説明

電波腕時計

【課題】平面アンテナを備えた電波腕時計において、巻真から流入した静電気による誤動作を低減すること。
【解決手段】本発明に係る電波腕時計は、竜頭が取り付けられる巻真13と、時計回路が搭載され、巻真13と第1の接点Aにより導通される時計回路基板21と、平面アンテナ11が搭載された平面アンテナ基板15と、を有するムーブメント101を金属製の裏蓋を有するケースに収容してなる電波腕時計であって、巻真13の軸方向視において、巻真13から時計回路基板21を通り、前記ケースへと短絡する電気的経路及び平面アンテナ11が、第1の接点A又は巻真13を通る厚み方向に向く直線Dに対し一の側に配置され、前記時計回路が直線Dに対し他の側に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波腕時計に関する。
【背景技術】
【0002】
電波腕時計を含む電子腕時計においては、ユーザが竜頭等の操作部材を操作した際に静電気による誤動作を起こす可能性がある。これを防止するために、電子腕時計の接地電位となる金属製のケースと操作部材を短絡することにより、静電気をケースへと速やかに逃がして、電子腕時計内部の時計回路への静電気の流入を防ぐことが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、操作部材である巻真に係合するクリックレバーを押圧する押圧手段を回路押さえ板に設け、かかる回路押さえ板の巻真に近い位置にケースに導通する導通部を設けた電子腕時計が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、電波腕時計であって、静電気耐性を向上するため、時計回路部の電源端子を導電性バネで外装ケースや裏蓋に導通しているものが記載されている。かかる電波腕時計では、アンテナの受信特性への影響を低減するため、前記導電性バネは前記アンテナから所定長さ以上離して設置されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3630098号公報
【特許文献2】特開2010−48605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に電波時計が受信する電波は、標準電波と呼ばれる長波である。この標準電波の受信は、地理的な制限を受け、また、低周波の搬送波を用いているため受信に時間がかかる欠点があるため、GPS(Global Positioning System)に代表される全地球測位システムにおいて用いられる極超短波を受信する電波時計が提案されている。このような極超短波の受信には、長波の電波の受信に用いられるバーアンテナではなく、極超短波の入射方向に受信面を持つ形式のアンテナ、例えば、パッチアンテナ、チップアンテナあるいは板状逆Fアンテナ等の平面アンテナが用いられる。
【0007】
このような極超短波を受信するための平面アンテナは、長波の受信に用いられていたバーアンテナに比して大きい。また、極超短波の受信時には高周波回路を動作させるため大きな電力が必要であり、搭載すべき電池も大型のものが必要となる。このように大型化した平面アンテナと電池を腕時計のケースに収めると、竜頭等の操作部材の取付機構(いわゆる、裏回り)に割ける空間が小さくなるため、上述の特許文献1のように、腕時計のムーブメントの裏側に配置される回路押さえ板を、巻真に係合するクリックレバーに直接短絡する構造を設けることは困難である。そのため、操作部材から流入した静電気を、時計回路が搭載された基板を経由してケースに放電しなければならないが、このようにすると静電気による誤動作を起こす可能性が高くなる。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、平面アンテナを備えた電波腕時計において、巻真から流入した静電気による誤動作を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る電波腕時計は、竜頭が取り付けられる巻真と、時計回路が搭載され、前記巻真と第1の接点により導通される時計回路基板と、平面アンテナが搭載された平面アンテナ基板と、を有するムーブメントを金属製の裏蓋を有するケースに収容してなる電波腕時計であって、前記巻真の軸方向視において、前記巻真から前記時計回路基板を通り、前記ケースへと短絡する電気的経路及び前記平面アンテナが、前記第1の接点又は前記巻真を通る厚み方向に向く直線に対し一の側に配置され、前記時計回路が前記直線に対し他の側に配置される。
【発明の効果】
【0010】
上記本発明によれば、平面アンテナを備えた電波腕時計において、巻真から流入した静電気による誤動作を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電波腕時計を示す平面図である。
【図2】電波腕時計のケースの内部に収容されるムーブメントを裏側から見た平面図である。
【図3】ムーブメントの概略分解斜視図である。
【図4】巻真の軸方向視におけるムーブメントの部分断面図である。
【図5】巻真から時計回路基板を通り、裏蓋へと短絡する電気的経路を図4で示した断面図上に示した図である。
【図6】本発明の第2の実施形態において、巻真から時計回路基板を通り、裏蓋へと短絡する電気的経路を巻真の軸方向視におけるムーブメントの部分断面図上に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電波腕時計100を示す平面図である。同図には、電波腕時計100のケース(外装)を構成する胴1、胴1内に配置された文字板2と時刻を示す指針である時針3、分針4、秒針5が示されている。また、胴1の3時側の側面にはユーザが種々の操作を行うための竜頭6、プッシュボタン7が配置されている。胴1の12時側及び6時側の側面からは、バンドを固定するためのバンド固定部8が伸びている。
【0014】
なお、同図に示した電波腕時計100のデザインは一例である。ここで示したもの以外にも、例えば、胴1を丸型でなく角型にしてもよいし、プッシュボタン7の有無、数、配置は任意である。また、本実施形態では、指針を時針3、分針4、秒針5の3本としているが、これに限定されず、秒針5を省略しても、あるいは、曜日、タイムゾーンやサマータイムの有無、電波の受信状態や電池の残量、各種の表示を行う指針や、日付表示等を追加したりしてもよい。また、ケースは胴1と図1に表れない裏蓋9から構成されるが、胴1及び裏蓋9はその両方が金属製であってもよいし、胴1を金属以外の材質、例えばセラミック製として裏蓋9を金属製としてもよく、その逆としてもよい。いずれにせよ、ケースを構成する胴1と裏蓋9の少なくともいずれかは金属製である。
【0015】
なお、本明細書では、前述の通り、電波腕時計という用語を、電波時計であって、かつ、腕時計であるものを指すものとして用いる。そして、本実施形態では、電波腕時計100は、GPS衛星などの日付や時刻に関する情報を含む衛星信号を送信する衛星から当該衛星信号を受信し、それに含まれる日付や時刻に関する情報、すなわち基準情報に基づき、腕時計内部に保持している時刻の情報である内部時刻を修正する機能を有している。但し、電波腕時計100が受信する電波信号は、衛星信号に限らず、基準情報を含む信号であれば特に限定されない。ただし、後述する平面アンテナ11により好適に受信される電波信号であることから、短波から極超短波の高周波信号であることが好ましい。
【0016】
なお、電波腕時計100では、文字板2を覆うようにガラス等の透明材料により形成された風防が胴1に取り付けられている。また、風防の反対側においては裏蓋9が胴1に取り付けられている。本明細書では、以降、電波腕時計100の風防が配置される方向(図1における紙面手前方向)を表側、裏蓋9が配置される方向(図1における紙面奥方向)を裏側と呼ぶ。
【0017】
文字板2の裏側には、電池10及び平面アンテナ11が、平面視において重なり合わないように配置されている。電池10は本実施形態ではリチウム二次電池であり、文字板2の裏側に設けられた太陽電池により発電された電力を蓄積できるようになっている。そのため、文字板2は透明または半透明である。なお、電池10の種類は特に限定されず、一次電池であってもよい。その場合には、太陽電池は設けられずともよいし、文字板2は透過性を有さなくともよい。また、本明細書では、前述の通り、平面アンテナという用語を電波信号の入射方向に受信面を持つ形式のアンテナを指すものとして用いている。本実施形態では、平面アンテナ11はパッチアンテナであり、それにより受信される電波信号は、GPS衛星からの衛星信号であり、極超短波である。平面アンテナ11には、その厚み方向を貫くように給電ピン11bが設けられ、表側を向く面が電波信号を受信する受信面11aとなっている。
【0018】
なお、文字板2は胴1の表側の開口よりも広く、その周縁部を胴1が覆っている。このため、文字板2は、胴1の開口の輪郭線(見切り線)Xよりも内側の領域(露出領域)のみが風防を介して外部から見えるようになっており、輪郭線Xよりも外側の領域(非露出領域)は胴1により隠されて外部から見えない。
【0019】
図2は、電波腕時計100のケースの内部に収容されるムーブメント101を裏側から見た平面図である。ムーブメント101は、支持枠となるほぼ円形の絶縁性材料からなる地板12に各部材を組みつけられた構成となっている。図2では、図中上方向にムーブメント101から飛び出すように竜頭6が取り付けられる巻真13が見えている。従って、同図においては、上方向が図1における3時方向に相当し、右方向が12時方向、左方向が6時方向となる。
【0020】
図2では電池10の正極にあたる面が見えており、電池10を裏側から押えるように金属板14が設けられている。金属板14には電池押え部141が設けられており、電池10の正極と接触し導通している。この正極の電位、すなわち金属板14の電位が電波腕時計100の接地電位となっている。電池押え部141はバネ弾性を有する舌状の突起であり、電池10を地板12側に押し付け固定する。また、同じくバネ弾性を有する舌状の突起である平面アンテナ基板接触部142が表側に向かって伸びており、金属板14の表側に配置される平面アンテナ基板15と接触し導通している。平面アンテナ基板接触部142が図示のように二か所設けられているのは、電気的接続を確実にするためである。さらに同様に、バネ弾性を有する舌状の突起である裏蓋接触部143及び144が裏側に向かって伸びている。裏蓋接触部143及び144は、ムーブメント101がケースに収容された際に、裏蓋に接触し導通することにより、ケースとムーブメント101を短絡し、ケースを接地電位とするための端子である。さらに、図2では、巻真13に設けられた凹部と嵌合する金属製のおしどり16、裏押え17、第1のスイッチ戻しバネ18及び第2のスイッチ戻しバネ19が示されている。裏押え17は、おしどり16をバネ弾性により巻真13に押し付けるとともに、巻真13の姿勢が特定の位置となるよう付勢してその操作の際に適当なクリック感を与えるための金属製の弾性部材である。また、第1のスイッチ戻しバネ18及び第2のスイッチ戻しバネ19は、図1に示したプッシュボタン7の押圧操作により変形して時計回路基板(図2では見えない)上に形成された回路と接触し、かかる押圧操作を検出するための金属製の弾性部材である。第1のスイッチ戻しバネ18及び第2のスイッチ戻しバネ19は、その弾性により、押圧操作後のプッシュボタン7を規定の位置に押し戻す。裏押え17、第1のスイッチ戻しバネ18及び第2のスイッチ戻しバネ19は本来金属板14の表側に位置しているため見えないが、同図では破線によりその位置を示した。また、同図では、時計回路基板に実装されるコントローラ20の位置も破線で示した。コントローラ20は、IC(Integrated Circuit)等のチップ型集積回路であり、電波腕時計100全体の動作を制御する制御回路が内蔵されているほか、電波腕時計100が保持する時刻を計時する時計回路が組み込まれている。従って、時計回路基板には時計回路が搭載されていることになる。静電気による電波腕時計100の誤動作、特に時刻のずれを防止するためには、この時計回路への静電気による影響を排除することが必要である。このことは、コントローラ20に与える静電気の影響を低減することが重要であることを意味している。
【0021】
図3は、ムーブメント101の概略分解斜視図である。図中上方向が裏側、下方向が表側を向く方向となっている。最下段に示されている円板が地板12であり、図中奥側に巻真13が見えている。その裏側には、時計回路基板21が配置される。コントローラ20は、図示の例では、時計回路基板21の表側に実装される。また、時計回路基板21の6時側の位置には矩形の切欠き211が設けられているが、これは、概略矩形の平面アンテナ11を収容するためのものである。そして、時計回路基板21の裏側には、平面アンテナ基板15が配置される。平面アンテナ基板15の表側の6時側の位置には平面アンテナ11が、受信面11aが表側を向くように配置されている。また、平面アンテナ基板15上には、平面アンテナ11による受信のための高周波回路が搭載されている。平面アンテナ基板15の12時側の位置、すなわち、時計回路基板21の切欠き211と反対側の位置には円形の切欠き151が設けられており、概略円形の電池10を収容するようになっている。
【0022】
電池10の裏側には金属製のリード板22が設けられており、リード板22は、好ましくは、電池10の裏側の面、この場合は負極に溶接され固定される。また、リード板22からはバネ弾性を有する舌状の突起である時計回路基板接触部221が表側に向かって伸びており、時計回路基板21と接触し導通している。時計回路基板接触部221もまた、電気的接続を確実にするため、図示のように二か所に設けられている。なお、ムーブメント101を作成するにあたり、電池10を金属板14及びリード板22以外の部材から確実に絶縁し、またその位置を固定するために、電池10と平面アンテナ基板15との間に電池を支持する絶縁性の電池枠を設けてもよい。本実施形態においても、電池枠を設けることが好ましいが、図3では図示が煩雑になるのを避けるため、電池枠の図示は省略している。また、電池10はここではいわゆるボタン型の電池として図示しているが、電池10の形状は特段限定されるものではない。また、電池10と前述の電池枠やリード板22等の部材を一体不可分に組み合わせ、電池パッケージの形態で電池10を用いるようにしてもよい。
【0023】
さらに、電池10の裏側に金属板14が配置される。図3では、金属板14から平面アンテナ基板接触部142が平面アンテナ基板15に向かって表側に延び、裏蓋接触部143及び144が裏側に向かって伸びる様子が示されている。電池押え部141もまた示されている。
【0024】
以上説明したムーブメント101を構成する各部材は、地板12に設けられた穴に円柱形状の柱状部材23を挿入し、ネジ231を締め込むことにより、地板12と金属板14に挟み込まれ固定される。図に表れない柱状部材23の表側端部にはネジ231と同様の拡幅形状の頭が設けられており、地板12の裏側に抜け落ちることはない。なお、本実施形態では、柱状部材23及びネジ231は金属製であり、導電性を有している。また、柱状部材23は、この例に示したムーブメント101では5本使用されているが、この数や配置は任意である。さらに、同図では、図示を簡明にする目的でネジ231を2本のみ示しているが、当然にネジ231は柱状部材23と同数設けられる。
【0025】
図4は、巻真13の軸方向視におけるムーブメント101の部分断面図である。すなわち、紙面手前方向が3時方向であり、上方向が裏側、下方向が表側であり、右方向が6時方向、左方向が12時方向に対応する。なお、図4は、特定平面による断面を示す図ではなく、巻真13の軸方向視においてムーブメント101を構成する各部材の位置関係を示す模式的な断面図である。したがって、実際には図面の奥行き方向にオフセットして配置されている部材が図4では同一平面上に示されている場合がある。
【0026】
同図を参照し、巻真13から流入した静電気がムーブメント101と裏蓋との接点である第2の接点Bまで到達する電気的経路を以下説明する。
【0027】
まず、巻真13から流入した静電気は、巻真13の凹部に嵌合するおしどり16へと伝わり、さらに、おしどり16を押圧する裏押え17、さらにその裏側に設けられた第1のスイッチ戻しバネ18へと流れる。第1のスイッチ戻しバネ18には、裏側に向かって突き出すバネ弾性を有する舌片181が設けられており、第1の接点Aにおいて、時計回路基板21の表面に設けられたプリントパターンと導通している。時計回路基板21の表面に設けられたプリントパターンは図中右方向、すなわち6時方向へと延び、第3の接点Cにより第2のスイッチ戻しバネ19に設けられた裏側に向かって突き出すバネ弾性を有する舌片191と導通している。第2のスイッチ戻しバネ19は、図中右側に示した柱状部材23と接触しており、静電気は、この柱状部材23を伝い金属板14へと流れる。さらに、金属板14に設けられた裏蓋接触部143と裏蓋との接触部である第2の接点Bを通ることにより、静電気は裏蓋に放出される。
【0028】
図5は、以上説明した巻真13から時計回路基板21を通り、裏蓋へと短絡する電気的経路を図4で示した断面図上に示した図である。図中、かかる電気的経路は太破線による矢線で示した。この電気的経路は、図示されたように、第1の接点Aを通り厚み方向に向く直線D(図中一点鎖線により示した)を考えると、かかる直線Dに対し一の側、この場合は6時方向である図中右側に配置されることになる。これに対し、コントローラ20は、直線Dに対し他の側、この場合は12時方向である図中左側に配置されることになる。この構成により、瞬間的な大電流となる静電気が、コントローラ20の近傍、特に厚み方向においてコントローラ20と重なり合う位置を通過しないので、コントローラ20、ひいては時計回路への静電気の影響が抑制される。なお、このとき、平面アンテナ11もまた、直線Dに対し一の側である図中右側に配置されている。これは、電池10と平面アンテナ11が大型であり厚みもあるため、この両者を平面視において重なり合わず、また、厚み方向においては同図に示すように互いに重なり合う位置に配置するため、図3に示したように時計回路基板21と平面アンテナ基板15の互いに反対側の位置に切欠き211及び151を設け、それぞれに平面アンテナ11及び電池10を収容したことによるものである。したがって、静電気が通過する電気的経路は平面アンテナ11の近傍を通過することとなる。そのため、受信への影響が懸念されるが、平面アンテナ11による受信は常時行われるわけではなく、また受信に失敗した際に再度受信を試みることも容易であるため、実用上の問題は生じない。また、平面アンテナ11は、長波受信用のバーアンテナと異なり、受信面11aの直上及びその近傍に導電性の部材が配置されなければ、その受信性能に影響はほとんどないため、かかる電気的経路を平面アンテナ11の近傍であって、受信面11aより裏側となる位置に設けることは何ら差し支えない。さらに、ムーブメント101を裏蓋に短絡する第2の接点Bの位置もまた、直線Dに対し一の側である図中右側に配置されている。これにより、金属板14へと流入した静電気が金属板14の面内でコントローラ20の厚み方向に重なり合う位置あるいはその近傍へと流れることがない。
【0029】
なお、本実施形態では、かかる電気的経路が、地板12と、時計回路基板21と、金属板14を貫通して固定する柱状部材23を経由するものとなっている。これにより、電気的経路の長さが短縮され、その全体の電気抵抗が小さいものとなる。
【0030】
なお、巻真13から裏蓋へと導通する電気的経路は、上述したものが唯一のものではなく、時計回路基板21や平面アンテナ基板15、あるいはその他の部材を通過する他の経路が存在しうる。このとき、巻真13から流入した静電気のできるだけ大きな割合を前述した電気的経路を経由することにより裏蓋へと逃がすためには、かかる電気的経路の経路長をできるだけ短くし、その電気抵抗を小さいものとすることが有効である。
【0031】
そこで、第2の接点B、すなわち、裏蓋接触部143の位置は、図5に示す直線Dに対し一の側である図中右側とするだけでなく、図2に示すように、平面視においても、ムーブメント101の中心より巻真13に近い側に設けることが好ましい。このようにすることで、巻真13より流入した静電気を裏蓋へと逃がす電気的経路を短く電気抵抗の小さいものとすることができる。なお、図2において、金属板14には裏蓋接触部143とは別に裏蓋接触部144が設けられており、2か所において裏蓋と接触するようになされている。裏蓋接触部144は、巻真13から流入した静電気を裏蓋へと逃がす際には積極的には寄与しないが、裏蓋と金属板14とを確実に同電位とする役割を担っている。
【0032】
続いて本発明の第2の実施形態に係る電波腕時計100を図面を参照しつつ説明する。本実施形態を説明するにあたり、先の実施形態と同一若しくは機能・構成が対応する部材には同符号を付し、その説明は先の実施形態における説明をもって援用することとし、重複する説明は省略する。
【0033】
図6は、本実施形態において、巻真13から時計回路基板21を通り、裏蓋へと短絡する電気的経路を巻真13の軸方向視におけるムーブメント101の部分断面図上に示した図である。本図は、先の実施形態における図5に対応する図である。
【0034】
本実施形態では、図6に示すように、おしどり16、裏押え17及び、第1のスイッチ戻しバネ18の舌片181の配置が巻真13の位置に対して逆に設けられている。このようにすると、巻真13から時計回路基板21を通り、裏蓋へと短絡する電気的経路は、巻真13からおしどり16、そして図中右方向である6時方向へ向かい裏押え17、第1のスイッチ戻しバネ18を経由し、舌片181と時計回路基板21とを導通する第1の接点Aを通り時計回路基板21へと順にのび、さらに、舌片191と時計回路基板21とを導通する第3の接点Cを通り第2のスイッチ戻しバネ19、柱状部材23を通り金属板14へと導通し、裏蓋接触部143から第2の接点Bにより裏蓋へとつながる。かかる電気的経路を、図中太破線による矢線で示した。このような電気的経路では、第1の接点Aが巻真13の位置よりもよりコントローラ20から遠く、平面アンテナ側の位置となるため、巻真13より流入した静電気がコントローラ20の近傍を流れることがなく、先の実施形態よりさらに静電気耐性が向上する。この実施形態での電気的経路においては、巻真13の軸方向視において、巻真13の位置が最もコントローラ20に近い位置となる。従って、かかる電気的経路は、巻真13を通り厚み方向に向く直線E(図中一点鎖線により示した)を考えると、かかる直線Eに対し一の側、この場合は6時方向である図中右側に配置されることになる。そして、コントローラ20は、直線Eに対し他の側、この場合は12時方向である図中左側に配置され、平面アンテナ11は、直線Eに対し一の側である図中右側に配置されることとなる。その他の点、例えば、第2の接点Bが直線Eに対し一の側である図中右側に配置される点、第2の接点Bが図2に示すように平面視において、ムーブメント101の中心より巻真13に近い側に配置される点、かかる電気的経路が柱状部材23を通る点、及び、電池10と平面アンテナ11が平面視において重なりあわず、厚み方向において重なり合うように配置される点は、先の実施形態と同様である。
【0035】
以上説明した実施形態に示した具体的な構成は例示であり、当業者は種々の変形を行ってもよい。例えば、各部材あるいはその部分の形状や数は適宜変更してもよく、図示したものと同一であることを要さない。例えば、上述の第1及び第2の実施形態においては、裏蓋接触部143により第2の接点Bが形成されているが、金属板14とケースとの導通は必ずしも裏蓋に対してなされずともよく、胴1に対して第2の接点Bが形成されるようにしてもよい。
【0036】
なお、以上説明した本発明の実施形態の一つの観点においては、ムーブメントをケースに導通する第2の接点が、前記巻真の軸方向視において、前記直線に対し前記一の側に配置される。これにより、巻真より流入した静電気がケースに逃げる際の誤動作の発生を低減できる。
【0037】
また、本発明の実施形態の別の観点においては、第2の接点は、平面視において、ムーブメントの中心より巻真に近い側に配置される。これにより、巻真より流入した静電気がケースに逃げる際の誤動作の発生をより一層低減できる。
【0038】
また、本発明の実施形態の別の観点においては、地板と、時計回路基板と、平面アンテナ基板と、第2の接点が設けられた金属板を貫通して固定する柱状部材を有し、電気的経路は、前記柱状部材を通る。このようにすれば、電気的経路を短くしその電気抵抗を抑制することができる。
【0039】
また、本発明の実施形態の別の観点においては、ムーブメントは、平面視において平面アンテナと重なりあわず、巻真の軸方向視において厚み方向に前記平面アンテナと重なり合うように配置される電池を有する。このようにすれば、大型の電池及び平面アンテナをコンパクトなケースに収容できる。
【符号の説明】
【0040】
1 胴、2 文字板、3 時針、4 分針、5 秒針、6 竜頭、7 プッシュボタン、8 バンド固定部、9 裏蓋、10 電池、11 平面アンテナ、11a 受信面、11b 給電ピン、12 地板、13 巻真、14 金属板、15 平面アンテナ基板、16 おしどり、17 裏押え、18 第1のスイッチ戻しバネ、19 第2のスイッチ戻しバネ、20 コントローラ、21 時計回路基板、22 リード板、23 柱状部材、100 電波腕時計、101 ムーブメント、141 電池押え部、142 平面アンテナ基板接触部、143,144 裏蓋接触部、151 切欠き、181 舌片、191 舌片、211 切欠き、221 時計回路基板接触部、231 ネジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竜頭が取り付けられる巻真と、
時計回路が搭載され、前記巻真と第1の接点により導通される時計回路基板と、
平面アンテナが搭載された平面アンテナ基板と、
を有するムーブメントを金属製の裏蓋を有するケースに収容してなる電波腕時計であって、
前記巻真の軸方向視において、前記巻真から前記時計回路基板を通り、前記ケースへと短絡する電気的経路及び前記平面アンテナが、前記第1の接点又は前記巻真を通る厚み方向に向く直線に対し一の側に配置され、前記時計回路が前記直線に対し他の側に配置される電波腕時計。
【請求項2】
前記ムーブメントを前記ケースに導通する第2の接点が、前記巻真の軸方向視において、前記直線に対し前記一の側に配置される請求項1に記載の電波腕時計。
【請求項3】
前記第2の接点は、平面視において、前記ムーブメントの中心より前記巻真に近い側に配置される請求項2に記載の電波腕時計。
【請求項4】
地板と、前記時計回路基板と、前記平面アンテナ基板と、前記第2の接点が設けられた金属板を貫通して固定する柱状部材を有し、
前記電気的経路は、前記柱状部材を通る請求項2又は3に記載の電波腕時計。
【請求項5】
前記ムーブメントは、平面視において前記平面アンテナと重なりあわず、前記巻真の軸方向視において厚み方向に前記平面アンテナと重なり合うように配置される電池を有する請求項1乃至4のいずれかに記載の電波腕時計。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−40793(P2013−40793A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176193(P2011−176193)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【Fターム(参考)】