電流測定装置
【課題】複数の導線を内包する任意の電線を対象として簡易に電流を測定することが可能な電流測定装置を得る。
【解決手段】電流測定装置1は、複数の導線11A〜11Cを内包する電線10に流れる電流を測定する電流測定装置であって、電線10の任意断面の外周上に離間して配置され、導線11A,11Bを流れる電流に起因して発生した磁束に基づいて当該電流を検出する、複数の電流検出素子22A〜22Cと、複数の電流検出素子22A〜22Cのうち出力値が最大である一の電流検出素子の当該出力値に基づいて、電線10に流れる電流を測定する電流測定手段50と、を備える。
【解決手段】電流測定装置1は、複数の導線11A〜11Cを内包する電線10に流れる電流を測定する電流測定装置であって、電線10の任意断面の外周上に離間して配置され、導線11A,11Bを流れる電流に起因して発生した磁束に基づいて当該電流を検出する、複数の電流検出素子22A〜22Cと、複数の電流検出素子22A〜22Cのうち出力値が最大である一の電流検出素子の当該出力値に基づいて、電線10に流れる電流を測定する電流測定手段50と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流測定装置に関し、特に、複数の導線を内包する電線に流れる電流を測定する電流測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1には、背景技術に係る電流測定装置が開示されている。当該電流測定装置は、2本の導線を含む平形の平行コードに流れる電流を測定するための装置である。1個のホール素子を有する磁気検出器によって平行コードを挟むことにより、2本の導線間にホール素子が配置される。そして、2本の導線間に発生する磁束をホール素子によって検出することにより、平行コードに流れる電流が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−189723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された電流測定装置によると、測定対象が、2本の導線を含む平形の平行コードに限定される。そのため、丸形の電線や3本以上の導線を含む電線等を対象として電流測定を行うことができないという問題がある。
【0005】
本発明はかかる問題を解決するために成されたものであり、複数の導線を内包する任意の電線を対象として簡易に電流を測定することが可能な電流測定装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る電流測定装置は、複数の導線を内包する電線に流れる電流を測定する電流測定装置であって、前記電線の任意断面の外周上に離間して配置され、前記導線を流れる電流に起因して発生した磁束に基づいて当該電流を検出する、複数の電流検出素子と、前記複数の電流検出素子のうち出力値が最大である一の電流検出素子の当該出力値に基づいて、前記電線に流れる電流を測定する測定手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0007】
第1の態様に係る電流測定装置によれば、複数の電流検出素子が、電線の任意断面の外周上に離間して配置される。電流検出素子の配置位置での磁束は、電流検出素子と導線との間の距離が大きくなるほど小さくなる。従って、ある導線の周囲に発生する磁束の向きと他の導線の周囲に発生する磁束の向きとが互いに逆である場合であっても、両導線からの距離の差が大きい位置に配置された電流検出素子からは、比較的大きい出力値が得られる。そこで、複数の電流検出素子のうち出力値が最大である一の電流検出素子の当該出力値に基づくことにより、電線に流れる電流を測定手段によって測定することが可能となる。しかも、第1の態様に係る電流測定装置によれば、測定対象は2本の導線を含む平形の平行コードに限定されず、丸形の電線や3本以上の導線を含む電線等の任意の電線を対象として電流測定を行うことが可能となる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る電流測定装置は、第1の態様に係る電流測定装置において特に、前記複数の電流検出素子の各々に対応して配置され、発生した前記磁束を各前記電流検出素子に誘導する複数の磁性体をさらに備え、隣接する前記磁性体同士の間には所定のギャップが設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
第2の態様に係る電流測定装置によれば、複数の電流検出素子の各々に対応して複数の磁性体が配置されており、隣接する磁性体同士の間には所定のギャップが設けられている。隣接する磁性体同士の間にギャップを設け、導線の周囲に発生した磁束の一部をギャップから外部に漏洩させることにより、ある向きの磁束の合計と、その向きとは逆向きの磁束の合計とを意図的に異ならせることができる。その結果、逆向きの磁束同士が完全に打ち消し合ってしまうという事態を回避することが可能となる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る電流測定装置は、第1又は第2の態様に係る電流測定装置において特に、前記複数の電流検出素子は、少なくとも三つの電流検出素子を含むことを特徴とするものである。
【0011】
第3の態様に係る電流測定装置によれば、複数の電流検出素子は、少なくとも三つの電流検出素子を含む。少なくとも三つの電流検出素子を配置することによって、全ての電流検出素子において逆向きの磁束同士が完全に打ち消し合ってしまうという事態は発生しないため、電流測定を適切に行うことが可能となる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る電流測定装置は、第3の態様に係る電流測定装置において特に、前記複数の電流検出素子は、等間隔に配置された三つの電流検出素子から成ることを特徴とするものである。
【0013】
第4の態様に係る電流測定装置によれば、複数の電流検出素子は、等間隔に配置された三つの電流検出素子から成る。従って、四つ以上の電流検出素子を用いる場合と比較して、製造コストを削減できるとともに、ギャップから漏洩する磁束を最小限に抑えることができるため、電流の測定精度を向上することが可能となる。
【0014】
本発明の第5の態様に係る電流測定装置は、第1〜第4のいずれか一つの態様に係る電流測定装置において特に、前記複数の電流検出素子を含むユニットが、前記電流検出素子の配置位置をずらして複数個配置されることを特徴とするものである。
【0015】
第5の態様に係る電流測定装置によれば、複数の電流検出素子を含むユニットが、電流検出素子の配置位置をずらして複数個配置される。従って、複数の導線からの距離の差がより大きい位置にいずれかの電流検出素子が配置される可能性が高まる。従って、より大きい最大出力値が得られる可能性が高まるため、電流の測定精度を向上することが可能となる。
【0016】
本発明の第6の態様に係る電流測定装置は、第1〜第5のいずれか一つの態様に係る電流測定装置において特に、前記測定手段は、前記複数の電流検出素子の出力に接続された複数の増幅回路と、前記複数の増幅回路の出力に接続された信号処理装置と、を有することを特徴とするものである。
【0017】
第6の態様に係る電流測定装置によれば、各電流検出素子の出力に増幅回路が接続されることにより、各電流検出素子の出力値が各増幅回路によってそれぞれ増幅されて信号処理装置に入力される。そのため、複数の電流検出素子の各出力値をリアルタイムに信号処理装置に入力することが可能となる。
【0018】
本発明の第7の態様に係る電流測定装置は、第1〜第5のいずれか一つの態様に係る電流測定装置において特に、前記測定手段は、前記複数の電流検出素子の出力に接続され、前記複数の電流検出素子からの出力値を順に切り換えて出力する切換回路と、前記切換回路の出力に接続された増幅回路と、前記増幅回路の出力に接続された信号処理装置と、を有することを特徴とするものである。
【0019】
第7の態様に係る電流測定装置によれば、各電流検出素子の出力は切換回路に接続され、切換回路の出力が増幅回路に接続される。従って、各電流検出素子の出力にそれぞれ増幅回路が接続される場合と比較すると、増幅回路の個数を削減できるため、低コスト化を図ることが可能となる。
【0020】
本発明の第8の態様に係る電流測定装置は、第1〜第7のいずれか一つの態様に係る電流測定装置において特に、前記電線は円形の断面形状を有することを特徴とするものである。
【0021】
第8の態様に係る電流測定装置によれば、測定対象である電線は円形の断面形状を有する。このように本発明に係る電流測定装置は、複数の電流検出素子を用いることにより、平形のケーブルに限らず、丸形のケーブル等を対象として電流測定を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数の導線を内包する任意の電線を対象として簡易に電流を測定することが可能な電流測定装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る電流測定装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】電線の断面構造を示す断面図である。
【図3】電線の周囲に電流センサユニットが取り付けられた状態を示す断面図である。
【図4】電線への電流センサユニットの取り付け構造の具体例を示す図である。
【図5】導線に電流が流れた時に電流検出素子を貫通して発生する磁束を示す図である。
【図6】電流測定手段の第1の例を示すブロック図である。
【図7】電流測定手段の第2の例を示すブロック図である。
【図8】電線の周囲に追加の電流センサユニットが取り付けられた状態を示す断面図である。
【図9】電線の周囲に複数の電流センサユニットが取り付けられた状態を示す図である。
【図10】電線及び電流センサユニットの構造の変形例を示す断面図である。
【図11】電線及び電流センサユニットの構造の変形例を示す断面図である。
【図12】電線及び電流センサユニットの構造の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係る電流測定装置1の構成を概略的に示す図である。図1の(A)は側面図を示し、図1の(B)は正面図を示している。電流測定装置1は、回路基板5を内蔵する下部筐体3と、下部筐体3に着脱自在な上部筐体2とを有している。測定対象である電線10は、電流センサユニット4を介して、下部筐体3と上部筐体2とによって上下から挟み込まれて固定される。図1の(C)に示すように、電流センサユニット4は、電線10の長さ方向における任意断面の外周上に配置される。本実施の形態の例において、電線10は、円形の断面形状を有する丸形電源ケーブルである。図1の(B)に示すように、下部筐体3の正面には、LED又はLCD等の表示部6と、無線LAN又はUSB等の通信部7とが配置されている。
【0026】
図2は、電線10の断面構造を示す断面図である。電線10は、複数本(この例では3本)の導線11A〜11Cを内包している。導線11A〜11Cは、ビニル絶縁体等の絶縁体12A〜12Cによってそれぞれ被覆されており、さらにその周囲がビニルシース等の絶縁体13によって被覆されている。導線11Aは、商用電源の非接地側に接続されるL端子用の導線である。導線11Bは、商用電源の接地側に接続されるN端子用の導線である。導線11Cは、アースに接続されるFG端子用の導線である。導線11Aと導線11Bとには、電流値が同じで方向が逆向きの電流が流れる。導線11Cには、通常状態では電流は流れない。
【0027】
図3は、図2に示した電線10の周囲に電流センサユニット4が取り付けられた状態を示す断面図である。電流センサユニット4は、互いに離間して電線10の外周上に等間隔に配置された複数個(この例では3個)の電流検出素子22A〜22Cを有している。電流検出素子22A〜22Cは、例えばホール素子であり、導線11A〜11Cを流れる電流に起因してその周囲に発生した磁束に基づいて、当該電流を検出する。電流検出素子22A〜22Cは、発生した磁束を電流検出素子22A〜22Cに誘導するためのフェライトコア等の磁性体21A〜21Cの一方端面に、それぞれ固定されている。磁性体21A〜21Cは、電線10の外周円の曲率に対応する円弧状の外形を有している。図3に示すように、電流検出素子22Aと磁性体21Bの他方端面との間にはギャップ23Aが設けられており、電流検出素子22Bと磁性体21Cの他方端面との間にはギャップ23Bが設けられており、電流検出素子22Cと磁性体21Aの他方端面との間にはギャップ23Cが設けられている。
【0028】
図4は、電線10への電流センサユニット4の取り付け構造の具体例を示す図である。上部筐体2の内面にはバネ25A,25Bが固定されており、下部筐体3の内面にはバネ25Cが固定されている。上部筐体2及び下部筐体3の各一方側面は、ヒンジ26によって回動自在に連結されている。ユーザは、上部筐体2を開いて下部筐体3の所定の箇所に電線10及び電流センサユニット4を配置する。次に、上部筐体2を閉じた後、ストッパ27によって上部筐体2及び下部筐体3の各他方側面を固定する。これにより、バネ25A〜25Cの付勢力によって磁性体21A〜21Cが電線10に向けて押し付けられ、その結果、磁性体21A〜21Cと電線10とが密着する。このような取り付け構造を採用することにより、直径が異なる様々な電線10に対して電流センサユニット4を適切に取り付けることができる。
【0029】
図5は、導線11A,11Bに電流が流れた時に電流検出素子22A,22Bを貫通して発生する磁束を示す図である。この例では、導線11Aには紙面の手前から奥に向かって電流が流れ、導線11Bには紙面の奥から手前に向かって電流が流れている状態を示している。周知のビオサバールの法則より、導線に流れる電流に起因してその周囲に発生する磁束の大きさは、導線との距離が大きくなるほど小さくなる。図5に示した例では、電流検出素子22Aと導線11Aとの間の距離は、電流検出素子22Aと導線11Bとの間の距離よりも小さい。従って、導線11Aに流れる電流に起因して電流検出素子22Aを貫通して発生する磁束(矢印Y1)の大きさは、導線11Bに流れる電流に起因して電流検出素子22Aを貫通して発生する磁束(矢印Y2)の大きさよりも大きくなる。よって、電流検出素子22Aには、両磁束が打ち消し合った後の矢印Y1の向きの残余の磁束に応じた起電力が現れる。また、電流検出素子22Bと導線11Aとの間の距離は、電流検出素子22Bと導線11Bとの間の距離よりも大きい。従って、導線11Aに流れる電流に起因して電流検出素子22Bを貫通して発生する磁束(矢印Y3)の大きさは、導線11Bに流れる電流に起因して電流検出素子22Bを貫通して発生する磁束(矢印Y4)の大きさよりも小さくなる。よって、電流検出素子22Bには、両磁束が打ち消し合った後の矢印Y4の向きの残余の磁束に応じた起電力が現れる。
【0030】
理論上は、導線11A,11Bの中心点を通る直線X1上に電流検出素子が配置された場合に、当該電流検出素子と導線11A,11Bとの距離の差が最も大きくなり、直線X1に直交する直線X2上に電流検出素子が配置された場合に、当該電流検出素子と導線11A,11Bとの距離の差が最も小さくなる。従って、直線X1の近くに配置されている電流検出素子ほどその出力値は大きくなり、直線X2の近くに配置されている電流検出素子ほどその出力値は小さくなる。図5に示した例では、電流検出素子22Aが直線X1の最も近くに配置されているため、電流検出素子22Aの出力値が最も大きくなる。また、電流検出素子22Cは直線X2の近くに配置されているため、電流検出素子22Cの出力値は小さくなる。
【0031】
図6は、図1に示した回路基板5上に形成される電流測定手段50の第1の例を示すブロック図である。電流測定手段50は、増幅回路31A〜31Cと、マイコン等の信号処理装置34とを有している。信号処理装置34は、ADコンバータ32A〜32Cとデータ処理部33とを有している。電流検出素子22A〜22Cの各出力は増幅回路31A〜31Cにそれぞれ接続されており、増幅回路31A〜31Cの各出力はADコンバータ32A〜32Cにそれぞれ接続されており、ADコンバータ32A〜32Cの各出力はデータ処理部33に接続されている。電流検出素子22A〜22Cからの各出力値は、まず増幅回路31A〜31Cによってそれぞれ増幅され、次にADコンバータ32A〜32Cによってディジタルデータにそれぞれ変換されて、データ処理部33に入力される。データ処理部33は、電流検出素子22A〜22Cからの各出力値のうち最大の出力値を選択し、その最大出力値に基づいて電線10に流れる電流を測定する。例えば、電線10に電流が流れている状態と流れていない状態とを区別するための所定のしきい値を予め設定してデータ処理部33内に保存しておき、最大出力値がしきい値以上である場合には電線10に電流が流れていると判定し、最大出力値がしきい値未満である場合には電線10に電流が流れていないと判定する。そして、その判定の結果を、表示部6に表示するとともに、通信部7からパソコンや表示装置等の外部端末に向けて送信する。あるいは、最大出力値を電流値に換算することによって電線10に流れている電流値を算出し、その算出した電流値を、表示部6に表示するとともに、通信部7から外部端末に向けて送信する。
【0032】
図7は、図1に示した回路基板5上に形成される電流測定手段50の第2の例を示すブロック図である。電流測定手段50は、アナログマルチプレクサ等の切換回路35と、増幅回路31と、信号処理装置34とを有している。信号処理装置34は、ADコンバータ32とデータ処理部33とを有している。電流検出素子22A〜22Cの各出力は切換回路35に接続されており、切換回路35の出力は増幅回路31に接続されており、増幅回路31の出力はADコンバータ32に接続されており、ADコンバータ32の出力はデータ処理部33に接続されている。電流検出素子22A〜22Cからの各出力値は、切換回路35に入力される。切換回路35は、データ処理部33から定期的に入力される制御信号に基づいて、電流検出素子22A〜22Cからの各出力値を順に切り換えて出力する。切換回路35から順に出力された各出力値は、まず増幅回路31によって増幅され、次にADコンバータ32によってディジタルデータに変換されて、データ処理部33に順に入力される。データ処理部33は、電流検出素子22A〜22Cからの各出力値のうち最大の出力値を選択し、上記と同様にその最大出力値に基づいて電線10に流れる電流を測定する。
【0033】
<第1の変形例>
図8は、図2に示した電線10の周囲に追加の電流センサユニット8が取り付けられた状態を示す断面図である。電流センサユニット8は、図3に示した電流センサユニット4と同様に、互いに離間して電線10の外周上に等間隔に配置された複数個(この例では3個)の電流検出素子22D〜22Fを有している。電流検出素子22D〜22Fは、発生した磁束を電流検出素子22D〜22Fに誘導するための磁性体21D〜21Fの一方端面に、それぞれ固定されている。磁性体21D〜21Fは、電線10の外周円の曲率に対応する円弧状の外形を有している。図8に示すように、電流検出素子22Dと磁性体21Eの他方端面との間にはギャップ23Dが設けられており、電流検出素子22Eと磁性体21Fの他方端面との間にはギャップ23Eが設けられており、電流検出素子22Fと磁性体21Dの他方端面との間にはギャップ23Fが設けられている。
【0034】
図9は、電線10の周囲に複数の電流センサユニット4,8が取り付けられた状態を示す図である。図9に示すように、電流センサユニット8は電流センサユニット4に近接して配置される。また、図3と図8とを比較すると明らかなように、電流センサユニット8における電流検出素子22D〜22Fの配置位置と、電流センサユニット4における電流検出素子22A〜22Cの配置位置とは、互いに補間する位置関係にある。具体的には、電流検出素子22Dは電流検出素子22Aと電流検出素子22Bとの中間の位置(つまり電流検出素子22A,22Bの各配置位置に対して60度ずれた位置)に配置され、電流検出素子22Eは電流検出素子22Bと電流検出素子22Cとの中間の位置(つまり電流検出素子22B,22Cの各配置位置に対して60度ずれた位置)に配置され、電流検出素子22Fは電流検出素子22Cと電流検出素子22Aとの中間の位置(つまり電流検出素子22C,22Aの各配置位置に対して60度ずれた位置)に配置される。
【0035】
<第2の変形例>
図10〜12は、電線及び電流センサユニットの構造の変形例をそれぞれ示す断面図である。上記実施の形態では、電線10が3本の導線11A〜11Cを内包し、電流センサユニット4がそれぞれ3個の電流検出素子22A〜22C及び磁性体21A〜21Cを有する例について述べたが、導線の本数は二本以上であればよく、電流検出素子及び磁性体の個数はそれぞれ2個以上(望ましくは3個以上)であればよい。
【0036】
図10に示した例では、電線10は2本の導線11A,11Bを内包し、電流センサユニット4はそれぞれ3個の電流検出素子22A〜22C及び磁性体21A〜21Cを有する。
【0037】
図11に示した例では、電線10は3本の導線11A〜11Cを内包し、電流センサユニット4はそれぞれ4個の電流検出素子22A〜22D及び磁性体21A〜21Dを有する。
【0038】
図12に示した例では、電線10は2本の導線11A,11Bを内包し、電流センサユニット4はそれぞれ4個の電流検出素子22A〜22D及び磁性体21A〜21Dを有する。
【0039】
また、電線10の断面形状は円形に限らず、平形、四角形、又は楕円形等の任意の形状であってよい。
【0040】
<まとめ>
このように本実施の形態に係る電流測定装置1によれば、複数の電流検出素子22A〜22Cが、電線10の任意断面の外周上に離間して配置される。電流検出素子22A〜22Cの配置位置での磁束は、電流検出素子22A〜22Cと導線11A,11Bとの間の距離が大きくなるほど小さくなる。従って、導線11Aの周囲に発生する磁束の向きと導線11Bの周囲に発生する磁束の向きとが互いに逆である場合であっても、両導線11A,11Bからの距離の差が大きい位置に配置された電流検出素子22A,22Bからは、比較的大きい出力値が得られる。そこで、複数の電流検出素子22A〜22Cのうち出力値が最大である電流検出素子22Aの当該出力値に基づくことにより、電線10に流れる電流を電流測定手段50によって測定することが可能となる。しかも、本実施の形態に係る電流測定装置1によれば、測定対象は2本の導線を含む平形の平行コードに限定されず、丸形の電線や3本以上の導線を含む電線等の任意の電線を対象として電流測定を行うことが可能となる。
【0041】
また、本実施の形態に係る電流測定装置1によれば、複数の電流検出素子22A〜22Cの各々に対応して複数の磁性体21A〜21Cが配置されており、隣接する磁性体21A〜21C同士の間には所定のギャップ23A〜23Cが設けられている。隣接する磁性体21A〜21C同士の間にギャップ23A〜23Cを設け、導線10の周囲に発生した磁束の一部をギャップ23A〜23Cから外部に漏洩させることにより、ある向きの磁束の合計と、その向きとは逆向きの磁束の合計とを意図的に異ならせることができる。その結果、逆向きの磁束同士が完全に打ち消し合ってしまうという事態を回避することが可能となる。
【0042】
また、本実施の形態に係る電流測定装置1によれば、電流センサユニット4は、少なくとも三つの電流検出素子22A〜22Cを含む。少なくとも三つの電流検出素子22A〜22Cを配置することによって、全ての電流検出素子22A〜22Cにおいて逆向きの磁束同士が完全に打ち消し合ってしまうという事態は発生しないため、電流測定を適切に行うことが可能となる。
【0043】
また、本実施の形態に係る電流測定装置1によれば、電流センサユニット4は、等間隔に配置された三つの電流検出素子22A〜22Cから成る。従って、四つ以上の電流検出素子を用いる場合(例えば図11,12)と比較して、製造コストを削減できるとともに、ギャップから漏洩する磁束を最小限に抑えることができるため、電流の測定精度を向上することが可能となる。
【0044】
また、上記第1の変形例に係る電流測定装置1によれば、複数の電流検出素子22A〜22C,22D〜22Fを含む複数の電流センサユニット4,8が、電流検出素子の配置位置をずらして配置される。従って、導線11A,11Bからの距離の差がより大きい位置にいずれかの電流検出素子が配置される可能性が高まる。従って、より大きい最大出力値が得られる可能性が高まるため、電流の測定精度を向上することが可能となる。
【0045】
また、図6に示した電流測定手段50によれば、各電流検出素子22A〜22Cの出力に増幅回路31A〜31Cが接続されることにより、各電流検出素子22A〜22Cの出力値が各増幅回路31A〜31Cによってそれぞれ増幅されて信号処理装置34に入力される。そのため、複数の電流検出素子22A〜22Cの各出力値をリアルタイムに信号処理装置34に入力することが可能となる。
【0046】
また、図7に示した電流測定手段50によれば、各電流検出素子22A〜22Cの出力は切換回路35に接続され、切換回路35の出力が増幅回路31に接続される。従って、各電流検出素子22A〜22Cの出力にそれぞれ増幅回路31A〜31Cが接続される場合(図6)と比較すると、増幅回路の個数を削減できるため、低コスト化を図ることが可能となる。
【0047】
また、本実施の形態に係る電流測定装置1によれば、測定対象である電線10は円形の断面形状を有する。このように本発明に係る電流測定装置1は、複数の電流検出素子22A〜22Cを用いることにより、平形のケーブルに限らず、丸形のケーブル等を対象として電流測定を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1 電流測定装置
4,8 電流センサユニット
10 電線
11A〜11C 導線
21A〜21F 磁性体
22A〜22F 電流検出素子
23A〜23F ギャップ
31,31A〜31C 増幅回路
34 信号処理装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流測定装置に関し、特に、複数の導線を内包する電線に流れる電流を測定する電流測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1には、背景技術に係る電流測定装置が開示されている。当該電流測定装置は、2本の導線を含む平形の平行コードに流れる電流を測定するための装置である。1個のホール素子を有する磁気検出器によって平行コードを挟むことにより、2本の導線間にホール素子が配置される。そして、2本の導線間に発生する磁束をホール素子によって検出することにより、平行コードに流れる電流が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−189723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された電流測定装置によると、測定対象が、2本の導線を含む平形の平行コードに限定される。そのため、丸形の電線や3本以上の導線を含む電線等を対象として電流測定を行うことができないという問題がある。
【0005】
本発明はかかる問題を解決するために成されたものであり、複数の導線を内包する任意の電線を対象として簡易に電流を測定することが可能な電流測定装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る電流測定装置は、複数の導線を内包する電線に流れる電流を測定する電流測定装置であって、前記電線の任意断面の外周上に離間して配置され、前記導線を流れる電流に起因して発生した磁束に基づいて当該電流を検出する、複数の電流検出素子と、前記複数の電流検出素子のうち出力値が最大である一の電流検出素子の当該出力値に基づいて、前記電線に流れる電流を測定する測定手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0007】
第1の態様に係る電流測定装置によれば、複数の電流検出素子が、電線の任意断面の外周上に離間して配置される。電流検出素子の配置位置での磁束は、電流検出素子と導線との間の距離が大きくなるほど小さくなる。従って、ある導線の周囲に発生する磁束の向きと他の導線の周囲に発生する磁束の向きとが互いに逆である場合であっても、両導線からの距離の差が大きい位置に配置された電流検出素子からは、比較的大きい出力値が得られる。そこで、複数の電流検出素子のうち出力値が最大である一の電流検出素子の当該出力値に基づくことにより、電線に流れる電流を測定手段によって測定することが可能となる。しかも、第1の態様に係る電流測定装置によれば、測定対象は2本の導線を含む平形の平行コードに限定されず、丸形の電線や3本以上の導線を含む電線等の任意の電線を対象として電流測定を行うことが可能となる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る電流測定装置は、第1の態様に係る電流測定装置において特に、前記複数の電流検出素子の各々に対応して配置され、発生した前記磁束を各前記電流検出素子に誘導する複数の磁性体をさらに備え、隣接する前記磁性体同士の間には所定のギャップが設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
第2の態様に係る電流測定装置によれば、複数の電流検出素子の各々に対応して複数の磁性体が配置されており、隣接する磁性体同士の間には所定のギャップが設けられている。隣接する磁性体同士の間にギャップを設け、導線の周囲に発生した磁束の一部をギャップから外部に漏洩させることにより、ある向きの磁束の合計と、その向きとは逆向きの磁束の合計とを意図的に異ならせることができる。その結果、逆向きの磁束同士が完全に打ち消し合ってしまうという事態を回避することが可能となる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る電流測定装置は、第1又は第2の態様に係る電流測定装置において特に、前記複数の電流検出素子は、少なくとも三つの電流検出素子を含むことを特徴とするものである。
【0011】
第3の態様に係る電流測定装置によれば、複数の電流検出素子は、少なくとも三つの電流検出素子を含む。少なくとも三つの電流検出素子を配置することによって、全ての電流検出素子において逆向きの磁束同士が完全に打ち消し合ってしまうという事態は発生しないため、電流測定を適切に行うことが可能となる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る電流測定装置は、第3の態様に係る電流測定装置において特に、前記複数の電流検出素子は、等間隔に配置された三つの電流検出素子から成ることを特徴とするものである。
【0013】
第4の態様に係る電流測定装置によれば、複数の電流検出素子は、等間隔に配置された三つの電流検出素子から成る。従って、四つ以上の電流検出素子を用いる場合と比較して、製造コストを削減できるとともに、ギャップから漏洩する磁束を最小限に抑えることができるため、電流の測定精度を向上することが可能となる。
【0014】
本発明の第5の態様に係る電流測定装置は、第1〜第4のいずれか一つの態様に係る電流測定装置において特に、前記複数の電流検出素子を含むユニットが、前記電流検出素子の配置位置をずらして複数個配置されることを特徴とするものである。
【0015】
第5の態様に係る電流測定装置によれば、複数の電流検出素子を含むユニットが、電流検出素子の配置位置をずらして複数個配置される。従って、複数の導線からの距離の差がより大きい位置にいずれかの電流検出素子が配置される可能性が高まる。従って、より大きい最大出力値が得られる可能性が高まるため、電流の測定精度を向上することが可能となる。
【0016】
本発明の第6の態様に係る電流測定装置は、第1〜第5のいずれか一つの態様に係る電流測定装置において特に、前記測定手段は、前記複数の電流検出素子の出力に接続された複数の増幅回路と、前記複数の増幅回路の出力に接続された信号処理装置と、を有することを特徴とするものである。
【0017】
第6の態様に係る電流測定装置によれば、各電流検出素子の出力に増幅回路が接続されることにより、各電流検出素子の出力値が各増幅回路によってそれぞれ増幅されて信号処理装置に入力される。そのため、複数の電流検出素子の各出力値をリアルタイムに信号処理装置に入力することが可能となる。
【0018】
本発明の第7の態様に係る電流測定装置は、第1〜第5のいずれか一つの態様に係る電流測定装置において特に、前記測定手段は、前記複数の電流検出素子の出力に接続され、前記複数の電流検出素子からの出力値を順に切り換えて出力する切換回路と、前記切換回路の出力に接続された増幅回路と、前記増幅回路の出力に接続された信号処理装置と、を有することを特徴とするものである。
【0019】
第7の態様に係る電流測定装置によれば、各電流検出素子の出力は切換回路に接続され、切換回路の出力が増幅回路に接続される。従って、各電流検出素子の出力にそれぞれ増幅回路が接続される場合と比較すると、増幅回路の個数を削減できるため、低コスト化を図ることが可能となる。
【0020】
本発明の第8の態様に係る電流測定装置は、第1〜第7のいずれか一つの態様に係る電流測定装置において特に、前記電線は円形の断面形状を有することを特徴とするものである。
【0021】
第8の態様に係る電流測定装置によれば、測定対象である電線は円形の断面形状を有する。このように本発明に係る電流測定装置は、複数の電流検出素子を用いることにより、平形のケーブルに限らず、丸形のケーブル等を対象として電流測定を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数の導線を内包する任意の電線を対象として簡易に電流を測定することが可能な電流測定装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る電流測定装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】電線の断面構造を示す断面図である。
【図3】電線の周囲に電流センサユニットが取り付けられた状態を示す断面図である。
【図4】電線への電流センサユニットの取り付け構造の具体例を示す図である。
【図5】導線に電流が流れた時に電流検出素子を貫通して発生する磁束を示す図である。
【図6】電流測定手段の第1の例を示すブロック図である。
【図7】電流測定手段の第2の例を示すブロック図である。
【図8】電線の周囲に追加の電流センサユニットが取り付けられた状態を示す断面図である。
【図9】電線の周囲に複数の電流センサユニットが取り付けられた状態を示す図である。
【図10】電線及び電流センサユニットの構造の変形例を示す断面図である。
【図11】電線及び電流センサユニットの構造の変形例を示す断面図である。
【図12】電線及び電流センサユニットの構造の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係る電流測定装置1の構成を概略的に示す図である。図1の(A)は側面図を示し、図1の(B)は正面図を示している。電流測定装置1は、回路基板5を内蔵する下部筐体3と、下部筐体3に着脱自在な上部筐体2とを有している。測定対象である電線10は、電流センサユニット4を介して、下部筐体3と上部筐体2とによって上下から挟み込まれて固定される。図1の(C)に示すように、電流センサユニット4は、電線10の長さ方向における任意断面の外周上に配置される。本実施の形態の例において、電線10は、円形の断面形状を有する丸形電源ケーブルである。図1の(B)に示すように、下部筐体3の正面には、LED又はLCD等の表示部6と、無線LAN又はUSB等の通信部7とが配置されている。
【0026】
図2は、電線10の断面構造を示す断面図である。電線10は、複数本(この例では3本)の導線11A〜11Cを内包している。導線11A〜11Cは、ビニル絶縁体等の絶縁体12A〜12Cによってそれぞれ被覆されており、さらにその周囲がビニルシース等の絶縁体13によって被覆されている。導線11Aは、商用電源の非接地側に接続されるL端子用の導線である。導線11Bは、商用電源の接地側に接続されるN端子用の導線である。導線11Cは、アースに接続されるFG端子用の導線である。導線11Aと導線11Bとには、電流値が同じで方向が逆向きの電流が流れる。導線11Cには、通常状態では電流は流れない。
【0027】
図3は、図2に示した電線10の周囲に電流センサユニット4が取り付けられた状態を示す断面図である。電流センサユニット4は、互いに離間して電線10の外周上に等間隔に配置された複数個(この例では3個)の電流検出素子22A〜22Cを有している。電流検出素子22A〜22Cは、例えばホール素子であり、導線11A〜11Cを流れる電流に起因してその周囲に発生した磁束に基づいて、当該電流を検出する。電流検出素子22A〜22Cは、発生した磁束を電流検出素子22A〜22Cに誘導するためのフェライトコア等の磁性体21A〜21Cの一方端面に、それぞれ固定されている。磁性体21A〜21Cは、電線10の外周円の曲率に対応する円弧状の外形を有している。図3に示すように、電流検出素子22Aと磁性体21Bの他方端面との間にはギャップ23Aが設けられており、電流検出素子22Bと磁性体21Cの他方端面との間にはギャップ23Bが設けられており、電流検出素子22Cと磁性体21Aの他方端面との間にはギャップ23Cが設けられている。
【0028】
図4は、電線10への電流センサユニット4の取り付け構造の具体例を示す図である。上部筐体2の内面にはバネ25A,25Bが固定されており、下部筐体3の内面にはバネ25Cが固定されている。上部筐体2及び下部筐体3の各一方側面は、ヒンジ26によって回動自在に連結されている。ユーザは、上部筐体2を開いて下部筐体3の所定の箇所に電線10及び電流センサユニット4を配置する。次に、上部筐体2を閉じた後、ストッパ27によって上部筐体2及び下部筐体3の各他方側面を固定する。これにより、バネ25A〜25Cの付勢力によって磁性体21A〜21Cが電線10に向けて押し付けられ、その結果、磁性体21A〜21Cと電線10とが密着する。このような取り付け構造を採用することにより、直径が異なる様々な電線10に対して電流センサユニット4を適切に取り付けることができる。
【0029】
図5は、導線11A,11Bに電流が流れた時に電流検出素子22A,22Bを貫通して発生する磁束を示す図である。この例では、導線11Aには紙面の手前から奥に向かって電流が流れ、導線11Bには紙面の奥から手前に向かって電流が流れている状態を示している。周知のビオサバールの法則より、導線に流れる電流に起因してその周囲に発生する磁束の大きさは、導線との距離が大きくなるほど小さくなる。図5に示した例では、電流検出素子22Aと導線11Aとの間の距離は、電流検出素子22Aと導線11Bとの間の距離よりも小さい。従って、導線11Aに流れる電流に起因して電流検出素子22Aを貫通して発生する磁束(矢印Y1)の大きさは、導線11Bに流れる電流に起因して電流検出素子22Aを貫通して発生する磁束(矢印Y2)の大きさよりも大きくなる。よって、電流検出素子22Aには、両磁束が打ち消し合った後の矢印Y1の向きの残余の磁束に応じた起電力が現れる。また、電流検出素子22Bと導線11Aとの間の距離は、電流検出素子22Bと導線11Bとの間の距離よりも大きい。従って、導線11Aに流れる電流に起因して電流検出素子22Bを貫通して発生する磁束(矢印Y3)の大きさは、導線11Bに流れる電流に起因して電流検出素子22Bを貫通して発生する磁束(矢印Y4)の大きさよりも小さくなる。よって、電流検出素子22Bには、両磁束が打ち消し合った後の矢印Y4の向きの残余の磁束に応じた起電力が現れる。
【0030】
理論上は、導線11A,11Bの中心点を通る直線X1上に電流検出素子が配置された場合に、当該電流検出素子と導線11A,11Bとの距離の差が最も大きくなり、直線X1に直交する直線X2上に電流検出素子が配置された場合に、当該電流検出素子と導線11A,11Bとの距離の差が最も小さくなる。従って、直線X1の近くに配置されている電流検出素子ほどその出力値は大きくなり、直線X2の近くに配置されている電流検出素子ほどその出力値は小さくなる。図5に示した例では、電流検出素子22Aが直線X1の最も近くに配置されているため、電流検出素子22Aの出力値が最も大きくなる。また、電流検出素子22Cは直線X2の近くに配置されているため、電流検出素子22Cの出力値は小さくなる。
【0031】
図6は、図1に示した回路基板5上に形成される電流測定手段50の第1の例を示すブロック図である。電流測定手段50は、増幅回路31A〜31Cと、マイコン等の信号処理装置34とを有している。信号処理装置34は、ADコンバータ32A〜32Cとデータ処理部33とを有している。電流検出素子22A〜22Cの各出力は増幅回路31A〜31Cにそれぞれ接続されており、増幅回路31A〜31Cの各出力はADコンバータ32A〜32Cにそれぞれ接続されており、ADコンバータ32A〜32Cの各出力はデータ処理部33に接続されている。電流検出素子22A〜22Cからの各出力値は、まず増幅回路31A〜31Cによってそれぞれ増幅され、次にADコンバータ32A〜32Cによってディジタルデータにそれぞれ変換されて、データ処理部33に入力される。データ処理部33は、電流検出素子22A〜22Cからの各出力値のうち最大の出力値を選択し、その最大出力値に基づいて電線10に流れる電流を測定する。例えば、電線10に電流が流れている状態と流れていない状態とを区別するための所定のしきい値を予め設定してデータ処理部33内に保存しておき、最大出力値がしきい値以上である場合には電線10に電流が流れていると判定し、最大出力値がしきい値未満である場合には電線10に電流が流れていないと判定する。そして、その判定の結果を、表示部6に表示するとともに、通信部7からパソコンや表示装置等の外部端末に向けて送信する。あるいは、最大出力値を電流値に換算することによって電線10に流れている電流値を算出し、その算出した電流値を、表示部6に表示するとともに、通信部7から外部端末に向けて送信する。
【0032】
図7は、図1に示した回路基板5上に形成される電流測定手段50の第2の例を示すブロック図である。電流測定手段50は、アナログマルチプレクサ等の切換回路35と、増幅回路31と、信号処理装置34とを有している。信号処理装置34は、ADコンバータ32とデータ処理部33とを有している。電流検出素子22A〜22Cの各出力は切換回路35に接続されており、切換回路35の出力は増幅回路31に接続されており、増幅回路31の出力はADコンバータ32に接続されており、ADコンバータ32の出力はデータ処理部33に接続されている。電流検出素子22A〜22Cからの各出力値は、切換回路35に入力される。切換回路35は、データ処理部33から定期的に入力される制御信号に基づいて、電流検出素子22A〜22Cからの各出力値を順に切り換えて出力する。切換回路35から順に出力された各出力値は、まず増幅回路31によって増幅され、次にADコンバータ32によってディジタルデータに変換されて、データ処理部33に順に入力される。データ処理部33は、電流検出素子22A〜22Cからの各出力値のうち最大の出力値を選択し、上記と同様にその最大出力値に基づいて電線10に流れる電流を測定する。
【0033】
<第1の変形例>
図8は、図2に示した電線10の周囲に追加の電流センサユニット8が取り付けられた状態を示す断面図である。電流センサユニット8は、図3に示した電流センサユニット4と同様に、互いに離間して電線10の外周上に等間隔に配置された複数個(この例では3個)の電流検出素子22D〜22Fを有している。電流検出素子22D〜22Fは、発生した磁束を電流検出素子22D〜22Fに誘導するための磁性体21D〜21Fの一方端面に、それぞれ固定されている。磁性体21D〜21Fは、電線10の外周円の曲率に対応する円弧状の外形を有している。図8に示すように、電流検出素子22Dと磁性体21Eの他方端面との間にはギャップ23Dが設けられており、電流検出素子22Eと磁性体21Fの他方端面との間にはギャップ23Eが設けられており、電流検出素子22Fと磁性体21Dの他方端面との間にはギャップ23Fが設けられている。
【0034】
図9は、電線10の周囲に複数の電流センサユニット4,8が取り付けられた状態を示す図である。図9に示すように、電流センサユニット8は電流センサユニット4に近接して配置される。また、図3と図8とを比較すると明らかなように、電流センサユニット8における電流検出素子22D〜22Fの配置位置と、電流センサユニット4における電流検出素子22A〜22Cの配置位置とは、互いに補間する位置関係にある。具体的には、電流検出素子22Dは電流検出素子22Aと電流検出素子22Bとの中間の位置(つまり電流検出素子22A,22Bの各配置位置に対して60度ずれた位置)に配置され、電流検出素子22Eは電流検出素子22Bと電流検出素子22Cとの中間の位置(つまり電流検出素子22B,22Cの各配置位置に対して60度ずれた位置)に配置され、電流検出素子22Fは電流検出素子22Cと電流検出素子22Aとの中間の位置(つまり電流検出素子22C,22Aの各配置位置に対して60度ずれた位置)に配置される。
【0035】
<第2の変形例>
図10〜12は、電線及び電流センサユニットの構造の変形例をそれぞれ示す断面図である。上記実施の形態では、電線10が3本の導線11A〜11Cを内包し、電流センサユニット4がそれぞれ3個の電流検出素子22A〜22C及び磁性体21A〜21Cを有する例について述べたが、導線の本数は二本以上であればよく、電流検出素子及び磁性体の個数はそれぞれ2個以上(望ましくは3個以上)であればよい。
【0036】
図10に示した例では、電線10は2本の導線11A,11Bを内包し、電流センサユニット4はそれぞれ3個の電流検出素子22A〜22C及び磁性体21A〜21Cを有する。
【0037】
図11に示した例では、電線10は3本の導線11A〜11Cを内包し、電流センサユニット4はそれぞれ4個の電流検出素子22A〜22D及び磁性体21A〜21Dを有する。
【0038】
図12に示した例では、電線10は2本の導線11A,11Bを内包し、電流センサユニット4はそれぞれ4個の電流検出素子22A〜22D及び磁性体21A〜21Dを有する。
【0039】
また、電線10の断面形状は円形に限らず、平形、四角形、又は楕円形等の任意の形状であってよい。
【0040】
<まとめ>
このように本実施の形態に係る電流測定装置1によれば、複数の電流検出素子22A〜22Cが、電線10の任意断面の外周上に離間して配置される。電流検出素子22A〜22Cの配置位置での磁束は、電流検出素子22A〜22Cと導線11A,11Bとの間の距離が大きくなるほど小さくなる。従って、導線11Aの周囲に発生する磁束の向きと導線11Bの周囲に発生する磁束の向きとが互いに逆である場合であっても、両導線11A,11Bからの距離の差が大きい位置に配置された電流検出素子22A,22Bからは、比較的大きい出力値が得られる。そこで、複数の電流検出素子22A〜22Cのうち出力値が最大である電流検出素子22Aの当該出力値に基づくことにより、電線10に流れる電流を電流測定手段50によって測定することが可能となる。しかも、本実施の形態に係る電流測定装置1によれば、測定対象は2本の導線を含む平形の平行コードに限定されず、丸形の電線や3本以上の導線を含む電線等の任意の電線を対象として電流測定を行うことが可能となる。
【0041】
また、本実施の形態に係る電流測定装置1によれば、複数の電流検出素子22A〜22Cの各々に対応して複数の磁性体21A〜21Cが配置されており、隣接する磁性体21A〜21C同士の間には所定のギャップ23A〜23Cが設けられている。隣接する磁性体21A〜21C同士の間にギャップ23A〜23Cを設け、導線10の周囲に発生した磁束の一部をギャップ23A〜23Cから外部に漏洩させることにより、ある向きの磁束の合計と、その向きとは逆向きの磁束の合計とを意図的に異ならせることができる。その結果、逆向きの磁束同士が完全に打ち消し合ってしまうという事態を回避することが可能となる。
【0042】
また、本実施の形態に係る電流測定装置1によれば、電流センサユニット4は、少なくとも三つの電流検出素子22A〜22Cを含む。少なくとも三つの電流検出素子22A〜22Cを配置することによって、全ての電流検出素子22A〜22Cにおいて逆向きの磁束同士が完全に打ち消し合ってしまうという事態は発生しないため、電流測定を適切に行うことが可能となる。
【0043】
また、本実施の形態に係る電流測定装置1によれば、電流センサユニット4は、等間隔に配置された三つの電流検出素子22A〜22Cから成る。従って、四つ以上の電流検出素子を用いる場合(例えば図11,12)と比較して、製造コストを削減できるとともに、ギャップから漏洩する磁束を最小限に抑えることができるため、電流の測定精度を向上することが可能となる。
【0044】
また、上記第1の変形例に係る電流測定装置1によれば、複数の電流検出素子22A〜22C,22D〜22Fを含む複数の電流センサユニット4,8が、電流検出素子の配置位置をずらして配置される。従って、導線11A,11Bからの距離の差がより大きい位置にいずれかの電流検出素子が配置される可能性が高まる。従って、より大きい最大出力値が得られる可能性が高まるため、電流の測定精度を向上することが可能となる。
【0045】
また、図6に示した電流測定手段50によれば、各電流検出素子22A〜22Cの出力に増幅回路31A〜31Cが接続されることにより、各電流検出素子22A〜22Cの出力値が各増幅回路31A〜31Cによってそれぞれ増幅されて信号処理装置34に入力される。そのため、複数の電流検出素子22A〜22Cの各出力値をリアルタイムに信号処理装置34に入力することが可能となる。
【0046】
また、図7に示した電流測定手段50によれば、各電流検出素子22A〜22Cの出力は切換回路35に接続され、切換回路35の出力が増幅回路31に接続される。従って、各電流検出素子22A〜22Cの出力にそれぞれ増幅回路31A〜31Cが接続される場合(図6)と比較すると、増幅回路の個数を削減できるため、低コスト化を図ることが可能となる。
【0047】
また、本実施の形態に係る電流測定装置1によれば、測定対象である電線10は円形の断面形状を有する。このように本発明に係る電流測定装置1は、複数の電流検出素子22A〜22Cを用いることにより、平形のケーブルに限らず、丸形のケーブル等を対象として電流測定を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1 電流測定装置
4,8 電流センサユニット
10 電線
11A〜11C 導線
21A〜21F 磁性体
22A〜22F 電流検出素子
23A〜23F ギャップ
31,31A〜31C 増幅回路
34 信号処理装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導線を内包する電線に流れる電流を測定する電流測定装置であって、
前記電線の任意断面の外周上に離間して配置され、前記導線を流れる電流に起因して発生した磁束に基づいて当該電流を検出する、複数の電流検出素子と、
前記複数の電流検出素子のうち出力値が最大である一の電流検出素子の当該出力値に基づいて、前記電線に流れる電流を測定する測定手段と、
を備える、電流測定装置。
【請求項2】
前記複数の電流検出素子の各々に対応して配置され、発生した前記磁束を各前記電流検出素子に誘導する複数の磁性体をさらに備え、
隣接する前記磁性体同士の間には所定のギャップが設けられている、請求項1に記載の電流測定装置。
【請求項3】
前記複数の電流検出素子は、少なくとも三つの電流検出素子を含む、請求項1又は2に記載の電流測定装置。
【請求項4】
前記複数の電流検出素子は、等間隔に配置された三つの電流検出素子から成る、請求項3に記載の電流測定装置。
【請求項5】
前記複数の電流検出素子を含むユニットが、前記電流検出素子の配置位置をずらして複数個配置される、請求項1〜4のいずれか一つに記載の電流測定装置。
【請求項6】
前記測定手段は、
前記複数の電流検出素子の出力に接続された複数の増幅回路と、
前記複数の増幅回路の出力に接続された信号処理装置と、
を有する、請求項1〜5のいずれか一つに記載の電流測定装置。
【請求項7】
前記測定手段は、
前記複数の電流検出素子の出力に接続され、前記複数の電流検出素子からの出力値を順に切り換えて出力する切換回路と、
前記切換回路の出力に接続された増幅回路と、
前記増幅回路の出力に接続された信号処理装置と、
を有する、請求項1〜5のいずれか一つに記載の電流測定装置。
【請求項8】
前記電線は円形の断面形状を有する、請求項1〜7のいずれか一つに記載の電流測定装置。
【請求項1】
複数の導線を内包する電線に流れる電流を測定する電流測定装置であって、
前記電線の任意断面の外周上に離間して配置され、前記導線を流れる電流に起因して発生した磁束に基づいて当該電流を検出する、複数の電流検出素子と、
前記複数の電流検出素子のうち出力値が最大である一の電流検出素子の当該出力値に基づいて、前記電線に流れる電流を測定する測定手段と、
を備える、電流測定装置。
【請求項2】
前記複数の電流検出素子の各々に対応して配置され、発生した前記磁束を各前記電流検出素子に誘導する複数の磁性体をさらに備え、
隣接する前記磁性体同士の間には所定のギャップが設けられている、請求項1に記載の電流測定装置。
【請求項3】
前記複数の電流検出素子は、少なくとも三つの電流検出素子を含む、請求項1又は2に記載の電流測定装置。
【請求項4】
前記複数の電流検出素子は、等間隔に配置された三つの電流検出素子から成る、請求項3に記載の電流測定装置。
【請求項5】
前記複数の電流検出素子を含むユニットが、前記電流検出素子の配置位置をずらして複数個配置される、請求項1〜4のいずれか一つに記載の電流測定装置。
【請求項6】
前記測定手段は、
前記複数の電流検出素子の出力に接続された複数の増幅回路と、
前記複数の増幅回路の出力に接続された信号処理装置と、
を有する、請求項1〜5のいずれか一つに記載の電流測定装置。
【請求項7】
前記測定手段は、
前記複数の電流検出素子の出力に接続され、前記複数の電流検出素子からの出力値を順に切り換えて出力する切換回路と、
前記切換回路の出力に接続された増幅回路と、
前記増幅回路の出力に接続された信号処理装置と、
を有する、請求項1〜5のいずれか一つに記載の電流測定装置。
【請求項8】
前記電線は円形の断面形状を有する、請求項1〜7のいずれか一つに記載の電流測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−2974(P2013−2974A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134709(P2011−134709)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】
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