説明

電池

【課題】コンパクトな構成でありながら、高い電池容量を確保しつつ、充電後の外装缶の膨れの小さな電池を提供する。
【解決手段】この電池は、正極21と負極22とがセパレータ23を間にして積層されて巻回された電池素子を、中空直方体形状の外装缶11の内部に収容したものである。外装缶11は、矩形状の底板11Bと、底板11Bの長辺とそれぞれ接続されて互いに対向する一対の対向板1A,1Bと、底板11Bの短辺とそれぞれ接続されて互いに対向し底板11Bと反対側の端縁が一対の対向板1A,1Bにおける底板11Bと反対側の端縁と共に開放端11Kを構成する一対の側板2A,2Bとを含む。対向板1A,1Bは、その外面に、底板11Bに平行な方向において横断する第1の凹部3と、底板11Bに垂直な方向において底板11Bから第1の凹部3に至るまで延在する第2の凹部4とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極および負極を有する電池素子を外装缶に収容した電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ一体型VTR(ビデオテープレコーダ),携帯電話あるいはノートパソコンなどのポータブル電子機器が多く登場し、その小型軽量化が図られている。これらの電子機器のポータブル電源として用いられている電池、特に二次電池はキーデバイスとして、エネルギー密度の向上を図る研究開発が活発に進められている。中でも、非水電解質二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)は、従来の水系電解液二次電池である鉛電池、ニッケルカドミウム電池と比較して大きなエネルギー密度が得られるので、その改良に関する検討が各方面で行われている。
【0003】
リチウムイオン二次電池に使用される負極活物質としては、比較的高容量を示し良好なサイクル特性を有する難黒鉛化性炭素あるいは黒鉛などの炭素材料が広く用いられている。ただし、近年の高容量化の要求を考えると、炭素系材料のさらなる高容量化が課題となっている。
【0004】
このような背景から、炭素化原料と作製条件とを選ぶことにより炭素材料で高容量を達成する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような炭素材料を用いた場合には、負極放電電位が対リチウム(Li)で0.8V〜1.0Vであるので、電池を構成したときの電池放電電圧が低くなることから、電池エネルギー密度の点では大きな向上が見込めない。さらには、充放電曲線形状にヒステリシスが大きく、各充放電サイクルでのエネルギー効率が低いという欠点もある。
【0005】
一方で、炭素材料を上回る高容量負極として、ある種の金属がリチウムと電気化学的に合金化し、これが可逆的に生成・分解することを応用した合金材料に関する研究も進められている。さらには、サイクル特性を改善する手法として、スズ(Sn)やケイ素(Si)を合金化してこれらの膨張を抑制することが検討されている。例えば、鉄などの遷移金属とスズとを合金化することが提案されている(特許文献2〜4,非特許文献1〜3参照)。このほかにも、MgSiなども提案されている(非特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平8−315825号公報
【特許文献2】特開2004−22306号公報
【特許文献3】特開2004−63400号公報
【特許文献4】特開2005−78999号公報
【非特許文献1】「ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of The Electrochemical Society)」、1999年、第146号、p405
【非特許文献2】「ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of The Electrochemical Society)」、1999年、第146号、p414
【非特許文献3】「ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of The Electrochemical Society)」、1999年、第146号、p423
【非特許文献4】「ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of The Electrochemical Society)」、1999年、第146号、p4401
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの手法を用いた場合であっても、充放電時における負極の膨張および収縮を十分に抑制することが難しい。そのため、結果的に、上記の合金材料を採用した高容量負極の特長を十分に活かしきれていないのが実状である。
【0007】
具体的には以下の通りである。上記のような合金材料からなる負極を含む電池素子を所定の外装缶に密閉して収容した場合、充電を行った際、あるいは充放電を繰り返し行った際、負極を含む電池素子が膨張し、外装缶内部の圧力が上昇する。ここで、過度な圧力上昇が生じると、例えば現在一般的に使用されている直方体状の外装缶においては、最も大きな表面積を有する側壁が外側へ膨らみ、外形寸法に歪みが生じてしまうこととなる。電池は、各種の電子機器に搭載する際、極めて限られた空間に載置されることが多く、実装上問題となる。このため、実際には、充電後の負極の膨張率を考慮し、電池素子の最外面と外装缶の内面との間に予め適度なクリアランスを確保する必要がある。その場合、電池素子と外装缶の内面との間に無駄なスペースが生じてしまい、外装缶が占める空間の大きさに対する電池容量(見かけの単位体積あたりの電池容量)が、炭素材料からなる負極の場合よりも向上するものの期待するほどには大きくならない。なお、外装缶の側壁の厚みを大きくすることで外装缶の強度を向上させ、外装缶の外形寸法の歪みを防ぐ方法も考えられるが、重量増加や寸法増大を伴い、コンパクト化に不利な構成となるので好ましくない。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、コンパクトな構成でありながら、高い電池容量を確保しつつ、充電後の外装缶の膨れの小さな電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電池は、正極および負極を有する電池素子と、その電池素子を収容する中空角型の外装缶とを備え、外装缶が矩形状の底板と、底板の長辺とそれぞれ接続されて互いに対向する一対の対向板と、底板の短辺とそれぞれ接続されて互いに対向し底板と反対側の端縁が一対の対向板における底板と反対側の端縁と共に開放端を構成する一対の側板とを含み、一対の対向板がその外面に、底板に沿った方向において横断する第1の凹部と、底板との接続部から少なくとも第1の凹部に至るまで延在する第2の凹部とを含むようにしたものである。
【0010】
本発明の電池では、中空角型の外装缶における対向板の外面に互いに交差する第1および第2の凹部が設けられているので、それら第1および第2の凹部が対向板の曲げや歪みを抑制する梁として機能し、優れた機械的強度が得られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電池によれば、中空角型の外装缶における対向板の外面に設けた第1および第2の凹部により、効果的に対向板の補強を行うことができ、コンパクトな構成でありながら、充電に伴う電池素子の膨張などに起因する外装缶内部の圧力上昇が生じた場合であっても外装缶の膨れを抑えることができる。よって、電池素子と外装缶内面とのクリアランスをより小さくし、高容量化を図るのに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図は、各構成要素について本発明が理解できる程度の形状、大きさおよび配置関係を概略的に示したものであり、実寸とは必ずしも一致するものではない。
【0013】
図1および図2は、本発明の一実施の形態としての二次電池の断面構造を表すものであり、図3は、その二次電池を構成する外装缶11の外観を表す斜視図である。図1に示された断面と図2に示された断面とは、互いに直交する位置関係にある。すなわち、図2は、図1に示したII−II線に沿った矢視方向における断面図である。この二次電池は、いわゆる角型といわれるものであり、電池蓋13と共に全体としてほぼ中空直方体形状をなす外装缶11の内部に、扁平状の電池素子20を収容したものである。また、この二次電池は、負極の容量が電極反応物質であるリチウムの吸蔵および放出に基づく容量により表されるリチウムイオン電池である。
【0014】
外装缶11は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、負極端子としての機能も有している。この外装缶11は、一端部が閉鎖され他端部が開放されており、開放端11Kに絶縁板12および電池蓋13が取り付けられることにより内部が密閉された構造となっている。詳細には、外装缶11は、図3に示したように矩形状の底板11Bと、その底板11Bの周縁に沿って立設する一対の対向板1A,1Bおよび一対の側板2A,2Bとを有しており、底板11Bと対向する部分が開放されている。一対の対向板1A,1Bは、底板11Bの長辺とそれぞれ接続されて互いに対向しており、一対の側板2A,2Bは、底板11Bの短辺とそれぞれ接続されて互いに対向している。対向板1A,1Bおよび側板2A,2Bもまた矩形状をなしており、対向板1A,1Bおよび側板2A,2Bにおける底板11Bと反対側の端縁が開口11Kを構成している。
【0015】
図3に示したように、対向板1A,1Bの外側表面には、それぞれ、第1の凹部3および第2の凹部4が設けられている。第1の凹部3は、底板11Bに沿って平行に延在し、側板2Aと側板2Bとを繋ぐように対向板1A,1Bを横断している。第1の凹部3は、底板11Bと開放端11Kとの中間に位置することが望ましい。一方、第2の凹部4は、底板11Bから第1の凹部3に至るまで、底板11Bに垂直な方向に延在している。第2の凹部は、底板11Bと平行な方向における中間位置において底板11Bと垂直に延在することが望ましい。また、第1および第2の凹部3,4の断面形状は、例えば円弧状であり、最深部の深さは、対向板1A,1Bの厚みの1/4〜1/2程度である。また、第1および第2の凹部3,4の幅は、例えば最深部の深さの0.5倍〜300倍であるとよい。対向板1A,1Bの曲げ強度がより向上するからである。なお、本実施の形態では、第1の凹部3および第2の凹部4を、それぞれ1つずつ設けるようにしたが、いずれも複数設けるようにしてもよい。また、第1の凹部3は、底板11Bと平行であることが望ましいが、必ずしも平行でなくともよい。すなわち、第1の凹部3は、一端が対向板1A,1Bにおける側板2Aとの接続部に位置し、他端が対向板1A,1Bにおける側板2Bとの接続部に位置するように延在していればよい。同様に、第2の凹部4は、底板11Bと垂直に延在することが望ましいが、必ずしも垂直でなくともよい。さらに、第1の凹部3および第2の凹部4は、いずれも直線状に延在していることが強度上望ましいが、曲線状に延在するものであってもよい。
【0016】
外装缶11の開放端11Kに取り付けられた絶縁板12は、ポリプロピレンなどにより構成され、電池素子20の上に巻回周面に対して垂直に配置されている。電池蓋13は、例えば、外装缶11と同様の材料により構成され、外装缶11と共に負極端子としての機能も有している。電池蓋13の外側には、正極端子となる端子板14が配置されている。また、電池蓋13の中央付近には貫通孔が設けられ、この貫通孔に、端子板14に電気的に接続された正極ピン15が挿入されている。端子板14と電池蓋13との間は絶縁ケース16により電気的に絶縁され、正極ピン15と電池蓋13との間はガスケット17により電気的に絶縁されている。絶縁ケース16は、例えばポリブチレンテレフタレートにより構成されている。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0017】
電池蓋13の周縁付近には開裂弁18および電解液注入孔19が設けられている。開裂弁18は、電池蓋13と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合に開裂して内圧の上昇を抑えるようになっている。電解液注入孔19は、例えばステンレス鋼球よりなる封止部材19Aにより塞がれている。
【0018】
電池素子20は、正極21と負極22とが、セパレータ23を間にして積層され、かつ巻回されたものであり、外装缶11の形状に合わせて扁平な形状に成形されている。電池素子20の最外周にはセパレータ23が位置しており、そのすぐ内側には正極21が位置している。図2では、正極21および負極22の積層構造を簡略化して示している。また、電池素子20の巻回数は、図1および図2に示したものに限定されず、任意に設定可能である。正極21の端部(例えば内終端部)にはアルミニウムなどよりなる正極リード24が接続されており、負極22(例えば外終端部)にはニッケルなどよりなる負極リード25が接続されている。正極リード24は正極ピン15の下端に溶接されることにより端子板14と電気的に接続されており、負極リード25は外装缶11に溶接され電気的に接続されている。
【0019】
図4は、図1および図2に示した正極21を展開した断面図である。この正極21は、帯状の正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bを選択的に設けたものである。詳細には、正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが存在する正極被覆領域21Cと、正極被覆領域21Cを挟むように巻回中心側および巻回外周側の端部に位置し、正極集電体21Aの両面とも正極活物質層21Bが存在せずに露出した状態である正極露出領域21DS,21DEとを有している。正極リード24は、巻回中心側の正極露出領域21DSに接合されている。なお、正極被覆領域21Cおよび正極露出領域21DS,21DEは、正極集電体21Aの両面において一致している必要はなく、片面のみに正極活物質層21Bが設けられた領域が存在していてもよい。
【0020】
正極集電体21Aは、例えば、厚みが5μm〜50μm程度であり、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
【0021】
正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて炭素材料などの導電材およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んでいてもよい。 リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウムあるいはそれらを含む固溶体(Li(Nix Coy Mnz )O2 ;x、yおよびzの値はそれぞれ0<x<1,0<y<1,0<z<1,x+y+z=1である。)や、スピネル構造を有するマンガン酸リチウム(LiMn2 4 )あるいはその固溶体(Li(Mn2-v Niv )O4 ;vの値はv<2である。)などのリチウム複合酸化物が挙げられる。また、正極材料としては、例えば、リン酸鉄リチウム(LiFePO4 )などのオリビン構造を有するリン酸化合物も挙げられる。高いエネルギー密度が得られるからである。なお、正極材料は、上記した他、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムあるいは二酸化マンガンなどの酸化物や、二硫化鉄、二硫化チタンあるいは硫化モリブデンなどの二硫化物や、硫黄や、ポリアニリンあるいはポリチオフェンなどの導電性高分子であってもよい。
【0022】
図5は、図1および図2に示した負極22を展開した断面図である。負極22は、帯状の負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが選択的に設けられたものである。詳細には、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが存在する負極被覆領域22Cと、負極被覆領域22Cを挟むように巻回中心側および巻回外周側の端部に位置し、負極集電体22Aの両面とも負極活物質層22Bが存在せずに露出した状態である正極露出領域22DS,22DEとを有している。負極リード25は、巻回外周側の負極露出領域22DEに接合されている。なお、負極被覆領域22Dおよび負極露出領域22DS,22DEは、負極集電体22Aの両面において一致している必要はなく、片面のみに負極活物質層22Bが設けられた領域が存在していてもよい。
【0023】
負極集電体22Aは、例えば、銅箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。この負極集電体22Aの厚みは、例えば5μm〜50μmである。
【0024】
負極活物質層22Bは、負極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種あるいは2種以上を含んでおり、必要に応じて結着剤や導電剤などを含んでいてもよい。
【0025】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能であると共に金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として有する材料が挙げられる。高いエネルギー密度が得られるからである。このような負極材料は、金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、ここでの合金には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含まれる。また、合金は、非金属元素を含んでいてもよい。この組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物、あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0026】
上記した金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素あるいは半金属元素が挙げられる。具体的には、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)などである。中でも、ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種が好ましく、ケイ素がより好ましい。リチウムを吸蔵および放出する能力が大きいため、高いエネルギー密度が得られるからである。
【0027】
ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を有する負極材料としては、例えば、ケイ素の単体、合金あるいは化合物や、スズの単体、合金あるいは化合物や、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
【0028】
ケイ素の単体を有する負極材料としては、例えば、ケイ素の単体を主体として有する材料が挙げられる。この負極材料を含む負極活物質層22Bは、例えば、ケイ素単体層の間にケイ素以外の第2の構成元素と酸素とが存在する構造を有している。この負極活物質層22Bにおけるケイ素および酸素の合計の含有量は、50質量%以上であるのが好ましく、特にケイ素単体の含有量が50質量%以上であるのが好ましい。ケイ素以外の第2の構成元素としては、例えば、チタン(Ti)、クロム、マンガン(Mn)、鉄、コバルト(Co)、ニッケル、銅、亜鉛、インジウム、銀、マグネシウム、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、ビスマスあるいはアンチモン(Sb)などが挙げられる。ケイ素の単体を主体として有する材料を含む負極活物質層22Bは、例えば、ケイ素と他の構成元素とを共蒸着することにより形成可能である。
【0029】
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を有するものが挙げられる。ケイ素の化合物としては、例えば、酸素あるいは炭素(C)を有するものが挙げられ、ケイ素に加えて、上記した第2の構成元素を有していてもよい。ケイ素の合金あるいは化合物の一例としては、SiB4 、SiB6 、Mg2 Si、Ni2 Si、TiSi2 、MoSi2 、CoSi2 、NiSi2 、CaSi2 、CrSi2 、Cu5 Si、FeSi2 、MnSi2 、NbSi2 、TaSi2 、VSi2 、WSi2 、ZnSi2 、SiC、Si3 4 、Si2 2 O、SiOv (0<v≦2)あるいはLiSiOなどが挙げられる。
【0030】
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を有するものが挙げられる。スズの化合物としては、例えば、酸素あるいは炭素を有するものが挙げられ、スズに加えて、上記した第2の構成元素を有していてもよい。スズの合金あるいは化合物の一例としては、SnOw (0<w≦2)、SnSiO3 、LiSnOあるいはMg2 Snなどが挙げられる。
【0031】
特に、ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を有する負極材料としては、例えば、スズを第1の構成元素とし、それに加えて第2および第3の構成元素を有するものが好ましい。第2の構成元素は、コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム(V)、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、銀、インジウム、セリウム(Ce)、ハフニウム、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマスおよびケイ素からなる群のうちの少なくとも1種である。第3の構成元素は、ホウ素、炭素、アルミニウムおよびリン(P)からなる群のうちの少なくとも1種である。これらの第2および第3の構成元素を有することにより、優れたサイクル特性が得られるからである。
【0032】
中でも、スズ、コバルトおよび炭素を構成元素として有し、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下であり、スズおよびコバルトの合計に対するコバルトの割合(Co/(Sn+Co))が30質量%以上70質量%以下であるSnCoC含有材料が好ましい。このような組成範囲において、高いエネルギー密度および高いサイクル特性が得られるからである。
【0033】
このSnCoC含有材料は、必要に応じて、さらに他の構成元素を有していてもよい。この他の構成元素としては、例えば、ケイ素、鉄、ニッケル、クロム、インジウム、ニオブ、ゲルマニウム、チタン、モリブデン、アルミニウム、リン、ガリウムあるいはビスマスなどが好ましく、それらの2種以上を有していてもよい。エネルギー密度およびサイクル特性がより向上するからである。
【0034】
なお、SnCoC含有材料は、スズ、コバルトおよび炭素を含む相を有しており、その相は、低結晶性あるいは非晶質な相であるのが好ましい。この相は、リチウムと反応可能な反応相であり、これによって優れたサイクル特性が得られるようになっている。この相のX線回折によって得られる回折ピークの半値幅は、特定X線としてCuKα線を用い、挿引速度を1°/minとした場合に、回折角2θで1.0°以上であることが好ましい。リチウムがより円滑に吸蔵および放出され、しかも電解液を備えた二次電池などの電気化学デバイスに負極が用いられた場合に、電解液との反応性が低減されるからである。
【0035】
X線回折によって得られた回折ピークがリチウムと反応可能な反応相に対応するものであるか否かは、リチウムとの電気化学的反応の前後におけるX線回折チャートを比較することによって容易に判断することができる。例えば、リチウムとの電気化学的反応の前後において回折ピークの位置が変化すれば、リチウムと反応可能な反応相に対応するものである。この場合には、例えば、低結晶性あるいは非晶質な反応相の回折ピークが2θ=20°〜50°の間に見られる。この低結晶性あるいは非晶質な反応相は、例えば、上記した各構成元素を含んでおり、主に、炭素によって低結晶化あるいは非晶質化しているものと考えられる。
【0036】
なお、SnCoC含有材料は、低結晶性あるいは非晶質な相に加えて、各構成元素の単体あるいは一部を含む相を有している場合もある。
【0037】
特に、SnCoC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素あるいは半金属元素と結合しているのが好ましい。スズなどの凝集あるいは結晶化が抑制されるからである。
【0038】
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。このXPSは、軟X線(市販の装置ではAl−Kα線か、Mg−Kα線を用いる)を試料表面に照射し、試料表面から飛び出してくる光電子の運動エネルギーを測定することによって、試料表面から数nmの領域の元素組成、および元素の結合状態を調べる方法である。
【0039】
元素の内殻軌道電子の束縛エネルギーは、第1近似的には、元素上の電荷密度と相関して変化する。例えば、炭素元素の電荷密度が近傍に存在する元素との相互作用によって減少した場合には、2p電子などの外殻電子が減少しているので、炭素元素の1s電子は殻から強い束縛力を受けることになる。すなわち、元素の電荷密度が減少すると、束縛エネルギーは高くなる。XPSでは、束縛エネルギーが高くなると、高いエネルギー領域にピークはシフトするようになっている。
【0040】
XPSにおいて、炭素の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素よりも陽性な元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、SnCoC含有材料に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素あるいは半金属元素と結合している場合には、SnCoC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる。
【0041】
なお、XPS測定を行う場合には、表面が表面汚染炭素で覆われている際に、XPS装置に付属のアルゴンイオン銃で表面を軽くスパッタするのが好ましい。また、測定対象のSnCoC含有材料を有する負極が電解液を備えた二次電池などの電気化学デバイスの中に存在する場合には、電気化学デバイスを解体して負極を取り出したのち、炭酸ジメチルなどの揮発性溶媒で洗浄するとよい。負極表面に存在する揮発性の低い溶媒と電解質塩とを除去するためである。これらのサンプリングは、不活性雰囲気下で行うのが好ましい。
【0042】
また、XPS測定では、スペクトルのエネルギー軸の補正に、例えばC1sのピークを用いる。通常、物質表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。なお、XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、SnCoC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
【0043】
このSnCoC含有材料は、例えば、各構成元素の原料を混合した混合物を電気炉、高周波誘導炉あるいはアーク溶解炉などで溶解させたのち、凝固させる方法によって形成可能である。また、ガスアトマイズあるいは水アトマイズなどの各種アトマイズ法や、各種ロール法や、メカニカルアロイング法あるいはメカニカルミリング法などのメカノケミカル反応を利用した方法などを用いてもよい。中でも、メカノケミカル反応を利用した方法が好ましい。SnCoC含有材料が低結晶性あるいは非晶質な構造になるからである。メカノケミカル反応を利用した方法では、例えば、遊星ボールミルやアトライタなどの製造装置を用いることができる。
【0044】
原料には、各構成元素の単体を混合して用いてもよいが、炭素以外の構成元素の一部については合金を用いるのが好ましい。このような合金に炭素を加えてメカニカルアロイング法を利用した方法によって合成することにより、低結晶性あるいは非晶質な構造が得られ、反応時間も短縮されるからである。なお、原料の形態は、粉体であってもよいし、塊状であってもよい。
【0045】
このSnCoC含有材料の他、スズ、コバルト、鉄および炭素を構成元素として有するSnCoFeC含有材料も好ましい。このSnCoFeC含有材料の組成は、任意に設定可能である。例えば、鉄の含有量を少なめに設定する場合の組成としては、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下、鉄の含有量が0.3質量%以上5.9重量%以下、スズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合(Co/(Sn+Co))が30質量%以上70質量%以下であるのが好ましい。また、例えば、鉄の含有量を多めに設定する場合の組成としては、炭素の含有量が11.9質量%以上29.7質量%以下、スズとコバルトと鉄との合計に対するコバルトと鉄との合計の割合((Co+Fe)/(Sn+Co+Fe))が26.4質量%以上48.5質量%以下、コバルトと鉄との合計に対するコバルトの割合(Co/(Co+Fe))が9.9質量%以上79.5質量%以下であるのが好ましい。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られるからである。このSnCoFeC含有材料の結晶性、元素の結合状態の測定方法、および形成方法などについては、上記したSnCoC含有材料と同様である。
【0046】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料として、ケイ素の単体、合金あるいは化合物や、スズの単体、合金あるいは化合物や、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料を用いた負極活物質層22Bは、例えば、気相法、液相法、溶射法、塗布法あるいは焼成法、またはそれらの2種以上の方法を用いて形成される。この場合には、負極集電体22Aと負極活物質層22Bとが界面の少なくとも一部において合金化しているのが好ましい。詳細には、両者の界面において、負極集電体22Aの構成元素が負極活物質層22Bに拡散していてもよいし、負極活物質層22Bの構成元素が負極集電体22Aに拡散していてもよいし、それらの構成元素が互いに拡散し合っていてもよい。充放電時における負極活物質層22Bの膨張および収縮に起因する破壊が抑制されると共に、負極集電体22Aと負極活物質層22Bとの間の電子伝導性が向上するからである。
【0047】
なお、気相法としては、例えば、物理堆積法あるいは化学堆積法、具体的には真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長(Chemical Vapor Deposition :CVD)法あるいはプラズマ化学気相成長法などが挙げられる。液相法としては、電解鍍金あるいは無電解鍍金などの公知の手法を用いることができる。塗布法とは、例えば、粒子状の負極活物質を結着剤などと混合したのち、溶剤に分散させて塗布する方法である。焼成法とは、例えば、塗布法によって塗布したのち、結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼成法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法あるいはホットプレス焼成法が挙げられる。
【0048】
上記した他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、炭素材料が挙げられる。この炭素材料とは、例えば、易黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛などである。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭あるいはカーボンブラック類などがある。このコークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどが含まれる。有機高分子化合物焼成体とは、フェノール樹脂やフラン樹脂などを適当な温度で焼成して炭素化したものである。炭素材料は電極反応物質の吸蔵および放出に伴う結晶構造の変化が非常に少ないため、例えば、他の負極材料と一緒に用いることにより、高いエネルギー密度が得られると共に、負極が二次電池などの電気化学デバイスに用いられた場合に優れたサイクル特性も得られ、さらに導電剤としても機能するので好ましい。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状あるいは鱗片状のいずれでもよい。
【0049】
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な金属酸化物あるいは高分子化合物なども挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムあるいは酸化モリブデンなどが挙げられ、高分子化合物としては、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
【0050】
もちろん、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記した一連の負極材料を任意の組み合わせで2種類以上混合してもよい。
【0051】
なお、正極21および負極22の結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンなどの合成ゴムや、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。ただし、図1に示したように、正極21および負極22が巻回されている場合には、柔軟性に富むスチレンブタジエン系ゴムあるいはフッ素系ゴムなどを用いることが好ましい。
【0052】
また、正極21および負極22の導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラックあるいはケッチェンブラックなどの炭素材料が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種が混合されて用いられてもよい。なお、導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などであってもよい。
【0053】
この二次電池では、正極活物質と負極活物質との間で量を調整することにより、正極活物質による充電容量よりも負極活物質の充電容量の方が大きくなっている。これにより、完全充電時においても負極22にリチウム金属が析出しないようになっている。
【0054】
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながら電極反応物質のイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂からなる多孔質膜や、セラミックからなる多孔質膜などにより構成されており、これらの2種以上の多孔質膜が積層されたものであってもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜は、短絡防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による二次電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、100℃以上160℃以下でシャットダウン効果を得ることができると共に、電気化学的安定性が優れているので好ましい。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも化学的安定性を備えた樹脂であれば、ポリエチレンあるいはポリプロピレンと共重合させたものや、ブレンド化したものであってもよい。
【0055】
このセパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液は、溶媒と、それに溶解された電解質塩とを含んでいる。
【0056】
電解液に含まれる溶媒としては、各種の高誘電率溶媒および低粘度溶媒を用いることができる。例えば高誘電率溶媒としては、エチレンカーボネートのほか、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(フルオロエチレンカーボネート)、4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(クロロエチレンカーボネート)、およびトリフルオロメチルエチレンカーボネートなどの環状カーボネートが好適に用いられる。高誘電率溶媒としては、上記のような環状カーボネートの代わりに、またはこれと併用して、γ−ブチロラクトン,γ−バレロラクトン,δ−バレロラクトンもしくはε−カプロラクトンなどのラクトン、N−メチルピロリドンなどのラクタム、N−メチルオキサゾリジノンなどの環状カルバミン酸エステル、テトラメチレンスルホンなどのスルホン化合物なども使用可能である。一方、低粘度溶媒としては、ジエチルカーボネートのほか、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびメチルプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチルおよびトリメチル酢酸エチルなどの鎖状カルボン酸エステル、N,N−ジメチルアセトアミドなどの鎖状アミド、N,N−ジエチルカルバミン酸メチルおよびN,N−ジエチルカルバミン酸エチル等の鎖状カルバミン酸エステル、ならびに1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランおよび1,3−ジオキソランなどのエーテルを用いることができる。
【0057】
なお、溶媒としては、上述の高誘電率溶媒および低粘度溶媒のうちの1種を単独で、またが2種以上を任意に混合して用いることができるが、20〜50質量%の環状カーボネートと50〜80質量%の低粘度溶媒とを含むものが好ましく、特に低粘度溶媒として、沸点が130℃以下の鎖状カーボネートを含むものが好ましい。このような溶媒を用いることにより、少量の電解液で、高分子化合物を良好に膨潤させることができ、電池の膨れ抑制や漏れ防止と高いイオン伝導性との両立を図ることができる。ここで、電解液を占める低粘度溶媒の含有率が高すぎると誘電率の低下を招くこととなり、低粘度溶媒の含有率が低すぎると粘度の低下を招くこととなり、いずれの場合においても十分なイオン伝導度が得られず、良好な電池特性が得られなくなるおそれがある。
【0058】
電解質塩としては、溶媒に溶解してイオンを生ずるものであればいずれを用いてもよく、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。例えばリチウム塩であれば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 )、六フッ化アンチモン酸リチウム(LiSbF6 )、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、四塩化アルミニウム酸リチウム(LiAlCl4 )等の無機リチウム塩や、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド(LiN(CF3 SO2
2 )、リチウムビス(ペンタフルオロメタンスルホン)イミド(LiN(C2 5 SO2 2 )、およびリチウムトリス(トリフルオロメタンスルホン)メチド(LiC(CF3 SO2 3 )などのパーフルオロアルカンスルホン酸誘導体のリチウム塩などが使用可能である。なかでも、六フッ化リン酸リチウムや四フッ化ホウ酸リチウムは、酸化安定性の点から好ましい。
【0059】
電解質塩の含有量は、溶媒に対して0.3mol/kg以上3.0mol/kg以下であるのが好ましい。このような範囲においてより高いイオン伝導性を得ることができるからである。
【0060】
なお、電解液は、溶媒および電解質塩と共に、各種の添加剤を含んでいてもよい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。
【0061】
この添加剤としては、例えば、スルトン(環状スルホン酸エステル)が挙げられる。このスルトンは、例えば、プロパンスルトンあるいはプロペンスルトンなどであり、中でも、プロペンスルトンが好ましい。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
【0062】
また、添加剤としては、例えば、酸無水物が挙げられる。この酸無水物は、例えば、コハク酸無水物、グルタル酸無水物あるいはマレイン酸無水物などのカルボン酸無水物や、エタンジスルホン酸無水物あるいはプロパンジスルホン酸無水物などのジスルホン酸無水物や、スルホ安息香酸無水物、スルホプロピオン酸無水物あるいはスルホ酪酸無水物などのカルボン酸とスルホン酸との無水物などであり、中でも、スルホ安息香酸無水物あるいはスルホプロピオン酸無水物が好ましい。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
【0063】
この二次電池は、例えば、以下の手順により製造される。
【0064】
まず、正極21を作製する。具体的には、正極活物質と、結着剤と、導電剤とを混合して正極合剤としたのち、有機溶剤に分散させることによりペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、ドクタブレードあるいはバーコータなどを用いて正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布したのち、乾燥させる。最後に、必要に応じて加熱しながらロールプレス機などを用いて圧縮成型することにより、正極活物質層21Bを形成する。この場合には、圧縮成型を複数回に渡って繰り返してもよい。
【0065】
次に、負極22を作製する。具体的には、例えば負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤としたのち、有機溶剤に分散させることによりペースト状の負極合剤スラリーとする。こののち、負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布して乾燥させたのちに圧縮成型することにより、負極活物質層22Bを形成する。ここで、ケイ素やスズ、またはリチウムを含む負極活物質によって負極活物質層22Bを形成する場合には、必要に応じて圧縮成型やアニール処理を行うなどして負極集電体22Aと負極活物質層22Bとの密着性を向上させることが望ましい。こうすることで負極集電体22Aからの負極活物質層22Bの剥離を抑制し、良好なサイクル特性が得られるからである。
【0066】
あるいは、ケイ素あるいはスズを構成元素として含む負極活物質を含む負極活物質層22Bを形成する場合、気相法、液相法、溶射法あるいは焼成法、またはそれらの2種以上の方法を任意に用いるようにしてもよい。なお、気相法としては、例えば、物理堆積法あるいは化学堆積法、具体的には真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition )法あるいはプラズマ化学気相成長法などが挙げられる。液相法としては、電気鍍金あるいは無電解鍍金などの公知の手法を用いることができる。焼成法とは、例えば、粒子状の負極活物質を結着剤などと混合して溶剤に分散させることにより塗布したのち、結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼成法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法あるいはホットプレス焼成法が挙げられる。
【0067】
次に、正極集電体21Aおよび負極集電体22Aの所定位置にそれぞれ正極リード24および負極リード25を溶接などにより取り付ける。続いて、正極21および負極22を、セパレータ23を間にして積層し、複数回巻回したのち成形することで扁平な形状の電池素子20を得る。
【0068】
その一方で、対向板1A,1Bに第1および第2の凹部3,4が設けられた外装缶11を用意する。具体的には、レーザ照射、電子ビーム照、切削加工、あるいはプレス処理などによって対向板1A,1Bの外面に第1および第2の凹部3,4を作製する。
【0069】
最後に、以下のようにして二次電池の組み立てを行う。まず、第1および第2の凹部3,4が設けられた外装缶11の内部に電池素子20を収納したのち、その電池素子20上に絶縁板12を配置する。続いて、溶接などにより、正極リード24を正極ピン15に接続すると共に負極リード25を外装缶11に接続させたのち、レーザ溶接などにより外装缶11の開放端11Kに電池蓋13を固定する。さらに、注入孔19から外装缶11の内部に電解液を注入してセパレータ23に含浸させたのち、その注入孔19を封止部材19Aで塞ぐ。これにより、図1および図2に示した二次電池が完成する。
【0070】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、セパレータ23に含浸された電解液を介して負極22に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極21に吸蔵される。
【0071】
このように、本実施の形態では、電池素子20を収容する中空角型の外装缶11において、底板11Bの長辺と接続された対向板1A,1Bの外面に、底板11Bに沿って横断する第1の凹部3と、底板11Bから第1の凹部3に至るまで延在する第2の凹部4とを設けるようにしたので、それら第1および第2の凹部3,4が対向板1A,1Bの曲げや歪みを抑制する梁として機能し、外装缶11の厚みの増大を招くことなく優れた機械的強度を得ることができる。したがって、コンパクトな構成でありながら、充電に伴う電池素子20の膨張などに起因する外装缶11の内部圧力が上昇した場合であっても外装缶11の膨れを抑えることができる。よって、電池素子20と外装缶11の内面とのクリアランスをより小さくし、高容量化を図るのに好適となる。
【0072】
(変形例)
以下、上記実施の形態における外装缶11の変形例をいくつか例示する。図6は、本実施の形態における第1の変形例(変形例1)としての外装缶111の、対向板11Aの平面構成を模式的に表すものである。本変形例は、第2の凹部4が、底板11Bから第1の凹部3を突き抜け、さらに開放端11Kまで延在するようにしたものである。
【0073】
図7は、本実施の形態における第2の変形例(変形例2)としての外装缶112の、対向板11Aの平面構成を模式的に表すものである。本変形例は、第2の凹部4が、底板11Bから第1の凹部3を突き抜け、さらに開放端11Kに至る途中まで延在するようにしたものである。すなわち、第2の凹部4における底板11Bと反対側の端部が、開放端11Kから離れた状態となっている。
【0074】
図8は、本実施の形態における第3の変形例(変形例3)としての外装缶113の、対向板11Aの平面構成を模式的に表すものである。本変形例は、2本の第2の凹部4A,4Bを設けるようにしたものである。なお、第2の凹部を、3本以上設けるようにしてもよい。
【0075】
上記各変形例においても、上記実施の形態と同様の効果が得られる。
【実施例】
【0076】
続いて、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
【0077】
(実験例1−1)
上記実施の形態で説明した図1および図2に対応する二次電池を作製した。まず、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを、Li2 CO3:CoCO3=0.5:1(モル比)の割合で混合し、空気中において900℃で5時間焼成して、正極活物質としてのリチウム・コバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。次いで、このリチウム・コバルト複合酸化物91質量部と、導電剤であるグラファイト6質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して正極合剤を調整した。続いて、この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとし、厚み15μmのアルミニウム合金箔よりなる正極集電体21Aの両面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して厚み145μmの正極活物質層21Bを形成し正極21を作製した。続いて、正極露出領域21DSにおける正極集電体21Aの一端にアルミニウム製の正極リード24を溶接により取り付けた。
【0078】
次に、負極22を作製した。具体的には、電解銅箔からなる負極集電体22Aの両面に、電子ビーム蒸着法により例えば4原子数%の酸素を含む非晶質のケイ素薄膜を5μmの厚みとなるように蒸着したのち、アルゴン雰囲気中において250℃の温度下で12時間に亘る熱処理を行うことで負極活物質層22Bを形成した。ここでは、電解銅箔として、15μmの厚みを有すると共に、表面粗度がRa値で3.5μmのものを用いた。さらに、負極露出領域22DEにおける負極集電体21Aの一端に、ニッケル製の負極リード25を溶接により取り付けた。
【0079】
正極21および負極22を作製する一方で、第1の凹部3および第2の凹部4を有する外装缶11を用意した。外装缶11としては、外形寸法が高さ36mm、幅33mm、厚み5.5mmのものを用いた。高さとは底板11Bと直交する方向(X軸方向)の寸法をいい、幅とは対向板1A,1Bの延在する面において高さ方向と直交する方向(Y軸方向)の寸法をいい、厚みとは底板11Bおよび対向板1A,1Bの双方と直交する方向(Z軸方向)の寸法をいう。第1および第2の凹部3,4は、レーザ照射により、図9に示した位置に、1mmの幅(ここでの幅は、各々の延在する方向と直交する方向の寸法を意味する)、および0.09mmの最大深さとなるように形成した。すなわち、第1の凹部3を、高さ方向における中心位置を横切る(幅方向に延在する)ように形成し、第2の凹部4を、幅方向の中心位置において高さ方向に延在して第1の凹部3と底板11Bとを繋ぐように形成した。なお、図9は、図3に示した矢印IIIの方向から眺めた外装缶11の平面図である。
【0080】
続いて、厚み16μmの微孔性ポリエチレンフィルムよりなるセパレータ23を用意し、正極21,セパレータ23,負極22,セパレータ23の順に積層して積層体を形成したのち、この積層体を20回巻回して加圧成形することにより扁平な形状の電池素子20を作製した。
【0081】
さらに、電池素子20を外装缶11の内部に収容したのち、電池素子20の上に絶縁板12を配置し、負極リード25を外装缶11に溶接すると共に、正極リード24を正極ピン15の下端に溶接して、外装缶11の開放端部に電池蓋13をレーザ溶接により固定した。そののち、注入孔19から外装缶11の内部に電解液を注入した。電解液には、炭酸エチレン30体積%と炭酸ジエチル70体積%とを混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を1mol/dm3 の濃度で溶解させたものを用いた。最後に、注入孔19を封止部材19Aで塞ぐことにより、角型の二次電池を得た。この二次電池については、負極22の充放電容量が正極21の充放電容量よりも大きくなるように正極活物質層21Bの厚みを調節することにより、満充電時において負極22にリチウム金属が析出しないようにした。
【0082】
実験例1−2〜1−7として、第1および第2の凹部3,4をそれぞれ図10〜図15に示した位置に設けるようにしたことを除き、他は実験例1−1と同様にして二次電池を作製した。また、実験例1−8として、第2の凹部4を設けずに2つの第1の凹部3A,3Bのみを図16に示した位置に設けるようにしたことを除き、他は実験例1−1と同様にして二次電池を作製した。
【0083】
また、実験例1−9として、負極活物質層22Bを以下のようにして形成すると共に第1および第2の凹部3,4を図11に示した位置に設けるようにしたことを除き、他は実験例1−1と同様にして二次電池を作製した。負極活物質層22Bについては、負極集電体22Aの両面に、電子ビーム蒸着法によりスズ薄膜を5μmの厚みとなるように蒸着したのち、アルゴン雰囲気中において250℃の温度下で12時間に亘る熱処理を行うことで得た。
【0084】
また、実験例1−10として、負極活物質層22Bを以下のようにして形成すると共に第1および第2の凹部3,4を図11に示した位置に設けるようにしたことを除き、他は実験例1−1と同様にして二次電池を作製した。負極活物質層22Bについては以下のように作製した。まず、負極活物質としての平均粒子径2μmのケイ素粉末と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)を溶媒とするポリアミック酸溶液とを80:20の質量比で混合したのち、さらにNMPで希釈することにより負極合剤スラリーを得た。次いで、得られた負極合剤スラリーを、負極集電体22Aの負極被覆領域22Cに均一に塗布し乾燥させた。こののち、真空雰囲気中で6時間に亘る550℃の加熱処理を行うことで、焼結したケイ素を負極活物質として含み、かつ、ポリイミドを結着剤として含む負極活物質層22Bを得た。
【0085】
さらに、実験例1−11〜1−13として、第1および第2の凹部3,4を外装缶11に設けなかったことを除き、他は実験例1−1,1−9,1−10とそれぞれ同様にして二次電池を作製した。
【0086】
得られた各実験例の二次電池について、まず、以下のようにして初回充放電処理を実施した。すなわち、0.2Cの電流密度を維持しつつ電池電圧が4.25Vに達するまで定電流充電を行ったのち、4.25Vの定電圧で定電圧充電を行い、電流密度が0.01Cに達した時点で停止した。引き続き、電流密度0.2Cを一定に維持しつつ、電池電圧が2.7Vに至るまで定電流放電を行った。ここで、「0.2C」とは理論容量を5時間で放電しきる電流密度であり、「0.01C」とは理論容量を100時間で放電しきる電流密度である。
【0087】
初回充放電処理が終了した各実験例の二次電池について、さらに以下のようにして充放電サイクル処理を実施した。すなわち、充電については、1Cの電流密度を維持しつつ電池電圧が4.2Vに達するまで定電流充電を行ったのち、4.2Vの定電圧で定電圧充電を行い、電流密度が0.05Cに達した時点で停止した。放電については、1Cの電流密度を一定に維持しつつ、電池電圧が電池電圧が2.7Vに至るまで定電流放電を行った。この充電と放電との組み合わせを1サイクルとして100サイクルの充放電を繰り返して行った。ここで、「1C」とは理論容量を1時間で放電しきる電流密度であり、「0.05C」とは理論容量を20時間で放電しきる電流密度である。
【0088】
上記のようにして充放電サイクル処理を行った各実験例の二次電池について、厚みの測定を行った。ここでは、平行に対向した2枚のフェノール樹脂からなる板(ベークライト板)で二次電池を挟んでその厚みの最大値を求め、当初の厚み5.5mmに対する変化率(充放電サイクル後の厚みの増分/当初の厚み)を算出した。その結果を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
表1に示したように、電子ビーム蒸着法によって形成したケイ素薄膜を負極活物質とした実験例1−1〜1−3では、実験例1−4〜1−8,1−11に比べて厚みの変化率を著しく低減することができた。また、負極活物質が異なる実験例1−9,1−10においても、実験例1−3と比較してほぼ同等の厚みの変化率が得られた。したがって、本発明の電池は、より効果的に外装缶の膨れを抑制でき、さらなる高容量化に適したものであることが確認できた。
【0091】
(実験例2−1〜2−5)
次に、図17に示した第1および第2の凹部3,4の位置、すなわち、端縁からの距離A,Bを表2に示したように変化させたことを除き、他は実験例1−3と同様にして二次電池を作製した。これらの実験例2−1〜2−5についても同様に初回充放電処理および充放電サイクル処理を実施したのち、厚みの測定を行い、変化率を算出した。その結果を表2に示す。
【0092】
【表2】

【0093】
表2に示したように、第1の凹部3と第2の凹部4とが対向板1Aの中心位置において互いに交差する場合に最も厚みの変化率を低減可能であることがわかった。
【0094】
(実験例3−1〜3−6,4−1〜4−4)
次に、第1および第2の凹部3,4の幅(各々の延在する方向と直交する方向の寸法)を表3に示したように変化させたことを除き、他は実験例1−3と同様にして二次電池を作製した。さらに、第1および第2の凹部3,4の最大深さを表4に示したように変化させたことを除き、他は実験例1−3と同様にして二次電池を作製した。これらの実験例3−1〜3−6,4−1〜4−4についても同様にして初回充放電処理および充放電サイクル処理を実施したのち、厚みの測定を行い、変化率を算出した。その結果を表3,4にそれぞれ示す。
【0095】
【表3】

【0096】
【表4】

【0097】
表3,4に示したように、第1および第2の凹部3,4の寸法によっても厚みの変化率が異なることがわかった。
【0098】
なお、上記実施例では、負極活物質として、ケイ素の単体およびスズの単体を用いた場合について例示したが、上記実施の形態において挙げたケイ素の合金および化合物、ならびにスズの合金および化合物を負極活物質として用いた場合においても、上記実施例と同様の傾向がみられることを確認した。
【0099】
以上、いくつかの実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、液状の電解液をそのまま電解質として使用する場合について説明したが、電解液を高分子化合物に保持させたゲル状電解質を用いることもできる。あるいは、他の種類の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、例えば、イオン伝導性セラミックス、イオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などのイオン伝導性無機化合物と電解液とを混合したものや、他の無機化合物と電解液とを混合したものや、これらの無機化合物とゲル状電解質とを混合したものなどが挙げられる。
【0100】
さらに、上記実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの長周期型周期表における他の1族の元素、またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などの長周期型周期表における2族の元素、またはアルミニウムなどの他の軽金属、またはリチウムあるいはこれらの合金を用いる場合についても、本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。その際、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な負極活物質、正極活物質あるいは溶媒などは、その電極反応物質に応じて選択される。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明における一実施の形態としての二次電池の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した二次電池のII−II線に沿った構成を表す断面図である。
【図3】図1に示した二次電池の外装缶の外観を表す斜視図である。
【図4】図1に示した正極を展開した断面図である。
【図5】図1に示した負極を展開した断面図である。
【図6】図1に示した二次電池における第1の変形例としての外装缶の構成を表す平面図である。
【図7】図1に示した二次電池における第2の変形例としての外装缶の構成を表す平面図である。
【図8】図1に示した二次電池における第3の変形例としての外装缶の構成を表す平面図である。
【図9】本発明の実験例(実験例1−1)としての二次電池における外装缶の構成を表す平面図である。
【図10】本発明の実験例(実験例1−2)としての二次電池における外装缶の構成を表す平面図である。
【図11】本発明の実験例(実験例1−3)としての二次電池における外装缶の構成を表す平面図である。
【図12】本発明の実験例(実験例1−4)としての二次電池における外装缶の構成を表す平面図である。
【図13】本発明の実験例(実験例1−5)としての二次電池における外装缶の構成を表す平面図である。
【図14】本発明の実験例(実験例1−6)としての二次電池における外装缶の構成を表す平面図である。
【図15】本発明の実験例(実験例1−7)としての二次電池における外装缶の構成を表す平面図である。
【図16】本発明の実験例(実験例1−8)としての二次電池における外装缶の構成を表す平面図である。
【図17】本発明の実験例(実験例2−1〜2−5)としての二次電池における外装缶の構成を表す平面図である。
【符号の説明】
【0102】
11…外装缶、1A,1B…対向板、11B…底板、11K…開放端、2…側板、3…第1の凹部、4…第2の凹部、12…絶縁板、13…電池蓋、14…端子板、15…正極ピン、16…絶縁ケース、17…ガスケット、18…開裂弁、19…注入孔、19A…封止部材、20…電池素子、21…正極、21A…正極集電体、21B…正極活物質層、22…負極、22A…負極集電体、22B…負極活物質層、23…セパレータ、24…正極リード、25…負極リード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極を有する電池素子と、前記電池素子を収容する中空角型の外装缶とを備え、
前記外装缶は、
矩形状の底板と、
前記底板の長辺とそれぞれ接続されて互いに対向する一対の対向板と、
前記底板の短辺とそれぞれ接続されて互いに対向し、前記底板と反対側の端縁が前記一対の対向板における前記底板と反対側の端縁と共に開放端を構成する一対の側板と
を含み、
前記一対の対向板が、その外面に、
前記底板に沿った方向において横断する第1の凹部と、
前記底板との接続部から少なくとも前記第1の凹部に至るまで延在する第2の凹部とを含む
電池。
【請求項2】
前記第2の凹部が、前記底板との接続部から前記開放端に至るまで延在する請求項1記載の電池。
【請求項3】
前記第1の凹部が、前記底板と前記開放端との中間位置において前記底板と平行に延在する請求項1記載の電池。
【請求項4】
前記第2の凹部が、前記底板と平行な方向における中間位置において前記底板と垂直に延在する請求項1記載の電池。
【請求項5】
前記負極は、活物質としてケイ素(Si)の単体、合金および化合物、ならびにスズ(Sn)の単体、合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含む請求項1記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−80203(P2010−80203A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246042(P2008−246042)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】