説明

電源装置及び架空送電線用標識灯

【課題】電線から安定した電力を安価に取得する。
【解決手段】電源装置100は、電線Lと、大地Eとの間に電極板1を配置させるとともに、電極板1と、大地Eとの間にがいし2を設けた構成を有する。電極板1は、電線Lに平行になるように設置される。がいし2は、電極板1と、大地Eとの間を絶縁状態にする。このような構成において、電線Lに電圧を印加すると、静電誘導作用により、電極板1と、大地Eとの間に電位差が生じる。そこで、例えば、LED3の両端子を、電極板1及び大地Eにそれぞれ接続することによって、LED3が発光する。すなわち、電源装置100は、電極板1及び大地Eを電極とする電源として使用することができる。なお、電源装置100の一方の電極は、大地Eそのものである必要はなく、大地Eと同じ電位を持つ導電体であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線による静電誘導作用を利用した電源装置及びその電源装置を用いた架空送電線用標識灯に関する。
【背景技術】
【0002】
送電鉄塔に航空障害灯を設置する場合、現地には電源がないので、最も近い所にある配電線から低圧線を鉄塔まで施設する必要がある。その他の手段として、避雷用に架空地線(GW:Ground Wire)が送電鉄塔や電柱の最上端に架けられているが、その架空地線を鉄塔と絶縁状態にし、架空地線に発生する誘導電力を航空障害灯の電源に利用する方法がある。航空障害灯として、特許文献1には、コイルとLED(Light Emitting Diode)を有する標識灯を架空送電線に直接取り付け、その送電線を流れる電流によりコイルに発生した誘導電流を用いて、LEDを点灯させることが記載されている。特許文献2には、太陽電池と、太陽電池から得られる起電力を蓄電する蓄電池と、蓄電池からの電力により発光すべく送電線に取り付けられる発光標識体と、外部が暗くなったことを検知して発光標識体を作動させる光センサスイッチとを備えた夜間標識灯について記載されている。
【特許文献1】特開平8−126177号公報
【特許文献2】特開平6−269118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、航空障害灯の設置コストは非常に高い(数千万円/基、電源を除く)という問題がある。また、鉄塔付近に電源がない場合には、配電設備の設置(数十万円/柱1本)や、数径間に亘る架空地線の絶縁化工事の実施等が必要になり、さらに費用が嵩むことになる。
【0004】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、電線から安定した電力を安価に取得することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、電源装置であって、大地から絶縁され、電力を供給する電線に発生する静電誘導に応じて第1電位となる第1導電体と、前記第1導電体の前記第1電位より低い第2電位となる第2導電体とを備え、前記第1導電体と前記第2導電体との間に、負荷を駆動するための電圧を発生することを特徴とする。
この構成によれば、電線により発生する静電誘導作用を利用するので、安定した安価な電源装置を構成することができる。
【0006】
また、本発明は、電源装置であって、前記第1導電体が、前記電線と平行に設けられる平板であることを特徴とする。
この構成によれば、第1導電体の平板が電線と平行に設けられることによって、平板全体として一様に電線による静電誘導作用を受けるので、さらに安定した電源装置とすることができる。
【0007】
また、本発明は、電源装置であって、前記第1導電体は、前記電線と平行に設けられるとともに前記電線と向かい合う側の面が凹面となる湾曲板であることを特徴とする。
この構成によれば、電線が揺れたとしても、その電線と、第1導電体の板との間を一定の距離に保持することができるので、第1導電体の板に生じる電位を一定にすることができ、さらに安定した電源装置を構成することができる。
【0008】
また、本発明は、電源装置であって、前記第1導電体が、鉄塔と前記鉄塔に架設される前記電線との間に設けられ、前記第1導電体の前記鉄塔と向かい合う側の面は、碍子を介して前記鉄塔に取り付けられることを特徴とする。
この構成によれば、碍子を挟んで鉄塔に第1導電体の板を固定することで、電源装置を簡単に取り付けることができる。
【0009】
また、本発明は、電源装置であって、前記第1導電体が、絶縁体を介してアークホーンに取り付けられることを特徴とする。
この構成によれば、絶縁体を挟んでアークホーンに第1導電体を固定することで、電源装置を簡単に取り付けることができる。
【0010】
また、本発明は、電源装置を用いた架空送電線用標識灯であって、前記第1導電体と前記第2導電体の間に接続される発光部材を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、静電誘導作用を利用した電源装置を使用することによって、安価で短期間に架空送電線用標識灯を設置することができる。
【0011】
また、本発明は、架空送電線用標識灯であって、前記発光部材を覆うとともに前記鉄塔に取り付けられるカバーを備え、前記カバーが、前記発光部材の発光出力を集光又は拡散するためのレンズを有することを特徴とする。
この構成によれば、レンズによる集光及び拡散の効果によって、発光部材の光度を効率的に確保、向上することができる。
【0012】
その他、本願が開示する課題及びその解決方法は、発明を実施するための最良の形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電線から安定した電力を安価に取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態を説明する。本発明の実施の形態に係る電源装置は、電線と、大地との間の静電誘導作用を利用したものである。
【0015】
≪電源装置の基本構成と概要≫
図1は、電線と大地との間の静電誘導作用を利用した電源装置の構成を示す図である。電源装置100は、電線Lと、大地(アース)Eとの間に電極板1を配置するとともに、電極板1と、大地Eとの間にがいし(碍子)2を設けた構成を有する。電極板1は、電線Lに平行になるように設置される。がいし2は、電極板1と、大地Eとの間を絶縁状態にする。このような構成において、電力を供給するための電線Lに電圧を印加すると、静電誘導作用により、電極板1と、大地Eとの間に電位差が生じる。そこで、例えば、LED3の両端子を、電極板1及び大地Eにそれぞれ接続することによって、LED3が発光する。すなわち、電源装置100は、電極板1(第1電位となる第1導電体)及び大地Eを電極とする電源として、負荷を駆動するための電圧を発生することができる。なお、電源装置100の一方の電極は、大地Eそのものである必要はなく、大地Eと略同じ電位を有する導電体(第2電位となる第2導電体、例えば、鉄塔やアークホーン等)であってもよいし、いずれにしても電極板1より低い電位を有する導電体であればよい。また、好適には、LED3に直流電流が流れるように整流回路をさらに含む構成としてもよい。
【0016】
図2は、電源装置100の電気的状態を示す模式図である。電源装置の性能は、その静電容量と負荷インピーダンス特性により決定される。その結果により、負荷41を通る電流の上限値及び負荷41の端子間の電圧を取得することができ、さらにそれらの値から負荷41に供給される電力を求めることができる。
【0017】
図2(a)は、電源装置100の模式図を示し、図1におけるLED3を負荷41に置き換えるとともに、電線Lに交流電流を流すことから、電線Lと、大地Eとの間にAC(Alternating Current)電源5を接続したものである。
【0018】
図2(b)は、電源装置100の静電容量を計算するために、図2(a)の構成を等価回路にしたものである。図2(a)における、電線Lと、電極板1との間には、何もない空間があり、従って、空気のコンデンサがあると考えられるので、静電容量C1のコンデンサに相当する。電極板1と、大地Eとの間には、所定の電位差があり、従って、負荷41の両端子に所定の電圧を印加可能なものがあると考えられるので、静電容量C2のコンデンサに相当する。電線Lと、大地Eとの間のAC電源5は、交流電源に相当する。
【0019】
図2(b)の回路図を用いることによって、電源装置100の静電容量C1は、次の計算式により求めることができる。
【0020】
まず、C1及びC2を流れる電流I及びC1及びC2にかかる電圧Vについて、以下の式が成り立つ。なお、C1にかかる電圧をV1とし、C2にかかる電圧をV2とする。
I = V1/(1/jωC1) = V2/(1/jωC2)・・・式1
V = V1+V2 ・・・式2
式2から、
V1 = V−V2 ・・・式3

式3を式1に代入すると、
(V−V2)/(1/jωC1) = V2/(1/jωC2)
(V−V2)/C2 = V2/C1
C1 = C2*V2/(V−V2) ・・・式4

例えば、V=64[kV]、V2=0.011[kV]、C2=0.5[μF]の場合、C1=8.6E−5[μF]となり、I=2.1E−3[A]となる。
【0021】
≪測定実験とその結果1≫
続いて、実際に電源装置100の電気的性能を測定する実験とその結果について説明する。図3は、測定実験に用いる装置構成を示す図である。電線Lとしては棒電極L1を用い、電極板1は、長さL及び幅Wを有し、棒電極L1との距離をDとする。電極板1と、大地Eとの間に供試品42を接続する。このような構成において、棒電極L1に電圧を印加して静電容量の評価等を行う。
【0022】
図4及び図5は、電源装置100の電気的性能の測定の結果を示す図である。まず、供試品42を接続することなく、棒電極L1に電圧Vを印加した状態で、アナログ電圧計により電極板1と、大地Eとの間の電圧V2を測定した。この際、Dは一定とし、LとWの3つの組み合わせについて、それぞれ印加電圧を逐次変化させながら、電圧V2を測定した。その測定結果を図4(a)及び図5(a)に示す。これによれば、測定電圧V2は、印加電圧Vにほぼ比例していると言える。
【0023】
次に、供試品42としてフィルムコンデンサ(C2=0.5μF)を接続し、棒電極L1に電圧Vを印加した状態で、デジタル電圧計により電極板1と、大地Eとの間の電圧V2を測定した。この際、Dは一定とし、LとWの3つの組み合わせについて、それぞれ印加電圧を逐次変化させながら、電圧V2を測定した。その測定結果を図4(b)、図5(b)及び(c)に示す。図5(c)によれば、まず、L=2m、W=2mの場合の静電容量C1は、約27〜28pFである。次に、L=2m、W=0.5mの場合の静電容量C1は、約14pFであり、電極板1の面積が1/4倍になったのに対して1/2倍強となった。そして、L=0.5m、W=2mの場合の静電容量C1は、約11〜12pFであり、電極板1の面積が1/4倍になったのに対して1/2倍弱となった。これによれば、電極板1の面積が大きいほど、静電容量C1が大きくなることが確認された。なお、図4及び図5には示していないが、電極板1を棒電極L1に近付ければ、電極板1の電位が上がることも確認されている。
【0024】
静電容量C1の計算は、先に示した式4による。例えば、L=2m、W=2mの場合について計算例を示すと、
C1=0.5μF*3.53V/(64kV−3.53V)
=0.5E−6F*3.53V/(64E3V−3.53V)
=2.8E−11F
=28pF
となる。
【0025】
≪測定実験とその結果2≫
続いて、供試品をLEDとして電源装置100の電気的性能を測定する実験とその結果について説明する。図6は、実験に用いる装置構成の一部を示す図であり、特に電流を測定する方法を示すものである。電極板1と、大地Eとの間にLED灯43及び抵抗Rを直列に接続する。LED灯43は、例えば、19個のLEDを直列接続したものである。そして、抵抗Rにオシロスコープ6を並列に接続し、オシロスコープ6によりLED灯43及び抵抗Rを流れる電流を測定する。具体的には、LED灯43及び抵抗Rに電流が流れたときの抵抗Rの両端に発生する電圧から、抵抗Rを流れる電流を求める。
【0026】
図7及び図8は、電源装置100の電気的性能の測定の結果を示す図である。まず、供試品42としてLED灯43を接続し、棒電極L1に電圧Vを印加した状態で、デジタル電圧計により電極板1と、大地Eとの間の電圧V2を測定した。この際、Dは一定とし、LとWの3つの組み合わせについて、それぞれ印加電圧Vを逐次変化させながら、電圧V2を測定した。その測定結果を図7(a)及び図8(a)に示す。これによれば、まず、L=2m、W=2mの場合、印加電圧Vが64kVのとき、電圧V2は214Vであった。このとき、LED1個あたりの約11Vの電圧を分担していることになる。次に、L=2m、W=0.5mの場合、印加電圧Vが64kVのとき、電圧V2は199Vであった。このとき、LED1個あたりの約10Vの電圧を分担していることになる。そして、L=0.5m、W=2mの場合、印加電圧Vが64kVのとき、電圧V2は195Vであった。このとき、LED1個あたりの約10Vの電圧を分担していることになる。
【0027】
続いて、供試品42としてLED灯43を接続し、棒電極L1に電圧Vを印加した状態で、オシロスコープ6により電極板1と、大地Eとの間の電流Iを測定した。L=2m、W=2mの場合、印加電圧Vが64kVのとき、電流Iは0.72mAであった。この電流値は、AC100V印加時に比べて約1/39倍である。インピーダンスは、64kV/0.72mA=8.9E7Ωである。従って、静電容量C1=1/(8.9E7*2*π*60)=30pFとなる。なお、電流Iは、電極板1と、大地Eとの間の電圧=10.2mV(ピーク値)=7.2mV(二乗平均平方根=実効値)であり、抵抗R=10Ωなので、電流I=7.2/10=0.72mAとなった。
【0028】
さらに、AC100Vを単巻変圧器であるスライダック(登録商標)によって変成し、1個のLEDに電圧を印加した状態で、電流計によりLEDの電流を測定した。10Vで1mA程度の電流が流れることを確認した。この際、印加電圧を逐次変化させながら、電流を測定した。その測定結果を図7(b)及び図8(b)に示す。
【0029】
図9〜図12は、輝度及び照度の測定の結果を示す図である。まず、供試品42としてLED灯43を接続し、棒電極L1に電圧Vを印加した状態で、LED灯43の輝度及び照度を測定した。この際、Dは一定とし、LとWの3つの組み合わせについて、それぞれ印加電圧Vを逐次変化させながら、輝度及び照度(LED灯43と照度計との間の距離=2m)を測定した。
【0030】
輝度及び光度に関する測定結果を図9(a)、図10(a)及び(b)に示す。まず、L=2m、W=2mの場合、印加電圧Vが64kVのとき、輝度が1230cd/mであり、光度が約4.1cdであった。次に、L=2m、W=0.5mの場合、印加電圧Vが64kVのとき、輝度が512cd/mであり、電極板1の面積が1/4になったのに対して輝度及び光度は0.42倍となった。そして、L=0.5m、W=2mの場合、印加電圧Vが64kVのとき、輝度が428cd/mであり、電極板1の面積が1/4になったのに対して輝度及び光度は0.35倍となった。
【0031】
照度に関する測定結果を図9(a)、図11(a)、(b)及び(c)に示す。まず、L=2m、W=2mの場合、印加電圧Vが64kVのとき、照度が0.7Lxであり、光度が約2.8cdであった。なお、光度は、照度に距離の2乗をかけることで求めることができる。次に、L=2m、W=0.5mの場合、印加電圧Vが64kVのとき、照度が0.35Lxであり、電極板1の面積が1/4になったのに対して照度及び光度は0.5倍になった。そして、L=0.5m、W=2mの場合、印加電圧Vが64kVのとき、照度が0.25Lxであり、電極板1の面積が1/4になったのに対して照度及び光度は0.36倍になった。なお、印加電圧に対する照度は、例えば、L=2m、W=2mの場合の測定照度が、印加電圧Vが0kVのとき0.55Lxであり、38kVのとき1.0Lxであり、50kVのとき1.1Lxであり、64kVのとき1.25Lxであり、100kVのとき1.8Lxであったので、それぞれの測定値から周囲の明かり分と考えられる0.55Lxを差し引いた値とした。
【0032】
さらに、AC100Vを単巻変圧器であるスライダック(登録商標)によって変成し,1個のLEDに電圧を印加した状態で、LEDの輝度を測定した。この際、印加電圧を逐次変化させながら、輝度を測定した。その測定結果を図9(b)、図12(a)及び(b)に示す。これによれば、印加電圧Vが10〜100Vの間は、リニア(線形)になっていると言える。また、図13は、LED灯43の発光状態を撮影した写真を示す図である。
【0033】
以上によれば、印加電圧Vが大きいほど、電源装置100に接続されたLED灯43の光度が大きくなり、また、電極板1の面積が大きいほど、LED灯43の光度が大きくなることが確認された。
【0034】
≪電源装置の構造例≫
図14は、電源装置の構造例を示す図であり、塔体型の電源装置の構造を示す。図14(a)は、懸垂鉄塔の場合を示す。この電源装置は、電線Lが揺れても一定の距離(少なくとも所定の絶縁間隔以上の距離)を保つように湾曲したアルミ板が用いられ、支持がいしによって固定された電線Lにアルミ板の凹面が向くとともに、鉄塔に向かい合うアルミ板の凸面側ががいし(絶縁体)を介して鉄塔に固定された構成になっている。これは、アルミ板を、電線Lに平行に設けるとともに、電線Lが揺れる軌跡と平行になるように湾曲させることによって実現することができる。図1との対応付けを行うと、電極板1としてアルミ板があり、大地Eとして同じ電位を有する鉄塔がある。従って、アルミ板は、鉄塔と、鉄塔に架設される電線Lとの間に設けられる。なお、湾曲した板ではなく、平板を電線Lに平行に設ける構成も考えられる。
【0035】
図14(b)は、耐張鉄塔の場合を示す。この場合、電線L1と、電線L2とを接続するジャンパー線Jが固定されていないので、風圧等により横振れすることがあるが、電源装置として湾曲したアルミ板を用いることによって、アルミ板と、ジャンパー線Jとの間の距離を一定に保つことができる。なお、ジャンパー線Jを固定するために、鉄塔と、ジャンパー線Jとの間に支持がいしを取り付けた構成としてもよい。
【0036】
≪航空障害灯の構造例≫
図15は、電源装置を電源として使用する航空障害灯の構造例を示す図である。航空障害灯は、架空送電線用標識灯の一実施形態である。
【0037】
図15(a)は、航空障害灯の外面及び内部構造を示す。航空障害灯10は、LED(発光部材)3と、外層(カバー)7と、支持部9とを備える。LED3は、赤色灯等の高輝度発光ダイオードが用いられる。外層7は、所定の厚さを持つ強化プラスチック等であり、LED3が差し込まれて固定されるような構造になっている。換言すれば、外層7は、LED3を覆うような構成になっている。外層7の表面には、LED3が差し込まれる位置に対応してレンズ8が設けられていてもよい。これによれば、レンズ8による発光出力の集光又は拡散の効果を利用することによって、LED3の光度を効率的に確保、向上することができる。支持部9は、LED3及び外層7からなる発光部分を所定の箇所に支持するものであり、例えば、鉄塔に固定される。航空障害灯10は、2つの端子を持ち、一方の端子が鉄塔等を通じて大地Eに接続され、他方の端子が電極板1に接続される。なお、外層7と、支持部9とが一体化されて、鉄塔に取り付けられてもよい。
【0038】
図15(b)は、LED3の接続構成を示す。LED3は、AとBの部分が接続されることによって、すべてが直列に接続されることになる。定電圧電源であれば、負荷を並列に接続した方が有利である(負荷がLED3の場合、光度が大きい)が、静電誘導を利用した電源装置は定電流電源であるので、負荷を直列に接続した方が有利である。図1を使って定電流電源であることを説明すると、電線Lと電極板1との間は空気であるので、数MΩの抵抗を持つのに対して、LED3はせいぜい数百Ω程度である。従って、電線Lに所定の電圧が印加された場合、LED3の抵抗に比べて空気の抵抗が非常に大きいので、LED3の抵抗の大きさにかかわらずLED3にはほぼ一定の電流が流れる。これによれば、電源装置100は定電流電源となる。
【0039】
なお、航空障害灯10は、既存の電源を使用するものであってもよいし、静電誘導作用を利用した電源装置を使用するものであってもよい。
【0040】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、電線Lに電圧を印加したことにより発生する静電誘導作用を利用することによって、安定した簡単な電源装置を構成することができる。また、電極板1が電線Lと平行に設けられることによって、電極板1全体として一様に電線Lによる静電誘導作用を受けるので、さらに安定した電源装置とすることができる。一方、電極板1を電線Lが揺れる軌跡と平行になるように湾曲させて配置することによって、電線Lが揺れたとしても電線Lと、電極板1との間を一定の距離に保つことができ、電極板1の電位を一定にすることができるので、さらに安定した電源装置とすることができる。そして、がいしを挟んで鉄塔にアルミ板を固定することで、電源装置を簡単に取り付けることができる。
【0041】
以上によれば、例えば、送電線の新設工事や航空局からの指導等により、鉄塔に航空障害灯を設置することが要請された場合、静電誘導による電源装置を鉄塔側に設置することによって、電源工事をすることなく、その電源装置を使用して短期間かつ安価に夜間航空障害灯を設置することが可能となる。また、電源装置や航空障害灯を鉄塔側に設置することになるので、設備のメンテナンス作業が容易になる。
【0042】
以上、本発明を実施するための最良の形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、上記実施の形態では、電極板1(アルミ板を含む)が平板や湾曲した板であるように記載したが、そのような形状に限定されるものではなく、電極板1が穴空き板、メッシュ板等の形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】電線と大地との間の静電誘導作用を利用した電源装置の構成を示す図である。
【図2】電源装置100の電気的状態を示す模式図であり、(a)は電源装置100の模式図を示し、(b)は(a)の等価回路を示す。
【図3】測定実験に用いる装置構成を示す図である。
【図4】電源装置100の電気的性能の測定の結果を示す図であり、(a)は供試品がない場合を示し、(b)は供試品が0.5μFのコンデンサである場合を示す。
【図5】電源装置100の電気的性能の測定の結果を示すグラフであり、(a)は供試品がない場合の印加電圧と測定電圧との関係を示し、(b)は供試品が0.5μFのコンデンサである場合の印加電圧と測定電圧との関係を示し、(c)は0.5μFのコンデンサである場合の印加電圧と静電容量との関係を示す。
【図6】測定実験に用いる装置構成の一部を示す図である。
【図7】電源装置100の電気的性能の測定の結果を示す図であり、(a)はLED19個を直列に接続した場合を示し、(b)はLED1個の場合を示す。
【図8】電源装置100の電気的性能の測定の結果を示すグラフであり、(a)はLED19個を直列に接続した場合の印加電圧と測定電圧との関係を示し、(b)はLED1個の場合の印加電圧と測定電流との関係を示す。
【図9】輝度及び照度の測定の結果を示す図であり、(a)はLED19個を直列に接続した場合を示し、(b)はLED1個の場合を示す。
【図10】LED19個を直列に接続した場合の測定の結果を示すグラフであり、(a)は印加電圧と輝度との関係を示し、(b)は印加電圧と光度との関係を示す。
【図11】LED19個を直列に接続した場合の測定の結果を示すグラフであり、(a)は印加電圧と照度との関係を示し、(b)は印加電圧と光度との関係を示し、(c)は周囲の明るさを除去する前の印加電圧と照度との関係を示す。
【図12】LED1個の場合の測定の結果を示すグラフであり、(a)は印加電圧と輝度との関係を示し、(b)は印加電圧と光度との関係を示す。
【図13】LED灯43の発光状態を撮影した写真を示す図である。
【図14】電源装置の構造例を示す図であり、(a)は懸垂鉄塔の場合を示し、(b)は耐張鉄塔の場合を示す。
【図15】電源装置を電源として使用する航空障害灯の構造例を示す図であり、(a)は航空障害灯10の外面及び内部構造を示し、(b)はLED3の接続構成を示す。
【符号の説明】
【0044】
100 電源装置
1 電極板
2 がいし
3 LED
E 大地
L 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大地から絶縁され、電力を供給する電線に発生する静電誘導に応じて第1電位となる第1導電体と、
前記第1導電体の前記第1電位より低い第2電位となる第2導電体と、を備え、
前記第1導電体と前記第2導電体との間に、負荷を駆動するための電圧を発生することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置において、
前記第1導電体は、前記電線と平行に設けられる平板である
ことを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電源装置において、
前記第1導電体は、前記電線と平行に設けられるとともに前記電線と向かい合う側の面が凹面となる湾曲板である
ことを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の電源装置において、
前記第1導電体は、鉄塔と前記鉄塔に架設される前記電線との間に設けられ、
前記第1導電体の前記鉄塔と向かい合う側の面は、碍子を介して前記鉄塔に取り付けられる
ことを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の電源装置において、
前記第1導電体は、絶縁体を介してアークホーンに取り付けられる
ことを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の電源装置を用いた架空送電線用標識灯であって、
前記第1導電体と前記第2導電体の間に接続される発光部材を備えた
ことを特徴とする架空送電線用標識灯。
【請求項7】
請求項6に記載の架空送電線用標識灯であって、
前記発光部材を覆うとともに前記鉄塔に取り付けられるカバーを備え、
前記カバーは、前記発光部材の発光出力を集光又は拡散するためのレンズを有する
ことを特徴とする架空送電線用標識灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−253100(P2008−253100A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93911(P2007−93911)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】