電池用電極ペースト、電池用電極ペーストの製造方法及び電極板の製造方法
【課題】 電池(電極板)の製造工程において、生産性を高くでき、ギャップ部分の目詰まりを生じず、集電板に均一の厚みに塗布することができ、かつ、乾燥後の活物質層が集電板から剥離し難い特性となる電池用電極ペーストを提供する。このような電池用電極ペーストの製造方法を提供する。生産性が高く、厚みが均一で、かつ、集電板から剥離し難い活物質層を有する電極板の製造方法を提供する。
【解決手段】 電池用電極ペースト21Pは、活物質粒子22と、結着材23と、活物質粒子及び結着材が分散する分散媒26と、を備え、1s-1の第1剪断速度における第1剪断粘度V1が2000mPa・s以上、500s-1の第2剪断速度における第2剪断粘度V2が350mPa・s以下、かつ、10000s-1の第3剪断速度における第3剪断粘度V3が240mPa・s以下である。
【解決手段】 電池用電極ペースト21Pは、活物質粒子22と、結着材23と、活物質粒子及び結着材が分散する分散媒26と、を備え、1s-1の第1剪断速度における第1剪断粘度V1が2000mPa・s以上、500s-1の第2剪断速度における第2剪断粘度V2が350mPa・s以下、かつ、10000s-1の第3剪断速度における第3剪断粘度V3が240mPa・s以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の電極板に用いられる電池用電極ペースト、及び、この電池用電極ペーストの製造方法に関する。また、このような電池用電極ペーストを用いた電極板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車やノート型パソコン、ビデオカムコーダなどのポータブル電子機器の駆動用電源に、充放電可能な二次電池(以下、単に電池ともいう)が利用されている。
このような電池に関連した文献として、例えば、リチウム含有金属を含む正極の活物質ペースト(電池用電極ペースト)をノズルから吐出させ、バックアップロールに巻回して移動するアルミニウム箔(集電板)に塗布するシート状極板(電極板)の製造方法を開示した特許文献1を挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−65816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電池用電極ペースト(以下、単にペーストともいう)を用いて電池(電極板)を製造するにあたっては、生産性を高くするため速い速度で塗布したい一方、集電板に電池用電極ペーストの厚みを均一に塗布する必要がある。電池用電極ペーストの厚みが均一に塗布されないと、この電池用電極ペーストを乾燥させた後の活物質層において、この電気抵抗が不均一となり、電池の特性がばらついてしまうためである。
【0005】
また、電池用電極ペーストを集電板に塗布するのに先立って、フィルタを用いてペースト中の凝集物を除去しておく必要がある。例えば、塗布した電池用電極ペーストの厚みよりも大きな粒径の凝集物が含まれた電池用電極ペーストを集電板に塗布すると、ペーストの厚みを均一にし難く、また、集電板と、ペーストの厚みを規定するブレードやダイの先端面などとのギャップ部分が目詰まりする虞もあるためである。しかるに、このようなフィルタによる凝集物の除去において、ペーストや電極板の製造を工業的に成立させるには、ペーストがフィルタを通過するのにかかる時間が問題となる。
【0006】
さらに、塗布後の電池用電極ペーストについては、これにおける、結着材のマイグレーション現象(結着材がペースト中の外表面側に移動する現象)や、活物質粒子の沈降現象(重力によって活物質粒子がペースト中の集電板側に移動する現象)を防止する必要がある。マイグレーション現象、或いは、活物質粒子の沈降現象が生じて、塗布後の電池用電極ペーストのうち、集電板側で活物質粒子の割合が増す一方で結着材の割合が減ると、これを乾燥させた活物質層が集電板から剥離し易くなる。また、ペーストを乾燥させた活物質層のうち、外表面付近に、結着材が多く存在することにより、リチウムイオンが活物質層内部に移動するのを妨害しがちになり、抵抗が増加する不具合を防止するためである。
しかしながら、特許文献1では、上述した各課題を解決するための技術について記載されていない。
【0007】
本発明は、かかる問題点を鑑みてなされたものであって、電池(電極板)の製造工程において、生産性を高くでき、ギャップ部分の目詰まりを生じず、集電板に均一の厚みに塗布することができ、かつ、乾燥後の活物質層が集電板から剥離し難い特性となる電池用電極ペーストを提供することを目的とする。また、このような電池用電極ペーストの製造方法を提供することを目的とする。さらには、生産性が高く、厚みが均一で、かつ、集電板から剥離し難い活物質層を有する電極板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、活物質粒子と、結着材と、上記活物質粒子及び上記結着材が分散する液状の分散媒と、を備える電池用電極ペーストであって、1s-1の第1剪断速度における第1剪断粘度が、2000mPa・s以上、500s-1の第2剪断速度における第2剪断粘度が、350mPa・s以下、かつ、10000s-1の第3剪断速度における第3剪断粘度が、240mPa・s以下である電池用電極ペーストである。
【0009】
発明者らの研究によれば、例えば、ダイコーティングにおいて、集電板に塗布される電池用電極ペーストの厚みを規定する、ダイの先端面と集電板との間のギャップ(クリアランス)の大きさ(GP)を100μmとする一方、電極板の生産性向上のため、集電板を搬送する搬送速度(SV)を1m/sとするなど、塗布時にペーストにかかる剪断速度が10000s-1に達するような、小さなギャップで高速に集電板への塗布を行うのに用いるペーストについては、第3剪断速度(10000s-1)での剪断粘度が240mPa・s以下の性状とすることで、均一に塗布できることが判ってきた。
【0010】
また、前述したように、塗布前に電池用電極ペースト内の凝集物を除去するため、電池用電極ペーストをフィルタに通過させておく必要がある。なお、上述のギャップの大きさ(GP)、即ち、電池用電極ペーストの塗布の厚みを、例えば100μmとし、ギャップ部分における目詰まりを防止するには、ギャップの大きさよりも粒径の大きな凝集物を除去できるよう、フィルタの孔径を50〜100μmとする必要がある。
さらに、電池用電極ペーストを工業的に許容できる速さでフィルタに通すには、このペーストについて、例えば、孔径が50〜100μmのフィルタに、工業的に許容しうる流量(例えば、3L/min・m2以上)で通過させることができるなどのフィルタ通過特性が要求される。このような特性とするには、第2剪断速度(500s-1)での剪断粘度が350mPa・s以下の性状とすると良いことが判ってきた。
【0011】
さらに、電池用電極ペーストを集電板に100μm程度の厚みに塗布した後に生じる、マイグレーション現象や沈降現象は、ペーストの粘性に影響されることが判ってきた。特に、十分低い剪断速度におけるペーストの剪断粘度が大きいと、マイグレーション現象や沈降現象が生じにくく、乾燥後の活物質層が集電板から剥離し難い特性となることが判ってきた。なお、剪断速度が0では剪断粘度を測定できないため、十分低い剪断速度として、第1剪断速度(1s-1)を用いることとしている。
そして、具体的には、塗布したペーストについて、第1剪断速度(1s-1)での剪断粘度が2000mPa・s以上の性状とすることで、100μm程度の厚さのペーストを乾燥させた場合にも、マイグレーション現象や沈降現象を防止できることが判ってきた。
【0012】
これに対し、上述した電池用電極ペーストは、第3剪断速度における第3剪断粘度が240mPa・s以下、第2剪断速度における第2剪断粘度が350mPa・s以下、かつ、第1剪断速度における第1剪断粘度が2000mPa・s以上である。このため、電池(電極板)の製造工程の、剪断速度が10000s-1以下の塗布条件において、生産性を高くでき、ギャップ部分の目詰まりを生じず、集電板に均一の厚みに塗布できる。また、乾燥後の活物質層が集電板から剥離し難い電池用電極ペーストとすることができる。
【0013】
なお、活物質粒子としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウム遷移金属複合酸化物粒子や、鉄オリビン化合物など、正電極板に用いられる材質からなる粒子が挙げられる。また、例えば、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛等の天然黒鉛粒子や人造黒鉛の黒鉛(グラファイト)粒子、非晶質炭素粒子など、負電極板に用いられる粒子も挙げられる。
また、結着材としては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0014】
また、電池用電極ペーストの剪断粘度の測定装置としては、例えば、パラレルプレート、コーン&プレート、共軸二重円筒等のジオメトリ(試料を充填するアタッチメント)を有する回転粘度計(例えば、Anton Paar製のPhysica MCR)や、振動式粘度計が挙げられる。
【0015】
さらに、上述の電池用電極ペーストであって、集電板を搬送する搬送速度を、上記集電板とダイの先端面との間のギャップの大きさで除した値が8000〜10000s-1である塗布条件での塗布に用いる電池用電極ペーストとするのが好ましい。
このペーストは、例えば、ギャップの大きさ(GP)を100μm程度とし、集電板の搬送速度(SV)を1m/s程度とするなど、搬送速度(SV)をギャップの大きさ(GP)で除した値、つまり剪断速度が8000〜10000s-1という大きな値となる塗布条件での塗布に用いられても、上述の電池用電極ペーストを集電板に均一に塗布することができる。
【0016】
本発明の他の態様は、活物質粒子と、結着材と、上記活物質粒子及び上記結着材が分散する液状の分散媒と、を有する電池用電極ペーストの製造方法であって、上記電池用電極ペーストについて、1s-1の第1剪断速度における第1剪断粘度が2000mPa・s以上であることを確認する第1確認工程と、500s-1の第2剪断速度における第2剪断粘度が350mPa・s以下であることを確認する第2確認工程と、10000s-1の第3剪断速度における第3剪断粘度が240mPa・s以下であることを確認する第3確認工程と、を有する電池用電極ペーストの製造方法である。
【0017】
上述した電池用電極ペーストの製造方法では、電池用電極ペーストについて、上述の確認工程(第1確認工程,第2確認工程,第3確認工程)を有している。このため、これを終えた電池用電極ペーストを用いれば、剪断速度が10000s-1以下の塗布条件において、高い生産性で、ギャップ部分の目詰まりを生じず、集電板に均一の厚みに電池用電極ペーストを塗布できる。また、そのような電池用電極ペーストを乾燥させた後の活物質層を集電板から剥離し難くすることができる。
【0018】
或いは、本発明の他の態様は、集電板に電池用電極ペーストを塗布してなる電極板の製造方法であって、上記電池用電極ペーストは、活物質粒子と、結着材と、上記活物質粒子及び上記結着材が分散する液状の分散媒と、を有し、1s-1の第1剪断速度における第1剪断粘度が2000mPa・s以上、500s-1の第2剪断速度における第2剪断粘度が350mPa・s以下、かつ、10000s-1の第3剪断速度における第3剪断粘度が240mPa・s以下であり、上記電池用電極ペーストを、10000s-1以下の剪断速度で上記集電板に塗布する塗布工程と、塗布された上記電池用電極ペーストを乾燥させる乾燥工程と、を備える電極板の製造方法である。
【0019】
上述した電極板の製造方法では、上述の特性を有する電池用電極ペーストを用い、10000s-1以下の剪断速度で集電板に塗布する塗布工程と、乾燥工程とを行う。このため、塗布工程において、ギャップ部分の目詰まりを生じず、集電板に均一の厚みの電池用電極ペーストを塗布できる。また、マイグレーション現象や沈降現象を抑え、集電板から剥離し難い活物質層を形成することができる。かくして、均一な厚みを有し、集電板から剥離し難い活物質層を備える電極板を高い生産性で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態の電池の斜視図である。
【図2】実施形態の負電極板の斜視図である。
【図3】実施形態の電池の製造方法(ペースト形成工程)の説明図である。
【図4】剪断速度500s-1における剪断粘度の互いに異なる各負極ペーストについて、1分間あたりの流量を示すグラフである。
【図5】剥離試験に用いる剥離強度測定装置の概略図である。
【図6】剪断速度1s-1における剪断粘度の互いに異なる各負極ペーストについて、剥離強度を示すグラフである。
【図7】剪断速度1s-1における剪断粘度の互いに異なる負極ペーストを用いた各試料電池の出力(剪断粘度が6500mPa・sの負極ペーストを用いた電池の出力を100としたときの出力の相対値)を示すグラフである。
【図8】実施形態の電池の製造方法のうちの確認工程に用いる回転粘度計の概略図である。
【図9】実施形態の電池の塗布工程及び乾燥工程の説明図である。
【図10】実施形態の電池の塗布工程の説明図(図9のB部の拡大図)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態)
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
なお、本実施形態にかかる電極ペースト(負極ペースト21P)を用いて製造された電極板(負電極板20)を備える電池1について、図1,2を参照しつつ説明する。
この電池1は、いずれも長手方向DAに延びる帯状の負電極板20、正電極板30及びセパレータ40を備え、これらを捲回した捲回型の発電要素10をなすリチウムイオン二次電池である(図1参照)。なお、電池1は、図1に示すように、発電要素10を電池ケース80に収容してなる。
【0022】
この電池ケース80は、共にアルミニウム製の電池ケース本体81及び封口蓋82を有する。このうち電池ケース本体81は有底矩形箱形であり、この電池ケース80と発電要素10との間には、樹脂からなり、箱状に折り曲げた絶縁フィルム(図示しない)が介在させてある。また、封口蓋82は矩形板状であり、電池ケース本体81の開口を閉塞して、この電池ケース本体81に溶接されている。この封口蓋82には、発電要素10と接続している正極集電部材91及び負極集電部材92のうち、それぞれ先端に位置する正極端子部91A及び負極端子部92Aが貫通しており、図1中、上方に向く蓋表面82aから突出している。これら正極端子部91A及び負極端子部92Aと封口蓋82との間には、それぞれ絶縁性の樹脂からなる絶縁部材95が介在し、互いを絶縁している。さらに、この封口蓋82には矩形板状の安全弁97も封着されている。
【0023】
また、発電要素10は、帯状の正電極板30及び負電極板20が、帯状のセパレータ40を介して扁平形状に捲回されてなる捲回型である(図1参照)。この発電要素10の最外側及び最内側には、セパレータ40のみが捲回されている。なお、この発電要素10の正電極板30及び負電極板20はそれぞれ、クランク状に屈曲した板状の正極集電部材91又は負極集電部材92と接合している(図1参照)。このうち、ポリエチレンからなるセパレータ40には、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合有機溶媒に溶質(LiPF6)を添加してなる電解液(図示しない)が含浸されている。
【0024】
また、薄板形状の正電極板30は、帯状でアルミニウム製のアルミ箔(図示しない)と、このアルミ箔の両主面上に、それぞれ帯状に形成・配置された2つの正極活物質層(図示しない)とを有している。
この正極活物質層は、LiCoO2からなる正極活物質粒子、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる結着材、及び、アセチレンブラックからなる導電材(いずれも図示しない)を含む。
【0025】
一方、薄板形状の負電極板20は、図2に示すように、長手方向DAに延びる帯状で銅製の銅箔28と、この銅箔28の両主面上に、それぞれ長手方向DAに延びる帯状に形成・配置された2つの負極活物質層21,21とを有している。
このうち負極活物質層21は、平均粒径が10μm、タップ密度が0.9g/cm3及び比表面積が4.0m2/gのグラファイトからなる負極活物質粒子22、スチレンブタジエンゴム(SBR)からなる結着材23のほか、1%粘度(1%の水溶液を作製し、B型粘度計で測定したときの粘度)が7000mPa・sでエーテル化度が7.0のカルボキシメチルセルロース(CMC)からなる増粘材(図示しない)を含む。
なお、この負極活物質層21は、負極活物質粒子22と結着材23と増粘材とイオン交換水26とを備える負極ペースト21P(後述)を乾燥してなる。
【0026】
次に、本実施形態1にかかる負電極板20を用いた電池1の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
この製造方法には、負極ペースト21Pを形成するペースト形成工程、負極ペースト21Pの各種剪断速度における剪断粘度を確認する確認工程(第1確認工程,第2確認工程,第3確認工程)、負極ペースト21Pを銅箔28に塗布する塗布工程、及び、塗布した負極ペースト21Pを乾燥させる乾燥工程が含まれる。
【0027】
まず、負極活物質粒子22、結着材23、増粘材、及び、これらを分散するイオン交換水26を備える負極ペースト21Pを形成するペースト形成工程について、図3を参照しつつ説明する。
このペースト形成工程では、混合槽110と3つのブレード120,120,120とを備えるプラネタリーミキサ100を用いる(図3(a),(b)参照)。このプラネタリーミキサ100のブレード120は、駆動源により、混合槽110内で回転し、強力な剪断応力で混合槽110内の複数の物質を混練することができる。
【0028】
このペースト形成工程では、具体的には、負極活物質粒子22を49重量部と、結着材23をなすSBRを0.5重量部と、増粘材をなすCMCを0.5重量部とを混合槽110内で乾式混合した後、50重量部のイオン交換水26をその混合槽110内に複数回に分けて少量ずつ混合した。このようにイオン交換水26を複数回に分けて少量ずつ混合することで、従来(即ち、一度にイオン交換水を混合)よりも高い分散力をかけながら、これらを混合できる。これにより、イオン交換水26内に、負極活物質粒子22、結着材23及び増粘材を均一に分散させた負極ペースト21Pができあがる。
【0029】
なお、上述のペースト形成工程でできた負極ペースト21Pは、各剪断速度(第1剪断速度,第2剪断速度,第3剪断速度)における剪断粘度に特徴を有している。即ち、第1剪断速度(1s-1)における第1剪断粘度が3000mPa・s、第2剪断速度(500s-1)における第2剪断粘度が280mPa・s、かつ、第3剪断速度(10000s-1)における第3剪断粘度が230mPa・sである特性を有している。これは、従来(前述の1%粘度で4000mPa・s)よりも高い粘度(7000mPa・s)の増粘材を混合し、かつ、従来よりも高い分散力で混合・分散させたためであると考えられる。
【0030】
ところで、塗布工程では、銅箔28と、後述する塗布乾燥装置300のダイ320の先端面323との間のギャップ(クリアランス)の大きさGP(図10参照)を100μmとする一方、負電極板20の生産性向上のため、銅箔28の搬送速度(SV)を1m/sとする。すると、負極ペースト21Pにかかる剪断速度は10000s-1に達する。
そこで、発明者らは、剪断速度が10000s-1における剪断粘度が互いに異なる(30,80,185,240,325mPa・s)負極ペーストをそれぞれ用意した。そして、後述する塗布乾燥装置300を用いて、これら剪断粘度の異なる負極ペーストをそれぞれ銅箔28に塗布し、各負極ペーストが銅箔28に均一に塗布されたか否かを判定した。
具体的には、まず、剪断粘度が30mPa・sの負極ペーストを、ダイ320のペースト保持部321に投入した。そして、ギャップの大きさGPを100μm、銅箔28の搬送速度SVを1m/s(このときの剪断速度は10000s-1)とした塗布乾燥装置300において、吐出口322から銅箔28に向けて負極ペーストを吐出し、銅箔28に塗布した。そして、塗布した負極ペーストにスジ(銅箔28の搬送方向に伸びる、厚みの不均一な凸凹形状)が生じているかどうかを目視で判定した。剪断粘度が80,185,240,325mPa・sの負極ペーストについても、剪断粘度が30mPa・sの負極ペーストと同様にして、銅箔28に塗布し判定した。
各剪断粘度の負極ペーストについての判定結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1によれば、剪断粘度が325mPa・sの負極ペーストでは凸凹形状のスジが発生し、剪断粘度が30,80,185,240mPa・sの負極ペーストではスジが発生していない。このことから、10000s-1の剪断速度において、剪断粘度が240mPa・s以下の特性を有する負極ペーストは、剪断速度が10000s-1の以下の塗布条件で、銅箔28に均一の厚みで塗布することができることが判る。
【0033】
また、後述するが、塗布工程において、銅箔28とダイ320の先端面323との間のギャップ部分での目詰まりを防止し、塗布する負極ペースト21Pの厚みを均一にするため、ダイ320に負極ペースト21Pを投入するのに先立って、50μm角の孔を複数有するフィルタ310を用いて、負極ペースト21P中の凝集物を除去する必要がある。なお、発明者らの実験結果に基づき、フィルタ310における、負極ペースト21Pにかかる剪断速度に約500s-1を用いた。
一方、負極ペーストが適切なフィルタ通過特性を有していないと、フィルタ通過に時間を要し、負極ペーストの生産性が悪く工業的に成立しなくなる。そこで、工業的に許容しうるペースト通過特性として、3L/min・m2以上の流量を想定する。
そこで、発明者らは、500s-1の剪断速度における剪断粘度が互いに異なる(300,350,500,600mPa・s)負極ペーストをそれぞれ用意した。そして、塗布乾燥装置300のフィルタ310を用いて、これら剪断粘度の異なる負極ペーストの、1分間当たりの流量をそれぞれ測定した。
【0034】
各負極ペーストについての測定結果を図4のグラフに示す。このグラフによれば、剪断粘度が300mPa・s、及び、350mPa・sの負極ペーストの流量はそれぞれ7.6L/min・m2及び3.0L/min・m2であるが、剪断粘度が500mPa・s、及び、600mPa・sの負極ペーストの流量はそれぞれ0.4L/min・m2及び0.1L/min・m2である。このことから、剪断粘度が300,350mPa・sの負極ペーストでは、流量を3.0L/min・m2以上にできるのに対し、剪断粘度が500,600mPa・sの負極ペーストでは、流量が3.0L/min・m2に達し得ないことが判る。つまり、500s-1の剪断速度において、剪断粘度が350mPa・s以下の負極ペーストを用いれば、工業的に許容しうる流量でフィルタ310を通過させることができることが判る。
【0035】
さらに、後述する乾燥工程では、負極ペーストの粘度によっては、結着材23のマイグレーション現象や、負極活物質粒子22の沈降現象が生じる虞がある。このようなマイグレーション現象や沈降現象が負極ペーストで生じると、この負極ペーストを乾燥させて形成した負極活物質層21が銅箔28から剥離しやすくなったり、負電極板の抵抗が増加してしまう。
そこで、発明者らは、剪断速度1s-1における剪断粘度が互いに異なる(550,2100,6500mPa・s)負極ペーストをそれぞれ用意した。そして、後述する塗布乾燥装置300を用いて、これら剪断粘度の異なる負極ペーストをそれぞれ銅箔28に塗布し、ヒータ330で各負極ペーストを乾燥させて、負極活物質層を形成し、これと銅箔28との間での剥離強度を測定した。
さらに、乾燥させた負極ペーストをプレスし、前述の正電極板30及びセパレータ40と共に電池を製造し、電池の出力を測定した。
【0036】
具体的には、まず、剪断速度1s-1における剪断粘度が550mPa・sの負極ペーストを、ダイ320のペースト保持部321に投入し、銅箔28に塗布した後、ヒータ330で負極ペーストを全乾燥させて、負極活物質層21を形成した。
この負極活物質層21について、図5に示す剥離強度測定装置500を用いて、銅箔28との間の剥離強度を測定した。この剥離強度測定装置500は、板状の台座部520と、この台座部520から0.5mm/sの速度で、離れる方向に垂直移動するT字状の引っ張り部510とを有する。なお、台座部520と銅箔との間にはシート状の接着シール521が、また、引っ張り部510と負極活物質層との間にはΦ10の円板形状の接着シール511がそれぞれ介在している。
【0037】
一方、負極活物質層21(負電極板20)を用いて、前述の正電極板30及びセパレータ40と共に捲回し、電池1と同様の試料電池を製造した。
次に、この試料電池の出力を測定した。具体的には、3.0〜4.1Vの電圧範囲で定電流充電及び定電流放電(共に0.05C)を、1組の充放電を1サイクルとして3サイクル繰り返した(コンディショニング)。続いて、0.3Cの電流値で、4.1Vまで充電し、その後、25℃の温度環境下で、その電圧を保ちつつ電流値を徐々に低下させ、90分間保持した(定電流−定電圧充電)。さらに、25℃の温度環境下で、所定の電流値(例えば、5C)で5秒間放電させたときの積算電力(電流×電圧の和)を測定した。
剪断速度1s-1における剪断粘度が2100,6500mPa・sの負極ペーストについても、剪断粘度が550mPa・sの負極ペーストと同様にして、銅箔28に塗布し乾燥させて剥離強度を、さらに、試料電池を製造し、その試料電池の出力をそれぞれ測定した。
【0038】
各負極ペーストについての剥離強度の測定結果を図6のグラフに示す。このグラフによると、剪断粘度が低いものほど剥離強度が低くなることが判る。これは、剪断粘度が低いと、負極ペースト中の結着材23が動きやすく、マイグレーション現象が進行してしまったり、負極活物質粒子22の沈降現象が進んでしまうためであると考えられる。即ち、塗布後の負極ペーストのうち、銅箔側で負極活物質粒子22の割合が増す一方で結着材23の割合が減る。このことから、剪断速度1s-1における剪断粘度がより高い特性を有する負極ペーストが良いことが判る。
【0039】
また、各負極ペーストを用いてできた試料電池の出力についての測定結果を、図7のグラフに示す。なお、図7では、剪断速度1s-1における剪断粘度が6500mPa・sの負極ペーストを用いてできた試料電池の出力を100とし、その他の試料電池の出力を相対値で示す。
このグラフによれば、剪断粘度が550mPa・sの負極ペーストを用いた試料電池の出力が95であるのに対し、剪断粘度が2100mPa・sの負極ペーストを用いた試料電池の出力が101である。つまり、剪断粘度が2100mPa・sの負極ペーストを用いた試料電池と剪断粘度が6500mPa・sの負極ペーストを用いた試料電池との間で、出力にほとんど差がないことが判る。このことから、剪断粘度が2100mPa・s以上の負極ペーストであれば、塗布した負極ペーストにマイグレーション現象や沈降現象が生じるのを抑え、電池の出力の低下を抑制することができることが判る。
【0040】
以上をふまえ、本実施形態にかかる電池用電極ペースト21Pは、第3剪断速度(10000s-1)における第3剪断粘度が230mPa・s、第2剪断速度(500s-1)における第2剪断粘度が280mPa・s、かつ、第1剪断速度における第1剪断粘度(1s-1)が3000mPa・sとしてある。これにより、負極ペースト21Pを銅箔28に塗布するにあたり、剪断速度が10000s-1以下の塗布条件、例えば、銅箔28とダイ320の先端面323との間のギャップの大きさGPを100μmとし、1m/sの速い速度で塗布しても、銅箔28に均一の厚みに塗布でき、高い生産性を得ることができる。また、銅箔28とダイ320の先端面323との間における目詰まりも生じない。さらに、負極活物質層21が銅箔28から剥離し難い負電極板20を製造することができる。
【0041】
次に、負極ペースト21Pの各種剪断速度における剪断粘度を確認する確認工程(第1確認工程,第2確認工程,第3確認工程)について図を参照しつつ説明する。
この確認工程では、図8に概略図を示す、Anton Paar製のPhysica MCRの回転粘度計VMを用いて、第1剪断速度(1s-1)、第2剪断速度(500s-1)及び第3剪断速度(10000s-1)における、負極ペースト21Pの剪断粘度を測定し、第1剪断速度における第1剪断粘度(1s-1)が2000mPa・s以上、第2剪断速度における第2剪断粘度が350mPa・s以下、かつ、第3剪断速度(10000s-1)における第3剪断粘度が240mPa・s以下であるかを確認する。なお、回転粘度計VMは、軸芯AXを中心に回転可能な、片面が円錐形状のコーンプレートVMCと、軸芯AXに垂直な平面形状の基盤VMBとを有する。
【0042】
まず、確認工程のうちの第1確認工程では、上述の回転粘度計VMを用いて、第1剪断速度(1s-1)における、負極ペースト21Pの第1剪断粘度V1を測定する。そして、測定した第1剪断粘度V1が2000mPa・s以上であるかを確認する(V1≧2000)。
次いで、第2確認工程では、上述の回転粘度計VMを再度用いて、第2剪断速度(500s-1)における、負極ペースト21Pの第2剪断粘度V2を測定する。そして、測定した第2剪断粘度V2が350mPa・s以下であるかを確認する(V2≦350)。
次いで、第3確認工程では、上述の回転粘度計VMを再度用いて、第3剪断速度(10000s-1)における、負極ペースト21Pの第3剪断粘度V3を測定する。そして、測定した第3剪断粘度V3が240mPa・s以下であるかを確認する(V3≦240)。
第1確認工程、第2確認工程及び第3確認工程において、負極ペースト21Pが、第1剪断速度における第1剪断粘度(1s-1)が2000mPa・s以上、第2剪断速度における第2剪断粘度が350mPa・s以下、第3剪断速度(10000s-1)における第3剪断粘度が240mPa・s以下であることを確認したら、負極ペースト21Pを次工程の塗布工程に進める。
【0043】
次に、塗布乾燥装置300を用いて、負極ペースト21Pを銅箔28に塗布する塗布工程、及び、塗布した負極ペースト21Pを乾燥させる乾燥工程について、図9,10を参照しつつ説明する。
この塗布乾燥装置300は、巻出し部301、フィルタ310、ダイ320、ヒータ330、巻取り部302、及び、複数の補助ローラ340を備えている(図9参照)。
【0044】
このうち、フィルタ310は、50μm角の孔を複数有するメッシュ形状をなしており、負極ペースト21P内に存在する、孔よりも大きな凝集物を除去する。
また、ダイ320は、フィルタ310を通過した負極ペースト21Pを内部に貯留してなるペースト保持部321と、このペースト保持部321に保持した負極ペースト21Pを銅箔28に向かって連続的に吐出する吐出口322とを有する。
この吐出口322は、スリット状で、長手方向DAに移動する銅箔28の主面上に、帯状に負極ペースト21Pを吐出するべく、銅箔28の幅方向(図9中、奥行き方向)に平行に開口している。なお、銅箔28と、この銅箔28に対向する、ダイ320の先端面323との間のギャップの大きさGPは、100μmである(図10参照)。
【0045】
また、ヒータ330は、銅箔28、及び、この銅箔28に塗布された負極ペースト21Pを加熱する。これにより、2つのヒータ330,330の間を移動している間に、負極ペースト21Pの乾燥が徐々に進み、ヒータ330を通過し終えたときには、負極ペースト21Pは全乾燥、即ち、負極ペースト21P内のイオン交換水26が全て蒸発している。
【0046】
次いで、塗工工程及び乾燥工程について説明する。
まず、巻出し部301に捲回した、帯状の銅箔28を長手方向DAに移動させる。なお、銅箔28の搬送速度SVは1m/sである。
そして銅箔28に、ダイ320により負極ペースト21Pを塗布する(図9,10参照)。なお、ダイ320の先端面323において、負極ペースト21Pにかかる剪断速度は10000s-1である。
その後、この負極ペースト21Pをヒータ330で乾燥させ未圧縮活物質層21Bとした。そして、この未圧縮活物質層21Bを片側の主面上に担持した片面担持銅箔28Kを、一旦巻取り部302に巻き取る。
【0047】
なお、負極ペースト21Pは、前述したように、第3剪断速度における第3剪断粘度が240mPa・sであるので、銅箔28に均一の厚みで塗布することができる。
また、この負極ペースト21Pは、第1剪断速度における第1剪断粘度が2000mPa・sであるので、塗布後に、マイグレーション現象や沈降現象が生じず、乾燥後には、銅箔28から剥離し難い負極活物質層21となる。
【0048】
次に、この塗布乾燥装置300を再度用いて、上述の片面担持銅箔28K(銅箔28)の、未圧縮活物質層21Bを担持していない側の主面に、負極ペースト21Pを塗布する。そして、この負極ペースト21Pをヒータ330で全乾燥させる。かくして、銅箔28の両主面上に未圧縮活物質層21B,21Bをそれぞれ積層配置した、プレス前の負極活物質積層板20Bが作製される。
【0049】
その後、図示しないロールプレスで未圧縮活物質層21Bを銅箔28と共にプレスし、負電極板20を作製した(図2参照)。
【0050】
一方、PVDFからなる結着材、LiCoO2からなる正極活物質粒子及びアセチレンブラックからなる導電材を、有機溶媒中にそれぞれ投入し混練してできたペースト(図示しない)を、長手方向DAに延びる帯状のアルミ箔(図示しない)に塗布した。塗布後、アルミ箔上のペーストを乾燥させた。アルミ箔の裏側についても、同様にペーストを塗布し、乾燥させた。その後、図示しないロールプレスで、アルミ箔の両主面上で乾燥させたペーストを圧縮した正電極板30を作製した。
【0051】
上述のように作製した正電極板30と負電極板20との間に、セパレータ40を介在させて捲回し、発電要素10とする。さらに、正電極板30(アルミ箔38)及び負電極板20(銅箔28)にそれぞれ正極集電部材91及び負極集電部材92を溶接し、電池ケース本体11に挿入し、図示しない電解液を注入後、封口蓋12で電池ケース本体11を溶接で封口する。かくして、電池1が完成する(図1参照)。
【0052】
以上より、本実施形態の電池の製造方法における、負極ペースト21Pの製造方法では、負極ペースト21Pについて、上述の確認工程(第1確認工程,第2確認工程,第3確認工程)を有している。このため、これを終えた負極ペースト21Pを用いれば、剪断速度が10000s-1以下の塗布条件(本実施形態の剪断速度は10000s-1)において、高い生産性で、銅箔28に均一の厚みに負極ペースト21Pを塗布することができる。また、銅箔28とダイ320の先端面323との間のギャップ部分における目詰まりも生じない。さらに、乾燥させた後の負極活物質層21を銅箔28から剥離し難い負極ペースト21Pを製造することができる。
【0053】
また、本実施形態の電池の製造方法における、負電極板21の製造方法では、上述の特性を有する負極ペースト21Pを用い、10000s-1の剪断速度で銅箔28に塗布する塗布工程と、乾燥工程とを行う。このため、塗布工程において、銅箔28とダイの先端面323との間のギャップにおける目詰まりを生じず、銅箔28に均一の厚みの負極ペースト21Pを塗布できる。また、マイグレーション現象や沈降現象を抑え、銅箔28から剥離し難い負極活物質層21を形成することができる。かくして、均一の厚みを有し、銅箔28から剥離し難い負極活物質層21を備える負電極板20を高い生産性で製造することができる。
【0054】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態では、電池の電極のうち、負極側の負極ペーストを示したが、正極側の正極ペーストに適用しても良い。また、製造方法のうちの確認工程において、コーンプレートを有する回転粘度計を用いて、各剪断速度における剪断粘度を測定したが、例えば、それに代えて、パラレルプレートや共軸二重円筒のジオメトリを有する回転粘度計や、振動式粘度計を用いて測定することができる。
【符号の説明】
【0055】
20 負電極板(電極板)
21P 負極ペースト(電池用電極ペースト)
22 負極活物質粒子(活物質粒子)
23 結着材
26 イオン交換水(分散媒)
28 銅箔(集電板)
323 先端面
V1 第1剪断粘度
V2 第2剪断粘度
V3 第3剪断粘度
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の電極板に用いられる電池用電極ペースト、及び、この電池用電極ペーストの製造方法に関する。また、このような電池用電極ペーストを用いた電極板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車やノート型パソコン、ビデオカムコーダなどのポータブル電子機器の駆動用電源に、充放電可能な二次電池(以下、単に電池ともいう)が利用されている。
このような電池に関連した文献として、例えば、リチウム含有金属を含む正極の活物質ペースト(電池用電極ペースト)をノズルから吐出させ、バックアップロールに巻回して移動するアルミニウム箔(集電板)に塗布するシート状極板(電極板)の製造方法を開示した特許文献1を挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−65816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電池用電極ペースト(以下、単にペーストともいう)を用いて電池(電極板)を製造するにあたっては、生産性を高くするため速い速度で塗布したい一方、集電板に電池用電極ペーストの厚みを均一に塗布する必要がある。電池用電極ペーストの厚みが均一に塗布されないと、この電池用電極ペーストを乾燥させた後の活物質層において、この電気抵抗が不均一となり、電池の特性がばらついてしまうためである。
【0005】
また、電池用電極ペーストを集電板に塗布するのに先立って、フィルタを用いてペースト中の凝集物を除去しておく必要がある。例えば、塗布した電池用電極ペーストの厚みよりも大きな粒径の凝集物が含まれた電池用電極ペーストを集電板に塗布すると、ペーストの厚みを均一にし難く、また、集電板と、ペーストの厚みを規定するブレードやダイの先端面などとのギャップ部分が目詰まりする虞もあるためである。しかるに、このようなフィルタによる凝集物の除去において、ペーストや電極板の製造を工業的に成立させるには、ペーストがフィルタを通過するのにかかる時間が問題となる。
【0006】
さらに、塗布後の電池用電極ペーストについては、これにおける、結着材のマイグレーション現象(結着材がペースト中の外表面側に移動する現象)や、活物質粒子の沈降現象(重力によって活物質粒子がペースト中の集電板側に移動する現象)を防止する必要がある。マイグレーション現象、或いは、活物質粒子の沈降現象が生じて、塗布後の電池用電極ペーストのうち、集電板側で活物質粒子の割合が増す一方で結着材の割合が減ると、これを乾燥させた活物質層が集電板から剥離し易くなる。また、ペーストを乾燥させた活物質層のうち、外表面付近に、結着材が多く存在することにより、リチウムイオンが活物質層内部に移動するのを妨害しがちになり、抵抗が増加する不具合を防止するためである。
しかしながら、特許文献1では、上述した各課題を解決するための技術について記載されていない。
【0007】
本発明は、かかる問題点を鑑みてなされたものであって、電池(電極板)の製造工程において、生産性を高くでき、ギャップ部分の目詰まりを生じず、集電板に均一の厚みに塗布することができ、かつ、乾燥後の活物質層が集電板から剥離し難い特性となる電池用電極ペーストを提供することを目的とする。また、このような電池用電極ペーストの製造方法を提供することを目的とする。さらには、生産性が高く、厚みが均一で、かつ、集電板から剥離し難い活物質層を有する電極板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、活物質粒子と、結着材と、上記活物質粒子及び上記結着材が分散する液状の分散媒と、を備える電池用電極ペーストであって、1s-1の第1剪断速度における第1剪断粘度が、2000mPa・s以上、500s-1の第2剪断速度における第2剪断粘度が、350mPa・s以下、かつ、10000s-1の第3剪断速度における第3剪断粘度が、240mPa・s以下である電池用電極ペーストである。
【0009】
発明者らの研究によれば、例えば、ダイコーティングにおいて、集電板に塗布される電池用電極ペーストの厚みを規定する、ダイの先端面と集電板との間のギャップ(クリアランス)の大きさ(GP)を100μmとする一方、電極板の生産性向上のため、集電板を搬送する搬送速度(SV)を1m/sとするなど、塗布時にペーストにかかる剪断速度が10000s-1に達するような、小さなギャップで高速に集電板への塗布を行うのに用いるペーストについては、第3剪断速度(10000s-1)での剪断粘度が240mPa・s以下の性状とすることで、均一に塗布できることが判ってきた。
【0010】
また、前述したように、塗布前に電池用電極ペースト内の凝集物を除去するため、電池用電極ペーストをフィルタに通過させておく必要がある。なお、上述のギャップの大きさ(GP)、即ち、電池用電極ペーストの塗布の厚みを、例えば100μmとし、ギャップ部分における目詰まりを防止するには、ギャップの大きさよりも粒径の大きな凝集物を除去できるよう、フィルタの孔径を50〜100μmとする必要がある。
さらに、電池用電極ペーストを工業的に許容できる速さでフィルタに通すには、このペーストについて、例えば、孔径が50〜100μmのフィルタに、工業的に許容しうる流量(例えば、3L/min・m2以上)で通過させることができるなどのフィルタ通過特性が要求される。このような特性とするには、第2剪断速度(500s-1)での剪断粘度が350mPa・s以下の性状とすると良いことが判ってきた。
【0011】
さらに、電池用電極ペーストを集電板に100μm程度の厚みに塗布した後に生じる、マイグレーション現象や沈降現象は、ペーストの粘性に影響されることが判ってきた。特に、十分低い剪断速度におけるペーストの剪断粘度が大きいと、マイグレーション現象や沈降現象が生じにくく、乾燥後の活物質層が集電板から剥離し難い特性となることが判ってきた。なお、剪断速度が0では剪断粘度を測定できないため、十分低い剪断速度として、第1剪断速度(1s-1)を用いることとしている。
そして、具体的には、塗布したペーストについて、第1剪断速度(1s-1)での剪断粘度が2000mPa・s以上の性状とすることで、100μm程度の厚さのペーストを乾燥させた場合にも、マイグレーション現象や沈降現象を防止できることが判ってきた。
【0012】
これに対し、上述した電池用電極ペーストは、第3剪断速度における第3剪断粘度が240mPa・s以下、第2剪断速度における第2剪断粘度が350mPa・s以下、かつ、第1剪断速度における第1剪断粘度が2000mPa・s以上である。このため、電池(電極板)の製造工程の、剪断速度が10000s-1以下の塗布条件において、生産性を高くでき、ギャップ部分の目詰まりを生じず、集電板に均一の厚みに塗布できる。また、乾燥後の活物質層が集電板から剥離し難い電池用電極ペーストとすることができる。
【0013】
なお、活物質粒子としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウム遷移金属複合酸化物粒子や、鉄オリビン化合物など、正電極板に用いられる材質からなる粒子が挙げられる。また、例えば、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛等の天然黒鉛粒子や人造黒鉛の黒鉛(グラファイト)粒子、非晶質炭素粒子など、負電極板に用いられる粒子も挙げられる。
また、結着材としては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0014】
また、電池用電極ペーストの剪断粘度の測定装置としては、例えば、パラレルプレート、コーン&プレート、共軸二重円筒等のジオメトリ(試料を充填するアタッチメント)を有する回転粘度計(例えば、Anton Paar製のPhysica MCR)や、振動式粘度計が挙げられる。
【0015】
さらに、上述の電池用電極ペーストであって、集電板を搬送する搬送速度を、上記集電板とダイの先端面との間のギャップの大きさで除した値が8000〜10000s-1である塗布条件での塗布に用いる電池用電極ペーストとするのが好ましい。
このペーストは、例えば、ギャップの大きさ(GP)を100μm程度とし、集電板の搬送速度(SV)を1m/s程度とするなど、搬送速度(SV)をギャップの大きさ(GP)で除した値、つまり剪断速度が8000〜10000s-1という大きな値となる塗布条件での塗布に用いられても、上述の電池用電極ペーストを集電板に均一に塗布することができる。
【0016】
本発明の他の態様は、活物質粒子と、結着材と、上記活物質粒子及び上記結着材が分散する液状の分散媒と、を有する電池用電極ペーストの製造方法であって、上記電池用電極ペーストについて、1s-1の第1剪断速度における第1剪断粘度が2000mPa・s以上であることを確認する第1確認工程と、500s-1の第2剪断速度における第2剪断粘度が350mPa・s以下であることを確認する第2確認工程と、10000s-1の第3剪断速度における第3剪断粘度が240mPa・s以下であることを確認する第3確認工程と、を有する電池用電極ペーストの製造方法である。
【0017】
上述した電池用電極ペーストの製造方法では、電池用電極ペーストについて、上述の確認工程(第1確認工程,第2確認工程,第3確認工程)を有している。このため、これを終えた電池用電極ペーストを用いれば、剪断速度が10000s-1以下の塗布条件において、高い生産性で、ギャップ部分の目詰まりを生じず、集電板に均一の厚みに電池用電極ペーストを塗布できる。また、そのような電池用電極ペーストを乾燥させた後の活物質層を集電板から剥離し難くすることができる。
【0018】
或いは、本発明の他の態様は、集電板に電池用電極ペーストを塗布してなる電極板の製造方法であって、上記電池用電極ペーストは、活物質粒子と、結着材と、上記活物質粒子及び上記結着材が分散する液状の分散媒と、を有し、1s-1の第1剪断速度における第1剪断粘度が2000mPa・s以上、500s-1の第2剪断速度における第2剪断粘度が350mPa・s以下、かつ、10000s-1の第3剪断速度における第3剪断粘度が240mPa・s以下であり、上記電池用電極ペーストを、10000s-1以下の剪断速度で上記集電板に塗布する塗布工程と、塗布された上記電池用電極ペーストを乾燥させる乾燥工程と、を備える電極板の製造方法である。
【0019】
上述した電極板の製造方法では、上述の特性を有する電池用電極ペーストを用い、10000s-1以下の剪断速度で集電板に塗布する塗布工程と、乾燥工程とを行う。このため、塗布工程において、ギャップ部分の目詰まりを生じず、集電板に均一の厚みの電池用電極ペーストを塗布できる。また、マイグレーション現象や沈降現象を抑え、集電板から剥離し難い活物質層を形成することができる。かくして、均一な厚みを有し、集電板から剥離し難い活物質層を備える電極板を高い生産性で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態の電池の斜視図である。
【図2】実施形態の負電極板の斜視図である。
【図3】実施形態の電池の製造方法(ペースト形成工程)の説明図である。
【図4】剪断速度500s-1における剪断粘度の互いに異なる各負極ペーストについて、1分間あたりの流量を示すグラフである。
【図5】剥離試験に用いる剥離強度測定装置の概略図である。
【図6】剪断速度1s-1における剪断粘度の互いに異なる各負極ペーストについて、剥離強度を示すグラフである。
【図7】剪断速度1s-1における剪断粘度の互いに異なる負極ペーストを用いた各試料電池の出力(剪断粘度が6500mPa・sの負極ペーストを用いた電池の出力を100としたときの出力の相対値)を示すグラフである。
【図8】実施形態の電池の製造方法のうちの確認工程に用いる回転粘度計の概略図である。
【図9】実施形態の電池の塗布工程及び乾燥工程の説明図である。
【図10】実施形態の電池の塗布工程の説明図(図9のB部の拡大図)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態)
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
なお、本実施形態にかかる電極ペースト(負極ペースト21P)を用いて製造された電極板(負電極板20)を備える電池1について、図1,2を参照しつつ説明する。
この電池1は、いずれも長手方向DAに延びる帯状の負電極板20、正電極板30及びセパレータ40を備え、これらを捲回した捲回型の発電要素10をなすリチウムイオン二次電池である(図1参照)。なお、電池1は、図1に示すように、発電要素10を電池ケース80に収容してなる。
【0022】
この電池ケース80は、共にアルミニウム製の電池ケース本体81及び封口蓋82を有する。このうち電池ケース本体81は有底矩形箱形であり、この電池ケース80と発電要素10との間には、樹脂からなり、箱状に折り曲げた絶縁フィルム(図示しない)が介在させてある。また、封口蓋82は矩形板状であり、電池ケース本体81の開口を閉塞して、この電池ケース本体81に溶接されている。この封口蓋82には、発電要素10と接続している正極集電部材91及び負極集電部材92のうち、それぞれ先端に位置する正極端子部91A及び負極端子部92Aが貫通しており、図1中、上方に向く蓋表面82aから突出している。これら正極端子部91A及び負極端子部92Aと封口蓋82との間には、それぞれ絶縁性の樹脂からなる絶縁部材95が介在し、互いを絶縁している。さらに、この封口蓋82には矩形板状の安全弁97も封着されている。
【0023】
また、発電要素10は、帯状の正電極板30及び負電極板20が、帯状のセパレータ40を介して扁平形状に捲回されてなる捲回型である(図1参照)。この発電要素10の最外側及び最内側には、セパレータ40のみが捲回されている。なお、この発電要素10の正電極板30及び負電極板20はそれぞれ、クランク状に屈曲した板状の正極集電部材91又は負極集電部材92と接合している(図1参照)。このうち、ポリエチレンからなるセパレータ40には、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合有機溶媒に溶質(LiPF6)を添加してなる電解液(図示しない)が含浸されている。
【0024】
また、薄板形状の正電極板30は、帯状でアルミニウム製のアルミ箔(図示しない)と、このアルミ箔の両主面上に、それぞれ帯状に形成・配置された2つの正極活物質層(図示しない)とを有している。
この正極活物質層は、LiCoO2からなる正極活物質粒子、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる結着材、及び、アセチレンブラックからなる導電材(いずれも図示しない)を含む。
【0025】
一方、薄板形状の負電極板20は、図2に示すように、長手方向DAに延びる帯状で銅製の銅箔28と、この銅箔28の両主面上に、それぞれ長手方向DAに延びる帯状に形成・配置された2つの負極活物質層21,21とを有している。
このうち負極活物質層21は、平均粒径が10μm、タップ密度が0.9g/cm3及び比表面積が4.0m2/gのグラファイトからなる負極活物質粒子22、スチレンブタジエンゴム(SBR)からなる結着材23のほか、1%粘度(1%の水溶液を作製し、B型粘度計で測定したときの粘度)が7000mPa・sでエーテル化度が7.0のカルボキシメチルセルロース(CMC)からなる増粘材(図示しない)を含む。
なお、この負極活物質層21は、負極活物質粒子22と結着材23と増粘材とイオン交換水26とを備える負極ペースト21P(後述)を乾燥してなる。
【0026】
次に、本実施形態1にかかる負電極板20を用いた電池1の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
この製造方法には、負極ペースト21Pを形成するペースト形成工程、負極ペースト21Pの各種剪断速度における剪断粘度を確認する確認工程(第1確認工程,第2確認工程,第3確認工程)、負極ペースト21Pを銅箔28に塗布する塗布工程、及び、塗布した負極ペースト21Pを乾燥させる乾燥工程が含まれる。
【0027】
まず、負極活物質粒子22、結着材23、増粘材、及び、これらを分散するイオン交換水26を備える負極ペースト21Pを形成するペースト形成工程について、図3を参照しつつ説明する。
このペースト形成工程では、混合槽110と3つのブレード120,120,120とを備えるプラネタリーミキサ100を用いる(図3(a),(b)参照)。このプラネタリーミキサ100のブレード120は、駆動源により、混合槽110内で回転し、強力な剪断応力で混合槽110内の複数の物質を混練することができる。
【0028】
このペースト形成工程では、具体的には、負極活物質粒子22を49重量部と、結着材23をなすSBRを0.5重量部と、増粘材をなすCMCを0.5重量部とを混合槽110内で乾式混合した後、50重量部のイオン交換水26をその混合槽110内に複数回に分けて少量ずつ混合した。このようにイオン交換水26を複数回に分けて少量ずつ混合することで、従来(即ち、一度にイオン交換水を混合)よりも高い分散力をかけながら、これらを混合できる。これにより、イオン交換水26内に、負極活物質粒子22、結着材23及び増粘材を均一に分散させた負極ペースト21Pができあがる。
【0029】
なお、上述のペースト形成工程でできた負極ペースト21Pは、各剪断速度(第1剪断速度,第2剪断速度,第3剪断速度)における剪断粘度に特徴を有している。即ち、第1剪断速度(1s-1)における第1剪断粘度が3000mPa・s、第2剪断速度(500s-1)における第2剪断粘度が280mPa・s、かつ、第3剪断速度(10000s-1)における第3剪断粘度が230mPa・sである特性を有している。これは、従来(前述の1%粘度で4000mPa・s)よりも高い粘度(7000mPa・s)の増粘材を混合し、かつ、従来よりも高い分散力で混合・分散させたためであると考えられる。
【0030】
ところで、塗布工程では、銅箔28と、後述する塗布乾燥装置300のダイ320の先端面323との間のギャップ(クリアランス)の大きさGP(図10参照)を100μmとする一方、負電極板20の生産性向上のため、銅箔28の搬送速度(SV)を1m/sとする。すると、負極ペースト21Pにかかる剪断速度は10000s-1に達する。
そこで、発明者らは、剪断速度が10000s-1における剪断粘度が互いに異なる(30,80,185,240,325mPa・s)負極ペーストをそれぞれ用意した。そして、後述する塗布乾燥装置300を用いて、これら剪断粘度の異なる負極ペーストをそれぞれ銅箔28に塗布し、各負極ペーストが銅箔28に均一に塗布されたか否かを判定した。
具体的には、まず、剪断粘度が30mPa・sの負極ペーストを、ダイ320のペースト保持部321に投入した。そして、ギャップの大きさGPを100μm、銅箔28の搬送速度SVを1m/s(このときの剪断速度は10000s-1)とした塗布乾燥装置300において、吐出口322から銅箔28に向けて負極ペーストを吐出し、銅箔28に塗布した。そして、塗布した負極ペーストにスジ(銅箔28の搬送方向に伸びる、厚みの不均一な凸凹形状)が生じているかどうかを目視で判定した。剪断粘度が80,185,240,325mPa・sの負極ペーストについても、剪断粘度が30mPa・sの負極ペーストと同様にして、銅箔28に塗布し判定した。
各剪断粘度の負極ペーストについての判定結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1によれば、剪断粘度が325mPa・sの負極ペーストでは凸凹形状のスジが発生し、剪断粘度が30,80,185,240mPa・sの負極ペーストではスジが発生していない。このことから、10000s-1の剪断速度において、剪断粘度が240mPa・s以下の特性を有する負極ペーストは、剪断速度が10000s-1の以下の塗布条件で、銅箔28に均一の厚みで塗布することができることが判る。
【0033】
また、後述するが、塗布工程において、銅箔28とダイ320の先端面323との間のギャップ部分での目詰まりを防止し、塗布する負極ペースト21Pの厚みを均一にするため、ダイ320に負極ペースト21Pを投入するのに先立って、50μm角の孔を複数有するフィルタ310を用いて、負極ペースト21P中の凝集物を除去する必要がある。なお、発明者らの実験結果に基づき、フィルタ310における、負極ペースト21Pにかかる剪断速度に約500s-1を用いた。
一方、負極ペーストが適切なフィルタ通過特性を有していないと、フィルタ通過に時間を要し、負極ペーストの生産性が悪く工業的に成立しなくなる。そこで、工業的に許容しうるペースト通過特性として、3L/min・m2以上の流量を想定する。
そこで、発明者らは、500s-1の剪断速度における剪断粘度が互いに異なる(300,350,500,600mPa・s)負極ペーストをそれぞれ用意した。そして、塗布乾燥装置300のフィルタ310を用いて、これら剪断粘度の異なる負極ペーストの、1分間当たりの流量をそれぞれ測定した。
【0034】
各負極ペーストについての測定結果を図4のグラフに示す。このグラフによれば、剪断粘度が300mPa・s、及び、350mPa・sの負極ペーストの流量はそれぞれ7.6L/min・m2及び3.0L/min・m2であるが、剪断粘度が500mPa・s、及び、600mPa・sの負極ペーストの流量はそれぞれ0.4L/min・m2及び0.1L/min・m2である。このことから、剪断粘度が300,350mPa・sの負極ペーストでは、流量を3.0L/min・m2以上にできるのに対し、剪断粘度が500,600mPa・sの負極ペーストでは、流量が3.0L/min・m2に達し得ないことが判る。つまり、500s-1の剪断速度において、剪断粘度が350mPa・s以下の負極ペーストを用いれば、工業的に許容しうる流量でフィルタ310を通過させることができることが判る。
【0035】
さらに、後述する乾燥工程では、負極ペーストの粘度によっては、結着材23のマイグレーション現象や、負極活物質粒子22の沈降現象が生じる虞がある。このようなマイグレーション現象や沈降現象が負極ペーストで生じると、この負極ペーストを乾燥させて形成した負極活物質層21が銅箔28から剥離しやすくなったり、負電極板の抵抗が増加してしまう。
そこで、発明者らは、剪断速度1s-1における剪断粘度が互いに異なる(550,2100,6500mPa・s)負極ペーストをそれぞれ用意した。そして、後述する塗布乾燥装置300を用いて、これら剪断粘度の異なる負極ペーストをそれぞれ銅箔28に塗布し、ヒータ330で各負極ペーストを乾燥させて、負極活物質層を形成し、これと銅箔28との間での剥離強度を測定した。
さらに、乾燥させた負極ペーストをプレスし、前述の正電極板30及びセパレータ40と共に電池を製造し、電池の出力を測定した。
【0036】
具体的には、まず、剪断速度1s-1における剪断粘度が550mPa・sの負極ペーストを、ダイ320のペースト保持部321に投入し、銅箔28に塗布した後、ヒータ330で負極ペーストを全乾燥させて、負極活物質層21を形成した。
この負極活物質層21について、図5に示す剥離強度測定装置500を用いて、銅箔28との間の剥離強度を測定した。この剥離強度測定装置500は、板状の台座部520と、この台座部520から0.5mm/sの速度で、離れる方向に垂直移動するT字状の引っ張り部510とを有する。なお、台座部520と銅箔との間にはシート状の接着シール521が、また、引っ張り部510と負極活物質層との間にはΦ10の円板形状の接着シール511がそれぞれ介在している。
【0037】
一方、負極活物質層21(負電極板20)を用いて、前述の正電極板30及びセパレータ40と共に捲回し、電池1と同様の試料電池を製造した。
次に、この試料電池の出力を測定した。具体的には、3.0〜4.1Vの電圧範囲で定電流充電及び定電流放電(共に0.05C)を、1組の充放電を1サイクルとして3サイクル繰り返した(コンディショニング)。続いて、0.3Cの電流値で、4.1Vまで充電し、その後、25℃の温度環境下で、その電圧を保ちつつ電流値を徐々に低下させ、90分間保持した(定電流−定電圧充電)。さらに、25℃の温度環境下で、所定の電流値(例えば、5C)で5秒間放電させたときの積算電力(電流×電圧の和)を測定した。
剪断速度1s-1における剪断粘度が2100,6500mPa・sの負極ペーストについても、剪断粘度が550mPa・sの負極ペーストと同様にして、銅箔28に塗布し乾燥させて剥離強度を、さらに、試料電池を製造し、その試料電池の出力をそれぞれ測定した。
【0038】
各負極ペーストについての剥離強度の測定結果を図6のグラフに示す。このグラフによると、剪断粘度が低いものほど剥離強度が低くなることが判る。これは、剪断粘度が低いと、負極ペースト中の結着材23が動きやすく、マイグレーション現象が進行してしまったり、負極活物質粒子22の沈降現象が進んでしまうためであると考えられる。即ち、塗布後の負極ペーストのうち、銅箔側で負極活物質粒子22の割合が増す一方で結着材23の割合が減る。このことから、剪断速度1s-1における剪断粘度がより高い特性を有する負極ペーストが良いことが判る。
【0039】
また、各負極ペーストを用いてできた試料電池の出力についての測定結果を、図7のグラフに示す。なお、図7では、剪断速度1s-1における剪断粘度が6500mPa・sの負極ペーストを用いてできた試料電池の出力を100とし、その他の試料電池の出力を相対値で示す。
このグラフによれば、剪断粘度が550mPa・sの負極ペーストを用いた試料電池の出力が95であるのに対し、剪断粘度が2100mPa・sの負極ペーストを用いた試料電池の出力が101である。つまり、剪断粘度が2100mPa・sの負極ペーストを用いた試料電池と剪断粘度が6500mPa・sの負極ペーストを用いた試料電池との間で、出力にほとんど差がないことが判る。このことから、剪断粘度が2100mPa・s以上の負極ペーストであれば、塗布した負極ペーストにマイグレーション現象や沈降現象が生じるのを抑え、電池の出力の低下を抑制することができることが判る。
【0040】
以上をふまえ、本実施形態にかかる電池用電極ペースト21Pは、第3剪断速度(10000s-1)における第3剪断粘度が230mPa・s、第2剪断速度(500s-1)における第2剪断粘度が280mPa・s、かつ、第1剪断速度における第1剪断粘度(1s-1)が3000mPa・sとしてある。これにより、負極ペースト21Pを銅箔28に塗布するにあたり、剪断速度が10000s-1以下の塗布条件、例えば、銅箔28とダイ320の先端面323との間のギャップの大きさGPを100μmとし、1m/sの速い速度で塗布しても、銅箔28に均一の厚みに塗布でき、高い生産性を得ることができる。また、銅箔28とダイ320の先端面323との間における目詰まりも生じない。さらに、負極活物質層21が銅箔28から剥離し難い負電極板20を製造することができる。
【0041】
次に、負極ペースト21Pの各種剪断速度における剪断粘度を確認する確認工程(第1確認工程,第2確認工程,第3確認工程)について図を参照しつつ説明する。
この確認工程では、図8に概略図を示す、Anton Paar製のPhysica MCRの回転粘度計VMを用いて、第1剪断速度(1s-1)、第2剪断速度(500s-1)及び第3剪断速度(10000s-1)における、負極ペースト21Pの剪断粘度を測定し、第1剪断速度における第1剪断粘度(1s-1)が2000mPa・s以上、第2剪断速度における第2剪断粘度が350mPa・s以下、かつ、第3剪断速度(10000s-1)における第3剪断粘度が240mPa・s以下であるかを確認する。なお、回転粘度計VMは、軸芯AXを中心に回転可能な、片面が円錐形状のコーンプレートVMCと、軸芯AXに垂直な平面形状の基盤VMBとを有する。
【0042】
まず、確認工程のうちの第1確認工程では、上述の回転粘度計VMを用いて、第1剪断速度(1s-1)における、負極ペースト21Pの第1剪断粘度V1を測定する。そして、測定した第1剪断粘度V1が2000mPa・s以上であるかを確認する(V1≧2000)。
次いで、第2確認工程では、上述の回転粘度計VMを再度用いて、第2剪断速度(500s-1)における、負極ペースト21Pの第2剪断粘度V2を測定する。そして、測定した第2剪断粘度V2が350mPa・s以下であるかを確認する(V2≦350)。
次いで、第3確認工程では、上述の回転粘度計VMを再度用いて、第3剪断速度(10000s-1)における、負極ペースト21Pの第3剪断粘度V3を測定する。そして、測定した第3剪断粘度V3が240mPa・s以下であるかを確認する(V3≦240)。
第1確認工程、第2確認工程及び第3確認工程において、負極ペースト21Pが、第1剪断速度における第1剪断粘度(1s-1)が2000mPa・s以上、第2剪断速度における第2剪断粘度が350mPa・s以下、第3剪断速度(10000s-1)における第3剪断粘度が240mPa・s以下であることを確認したら、負極ペースト21Pを次工程の塗布工程に進める。
【0043】
次に、塗布乾燥装置300を用いて、負極ペースト21Pを銅箔28に塗布する塗布工程、及び、塗布した負極ペースト21Pを乾燥させる乾燥工程について、図9,10を参照しつつ説明する。
この塗布乾燥装置300は、巻出し部301、フィルタ310、ダイ320、ヒータ330、巻取り部302、及び、複数の補助ローラ340を備えている(図9参照)。
【0044】
このうち、フィルタ310は、50μm角の孔を複数有するメッシュ形状をなしており、負極ペースト21P内に存在する、孔よりも大きな凝集物を除去する。
また、ダイ320は、フィルタ310を通過した負極ペースト21Pを内部に貯留してなるペースト保持部321と、このペースト保持部321に保持した負極ペースト21Pを銅箔28に向かって連続的に吐出する吐出口322とを有する。
この吐出口322は、スリット状で、長手方向DAに移動する銅箔28の主面上に、帯状に負極ペースト21Pを吐出するべく、銅箔28の幅方向(図9中、奥行き方向)に平行に開口している。なお、銅箔28と、この銅箔28に対向する、ダイ320の先端面323との間のギャップの大きさGPは、100μmである(図10参照)。
【0045】
また、ヒータ330は、銅箔28、及び、この銅箔28に塗布された負極ペースト21Pを加熱する。これにより、2つのヒータ330,330の間を移動している間に、負極ペースト21Pの乾燥が徐々に進み、ヒータ330を通過し終えたときには、負極ペースト21Pは全乾燥、即ち、負極ペースト21P内のイオン交換水26が全て蒸発している。
【0046】
次いで、塗工工程及び乾燥工程について説明する。
まず、巻出し部301に捲回した、帯状の銅箔28を長手方向DAに移動させる。なお、銅箔28の搬送速度SVは1m/sである。
そして銅箔28に、ダイ320により負極ペースト21Pを塗布する(図9,10参照)。なお、ダイ320の先端面323において、負極ペースト21Pにかかる剪断速度は10000s-1である。
その後、この負極ペースト21Pをヒータ330で乾燥させ未圧縮活物質層21Bとした。そして、この未圧縮活物質層21Bを片側の主面上に担持した片面担持銅箔28Kを、一旦巻取り部302に巻き取る。
【0047】
なお、負極ペースト21Pは、前述したように、第3剪断速度における第3剪断粘度が240mPa・sであるので、銅箔28に均一の厚みで塗布することができる。
また、この負極ペースト21Pは、第1剪断速度における第1剪断粘度が2000mPa・sであるので、塗布後に、マイグレーション現象や沈降現象が生じず、乾燥後には、銅箔28から剥離し難い負極活物質層21となる。
【0048】
次に、この塗布乾燥装置300を再度用いて、上述の片面担持銅箔28K(銅箔28)の、未圧縮活物質層21Bを担持していない側の主面に、負極ペースト21Pを塗布する。そして、この負極ペースト21Pをヒータ330で全乾燥させる。かくして、銅箔28の両主面上に未圧縮活物質層21B,21Bをそれぞれ積層配置した、プレス前の負極活物質積層板20Bが作製される。
【0049】
その後、図示しないロールプレスで未圧縮活物質層21Bを銅箔28と共にプレスし、負電極板20を作製した(図2参照)。
【0050】
一方、PVDFからなる結着材、LiCoO2からなる正極活物質粒子及びアセチレンブラックからなる導電材を、有機溶媒中にそれぞれ投入し混練してできたペースト(図示しない)を、長手方向DAに延びる帯状のアルミ箔(図示しない)に塗布した。塗布後、アルミ箔上のペーストを乾燥させた。アルミ箔の裏側についても、同様にペーストを塗布し、乾燥させた。その後、図示しないロールプレスで、アルミ箔の両主面上で乾燥させたペーストを圧縮した正電極板30を作製した。
【0051】
上述のように作製した正電極板30と負電極板20との間に、セパレータ40を介在させて捲回し、発電要素10とする。さらに、正電極板30(アルミ箔38)及び負電極板20(銅箔28)にそれぞれ正極集電部材91及び負極集電部材92を溶接し、電池ケース本体11に挿入し、図示しない電解液を注入後、封口蓋12で電池ケース本体11を溶接で封口する。かくして、電池1が完成する(図1参照)。
【0052】
以上より、本実施形態の電池の製造方法における、負極ペースト21Pの製造方法では、負極ペースト21Pについて、上述の確認工程(第1確認工程,第2確認工程,第3確認工程)を有している。このため、これを終えた負極ペースト21Pを用いれば、剪断速度が10000s-1以下の塗布条件(本実施形態の剪断速度は10000s-1)において、高い生産性で、銅箔28に均一の厚みに負極ペースト21Pを塗布することができる。また、銅箔28とダイ320の先端面323との間のギャップ部分における目詰まりも生じない。さらに、乾燥させた後の負極活物質層21を銅箔28から剥離し難い負極ペースト21Pを製造することができる。
【0053】
また、本実施形態の電池の製造方法における、負電極板21の製造方法では、上述の特性を有する負極ペースト21Pを用い、10000s-1の剪断速度で銅箔28に塗布する塗布工程と、乾燥工程とを行う。このため、塗布工程において、銅箔28とダイの先端面323との間のギャップにおける目詰まりを生じず、銅箔28に均一の厚みの負極ペースト21Pを塗布できる。また、マイグレーション現象や沈降現象を抑え、銅箔28から剥離し難い負極活物質層21を形成することができる。かくして、均一の厚みを有し、銅箔28から剥離し難い負極活物質層21を備える負電極板20を高い生産性で製造することができる。
【0054】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態では、電池の電極のうち、負極側の負極ペーストを示したが、正極側の正極ペーストに適用しても良い。また、製造方法のうちの確認工程において、コーンプレートを有する回転粘度計を用いて、各剪断速度における剪断粘度を測定したが、例えば、それに代えて、パラレルプレートや共軸二重円筒のジオメトリを有する回転粘度計や、振動式粘度計を用いて測定することができる。
【符号の説明】
【0055】
20 負電極板(電極板)
21P 負極ペースト(電池用電極ペースト)
22 負極活物質粒子(活物質粒子)
23 結着材
26 イオン交換水(分散媒)
28 銅箔(集電板)
323 先端面
V1 第1剪断粘度
V2 第2剪断粘度
V3 第3剪断粘度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質粒子と、
結着材と、
上記活物質粒子及び上記結着材が分散する液状の分散媒と、を備える
電池用電極ペーストであって、
1s-1の第1剪断速度における第1剪断粘度が、2000mPa・s以上、
500s-1の第2剪断速度における第2剪断粘度が、350mPa・s以下、かつ、
10000s-1の第3剪断速度における第3剪断粘度が、240mPa・s以下である
電池用電極ペースト。
【請求項2】
活物質粒子と、
結着材と、
上記活物質粒子及び上記結着材が分散する液状の分散媒と、を有する
電池用電極ペーストの製造方法であって、
上記電池用電極ペーストについて、
1s-1の第1剪断速度における第1剪断粘度が2000mPa・s以上であることを確認する第1確認工程と、
500s-1の第2剪断速度における第2剪断粘度が350mPa・s以下であることを確認する第2確認工程と、
10000s-1の第3剪断速度における第3剪断粘度が240mPa・s以下であることを確認する第3確認工程と、を有する
電池用電極ペーストの製造方法。
【請求項3】
集電板に電池用電極ペーストを塗布してなる電極板の製造方法であって、
上記電池用電極ペーストは、
活物質粒子と、結着材と、上記活物質粒子及び上記結着材が分散する液状の分散媒と、を有し、1s-1の第1剪断速度における第1剪断粘度が2000mPa・s以上、500s-1の第2剪断速度における第2剪断粘度が350mPa・s以下、かつ、10000s-1の第3剪断速度における第3剪断粘度が240mPa・s以下であり、
上記電池用電極ペーストを、10000s-1以下の剪断速度で上記集電板に塗布する塗布工程と、
塗布された上記電池用電極ペーストを乾燥させる乾燥工程と、を備える
電極板の製造方法。
【請求項1】
活物質粒子と、
結着材と、
上記活物質粒子及び上記結着材が分散する液状の分散媒と、を備える
電池用電極ペーストであって、
1s-1の第1剪断速度における第1剪断粘度が、2000mPa・s以上、
500s-1の第2剪断速度における第2剪断粘度が、350mPa・s以下、かつ、
10000s-1の第3剪断速度における第3剪断粘度が、240mPa・s以下である
電池用電極ペースト。
【請求項2】
活物質粒子と、
結着材と、
上記活物質粒子及び上記結着材が分散する液状の分散媒と、を有する
電池用電極ペーストの製造方法であって、
上記電池用電極ペーストについて、
1s-1の第1剪断速度における第1剪断粘度が2000mPa・s以上であることを確認する第1確認工程と、
500s-1の第2剪断速度における第2剪断粘度が350mPa・s以下であることを確認する第2確認工程と、
10000s-1の第3剪断速度における第3剪断粘度が240mPa・s以下であることを確認する第3確認工程と、を有する
電池用電極ペーストの製造方法。
【請求項3】
集電板に電池用電極ペーストを塗布してなる電極板の製造方法であって、
上記電池用電極ペーストは、
活物質粒子と、結着材と、上記活物質粒子及び上記結着材が分散する液状の分散媒と、を有し、1s-1の第1剪断速度における第1剪断粘度が2000mPa・s以上、500s-1の第2剪断速度における第2剪断粘度が350mPa・s以下、かつ、10000s-1の第3剪断速度における第3剪断粘度が240mPa・s以下であり、
上記電池用電極ペーストを、10000s-1以下の剪断速度で上記集電板に塗布する塗布工程と、
塗布された上記電池用電極ペーストを乾燥させる乾燥工程と、を備える
電極板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−113838(P2011−113838A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269594(P2009−269594)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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