良い。例えばグラビアコート方式等で図6に示すように外装材原反に塗膜層4を塗布形成する際に、隣り合う露出縁部1a、1aの間に細線状の切断線表示用塗膜部20も同時に形成するものとすれば、この切断線表示用塗膜部20が着色されていることで、切断の際に切断装置(幅入れ装置)の位置決め用センサーが該切断線表示用塗膜部20を認識することによって切断位置を誤りなく確実に位置決めすることができる。
【0038】
前記有機系顔料としては、特に限定されるものではないが、例えばレーキレッド、ナフトール類、ハンザイエロー、ジスアゾイエロー、ベンズイミダゾロン等のアゾ系顔料、キノフタロン、イソインドリン、ピロロピロール、ジオキサジン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の多環式系顔料、レーキレッドC、ウォチュングレッド等のレーキ顔料などが挙げられる。また、前記無機系顔料としては、特に限定されるものではないが、例えばカーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、酸化鉄、酸化亜鉛等が挙げられる。また、前記色素としては、特に限定されるものではないが、例えばトリナトリウム塩(黄色4号)等の黄色色素類、ジナトリウム塩(赤色3号)等の赤色色素類、ジナトリウム塩(青色1号)等の青色色素類などが挙げられる。
【0039】
前記塗膜層4の厚さは、0.5〜50μmに設定するのが好ましい。0.5μm未満にすることは技術的に難しく、一方50μmを越えるとラミネート外装材11として使用するとき型付が起こりやすくなるので好ましくない。
【0040】
このような構成のラミネート外装材11を用いて電池本体10の外装を行うには、まず該ラミネート外装材11を塗膜層4側が上向きになるように配置し、この塗膜層4の上に図1(A)の如く電池本体10を載せ、図1(B)の如く該ラミネート外装材11を電池本体10に巻き付け、その外側から160℃以下の熱板を当接して熱接着する。これにより、溶融した塗膜層4の熱接着性樹脂を介して電池本体10の表面フィルムとラミネート外装材11とが熱接着されて一体化するが、この熱接着の温度が低いため、電池本体10内のセパレータの融解や電解液の分解等の熱劣化が回避され、もって高い電池性能を維持できる。
【0041】
そして、この熱圧着により、ラミネート外装材11の幅方向両側の余剰部によって電池本体10の両端にそれぞれ筒状部11aが構成され、該筒状部11aの内面には露出縁部1a(ベースフィルム1が露出した縁部、即ち熱接着性樹脂が未塗布の縁部)が表出している。次いで、各筒状部11a内に図1(C)の如く端部補強用プラスチック部品12の一部を挿嵌し、その外側から180〜220℃の熱板を圧接して、該プラスチック部品12とラミネート外装材11のベースフィルムの露出縁部1aとを熱圧着する。このとき、ラミネート外装材11のベースフィルム1と該プラスチック部品12とが直接に強接着して一体化することになるが、この高温での熱圧着は電池本体10から外れた位置でなされるから、該電池本体10に熱劣化を生じる懸念はない。
【0042】
上述した実施形態のラミネート外装材11ではラミネート電池の外周面に金属箔2が露出することになるが、この発明のラミネート外装材においては、金属箔2の表面に耐摩耗性、耐衝撃性、耐薬品性等を付与するために、予め保護層を設けておいてもよい。このような保護層を設けるには、例えば図3に示すように、金属箔2のベースフィルム1貼着側とは反対側の表面に接着剤層6を介して延伸フィルム5を貼着したり、図4に示すように、同表面に熱硬化樹脂層7を形成すればよい。
【0043】
しかして、延伸フィルム5としては、PET、PEN、ON、OPP等よりなる安価で汎用性のある一般的な樹脂フィルムを使用すればよい。その厚さは8〜40μmの範囲が好ましい。8μm未満では汎用性がなく、40μmよりも厚くなると高価で加工性も悪くなるので、好ましくない。また、更に耐摩耗性を向上させるために、延伸フィルム5の表面にシリカやアルミナを真空蒸着したもの、同表面にシロキサン系樹脂をコーティングしたもの、該延伸フィルム5の表面を粗化処理したもの等も使用可能である。なお、接着剤層6としては、ベースフィルム1と金属箔2とを貼着する接着剤層3と同様のものを使用できる。
【0044】
一方、熱硬化樹脂層7としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、硝化綿系樹脂等の熱硬化で強固な皮膜を形成し得る樹脂成分を用いればよい。そして、更に耐摩耗性を向上させるために、これらの樹脂中に5質量%以下のシロキサン系樹脂を添加してもよい。また、熱硬化樹脂層7の厚さは、0.5〜5μmの範囲が好ましい。薄過ぎては保護層としての効果が期待できず、逆に厚過ぎても却って樹脂層が脆くなる上に加工単価も増大するので、好ましくない。
【0045】
なお、上記実施形態では、熱接着性樹脂の塗膜層4は、ベースフィルム1の両端縁部の露出縁部1a、1aを除いた残部の全面に形成されているが(図2〜4参照)、特にこのような構成に限定されるものではなく、例えば、図5に示すように、塗膜層4が、ベースフィルム1における露出縁部1a、1aを除いた残部に部分的に形成された構成を採用することもできる。
【実施例】
【0046】
以下、この発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。なお、以下において、部及び%とあるのは、質量部及び質量%を意味する。
【0047】
<実施例1>
JIS A3004−H18材からなる厚さ100μmの硬質アルミ箔の一面側に、延伸フィルムとして厚さ12μmのPETフィルムをポリエステル−ウレタン系接着剤を介して貼り合わせると共に、該アルミ箔の他面側にベースフィルムとして同じ接着剤を介して厚さ40μmのCPPフィルム(キャスティングポリプロピレンフィルム)を貼り合わせてラミネートフィルムを作製した。一方、酢酸ビニル含量40%でMIが15のEVA樹脂30部、ケン化度20%にした同EVA30部、軟化点90℃で平均分子量1500のテルペン樹脂10部、粒径2〜5μmで比重2.5〜2.7のSiO2の10部、酸化チタン0.5部を混合した樹脂混合物に、イソプロピルアルコールと純水とを容量比1:1で混合した溶媒を加え、樹脂固形分が40%となる塗液を調整した。そして、この塗液を前記ラミネートフィルムのCPPフィルム上に乾燥後の厚みが3μmとなるように一定間隔で(図6参照)塗布したのち、200℃で20秒間加熱乾燥して熱接着性樹脂の塗膜層4を形成し、次いで切断装置により切断線表示用塗膜部20の位置で切断することにより、電池用ラミネート外装材11を作製した。この電池用ラミネート外装材11では、ベースフィルム1の幅方向の両端縁部にベースフィルムが露出した露出縁部1a、1aを残した態様で、塗膜層4が形成されている(図3参照)。
【0048】
<実施例2>
熱接着性樹脂の塗膜層の厚さを10μmに設定した以外は、実施例1と同様にして電池用ラミネート外装材を作製した。
【0049】
<実施例3>
ベースフィルムとしてCPPフィルムに代えて厚さ50μmのPCフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして電池用ラミネート外装材を作製した。
【0050】
<実施例4>
延伸フィルムのPETフィルムの貼着に代えて、アルミ箔の前記一面側にエポキシ樹脂からなる熱硬化性樹脂の塗布、加熱により厚さ2μmの熱硬化樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様にして電池用ラミネート外装材(図4参照)を作製した。
【0051】
<比較例1>
ベースフィルムのCPPフィルム上の全面に厚さ15μmの熱接着性樹脂の塗膜層を形成した(露出縁部を設けない構成とした)以外は、実施例1と同様にして電池用ラミネート外装材を作製した。
【0052】
[性能評価試験1]
実施例1〜4及び比較例1の電池用ラミネート外装材を用い、既述の図1(A)〜(C)で示す方法に準じ、表面がポリアミド(ON)フィルムからなるリチウムイオン電池の電池本体に対する熱接着を熱板によって160℃×0.2MPa×2秒の条件で行うと共に、PP製の端部補強用プラスチック部品に対する熱圧着を熱板によって180℃×0.4MPa×3秒の条件で行ってラミネート電池の外装を施した。そして、ラミネート外装材の電池本体及び端部補強用プラスチック部品に対する接着強度を測定した。その結果を表1に示す。なお、端部補強用プラスチック部品は表中ではプラ部品と略記した。
【0053】
[性能評価試験2]
実施例1〜4及び比較例1の電池用ラミネート外装材を性能評価試験1と同様の電池本体に巻き付け、粘着テープで接着して固定したのち、粘着テープ面が上になるように縦500mm、横500mmのポリプロピレン製ケースに入れ、JIS Z0232に基づいた装置で振動範囲5〜100Hzの不規則振動を6時間与えたのち、ラミネート外装材の外観と、電解液漏れの有無を観察した。その結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
上表の結果から明らかなように、この発明に係る電池用ラミネート外装材(実施例1〜4)は、電池本体の樹脂フィルム表面に対して容易に且つ確実に熱接着できる上、接着面積が小さいにも拘らず、端部補強用プラスチック部品に対しても強固に熱接着できる。更に、このラミネート外装材は、外装後のラミネート電池の振動試験でも端部補強用プラスチック部品を脱落させることがなく、強度にも優れるから、最終形態のラミネート電池としての外観を損ねたり電解液漏れを発生する懸念がない。
【0056】
これに対し、ベースフィルムの全面に塗膜層を形成した比較例1では、180℃×0.4MPa×3秒の熱圧着条件下において、ベースフィルムと端部補強用プラスチック部品との間に塗膜層の熱接着性樹脂が排除されることなく残存するから、外装材の端部補強用プラスチック部品に対する接着強度は不十分であった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明を適用するラミネート電池の外装形成を工程順に示し、(A)は電池本体に対するラミネート外装材の巻き付け前の概略斜視図、(B)は同巻き付け後の概略斜視図、(C)は端部補強用プラスチック部品を装着した外装完了後の概略斜視図である。
【図2】この発明の一実施形態に係る電池用ラミネート外装材の断面図(図1におけるX−X線の断面図)である。
【図3】他の実施形態に係る電池用ラミネート外装材の断面図である。
【図4】更に他の実施形態に係る電池用ラミネート外装材の断面図である。
【図5】更に他の実施形態に係る電池用ラミネート外装材の断面図である。
【図6】製造途中の切断工程前のラミネート外装材を示す平面図である。
【符号の説明】
【0058】
1…ベースフィルム
1a…露出縁部
2…金属箔
3…接着剤層
4…熱接着性樹脂の塗膜層
5…延伸フィルム
6…接着剤層
7…熱硬化樹脂層
10…電池本体
11…ラミネート外装材
11a…筒状部
12…端部補強用プラスチック部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムの一面側に金属箔が貼着されると共に、
前記ベースフィルムの他面側に、該ベースフィルムの幅方向の両端縁部にベースフィルムが露出した露出縁部を残した態様で、電池本体の表面フィルムに対して熱接着可能な軟化点160℃以下の熱接着性樹脂からなる塗膜層が形成されていることを特徴とする電池用ラミネート外装材。
【請求項2】
前記塗膜層の熱接着性樹脂がエチレン−酢酸ビニル共重合体である請求項1記載の電池用ラミネート外装材。
【請求項3】
前記ベースフィルムがラミネート電池の端部補強用プラスチック部品に対して熱接着可能な熱可塑性樹脂からなる請求項1または2に記載の電池用ラミネート外装材。
【請求項4】
前記金属箔のベースフィルム貼着側とは反対側の表面に、厚さ8〜40μmの延伸フィルムが貼着されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の電池用ラミネート外装材。
【請求項5】
前記金属箔のベースフィルム貼着側とは反対側の表面に、厚さ0.5〜5μmの熱硬化樹脂層が形成されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の電池用ラミネート外装材。
【請求項6】
前記金属箔が硬質アルミ箔である請求項1〜5のいずれか1項に記載の電池用ラミネート外装材。
【請求項7】
電池本体に請求項1〜6のいずれかに記載の電池用ラミネート外装材が前記塗膜層側で接して巻付けられて熱接着されると共に、電池本体の両側にはみ出た該ラミネート外装材の余剰部分で構成される各筒状部に端部補強用プラスチック部品の少なくとも一部が挿嵌されて該端部補強用プラスチック部品が前記筒状部内面のベースフィルム露出縁部に熱接着されてなることを特徴とするラミネート電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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