説明

電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置

【課題】より簡便な構成によって電池の劣化の原因特定を容易に行えるようにする。
【解決手段】充電可能な複数の二次電池セルと、二次電池セルを直列又は並列に接続した電池ブロック9の温度を検出するための温度検出手段31と、電池ブロック9の充放電電流を検出するための電流検出手段32と、電池ブロック9又は二次電池セルの電圧を検出するための電圧検出手段33と、を備える電源装置であって、電源装置はさらに、温度検出手段31で検出された温度、電流検出手段32で検出された電流値、電圧検出手段33で検出された電圧値を、所定のタイミングで取得するデータ収集手段と、データ収集手段で取得したデータを記録するためのメモリ手段20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列や並列に接続された複数の電池セルを内蔵し電力を供給可能とした電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池セルを多数内蔵して出力電圧と出力電流の両方を大きくした電源装置は、ハイブリッド車や電気自動車などの車載用途といった動力用の他、家庭用、工業用の電力を蓄電する載置型の電源装置といった蓄電用としても、利用が期待されている。
【0003】
このような電源装置においては、様々な要因で二次電池セルが劣化する。しかしながら、実際に様々な環境下、条件下で使用されている電源装置においては、原因は様々であって、その原因を特定することは容易でなかった。
【0004】
このような原因を特定するために、ネットワークなどの通信システムに接続して、常時動作状態を監視する方法が考えられる。しかしながら、この方法では各電源装置毎に通信機能を持たせる必要が生じ、コストがかかることに加え、その消費電力も大きくなって、省電力の要求に反することとなる。また、通信インフラが整っていない環境では利用できないという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−85818号公報
【特許文献2】特開2010−191992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、より簡便な構成によって電池の劣化の原因特定を容易に行えるようにした電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る電源装置によれば、充電可能な複数の二次電池セルと、前記二次電池セルを直列又は並列に接続した電池ブロック9の温度を検出するための温度検出手段31と、前記電池ブロック9の充放電電流を検出するための電流検出手段32と、前記電池ブロック9又は二次電池セルの電圧を検出するための電圧検出手段33と、を備える電源装置であって、前記電源装置はさらに、前記温度検出手段31で検出された温度、前記電流検出手段32で検出された電流値、前記電圧検出手段33で検出された電圧値を、所定のタイミングで取得するデータ収集手段と、前記データ収集手段で取得したデータを記録するためのメモリ手段20と、を備えることができる。これにより、所定のタイミングで電池ブロックの温度、電流、電圧をメモリ手段20に逐次記録することができ、このデータを解析することでエラーや異常の原因特定が容易となる。特に、ネットワーク接続などを用いることなく簡便な方法でデータを収集できることから、安価に実装できることに加え、通信を行わなくて済む分、消費電力を抑制できる利点が得られる。
【0008】
また第2の側面に係る電源装置によれば、前記データ収集手段がデータ収集を行う所定のタイミングを、予め設定された一定の時間間隔とすることができる。これにより、一定周期毎に逐次電池情報を取得してログを残すことができ、エラー解析に有益となる。
【0009】
さらに第3の側面に係る電源装置によれば、前記データ収集手段は、前記温度検出手段31、電流検出手段32、電圧検出手段33からデータ収集を行い、前記メモリ手段20に記録する動作モードと、消費電力を抑えた低消費電力モードと、を備えており、前記データ収集手段を、動作モードにおいてデータの記録を終了後に動作モードから低消費電力モードに移行させると共に、次回のデータ収集を行うタイミングで、再び動作モードに移行させることができる。これにより、データ収集を行うタイミングでのみデータ収集手段を動作させ、それ以外の期間では消費電力を抑えることで、全体としての消費電力を抑制できる。
【0010】
さらにまた第4の側面に係る電源装置によれば、さらに前記一定周期の所定のタイミングを規定するタイミング手段を備えており、前記データ収集手段は、前記タイミング手段から一定周期毎に送られるトリガ信号を受けて、低消費電力モードから動作モードに復帰させることができる。これにより、一定周期でトリガ信号でもってデータ収集手段を起動させることができ、低消費電力モードからの復帰動作を容易に行える利点が得られる。
【0011】
さらにまた第5の側面に係る電源装置によれば、さらに前記電池ブロック9、温度検出手段31、電流検出手段32、電圧検出手段33を収納した複数の電池ユニットBUと、前記複数の電池ユニットBUを複数接続可能な電源コントローラ10と、を備えており、前記電源コントローラ10に、前記データ収集手段と、メモリ手段20とを備えることができる。これにより、電池ブロックをユニット化して複数接続することで、異なる電力に対応した電源システムを容易に構築可能とすると共に、データ収集は電源コントローラで集中的に行うことで、各電池ユニット毎にデータを管理する必要をなくし、データ収集とエラー解析を効率よく行える利点が得られる。
【0012】
さらにまた第6の側面に係る電源装置によれば、さらに前記電池ブロック9の残容量を演算する残容量演算手段を備えており、前記データ収集手段が、前記残容量演算手段で演算された残容量を、前記メモリ手段20に記録することができる。これにより、演算された残容量が正確であったかどうかを解析することで、残容量演算手段の動作が正確であったかどうかを検証することが可能となる。
【0013】
さらにまた第7の側面に係る電源装置によれば、前記メモリ手段20を、汎用のメモリ媒体とすることができる。これにより、収集したデータを安価にメモリ媒体に書き込むことができ、また事後の解析などにおいてもデータの処理が容易となり、ハンドリングに優れた環境が実現される。
【0014】
さらにまた第8の側面に係る電源装置によれば、さらに無線で公衆電話回線と接続可能な通信手段を備えることができる。これにより、公衆電話回線を用いたダイヤルアップ接続を可能とし、広い範囲でのデータ収集が可能となる。
【0015】
さらにまた、第9の側面に係る車両は、前記電源装置を搭載したものである。
【0016】
さらにまた、第10の側面に係る蓄電装置は、前記電源装置を搭載したものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1に係る電源装置をエンジンとモータで走行するハイブリッド車に搭載する例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1に係る電源装置を示すブロック図である。
【図3】電池情報データをメモリカードに保存する手順を示すフローチャートである。
【図4】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【図5】蓄電用の電源装置に適用する例を示すブロック図である。
【図6】蓄電用の電源装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置を例示するものであって、本発明は電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置を以下のものに特定しない。また、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
(実施例1)
【0019】
図1〜図2に、本発明の実施例1に係る電源装置として、車載用の電源装置に適用した例を説明する。この電源装置100は、主としてハイブリッド車や電気自動車等の電動車両に搭載されて、車両のモータに電力を供給して、車両を走行させる電源に使用される。ただ、本発明の電源装置は、接続先の被駆動機器をこれに限定せず、ハイブリッド車や電気自動車以外の電動車両に使用でき、また電動車両以外の大出力が要求される用途にも使用できる。
【0020】
図1に、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド車に電源装置100を搭載したブロック図を示す。この図に示す電源装置100を搭載した車両HVは、車両HVを走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。
(電源装置100)
【0021】
図2に、本発明の実施例1に係る電源装置100のブロック図を示す。この図に示す電源装置100は、ハイブリッド自動車用の走行用バッテリに適用する例を示している。この電源装置100は、電池ブロック9と、電源コントローラ10と、メモリカードユニットとを備える。
(電池ブロック9)
【0022】
電池ブロック9は、複数の電池パックBPで構成される。各電池パックBPは、さらに複数の二次電池セルで構成される。この例では、電池パックBPを3並列、4直列接続して、計12個の電池パックBP1〜12で電池ブロック9を構成している。ただ、電池パックの並列接続数や直列接続数は、要求される電力等に応じて適宜設定される。
【0023】
各電池パックBPは、二次電池セルを複数、直列及び/又は接続に接続して構成される。二次電池セルには、リチウムイオン二次電池の他、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等が利用できる。
【0024】
また各電池パックBPには、温度を検出するための温度検出手段31が設けられる。温度検出手段31は、電源コントローラ10と接続されており、電源コントローラ10で集中管理する。
【0025】
さらに複数の電池パックBPを接続して、電池ユニットBUを構成してもよい。図2の例では、電池パックBPを3個並列に接続して電池ユニットBUを構成しており、電池ユニットBU1〜4を直列に接続して電池ブロック9を構成している。各電池パックBPには、それぞれ充放電電流を検出するための電流検出手段32と、電圧を検出するための電圧検出手段33とが設けられる。また、図2の例では電池パックBPを複数接続した電池ユニットBUのユニット電圧を検出するユニット電圧検出手段34を、各電池ユニットに設けている。このように、電池パックBP毎に電圧、電流、温度を検出する構成に限られず、電池ユニット単位や電池ブロック全体で、電圧や電流、温度等を検出し、これらのデータを部分的に抽出して、あるいはすべてを記録することもできる。さらには、電池パックBPの電圧についても、電池パック全体の電圧に限らず、電池パックを構成する二次電池セルのセル電圧や、二次電池セルを複数接続したモジュールの電圧を測定し、記録することも可能である。
(電源コントローラ10)
【0026】
電源コントローラ10は、電池ブロック9を構成する各電池パックBPの動作を監視する。複数の電池パックBPを一台の電源コントローラ10に接続して集中的に管理することで、効率よく電池パックBPを管理、運営できる。特に電池ブロック9をユニット化して複数接続することで、異なる電力に対応した電源システムを容易に構築可能とすると共に、データ収集は電源コントローラ10で集中的に行うことで、各電池ユニットBU毎にデータを管理する必要をなくし、データ収集やエラー解析を効率よく行える利点が得られる。
【0027】
この電源コントローラ10は、制御手段11を備えており、温度検出手段31で検出された温度、電流検出手段32で検出された電流値、電圧検出手段33で検出された電圧値を、所定のタイミングで取得する。この制御手段11は、これらの電池情報を収集するデータ収集手段として機能する。なお電池情報としては、この他電池の残容量やエラーの有無や種別、通信値等を適宜含めてもよい。例えば電池の残容量を電池情報として記録しておくことで、後の解析において、電池の残容量演算を制御手段11が逐次行った結果を、実際の残容量と比較して、残容量演算の精度を確認することができる。この場合は、電源コントローラ10が電池ブロック9の残容量を演算する残容量演算手段を備える必要がある。例えば制御手段11が残容量演算手段として残容量を演算すると共に、メモリ手段20に残容量を電池情報の一として書き込む。
【0028】
データ収集を行うタイミングは、予め設定された一定の時間間隔、例えば数秒間隔とする。また、車両の起動(キーON)時や停止(キーOFF)時等、特定のタイミングにおいてもデータ収集を行わせることができる。このようにして取得されたデータは、後述するメモリ手段20に書き込まれる。これにより、一定周期毎に逐次電池情報を取得してログを残すことができ、エラー解析に役立てることができる。
【0029】
さらに電源コントローラ10は、車両側との通信も受け持つ。この電源コントローラ10は、被駆動機器である車両側の制御部と通信可能に接続されている。電源コントローラ10と車両とは、例えばCANなどの既知の通信方式によりデータ通信を行う。このデータ通信も、制御手段11によって行われる。
(メモリ手段20)
【0030】
さらに電源コントローラ10には、電池情報を記録するためのメモリ手段20が接続される。メモリ手段20は、汎用のメモリ媒体を利用できる。これによって安価なデータ記録が可能となり、また後の解析などにおいてもデータの読み出しなど、扱い処理が容易となる。このようなメモリ媒体には、SDカードやミニSDカード、マイクロSDカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)、メモリースティック(登録商標)等のメモリカードが利用できる。ここでは、メモリ手段20としてSDカードアダプタのメモリカードユニットを利用している。SDカードを利用することにより、大容量のメモリが安価かつ容易に入手でき、また回収後の解析もスムーズとなる。
【0031】
メモリカードにデータを記録する形式は、バイナリ形式の他、ASCII形式としてもよい。またデータ記録に際して、データの暗号化を施すこともできる。これにより、第三者が万一通信データを見ても直ちに判読できないようにして、セキュリティを高めることができる。
【0032】
また所定のタイミングでのデータの書き込みは、例えば割り込み処理によって行われる。すなわち、規定されたタイミングで電源コントローラ10に対して割り込みが発生し、このタイミングで取得した電池情報を電源コントローラ10がメモリ手段20のログファイルに書き込む。
【0033】
次に、電源コントローラ10が電池情報データを収集してメモリカードに保存する手順を、図3のフローチャートに基づいて説明する。まずステップS1において、電源コントローラ10がシステムの初期化を行う。この状態で、データ記憶システムが稼働状態となる。次にステップS2において、設定済みの初期情報を読み込む。初期情報としては、例えばデータを取得するタイミングが予め設定され、初期情報ファイルとして保存されている。電源コントローラ10はこの初期情報ファイルを読み込むことで、データ記録間隔や記録形式、ログファイル名情報等を設定する。さらにステップS3において、電池情報データを記録するログファイルへの初期書き込みを行う。ここでは、ログファイルがオープンされて、該ファイルへの書き込み可能な状態となる。この状態で、割り込みを許可すると共に、ステップS4において割り込みの発生を待つ待機状態となる。割り込みが発生するまでステップS4をループし、割り込みが発生すると、ステップS5に進み記録データの書き込みが行われる。以上のようにして、電源コントローラ10はメモリ手段20に電池情報データを逐次記録していく。
【0034】
このように、一定の周期で電池情報を逐次記録してデータを蓄積し、数ヶ月程度のスパンでメモリ媒体を回収する。このようにして得られたデータは実動データとして、不良解析やこれを踏まえた改良などに有効に利用できる。また、不良発生時には該当部分の電池データを解析することで、エラーや異常の原因特定が容易となる。
【0035】
また、電源装置100自体にデータを記録することで、ネットワーク接続を介して外部機器にデータを送出するための機構(例えば無線LAN等の通信機器)を省略でき、安価に実装できることに加え、通信ユニットを省略できる分、省スペース化や低消費電力化にも有利となる。特に従来は、データ解析を行うためにはまずパソコンや通信ラインをモニタする外部装置を電源装置に接続し、その上で電源装置を動作させてログを取得していた。このような外部装置は外形が大型であり、また消費電流もデータ通信機器を動作させる必要があって大きくなる。このため、車両やモバイル機器のような外部電源から電力供給を得ることのできない移動体等では、長時間のログ記録が困難となる上、データ通信に消費する電力によって、取得対象の電池情報のデータ自体に歪みを生じさせることもあった。これに対して、本実施の形態のようなメモリ手段20を電源装置100の電源コントローラ10の一部として組み込むことによって、小サイズで低消費電力にて安定的にログデータを記録できる。例えば組み込みマイコンを用いた低消費電力の電源コントローラを用いてログデータを記録できる。
【0036】
特に、CO2削減の観点からハイブリッド自動車や電気自動車の普及が急ピッチで進められると共に、近年の電力需要の逼迫に鑑み、蓄電可能な載置型の電源装置が早急に求められている。このような二次電池セルを利用した大型蓄電・動力システムの実用化のための実証実験においては、二次電池セルの状態や充放電などの状況データを収集することが重要である。こうしたデータを収集することにより、例えば使用環境、電池状態により、各種パラメータなどの仕様を最適化したり、あるいは二次電池セルの性能低下などを検知して、電池使用の停止やメンテナンスの告知を行う等のアクションに役立てることができる。しかしながら、従来のデータ収集の仕組みは、通信ネットワークを用いた遠隔システム等を用いることが行われているものの、この方法ではデータ収集のためのシステムが大規模になり、大幅なコストアップの原因となっていた。また、動力系や蓄電系の独立型システムでは、商用電源のような潤沢な電力供給源が無いため、データ収集用のパソコンやインターネット接続機器を設置することで電力消費量が大きくなり、本来監視したい二次電池システムの運用状況に大きな影響を与えてしまう。さらに、通信等のインフラが整備されていないところでは、利用できないという問題もあった。その一方で、簡易な無線システム等の通信を用いたデータ収集の仕組みでは、セキュリティに不安が残る。これに対して、上述した本実施例1に係る電源装置100では、電源装置100側に電池情報データを記録する簡便な構成によって、安価にかつ簡易にデータ収集が可能となり、通信機能を必要としない分、低消費電力、低コスト、低価格化が実現できる。
(低消費電力モード)
【0037】
また電源コントローラ10に、通常の動作モード以外に、必要な機能のみ動作させて消費電力を落とした低消費電力モードを設け、データの記録時以外は低消費電力モードに移行させることで、必要な電力量を抑制することもできる。例えば、一定周期のタイミングを規定するタイミング手段を電源コントローラ10の内部又は外部に設けて、このタイミング手段から一定周期毎に送られるトリガ信号を受けて、電源コントローラ10が低消費電力モードから動作モードに復帰されるように構成する。またタイミング手段を電源コントローラ10の外部に設ける場合は、外部信号であるトリガ信号で電源コントローラ10を起動させるように構成する。
【0038】
このようにすることで、電源コントローラ10を常時稼働させることなく、データ記録を行わない間は低消費電力モードに移行させ、その一方で一定周期毎にトリガ信号を電源コントローラ10に与えて低消費電力モードから復帰させることで、ログの記録を行えるようにできる。
(電気自動車用電源装置)
【0039】
以上の例では、被駆動機器としてモータとエンジンで駆動されるハイブリッド車に利用する例を説明したが、これに限らずモータのみで走行する電気自動車に電源装置を適用することもできる。このような電気自動車に本発明を適用した例を図4に示す。この図に示す電源装置100を搭載した車両EVは、車両EVを走行させる走行用のモータ93と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。
(蓄電用電源装置)
【0040】
さらに、この電源装置は、移動体用の動力源としてのみならず、定置型の蓄電用設備としても利用できる。例えば家庭用、工場用の電源として、太陽光や深夜電力等で充電し、必要時に放電する電源システム、あるいは日中の太陽光を充電して夜間に放電する街路灯用の電源や、停電時に駆動する信号機用のバックアップ電源等にも利用できる。このような例を図5に示す。この図に示す電源装置100は、複数の電池パック81をユニット状に接続して電池ユニット82を構成している。上述した図2の例では、電池パックBPを並列に接続して電池ユニットBUを構成していたのに対し、図5の例では電池パック81を直列に接続して電池ユニット82を構成している。各電池パック81は、複数の電池セル1が直列及び/又は並列に接続されている。各電池パック81は、電源コントローラ10Bにより制御される。電源コントローラ10Bには、電池ブロックから収集したデータを保存するためのメモリ手段20Bが接続される。この電源装置100は、電池ユニット82を充電用電源CPで充電した後、負荷LDを駆動する。このため電源装置100は、充電モードと放電モードを備える。負荷LDと充電用電源CPはそれぞれ、放電スイッチDS及び充電スイッチCSを介して電源装置100と接続されている。放電スイッチDS及び充電スイッチCSのON/OFFは、電源装置100の電源コントローラ10Bによって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ10Bは充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをOFFに切り替えて、充電用電源CPから電源装置100への充電を許可する。また充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で負荷LDからの要求に応じて、電源コントローラ10Bは充電スイッチCSをOFFに、放電スイッチDSをONにして放電モードに切り替え、電源装置100から負荷LDへの放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをONにして、負荷LDの電力供給と、電源装置100への充電を同時に行うこともできる。
【0041】
電源装置100で駆動される負荷LDは、放電スイッチDSを介して電源装置100と接続されている。電源装置100の放電モードにおいては、電源コントローラ10Bが放電スイッチDSをONに切り替えて、負荷LDに接続し、電源装置100からの電力で負荷LDを駆動する。放電スイッチDSはFET等のスイッチング素子が利用できる。放電スイッチDSのON/OFFは、電源装置100の電源コントローラ10Bによって制御される。また電源コントローラ10Bは、外部機器と通信するための通信インターフェースを備えている。図5の例では、UARTやRS−232C等の既存の通信プロトコルに従い、ホスト機器HTと接続されている。また必要に応じて、電源システムに対してユーザが操作を行うためのユーザインターフェースを設けることもできる。
【0042】
各電池パック81は、信号端子と電源端子を備える。信号端子は、パック入出力端子DIと、パック異常出力端子DAと、パック接続端子DOとを含む。パック入出力端子DIは、他のパック電池や電源コントローラ10Bからの信号を入出力するための端子であり、パック接続端子DOは子パックである他のパック電池に対して信号を入出力するための端子である。またパック異常出力端子DAは、パック電池の異常を外部に出力するための端子である。さらに電源端子は、電池パック81同士を直列、並列に接続するための端子である。また電池ユニット82は並列接続スイッチ85を介して出力ラインOLに接続されて互いに並列に接続されている。
【0043】
さらに、このような蓄電システムの一例として、負荷LDとしての駐輪場用の照明装置と、充電用電源CPとしてのソーラーパネルを組み合わせた電源システムを、図6に示す。この図に示す電源システムは、日中にソーラーパネルで電池装置100Cの電池ブロック9Cを充電し、夜間には蓄電された電力でもって照明装置を点灯し、夜間照明を行う。また負荷として照明に限らず、電気自転車やアシスト自転車用の電池パックを充電する充電器の電源や、災害時における緊急用のAC100V電源にも適用できる。この電源装置100Cは、ソーラーパネルで発電される直流電力でもって、充電スイッチCSをONとし、放電スイッチDSをOFFとした状態で充電される。また放電時には、充電スイッチCSをOFFとし、放電スイッチDSをONとして、電池ブロック9Cからの直流をインバータで交流に変換することで、各負荷に対して交流電力が供給される。電源装置100Cが備える電源コントローラ10Cや制御手段11C、メモリ手段20C、電池ブロック9C等の詳細については、上述した構成と同様であり、詳細説明を省略する。
【0044】
以上の電源装置は、電源装置自体でログデータを記録しておき、一定のスパンでこれを個別に回収して解析する形態について説明した。その一方で、独立型システムにおいては、方々に設置されている実証実験の現場を回ってデータを収集するのは、労力が大きく効率的ではないこともある。このような場合には、通信ネットワークを用いた遠隔操作によるデータ収集の仕組みを利用することもできる。ただし、この場合は電源装置側に通信ユニットを設ける必要があるため、これを駆動させるための電力や配置スペースの確保等の条件を具備することが前提となる。
【0045】
また、電源装置自体に通信機能を持たせる他、外部のデータ通信モデムや携帯電話などの通信機器を利用し、これを接続することでデータ通信機能を付加する形態としてもよい。
【0046】
さらに、電源装置を例えば山間部や孤島などに載置する態様においては、無線で公衆電話回線と接続可能な通信手段を備えることもできる。これにより、公衆電話回線を用いたダイヤルアップ接続等によって、光ファイバやADSLなどの通信インフラストラクチャが整っていない環境においても利用可能として、電源装置のデータ収集可能なエリアを広範囲に拡張できる利点が得られる。また、上述した車載用途等においても、消費電力等の問題をクリアできる場合は同様に通信手段を付加してもよい。
【0047】
一方で、商用電源等の電力線が利用できる環境でサーバを設置し、データ通信モデムによってインターネット接続の上、サーバへデータをアップロードする構成としてもよい。この方法であれば、サーバに蓄えられた電池情報データを、様々な場所からモニタできる。特に電源装置が多数設置されている場合でも、過度な負担無しに電池情報データの収集が行える。
【0048】
またこのようなインターネット接続のような公衆ネットワーク回線を利用する形態に限られず、例えば接続者がデータ通信モデムを用いて、電話回線を介してピアツーピア接続する形態も利用できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置は、EV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置として好適に利用できる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0050】
100、100B、100C…電源装置
9、9C…電池ブロック
10、10B、10C…電源コントローラ
11、11C…制御手段
20、20B、20C…メモリ手段
31…温度検出手段
32…電流検出手段
33…電圧検出手段
34…ユニット電圧検出手段
BP、BP1〜12、81…電池パック
BU、BU1〜4、82…電池ユニット
85…並列接続スイッチ
93…モータ
94…発電機
95…DC/ACインバータ
96…エンジン
EV、HV…車両
LD…負荷;CP…充電用電源;DS…放電スイッチ;CS…充電スイッチ
OL…出力ライン;HT…ホスト機器
DI…パック入出力端子;DA…パック異常出力端子;DO…パック接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電可能な複数の二次電池セルと、
前記二次電池セルを直列又は並列に接続した電池ブロック(9)の温度を検出するための温度検出手段(31)と、
前記電池ブロック(9)の充放電電流を検出するための電流検出手段(32)と、
前記電池ブロック(9)又は二次電池セルの電圧を検出するための電圧検出手段(33)と、
を備える電源装置であって、
前記電源装置はさらに、
前記温度検出手段(31)で検出された温度、前記電流検出手段(32)で検出された電流値、前記電圧検出手段(33)で検出された電圧値を、所定のタイミングで取得するデータ収集手段と、
前記データ収集手段で取得したデータを記録するためのメモリ手段(20)と、
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置であって、
前記データ収集手段がデータ収集を行う所定のタイミングが、予め設定された一定の時間間隔であることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電源装置であって、
前記データ収集手段は、
前記温度検出手段(31)、電流検出手段(32)、電圧検出手段(33)からデータ収集を行い、前記メモリ手段(20)に記録する動作モードと、
消費電力を抑えた低消費電力モードと、
を備えており、
前記データ収集手段を、動作モードにおいてデータの記録を終了後に動作モードから低消費電力モードに移行させると共に、次回のデータ収集を行うタイミングで、再び動作モードに移行させてなることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電源装置であって、さらに、
前記一定周期の所定のタイミングを規定するタイミング手段を備えており、
前記データ収集手段は、前記タイミング手段から一定周期毎に送られるトリガ信号を受けて、低消費電力モードから動作モードに復帰されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載の電源装置であって、さらに、
前記電池ブロック(9)、温度検出手段(31)、電流検出手段(32)、電圧検出手段(33)を収納した複数の電池ユニット(BU)と、
前記複数の電池ユニット(BU)を複数接続可能な電源コントローラ(10)と、
を備えており、
前記電源コントローラ(10)に、前記データ収集手段と、メモリ手段(20)とを備えてなることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一に記載の電源装置であって、さらに、
前記電池ブロック(9)の残容量を演算する残容量演算手段を備えており、
前記データ収集手段が、前記残容量演算手段で演算された残容量を、前記メモリ手段(20)に記録してなることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一に記載の電源装置であって、
前記メモリ手段(20)が、汎用のメモリ媒体であることを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一に記載の電源装置であって、さらに、
無線で公衆電話回線と接続可能な通信手段を備えてなることを特徴とする電源装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一に記載の電源装置を搭載してなる車両。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一に記載の電源装置を搭載した蓄電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−76680(P2013−76680A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218103(P2011−218103)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】