説明

電源回路基板用冷却装置

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は電子計算機等の電源回路基板を冷却する電源回路基板用冷却装置に関するものである。
〔従来の技術〕
従来、電源回路を冷却するには電源回路用基板の下方に配置されたファンによって強制的に冷却させる方法が採られていた。ところが近年、電子回路の高集積化が進むにつれて消費電力が増大し大容量の電源回路が必要になってきており、この大容量の電源回路を強制空冷によって冷却するためにはヒートシンクを大型化させ、しかもファンの風量を増大させなければならない。このヒートシンクのために装置を小型化できず、また、ファンの容量を増大させると騒音が大きくなり、騒音規制を満足させることができなくなるため防音構造を採用しなければならなくなる。このため、強制空冷方式に代わり液冷方式が採用されるようになってきた。この種の冷却構造は第5図に示すように構成されている。
第5図は従来の冷却装置を示す側断面図で、同図において、1は電源回路基板としての電源回路部実装モジュールで、この電源回路部実装モジュール1は収納容器2の底部に設けられたコネクタ3に挿着されている。前記収納容器2は金属によって形成され、その内部には非腐食性,非解離性の溶液であるフルオロカーボン等からなる冷媒液4が封入されている。5は前記冷媒液4を冷却するための熱交換器で、この熱交換器5は水もしくはその他の冷媒が流され冷却されるように構成されており、冷却部5aが収納容器2内における前記冷媒液4で満たされていない上部空間に配置され、前記収納容器2の上部に収納容器2と一体的に取付けられている。すなわち、前記電源回路部実装モジュール1が発する熱は冷媒液4に伝わり、これによって加熱された冷媒液4が収納容器2内で気化される。この気化された冷媒液4は前記熱交換器5によって吸熱され凝縮されて再び液体に戻る。この動作を繰り返して電源回路部実装モジュール1が冷却されることになる。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかるに、このように構成された従来の電源回路用冷却装置においては、収納容器2の蓋体(図示せず)等のパッキン部から侵入した外気等の非凝縮性ガスや、収納容器2内に挿着される各部材から発する非凝縮性ガスが熱交換器5の周囲に濃縮されて溜り易く、この非凝縮性ガスが冷媒液4の凝縮を妨げるため時間と共に冷却効率が低下されるという欠点があった。また、熱交換器5を冷媒液4中に浸漬させれば、冷媒液4中の不純物含有量に依存せずに冷却能力を安定させることができるが、冷却部5aの表面積が小さく冷媒液4全体を冷却することができないために、冷媒液4の上方に配置した場合に較べて冷却効率が劣るという問題があった。また、収納容器2と熱交換器5とが一体型となっているため、保守時には熱交換器5内に流す冷媒液を一旦停止させ冷媒配管等を取り外さなければならず、作業が複雑で時間が多くかかり過ぎる。
〔課題を解決するための手段〕
本発明に係る電源回路基板用冷却装置は、電源回路用基板が回路面を水平にして内蔵されかつ第一の冷媒が封入される冷却容器の上部に容器内へ臨み第一の冷媒と接する冷却用フィンを設け、前記冷却容器の上部内面に電源回路の高発熱部材を密接させて取付けると共に、冷媒流路を有し第二の冷媒によって冷却される冷却板を前記容器の上面に密接させて取付けたものである。また、電源回路用基板が回路面を垂直にして内蔵されかつ第一の冷媒が封入される冷却容器の上部に容器内へ臨み第一の冷媒と接する冷却用フィンを設け、前記冷却容器の側部内面に電源回路の高発熱部材を密接させて取付けると共に、冷媒流路を有し第二の冷媒によって冷却される冷却板を前記容器の上面および前記高発熱部材と対応する外側面にそれぞれ密接させて取付けたものである。
〔作 用〕
電源回路基板はその熱が第一の冷媒を介して冷却用フィンに伝わり、冷却用フィンから冷却板を介して冷却板内の第二の冷媒に伝導され冷却される。また、冷却容器における冷却板により冷却される部位に高発熱部材が密接されるから、高発熱部材を冷却するにあたり熱抵抗が低減される。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例を第1図ないし第4図によって詳細に説明する。
第1図は本発明の第1の発明に係る電源回路基板用冷却装置を示す断面図、第2図は第1図中II−II線断面図である。これらの図において前記第5図で説明したものと同一もしくは同等部材については同一符号を付し、ここにおいて詳細な説明は省略する。これらの図において、11は冷却容器としての密封容器で、この密封容器11は金属によって形成されており、上部には容器内に突出された冷却フィン11aが一体に設けられ、上面には後述する冷却板が密接される平坦面(図示せず)が形成されている。また、この密封容器11内には電源回路基板としてのDC−DCコンバータモジュール12が密封容器11の内側部に設けられたコネクタ3に挿着されて回路面を水平にして配置され、冷媒液4が前記冷却フィン11aと接する量をもって封入されている。前記冷媒液4が本発明に係る第一の冷媒を構成している。13は前記DC−DCコンバータモジュール12の高発熱部材たる二次整流ダイオードで、この二次整流ダイオード13はその熱伝達面13aを前記密封容器11の上部内面に密接させて取付けられている。14は密封容器11の上部を冷却し冷媒液4から熱伝達された冷却フィン11aを冷却するためのコールドプレートで、黄銅等の熱伝導性の高い金属によって形成されている。また、このコールドプレート14の内部には水等の冷媒15が流される冷媒流路14aが一体に形成され、かつ下面には密封容器11と密接される平坦面(図示せず)が形成されており、取付けねじ16によって密封容器11上に固定されている。前記冷媒15が本発明に係る第二の冷媒を構成している。
このように構成された電源回路基板用冷却装置においてはDC−DCコンバータモジュール12の熱は冷媒液4に伝わり、冷媒液4から冷却フィン11aおよびコールドプレート14を介してコールドプレート14内を流れる冷媒15に伝達されることになり、DC−DCコンバータモジュール12が冷却されることになる。また、前記二次整流ダイオード13はその熱が熱伝達面13aから密封容器11の上部およびコールドプレート14に伝導されることになり、冷媒液4を介すことなく直接冷却される。また、第3図は本発明の第2の発明に係る電源回路基板用冷却装置を示す断面図、第4図は第3図中IV−IV線断面図で、これらの図において前記第1図および第2図で説明したものと同一もしくは同等部材については同一符号を付し、ここにおいて詳細な説明は省略する。これらの図においてはDC−DCコンバータモジュール12は密封容器11内に回路面を垂直にして配置されており、二次整流ダイオード13はその熱伝達面13aを密封容器11の側部内面に密接させて取付けられている。17は前記二次整流ダイオード13が取付けられた密封容器11の側部を冷却するための第二のコールドプレートで、この第二のコールドプレート17は前記コールドプレート14と同様にして黄銅等の金属からなり、内部に冷媒流路(図示せず)が一体に形成され、かつ下面には密封容器11の側面と密接される平坦面(図示せず)が形成されており、取付けねじ18によって密封容器11の側部に固定されている。また、この第二のコールドプレート17は密封容器11の上部に配置されたコールドプレート14にホース19を介して直列に接続されている。
このように構成された電源回路基板用冷却装置においても前記第1図および第2図に示した電源回路基板用冷却装置と同様にしてDC−DCコンバータモジュール12の熱は冷媒液4に伝わり、冷媒液4から主に冷却フィン11aおよびコールドプレート14を介してコールドプレート14内を流れる冷媒15に伝達されることになり、DC−DCコンバータモジュール12が冷却されることになる。また、二次整流ダイオード13はその熱が熱伝達面13aから密封容器11の側部および第二のコールドプレート17に伝導されることになり、冷媒液4を介すことなく直接冷却される。
したがって、二次整流ダイオード13は密封容器11におけるコールドプレート14および第二のコールドプレート17によって冷却される部位に密接されるため、熱抵抗が低減され効率よく冷却され、かつ冷却フィン11aによって冷媒液4が直接冷却されるから安定した冷却を行なうことができる。また、冷却フィン11aを冷媒液4との接触面積が電源容量に応じた適正な面積となるよう形成することができるから、効率よく冷却を行なうことができる。
〔発明の効果〕
以上説明したように本発明の第1の発明に係る電源回路基板用冷却装置は、電源回路用基板が回路面を水平にして内蔵されかつ第一の冷媒が封入される冷却容器の上部に容器内へ臨み第一の冷媒と接する冷却用フィンを設け、前記冷却容器の上部内面に電源回路の高発熱部材を密接させて取付けると共に、冷媒流路を有し第二の冷媒によって冷却される冷却板を前記容器の上面に密接させて取付け、また、本発明の第2の発明に係る電源回路基板用冷却装置は、電源回路用基板が回路面を垂直にして内蔵されかつ第一の冷媒が封入される冷却容器の上部に容器内へ臨み第一の冷媒と接する冷却用フィンを設け、前記冷却容器の側部内面に電源回路の高発熱部材を密接させて取付けると共に、冷媒流路を有し第二の冷媒によって冷却される冷却板を前記容器の上面および前記高発熱部材と対応する外側面にそれぞれ密接させて取付けたため、電源回路基板はその熱が第一の冷媒を介して冷却用フィンに伝わり、冷却用フィンから冷却板を介して冷却板内の第二の冷媒に伝導され冷却される。また、冷却容器における冷却板により冷却される部位に高発熱部材が密接されるから、高発熱部材を冷却するにあたり熱抵抗が低減される。したがって、高発熱部材が効率よく冷却されることになり、かつ冷却用フィンによって第一の冷媒が直接冷却されるから安定した冷却を行なうことができる。また、冷却用フィンと第一の冷媒との接触面積を電源容量からの熱解析計算に基づいて冷却能力に合致した適正な面積に設計し得るから、効率のよい冷却装置を得ることができる。さらにまた、冷却容器と冷却板とが別体に形成されているため、冷却板に流される第二の冷媒を一旦停止させたり、冷却板の配管を取り外すことなく着脱することができるから保守作業が簡略化される。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の第1の発明に係る電源回路基板用冷却装置を示す断面図、第2図は第1図中II−II線断面図、第3図は本発明の第2の発明に係る電源回路基板用冷却装置を示す断面図、第4図は第3図中IV−IV線断面図、第5図は従来の冷却装置を示す側断面図である。
4……冷媒液、11……密封容器、11a……冷却フィン、12……DC−DCコンバータモジュール、13……二次整流ダイオード、14……コールドプレート、14a……冷媒流路、15……冷媒、17……第二のコールドプレート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】電源回路用基板が回路面を水平にして内蔵されかつ第一の冷媒が封入される冷却容器の上部に容器内へ臨み第一の冷媒と接する冷却用フィンを設け、前記冷却容器の上部内面に電源回路の高発熱部材を密接させて取付けると共に、冷媒流路を有し第二の冷媒によって冷却される冷却板を前記容器の上面に密接させて取付けたことを特徴とする電源回路基板用冷却装置。
【請求項2】電源回路用基板が回路面を垂直にして内蔵されかつ第一の冷媒が封入される冷却容器の上部に容器内へ臨み第一の冷媒と接する冷却用フィンを設け、前記冷却容器の側部内面に電源回路の高発熱部材を密接させて取付けると共に、冷媒流路を有し第二の冷媒によって冷却される冷却板を前記容器の上面および前記高発熱部材と対応する外側面にそれぞれ密接させて取付けたことを特徴とする電源回路基板用冷却装置。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【第5図】
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【特許番号】第2746938号
【登録日】平成10年(1998)2月13日
【発行日】平成10年(1998)5月6日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−224726
【出願日】昭和63年(1988)9月9日
【公開番号】特開平2−73698
【公開日】平成2年(1990)3月13日
【審査請求日】平成7年(1995)7月31日
【出願人】(999999999)甲府日本電気株式会社