説明

電流供給回路およびそれを用いた遭難警報装置

【課題】
汎用のICを使用して簡単な制御で、また1種類のPWM信号で調光時に特定のLEDのみ光度を上げたり点滅表示させるなど、2段階以上の光度で発光させることのできる調光方法、調光回路およびそれを用いた遭難警報装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
任意のデューティ比の正相PWM信号と、該正相PWM信号を反転させた逆相PWM信号とを用い、正相PWM信号に応じた第1の光度と、少なくとも前記逆相PWM信号に応じた第2の光度で複数のLEDの点灯を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示LEDの光度を調節し、特に調光時に任意のLEDのみの光度を上げたり、点滅させたりすることのできる電流供給回路に関する。また、それを用いた船舶用遭難警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、船舶の操舵指揮室などに設置される機器は、昼間の航海時には光度を高くして視認性を高め、夜間の航海時には、航路視認への妨害を避けるため、光度を低くして表示する必要がある。そのため、航海機器は表示部の光度を適当な明るさに加減する調光機能を備える必要がある。
【0003】
一方、海洋の遭難、安全通信システムとしてGMDSS(Global Maritime Distress and Safety System)が利用されている。このGMDSSでは、衛星通信技術、ディジタル通信技術等を利用することにより、海上の各船舶が如何なる海域で遭難しても捜索救助機関や付近航行船舶に対して迅速確実に救助要請を行うことができたり、陸上から提供される海上安全情報なども確実に入手することができる。また、SOLAS条約(海上人命安全条約)では、海上における遭難者の救助並びに船舶に備えるべき無線設備などの航行設備の要件等について規定している。
【0004】
特に、旅客船においては、操舵指揮室に遭難警報装置が設置されなければならない。この装置は、パネル上の1つまたは個々のボタンを押すことで、船上の全無線通信設備から遭難通報を開始することができるものである。遭難警報装置はまた、ボタンが作動した場合、また遭難通報を受信した場合には、どの無線設備を通じて得たものかを視覚的かつ聴覚的に示さなければならない。したがって遭難警報装置は、個々の無線設備に対応した遭難信号の発呼ボタンLEDと受信LED、それにブザーを備えるものが知られている。遭難信号発呼ボタンが作動した場合、また遭難通報を受信した場合、対応するLEDが点滅または発光するとともにブザー音を鳴らすことで乗務員は状態を知ることができる。
【0005】
特許文献1には、船舶における警報表示灯光度加減装置として、船舶の動力機関などの異常を知らせるために、警報表示等に光度加減装置を設け、光度加減装置の光度加減設定を、異常時に応動する警報リレーにより自動的に最大光度で点滅させ、確認操作により、光度加減装置の設定を元の設定値に戻して連続点灯するようにした装置が開示されている(特に特許文献1の図2、図3)。
【0006】
また、特許文献2には調光をPWM制御で行い、各種の表示を行う光源を、一定の周期で出力を送出するようにした基本波発生回路の出力にて駆動するようにし、減光時には減光波発生回路の出力にて、前記光源の通電時間の周期を断続するようにした、点滅による表示の減光装置が開示されている(特に特許文献2の図1、図2)。
【0007】
また近年ではこのような制御を行うためには、個々または複数のLEDを専用のICを用いてソフトウェアで制御する方法が用いられる。
【特許文献1】実開昭49−110588号公報
【特許文献2】実開昭56−16296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に示される警報装置は、調光回路にはトランジスタを用いているものの、調光回路以外で、点滅動作を実現させる回路などには複数のリレーを用いており、損失電力が大きく大掛かりな回路である。
【0009】
また特許文献2に示される減光装置は、近年一般的に行われる通電時間幅を調整するPWM制御の調光であるが、減光状態で一つのLEDを周期変動なく点滅させるための技術であり、調光された複数のLEDのうち、特定のLEDのみ光度を上げて点滅表示させる技術ではない。
【0010】
さらに、個々のLEDの制御のために専用ICを用いた制御方法では、制御回路が大きくなり、制御も複雑になるという欠点がある。また、専用ICは汎用ICに比べて製造中止になることが多く、調達できなくなるというおそれがある。一方、一般的な制御ではそれぞれのLEDを個別に調光する場合には、各々のLEDの調光度に応じた複数のPWM信号を個別に生成する必要があり、回路が大きくなる。
【0011】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、汎用のICを使用して簡単な制御で、また1種類のPWM信号で調光時に特定のLEDのみ光度を上げたり点滅表示させるなど、消灯を除いた2段階以上の光度で発光させることのできる調光方法、調光回路およびそれを用いた遭難警報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成とする。
【0013】
本発明の電流供給回路は、発光体に電流を供給する電流供給回路であって、設定されたデューティ比の正相PWM信号と該正相PWM信号に対して逆相の逆相PWM信号をそれぞれ出力するPWM信号出力回路と、前記正相PWM信号により駆動され、第1の定電流を出力する第1の定電流出力部と、前記逆相PWM信号により駆動され、第2の定電流を出力する第2の定電流出力部と、前記第1の定電流出力部からの出力を第1の制御信号によってオンオフ制御する第1の制御手段と、前記第2の定電流出力部からの出力を第2の制御信号によってオンオフ制御する第2の制御手段と、前記第1の定電流出力部から出力と前記第2定電流出力部の出力を合成して前記発光体に供給する電流供給部とを備える。
【0014】
本発明の電流供給回路は、前記第1の制御手段は、前記正相PWM信号をオンオフ制御することによって前記第1の定電流出力部からの出力をオンオフ制御し、前記第2の制御手段は、前記逆相PWM信号をオンオフ制御することによって前記第2の定電流出力部からの出力をオンオフ制御する。
【0015】
また本発明の電流供給回路は、前記PWM信号出力回路は前記正相PWM信号を分岐し反転させて逆相PWM信号を生成することを特徴とする。
【0016】
また本発明の電流供給回路は、複数の発光体に電流を供給し、2段階以上の光度で発光させる電流供給回路であって、それぞれの発光体に対応する複数の第1の定電流出力部と複数の第2の定電流出力部を備え、任意の発光体を第1の定電流出力部の出力のみをオンにした第1の光度で発光させ、他の任意の発光体を少なくとも第2の定電流出力部の出力をオンにした第2の光度で発光させることを特徴とする。
【0017】
さらに本発明の電流供給回路は、前記第2の光度は、前記第1の定電流出力部の出力部の出力と前記第2の定電流出力部の出力の両方をオンにした光度である。
【0018】
また、本発明の電流供給回路の制御信号生成部は、複数の前記第1の制御信号と複数の前記第2の制御信号を含むシリアル形式の制御信号を出力し、S/P変換部をさらに設け、前記シリアル形式の制御信号をパラレル形式に変換して定電流出力部からの出力を制御する。
【0019】
また、本発明の電流供給回路は、記複数の発光体を発光体群に分け、発光体セレクタをさらに設け、選択された発光体群に前記制御信号を出力し、個々の発光体を制御する。
【0020】
さらに本発明の電流供給回路はの前記シリアル形式の制御信号は、発光体群選択信号を含む。
【0021】
また、本発明の遭難警報装置は、船舶に備えられて外部無線設備と接続され、該外部無線設備での遭難警報の受信を通知するとともに、遭難警報信号を前記外部無線設備から送信する遭難警報装置であって、前記外部無線設備での受信や遭難警報の送信を発光して通知する複数の発光体と、遭難警報を送信するスイッチと、装置を操作するスイッチを備える表示操作部と、前記外部無線設備との送受信や前記表示操作部を制御する制御部とを備え、前記制御部は前記の電流供給回路を含む。
【0022】
さらに本発明の遭難警報装置は、前記表示操作部の複数の発光体は、前記外部無線設備の受信及び送信に対応する発光体を含み、前記送信に対応する発光体は、前記第1の定電流出力部の出力のみをオンにした第1の光度で発光させ、前記外部無線設備からの受信または前記外部無線設備への送信があった場合、受信および送信に対応する発光体を、前記第1の定電流出力部の出力部の出力と前記第2の定電流出力部の出力の両方をオンにした第2の光度で発光させて表示する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、第1の光度に対応した正相PWM信号のみから、第2の光度でも発光させられるため、生成するPWM信号が1種類でよい。また、正相PWM信号と逆相PWM信号の両方を組み合わせることで、デューティ比100%の光度が容易に実現できる。さらに、簡単な制御で多段階の光度での点滅も容易に実現できるうえ、複数のLEDのうち任意のLEDのみ光度を変えて発光させることができる。
【0024】
また本発明によれば、汎用のICを利用して簡単な制御で複数のLEDのうち任意のLEDのみ光度を変えて発光させることができる。
【0025】
また、制御部から出力される信号線を固定しているので、制御するLEDの数が増減しても柔軟に対応できる。LEDを群に分け、LED群を選択してデータを送るので、信号が短く効率よく制御できる。
【0026】
また、本発明の遭難警報装置によれば、遭難警報の送受信を簡単な制御で明確に表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1は、遭難警報装置100の表示操作部の外観図である。筐体101の下部からは、外部無線設備40と遭難警報装置100を接続する複数のケーブル41が延伸している。筐体101の前面パネルには、着信LED群11にLEDが6個、遭難信号発呼ボタン群12にボタンが5個、機能ボタン群13にボタンが4個付いている。遭難信号発呼ボタン群12と機能ボタン群13は照光式スイッチである。遭難信号発呼ボタン群12には、誤発射を防止するための保護カバーが付いている。これらの着信LEDと照光式ボタンLEDを総じてLEDと呼ぶ。
【0028】
図1、図2では、遭難信号発呼ボタンおよび機能ボタンは照光式スイッチとして、スイッチとLEDが一体となったボタンとしているが、操作スイッチとLEDとに分けても同様の動作や効果が得られる。
【0029】
機能ボタン群13は、LEDの光度を設定する光度設定手段である調光ボタン731、警報のブザー音を停止するミュートボタン732、テスト点灯を行うテストボタン733、電源を操作する電源ボタン734からなっている。
【0030】
また、遭難信号発呼ボタン群12は、VHF−1:721、VHF−2:722、MF/HF:723、インマルサット−1:724、インマルサット−2:725に対応する無線設備からそれぞれ遭難信号の発呼を開始するボタンである。
【0031】
着信LED群11は、VHF−1:711、VHF−2:712、MF/HF:713、インマルサット−1:714、インマルサット−2:715、および受信のみの無線装置であるNAVTEX:716に対応する無線設備で他船等からの遭難信号を受信したときに発光して知らせるLEDである。このように、遭難警報装置100は複数のLEDを備えている。また、30はブザー音を発生させるスピーカー部である。
【0032】
図2は、遭難警報装置100の構成を示すブロック図である。表示操作部15は、図1に示した前面パネル部に表れている。表示操作部15は、着信LED群11、遭難信号発呼ボタン群12、機能ボタン群13からなり、それぞれの外部無線設備40や遭難警報装置100の状態を発光によって表示している。制御部20は、外部無線設備40からの着信の状態を判断して、スピーカー部30および表示部15を制御する。外部無線設備40とは、具体的にはVHF−1:401、VHF−2:402、MF/HF:403、インマルサット−1:404、インマルサット−2:405、ナブテックス:406である。また制御部20は、表示操作部15の機能ボタン群13が操作された場合には、後述する各機能の制御を行い、遭難信号発呼ボタン群12が操作された場合には、外部無線設備40から遭難信号を送信する制御を行う。
【0033】
次に機能ボタン群13が操作されたときの動作を説明する。電源ボタン734は電源を入り切りする。TESTボタン733は、すべてのLEDが点灯するかどうかを確認するためのテストを行う。ミュートボタン732は、各種無線設備からの受信があった時のLEDの発光とともに鳴るスピーカー部30からのブザー音を停止するためのボタンである。調光ボタン731は、表示操作部15上の各種LEDを、他の装置の読み取りや航路の確認を妨げることのないような光度に設定する。具体的には、最大光度での点灯を100%とした場合、80%、60%、40%、20%の4段階で光度を設定する。1度押すごとに、設定レベルは80%から60%、40%と下降し、20%から40%、60%とまた上昇し以降は繰り返す。各無線設備40からの着信や、遭難信号の発呼がない通常状態の場合には、着信LED群11は消灯しており、遭難信号発呼ボタン群12および機能ボタン群13は全て調光ボタン731で設定したレベルで発光している。
【0034】
次に、遭難信号を発呼する場合の一例について図3を用いて説明する。図3の表に示す信号については後述する。発呼する前には、着信LED群11は消灯しており、遭難信号発呼ボタン群12および機能ボタン群13は設定した調光レベルで光っている(図3A)。例えば、インマルサット−2無線機405から遭難信号を発呼する場合、乗務員は、インマルサット−2遭難信号発呼ボタン725の保護カバーを開けてボタンを押す。信号の誤発射を防止するため、3〜4秒のボタンの長押しで制御部20は発呼動作を確定し、発呼を開始する。例えば、「ピー、ピー、ピー、ピーーーー」とブザー音が鳴り、遭難信号がインマルサット−2無線機405から送信される。インマルサット−2遭難信号発呼ボタン725は視認性を高めるため全灯(100%)で発光する。このとき、他の遭難信号発呼ボタン群12や機能ボタン群13は設定したレベルで発光し続けている(図3B)。他の無線設備から遭難信号を送信する場合も同様の動作をする。
【0035】
続いて、各無線設備からの遭難信号の着信があった場合について説明する。着信する前には、着信LED群11は消灯しており、遭難信号発呼ボタン群12および機能ボタン群13は設定したレベルで光っている(図3A)。例えば、MF/HF無線機403が遭難信号を受信した場合、制御部20はMF/HF無線機403から信号を受け、MF/HF着信LED713およびミュートボタン732を点滅表示するとともに、スピーカー部30からブザー音を「ピーポーピーポー」と鳴らす。ミュートボタン732は、ブザー音を停止するボタンをであることを示すために点滅している。視認性を高めるため、LEDの点滅は全灯(100%)消灯(0%)を繰り返す(図3C、Dを交互に繰り返す)。このとき、他の遭難信号発呼ボタン群12や機能ボタン群13は設定された調光レベルで発光し続けている。乗務員が受信を確認し、ブザー音を消すためにミュートボタン732を押すと、ブザー音は停止しミュートボタン732は設定したレベルで発光し、MF/HF着信LED713は全灯で発光する(図3E)。その後、MF/HF無線機403で受信内容が確認されると、制御部20は信号を受け取り、通常状態の点灯に切り替わる(図3A)。他の無線設備から受信があった場合も同様の動作をする。
【0036】
このように高い光度で発光したり点滅をすることで、遭難信号の送受信を明確に表示している。
【0037】
次に表示操作部の調光回路および調光方法について、図4、図5、図6を参照しながら説明する。制御の方法は、調光回路で一般的に行われるPWM制御である。ここでの調光レベルは20%とする。
【0038】
図4はLEDを駆動する調光回路500のブロック図である。調光回路500は制御部20、LED駆動部50、LED70からなる。制御部20は制御信号生成部21、PWM信号生成部22からなる。制御信号生成部21は、前述の表示操作部15や外部無線設備40からの信号に基づき、LEDの制御信号CONT_P、CONT_Nを生成して駆動部50へ出力する。PWM信号生成部22は、表示操作部15の特に調光ボタン731からの設定レベル信号に基づいたデューティ比のPWM信号を生成し、駆動部50に出力する。駆動部50は、制御信号生成部21から出力された制御信号とPWM信号生成部22から出力されたPWM信号からLEDを駆動する信号DRVを作り、LED70を発光させる。
【0039】
図5は、駆動部50の詳細を示す回路図である。制御部20から前述の信号CONT_P、CONT_N、PWM信号が出力される。第1のAND回路521には制御信号CONT_Pおよび第1のPWM信号が入力され、第1のAND回路521の出力は第1の定電流ドライバ531との間に設けたスイッチ533に入力される。ここで、第1のPWM信号とはPWM信号生成部22から出力され、バッファ511を通過した正相PWM信号(PWM_P)である。第2のAND回路522には制御信号CONT_Nおよび第2のPWM信号が入力され、AND回路522の出力は第2の定電流ドライバ532との間に設けたスイッチ534に入力される。ここで、第2のPWM信号とは、第1のPWM信号から分岐し、NOT回路512で反転した逆相PWM信号(PWM_N)である。前述のバッファ511はNOT回路512と伝播遅延を同じにするために設けている。第1の定電流ドライバ531と第2の定電流ドライバ532の出力は、それぞれ電力合成のダイオード541、542を介してその先で合流してDRV信号となり、LED70に接続されている。
【0040】
次に具体的な制御方法を示す。図6は、PWM信号、その正相PWM信号と逆相PWM信号、制御信号CONT_P、CONT_N、LEDに入力されるDRV信号およびLEDの光度を示す。CONT_P、CONT_Nは制御信号生成部21から出力される各点灯状態の制御信号である。PWMは調光ボタン731で設定されている設定レベルに合わせたデューティ比のPWM信号であり、ここでは、デューティ比20%としている。PWM_PはPWM信号と同相の正相PWM信号である。PWM_Nは、逆相PWM信号であり、正相PWM信号を反転させたものである。ここでは、デューティ比80%となる。
【0041】
制御信号とLEDの駆動時間およびLEDの光度について説明する。
まず、調光1点灯の時には、CONT_Pは1、CONT_Nは0である。図5に示す制御回路で、AND回路521、522にそれぞれの制御信号が入力される。第1のAND回路521からはデューティ比20%の正相PWM信号が出力され、第1の定電流ドライバ531を駆動する。一方、第2のAND回路522からの出力は0で、第2の定電流ドライバ532は駆動しない。したがって、DRV信号は20%となり、20%相当の時間だけ電流がLEDに流れるため、LEDは発光レベル20%で点灯する。
【0042】
また点滅時など、LEDを全灯100%で点灯させるときには、CONT_P、CONT_Nともに信号は1である。第1のAND回路521からはデューティ比20%の正相PWM信号が出力され、第1の定電流ドライバ531を駆動する。また第2のAND回路522からはデューティ比80%の逆相PWM信号が出力され、第2の定電流ドライバ532を駆動する。これらの電力は合成され、DRV信号はデューティ比100%となり、100%相当の時間、電流がLEDに流れるため、LEDは発光レベル100%で点灯する。点滅の消灯時には、CONT_P、CONT_Nともに信号は0である。このとき、第1のAND回路521からの出力は0で第2のAND回路522からの出力も0である。よって、LEDは点灯しない。
【0043】
一方、調光2点灯の時には、CONT_Pは0、CONT_Nは1である。第1のAND回路521からの出力は0で、第1の定電流ドライバ531は駆動しない。
【0044】
また、第2のAND回路522からはデューティ比80%の逆相PWM信号が出力され第2の定電流ドライバ532を駆動する。したがって、DRV信号は80%となり、80%相当の時間だけ電流がLEDに流れるため、LEDは発光レベル80%で点灯する。
【0045】
このように設定レベルのPWM信号の正相PWM信号と逆相PWM信号を利用し、設定レベルの点灯時には一方のPWM信号を使い、全灯時には正相PWM信号と逆相PWM信号を合成し、消灯時にはいずれも使わないことで、一種類のPWM信号から複数の光度でLEDを発光させることができる。
【0046】
次に、前述の方法で、複数のLEDを制御する方法、特に複数のLEDのうちの任意のLEDだけ光度を変える方法について説明する。図7は複数のLEDを制御する場合のブロック図である。
【0047】
制御するLEDが複数になるため、LEDを複数のLEDをまとめたLED群に分けて制御する。本発明の遭難警報装置100では、LEDは機能LED群13、発呼LED群12、着信LED群11に分かれているので、これらをLED群A、LED群B、LED群Cとする。ここでのLEDの数は、LED群Aは4個、LED群Bは5個からLED群Cは6個の集合である。
【0048】
制御部20から1種類のPWM信号と、LEDの数と同数のLED駆動用の制御信号CONT_P、CONT_Nが出力され、LED群A駆動部501、LED群B駆動部502、LED群C駆動部503へそれぞれ入力される。LED群駆動部50からは図4と同様に、DRV信号が出力され、LED70を駆動する。図7の太い信号線はバスラインを示している。また、LED群Aの1つ目のLEDをLED_A0とし、その制御信号をCONT_P_A0、CONT_N_A0、駆動信号をDRV_A0としている。また、LED群Cは調光点灯しないため、PWM信号は不要で点灯制御信号CONT_Cのみでよい。
【0049】
次に、制御するLEDの数が増えても、制御部20から出力される信号線が多くならず、LEDの増減に柔軟に対応することができる、他の実施例を図8に示す。図7にS/P変換部60を追加し、制御部から出力されたDLT信号、SDT信号、SCK信号がS/P変換部60に入力され、S/P変換部60から制御信号CONT_P、CONT_NがそれぞれのLED群駆動部50に出力される。DLT信号はラッチ信号、SDT信号は制御信号、SCK信号はクロック信号である。
【0050】
図9はS/P変換部60の内部を示す回路図である。シフトレジスタ61にSDT信号が入力される。SDT信号はLED群AおよびLED群BのLEDの制御信号CONT_P、CONT_Nと、LED群Cの制御信号CONT_Cを順に並べたシリアル信号であり、長さは24となる。クロック毎にシリアル形式のSDT信号が送られ、Q0からQ23までデータが入力される。次に、ラッチ信号DLTを入力すると、Q0〜Q7のデータはLED群Aの出力データラッチ65へ、Q8〜Q17のデータはLED群Bの出力データラッチ67へ、Q18〜Q23のデータはLED群Cの出力データラッチ69へ送られる。S/P変換部60より出力された後は図7の構成と同様に動作する。このような回路にすることで、制御部からの信号線が少なくでき、制御するLEDの数が異なる場合でも、同じ構成とすることができる。
【0051】
一方、図9に示すS/P変換では、SDT信号は駆動するLEDが増えるほど長くなり、変更のないLEDにも毎回信号を送信することになるので、効率が悪くなり、LEDが多い場合には適さない。そこで、図10に示す他の実施例のようにLED群セレクタ63を設けることができる。LED群セレクタ63は制御信号SDTをどのLED群駆動部に送信するかを選択する。
【0052】
LED群セレクタ63は、AND回路631、632、633からなる。このAND回路はLED群と同数設ける。入力の一方はシフトレジスタ61の出力に、もう一方はラッチ信号DLTに接続され、出力データラッチ65、67、69に出力データラッチ用ラッチ信号LT_A、LT_B、LT_Cを出力する。
【0053】
次に、具体的な群の選択方法について説明する。SDT信号はそれぞれのLEDの制御信号CONT_P、CONT_Nを順に並べたシリアル信号であり、長さはLED群の最大LED数に対応する。ここでは、最大10桁となる。このSDT信号に群セレクト信号SEL_A、SEL_B、SEL_Cを付け加える。Q0〜Q2はセレクタ信号とし、Q3〜Q12が制御信号CONT_P、CONT_Nとなる。Q0〜Q2に入ったセレクタ信号は前述のLED群セレクタのAND回路631、632、633にそれぞれ入力される。データを送信したいLED群、例えばLED群Aに対応するセレクト信号SEL_Aに"1"を入れ、ラッチ信号DLTが入力されると選択ラッチ信号LT_Aが1となり、出力データラッチ65にQ3〜Q12のデータが送られる。セレクト信号を複数"1"にしておけば、複数の出力データラッチに同時にデータを出力することができる。このような構成にすることで、複数のLED群に同一の動作をさせる場合、データの送信が1回で完了する。また、特定のLEDだけ動作を変更させたい場合は、そのLEDを含むLED群にのみ信号を出力すればよい。
【0054】
次に、具体的な制御信号について説明する。レジスタアドレスの割り当てを表1に示す。
【表1】

【0055】
SDTは、ここではD0からD12の13ビットの信号である。D0〜D2はセレクタ信号である。制御したいLED群のビットを1にする。D3〜D12はDAT0〜12と呼び、それぞれのLEDの制御信号CONT_P、CONT_Nの割当てである。シフトレジスタ61から出力される時点で、それぞれ信号SEL_AからDAT_9信号となる。点灯させたいLEDの点灯に使用したい制御信号のビットを1にする。着信LED群は調光レベルでの点灯がないため、点灯させたいLEDのビットを1にすればよい。
【0056】
図11は図10の回路図のタイミングチャートである。SDT信号には表1に示すデータが割当てられる。クロックSCKが進むごとにQ0〜Q12の信号にデータが入っていき、ラッチ信号DLTによって、シフトレジスタから出力データラッチにデータが渡される。このとき、Q0〜Q2のSEL信号はSEL_Aが"1"、SEL_Bが"0"、SEL_Cが"1"の場合、LED群セレクタのAND回路から出力される信号LT_Aは"1"、LT_Bは"0"、LT_Cは"1"となる。D12〜D3の信号が、DLTラッチのタイミングで置き換わる。
【0057】
図12は本実施例の具体的な回路図である。点線で囲んだ部分は、前出の図で示したブロックを表している。出力データラッチ65からの信号はそれぞれのLED制御信号となり、駆動部50へ入力される。図では、定電流源の前段のスイッチを省略して描いているが詳細は図5に示したものと同様である。
【0058】
次に図13に、本発明の遭難警報装置のを一般に市販されているICを用いて実現した場合の具体的な回路図を示す。
【0059】
(A)部はシフトレジスタであり、828は反転回路、811〜826はDラッチ回路であり、制御信号生成部21からの信号SDTをそれぞれの出力に受け渡す。81は一般的にシフトレジスタと呼ばれるICであり、具体的な汎用ICでは74HC595などが利用できる。出力はSEL_A〜C、およびDAT_0〜2であり、DAT_3以下は図では省略した。
【0060】
一方(B)部は、PWM信号から逆相PWM信号を生成するものであり、図5、図12に示したものと同様である。
【0061】
また、(C)部はLED群セレクタ63である。図12と異なる点は、反転回路834があることで、入力信号がnDLT、出力信号がnLTとなっている。これは後部のICの仕様により反転させている。
【0062】
(D)部に示す、851〜854、871〜874はDフリップフロップである。シフトレジスタ81からの出力DAT_0が851に、DAT_1が871に、DAT_2が852に、DAT_3が872、というようにそれぞれ入力される。856〜859、876〜879はDフリッププロップからの出力とPWM信号のAND回路である。861〜864、881〜884は定電流LEDドライバである。これら85、87は一般的に定電流LEDドライバと呼ばれるICの内部の回路である。具体的にはTB62707のICなどが利用できる。
【0063】
定電流LEDドライバ85は、シフトレジスタ81からのデータと、SEL_A信号より生成されたnLT_A信号および正相PWM信号が入力される。また、定電流LEDドライバ87は、シフトレジスタ81からのデータと、SEL_A信号より生成されたnLT_A信号および逆相PWM信号が入力される。図では、定電流ドライバの前段のスイッチは省略した。
【0064】
866〜869、886〜889は電力合成用のダイオードである。ダイオード866およびダイオード886の先、すなわちDAT_0信号からの出力(CONT_P_A0)とDAT_1信号からの出力(CONT_N_A0)は合流してLED734に接続されている。同様に、定電流LEDドライバ85と87からの出力はそれぞれ合流して対応するLEDに接続している。また、定電流LEDドライバ85、87の内部は5つ目以降を省略している。
【0065】
本実施例で着信LED群11は調光点灯しないため、着信LED用の定電流LEDドライバは1つでよく、PWM信号に代えてGNDに接続する。
【0066】
上述のように、制御信号を生成してシフトレジスタ81にデータを入力し、nDLTにパルスを与えて定電流LEDドライバ85、87にデータを渡す。これにより、点灯させたいLEDの使用したいPWM信号に相当する時間だけ該当する定電流ドライバを駆動させることができるので、任意のLEDの点灯消灯が制御できる。そして、複数のLEDを同時に制御することが可能となる。
【0067】
次に、前述した発光パターンの具体的な制御信号と表示操作部の状態を説明する。図3は、表示部LEDの状態と伝送データを示している。
【0068】
図3(A)に示すのは、通常状態の発光であり、着信LED群11は消灯し、遭難信号発呼ボタン群12および機能ボタン群13は調光レベルで発光している。このときの制御信号は<A>に示す通りであり、<A>のaおよびbの信号を送信することで制御できる。
【0069】
(B)はインマルサット−2で遭難信号を発呼した場合である。インマルサット−2遭難信号発呼ボタン725は全灯しており制御信号は、<B>に示す通りである。(A)から(B)の状態に変わるとき、機能LED群と着信LED群に変更はないため、発呼LED群だけ信号を送って制御する。
【0070】
(C)、(D)はMF/HFで着信したときの様子である。(C)はMF/HF着信LED713および調光ボタン732は全灯しており制御信号は、<C>のaおよびbの通りである。(D)はMF/HF着信LED713および調光ボタン732は消灯しており制御信号は、<D>のaおよびbの通りである。(C)と(D)の状態を繰り返す、つまり<C>a、bと<D>a、bの信号を繰り返し送信することによって、点滅状態が表される。
【0071】
(E)はさらにミュートボタンが押された場合である。MF/HF着信LED713は全灯し、ミュートボタン732は調光レベルで発光している。制御信号は<E>のaおよびbの通りである。
【0072】
このように、調光レベルのPWM信号の正相PWM信号と逆相PWM信号を用いることで、汎用のICを使用し、簡単な制御で、また1種類のPWM信号で、調光時に特定のLEDのみ光度を上げたり点滅表示させることのできる調光方法、調光回路およびそれを用いた遭難警報装置を実現できる。
【0073】
なお、本実施例に示した内容は下記のように変更しても同様に実現できる。
【0074】
発光部はLEDとして表したがこれに限定されず、ランプなどでもよい。
【0075】
SEL、DATの数はこれに限定されず、シフトレジスタを直列につなぐことで数を増やすことができる。また、LED群の数やそれぞれのLED群で制御するLEDの数もこれに限定されない。
【0076】
本実施例では、LED群セレクタはLED群と同数設けたが、これに限定されず、LED群セレクタを通さずにデータを受け取るLED群があってもよい。
【0077】
また、遭難警報装置として外部無線機を示したがこれに限定されない。また、遭難信号の受信や発呼を明確に知らせるためのLEDの点滅やブザー音は一例である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態による遭難警報装置100の表示操作部の外観図
【図2】本発明の実施の形態による遭難警報装置100および外部無線装置40の構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態による表示部LEDの状態と伝送データを示す図
【図4】本発明の実施の形態による一つのLEDを駆動する調光回路のブロック図
【図5】本発明の実施の形態による一つのLEDを駆動する調光回路の回路図
【図6】本発明の実施の形態によるPWM信号のパルスと制御信号を示す図
【図7】本発明の実施の形態による複数のLEDを駆動する調光回路のブロック図
【図8】本発明の実施の形態による複数のLEDを駆動する他の調光回路のブロック図
【図9】本発明の実施の形態によるS/P変換部を示す回路図
【図10】本発明の実施の形態によるLED群セレクタを含むS/P変換部を示す回路図
【図11】図10に示す回路の信号のタイミングチャート
【図12】本発明の実施の形態による複数のLEDを駆動する調光回路の回路図
【図13】本発明の実施の形態による遭難警報装置の回路図
【符号の説明】
【0079】
100 遭難警報装置
11 着信LED群
12 遭難信号発呼ボタン群
13 機能ボタン群
20 制御部
21 調光信号生成部
22 PWM信号生成部
40 外部無線装置
500 調光回路
50 駆動部
521、522 AND回路
531、532 定電流ドライバ
60 S/P変換部
61 シフトレジスタ
63 LED群セレクタ
65、67、69 出力データラッチ
70 LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光体に電流を供給する電流供給回路であって、
設定されたデューティ比の正相PWM信号と該正相PWM信号に対して逆相の逆相PWM信号をそれぞれ出力するPWM信号出力回路と、
前記正相PWM信号により駆動され、第1の定電流を出力する第1の定電流出力部と、
前記逆相PWM信号により駆動され、第2の定電流を出力する第2の定電流出力部と、
前記第1の定電流出力部からの出力を第1の制御信号によってオンオフ制御する第1の制御手段と、
前記第2の定電流出力部からの出力を第2の制御信号によってオンオフ制御する第2の制御手段と、
前記第1の定電流出力部から出力と前記第2定電流出力部の出力を合成して前記発光体に供給する電流供給部と
を備えたことを特徴とする電流供給回路。
【請求項2】
前記第1の制御手段は、前記正相PWM信号をオンオフ制御することによって前記第1の定電流出力部からの出力をオンオフ制御し、
前記第2の制御手段は、前記逆相PWM信号をオンオフ制御することによって前記第2の定電流出力部からの出力をオンオフ制御する
ことを特徴とする請求項1記載の電流供給回路。
【請求項3】
前記PWM信号出力回路は前記正相PWM信号を分岐し反転させて逆相PWM信号を生成することを特徴とする、請求項1または2に記載の電流供給回路。
【請求項4】
複数の発光体に電流を供給し、2段階以上の光度で発光させる電流供給回路であって、
それぞれの発光体に対応する複数の第1の定電流出力部と複数の第2の定電流出力部を備え、
任意の発光体を第1の定電流出力部の出力のみをオンにした第1の光度で発光させ、
他の任意の発光体を少なくとも第2の定電流出力部の出力をオンにした第2の光度で発光させることを特徴とする請求項1ないし3に記載の電流供給回路。
【請求項5】
請求項4に記載の電流供給回路であって、
前記第2の光度は、前記第1の定電流出力部の出力部の出力と前記第2の定電流出力部の出力の両方をオンにした光度であることを特徴とする電流供給回路。
【請求項6】
制御信号生成部は、複数の前記第1の制御信号と複数の前記第2の制御信号を含むシリアル形式の制御信号を出力し、
S/P変換部をさらに設け、前記シリアル形式の制御信号をパラレル形式に変換して定電流出力部からの出力を制御することを特徴とする請求項4または5に記載の電流供給回路。
【請求項7】
前記複数の発光体を発光体群に分け、発光体セレクタをさらに設け、選択された発光体群に前記制御信号を出力し、個々の発光体を制御することを特徴とする請求項4ないし6に記載の電流供給回路。
【請求項8】
前記シリアル形式の制御信号は、発光体群選択信号を含むことを特徴とする請求項4ないし7に記載の電流供給回路。
【請求項9】
船舶に備えられて外部無線設備と接続され、該外部無線設備での遭難警報の受信を通知するとともに、遭難警報信号を前記外部無線設備から送信する遭難警報装置であって、
前記外部無線設備での受信や遭難警報の送信を発光して通知する複数の発光体と、遭難警報を送信するスイッチと、装置を操作するスイッチを備える表示操作部と、
前記外部無線設備との送受信や前記表示操作部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は請求項1ないし8のいずれかに記載の電流供給回路を含むことを特徴とする遭難警報装置。
【請求項10】
請求項9に記載の遭難警報装置であって、
前記表示操作部の複数の発光体は、前記外部無線設備の受信及び送信に対応する発光体を含み、
前記送信に対応する発光体は、前記第1の定電流出力部の出力のみをオンにした第1の光度で発光させ、
前記外部無線設備からの受信または前記外部無線設備への送信があった場合、受信および送信に対応する発光体を、前記第1の定電流出力部の出力部の出力と前記第2の定電流出力部の出力の両方をオンにした第2の光度で発光させて表示することを特徴とする遭難警報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−33756(P2013−33756A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−241522(P2012−241522)
【出願日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【分割の表示】特願2008−186477(P2008−186477)の分割
【原出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】