説明

電波吸収体

【課題】優れた通気性を示すと共に、電波吸収性能、シールド特性及び耐環境性に優れた電波吸収体を提供する。
【解決手段】カルボニル鉄又は微細還元鉄粉を含有する耐候性ゴム組成物からなり、開口部2が設けられた電波吸収体1であって、該電波吸収体1の膜厚が5mm以下であり、前記開口部2は、孔径が5〜13mm、ピッチ間隔が13〜17mm、開孔率が30〜50%で規定される範囲で設けられていることを特徴とする電波吸収体。ゴム成分に所定量のカルボニル鉄又は微細還元鉄粉を配合しているため、優れた電波吸収性能及びシールド特性を得ることができる。開口部2の孔径、ピッチ間隔及び開孔率が規定されることにより、視認性、通気性、電磁波吸収性能及びシールド特性に優れたものとなる。耐候性ゴム組成物を用いているため、耐候性に優れたものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電波吸収体に係り、特に、優れた視認性と通気性を示すと共に、電波吸収性能、シールド特性及び耐環境性に優れた電波吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ETC(Electronic Toll Collection system)、OA機器や通信機器等の普及にともない、これらの機器から発生する電磁波が問題視されるようになっている。即ち、電磁波の人体への影響が懸念され、また、電磁波による精密機器の誤作動等が問題となっている。
【0003】
特開2004−259910号公報には、表面積全体に対して20〜80%の空孔が穿設されてなる面状の電波吸収体を、ETCシステムの設置された道路の中央分離帯に設置した構成が開示されている。この電波吸収体では、空孔内を風が通り抜けることができるため、電波吸収体に加わる風荷重が小さくなり、該電波吸収体を支持する基礎に加わる負荷が軽減される。このため、基礎を小さなものとすることができ、中央分離帯等の限られたスペースに対しても電波吸収体を設置することが容易になる。
【0004】
上記公報には、空孔が表面積全体に対して20%を下回ると、風が通り抜け難くなって風圧を十分に軽減することができなくなると記載されている。また、80%を上回ると、電波吸収体が存在する面積が小さくなって電波吸収体の強度が不十分なものとなる可能性があると記載されている。
【0005】
上記公報には、電波吸収体の電波吸収材料としては、金属繊維、カーボンブラック等のフィラーやフェライトを配合した合成樹脂やそれを発泡させたもの、電波到来側に抵抗膜を設け、抵抗膜から反射膜を電波の波長の1/4の間隔としたもの、金属や樹脂等からなる面材や線材に電波吸収性の塗料を塗布したもの等を適宜選択して用いてよい、と記載されている。
【特許文献1】特開2004−259910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2004−259910号公報においては、風圧に対する電波吸収体の物理的強度の観点から空孔の面積率が規定されているが、空孔面積率と電波吸収特性との関係については記載されておらず、空孔の形状と電波吸収特性及びシールド特性との関係が不明確である。このため、当該公報に基づいて、電波吸収特性及びシールド特性に優れる電波吸収体を具体的に設計することはできない。
【0007】
一方、隣接車線間の電波障害対策においては、隣接車線の状況を目視し、安全を確認するために、視認性を有する透明電波吸収体が使用されている。このような電波吸収体として、抵抗皮膜吸収体が知られているが、これはガラス板又はアクリル板から構成されており、通気性がないため、風荷重が大きく、吸収体を支持する基礎構造が大掛りになるという欠点がある。
【0008】
本発明は、優れた視認性と通気性を示すと共に、電波吸収性能、シールド特性及び耐環境性に優れた電波吸収体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の電波吸収体は、カルボニル鉄又は微細還元鉄粉を含有する耐候性ゴム組成物からなり、開口部が設けられた電波吸収体であって、該電波吸収体の膜厚が5mm以下であり、前記開口部は、孔径が5〜13mm、ピッチ間隔が13〜17mm、開孔率が30〜50%で規定される範囲で設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の電波吸収体は、カルボニル鉄又は微細還元鉄粉を含有する耐候性ゴム組成物からなり、開口部が設けられた電波吸収体であって、該電波吸収体の膜厚が8mm以下であり、前記開口部は、孔径をxmm、開孔率をy%とすると、
5≦x≦30
10≦y≦−2.7x+92.5
で規定される範囲で設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の電波吸収体は、請求項2において、
5≦x≦20
15≦y≦−3x+76.7
で規定される範囲で設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4の電波吸収体は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記開口部が格子状に配列されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項5の電波吸収体は、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記膜厚が1〜5mmであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項6の電波吸収体は、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記膜厚が2〜4mmであることを特徴とするものである。
【0015】
請求項7の電波吸収体は、請求項1ないし6のいずれか1項において、前記孔径が7〜12mmであることを特徴とするものである。
【0016】
請求項8の電波吸収体は、請求項1ないし7のいずれか1項において、前記ピッチ間隔が14〜16mmであることを特徴とするものである。
【0017】
請求項9の電波吸収体は、請求項1ないし8のいずれか1項において、前記開口部は円形又は多角形であることを特徴とするものである。
【0018】
請求項10の電波吸収体は、請求項1ないし9のいずれか1項において、該耐候性ゴム組成物が、ブチルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム及びクロロスルホン化ポリエチレンゴムよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の耐候性ゴムを含むことを特徴とするものである。
【0019】
請求項11の電波吸収体は、請求項1ないし10のいずれか1項において、該耐候性ゴム組成物は耐候性ゴムと耐候性ゴム以外の汎用ゴムとで構成されることを特徴とするものである。
【0020】
請求項12の電波吸収体は、請求項11において、該汎用ゴムが天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、及びブタジエンゴムよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とするものである。
【0021】
請求項13の電波吸収体は、請求項12において、該耐候性ゴム組成物として天然ゴムとエチレンプロピレンゴムとを、天然ゴム/エチレンプロピレンゴム=95/5〜5/95(重量比)の割合で含むことを特徴とするものである。
【0022】
請求項14の電波吸収体は、請求項13において、該耐候性ゴム組成物として天然ゴムとエチレンプロピレンゴムとを、天然ゴム/エチレンプロピレンゴム=80/20〜55/45(重量比)の割合で含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、優れた視認性と通気性を示すと共に、電波吸収性能、シールド特性及び耐環境性に優れた電波吸収体が提供される。
【0024】
即ち、本発明(請求項1)では、ゴム成分に所定量のカルボニル鉄又は微細還元鉄粉を配合しているため、優れた電波吸収性能及びシールド特性を得ることができる。また、開口部の孔径、ピッチ間隔及び開孔率が規定されることにより、視認性及び通気性に優れ、かつ電磁波吸収性能及びシールド特性に優れた電磁波吸収体を得ることができる。さらに、本発明では耐候性ゴム組成物を用いているため、耐候性に優れたものとなる。本発明では、開口部の孔径と配列が適切であるため、電波吸収体が仕切壁状に立設された場合、開口部を通して仕切壁の向う側を十分に視認することができる。
【0025】
請求項2の本発明にあっても、ゴム成分に所定量のカルボニル鉄又は微細還元鉄粉を配合しているため、優れた電波吸収性能及びシールド特性を得ることができる。また、開口部の孔径及び開孔率が規定されることにより、視認性及び通気性に優れ、かつ電磁波吸収性能及びシールド特性に優れた電磁波吸収体を得ることができる。さらに、本発明では耐候性ゴム組成物を用いているため、耐候性に優れたものとなる。本発明では、開口部の孔径と配列が適切であるため、電波吸収体が仕切壁状に立設された場合、開口部を通して仕切壁の向う側を十分に視認することができる。
【0026】
本発明において、開口部が格子状に配列されていてもよい。
【0027】
本発明において、電波吸収体の膜厚は1〜5mm、特に2〜4mmであることが好ましい。また、開口部の孔径は7〜12mm、ピッチ間隔は14〜16mmであることが好ましい。
【0028】
本発明において、開口部の形状に限定はなく、例えば円形や多角形であってもよい。
【0029】
本発明において、耐候性ゴム組成物は耐候性ゴムからなる又は耐候性ゴムを含有するものである。この耐候性ゴムとしては、ブチルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム及びクロロスルホン化ポリエチレンゴムよりなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0030】
ゴム成分として耐候性ゴムを用いることにより、耐環境性の向上が図れるが、反面、柔軟性や加工性が損なわれる場合がある。従って、この場合には、ゴム成分として汎用ゴムを併用し、必要な柔軟性や加工性を確保することが好ましい。この汎用ゴムとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、及びブタジエンゴムよりなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0031】
本発明において、更に所定量のカーボンブラックを配合することにより、耐光性、耐候性をより一層高めることができる。また、ゴム成分100重量部に対するカルボニル鉄の配合量を300〜1200重量部とすることにより、電波吸収性能をより一層確実に高めることができ、特に、ゴム成分として耐候性ゴムと汎用ゴムとを併用した場合において、電波吸収性能と柔軟性や加工性とを両立させることができる。カルボニル鉄としては平均粒子径が1〜10μmのものが好ましい。
【0032】
ところで、天然ゴム等の汎用ゴムとエチレンプロピレンゴム等の耐候性ゴムとのブレンド系配合においては、充填材を高配合すると、分散性が低下する場合がある。しかし、エチレンプロピレンゴム等の耐候性ゴムに予めカルボニル鉄等の充填材を添加混練し、その後天然ゴム等の汎用ゴムを添加混練することにより、この問題を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は実施の形態に係る電波吸収体の部分的な平面図である。
【0034】
電波吸収体1は、膜形状となっており、膜厚方向(紙面と垂直方向)に貫通する開口部2が複数個設けられている。本実施の形態では、該開口部2は円形となっており、該開口部2は斜め格子状に配列されている。本実施の形態では、最も近接する3個の開口部2の中心点を結んでなる三角形が正三角形となるように、即ち各頂点のなす角度が60°となるように、開口部2が配列されている。
【0035】
但し、開口部は格子状に配列されていなくてもよい。また、開口部の形状は円形に限定されるものではなく、例えば楕円形や多角形等であってもよい。
【0036】
本発明において、電波吸収体の膜厚は5mm以下、好ましくは1〜5mm、とりわけ好ましくは2〜4mmである。5mm以下であると、電波吸収体が軽量なものとなる。
【0037】
本発明において、開口部の孔径は5〜13mm、好ましくは7〜12mmである。また、ピッチ間隔は13〜17mm、好ましくは14〜16mmである。さらに、開孔率は30〜50%である。
【0038】
なお、開口部の孔径とは、開口部が円形である場合は該円形の直径のことであり、開口部が非円形である場合は、該開口部と同一面積の円の直径のことである。
【0039】
次に、本発明の電波吸収体の材質について説明する。本発明の電波吸収体は、カルボニル鉄及び/又は微細還元鉄粉を含有する耐候性ゴム組成物からなるものである。
【0040】
本発明の耐候性ゴム組成物において、耐候性ゴムとしては、例えば、ブチルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム等が挙げられる。これらの耐候性ゴムは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0041】
これらの耐候性ゴムは特に耐環境性を十分に高める上で、ゴム成分100重量部中に20重量部以上含まれることが好ましい。
【0042】
前述の如く、ゴム成分として耐候性ゴムを用いることにより、耐環境性の向上が図れるが、反面、柔軟性や加工性が損なわれる場合がある。従って、この場合には、ゴム成分として汎用ゴムを併用し、必要な柔軟性や加工性を確保することが好ましい。この汎用ゴムとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等が挙げられ、これらの汎用ゴムは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0043】
ゴム成分中の汎用ゴムと耐候性ゴムの配合割合は、耐候性ゴム組成物の要求特性に応じて適宜決定され、汎用ゴム/耐候性ゴム=95/5〜5/95(重量比)、特に80/20〜55/45(重量比)の範囲において、耐環境性を重視する場合には耐候性ゴムを多目に、また、柔軟性や加工性を重視する場合には、汎用ゴムを多目に配合することが好ましい。
【0044】
本発明において、ゴム成分としては、上記耐候性ゴム及び汎用ゴム以外の他のゴム、例えば、臭化(イソブチレン−4−メチルスチレン共重合体)、アクリルゴム、フッ素ゴムラテックス、シリコーンゴムラテックス、ウレタンゴムラテックス等の1種又は2種以上、更に、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、SEBS(スチレン−(エチレン−ブタジエン)−スチレン)等の熱可塑性エラストマー等の1種又は2種以上を併用しても良い。
【0045】
特に、ゴム成分として、天然ゴムとエチレンプロピレンゴム等の耐候性ゴムを併用した場合には、柔軟性、加工性に優れると共に耐環境性にも著しく優れた耐候性ゴム組成物を得ることができる。この場合において、ゴム成分中の天然ゴムの割合が多く、エチレンプロピレンゴム等の耐候性ゴムの割合が少ないと、エチレンプロピレンゴム等の耐候性ゴムを用いたことによる耐オゾン性、耐候性、耐熱性等の耐環境性の改善効果を十分に得ることができず、逆に、天然ゴムの割合が少なく、エチレンプロピレンゴム等の耐候性ゴムの割合が多いと、天然ゴムによる柔軟性、加工性等の効果を十分に得ることができない。従って、ゴム成分中の天然ゴムとエチレンプロピレンゴム等の耐候性ゴムとの割合は天然ゴム/エチレンプロピレンゴム等の耐候性ゴム=95/5〜5/95(重量比)、80/20〜55/45(重量比)とすることが好ましい。
【0046】
この場合において、ゴム成分としては、天然ゴムとエチレンプロピレンゴム等の耐候性ゴムの他に、各種の合成ゴム、例えば、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、臭化(イソブチレン−4−メチルスチレン共重合体)、アクリルゴム、フッ素ゴムラテックス、シリコーンゴムラテックス、ウレタンゴムラテックス等の1種又は2種以上、更に、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、SEBS(スチレン−(エチレン−ブタジエン)−スチレン)等の熱可塑性エラストマー等を併用しても良い。ただし、ゴム成分として天然ゴムとエチレンプロピレンゴム等の耐候性ゴムとを用いることによる上記効果を十分に得るために、天然ゴムとエチレンプロピレンゴム等の耐候性ゴム以外の他のゴム成分の使用量は、全ゴム成分100重量部中に20重量部以下、特に10重量部以下とすることが好ましく、とりわけ、ゴム成分は天然ゴムとエチレンプロピレンゴム等の耐候性ゴムとで構成されることが好ましい。
【0047】
本発明で用いるカルボニル鉄粉は、有機金属間化合物であるカルボニル化鉄を熱分解して得られる、平均粒径1〜10μm程度のほぼ粒状の微粉末であり、その磁性損失により電磁波を効率的に吸収するとともに、その導電性で電磁波を抵抗損失として吸収する優れた電波吸収性材料である。
【0048】
本発明において、ゴム成分に対するカルボニル鉄の配合量が少ないと十分な電波吸収性能を得ることができず、多いと柔軟性が低下する傾向にある。従って、カルボニル鉄は、ゴム成分100重量部に対して200〜1500重量部、好ましくは300〜1200重量部配合する。
【0049】
本発明の耐候性ゴム組成物においては、更にカーボンブラックを配合することにより、カーボンブラックの紫外線吸収効果で、より一層の耐光性、耐候性の向上効果を得ることができる。カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100重量部に対して1〜10重量部とすることが好ましい。この範囲よりもカーボンブラックが少ないと、カーボンブラックを併用することによる上記効果を十分に得ることができず、多過ぎると電波吸収性能に影響を与えるため好ましくない。
【0050】
本発明の耐候性ゴム組成物は、カルボニル鉄、カーボンブラックの他、各種加硫剤、加硫助剤、その他必要に応じて、加硫促進助剤、軟化剤、老化防止剤、可塑剤、離型剤、硬化剤、発泡剤、着色剤等のゴム組成物に通常使用される各種の添加剤が必要に応じて配合添加される。
【0051】
加硫剤としては、イオウ、有機含イオウ化合物、金属酸化物(亜鉛華、マグネシア等)、有機過酸化物(ベンゾイルパーオキシド)等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0052】
また、加硫促進剤としては次のようなものが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
[アルデヒド・アンモニア類]
AC:アセトアルデヒドアンモニア
ヘキサ:ヘキサメチレン・テトラミン
[アルデヒド・アミン類]
K:アセトアルデヒド・アニリン
8:ブチルアルデヒド・アニリン
[グアニジン類]
D(DPG):ジフェニル・グアニジン
DT(DOTG):ジ−o−トリル・グアニジン
BG:o−トリル・バイグアナイド
[チアゾール類]
M:2−メルカプト・ベンゾチアゾール
DM:ジベンゾチアジル・ジ・スルフィド
MZ:2−メルカプト・ベンゾチアゾールの亜鉛塩
CZ:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド
NOBS:N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
[チウラム類]
TT:テトラメチル・チウラム・ジ・スルフィド
TS:テトラメチル・チウラム・モノ・スルフィド
[ジチオ・カーバメート類]
P:ピペコリン・メチルペンタメチレン・ジ−チオカーバメート
PZ:ジメチル・ジチオカーバミン酸亜鉛
EZ:ジエチル・ジチオカーバミン酸亜鉛
BZ:ジブチル・ジチオカーバミン酸亜鉛
PX:エチル・フェニルジチオカーバミン酸亜鉛
SDC:ジエチル・ジチオカーバミン酸ナトリウム
TP:ジブチル・ジチオカーバミン酸ナトリウム
【0053】
本発明の耐候性ゴム組成物において、通常の場合、加硫剤はゴム成分100重量部に対して0.1〜10重量部、特に1〜5重量部、加硫促進剤はゴム成分100重量部に対して0.1〜10重量部、特に1〜5重量部となるように配合することが好ましい。
【0054】
本発明の耐候性ゴム組成物においては、カルボニル鉄以外の他の磁性材料、例えばフェライト粉末等を含んでいても良いが、この場合においても、カルボニル鉄による優れた電波吸収性能を得る上で、カルボニル鉄と他の磁性材料との合計に対して、他の磁性材料を1700重量%以下、特に1200重量%以下とすることが好ましい。
【0055】
また、カルボニル鉄に代えて微細還元鉄粉を配合してもよい。この場合、微細還元鉄粉はゴム成分100重量部に対して200〜1500重量部、特に300〜1200重量部配合することが好ましい。
【0056】
このような本発明の耐候性ゴム組成物、特にゴム成分として汎用ゴムと耐候性ゴムとを含む耐候性ゴム組成物を調製するには、予め、エチレンプロピレンゴム等の耐候性ゴムに、カルボニル鉄等の充填材(カーボンブラックを用いる場合はカーボンブラックも充填材に含まれる。)を添加混練した後、天然ゴム等の汎用ゴムを添加混練することが、ゴムマトリクス中に微粉状のカルボニル鉄等の充填材を均一に分散させて、電波吸収性能の均一性、加工性に優れた耐候性ゴム組成物を得る上で好ましい。また、この場合において、カルボニル鉄を2回以上の複数回に分けて添加混練しても良い。
【0057】
本発明の電波吸収体は、このような本発明の耐候性ゴム組成物をシート状に加硫成形してなるものであるが、本発明の電波吸収体は、特に、JIS K6253(タイプA)による硬度が80度以下であることが好ましく、また、本発明の耐候性ゴム組成物は、JIS K6259により測定した耐オゾン性において、100時間後にクラックが発生しないものが望ましい。
【0058】
このような本発明の電波吸収体は、他の構成の電波吸収体と積層されて使用されても良く、また、必要に応じて、裏面側に接着層や粘着層を形成したり、表面側に意匠層を形成したりして、実用に供される。
【0059】
本発明の電波吸収体は、厚み5mm以下における5.8GHzの円偏波の電波吸収量が−3dB以下、特に−5dB以下であり、シールド量が−10dB以下、特に−15dB以下となるように設計されることが好ましい。
【0060】
本発明者らは、鋭意研究の結果、シールド量を所望の値に維持したまま開口部の孔径を大きくするためには、開孔率を小さくする必要があることを見出した。本発明では、かかる見知に基づいて、電波吸収体の孔径及び開孔率を決定しても良い。
【0061】
即ち、所定の組成及び膜厚を有する電波吸収体において、シールド量が所望の値となる場合における開口部の孔径及び開孔率の組み合せを2組以上測定しておく。次いで、該測定結果から検量線を求め、孔径及び開孔率が該検量線上の値になるか又は該検量線上の値よりも孔径及び開孔率が小さい値となるように電波吸収体を作成する。これにより、シールド量が所定値以下の電波吸収体を得ることができる。この検量線は、孔径の増加に従って開孔率が減少する直線としてもよい。
【0062】
例えば、以下のようにして開口部の孔径及び開孔率が決定される。まず、カルボニル鉄又は微細還元鉄粉を含有する耐候性ゴム組成物からなり、膜厚が8mm以下である電波吸収体において、シールド量が−10dBとなる場合における開口部の孔径及び開孔率を測定する。測定結果を表1に示す。次いで、図2の通り、横軸を孔径x(mm)とし、縦軸を開孔率(%)とするグラフを作成し、該グラフに上記測定値をプロットし、直線よりなる検量線を作成する。検量線は以下の通り表される。
y=−2.7x+92.5
従って、孔径x(mm)及び開孔率y(%)が、y≦−2.7x+92.5の不等式を満たす開口部を設けることにより、シールド量が−10dB以下のシールド性に優れた電波吸収体を得ることができる。また、図1において、
5≦x≦30
10≦y≦−2.7x+92.5
で規定される範囲(図2の斜線Aの領域)になるように開口部を設けることにより、シールド性に優れると共に、視認性及び通気性にも優れた電波吸収体を得ることができる。
【0063】
また、シールド量が−15dBとなる場合における開口部の孔径及び開孔率を測定した結果についても、表1に示す。また、図2に上記測定値をプロットし、直線よりなる検量線を描画する。検量線は以下の通り表される。
y=−3x+76.7
従って、孔径x(mm)及び開孔率y(%)が、y≦−3x+76.7の不等式を満たす開口部を設けることにより、シールド量が−15dB以下のシールド性に優れた電波吸収体を得ることができる。また、図1において、
5≦x≦20
15≦y≦−3x+76.7
で規定される範囲(図2の斜線Bの領域)になるように開口部を設けることにより、よりシールド性に優れると共に、視認性及び通気性にも優れた電波吸収体を得ることができる。
【0064】
【表1】

【実施例】
【0065】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0066】
カルボニル鉄500重量部、天然ゴム60重量部、エチレンプロピレンジエンメチレン(EPDM)ゴム40重量部の配合で耐候性ゴム組成物を調製し、この耐候性ゴム組成物を加硫成形した。なお、すべての実施例及び比較例において、すべての成分を1回で添加混練した(1ステップ混練)。得られた試料の厚みは表2に示す通りである。
【0067】
これらの試料にパンチングにより開口部を穿設し、図1に示す電波吸収体を得た。なお、これら電波吸収体に穿設された開口部の孔径、開孔率及びピッチ間隔は、表2に示す通りである。
【0068】
各電波吸収体について以下の評価を行い、結果を表2に示した。
<電波吸収量>
反射電力法により、電波吸収量を測定した。
<シールド量>
透過法により、シールド量を測定した。
<視認性>
目視により評価した。反対側の状況が認識できる状態を「○」、反対側の状態が認識できない状態を「×」とした。
<通気性>
風が通り抜けることができるか否かを風速計を用いて評価した。風が通り抜けることができる状態を「○」、風が通り抜けることができない状態を「×」とした。
【0069】
【表2】

【0070】
ETCシステムにおいて、隣接車線間の電波障害による誤作動を防止するためには、電波吸収量が−3dB以下、好ましくは−5dB以下、シールド量が−10dB以下、好ましくは−15dB以下であることが望ましい。
【0071】
開口部の孔径、開孔率、ピッチ間隔及び電波吸収体の厚みの総てが本発明の範囲内にある実施例1及び2は、電波吸収量が−5dB以下、シールド量が−10dB以下となり、電波吸収特性及びシールド特性に優れている。また、実施例1及び2は、視認性及び通気性にも優れている。
【0072】
これに対し、比較例1は視認性及び通気性が共に△であり、視認性及び通気性に劣っている。また、比較例2はシールド量が−4dBであり、シールド性に劣っている。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】実施の形態に係る電波吸収体の部分的な平面図である。
【図2】シールド量が−10dB及び−15dBである電波吸収体における、開口部の孔径と開孔率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0074】
1 電波吸収体
2 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボニル鉄又は微細還元鉄粉を含有する耐候性ゴム組成物からなり、開口部が設けられた電波吸収体であって、
該電波吸収体の膜厚が5mm以下であり、
前記開口部は、孔径が5〜13mm、ピッチ間隔が13〜17mm、開孔率が30〜50%で規定される範囲で設けられていることを特徴とする電波吸収体。
【請求項2】
カルボニル鉄又は微細還元鉄粉を含有する耐候性ゴム組成物からなり、開口部が設けられた電波吸収体であって、
該電波吸収体の膜厚が8mm以下であり、
前記開口部は、孔径をxmm、開孔率をy%とすると、
5≦x≦30
10≦y≦−2.7x+92.5
で規定される範囲で設けられていることを特徴とする電波吸収体。
【請求項3】
請求項2において、
5≦x≦20
15≦y≦−3x+76.7
で規定される範囲で設けられていることを特徴とする電波吸収体。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記開口部が格子状に配列されていることを特徴とする電波吸収体。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記膜厚が1〜5mmであることを特徴とする電波吸収体。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記膜厚が2〜4mmであることを特徴とする電波吸収体。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記孔径が7〜12mmであることを特徴とする電波吸収体。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、前記ピッチ間隔が14〜16mmであることを特徴とする電波吸収体。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項において、前記開口部は円形又は多角形であることを特徴とする電波吸収体。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項において、該耐候性ゴム組成物が、ブチルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム及びクロロスルホン化ポリエチレンゴムよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の耐候性ゴムを含むことを特徴とする電波吸収体。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項において、該耐候性ゴム組成物は耐候性ゴムと耐候性ゴム以外の汎用ゴムとで構成されることを特徴とする電波吸収体。
【請求項12】
請求項11において、該汎用ゴムが天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、及びブタジエンゴムよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする電波吸収体。
【請求項13】
請求項12において、該耐候性ゴム組成物として天然ゴムとエチレンプロピレンゴムとを、天然ゴム/エチレンプロピレンゴム=95/5〜5/95(重量比)の割合で含むことを特徴とする電波吸収体。
【請求項14】
請求項13において、該耐候性ゴム組成物として天然ゴムとエチレンプロピレンゴムとを、天然ゴム/エチレンプロピレンゴム=80/20〜55/45(重量比)の割合で含むことを特徴とする電波吸収体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−242799(P2007−242799A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61382(P2006−61382)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】