説明

電源回路

【課題】電源から、ランダムアクセスメモリ又はリアルタイムクロックを備えた処理回路部へ至る電力供給経路上に、直列に接続された2つの降圧回路を備える電源回路において、電源電圧の低下が生じても、ランダムアクセスメモリのデータ保持やリアルタイムクロックの計時動作に必要な電力を処理回路部に供給できる構成を提供する。
【解決手段】2つの降圧回路として、電源側に接続され、電源電圧を所定の電圧V1に降下させる第1降圧回路と、処理回路部側に接続された第2降圧回路を有する。また、第1降圧回路にはバイパス回路が並設されており、バイパス回路は、第1降圧回路の動作保障電圧の最小値V2より高い電圧であって電圧V1よりも低い電圧V3をオン・オフの閾値電圧とし、電圧V3以上の電圧が印加された場合にオフ状態とされ、電圧V3よりも低い電圧が印加されたときにオン状態とされて電源から供給された電力を第2降圧回路に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源の電圧を所定のレベルまで降圧して処理回路部に供給する電源回路に関するものであり、特に自動車に搭載されたバッテリを電源とする車両用の電源回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、電源から処理回路部(負荷回路部)へ至る電力供給経路上に、直列に接続された2つの降圧回路(複数段のレギュレータ回路部)を備えた電源回路(電源回路装置)が知られている。
【0003】
この電源回路によれば、例えば電源電圧24Vを2つの降圧回路(2段のレギュレータ回路部)にて5Vまで降圧し、MPUなどの処理回路部へ供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−127253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示される構成では、電源電圧が低下して、電源側の降圧回路(1段目のレギュレータ回路部)の動作保障電圧を下回ると、上記降圧回路が動作しないため、処理回路部側の降圧回路(2段目のレギュレータ回路部)、ひいては処理回路部へ電力が供給されない。
【0006】
したがって、処理回路部が、ランダムアクセスメモリ(RAM)や計時用のリアルタイムクロックを備える構成では、ランダムアクセスメモリのデータが消失する、リアルタイムクロックが計時しない、といった問題が生じる。
【0007】
なお、上記した電源電圧の低下は、自動車に搭載されたバッテリの場合、例えばエンジン始動時においてクランキングの高負荷により瞬間的に生じる。この電圧低下は、特に低温で生じやすい。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑み、電源から、ランダムアクセスメモリ又はリアルタイムクロックを備えた処理回路部へ至る電力供給経路上に、直列に接続された2つの降圧回路を備える電源回路において、電源電圧の低下が生じても、ランダムアクセスメモリのデータ保持やリアルタイムクロックの計時動作に必要な電力を処理回路部に供給できる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する為に、請求項1に記載の電源回路は、電源から、ランダムアクセスメモリ又はリアルタイムクロックを備えた処理回路部へ至る電力供給経路上に、直列に接続された2つの降圧回路を備え、2つの降圧回路として、電源側に接続され、入力端子に印加された電圧を所定の電圧V1に降下させて出力端子から出力する第1降圧回路と、処理回路部側に接続され、入力端子に印加された電圧を所定の電圧に降下させて出力端子から出力する第2降圧回路とを有する。
【0010】
そして、電力供給経路において第1降圧回路に並列に接続されたバイパス回路を備え、バイパス回路は、第1降圧回路の動作保障電圧の最小値V2より高い電圧であって電圧V1よりも低い電圧V3をオン・オフの閾値電圧とし、閾値電圧V3以上の電圧が印加された場合にオフ状態とされ、閾値電圧V3よりも低い電圧が印加されたときにオン状態とされて電源から供給された電力を第2降圧回路に対して供給することを特徴とする。
【0011】
このように本発明では、第1降圧回路の動作保障電圧の最小値V2より高い電圧であって電圧V1よりも低い電圧V3をオン・オフの閾値電圧とし、閾値電圧V3以上の電圧が印加された場合にオフ状態とされ、閾値電圧V3よりも低い電圧が印加されたときにオン状態とされるバイパス回路を、第1降圧回路に並設している。したがって、電源電圧が第1降圧回路の動作保障電圧の最小値V2よりも低い値となっても、バイパス回路によって、電力を第2降圧回路、ひいては処理回路部へ供給することができる。これにより、電源電圧が低下しても、ランダムアクセスメモリを備える場合にはそのデータを保持させ、リアルタイムクロックを備える場合には計時動作させることができる。
【0012】
なお、閾値電圧V3を、第1降圧回路の動作保障電圧の最小値V2より高い電圧であって電圧V1よりも低い電圧の範囲内で設定するので、バイパス回路において、高電圧の印加による発熱や、耐圧のための回路構成の複雑化などを抑制することができる。
【0013】
請求項2に記載のように、バイパス回路として、第1トランジスタ素子と、閾値電圧V3よりも低い電圧が印加されたときに第1トランジスタ素子をオン状態とし、閾値電圧V3以上の電圧が印加されたときに第1トランジスタ素子をオフ状態とする切り替え回路と、を備える構成を採用することができる。
【0014】
これによれば、簡素な構成で、電源電圧が低下したときには、バイパス回路側に電力を迂回させ、電源電圧が高いときには、バイパス回路側に電力を迂回させないようにすることができる。
【0015】
請求項3に記載のように、電源は自動車に搭載されたバッテリであり、電源に接続された入力端子として、電源にイグニッションスイッチを介して接続されたイグニッション端子と、電源に直接接続された電源端子とを備え、電力供給経路は、電源と第1降圧回路との間に、イグニッションスイッチ及びイグニッション端子を介する第1経路と、電源端子を介し、第1経路に対して並列接続された第2経路とを有し、第1経路と第2経路とは、各端子と両経路における第1降圧回路側の接続点との間に電源側をアノードとして配置された逆流阻止ダイオードをそれぞれ有し、切り替え回路は、第1経路におけるイグニッション端子と逆流阻止ダイオードの間に接続された構成とすると良い。
【0016】
これによれば、イグニッションスイッチがオフの状態では、切り替え回路に電力が供給されないので、上記した効果を有しつつ、さらに暗電流による損失を抑制することができる。
【0017】
具体的には、請求項4に記載のように、第1トランジスタ素子は、一端が第1経路におけるイグニッション端子と逆流阻止ダイオードの間に接続され、他端が電力供給経路における第1降圧回路及び第2降圧回路の間に接続されたバイパス経路上に配置され、切り替え回路は、バイパス経路における第1トランジスタ素子よりも電源側の部位を接続点として、該接続点からグランドまでの間に設けられた第2トランジスタ素子と、閾値電圧V3を規定し、第2トランジスタ素子の接続点からグランドまでの間にグランド側をアノードとして配置されたツェナーダイオードとを備えるとともに、閾値電圧V3以上の電圧がツェナーダイオードのカソードに印加されたときにツェナーダイオードが逆方向動作して第2トランジスタ素子がオン状態となるように構成され、バイパス回路は、第2トランジスタ素子がオフ状態で第1トランジスタ素子がオン状態となり、第2トランジスタ素子がオン状態で第1トランジスタ素子がオフ状態となるように構成されたものを採用することができる。
【0018】
また、請求項5に記載のように、切り替え回路は、閾値電圧V3よりも低い電圧が印加されたときに駆動信号を出力する電源監視ICを備え、第1トランジスタ素子は、電力供給経路において、一端が第1経路及び第2経路の第1降圧回路側の接続点と第1降圧回路との間に接続され、他端が第1降圧回路と第2降圧回路の間に接続されており、電源監視ICの駆動信号を受けてオン動作するように構成されたものを採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る車両用電源回路の概略構成を示す回路図である。
【図2】比較例1の概略構成を示す回路図である。
【図3】比較例2の概略構成を示す回路図である。
【図4】実施例及び比較例1,2のRAM保障電圧を確保するための供給電圧の最小値を示す表である。
【図5】車両用電源回路の変形例を示す回路図である。
【図6】車両用電源回路の変形例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。なお、以下の実施形態では、電源が自動車のバッテリであり、電源回路が車両用電源回路の例を示す。
【0021】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態に係る車両用電源回路10は、電源としての定格24Vのバッテリ11から、マイクロコンピュータ等の、ランダムアクセスメモリ(RAM)又はリアルタイムクロックを備えた処理回路部12へ動作電圧を供給するものである。そして、バッテリ11から処理回路部12へ至る電力供給経路13上に、直列に接続された2つの降圧回路14,15を備えている。また、電力供給経路13において、第1降圧回路14に並列に接続され、バッテリ11の電圧に応じて電力を第2降圧回路15へ供給するバイパス回路20を備えている。
【0022】
本実施形態では、処理回路部12が、一例として、コンビネーションメータの制御回路となっており、中央演算装置(CPU)、リードオンメモリ(ROM)などとともにRAMを備えている。
【0023】
直列接続された2つの降圧回路14,15のうち、バッテリ11側の第1降圧回路14は、バッテリ11の電圧を所定の電圧V1(12V)に降圧する12V電源回路であり、この回路の動作保障電圧は、5V以上となっている。第1降圧回路14は、入力電圧(バッテリの電圧)が12Vよりも高い場合には12Vに降圧し、12Vよりも低く、5V以上の場合には、そのままの電圧を第2降圧回路15へ出力するように構成されている。
【0024】
一方、処理回路部12側の第2降圧回路15は、第1降圧回路14にて降圧された電圧を5Vに降圧する5V電源回路である。第2降圧回路15は、入力電圧が5Vよりも高い場合には5Vに降圧し、5Vよりも低く、動作保障電圧以上の場合には、そのままの電圧を処理回路部12側(後述する出力端子23)へ出力するように構成されている。これら降圧回路14,15の構成は周知であるので、その記載を省略する。
【0025】
電力供給経路13には、バッテリ11側の入力端子として、バッテリ11にイグニッションスイッチSWを介して接続されたイグニッション端子16と、バッテリ11にイグニッションスイッチSWを介さずに直接接続された電源端子17が接続されている。
【0026】
そして、電力供給経路13は、バッテリ11と第1降圧回路14との間に、イグニッションスイッチSW及びイグニッション端子16を介する第1経路18と、電源端子を介し、第1経路18に対して並列接続された第2経路19とを有している。
【0027】
第1経路18と第2経路19とは、各端子16,17と両経路18,19における第1降圧回路14側の接続点との間に逆流阻止ダイオードD1,D2をそれぞれ有している。これら逆流阻止ダイオードD1,D2は、アノードが端子16,17側、すなわちバッテリ11側となるように配置されている。
【0028】
バイパス回路20は、第1降圧回路14の動作保障電圧の最小値V2(例えば5V)より高い電圧であって電圧V1(12V)よりも低い電圧V3(V2<閾値電圧V3<V1)をオン・オフの閾値電圧とする。そして、閾値電圧V3以上の電圧が印加された場合にオフ状態とされ、閾値電圧V3よりも低い電圧が印加されたときにオン状態となってバッテリ11から供給された電力を第2降圧回路15に対して供給するものである。本実施形態では、一例として、閾値電圧V3が7Vとなっている。
【0029】
このようなバイパス回路20としては、第1トランジスタ素子Tr1と、閾値電圧V3よりも低い電圧が印加されたときに第1トランジスタ素子Tr1をオン状態とし、閾値電圧V3以上の電圧が印加されたときに第1トランジスタ素子Tr1をオフ状態とする切り替え回路21と、を備える構成を採用することができる。
【0030】
第1トランジスタ素子Tr1は、pnpバイポーラトランジスタであり、コレクタが電力供給経路13における第1降圧回路14と第2降圧回路15の接続点に接続されている。一方、エミッタは、逆流阻止ダイオードD3を介して、第1経路18におけるイグニッション端子16と逆流阻止ダイオードD1との接続点に接続されている。すなわち、イグニッション端子16から第2降圧回路15を繋ぐバイパス経路22に第1トランジスタ素子Tr1が接続されている。
【0031】
また、第1トランジスタ素子Tr1のベースは、抵抗R1を介してグランドに接続されるとともに、抵抗R2を介してエミッタと接続されている。なお、逆流阻止ダイオードD3は、アノードを第1経路18側(バッテリ11側)として接続されている。
【0032】
切り替え回路21は、第2トランジスタ素子Tr2としてのpnpバイポーラトランジスタとツェナーダイオードZD、抵抗R3,R4を有している。第2トランジスタ素子Tr2のコレクタは、第1トランジスタ素子Tr1のベースとグランドとを繋ぐラインにおいて、抵抗R2の接続点と抵抗R1との間に接続されている。一方、エミッタは、バイパス経路22における、抵抗R2の接続点と逆流阻止ダイオードD3の間に接続されている。また、ベースは、ツェナーダイオードZD及び抵抗R3を介してグランドに接続されるとともに、抵抗R4を介してエミッタと接続されている。
【0033】
ツェナーダイオードZDのアノードは抵抗R3を介してグランドに接続されており、カソードは第2トランジスタ素子Tr2のベースに接続されている。そして、カソード側の電位が所定の電圧以上となると逆方向に動作するようにツェナー電圧が設定(例えば7V)されている。
【0034】
なお、図1に示す符号23は、出力側の端子である。本実施形態では、入力端子16,17から出力端子23までの範囲が車両用電源回路10となっている。
【0035】
このように構成された車両用電源回路10では、以下に示す効果を奏することができる。上記した車両用電源回路10では、イグニッションスイッチSWがオンされたエンジン始動時において、クランキングの高負荷によりバッテリ11の電圧が瞬間的に第1降圧回路14の動作保障電圧の最小値V2(5V)及び逆流阻止ダイオードD1(又は逆流阻止ダイオードD2)の電圧降下分(例えば1V)の合計よりも低下(例えば5.5V)すると、第1降圧回路14は動作しない状態となる。
【0036】
このときバイパス回路20では、ツェナーダイオードZDのカソード側の電位、すなわちバイパス回路20への入力電圧、がツェナー電圧よりも低いため、ツェナーダイオードZDに逆方向の電流が流れず、抵抗R4にも電流が流れない。これにより、第2トランジスタ素子Tr2のベース−エミッタ間に電位差が生じず、第2トランジスタ素子Tr2はオフ状態(開状態)となる。
【0037】
本実施形態では、バッテリ11の電圧が7V未満、すなわちバイパス回路20への入力電圧が閾値電圧V3(7V)よりも低ければ、ツェナーダイオードZDが逆方向動作せず、第2トランジスタ素子Tr2がオフ状態となるようになっている。
【0038】
第1トランジスタ素子Tr1は、第2トランジスタ素子Tr2がオフ状態のため、抵抗R1を介してグランドに接続されたベースと、逆流阻止ダイオードD3を介して、第1経路18におけるイグニッション端子16と逆流阻止ダイオードD1との接続点に接続されたエミッタとの電位差によりオン状態(閉状態)となる。すなわち、逆流阻止ダイオードD3及び第1トランジスタ素子Tr1を介して、バイパス経路22により、イグニッション端子16から第2降圧回路15へ電力が供給される。
【0039】
このように、バッテリ11の電圧が7V未満、すなわちバイパス回路20への入力電圧が閾値電圧V3(7V)よりも低ければ、第2トランジスタ素子Tr2がオフ状態となり、一方第1トランジスタ素子Tr1はオン状態となって、バイパス経路22を通じて第2降圧回路15へ電力が供給される。
【0040】
一方、バッテリ11の電圧が第1降圧回路14の動作保障電圧の最小値V2(5V)及び逆流阻止ダイオードD1(又は逆流阻止ダイオードD2)の電圧降下分(例えば1V)の合計よりも高い場合、第1降圧回路14が動作する。例えば、バッテリ11の電圧が15Vの場合、第1降圧回路14は12Vに降圧する。また、バッテリ11の電圧が8Vの場合、第1降圧回路14は降圧せずに入力電圧をそのまま出力する。
【0041】
このときバイパス回路20では、ツェナーダイオードZDのカソード側の電位、すなわちバイパス回路20への入力電圧、がツェナー電圧よりも高いため、ツェナーダイオードZDが逆方向動作し、抵抗R4に電流が流れる。これにより、第2トランジスタ素子Tr2のベース−エミッタ間に電位差が生じて、第2トランジスタ素子Tr2にはベース電流(負の値)が流れ、オン状態(閉状態)となる。
【0042】
本実施形態では、バッテリ11の電圧が7V以上、すなわちバイパス回路20への入力電圧が閾値電圧V3(7V)以上であれば、第2トランジスタ素子Tr2がオン状態となるようになっている。
【0043】
一方、第1トランジスタ素子Tr1は、第2トランジスタ素子Tr2がオン状態となるため、ベース−エミッタ間に電位差が生じず、オフ状態(開状態)となる。すなわち、バイパス経路22は、第1トランジスタ素子Tr1によって遮断される。
【0044】
このように、バッテリ11の電圧が7V以上、すなわちバイパス回路20への入力電圧が閾値電圧V3(7V)以上であれば、第2トランジスタ素子Tr2がオン状態となり、一方第1トランジスタ素子Tr1はオフ状態となって、バイパス経路22が遮断される。
【0045】
以上から、本実施形態に係る車両用電源回路10によれば、バッテリ11の電圧が第1降圧回路14の動作保障電圧の最小値V2よりも低い値(図1に示す構成では、最小値V2と逆流阻止ダイオードD1(D2)の電圧降下との和よりも低い値)となっても、バイパス回路20によって、電力を第2降圧回路15、ひいては処理回路部12へ供給することができる。これにより、処理回路部12のRAMのデータを保持させることができる。
【0046】
なお、本実施形態に係る車両用電源回路10によれば、処理回路部12のRAMにデータ保持動作させるためのバッテリ11の最小電圧は、バイパス回路20を利用することで、図4に示すように、RAMがデータ保持動作するのに必要な保障電圧を例えば2V、第2降圧回路15の電圧降下を例えば1V、逆流阻止ダイオードD3の電圧降下を例えば1V、第1トランジスタ素子Tr1の電圧降下をほぼ0V(0.1V程度であり便宜上0Vとする)とすると、4V程度となる。
【0047】
これに対し、図2に示す比較例1の車両用電源回路10は、バッテリ11の電圧が定格12Vであり、降圧回路として第2降圧回路(5V電源回路)のみを有している。このような構成では、処理回路部12のRAMにデータ保持動作させるためのバッテリ11の最小電圧が、図4に示すように、RAMがデータ保持動作するのに必要な保障電圧を2V、第2降圧回路15の電圧降下を1V、逆流阻止ダイオードD1(D2)の電圧降下を1Vとすると、4Vとなる。なお、図2に示す比較例1では、本実施形態に係る車両用電源回路10と関連する要素に同一の符号を付与している。
【0048】
また、図3に示す比較例2の車両用電源回路10は、図1に示す構成に対し、バイパス回路20の無い構成となっている。このような構成では、処理回路部12のRAMにデータ保持動作させるためのバッテリ11の最小電圧が、図4に示すように、RAMがデータ保持動作するのに必要な保障電圧(2V)と第2降圧回路15の電圧降下(1V)の和よりも第1降圧回路14の動作保障電圧の最小値V2(5V)の方が大きいため、この5Vと、逆流阻止ダイオードD1(D2)の電圧降下(1V)を足した6Vとなる。なお、図3に示す比較例2でも、本実施形態に係る車両用電源回路10と関連する要素に同一の符号を付与している。
【0049】
この結果からも分かるように、本実施形態に係る車両用電源回路10によれば、処理回路部12のRAMにデータ保持動作させることのできるバッテリ11の最小電圧が、比較例1にて示した12V系の車両用電源回路と同等となる。すなわち、24V系の車両用電源回路10において、12V系の車両用電源回路とほぼ同じ性能を確保することができる。
【0050】
また、本実施形態では、バイパス回路20の閾値電圧V3を、第1降圧回路14の動作保障電圧の最小値V2より高い電圧であって電圧V1よりも低い電圧の範囲内で設定するので、バイパス回路20において、高電圧の印加による発熱や、耐圧のための回路構成の複雑化などを抑制することができる。すなわち、バイパス回路20を簡素化することができる。
【0051】
また、第1降圧回路14の動作保障電圧の最小値V2(5V)に対して、バイパス回路20の閾値電圧V3をV2よりも若干高い値(7V)に設定している。したがって、バッテリ11の電圧が変動しても、安定して、処理回路部12に電力を供給することができる。なお、電力供給経路13とバイパス経路22とで電位差が生じる場合には、経路上に逆流阻止用のダイオードなどを設ければ良い。
【0052】
また、本実施形態では、バイパス回路20が第1経路18におけるイグニッション端子16と逆流阻止ダイオードD1の接続点に接続されている。これにより、イグニッションスイッチSWがオフの状態では、切り替え回路21(バイパス回路20)に電力が供給されないので、上記した効果を有しつつ、さらに暗電流による損失を抑制することができる。
【0053】
(変形例1)
図5に示す車両用電源回路10では、切り替え回路21として、閾値電圧V3よりも低い電圧が印加されたときに駆動信号を出力する電源監視IC24を備えている。
【0054】
この電源監視ICは、入力端子が第1経路18におけるイグニッション端子16と逆流阻止ダイオードD1の間に接続され、出力端子が第1トランジスタ素子Tr1のべースに接続されている。
【0055】
そして、閾値電圧V3を7Vとすると、電源監視IC24への入力電圧が7V以上の場合、又は、動作保障電圧の最小値0.7V未満の場合にはオープン(駆動信号を出力せず)、0.7V以上7V未満の場合にはLo信号を駆動信号として第1トランジスタ素子Tr1のベースに出力するようになっている。
【0056】
第1トランジスタ素子Tr1は、pnpバイポーラトランジスタであり、コレクタが電力供給経路13における第1降圧回路14と第2降圧回路15の接続点に接続されている。一方、エミッタは、電力供給経路13において、第1経路18及び第2経路19の接続点と第1降圧回路14との間に接続されている。そして、ベースが電源監視IC24から駆動信号を受けると、オン動作する(閉状態となる)ようになっている。
【0057】
このような構成を採用しても、上記実施形態に示した構成(図1)と同様の効果を期待することができる。
【0058】
(変形例2)
上記実施形態では、電源としてのバッテリ11と第1降圧回路14と間に、イグニッションスイッチSW及びイグニッション端子16を有する第1経路18と、電源端子17を有する第2経路19が並設される例を示した。
【0059】
しかしながら、第2経路19を有さず、バッテリ11と第1降圧回路14との間に、イグニッションスイッチSW及びイグニッション端子16が配置された構成においても、上記実施形態に示した構成を採用することができる。
【0060】
例えば図6に示す車両用電源回路10では、該回路10の入力端子として、イグニッション端子16のみを有しており、バッテリ11から、イグニッションスイッチSW及びイグニッション端子16を介して、第1降圧回路14に電力が供給されるようになっている。
【0061】
そして、バイパス回路20が、第1降圧回路14に対して並列に接続されている。なお、図6に示すバイパス回路20の構成は、図1に示したものと基本的に同じである。
【0062】
このような構成を採用しても、上記実施形態に示した構成(図1)と同様の効果を期待することができる。
【0063】
なお、変形例1(図5)に示す構成のバイパス回路20を採用することもできる。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0065】
本実施形態では、第1トランジスタ素子Tr1,第2トランジスタ素子Tr2として、pnpバイポーラトランジスタの例を示したが、トランジスタ素子としては上記例に限定されるものではない。例えば、MOSFETを採用することもできる。
【0066】
また、バイパス回路20の構成も上記例に限定されるものではない。電力供給経路13において第1降圧回路14に並列に接続され、上記したV2<V3<V1の関係を満たす電圧V3をオン・オフの閾値電圧とし、閾値電圧V3以上の電圧が印加された場合にオフ状態とされ、閾値電圧V3よりも低い電圧が印加されたときにオン状態とされバッテリ11から供給された電力を第2降圧回路15に対して供給することができる構成であれば採用することができる。
【0067】
本実施形態では、電源が自動車のバッテリ11である例を示したが、上記例に限定されるものではない。さらには、電源電圧も上記例(定格24V)に限定されるものではない。
【0068】
本実施形態では、処理回路部12がRAMを備える例を示した。しかしながら、RAMの代わりに計時用のリアルタイムクロックを備える構成、又は、RAMとともにリアルタイムクロックを備える構成にも適用することができる。リアルタイムクロックの動作保障電圧は、一般的にRAMのデータ保持保障電圧と同程度(2V程度)である。したがって、上記構成を適用すれば、電源電圧が低下しても、リアルタイムクロックに計時動作をさせることができる。
【符号の説明】
【0069】
10・・・車両用電源回路(電源回路)
11・・・バッテリ(電源)
12・・・処理回路部
13・・・電力供給経路
14・・・第1降圧回路
15・・・第2降圧回路
16・・・イグニッション端子
17・・・電源端子
18・・・第1経路
19・・・第2経路
20・・・バイパス回路
21・・・切り替え回路
Tr1・・・第1トランジスタ素子
Tr2・・・第2トランジスタ素子
ZD・・・ツェナーダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から、ランダムアクセスメモリ又はリアルタイムクロックを備えた処理回路部へ至る電力供給経路上に、直列に接続された2つの降圧回路を備え、
前記2つの降圧回路として、前記電源側に接続され、入力端子に印加された電圧を所定の電圧V1に降下させて出力端子から出力する第1降圧回路と、前記処理回路部側に接続され、入力端子に印加された電圧を所定の電圧に降下させて出力端子から出力する第2降圧回路とを有する電源回路であって、
前記電力供給経路において前記第1降圧回路に並列に接続されたバイパス回路を備え、
前記バイパス回路は、前記第1降圧回路の動作保障電圧の最小値V2より高い電圧であって前記電圧V1よりも低い電圧V3をオン・オフの閾値電圧とし、前記閾値電圧V3以上の電圧が印加された場合にオフ状態とされ、前記閾値電圧V3よりも低い電圧が印加されたときにオン状態とされて前記電源から供給された電力を前記第2降圧回路に対して供給することを特徴とする電源回路。
【請求項2】
前記バイパス回路は、第1トランジスタ素子と、前記閾値電圧V3よりも低い電圧が印加されたときに前記第1トランジスタ素子をオン状態とし、前記閾値電圧V3以上の電圧が印加されたときに前記第1トランジスタ素子をオフ状態とする切り替え回路と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記電源は、自動車に搭載されたバッテリであり、
前記電源に接続された入力端子として、前記電源にイグニッションスイッチを介して接続されたイグニッション端子と、前記電源に直接接続された電源端子とを備え、
前記電力供給経路は、前記電源と前記第1降圧回路との間に、前記イグニッションスイッチ及び前記イグニッション端子を介する第1経路と、前記電源端子を介し、前記第1経路に対して並列接続された第2経路とを有し、
前記第1経路と前記第2経路とは、各端子と両経路における前記第1降圧回路側の接続点との間に前記電源側をアノードとして配置された逆流阻止ダイオードをそれぞれ有し、
前記切り替え回路は、前記第1経路における前記イグニッション端子と前記逆流阻止ダイオードの間に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の電源回路。
【請求項4】
前記第1トランジスタ素子は、一端が前記第1経路における前記イグニッション端子と前記逆流阻止ダイオードの間に接続され、他端が前記電力供給経路における前記第1降圧回路及び前記第2降圧回路の間に接続されたバイパス経路上に配置され、
前記切り替え回路は、前記バイパス経路における前記第1トランジスタ素子よりも前記電源側の部位を接続点として、該接続点からグランドまでの間に設けられた第2トランジスタ素子と、前記閾値電圧V3を規定し、前記第2トランジスタ素子の接続点からグランドまでの間にグランド側をアノードとして配置されたツェナーダイオードとを備えるとともに、前記閾値電圧V3以上の電圧が前記ツェナーダイオードのカソードに印加されたときに前記ツェナーダイオードが逆方向動作して前記第2トランジスタ素子がオン状態となるように構成され、
前記バイパス回路は、前記第2トランジスタ素子がオフ状態で前記第1トランジスタ素子がオン状態となり、前記第2トランジスタ素子がオン状態で前記第1トランジスタ素子がオフ状態となるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の電源回路。
【請求項5】
前記切り替え回路は、前記閾値電圧V3よりも低い電圧が印加されたときに駆動信号を出力する電源監視ICを備え、
前記第1トランジスタ素子は、前記電力供給経路において、一端が前記第1経路及び前記第2経路の前記第1降圧回路側の接続点と前記第1降圧回路との間に接続され、他端が前記第1降圧回路と前記第2降圧回路の間に接続されており、前記電源監視ICの駆動信号を受けてオン動作するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の電源回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate