説明

電波伝播損失測定システム

【課題】無線親局装置と無線子局装置の間の電波伝播損失値を求める。
【解決手段】無線親局装置信号重畳部13は、無線親局装置信号1Sの送信のタイミングTMを示す信号を主信号1Mに重畳する。データ記憶部17は、送信レベルSLとタイミングTMとを対応づけて記憶する。受信レベル検出部23は、無線親局装置信号1Sの受信レベルRLを検出する。無線親局装置信号解析部25は、タイミング信号1Tを復調する。無線子局装置信号重畳部27は、受信レベルRLおよびタイミング信号1Tを主信号2Mに重畳する。無線子局装置信号解析部18は、無線子局装置信号2Sから受信レベルRLおよびタイミング信号1Tを復調する。レベル比較部1Aは、タイミング信号1Tにより示されるタイミングTMに対応づけられた送信レベルSLをデータ記憶部17から読み出し、送信レベルSLと受信レベルRLとの比である電波伝播損失値LOSSを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線親局装置と無線子局装置の間の電波伝播損失値を求めることができる電波伝播損失測定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅やオフィス等の屋内への侵入犯罪の増加に伴い、宅内への侵入や室内での人の動きを検知する人感センサの需要が高まっている。このような人感センサの従来技術には、赤外線を用いたセンサや、モニタ画像を用いた検知技術、電磁波を用いた検知技術などが存在する。
【0003】
赤外線センサには、赤外線の送受信経路に人や動く物体が入った場合の受信強度の変化を検知するものや、人が発する熱による赤外線を直接感知するものがある。前者の赤外線センサは、送受信機間の限られた範囲しか検知が出来ないため、広範囲の検知を行うためには多数の送受信機を設置する必要がある。また、後者の赤外線センサは、熱による感知であるため、周囲の温度条件により感度が変動し、高温下では誤動作する可能性が高い(非特許文献1参照)。
【0004】
モニタ画像による検知技術は、一般にテレビカメラが撮影した画像をもとに、その画面上での動体の検知を行うものである。例えば、現画像フレームと前画像フレームの差分を解析し、その差分値の変化から、人などの移動物体を検知することができる。画像センサは、テレビカメラ等の機器を用いるため設備コストが高く、また屋内を継続的に撮影するような場合には、プライバシーにかかわる場所での画像撮影に心理的な抵抗感を持たれることが多い。また、赤外線を用いる場合と同じく、死角となる場所では全く動作の検知ができないため、広範囲で死角を無くすためには異なる位置から多数のカメラで監視を行う必要がある(非特許文献2参照)。
【0005】
電磁波を利用した検知技術には、電磁波を発生する手段と受信手段とを組み合わせて用いるアクティブ型のセンサ技術と、電磁波源としては既存の電磁波を用いるパッシブ型のセンサ技術がある。アクティブ型のセンサは主にレーダの原理を利用し、送信装置から放射した特定の波長、振幅の電磁波が、周囲の物体で反射されて戻ってくる状態を受信装置でモニタし、その状態の変化により人や動体を検知するものである。アクティブ型センサは、検知感度が高く、ドップラー効果を利用したFM−CWレーザなどでは動体の移動速度を検知することも可能であるが、特別な電磁波の送信装置が必要となり、周囲の電子機器等に妨害を与えないような配慮が必要となる(非特許文献3参照)。
【0006】
一方のパッシブ型センサは、テレビ、ラジオなどの放送波や、携帯電話基地局、無線LANのアクセスポイント(親機)の発する電磁波など、環境に存在する既存の電磁波を利用するものである。
【0007】
特定の電磁波源からの信号を室内で受信する場合、その電磁波は複数の経路を通って受信アンテナに到達する。受信時の電界強度は、これらの複数の電磁波が干渉(マルチパス干渉)した結果として定まる値となる。受信機のある室内の物理的な状態が時間的に全く変化していなければ、この受信電界強度は一定である。一方、室内で人などの電磁波を反射、吸収する物体が動いている場合、マルチパス干渉の状態が変化し、受信電界強度が変動して、室内に動体があることが検知される(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、非特許文献4参照)。
【0008】
パッシブ型センサは、既存の電磁波を用いて簡易な装置で人感検知ができ、また電磁波の回折性により見通し外の部分まで検知が可能であるため、赤外線センサ等と比べて広い検知範囲を有する。また、検知感度が環境の温度に依存せず、室温と全く同温の物体の動きも感知が可能である。一方で、既存の電磁波を利用し、その振幅変動により動体の検知を行う仕組みであるため、電磁波信号源としてはFM変調波などの振幅変調成分の無い信号を用いる必要があった。
【0009】
上記のように、電磁波を用いたパッシブ型の人感センサは、既存の電磁波を信号源としてその受信強度の変動で動体を検知することを基本としているため、振幅変調成分のある信号をそのまま用いることが出来ないという問題点があった(特許文献1、特許文献3、特許文献4参照)。
【0010】
一方、無線LANのアクセスポイントなど、あらかじめ通信に使用していたり、無線伝送方式がはっきりしていて、変調方式などが把握できている電磁波送信源については、通信時の符号誤り率の定常時からの変動を利用して侵入者の検知を行う方法(特許文献2参照)や、スペクトル拡散方式を使用して、あらかじめ分かっている拡散符号との相関ピーク信号の状態変化を利用して侵入者の検知を行う方法(特許文献5参照)が考案されている。
【0011】
しかしながら、これらはいずれも素性が把握できている既知の信号源を使用する必要があり、適用できる電磁波信号源が限定されるという問題点があった。
【0012】
また、例えば無線LANの制御信号であるビーコン信号など、あらかじめ分かっている特定の時間に同振幅が繰り返される信号を用いて、受信後に信号処理を行うことによって検知する方法(特許文献6参照)が考案されているが、このような適当な制御信号等が存在しない電磁波信号源もあり、やはり一般的な解決方法にはならないという問題点があった。
【0013】
なお、変調方式などの信号源の素性があらかじめ把握できている場合には、あらかじめ人などの動体が存在しない状態で、電界強度の時間波形やその周波数スペクトル、マルチパスの伝達関数などを観測し、これを基準値として保存した後、これらの観測値がその基準値とある程度異なった場合に、それを人の侵入などとして検知する方法が考案されている(特許文献7〜特許文献12参照)。
【0014】
またこれとは逆に、人が侵入し動いている時の信号レベルの変動パターンを基準パターンとして記憶しておき、観測された変動パターンがこの基準パターンにある程度一致した時に、人の侵入として検知する方法もある(特許文献13参照)。
【0015】
これらの、あらかじめ基準値や基準パターンを記憶、保存しておき、観測データをこれと照らし合わせて判定する方法には、上述のように電磁波信号源が限定されることに加え、装置を設置したり移設する度毎にこれらの基準を記憶、保存するための初期化手続きが必要であり、設置、調整が複雑化するという問題点もあった。また、これらの基準情報を蓄積するデータメモリや、信号処理のための回路が必要となり、装置が大掛かりで高価なものになるという問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平6−195573号公報
【特許文献2】特開平7−141577号公報
【特許文献3】特開2006−190053号公報
【特許文献4】特開2008−282347号公報
【特許文献5】特開平9−274077号公報
【特許文献6】特開2009−229318号公報
【特許文献7】特開昭59−24396号公報
【特許文献8】特開平5−166074号公報
【特許文献9】特開平7−115384号公報
【特許文献10】特開平9−180070号公報
【特許文献11】特開平11−308162号公報
【特許文献12】特開2001−229474号公報
【特許文献13】特開2005−338967号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】“焦電型 MPモーションセンサ ナピオン NaPiOn”、パナソニック株式会社、[online]、[平成22年12月1日検索]、インターネット<URL:http://panasonic−denko.co.jp/ac/j/control/sensor/human/napion/index.jsp>
【非特許文献2】“セキュリティカメラシステム”、オムロン株式会社、[online]、[平成22年12月1日検索]、インターネット<URL:http://www.omron−socialsensing.jp/products/cecca.html>
【非特許文献3】“ミリ波レーダ”、三菱電機株式会社、[online]、[平成22年12月1日検索]、インターネット<URL:http://www.mitsubishielectric.co.jp/automotive/products/safety_and_security2/safe04.html>
【非特許文献4】平澤、鈴木、馬杉、秋山、“無線LAN ビーコン信号を用いた侵入者検知方法に関する検討”、信学技報、USN2009−25、Vol. 109、No 131、pp. 153−156、July 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、無線親局装置と無線子局装置の間の電波伝播損失値を求めることができる電波伝播損失測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するために、第1の本発明は、無線親局装置と無線子局装置を含み、前記無線親局装置は、前記無線子局装置に送信する無線親局装置信号を構成する主信号を生成する無線親局装置主信号生成部と、前記無線親局装置信号の送信のタイミングを示すタイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、前記主信号に前記タイミング信号を重畳する無線親局装置信号重畳部と、当該重畳後の主信号である前記無線親局装置信号を送信する一方前記無線子局装置から無線子局装置信号を受信する無線親局装置通信手段と、前記無線親局装置信号の送信時のレベルである送信レベルを検出する送信レベル検出部と、前記送信レベルと前記タイミングとを対応づけて記憶するデータ記憶部と、前記無線子局装置信号に含まれる受信レベルおよびタイミング信号を復調する無線子局装置信号解析部と、当該タイミング信号により示されるタイミングに対応づけられた送信レベルを前記データ記憶部から読み出し、当該送信レベルと前記受信レベルとの比である電波伝播損失値を求めるレベル比較部とを備え、前記無線子局装置は、前記無線親局装置信号の受信時のレベルである受信レベルを検出する受信レベル検出部と、前記無線親局装置信号からタイミング信号を復調する無線親局装置信号解析部と、前記無線子局装置信号を構成する主信号を生成する無線子局装置主信号生成部と、当該主信号に当該受信レベルおよびタイミング信号を重畳する無線子局装置信号重畳部と、前記無線親局装置信号を受信する一方当該重畳後の主信号である前記無線子局装置信号を送信する無線子局装置通信手段とを備えることを特徴とする電波伝播損失測定システムをもって解決手段とする。
【0020】
第2の本発明は、無線親局装置と無線子局装置を含み、前記無線親局装置は、前記無線子局装置に送信する無線親局装置信号を構成する主信号を生成する無線親局装置主信号生成部と、前記無線親局装置信号の送信のタイミングを示すタイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、前記主信号に前記タイミング信号を重畳する無線親局装置信号重畳部と、当該重畳後の主信号である前記無線親局装置信号を送信する一方前記無線子局装置から無線子局装置信号を受信する無線親局装置通信手段と、前記無線親局装置信号の送信時のレベルである送信レベルを検出する送信レベル検出部と、前記送信レベルと前記タイミングとを対応づけて記憶するデータ記憶部と、前記無線子局装置信号に含まれる受信レベル、タイミング信号および無線子局装置識別情報を復調する無線子局装置信号解析部と、当該タイミング信号により示されるタイミングに対応づけられた送信レベルを前記データ記憶部から読み出し、当該送信レベルと前記受信レベルとの比である電波伝播損失値を求め当該無線子局装置識別情報に対応づけて出力するレベル比較部とを備え、前記無線子局装置は、前記無線親局装置信号の受信時のレベルである受信レベルを検出する受信レベル検出部と、前記無線親局装置信号からタイミング信号を復調する無線親局装置信号解析部と、前記無線子局装置信号を構成する主信号を生成する無線子局装置主信号生成部と、当該主信号に当該受信レベル、タイミング信号および無線子局装置の無線子局装置識別情報を重畳する無線子局装置重畳部と、前記無線親局装置信号を受信する一方当該重畳後の主信号である前記無線子局装置信号を送信する無線子局装置通信手段とを備えることを特徴とする電波伝播損失測定システムをもって解決手段とする。
【0021】
第3の本発明は、無線親局装置と無線子局装置を含み、前記無線親局装置は、前記無線子局装置に送信する無線親局装置信号を構成する主信号を生成する無線親局装置主信号生成部と、前記主信号のレベルである送信レベルを検出する送信レベル検出部と、前記主信号に前記送信レベルを重畳する無線親局装置信号重畳部と、当該重畳後の主信号である前記無線親局装置信号を送信する無線親局装置通信手段とを備え、前記無線子局装置は、前記無線親局装置信号を受信する無線子局装置通信手段と、前記無線親局装置信号の受信時のレベルである受信レベルを検出する受信レベル検出部と、前記無線親局装置信号から送信レベルを復調する無線親局装置信号解析部と、前記受信レベルと当該送信レベルの比である電波伝播損失値を求めるレベル比較部とを備えることを特徴とする電波伝播損失測定システムをもって解決手段とする。
【0022】
例えば、第3の本発明において、前記無線子局装置は、前記無線子局装置信号を構成する主信号を生成する無線子局装置主信号生成部と、当該主信号に前記電波伝播損失値を重畳する無線子局装置信号重畳部とを備え、前記無線子局装置通信手段は、当該重畳後の主信号である前記無線子局装置信号を送信するものであり、前記無線親局装置通信手段は、前記無線子局装置信号を受信するものであり、前記無線親局装置は、前記無線子局装置信号から電波伝播損失値を復調する無線子局装置信号解析部を備える。
【0023】
例えば、さらには、前記無線子局装置信号重畳部は、前記無線子局装置信号の主信号に無線子局装置の無線子局装置識別情報を重畳するものであり、前記無線子局装置信号解析部は、前記無線子局装置信号から無線子局装置識別情報を復調し電波伝播損失値を対応づけて出力するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、無線親局装置と無線子局装置の間の電波伝播損失値を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施の形態に係る電波伝播損失測定システムの構成図である。
【図2】第2の実施の形態に係る電波伝播損失測定システムの構成図である。
【図3】第3の実施の形態に係る電波伝播損失測定システムの構成図である。
【図4】第4の実施の形態に係る電波伝播損失測定システムの構成図である。
【図5】第5の実施の形態に係る電波伝播損失測定システムの構成図である。
【図6】各実施の形態の応用例を説明するための補足図である。
【図7】各実施の形態の応用例を説明するための補足図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0027】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る電波伝播損失測定システムの構成図である。
【0028】
電波伝播損失測定システムは、無線親局装置1と無線子局装置2を含む。無線親局装置1は無線親局装置信号1Sを無線子局装置2に送信し、無線子局装置2は無線親局装置信号1Sを受信する。無線子局装置2は無線親局装置信号1Sを受信したら無線子局装置信号2Sを無線親局装置1に送信し、無線親局装置1は無線子局装置信号2Sを受信する。
【0029】
無線親局装置1は、無線親局装置主信号生成部11と、タイミング信号生成部12と、無線親局装置信号重畳部13と、信号分離回路(スプリッタ)14と、アンテナ15と、送信レベル検出部16と、データ記憶部17と、無線子局装置信号解析部18と、主信号受信部19と、レベル比較部1Aと、電波伝播損失値出力部1Bとを備える。
【0030】
無線親局装置主信号生成部11は、無線親局装置信号1Sを構成する主信号1Mを生成するものである。
【0031】
タイミング信号生成部12は、無線親局装置信号1Sの送信のタイミングTMを示すタイミング信号1Tを生成するものである。
【0032】
無線親局装置信号重畳部13は、主信号1Mにタイミング信号1Tを重畳するものである。無線親局装置信号1Sは、タイミング信号1Tの重畳後の主信号である。
【0033】
信号分離回路14は、無線親局装置信号1Sと無線子局装置信号2Sを分離するものである。
【0034】
アンテナ15は、無線親局装置信号1Sを無線子局装置2に向けて空中に放射し、無線子局装置2から空中に向けて放射された無線子局装置信号2Sを受信するものである。 送信レベル検出部16は、無線親局装置信号1Sの送信時のレベルである送信レベルSLを検出するものである。
【0035】
データ記憶部17は、送信レベルSLとタイミングTMとを対応づけて記憶するものである。
【0036】
無線子局装置信号解析部18は、無線子局装置信号2Sに含まれる受信レベルRLおよびタイミング信号1Tを復調するものである。
主信号受信部19は、無線子局装置信号2Sの主信号を受信するものである。
【0037】
レベル比較部1Aは、タイミング信号1Tにより示されるタイミングに対応づけられた送信レベルSLをデータ記憶部17から読み出し、送信レベルSLと受信レベルRLとの比である電波伝播損失値LOSSを求めるものである。
電波伝播損失値出力部1Bは、電波伝播損失値LOSSを外部に出力するものである。
【0038】
無線子局装置2は、アンテナ21と、信号分離回路(スプリッタ)22と、受信レベル検出部23と、主信号受信部24と、無線親局装置信号解析部25と、無線子局装置主信号生成部26と、無線子局装置信号重畳部27とを備える。
【0039】
アンテナ21は、無線親局装置1から無線子局装置2に向けて空中に向けて放射された無線親局装置信号1Sを受信し、無線子局装置信号2Sを無線親局装置1に向けて空中に放射するものである。
【0040】
信号分離回路22は、無線親局装置信号1Sと無線子局装置信号2Sを分離するものである。
【0041】
受信レベル検出部23は、無線親局装置信号1Sの受信時のレベルである受信レベルRLを検出するものである。
【0042】
主信号受信部24は、無線親局装置信号1Sの主信号を受信するものである。
【0043】
無線親局装置信号解析部25は、無線親局装置信号1Sからタイミング信号1Tを復調するものである。
【0044】
無線子局装置主信号生成部26は、無線子局装置信号2Sを構成する主信号2Mを生成するものである。
【0045】
無線子局装置信号重畳部27は、主信号2Mに受信レベルRLおよびタイミング信号1Tを重畳するものである。無線子局装置信号2Sは、受信レベルRLおよびタイミング信号1Tの重畳後の主信号である。
【0046】
(第1の実施の形態の動作)
まず、無線親局装置1では、無線親局装置主信号生成部11が、主信号1Mを生成する。また、タイミング信号生成部12は、タイミング信号1Tを生成する。
【0047】
タイミング信号1Tは、無線親局装置1と無線子局装置2とで一致させた時計やタイマが示す時刻やタイマ値を含み、これにより、無線親局装置信号1Sの送信のタイミングTMを示す構成となっている。または、無線親局装置信号1Sを一定間隔で送信する場合、タイミング信号1Tは、無線親局装置信号1Sの送信順序を示すシーケンス番号を含み、これにより、タイミングTMを示す構成となっている。
【0048】
電波伝播損失値LOSSの計測タイミングを正確に知る場合は時刻やタイマ値が使用される。一方、電波伝播損失値LOSSの変化を時系列に知りたいが、計測タイミングを正確に知る必要がない場合はシーケンス番号が使用される。
【0049】
無線親局装置信号重畳部13は、主信号1Mにタイミング信号1Tを重畳する。
無線親局装置信号重畳部13は、主信号1Mがパケット伝送のためのものである場合、特定のパケットをタイミング信号1Tの転送用パケットとして主信号1Mのパケットと区別し、他の主信号のパケットの間に割り込ませる。無線親局装置信号重畳部13は、このタイミング信号1Tの転送用パケットのヘッダに、そのパケットがタイミング信号1Tの転送用パケットであることを示す情報を書き込む。これにより、無線子局装置側でヘッダの情報を識別することで、タイミング信号1Tの転送用パケットとその他の主信号のパケットを区別することができる。
【0050】
または、無線親局装置信号重畳部13は、例えば主信号の転送方式に無線LANを用いる場合、その上位レイヤのTCP/IPのパケットや、アプリケーションレイヤに、タイミング信号1Tを重畳する。
【0051】
または、無線親局装置信号重畳部13は、パケット伝送方式や同期伝送方式で使用するヘッダ部分にタイミング信号1T自体を書き込む。
【0052】
または、無線親局装置信号重畳部13は、送信時刻やシーケンス番号が書かれたヘッダを含むパケットやフレームを送信するような伝送プロトコルを用いる場合、ヘッダ等にそのパケットやフレームが、タイミング信号1Tの転送用のパケットもしくはフレームであることを記載する。
【0053】
無線親局装置信号1Sは、タイミング信号1Tの重畳後の主信号である。
信号分離回路14は、無線親局装置信号1Sをアンテナ15に導き、アンテナ15は、無線親局装置信号1Sを空中に放射する。
【0054】
送信レベル検出部16は、無線親局装置信号1Sのレベルである送信レベルSLを検出する。送信レベル検出部16は、例えば、無線親局装置信号重畳部13と信号分離回路14の間の無線親局装置信号1Sから送信レベルSLを検出する。送信レベル検出部16は、または、信号分離回路14とアンテナ15の間の無線親局装置信号1Sから送信レベルSLを検出する。送信レベル検出部16は、または、図示しないが、アンテナ15から放射された無線親局装置信号1Sを近傍の別なアンテナと無線受信機等で受信し、受信信号から送信レベルSLを検出する。
【0055】
送信レベルSLは、例えば、無線親局装置信号1Sがピークを示したときの瞬時値である。送信レベルSLは、または、無線親局装置信号1Sを予め定めた期間の間に予め定めた回数測定した値の平均値である。送信レベルSLは、その他の方法により測定してもよい。
【0056】
無線子局装置2では、アンテナ21が、空中から無線親局装置信号1Sを受信する。
信号分離回路22は、無線親局装置信号1Sを主信号受信部24に導き、主信号受信部24は、無線親局装置信号1Sの主信号を受信する。
【0057】
受信レベル検出部23は、無線親局装置信号1Sの受信時のレベルである受信レベルRLを検出する。受信レベル検出部23は、例えば、アンテナ21と信号分離回路22の間の無線親局装置信号1Sから受信レベルRLを検出する。受信レベル検出部23は、または、信号分離回路22と主信号受信部24の間の無線親局装置信号1Sから受信レベルRLを検出する。
【0058】
受信レベルRLは、送信レベルSLの測定方法と同じ方法で測定されることが望ましい。つまり、送信レベルSLがピーク時の瞬時値なら、受信レベルRLとしてもピーク時の瞬時値が測定され、送信レベルSLが平均値なら、受信レベルRLとしても平均値が測定されるのが望ましい。
【0059】
無線親局装置信号解析部25は、信号分離回路22と主信号受信部24の間の無線親局装置信号1Sからタイミング信号1Tを復調し、無線子局装置信号重畳部27に転送する。
【0060】
無線子局装置信号重畳部27は、タイミング信号1Tの転送をトリガとして、そのタイミングで、受信レベルRLを取得し、主信号2Mに受信レベルRLおよびタイミング信号1Tを重畳する。
【0061】
無線子局装置信号重畳部27は、無線親局装置信号重畳部13が主信号1Mにタイミング信号1Tを重畳した方法などを用いて、主信号2Mに受信レベルRLおよびタイミング信号1Tを重畳する。
【0062】
無線子局装置信号2Sは、受信レベルRLおよびタイミング信号1Tの重畳後の主信号である。
【0063】
信号分離回路22は、無線子局装置信号2Sをアンテナ21に導き、アンテナ21は、無線子局装置信号2Sを空中に放射する。
【0064】
無線親局装置1では、アンテナ15が、空中から無線子局装置信号2Sを受信する。
信号分離回路14は、無線子局装置信号2Sを主信号受信部19に導き、主信号受信部19は、無線子局装置信号2Sの主信号を受信する。
【0065】
無線子局装置信号解析部18は、信号分離回路14と主信号受信部19の間の無線子局装置信号2Sから受信レベルRLおよびタイミング信号1Tを復調し、レベル比較部1Aに転送する。
【0066】
レベル比較部1Aは、タイミング信号1Tにより示されるタイミングTMに対応づけられた送信レベルSLをデータ記憶部17から読み出し、送信レベルSLと受信レベルRLとの比である電波伝播損失値LOSSを求め、電波伝播損失値出力部1Bに転送する。
電波伝播損失値出力部1Bは、電波伝播損失値LOSSを外部に出力する。
【0067】
第1の実施の形態では、以上の動作が、タイミングTMを更新しながら、繰り返し実行され、よって、無線親局装置と無線子局装置の間の電波伝播損失値LOSSの変化を時系列に知ることができ、特には、無線親局装置側で知ることができる。
【0068】
本実施の形態では、電波伝播損失値LOSSが高まれば、無線子局装置と無線親局装置の間の位置でその原因となる物体(人など)の移動があったことが分かり、つまり、人など(例えば侵入者)を検知できる。
【0069】
また、本実施の形態では、電波伝播損失値LOSSが変化すれば、無線子局装置と無線親局装置の少なくとも一方の位置が変わったことが分かり、つまり、当該装置やそれを組み込んだものの位置が変わったことを検知できる。
【0070】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る電波伝播損失測定システムは第1の実施の形態のシステムと同一または類似の構成を有する。かかる構成については、同一符号を付与することで重複説明を省略し、本実施の形態に特有な構成および作用を中心に説明を行う。
【0071】
図2は、第2の実施の形態に係る電波伝播損失測定システムの構成図である。
【0072】
電波伝播損失測定システムは、無線親局装置10と複数の無線子局装置20を含む。無線親局装置と各無線子局装置は、第1の実施の形態と同様に、無線親局装置信号1Sと無線子局装置信号2Sを送受信する。
【0073】
無線親局装置10は、無線親局装置1と同様に、無線親局装置主信号生成部11と、タイミング信号生成部12と、無線親局装置信号重畳部13と、信号分離回路14と、アンテナ15と、送信レベル検出部16と、データ記憶部17と、無線子局装置信号解析部18と、主信号受信部19と、レベル比較部1Aと、電波伝播損失値出力部1Bとを備え、回線終端装置10Nに接続されている。回線終端装置10Nは、有線または無線の伝送路10nを介して、インターネットや公衆回線などのネットワークNに接続されている。
【0074】
各無線子局装置20は、無線子局装置2と同様に、アンテナ21と、信号分離回路22と、受信レベル検出部23と、主信号受信部24と、無線親局装置信号解析部25と、無線子局装置主信号生成部26と、無線子局装置信号重畳部27とを備え、固有の無線子局装置識別情報IDを記憶している。
【0075】
(第2の実施の形態の動作)
まず、無線親局装置10では、ネットワークN内の遠隔制御装置(図示せず)から回線終端装置10Nを介して指示が入力されると、無線親局装置主信号生成部11が、主信号1Mを生成する。無線親局装置10が無線親局装置信号1Sを送信するときのその他の動作は、無線親局装置1の場合と同様である。
【0076】
各無線子局装置20では、無線子局装置2と同様な動作を経て、無線子局装置信号重畳部27が、タイミング信号1Tの転送をトリガとして、そのタイミングで、受信レベルRLを取得し、主信号2Mに受信レベルRL、タイミング信号1Tおよび無線子局装置識別情報IDを重畳する。以降の動作は無線子局装置2と同様である。
【0077】
無線親局装置10では、無線親局装置1と同様な動作を経て、無線子局装置信号解析部18が、無線子局装置信号2Sから受信レベルRL、タイミング信号1Tおよび無線子局装置識別情報IDを復調し、同じ無線子局装置20からの無線子局装置信号2Sから復調した受信レベルRL、タイミング信号1Tおよび無線子局装置識別情報IDを対応づけて、レベル比較部1Aに転送する。
【0078】
レベル比較部1Aは、タイミング信号1Tにより示されるタイミングTMに対応づけられた送信レベルSLをデータ記憶部17から読み出し、送信レベルSLと当該タイミング信号1Tに対応づけられた受信レベルRLとの比である電波伝播損失値LOSSを求め、電波伝播損失値LOSSを、当該タイミング信号1Tに対応づけられた無線子局装置識別情報IDに対応づけて電波伝播損失値出力部1Bに転送する。
【0079】
電波伝播損失値出力部1Bは、対応づけて転送された電波伝播損失値LOSSおよび無線子局装置識別情報IDを回線終端装置10Nを介して、ネットワークN内の遠隔制御装置(図示せず)などに送信する。
【0080】
第2の実施の形態では、以上の動作が、タイミングTMを更新しながら、繰り返し実行され、よって、無線親局装置と無線子局装置の間の電波伝播損失値LOSSの変化を時系列に知ることができ、特には、無線子局装置ごとに、また遠隔地で知ることができる。
【0081】
本実施の形態では、無線子局装置ごとに電波伝播損失値LOSSを求めることで、ある無線子局装置の電波伝播損失値LOSSが高まれば、その無線子局装置と無線親局装置の間の位置で、その原因となる人などの移動があったことが分かり、つまり、人などを検知できる範囲を拡大でき、また、人を迅速に検知できる。
【0082】
また、無線子局装置識別情報を用い、無線子局装置の配置を工夫すれば、人などの位置を特定でき、移動経路を推定することも可能となる。
【0083】
また、本実施の形態では、無線親局装置の位置が変われば、全ての電波伝播損失値LOSSが同じタイミングで変化し、また、いずれかの無線子局装置の位置が変われば、その無線子局装置に対応する電波伝播損失値LOSSが変化するので、無線親局装置および複数の無線子局装置のどの装置の位置が変わっても、その装置を特定できる。
【0084】
なお、本実施の形態では、複数の無線子局装置およびそれぞれの無線子局装置識別情報を用いる態様と、回線終端装置10Nを用いる態様を採用したが、いずれか一方のみを採用してもよい。
また、回線終端装置10Nを用いる態様は、第1の実施の形態で採用してもよい。
【0085】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る電波伝播損失測定システムはこれまでの実施の形態のシステムと同一または類似の構成を有する。かかる構成については、同一符号を付与することで重複説明を省略し、本実施の形態に特有な構成および作用を中心に説明を行う。
【0086】
図3は、第3の実施の形態に係る電波伝播損失測定システムの構成図である。
【0087】
電波伝播損失測定システムは、無線親局装置100と無線子局装置200を含む。無線親局装置と無線子局装置は、これまでの実施の形態と同様に、無線親局装置信号1Sと無線子局装置信号2Sを送受信する。
【0088】
無線親局装置100は、無線親局装置主信号生成部11と、無線親局装置信号重畳部13と、信号分離回路14と、アンテナ15と、送信レベル検出部16と、主信号受信部19とを備える。
【0089】
無線親局装置主信号生成部11と、信号分離回路(スプリッタ)と、アンテナ15については、第1の実施の形態などと同様である。
【0090】
一方、送信レベル検出部16は、主信号1Mのレベルである送信レベルSLを検出するものである。
【0091】
無線親局装置信号重畳部13は、主信号1Mに送信レベルSLを重畳するものである。無線親局装置信号1Sは、送信レベルSLの重畳後の主信号である。
【0092】
無線子局装置200は、アンテナ21と、信号分離回路22と、受信レベル検出部23と、主信号受信部24と、無線親局装置信号解析部25と、無線子局装置主信号生成部26と、レベル比較部28と、電波伝播損失値出力部29とを備える。
【0093】
信号分離回路22、受信レベル検出部23、主信号受信部24については、これまでの実施の形態などと同様である。
【0094】
一方、無線親局装置信号解析部25は、無線親局装置信号1Sから送信レベルSLを復調するものである。
【0095】
レベル比較部28は、送信レベルSLと受信レベルRLとの比である電波伝播損失値LOSSを求めるものである。
【0096】
電波伝播損失値出力部29は、電波伝播損失値LOSSを外部に出力するものである。 なお、主信号受信部19、無線子局装置主信号生成部26は必須でなく、つまり、無線子局装置信号2Sは送信しなくてもよい。
【0097】
(第3の実施の形態の動作)
まず、無線親局装置100では、無線親局装置主信号生成部11が、主信号1Mを生成する。
【0098】
送信レベル検出部16は、第1の実施の形態などと同様な方法で、主信号1Mから送信レベルSLを検出する。
【0099】
無線親局装置信号重畳部13は、第1の実施の形態などと同様な方法で、主信号1Mに送信レベルSLを重畳する。無線親局装置信号1Sは、送信レベルSLの重畳後の主信号である。
【0100】
信号分離回路14は、無線親局装置信号1Sをアンテナ15に導き、アンテナ15は、無線親局装置信号1Sを空中に放射する。
【0101】
無線子局装置200では、無線子局装置2と同様に無線親局装置信号1Sが受信され、無線親局装置信号解析部25が、第1の実施の形態などと同様な方法で、無線親局装置信号1Sから送信レベルSLを復調し、レベル比較部28に転送する。
【0102】
レベル比較部28は、送信レベルSLの転送をトリガとして、そのタイミングで、受信レベルRLを取得し、送信レベルSLと受信レベルRLとの比である電波伝播損失値LOSSを求め、電波伝播損失値出力部29に転送する。
【0103】
電波伝播損失値出力部29は、電波伝播損失値LOSSを外部に出力する。
第3の実施の形態では、以上の動作が繰り返し実行され、よって、無線親局装置と無線子局装置の間の電波伝播損失値LOSSの変化を時系列に知ることができ、特には、無線子局装置側で知ることができる。
【0104】
また、本実施の形態では、これまでの実施の形態と同様に、例えば、物体(人など)を検知することができる。
【0105】
また、本実施の形態では、電波伝播損失値LOSSが変化すれば、無線子局装置の位置が変わったことが分かり、つまり、当該装置やそれを組み込んだものの位置が変わったことを検知できる。
【0106】
なお、本実施の形態では、第2の実施の形態のように、回線終端装置10Nを用いる態様を採用してもよい。
【0107】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る電波伝播損失測定システムはこれまでの実施の形態のシステムと同一または類似の構成を有する。かかる構成については、同一符号を付与することで重複説明を省略し、本実施の形態に特有な構成および作用を中心に説明を行う。
【0108】
図4は、第4の実施の形態に係る電波伝播損失測定システムの構成図である。
【0109】
電波伝播損失測定システムは、無線親局装置1000と無線子局装置2000を含む。無線親局装置と無線子局装置は、これまでの実施の形態と同様に、無線親局装置信号1Sと無線子局装置信号2Sを送受信する。
【0110】
無線親局装置1000は、無線親局装置主信号生成部11と、無線親局装置信号重畳部13と、信号分離回路14と、アンテナ15と、送信レベル検出部16と、無線子局装置信号解析部18と、主信号受信部19と、電波伝播損失値出力部1Bとを備える。第2の実施の形態と同様に、無線親局装置1000は回線終端装置10Nに接続され、回線終端装置10NはネットワークNに接続されている。
【0111】
無線子局装置2000は、アンテナ21と、信号分離回路22と、受信レベル検出部23と、主信号受信部24と、無線親局装置信号解析部25と、無線子局装置主信号生成部26と、無線子局装置信号重畳部27と、レベル比較部28とを備える。
【0112】
(第4の実施の形態の動作)
まず、無線親局装置1000では、ネットワークN内の遠隔制御装置(図示せず)から回線終端装置10Nを介して指示が入力されると、無線親局装置主信号生成部11が、主信号1Mを生成する。無線親局装置1000が無線親局装置信号1Sを送信するときのその他の動作は、第3の実施の形態の無線親局装置100の場合と同様である。
【0113】
無線子局装置2000では、第3の実施の形態の無線子局装置200と同様な動作を経て、レベル比較部28が電波伝播損失値LOSSを求める。無線子局装置信号重畳部27は、主信号2Mに電波伝播損失値LOSSを重畳する。以降の動作は無線子局装置200と同様である。
【0114】
無線親局装置1000では、第1の実施の形態の無線親局装置1などと同様な動作を経て、無線子局装置信号解析部18が、無線子局装置信号2Sから電波伝播損失値LOSSを復調し、電波伝播損失値出力部1Bに転送する。
【0115】
電波伝播損失値出力部1Bは、転送された電波伝播損失値LOSSを回線終端装置10Nを介して、ネットワークN内の遠隔制御装置(図示せず)などに送信する。
【0116】
第4の実施の形態では、以上の動作が繰り返し実行され、よって、無線親局装置と無線子局装置の間の電波伝播損失値LOSSの変化を時系列に知ることができ、特には、無線親局装置側で、また遠隔地で知ることができる。
【0117】
また、本実施の形態では、これまでの実施の形態と同様に、例えば、物体(人など)を検知することができる。
【0118】
また、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、無線子局装置と無線親局装置の少なくとも一方の位置が変わったことが分かり、つまり、当該装置を組み込んだものなどの位置が変わったことを検知できる。
なお、本実施の形態では、回線終端装置10Nを用いる態様を採用しなくてもよい。
【0119】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る電波伝播損失測定システムはこれまでの実施の形態のシステムと同一または類似の構成を有する。かかる構成については、同一符号を付与することで重複説明を省略し、本実施の形態に特有な構成および作用を中心に説明を行う。
【0120】
図5は、第5の実施の形態に係る電波伝播損失測定システムの構成図である。
【0121】
電波伝播損失測定システムは、無線親局装置10000と複数の無線子局装置20000を含む。無線親局装置と各無線子局装置は、これまでの実施の形態と同様に、無線親局装置信号1Sと無線子局装置信号2Sを送受信する。
【0122】
無線親局装置10000は、第4の実施の形態と同様に、無線親局装置主信号生成部11と、無線親局装置信号重畳部13と、信号分離回路14と、アンテナ15と、送信レベル検出部16と、無線子局装置信号解析部18と、主信号受信部19と、電波伝播損失値出力部1Bとを備える。第4の実施の形態と同様に、無線親局装置1000は回線終端装置10Nに接続され、回線終端装置10NはネットワークNに接続されている。
【0123】
無線子局装置20000は、第4の実施の形態と同様に、アンテナ21と、信号分離回路22と、受信レベル検出部23と、主信号受信部24と、無線親局装置信号解析部25と、無線子局装置主信号生成部26と、無線子局装置信号重畳部27と、レベル比較部28とを備え、第2の実施の形態と同様に、固有の無線子局装置識別情報IDを記憶している。
【0124】
(第5の実施の形態の動作)
まず、無線親局装置1000では、ネットワークN内の遠隔制御装置(図示せず)から回線終端装置10Nを介して指示が入力されると、無線親局装置主信号生成部11が、主信号1Mを生成する。無線親局装置10が無線親局装置信号1Sを送信するときのその他の動作は、第4の実施の形態の無線親局装置1000の場合と同様である。
【0125】
各無線子局装置20000では、第4の実施の形態の無線子局装置2000と同様な動作を経て、レベル比較部28が電波伝播損失値LOSSを求める。無線子局装置信号重畳部27は、主信号2Mに電波伝播損失値LOSSおよび無線子局装置識別情報IDを重畳する。以降の動作は無線子局装置2000と同様である。
【0126】
無線親局装置10000では、第1の実施の形態の無線親局装置1と同様な動作を経て、無線子局装置信号解析部18が、無線子局装置信号2Sから電波伝播損失値LOSSおよび無線子局装置識別情報IDを復調し、同じ無線子局装置20000からの無線子局装置信号2Sから復調した電波伝播損失値LOSSおよび無線子局装置識別情報IDを対応づけて、電波伝播損失値出力部1Bに転送する。
【0127】
電波伝播損失値出力部1Bは、対応づけて転送された電波伝播損失値LOSSおよび無線子局装置識別情報IDを回線終端装置10Nを介して、ネットワークN内の遠隔制御装置(図示せず)などに送信する。
【0128】
第5の実施の形態では、以上の動作が繰り返し実行され、よって、無線親局装置と無線子局装置の間の電波伝播損失値LOSSの変化を時系列に知ることができ、特には、無線親局装置側で知ることができ、特には、無線子局装置ごとに、また遠隔地で知ることができる。
【0129】
本実施の形態では、第2の実施の形態と同様に、人を検知できる範囲を拡大でき、また、人を迅速に検知できる。また、無線子局装置の配置を工夫すれば、人の移動経路を推定することも可能となる。
【0130】
本実施の形態では、これまでの実施の形態と同様に、例えば、物体(人など)を検知することができる。
【0131】
また、本実施の形態では、第2の実施の形態と同様に、無線親局装置および複数の無線子局装置のどの装置の位置が変わっても、その装置を特定できる。
【0132】
なお、本実施の形態では、複数の無線子局装置およびそれぞれの無線子局装置識別情報を用いる態様と、回線終端装置10Nを用いる態様を採用したが、いずれか一方のみを採用してもよい。
【0133】
[応用例]
次に、各実施の形態の人感センサへの応用例を説明する。
図6、図7は、応用例を説明するための補足図である。
【0134】
図6に示すように、例えば、同じ部屋内に、いずれかの実施の形態の無線親局装置(以下、無線親局装置A)と複数の無線子局装置(以下、無線子局装置B)が配置され、無線親局装置は回線終端装置10Nに接続され、回線終端装置10NはネットワークNに接続されている。
【0135】
無線親局装置Aから1つの無線子局装置Bへの無線伝播路P1はマルチパスを形成し、無線親局装置Aから他の1の無線子局装置Bへの無線伝播路P2もマルチパスを形成している。無線伝播路P1によるマルチパスと無線伝播路P2によるマルチパスでは干渉の状態が異なり、電波伝播損失値LOSSも、前者と後者では異なる。しかし、部屋で物体が動くことがなく、電磁波が乱れなければ、各電波伝播損失値LOSSは時間的に変化せず、一定である。
【0136】
しかし、図7に示すように、部屋で物体MT(人など)が動き、いくつかの無線伝播路P1、P2が物体MTに遮られ、干渉の状態が変化すると、電波伝播損失値LOSSは時間的に変化する。よって、電波伝播損失値LOSSの時間的な変化をもって、動く物体を検知することができる。
【0137】
電波伝播損失値LOSSは、無線親局装置信号1Sの主信号1Mに用いられる変調方式に依存せず、任意の変調方式を用いることができ、よって、例えば、振幅変調を用いることができる。
【0138】
また、複数の無線子局装置Bにより、検知できる範囲を拡大でき、また、迅速な検知が行える。また、無線子局装置の配置を工夫し、無線子局装置識別情報を用いれば、移動する物体の位置を特定でき、移動経路を推定することも可能となる。
【符号の説明】
【0139】
1、10、100、1000、10000、A…無線親局装置
10N…回線終端装置
11…無線親局装置主信号生成部
12…タイミング信号生成部
13…無線親局装置信号重畳部
14、22…信号分離回路
15、21…アンテナ
16…送信レベル検出部
17…データ記憶部
18…無線子局装置信号解析部
19、24…主信号受信部
1A、28…レベル比較部
1B、29…電波伝播損失値出力部
1S…無線親局装置信号
1T…タイミング信号
2、20、200、2000、20000、B…無線子局装置
2S…無線子局装置信号
23…受信レベル検出部
25…無線親局装置信号解析部
26…無線子局装置主信号生成部
27…無線子局装置信号重畳部
RL…受信レベル
SL…送信レベル
TM…タイミング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線親局装置と無線子局装置を含み、
前記無線親局装置は、
前記無線子局装置に送信する無線親局装置信号を構成する主信号を生成する無線親局装置主信号生成部と、
前記無線親局装置信号の送信のタイミングを示すタイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、
前記主信号に前記タイミング信号を重畳する無線親局装置信号重畳部と、
当該重畳後の主信号である前記無線親局装置信号を送信する一方前記無線子局装置から無線子局装置信号を受信する無線親局装置通信手段と、
前記無線親局装置信号の送信時のレベルである送信レベルを検出する送信レベル検出部と、
前記送信レベルと前記タイミングとを対応づけて記憶するデータ記憶部と、
前記無線子局装置信号に含まれる受信レベルおよびタイミング信号を復調する無線子局装置信号解析部と、
当該タイミング信号により示されるタイミングに対応づけられた送信レベルを前記データ記憶部から読み出し、当該送信レベルと前記受信レベルとの比である電波伝播損失値を求めるレベル比較部とを備え、
前記無線子局装置は、
前記無線親局装置信号の受信時のレベルである受信レベルを検出する受信レベル検出部と、
前記無線親局装置信号からタイミング信号を復調する無線親局装置信号解析部と、
前記無線子局装置信号を構成する主信号を生成する無線子局装置主信号生成部と、
当該主信号に当該受信レベルおよびタイミング信号を重畳する無線子局装置信号重畳部と、
前記無線親局装置信号を受信する一方当該重畳後の主信号である前記無線子局装置信号を送信する無線子局装置通信手段とを備える
ことを特徴とする電波伝播損失測定システム。
【請求項2】
無線親局装置と無線子局装置を含み、
前記無線親局装置は、
前記無線子局装置に送信する無線親局装置信号を構成する主信号を生成する無線親局装置主信号生成部と、
前記無線親局装置信号の送信のタイミングを示すタイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、
前記主信号に前記タイミング信号を重畳する無線親局装置信号重畳部と、
当該重畳後の主信号である前記無線親局装置信号を送信する一方前記無線子局装置から無線子局装置信号を受信する無線親局装置通信手段と、
前記無線親局装置信号の送信時のレベルである送信レベルを検出する送信レベル検出部と、
前記送信レベルと前記タイミングとを対応づけて記憶するデータ記憶部と、
前記無線子局装置信号に含まれる受信レベル、タイミング信号および無線子局装置識別情報を復調する無線子局装置信号解析部と、
当該タイミング信号により示されるタイミングに対応づけられた送信レベルを前記データ記憶部から読み出し、当該送信レベルと前記受信レベルとの比である電波伝播損失値を求め当該無線子局装置識別情報に対応づけて出力するレベル比較部とを備え、
前記無線子局装置は、
前記無線親局装置信号の受信時のレベルである受信レベルを検出する受信レベル検出部と、
前記無線親局装置信号からタイミング信号を復調する無線親局装置信号解析部と、
前記無線子局装置信号を構成する主信号を生成する無線子局装置主信号生成部と、
当該主信号に当該受信レベル、タイミング信号および無線子局装置の無線子局装置識別情報を重畳する無線子局装置重畳部と、
前記無線親局装置信号を受信する一方当該重畳後の主信号である前記無線子局装置信号を送信する無線子局装置通信手段とを備える
ことを特徴とする電波伝播損失測定システム。
【請求項3】
無線親局装置と無線子局装置を含み、
前記無線親局装置は、
前記無線子局装置に送信する無線親局装置信号を構成する主信号を生成する無線親局装置主信号生成部と、
前記主信号のレベルである送信レベルを検出する送信レベル検出部と、
前記主信号に前記送信レベルを重畳する無線親局装置信号重畳部と、
当該重畳後の主信号である前記無線親局装置信号を送信する無線親局装置通信手段とを備え、
前記無線子局装置は、
前記無線親局装置信号を受信する無線子局装置通信手段と、
前記無線親局装置信号の受信時のレベルである受信レベルを検出する受信レベル検出部と、
前記無線親局装置信号から送信レベルを復調する無線親局装置信号解析部と、
前記受信レベルと当該送信レベルの比である電波伝播損失値を求めるレベル比較部とを備える
ことを特徴とする電波伝播損失測定システム。
【請求項4】
前記無線子局装置は、前記無線子局装置信号を構成する主信号を生成する無線子局装置主信号生成部と、当該主信号に前記電波伝播損失値を重畳する無線子局装置信号重畳部とを備え、前記無線子局装置通信手段は、当該重畳後の主信号である前記無線子局装置信号を送信するものであり、
前記無線親局装置通信手段は、前記無線子局装置信号を受信するものであり、前記無線親局装置は、前記無線子局装置信号から電波伝播損失値を復調する無線子局装置信号解析部を備える
ことを特徴とする請求項3記載の電波伝播損失測定システム。
【請求項5】
前記無線子局装置信号重畳部は、前記無線子局装置信号の主信号に無線子局装置の無線子局装置識別情報を重畳するものであり、
前記無線子局装置信号解析部は、前記無線子局装置信号から無線子局装置識別情報を復調し電波伝播損失値を対応づけて出力するものである
ことを特徴とする請求項4記載の電波伝播損失測定システム。
【請求項6】
前記無線親局装置が該無線親局装置に接続される回線終端装置を介して前記電波伝播損失値を遠隔送信可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1、2、4および5のいずれかに記載の電波伝播損失測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−128639(P2012−128639A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279235(P2010−279235)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】