説明

電波暗室

【課題】電波暗室内で測定用アンテナに対して被測定体を測定位置に位置ズレすることなく高精度に設置することが難しかった。
【解決手段】本発明の電波暗室10は、被測定アンテナ19を設置するターンテーブル15と、被測定アンテナ19と対向するように被測定アンテナ19から離間する位置に設置された測定用アンテナ16と、を備え、ターンテーブル15の中心を通るレーザ光Lを照射する第1の光照射機器20を設け、第1の光照射機器20からの光点を基準に被測定アンテナ19を設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波暗室に関し、更に詳しくは、例えば被測定体の測定位置に高精度に再現性良く設置することができる電波暗室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電波暗室においてアンテナの指向性等のアンテナ特性を測定し、あるいは電子機器から発生する不要電磁波(ノイズ)を測定する時には、ターンテーブル上に配置された設置体上にアンテナや電子機器等の被測定体を設置し、ターンテーブルを回転させて、3mまたは10m離れた距離に設置された測定用アンテナで測定している。
【0003】
ところが、例えばアンテナや電子機器は、使用周波数が高周波化しているため、被測定体の設置位置が基準点から僅かでも位置ズレがあると、正確な測定結果を得ることができない。そこで、被測定体の位置を設定する場合には、従来は、電波暗室内で床面上にターンテーブルからアンテナポジショナまで直線を引き、この直線に合わせるように目視でアンテナの軸がターンテーブルを向くように調整している。また、電子機器については、ターンテーブル上で一定の高さに保持できるアームから水平方向に延びる棒の先端部に電子機器を取り付け、ターンテーブルの中心に電磁波の放射源が位置するように下げ振りなどを用いて電子機器の位置を合わせている。
【0004】
また、特許文献1に記載の技術では、電波暗室内でEMC評価測定を行う際に、アンテナの搭載手段(アンテナポジショナ)または電子デバイスの搭載手段(ターンテーブル)を移動させて電波暗室の中心線からずらし、これら両者間の距離を規定の距離に設定している。特許文献2に記載の技術ではアンテナの水平方向軸の基端にレーザ発光器を取り付けると共に先端部に照準を取り付け、レーザ発光器から照準を通るようにレーザ光を発光し、そのレーザ光が所定の位置や線に沿うようにアンテナの水平方向軸の向きを調整している。更に、非特許文献1にはレーザマーカー等を用いてアンテナと被測定体を測定位置に正確に一致させる技術について記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平06−237090号公報
【特許文献2】特開平09−298415号公報
【非特許文献1】EMC、第18巻第3号、第58頁〜第62頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、アンテナと電子デバイスとの距離を設定する方法や、アンテナや電子デバイスを電波暗室の中心線からずらし、アンテナの電子デバイスに対する方位を設定する方法について明らかでないため、従来の設定方法が用いられていると推定される。従来の距離設定方法や電気機器の放射源の位置設定方法では、電気機器の位置やアンテナの位置を設定するために多くの時間を要し、しかも同一の測定を行う場合に、設置位置を再現することが難しいという問題があった。特に、被測定体とアンテナ間の距離が短く、測定周波数がGHz帯になると、水平方向の僅かな位置ズレが放射源からの指向性やゲインの測定に大きく影響する。
【0007】
また、特許文献2のアンテナ角度調整方法では、アンテナの水平方向軸の基端に取り付けられたレーザ発光器から先端部に取り付けられた照準を通るようにレーザ光を発光させるため、水平軸の短い線状アンテナ、レーザ光がアンテナの開口面で遮られるホーンアンテナ等の形状の複雑なアンテナには適用できず、適用できたとしても十分な測定精度を得ることができない。また、非特許文献1には、レーザマーカーを用いてアンテナと被測定体の位置を高精度に校正する技術について記載されているが、レーザマーカーについては具体的に開示されていない。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、アンテナ等の被測定体の種類に制限されることなく、被測定体と測定用アンテナの位置関係を高精度で且つ短時間に再現性良く設定することができる電波暗室を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載の電波暗室は、被測定体を設置するターンテーブルと、上記被測定体と対向するように上記被測定体から離間する位置に設置された測定用アンテナと、を備えた電波暗室において、上記ターンテーブルの軸芯を通る光を照射する第1の光照射手段を設け、第1の光照射手段からの光点を基準に上記被測定体を設置することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の請求項2に記載の電波暗室は、請求項1に記載の発明において、上記測定用アンテナの基準点の通る光を照射して上記ターンテーブルの中心と上記測定用アンテナとの間の距離を設定する第2の光照射手段を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項3に記載の電波暗室は、請求項1または請求項2に記載の発明において、上記ターンテーブルの中心の真上または真下に上記第1の光照射手段を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項4に記載の電波暗室は、請求項2に記載の発明において、上記測定用アンテナの基準点の真上または真下に上記第2の光照射手段を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項5に記載の電波暗室は、請求項1または請求項2に記載の発明において、上記ターンテーブルの側方に上記第1の光照射手段を設けると共に上記ターンテーブルの中心に向けて上記第1の光照射手段からの光を反射する第1の反射鏡を設けたことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項6に記載の電波暗室は、請求項2に記載の発明において、上記測定用アンテナの側方に上記第2の光照射手段を設けると共に上記測定用アンテナの基準点に向けて上記第2の光照射手段からの光を反射する第2の反射鏡を設けたことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項7に記載の電波暗室は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の発明において、上記被測定体を監視する監視手段を設けたことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の請求項8に記載の電波暗室は、被測定体を設置するターンテーブルと、上記被測定体と対向するように上記被測定体から離間する位置に設置された測定用アンテナと、を備えた電波暗室において、光を上下方向に照射して垂直面光を形成する垂直面光形成手段を上記測定用アンテナ側または上記被測定体側に着脱自在に設け、上記垂直面光で少なくとも上記被測定体の方位を設定することを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の請求項9に記載の電波暗室は、被測定体を設置するターンテーブルと、上記被測定体と対向するように上記被測定体から離間する位置に設置された測定用アンテナと、を備えた電波暗室において、光を水平方向に照射して水平面光を形成する水平面光形成手段を上記測定用アンテナまたは上記被測定体の側方に着脱自在に設け、上記水平面光で少なくとも上記被測定体の高さを設定することを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の請求項10に記載の電波暗室は、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の発明において、上記光は、レーザ光であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1〜請求項10に記載の発明によれば、アンテナ等の被測定体の種類に制限されることなく、被測定体と測定用アンテナの位置関係を高精度で且つ短時間に再現性良く設定することができる電波暗室を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図1〜図5に示す実施形態に基づいて本発明を説明する。
【0021】
第1の実施形態
本実施形態の電波暗室10は、例えば図1の(a)、(b)に示すように、シールド構造の側壁面11と、側壁面11の上下両端に形成されたシールド構造の天井12及び床面13と、側壁面11及び天井12それぞれの内面に被覆されたピラミッド型の電波吸収体14と、電波吸収体14で包囲された室内の所定位置に配置された回転可能なターンテーブル15と、ターンテーブル15に対して所定の距離を隔てて配置され且つ測定用アンテナ16をアーム17Aによって支持する柱状の第1アンテナポジショナ17と、を備えている。
【0022】
シールド構造の側壁面11、シールド構造の天井12及びシールド構造の床面13は、いずれも外来電磁波を遮断するように従来公知の金属材料によって形成されている。また、電波吸収体14は、従来公知の材料、例えばウレタンフォームやスチロール等の樹脂にカーボンを含浸させた樹脂材料等によって形成されている。
【0023】
図示してないが、電波暗室10の側壁面11には開閉扉が設けられ、開閉扉が被測定体等の搬出入口として形成されている。また、電波暗室10には測定室が隣接して設けられており、この測定室において被測定体の送受信特性の測定を行う。測定結果は、測定室に設けられたパーソナルコンピュータ(パソコン)の記憶装置に格納する。
【0024】
ターンテーブル15には柱状の第2アンテナポジショナ18が中心から離間して立設され、このアンテナポジショナ18には被測定体(例えば、被測定用アンテナ)19を支持するアーム18Aが取り付けられている。測定用アンテナ16の基準点(例えば、アンテナ先端で幅方向の中心)とターンテーブル15の中心との距離は予め設定されている。従って、被測定用アンテナ19の基準点(例えば、アンテナ先端で幅方向の中心)をターンテーブル15の中心に位置合わせすれば、測定用アンテナ16と被測定用アンテナ19との間の距離を正確に設定することができる。第1、第2アンテナポジショナ17、18のアーム17A、18Aは、いずれも上下方向及び水平方向に移動可能に取り付けられ、測定用アンテナ16及び被測定用アンテナ19の位置を正確に設定できるようになっている。
【0025】
而して、図1の(b)に示すように、天井12にはターンテーブル15の中心の真上に位置させた第1の光照射機器20が設置され、第1の光照射機器20からターンテーブル15の中心に向けて光(例えば、レーザ光)Lを照射し、レーザ光Lによってターンテーブル15の中心を規定するようにしている。第2アンテナポジショナ18に被測定用アンテナ19を設置する場合に、所定の高さに設定されたアーム18Aに被測定用アンテナ19を取り付け、第1の光照射機器20からレーザ光Lを照射した後、レーザ光Lに被測定用アンテナ19の基準点を合わせると、被測定用アンテナ19の基準点をターンテーブル15の中心に対して自動的に位置決めすることができ、測定用アンテナ16と被測定用アンテナ19との間の距離を自動的に設定することができる。
【0026】
また、天井12には第1の光照射機器20から所定距離離間した位置に第2の光照射機器21が設置されている。第2の光照射機器21は、第1の光照射機器20と同様にレーザ光を真下に照射し、照射光が測定用アンテナ16の基準点を通るように設置されている。測定用アンテナ16は、ターンテーブル15の中心から予め設定された距離に設定されている。しかし、新たに測定用アンテナ16を第1アンテナポジショナ17に設置する場合や、測定用アンテナ16が位置ズレした場合には、ターンテーブル15の中心から測定用アンテナ16の基準点までの距離が不明であるため、第2の光照射機器21から照射するレーザ光Lに測定用アンテナ16の基準点を合わせることで、ターンテーブル15の中心と測定用アンテナ16の基準点との距離を設定することができる。第1、第2の光照射機器20、21は、必要に応じて測定結果に影響しないように電波吸収体で被覆される。
【0027】
以上説明したように本実施形態によれば、被測定アンテナ19を設置するターンテーブル15と、被測定用アンテナ19と対向するように被測定用アンテナ19から所定距離だけ離間する位置に設置された測定用アンテナ16と、を備え、ターンテーブル15の中心を通るレーザ光Lを照射する第1の光照射機器20を設け、第1の光照射機器20からの光点を基準に被測定アンテナ19を設置するようにしたため、第1の光照射機器20から照射されるレーザ光Lに被測定用アンテナ19の基準点を合わせるだけで、測定用アンテナ16と被測定用アンテナ19との間の距離を正確に設定することができる。従って、被測定用アンテナ19を再設置する場合にも第1の光照射機器20を用いることによって極めて簡単且つ迅速に所定の位置に再現性良く設置することができる。また、測定用アンテナ16が位置ズレするなどして測定用アンテナ16のターンテーブル15中心からの距離が不明になった場合には、第2の光照射機器21から照射されるレーザ光Lに測定用アンテナ16の基準点を合わせるだけで、測定用アンテナ16を測定位置に正確に設定することができる。
【0028】
第2の実施形態
本実施形態においても第1の実施形態と同一または相当部分には同一符号を付し、本発明の特徴についてのみ説明する。本実施形態の電波暗室10Aでは、図2に示すように、第1の光照射機器20がターンテーブル15の中心に設置されて、レーザ光Lを真上に向けて照射するようにしてある。第1の光照射機器20の光軸は、ターンテーブル15の軸芯と一致するように配置され、レーザ光Lがターンテーブル15の軸芯の延長線上を通るようにしてある。従って、第1の光照射機器20から照射されたレーザ光Lに被測定用アンテナ19の基準点を合わせることで、測定用アンテナ16に対する被測定用アンテナ19の位置を正確に位置決めして設置することができる。
【0029】
また、第2の光照射機器21は、測定用アンテナ16の基準点の真下で、第1の光照射機器20から所定の距離を隔てた床面13上に設置されている。第2の光照射機器21から照射したレーザ光Lは、測定用アンテナ16の基準点を通るようにしてある。その他は、第1の実施形態に準じて構成さている。
【0030】
従って、本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果を期することたできる。
【0031】
第3の実施形態
本実施形態においても第1の実施形態と同一または相当部分には同一符号を付し、本発明の特徴についてのみ説明する。本実施形態の電波暗室10Bでは、図3に示すように、第1の光照射機器20は、被測定用アンテナ19に近い側壁11の天井12の近傍で幅方向中央に設置されて、レーザ光Lを被測定用アンテナ19側の側壁11側から対向する壁面11側に向けて照射するようにしてある。レーザ光Lの光路上にはターンテーブル15の中心の真上に位置させた第1の反射鏡20Aが設置され、その反射面が45°の角度で傾斜している。第1の光照射機器20からのレーザ光Lは、第1の反射鏡20Aで反射してターンテーブル15の中心を照射するようにしてある。従って、第1の光照射機器20から照射されたレーザ光Lに被測定用アンテナ19の基準点を合わせることで、測定用アンテナ16に対する被測定用アンテナ19の位置を正確に位置決めして設置することができる。電波吸収体14にはレーザ光Lが通る通路(図示せず)が形成されている。また、図2に示す位置より低い位置に第1の光照射機器20を設置して、電波吸収体14の真下をレーザ光Lが通るようにしても良い。第2の光照射機器21についても同様のことが云える。
【0032】
また、第2の光照射機器21は、第1の光照射機器20が設置された側壁11と対向する側壁11に、第1の光照射機器20と対向させて設置されて、レーザ光Lを側壁11から対向壁面11に向けて照射するようにしてある。レーザ光Lの照射方向には第2の反射鏡21Aが設置され、第2の反射鏡21Aで第2の光照射機器21からのレーザ光Lを測定用アンテナ16の基準点に向けて反射するようにしてある。尚、第2の反射鏡21Aは、第1の反射鏡20Aとは逆向きの反射面を有している。その他は、第1の実施形態に準じて構成さている。
【0033】
本実施形態においても上記各実施形態と同様の作用効果を期することたできる。
【0034】
第4の実施形態
本実施形態においても第1の実施形態と同一または相当部分には同一符号を付し、本発明の特徴についてのみ説明する。本実施形態の電波暗室10Cは、図4に示すように、光照射機器20と、被測定体(例えば、電子機器)22を設置するためにターンテーブル15上に設けられた設置台23と、設置台23上の電子機器22を撮像する監視カメラ24Aと、監視カメラ24Aの撮像画像を映し出すモニタ24と、を備えて構成されている。設置台23は、ターンテーブル15と軸芯を共有するように配置されている。尚、光照射機器20は、上記各実施形態の第1の光照射機器に相当する。
【0035】
また、光照射機器20は、レーザ光Lを設置台23の中心、即ちターンテーブル15の中心を照射するように設置台23の真上に配置され、上記各実施形態と同様の働きをする。従って、電気機器22を設置台23上に設置する場合は、上記各実施形態と同様に光照射機器20からのレーザ光Lの照射スポットSを基準にすることで、電子機器22を設置台23上の測定位置に正確に設置することができる。
【0036】
監視カメラ24Aは、電波吸収体で表面が被覆された金属ケースによって覆われ、内部から外部へ電磁波ノイズを放射せず、外部からの電磁波を反射しないように構成され、例えば測定用アンテナ16側の側壁11と天井12のコーナー部に設置されている。モニタ24は、電波暗室10Cに隣接する測定室に配置されている。そして、モニタ24と監視カメラ24Aは、ケーブル24Bを介して互いに接続され。載置台23上の電子機器22を監視する監視手段として設けられ、測定中時にターンテーブル15を介して回転する電子機器22を常時監視し、ターンテーブル15の回転中に電子機器22の基準点がレーザ光Lから位置ズレするか否かを監視する。
【0037】
従って、電子機器22を設置台23上に設置する場合には、光照射機器20から設置台23の中心に照射されたスポットSに電子機器22の基準点を合わせて設置台23上に設置する。そして、ターンテーブル15を回転させ、監視カメラ24Aで電子機器22を監視し、電子機器22の基準点とレーザ光LのスポットSとが一致しているか否かを確認する。一致していないことが判れば、ターンテーブル15を止めて、電子機器22を再設置し、同様の操作を繰り返す。ターンテーブル15の回転中に電子機器22の基準点がスポットSから外れなくなった場合には、電子機器22の基準点とターンテーブル15の中心が一致したことになり、測定用アンテナ16による指向性測定等を開始することができる。測定開始後は、監視カメラ24A及びモニタ24によって電子機器22とレーザ光LのスポットSとの位置ズレを確認しながら測定することができる。
【0038】
以上説明したように本実施形態によれば、測定中にもターンテーブル15の中心と電子機器22の基準点の位置ズレを監視カメラ24A及びモニタ24によって常時監視することができ、正確な測定を行うことができる。電子機器22の基準点がターンテーブル15の中心から外れた場合には、その位置ズレを修正することができるため、測定結果であるアンテナ指向性パターンの測定精度や繰り返し精度を上げることができ、正確な測定を行うことができる。
【0039】
第5の実施形態
本実施形態においても第1の実施形態と同一または相当部分には同一符号を付し、本発明の特徴についてのみ説明する。本実施形態の電波暗室10Dは、図5の(a)、(b)に示すように、レーザ光を上下方向に照射して垂直面光L1を形成する垂直面光形成機器25を備え、垂直面光形成機器25によって測定用アンテナ16の方位角と被測定アンテナ19の方位角とを設定できるように構成されている。電波暗室10D自体は上記各実施形態と同一の構成を有している。
【0040】
垂直面形成機器25は、第1アンテナポジショナ17のアーム17Aに対してマスト25Aを介して着脱自在に取り付けるように構成されている。マスト25Aは、アーム17Aの基端部(測定用アンテナ16とは反対側に位置)に対して垂直に着脱自在に取り付けられ、その上端に固定された垂直光形成機器25は、測定用アンテナ16の後方でこれよりも高い位置にある。また、垂直面光形成機器25にはケーブル26Aを介してコントローラ26が接続され、垂直面光形成機器25はコントローラ26の制御下でレーザ光を被測定用アンテナ19に向けて照射し、振り子の原理でレーザ光を上下方向に照射してレーザ光の垂直面光(同図の(b)では斜線領域)L1を形成するようにしてある。垂直面形成機器25をアーム17Aに取り付ける場合には、垂直面形成機器25をマスト25Aに取り付けた後、その垂直面光L1が測定用アンテナ16の基準点と一致するように照射方向を調整する。
【0041】
また、被測定用アンテナ19を第2アンテナポジショナ18のアーム18Aに取り付ける場合には、コントローラ26の制御下で垂直光形成機器25から被測定用アンテナ19に向けて垂直面光L1を照射し、この垂直面光L1に被測定用アンテナ19の基準点が合うようにアーム18Aの向きを調整する。被測定用アンテナ19の基準点が垂直面光L1と一致すると、測定用アンテナ16の方位角と被測定用アンテナ19の方位角が正確に一致することになる。その後は、垂直面光形成機器25及びマスト25Aを第1アンテナポジショナ17から取り外し、所定の測定を実施する。
【0042】
本実施形態によれば、測定用アンテナ16より高い位置から被測定用アンテナ19の方位を正確に設定することができるため、水平方向が短い線状アンテナや、レーザ光がアンテナの開口面で遮られるホーンアンテナ、あるいは形状が複雑なアンテナであっても、測定用アンテナ16の方位角と被測定用アンテナ19の方位角を正確に一致させることができる。
【0043】
第6の実施形態
本実施形態においても第1の実施形態と同一または相当部分には同一符号を付し、本発明の特徴についてのみ説明する。本実施形態の電波暗室10Eは、図6の(a)、(b)に示すように、レーザ光を水平方向に照射して水平面光L2を形成する水平面光形成機器27を備え、水平面光形成機器27によって測定用アンテナ16の高さと被測定アンテナ19の高さとを設定できるように構成されている。電波暗室10E自体は上記各実施形態と同一の構成を有している。
【0044】
水平面光形成機器27は、図6の(a)、(b)に示すように、例えば柱状のマスト27Aを介してターンテーブル15の斜め後方の床面13に着脱自在に設置できるようになっている。水平面光形成機器27は、マスト27Aに対して昇降可能に取り付けられ、高さを調整できるようになっている。また、水平面光形成機器27にはケーブル28Aを介してコントローラ28が接続され、水平面光形成機器27はコントローラ28の制御下でレーザ光を被測定用アンテナ19に向けて照射し、振り子の原理でレーザ光を上下方向に照射して水平面光(同図の(a)では斜線領域)L2を形成するようにしてある。そして、測定用アンテナ16及び被測定用アンテナ19は、水平面光L2を基準にして高さが調整される。
【0045】
測定用アンテナ16の高さを調整する場合には、コントローラ28の制御下で、予め所定の高さに設定された水平面光形成機器27から測定用アンテナ16に向けて水平面光L2を照射し、水平面光L2に測定用アンテナ16の基準点が合うように測定用アンテナ16を第1アンテナポジショナ17において調整する。また、被測定用アンテナ19を第2アンテナポジショナ18の高さを調整する場合には、コントローラ28の制御下で水平面光形成機器27から被測定用アンテナ19に向けて水平面光L2を照射し、この水平面光L2に被測定用アンテナ19の基準点が合うようにアーム18Aの高さを調整する。被測定用アンテナ19の基準点が水平面光L2と一致すると、測定用アンテナ16の高さと被測定用アンテナ19の高さが正確に一致することになる。その後は、水平面光形成機器27及びマスト27Aを床面13から取り外し、所定の測定を実施する。
【0046】
本実施形態によれば、ターンテーブル15の斜め後方から測定用アンテナ16及び被測定用アンテナ19の高さを正確に設定することができるため、水平方向が短い線状アンテナや、レーザ光がアンテナの開口面で遮られるホーンアンテナ、あるいは形状が複雑なアンテナであっても、測定用アンテナ16の高さと被測定用アンテナ19の高さを正確に一致させることができる。
【0047】
また、第1〜第6の実施形態を適宜組み合わせることによって、測定用アンテナ16に対する被測定アンテナ19の位置(距離、高さ)及び方位を高精度で再現性良く設定し、信頼性の高い測定を繰り返し行うことができる。
【0048】
尚、本発明は上記実施形態に何等制限されるものではなく、本発明の各構成要素は必要に応じて適宜設計変更することができる。例えば、第5、第6の実施形態では垂直面光形成機器25及び水平面光形成機器27がそれぞれ本体とは別にコントローラ26、28を備えたものについて説明したが、垂直面光形成手段及び水平面光形成手段はそれぞれコントローラを内蔵したものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば測定用アンテナに対して被測定体を測定位置に正確にと場合に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(a)、(b)はそれぞれ本発明の電波暗室の一実施形態を示す図で、(a)はその内部を示す平面、(b)はその内部を示す側面図である。
【図2】本発明の電波暗室の他の実施形態の内部を示す側面図である。
【図3】本発明の電波暗室の更に他の実施形態の内部を示す側面図である。
【図4】(a)、(b)はそれぞれ本発明の電波暗室の一実施形態を示す図で、(a)はその内部を示す平面図、(b)はその内部を示す側面図である。
【図5】(a)、(b)はそれぞれ本発明の電波暗室の更に他の実施形態を示す図で、(a)はその内部を示す平面図、(b)はその内部を示す側面図である。
【図6】(a)、(b)はそれぞれ本発明の電波暗室の更に他の実施形態を示す図で、(a)はその内部を示す平面図、(b)はその内部を示す側面図である。
【符号の説明】
【0051】
10、10A、10B、10C、10D、10E 電波暗室
15 ターンテーブル
16 測定用アンテナ
19 被測定用アンテナ(被測定体)
20 第1の光照射機器(第1の光照射手段)
20A 第1の反射鏡
21 第2の光照射機器(第21の光照射手段)
21A 第2の反射鏡
22 電子機器(被測定体)
24 モニタ(監視手段)
24A 監視カメラ(監視手段)
25 垂直面光形成機器
27 水平面光形成機器
L レーザ光
L1 垂直面光
L2 水平面光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定体を設置するターンテーブルと、上記被測定体と対向するように上記被測定体から離間する位置に設置された測定用アンテナと、を備えた電波暗室において、上記ターンテーブルの軸芯を通る光を照射する第1の光照射手段を設け、第1の光照射手段からの光点を基準に上記被測定体を設置することを特徴とする電波暗室。
【請求項2】
上記測定用アンテナの基準点の通る光を照射して上記ターンテーブルの中心と上記測定用アンテナとの間の距離を設定する第2の光照射手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電波暗室。
【請求項3】
上記ターンテーブルの中心の真上または真下に上記第1の光照射手段を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電波暗室。
【請求項4】
上記測定用アンテナの基準点の真上または真下に上記第2の光照射手段を設けたことを特徴とする請求項2に記載の電波暗室。
【請求項5】
上記ターンテーブルの側方に上記第1の光照射手段を設けると共に上記ターンテーブルの中心に向けて上記第1の光照射手段からの光を反射する第1の反射鏡を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電波暗室。
【請求項6】
上記測定用アンテナの側方に上記第2の光照射手段を設けると共に上記測定用アンテナの基準点に向けて上記第2の光照射手段からの光を反射する第2の反射鏡を設けたことを特徴とする請求項2に記載の電波暗室。
【請求項7】
上記被測定体を監視する監視手段を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の電波暗室。
【請求項8】
被測定体を設置するターンテーブルと、上記被測定体と対向するように上記被測定体から離間する位置に設置された測定用アンテナと、を備えた電波暗室において、光を上下方向に照射して垂直面光を形成する垂直面光形成手段を上記測定用アンテナ側または上記被測定体側に着脱自在に設け、上記垂直面光で少なくとも上記被測定体の方位を設定することを特徴とする電波暗室。
【請求項9】
被測定体を設置するターンテーブルと、上記被測定体と対向するように上記被測定体から離間する位置に設置された測定用アンテナと、を備えた電波暗室において、光を水平方向に照射して水平面光を形成する水平面光形成手段を上記測定用アンテナまたは上記被測定体の側方に着脱自在に設け、上記水平面光で少なくとも上記被測定体の高さを設定することを特徴とする電波暗室。
【請求項10】
上記光は、レーザ光であることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の電波暗室。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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