説明

電池蓋部材

【課題】 本発明は、部品点数が少なく、かつ材料歩留まりの高い電極端子を備える電池蓋部材を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明の電池蓋部材(10)は、一対の電極端子(40)が貫通して蓋体(30)に固定されている電池蓋部材であって、電極端子は、電極に導通する集電端子部(42)と、蓋体を貫通する棒状の貫通部(43)と、その貫通部を軸として円盤状に展延するフランジ部(43c)と、外部の接続部材に接続される外部端子部(44)とを一の棒体から塑性加工により一体に形成されてなり、フランジ部と、このフランジ部と協働して蓋体を挟持する係合部材(70)とでその蓋体に固定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極端子が貫通した蓋体を備え電池容器の開口部を封止する電池蓋部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型電子機器、電気自動車などの動力源電源として、大容量・高出力でエネルギ密度の高いリチウムイオン二次電池が注目されている。
【0003】
このリチウムイオン二次電池は、発電要素となる巻取り電極体を非水電解液とともに電池容器内に電池蓋部材によって密封して構成されている。
【0004】
図9に電池蓋部材の分解組み立て図を示す。電池蓋部材100は、一対の電極端子140が貫通した状態で蓋体130に固定されて構成されている。電極端子140は、容器の内部で電極体に接続する集電端子142と容器の外部で接続部材160に接続される外部端子(Z端子とも云う)144とからなり、集電端子142と外部端子144とは集電端子142に設けられた蓋体130を貫通するリベット部143によってカシメられて連結されると共に、蓋体130に強固に固定されている。電極端子140と蓋体130との間には、シールゴム152、樹脂製のロアガスケット153、および樹脂製のアッパガスケット154が介装されている。
【0005】
しかし、このような構成の電池蓋部材100は、多くの部品からなるためにコストが嵩むという問題があった。また、電極端子140は、集電端子142と外部端子144とをリベット部143のカシメ密着で一体化したものであり、集電端子142と外部端子144との導通性について、その信頼性が低いといった課題があった。
【0006】
ところで、集電端子142は形状的にリベット部143とそれ以外の部分(一般部)141に大別できる。一般部141については、電気を伝えるために最低限必要な断面積を確保すればよいため、元の板材は薄肉のものでもよいが、リベット部143はリベット形状のために材料を大きく流動させる必要があり、一般部141と比べて厚い材料が必要であり、結果として無駄な材料の割合が多くなって集電端子142の製造における材料歩留まりが悪いという問題もあった。
【0007】
特許文献1は、集電端子とZ端子の接続部構造を簡易なものとして部品点数の低減を図っている。しかし、材料歩留まりや集電端子とZ端子との導通性に対する信頼性の向上に関しては寄与するところが少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−329380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、部品点数が少なく、かつ、導電性の信頼性と材料歩留まりの高い電極端子を備える電池蓋部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電池蓋部材は、一対の電極端子が貫通して蓋体に固定されている電池蓋部材であって、電極端子は、電極に導通する集電端子部と、蓋体を貫通する棒状の貫通部と、その貫通部を軸として円盤状に展延するフランジ部と、外部の接続部材に接続される外部端子部とを一の棒体から塑性加工により一体に形成されてなり、フランジ部と、このフランジ部と協働して蓋体を挟持する係合部材とでその蓋体に固定されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の電池蓋部材において、係合部材は、棒状の貫通部に刻設された係合溝に係合される止め輪であることが望ましい。
【0012】
また、本発明の電池蓋部材において、貫通部と蓋体との隙間をシールするシール部材がフランジ部と蓋体との間に介装されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電池蓋部材は、一の棒体から塑性加工により一体に形成された電極端子が蓋体に固定されてなるので、従来の構成に比べて部品点数を大幅に削減することができる。また、電極端子は一の棒状の材料から一体的に形成されるので、2部品をカシメによって一体化していた従来の電極端子に比べて材料歩留まりが高い。さらに、電極端子における導通性の問題は解消されるので、導通検査を不要とすることができる。
【0014】
電極端子の貫通部に刻設された溝部に止め輪を係合して電極端子を固定する態様では、止め輪はフランジ部と共に蓋体を強固に挟持することができるので、蓋体に対して安定した電極端子の固定剛性を得ることができる。また、固定構造が簡単であるので部品間のバラツキが少なく精度よく固定することができる。
【0015】
また、フランジ部と蓋体との間にシール部材を介装することにより、電極端子の棒状の貫通部と貫通している蓋体との隙間を確実にシールして、電池蓋部材のシール性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】リチウムイオン二次電池の構成を示す概略構成図である。
【図2】実施形態の電池蓋部材を示す斜視図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】実施形態に係る電極端子の斜視図である。
【図5】実施形態の電池蓋部材の加工工程を説明する説明図である。
【図6】実施形態の電池蓋部材の加工工程を説明する説明図である。
【図7】実施形態の電池蓋部材の加工工程を説明する説明図である。
【図8】電極端子の回転防止手段を示す斜視図である。
【図9】従来の電池蓋部材を説明する分解組み立て図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、リチウムイオン二次電池1の構成を示す概略構成図である。図2は、本実施形態の電池蓋部材10を示す斜視図であり、そのA−A断面を図3に示す。
【0018】
図1に示されるように、リチウムイオン二次電池1は、略直方体状の容器2と、扁平状に巻回され容器2に収容された電極体4と、電極体4の軸方向両端部(図1の左右端部)に接続される一対の電極端子40と、容器2の外部でこの電極端子40に電気的に接続される接続部材60とを備える。容器2には図示しない電解液が収容されており、この電極体4は電解液に浸漬されている。
【0019】
容器2は、上端に開口部を有する箱状の容器本体20と、その開口部に取り付けられて容器本体20を封止する蓋体30とを備えている。そして、この蓋体30の両端部に一対の電極端子40がそれぞれ貫通して固定されて図2に示す電池蓋部材10とされている。
【0020】
電池蓋部材10は、蓋体30の長手方向を二分する軸Lに対してほぼ対称に形成されているので、以後、図2の主として左側半分について説明する。
【0021】
図3に示すように、電極端子40と蓋体30との間にはシール部材50(蓋体30の内側にはシールゴム52、蓋体30の外側には樹脂ガスケット54)が介装されており、電極端子40は、これらのシール部材50を介して係合部材70によって蓋体30に固定されている。
【0022】
ここで、本実施形態に係る電極端子について説明する。図4に電極端子40の斜視図を示す。電極端子40は、電極体4の端部に接合される扁平な集電端子部42と、接続部材60と接続される外部端子部44と、集電端子部42と外部端子部44とを連結し、蓋体30を貫通する貫通部43とからなる。
【0023】
貫通部43は、集電端子部42の上端部から蓋体30の短辺方向にほぼ水平に延びる屈曲部43aと、この屈曲部43aの端部からほぼ垂直に上方へ延びる棒状の垂直部43bとからなっている。垂直部43bには、この垂直部43bを軸として水平方向に円盤状に展延するフランジ部43cが形成されている。そして、フランジ部43cの上方の垂直部43b外周には、係合部材70(E形止め輪)を係合する係合溝43dが刻設されている。垂直部43bは扁平で水平方向に延びる外部端子部44に連続しており、外部端子部44には接続部材60を挿通する挿通孔44aが設けられている。
【0024】
以上のような電極端子40を備える電池蓋部材10は、電極端子40の材料である棒体400と容器本体20を封止する蓋体30とから、図5〜7に示すようにして作製することができる。
【0025】
図5に示すように、まず(a)電極端子40の材料である円柱状の棒体400を準備する。次に、(b)鍛造加工で棒体400の長手方向の材料を流動させてフランジ部43cを形成する。ここで、棒体400の外径をd、フランジ部43cの外径をDとしてD/dは1.5〜2.5とするとよい。フランジ部43cはシール部材52の着座部であるので、D/dが1.5未満では十分なシール性を得ることができない。また、電極端子40の蓋体30に対する十分な固定剛性が得られない。なお、フランジ部43cの外径Dが蓋体30の短辺の長さ未満であることは言うまでもない。続いてフランジ部43c上方の棒体上部402の外周面に係合溝43dを刻設する。係合溝43dは、切削によって形成してもよいが、プレスによって印刻してもよい。その後、(c)フランジ部43cの下方の棒体下部404に曲げ加工を施して所定の屈曲部43aを形成する。
【0026】
次に、屈曲部43aの下方の棒体下部404を扁平にプレス加工するとともに曲げ加工を施して、所定の集電端子部42(図6)を形成し加工途中の電極端子410を得る。そして、図6(a)に示すように、加工途中の電極端子410の棒体上部402へ、シールゴム52、蓋体30、樹脂ガスケット54を順に挿通してフランジ部43c上に積層する。しかる後に係合溝43dへ係合部材70を係合して図6(b)に示すように加工途中の電極端子410を蓋体30に固定する。なお、このときのシールゴム52の圧縮率が20〜50%となることが望ましい。シールゴム52の圧縮率が20%未満では、十分なシール性が確保できない。一方、50%を超えて高いと、圧縮によりゴムが割れることがある。より好ましくは、30〜40%である。係合部材70としては特に限定はなく、E形止め輪やグリップ止め輪などの止め輪を用いることができる。
【0027】
次に、図7(a)に示すように、蓋体30の外側に突出している棒体上部402をプレスして平板状となし、(b)水平に曲げるとともに、挿通孔44aを打ち抜いて外部端子部44を形成する。そして、挿通孔44aに対応する蓋体30の上面に接続部材60を固定する固定部材62(図2)を配置する。固定部材62は、例えば、接続部材60を螺着するナットがインサートされた樹脂部材である。
【0028】
本実施形態の電池蓋部材10は、電極端子40が棒体400から一体に形成されていることを除いては、従来技術と同様にすることができる。例えば、棒体400の材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金からなる群より選ばれる金属を適宜採用すればよい。また、フランジ部43cと蓋体30との間に介挿されるシールゴム52も従来技術と同様にEPDMやNBRを好適に用いればよい。
【0029】
以上のようにして形成される本実施形態の電池蓋部材10において、電極端子40は、一本の棒体400を所定の形状に塑性加工して得られるので、従来の電極端子のように一部分(例えば、リベット部)を形成するための余分な材料を準備する必要がない。従って、複数の部品(リベット端子とZ形状端子)をカシメによって一体化していた従来の電極端子に比べて電極端子の材料歩留まりが高い。また、集電端子部から外部端子部への導通性の問題は解消されるので、導通検査を不要とすることができる。
【0030】
本発明の電池蓋部材は、上記の実施の形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で変更してもよい。
【0031】
例えば、図8に示すように、樹脂ガスケット54に段差部54aを設ける。この段差部54aを設けることにより、係合部材70の端部が段差部54aに干渉されて、電極端子40が棒状の貫通部43bを軸として樹脂ガスケット54に対して回転することを防止することができる。
【0032】
また、上記の実施の形態では、樹脂ガスケット54と固定部材62とを別体としているが、樹脂ガスケット54と固定部材62とを一体に形成した一部品としてもよい。一体化することでさらに部品点数を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の電池蓋部材は、携帯型電子機器、電気自動車などの動力源電源としての角型の密閉型蓄電池の電池蓋部材として好適である。
【符号の説明】
【0034】
1:リチウムイオン二次電池 2:容器 4:電極体 10:電池蓋部材 20:容器本体 30:蓋体 40:電極端子 42:集電端子部 43:貫通部 43a:屈曲部 43b:垂直部 43c:フランジ部 43d:係合溝 44:外部端子部 44a:挿通孔 50:シール部材 52:シールゴム 54:樹脂ガスケット 54a:段差部 60:接続部材 62:固定部材 70:係合部材 400:棒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極端子が貫通して蓋体に装着されている電池蓋部材であって、
前記電極端子は、電極に導通する集電端子部と、前記蓋体を貫通する棒状の貫通部と、該貫通部を軸として円盤状に展延するフランジ部と、外部の接続部材に接続される外部端子部とを一の棒体から塑性加工により一体に形成されてなり、
該フランジ部と、該フランジ部と協働して前記蓋体を挟持する係合部材とで該蓋体に固定されていることを特徴とする電池蓋部材。
【請求項2】
前記係合部材は、前記貫通部に刻設された係合溝部に係合される止め輪である請求項1に記載の電池蓋部材。
【請求項3】
前記貫通部と前記蓋体との隙間をシールするシール部材が前記フランジ部と前記蓋体との間に介装されている請求項1または2に記載の電池蓋部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−150985(P2012−150985A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8804(P2011−8804)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】