説明

電源制御装置

【課題】ノイズ対策用のフィルタ回路における発熱を抑制し、電源の効率を向上する。
【解決手段】スイッチング素子を備えたDC−DCコンバータ1とノイズ対策用のフィルタ回路3とを有する電源制御装置1において、フィルタ回路3と並列にバイパス回路4を設ける。ラジオ放送受信時はDC−DCコンバータ1とフィルタ回路3と接続状態とし、ラジオ放送非受信時はDC−DCコンバータ1とバイパス回路4とを接続状態とする制御装置7を備えたことにより、ラジオ放送受信時のみフィルタ回路3を経由するので、フィルタ回路3における発熱を抑制し、電源の効率を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、車両に搭載された電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気自動車の駆動システムあるいはハイブリッド自動車のパラレルハイブリッド駆動システムに採用されたDC−DCコンバータが開示されている。DC−DCコンバータは固定周波数(100kHz)でスイッチングするスイッチング方式であり、カーラジオへの受信障害を及ぼすものであってはならず、フィルタ等でノイズ低減対策を行っている。例えば、特許文献1の図5に示された従来技術では、スイッチング素子の動作によるスイッチングノイズを低減し、カーラジオの受信障害を低減するため、DC−DCコンバータ7の前後にフィルタ72、78が接続されている。また、特許文献1の図1に示された発明はDC−DCコンバータ7のスイッチング周波数を調整することによりAM放送に対するカーラジオの受信障害を大幅に低減することができ、フィルタ72、78の簡素化が図れるとしている。
【特許文献1】特開2003−88101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1ではノイズ低減のためDC−DCコンバータ7にフィルタ72、78の接続が必要であることを開示している。しかし、DC−DCコンバータ7によってフィルタ72、78には常時大電流が流れるため、フィルタ72,78での発熱が大きくなり、電源効率が悪化するという問題がある。
【0004】
本願発明の目的は、ノイズ対策用のフィルタ回路における発熱を抑制し、電源の効率を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本願発明は、スイッチング素子を備えた電源回路とノイズ対策用のフィルタ回路とを有する電源制御装置において、前記フィルタ回路と並列にバイパス回路を設け、ラジオ放送非受信時は前記電源回路と前記バイパス回路とを接続状態とし、ラジオ放送受信時は前記電源回路と前記フィルタ回路とを接続状態とする制御装置を備えたことを特徴とする。
【0006】
請求項1記載の本願発明によれば、ラジオ放送受信時は電源回路とフィルタ回路とが接続状態となる。このとき電源回路とバイパス回路とは遮断状態となる。よって、電源回路とフィルタ回路とが接続状態となっているので、電源回路から生じるスイッチングノイズはフィルタ回路によって低減され、ラジオ放送への影響を抑えることができる。また、ラジオ放送非受信時は電源回路とバイパス回路とが接続状態となる。このとき電源回路とフィルタ回路とは遮断状態となる。よって、フィルタ回路には電流が流れないため、フィルタ回路での発熱を抑制することができる。
【0007】
請求項2に記載の本願発明は、制御装置はラジオの放送受信開始信号に基づき電源回路とフィルタ回路とを接続するため、ラジオ放送の受信を開始した時に確実にフィルタ回路を経由することができる。
【0008】
請求項3に記載の本願発明は、車両に搭載されたラジオの放送受信開始信号はラジオの電源スイッチから得ることを特徴とするため、ラジオの電源スイッチをオンにするとラジオの放送受信開始信号を制御装置へ発信するので、制御装置の制御方法を簡略化することが可能となる。
【0009】
請求項4に記載の本願発明は、電源回路とフィルタ回路との間、及び電源回路とバイパス回路との間にそれぞれスイッチが介在され、制御装置は各スイッチをオン、オフすることを特徴とするため、フィルタ回路に流す電流を簡単に制御することが可能となる。即ち、電源回路とフィルタ回路との間のスイッチをオンすれば電源回路とフィルタ回路とが接続状態となり、電源回路とバイパス回路との間のスイッチをオンすれば電源回路とバイパス回路とが接続状態となる。
【0010】
請求項5に記載の本願発明は、電源回路はDC−DCコンバータであることを特徴とするため、DC−DCコンバータからの大電流によってフィルタ回路が発熱することを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本願発明は、ノイズ対策用のフィルタ回路における発熱を抑制し、電源の効率を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。
図1は車両に搭載されたスイッチング素子を備えた電源回路としてのDC−DCコンバータ1を有する電源制御装置2の構造を示す。DC−DCコンバータ1に対し、ノイズ対策用のフィルタ回路3がスイッチ9を介して設けられており、バイパス回路4がスイッチ8を介して設けられている。フィルタ回路3及びバイパス回路4は、互いに並列に設けられており、バッテリ5に接続されている。制御装置7は、各スイッチ8、9のオン、オフを制御している。例えば、スイッチ8がオンの状態ではスイッチ9がオフになり、スイッチ9がオンの状態ではスイッチ8がオフになるように制御している。また、バッテリ5は車両に搭載された例えばAM放送を受信可能なラジオ6に接続されている。このラジオ6は制御装置7に接続されているとともに電源スイッチ10が設けられている。そして、ラジオ6の電源スイッチ10をオンすることにより、ラジオの放送受信開始信号が制御装置7へ発信される。
【0013】
以上のように構成された第1の実施形態の作用を以下に説明する。
車両に搭載されたラジオ6の電源スイッチ10がオフのとき、即ちラジオ放送非受信時では、図1に示すように制御装置7はスイッチ9をオフするとともにスイッチ8をオンする。よって、DC−DCコンバータ1とバイパス回路4とが接続状態となるとともにDC−DCコンバータ1とフィルタ回路3とが遮断状態となる。このため、電流はDC−DCコンバータ1からバイパス回路4を経由しバッテリ5へと流れる。また、車両に搭載されたラジオ6の電源スイッチ10がオンにされると、ラジオ放送非受信時からラジオ放送受信時へと切り換わる。即ち、電源スイッチ10からの放送受信開始信号が制御装置7へ発信され、図2に示すように制御装置7はスイッチ8をオフするとともにスイッチ9をオンする。このため、電流はDC−DCコンバータ1からフィルタ回路3を経由しバッテリ5へと流れる。
【0014】
前記した本願発明の第1の実施形態は、以下の作用効果が得られる。
(1)DC−DCコンバータ1はスイッチング素子を備えており、スイッチング素子がスイッチング動作することにより所定の出力を得ている。そして、スイッチング素子のスイッチング動作から生じるスイッチングノイズが車両に搭載されたラジオ6に影響を与えないように、フィルタ回路3を用いてスイッチングノイズを低減している。しかし、DC−DCコンバータ1は大電流を扱うためにフィルタ回路3に常時大電流が流れると、フィルタ回路3での発熱が問題になる。第1の実施形態では、DC−DCコンバータ1からの電流の流れを制御装置7によって制御し、DC−DCコンバータ1とフィルタ回路3との接続状態、及びDC−DCコンバータ1とバイパス回路4との接続状態を切り換えている。即ち、ラジオ放送非受信時にはバイパス回路4を経由し、ラジオ放送受信時はフィルタ回路3を経由するようにしている。従って、ラジオ放送受信時のみフィルタ回路3を経由しているので、常時フィルタ回路を経由する場合に比較して、ノイズ対策用のフィルタ回路3における発熱を低減できる。
(2)ラジオ6の放送受信開始信号に基づきスイッチ9がオンされ、DC−DCコンバータ1とフィルタ回路3とが接続される。従って、ラジオ6の放送を開始した時に確実にフィルタ回路3を経由することができ、DC−DCコンバータ1のスイッチング素子によるスイッチングノイズを低減し、ラジオ6への影響を防ぐことができる。
(3)ラジオ6の電源スイッチ10をオンすることによって、ラジオ6の放送受信開始信号が得られるので、放送受信開始信号を簡単に制御装置7へ発信することができる。
(4)制御装置7はスイッチ8,9のオン、オフを切り換えている。従って、スイッチ8,9のオン、オフを切り換えるだけで、DC−DCコンバータ1とフィルタ回路3との接続状態、及びDC−DCコンバータ1とバイパス回路4との接続状態を切り換えることができ、フィルタ回路3に流れる電流を簡単に制御できる。
【0015】
本願発明は、前記した各実施形態の構成に限定されるものではなく本願発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、次のように実施することができる。
【0016】
(1)ハイブリッド自動車や電気自動車のモータ駆動回路あるいは他の比較的大きな電流が流れる電気回路において本願発明を実施することができる。
(2)AM放送に限らず、FM放送やテレビ放送のノイズ対策において本願発明を実施することができる。
(3)フィルタ回路3をAM放送用とFM放送用との二種類作り分け、AM/FMの切り換えスイッチにてどちらかのフィルタ回路3を通すように選択させてもよい。
(4)フィルタ回路3は、バンドパスフィルタとし、視聴するのに必要な周波数を避けるフィルタ構成をいくつか作り、選択させてもよい。
(5)制御装置7を作動するためのラジオ6の放送受信開始信号は、ラジオ6の電源スイッチ10のオン、オフ信号に限らず、例えばラジオ放送の受信周波数を検出し、この検出信号を制御装置7に送信する等の方法を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】DC−DCコンバータのノイズ対策装置を示すブロック図である。
【図2】図1のノイズ対策装置の作動状態を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0018】
1 DC−DCコンバータ
2 電源制御装置
3 フィルタ回路
4 バイパス回路
5 バッテリ
6 ラジオ
7 制御装置
8、9 スイッチ
10 ラジオの電源スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子を備えた電源回路とノイズ対策用のフィルタ回路とを有する電源制御装置において、前記フィルタ回路と並列にバイパス回路を設け、ラジオ放送非受信時は前記電源回路と前記バイパス回路とを接続状態とし、ラジオ放送受信時は前記電源回路と前記フィルタ回路とを接続状態とする制御装置を備えたことを特徴とする電源制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、ラジオの放送受信開始信号に基づき前記電源回路と前記フィルタ回路とを接続することを特徴とする請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記ラジオの放送受信開始信号はラジオの電源スイッチから得ることを特徴とする請求項2に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記電源回路と前記フィルタ回路との間、及び前記電源回路と前記バイパス回路との間にそれぞれスイッチが介在され、
前記制御装置は前記各スイッチをオン、オフすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電源制御装置。
【請求項5】
前記電源回路はDC−DCコンバータであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電源制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate