説明

電源装置,それを利用したLED点灯装置及び電子機器

【課題】連続充電を回避して使用電圧の高設定が可能になるとともに、待機中のリーク電流をなくして電源回路自体の低消費電力化を図る。
【解決手段】白色LED16の動作電圧は、4.2Vであることから、キャパシタ14の充電は、3.8Vの電源10(例えばLIB)から、昇圧回路装置12を介して行われる。前記白色LED16は、駆動電圧0.3Vの電流制御装置18に接続され、該電流制御装置18には電圧検出回路20が接続されている。前記キャパシタ14は、体積あたりの抵抗値が低く(0.05Ω・cc以下)、必要最小限の容量で超ハイレートの充放電を可能とする低ESRキャパシタである。前記電圧検出回路20は、昇圧回路装置12の起動タイミングを検知し、前記白色LED16の動作直前に前記キャパシタ14が瞬間的に充電されてから、前記電流制御装置18を動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラや携帯電話などの電源装置,それを利用したLED点灯装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャパシタは、F(ファラッド)オーダの極めて高い静電容量を有する蓄電デバイスであり、その用途は、メモリのバックアップ用途から大型のUPS電源,EV用電源と広範に渡る。キャパシタの長所は、二次電池と比べて出力特性に優れ、サイクル使用での信頼性が高い点にあるが、エネルギ密度は二次電池に劣る。キャパシタの静電エネルギは、電圧Vの2乗に比例する(E=1/2CV)ため、利用エネルギを高める上で、使用電圧の引き上げは効果が高い。一方で、使用電圧の引き上げは信頼性に影響する。その原因は、連続充電中における電解液の分解とガス発生である。
【0003】
耐圧を改善した多くの電解液が提案されているが、現状では、有機系電解液を用いた量産品のキャパシタの最大使用電圧は、単セルで2.5V〜3Vが上限である。正負両極に同じ材料を用いる対称型のキャパシタは、充放電の電位変化が酸化,還元の両側で大きい。特に、酸化側の電位は、3V充電(セル電圧)時にはリチウム電位から見て4.5Vにも達する。これは、同じ有機系の電解液を使用するリチウムイオン電池と比較しても0.7Vも高い。分解電圧は、電極−電解液系内の不純物や工程中で入り込む水分にも大きく影響されるが、これらを完全に取り除くことは難しく、電極−電解液界面に集中する電圧の耐圧そのものを大幅に引き上げることも難しい。
【0004】
一般的に、キャパシタは連続充電の状態でスタンバイして用いられる。自己放電が大きいため、充電休止後の電圧低下が大きく、電池のようには閉路電圧が安定しないためである。従って、常に使用電圧の上限で予め連続充電してスタンバイすることで、機器の動作タイミングに備える場合が多い。充放電の効率を考えた場合の充電時間は、急速充電タイプの二次電池で数分,一般的なキャパシタでも数十秒程度であり、瞬時の充電は難しい。無理にそれ以上のレートで充電しても、ESR(等価直列抵抗)によるオーム損が増えるだけで充電は進まない。なお、瞬時の充電とは、おおよそ1秒程度で完了する超ハイレートの充電のことである。下記特許文献1及び2には、キャパシタを電源に利用した技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−533961号公報
【特許文献2】特表2005−537776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、以上のような背景技術には次のような問題点がある。まず、常に連続充電してスタンバイする使用法は、電圧が長時間印加されることによりキャパシタに電圧負荷がかかり、信頼性上の負担が大きい。そのため、動作保証の最大使用電圧が制限される要因となっている。また、自己放電を補うためにキャパシタに供給されるリーク電流は、待機中の電源回路の消費電力を大きくするという問題点がある。
【0007】
キャパシタとその使用方法を工夫することで連続充電が回避できれば、キャパシタ自身の信頼性上の負担が軽減されることで使用電圧を大幅に引き上げることができるようになり、より高出力,高エネルギの放電特性を得ることが可能となる。また、待機中のリーク電流が無くなることで、電源回路自体の低消費電力化にもつながる。
【0008】
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、連続充電を回避して使用電圧の高設定が可能になるとともに、待機中のリーク電流をなくして電源回路自体の低消費電力化を図ることができる電源装置,それを利用したLED点灯装置及び電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明の電源装置は、入力電源を昇圧させる昇圧回路装置と、該昇圧回路装置の出力電圧の印加により充電されるキャパシタと、前記昇圧回路装置の出力に接続した負荷と、該負荷に必要な電流を制御する電流制御装置とを有する電源装置であって、前記昇圧回路装置の起動タイミングを検知し、前記電流制御装置の動作を制御するタイミング制御手段,を設けるとともに、前記タイミング制御手段は、負荷動作の直前に前記キャパシタが充電されてから、前記電流制御装置を動作させることを特徴とする。
【0010】
主要な形態の一つは、前記タイミング制御手段として、前記昇圧回路装置の電圧を検知する電圧検出回路を用いたことを特徴とする。あるいは、前記タイミング制御手段として、前記昇圧回路装置の起動タイミングから所定時間経過後、前記電流制御装置を駆動するための制御信号を出力する遅延回路装置を用いたことを特徴とする。他の形態の一つは、前記キャパシタが、1秒以内の充電時間tcにおいて、キャパシタの内部抵抗Rと、キャパシタの容量Fの積であるR×Fが、0.1×tc以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明のLED点灯装置は、前記いずれかに記載の電源装置を利用したことを特徴とする。また、本発明の電子機器は、前記いずれかに記載の電源装置を備えたことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、入力電源を昇圧回路装置によって昇圧させ、該昇圧させた電圧をキャパシタに印加して充電させた後、電源出力に接続した負荷を動作させる電源装置において、タイミング制御手段によって昇圧回路装置の起動タイミングを検知して、前記負荷に必要な電流を制御する電流制御装置を制御し、負荷動作の直前にキャパシタを充電してから負荷を動作させることとした。このため、キャパシタに対する電圧ストレスを低減でき、信頼性を損なうことなく使用電圧を大幅に引き上げることが可能になる。また、高電圧印加によるリーク電流がなく低消費電力が可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来のキャパシタを利用したLED点灯装置の回路構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例1のLED点灯装置の回路構成を示す図である。
【図3】前記実施例1で用いる低ESRキャパシタの内部構造を示す図である。
【図4】本発明の実施例2のLED点灯装置の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
最初に、本発明の実施例1を説明する。通常のキャパシタの場合、瞬時の充電(おおよそ1秒程度で完了する超ハイレートの充電)が難しく充電に一定の時間を要するため、予め連続充電でスタンバイすることで機器の動作タイミングに備える必要があるが、連続充電は、電圧が長時間印加されることによりキャパシタに電圧負荷がかかり、信頼性上の負担が大きい。そのため、動作保証の最大使用電圧が制限される要因となる。また、自己放電を補うためにキャパシタに供給されるリーク電流は、待機中の電源回路の消費電力を大きくしてしまう。
【0016】
図1には、比較例として、従来のキャパシタを利用したLED点灯装置の回路構成が示されている。図1に示すように、白色LED16の動作電圧は例えば4.2[V]であることから、キャパシタ13(図1には、「キャパシタ4直セル」と図示)の充電は、出力3.8[V]の電源10から、昇圧回路装置12を介して行われる。前記白色LED16は、駆動電圧0.3[V]の電流制御回路ないし電流制御装置18に接続されている。該電流制御装置18は、放電電流を1Aに制御するためのものである。
【0017】
このような回路構成のLED点灯装置では、前記キャパシタ13には、白色LED16の点灯に必要な電圧が連続的に印加されており、前記白色LED16の点灯が可能な状態で常に待機している。具体的には、白色LED16の点灯待機状態が必要なときに、前記昇圧回路装置12に制御信号CNT1(ないし起動信号)を入力することによって待機状態にする。あるいは、入力電源投入時に、電源自体を制御信号として待機状態にしてもよい。そして、白色LED16の点灯が必要なときに、前記電流制御装置18に制御信号CNT2(白色LED点灯指示)を入力すると白色LED16が点灯する。しかしながら、この構成では、上述した問題が生じてしまう。
【0018】
そこで、本発明は、上述した連続充電を回避するために、電源装置に低ESRキャパシタを用い、機器の動作直前に所定の電圧に充電を行い使用することを特徴としている。瞬時に充電を完了するには、ESR(等価直列抵抗)が十分低いことが必要である。ESRが十分に低くなければ、オーム損による電圧低下が大きく実質的に充放電が行えない。また、急速に充電する際の充電電流が主電源に負担を与えずに主電源の容量に見合ったものであることも必要である。回路全体の電圧低下を防止するためには、あまり大きな容量の充電は適さず、必要最小限の容量を備えた小型セルであることが望ましい。
【0019】
前記低ESRキャパシタは、体積あたりの抵抗値が低く(0.05Ω・cc以下)、必要最小限の容量でハイレートの充放電を可能とするキャパシタである。これまでは連続放電により所定の電圧で予めスタンバイする必要があった用途においても、低ESRキャパシタを用いれば機器の動作直前に瞬時に充電を行うことが可能になり連続充電が回避できる。
【0020】
また、瞬時に充電を行うためにはキャパシタのESRによる電圧損失が少ないことも必要である。一般的にICなどで許容される電圧変動の目安は動作電圧の10%以内であることから、キャパシタの電圧損損失も同様に使用電圧の10%以下であることが必要と考えられる。キャパシタの充電時の電圧損失は、内部抵抗をR[Ω],充電電流をIc[A]とするとR×Icである。これが、充電電圧Vの10%以下,すなわち、0.1V以下であることから、
R×Ic≦0.1×V・・・(1式)
と表わされる。
【0021】
更に、キャパシタの動作タイミングに合わせて瞬時に充電して使用することを前提としていることから、充電時間をtc[sec],キャパシタの静電容量をFとすると、0[V]からV[V]までキャパシタを充電する場合の電流値の関係は、
Ic=F×V/tc・・・(2式)
と表わされる。前記2式のIcを前記1式に代入して整理すると、
R×F≦0.1×tc・・・(3式)
の関係を得る。以上より、電圧損失が動作電圧の10%以下で1秒以下の瞬時充電を可能とするには、キャパシタの内部抵抗Rと静電容量Fの積であるR×Fが、充電時間tcの10%以下であることが必要であることが分かる。
【0022】
以下、図2及び図3を参照して、モバイル機器、例えばデジタルカメラにおいて主電源(リチウム二次電池)で白色LEDをフラッシュ点灯させるLED点灯装置にラミネートタイプのキャパシタ(低ESRキャパシタ)を利用した場合を例に挙げて、実施例1を説明する。デジタルカメラでは、一般的にモバイル機器用のLIB(リチウムイオン二次電池)の供給可能な最大電流は5A以下程度と見られるが、アンペアオーダのハイレートでの放電は、LIBにとって負担が大きく、繰り返し使用する中で安定した放電性能が得にくいのが現状である。それに対して、フラッシュ用の高輝度白色LEDの負荷電流は、一灯あたり1Aに達するために、機器の動作中に更に白色LEDを点灯させる場合,特に、複数のLEDを並列で使用した場合などにおいては、LIBのみでは出力が不足してしまう。しかし、前記低ESRキャパシタを瞬時充電して白色LEDの負荷電流をバックアップする定電流源として用いれば、十分な輝度を得ることが可能となる。図2は、実施例1のLED点灯装置の回路構成を示すブロック図,図3は、本実施例で用いる低ESRキャパシタの内部構造の一例を示す図である。
【0023】
図2に示すように、白色LED16の動作電圧は例えば4.2[V]であることから、低ESRキャパシタセル14(以下「キャパシタ」とする)の充電は、出力3.8[V]の電源(例えばLIB)10から、昇圧回路装置12を介して行われる。前記キャパシタ14は、耐圧の点から見て、キャパシタ単セルを複数個,例えば3個直列に接続したもの(図1には「キャパシタ3直セル」と図示)が利用される。前記白色LED16は、駆動電圧0.3Vの電流制御回路ないし電流制御装置18に接続されている。前記電流制御装置18は、白色LED16に必要な電流を制御するものであって、本実施例では、放電電流を1Aに制御している。更に、前記電流制御装置18には、前記昇圧回路装置12の起動タイミングを検知して前記電流制御装置18の動作を制御するタイミング制御手段として、電圧検出回路20が接続されている。
【0024】
このような回路構成のLED点灯装置では、定常時は、前記昇圧回路装置12は動作していない。この状態では、キャパシタ14に電圧印加はないか、未動作時の昇圧回路装置12の出力仕様による入力電源以下の低電圧が印加されているのみである。昇圧動作を行うための制御信号CNT3が、前記昇圧回路装置12に入力されると、該昇圧回路装置12が動作する。そして、キャパシタ14の充電が完了して白色LED16が点灯動作できる所定の電圧になったことを前記電圧検出回路20が検出すると、該電圧検出回路20から電流制御装置18へ、該電流制御装置18を動作させるための制御信号を出力する。この制御信号をうけて、電流制御装置18は、白色LED16が動作するための所定電流を放電する。なお、前記電圧検出回路20は、図示のように独立して設けてもよいし、前記昇圧回路装置12内もしくは電流制御装置18内に設けてもよい。
【0025】
<充電特性>・・・次に、本実施例の充電特性について説明する。なお、ここでは、キャパシタ単セルを0V→3V(3直セルで0V→9V)に充電する際の単セルの充電特性について説明するものとする。
(1)容量・・・1[A]×1[秒]の瞬時充電を完了させる際の電気容量を考慮すると、単セルの静電容量は少なくとも0.3[F]以下であるのがよい。負荷容量として白色LED16の点灯時間が1[A]×数十[ミリ秒]のオーダーであることから、静電容量の範囲としては単セルで0.1[F]〜0.3[F]がよい。3直セルに直すと、0.03[F]〜0.1[F]となる。
(2)ESR・・・オーム損を3[V]の10[%]以下と設定すると、単セルでは0.3「Ω]以下がよい。3直では0.9「Ω]以下となる。
【0026】
基本的には、以上の容量と抵抗値を備えたキャパシタであれば、白色LED16のフラッシュの動作直前に瞬時充電が可能であり、連続充電が回避できる。この場合、例えばデジタルカメラのシャッター操作の開始信号が、放電直前を知らせる信号となる。この信号が出力されたときに、電源10によってキャパシタ14に充電が行われる。なお、キャパシタ14のセルサイズは、0.1[F]〜0.3[F]の容量に見合う小型サイズであることが重要であり、この場合、ESRの目安は単セルの体積当たり0.05[Ω・cc]以下程度である。一般的な50[F]〜100[F]程度の中型キャパシタの0.1[Ω・cc]〜0.2「Ω・cc]程度のものと比較すると、瞬時充電が可能な小型セルであるためには、優れた低ESRの特性を備える必要があることが分かる。以上の特性を備えたキャパシタで瞬時充電を行えば、信頼性特性への負担が軽減され、リーク電流の消費もなくすることができる。
【0027】
<出力特性>・・・次に、放電の効果について説明する。信頼性特性への負担軽減による使用電圧の引き上げにより、白色LED16への最大供給電流値が増加することを以下に説明する。使用電圧と最大供給電流値Imaxの関係は、下記4式の通りである。
max=C/(t−CR)×(3V−V)・・・(4式)
C:容量
R:ESR
:単セル使用電圧
:LEDの動作電圧
t:点灯時間
【0028】
ここで、使用電圧Vを2.5Vから3Vに20%引き上げた場合、上記1式の(3V−V)の項に注目すると、この部分の値は3.3Vから4.8Vに増加する。これは、Imaxが約45%増加することを表しており、供給電流値が大幅にアップする効果が得られる。
【0029】
連続的に長時間充電した場合、薄型形状のラミネートタイプのキャパシタは、外装にアルミ缶を用いた円筒型タイプのキャパシタと比較すると、外装が脆弱であるため充電中のガス発生によるセル膨れがおこりやすい。瞬時充電を行えば、機器の動作中において定電圧で連続的に充電される時間がほとんどカットされるため、ガス発生につながる電解液の分解などの副反応が連続充電と比べて極めて起こりにくい。従って、セル膨れは、瞬時充電を行えば大幅に改善され、使用電圧の引き上げも可能となる。
【0030】
<キャパシタセルの構造>・・・次に、図3を参照して、本実施例で利用する低ESRキャパシタセルの構造を説明する。キャパシタセル30は、セパレータ32を間に挟んで、電極34と36が交互に積層されており、全体が外装ラミネート38A,38Bによって覆われている。前記キャパシタセル30は、例えば、寸法が、W20[mm]×L15[mm]×t0.6[mm],0.18[cc],0.3[g]であって、0.14[F],270[mΩ]の特性を有する。また、セル容積あたりの抵抗は0.049[Ω・cc],容量は0.78[F/cc]である。
【0031】
次に、本実施例のキャパシタセル30を構成するための材料について具体例をあげる。まず、本発明に用いる電極活物質は、例えば活性炭の如き多孔質系炭素,ポリアセン系物質,錫酸化物,珪素酸化物が上げられる。そして、これらの中でも芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であって水素原子/炭素原子の原子比が0.50〜0.05であるポリアセン系骨格構造を含有する不溶不融性基体とであることが好ましい。
【0032】
上記芳香族系ポリマーとは、フェノール性水酸基を有する芳香族系炭化水素化合物とアルデヒド類の縮合物である。芳香族系炭化水素化合物としては、例えばフェノール,クレゾール,キシレノールの如きいわゆるフェノール類が好適であるが、これらに限定されるものではない。実用的にはフェノール類特にフェノールが好適である。
【0033】
本発明における芳香族系縮合ポリマーとして、上記のフェノール性水酸基を有する芳香族系炭化水素化合物の一部を、フェノール性水酸基を有さない芳香族系炭化水素化合物例えばキシレン,トルエン,アニリン等で置換した変性芳香族系縮合ポリマー例えばフェノールとキシレンとホルムアルデヒドとの縮合物を用いることも、また、メラミン,尿素などで置換した変性芳香族系縮合ポリマーを用いることもできる。また、フラン樹脂も好適である。
【0034】
またアルデヒドとしてはホルムアルデヒド,セチルアルデヒド,フルフラール等のアルデヒドを使用することができるが、その中でもホルムアルデヒドが好適である。フェノールホルムアルデヒド縮合物としては、ノボラック型又はレゾール型或いはそれらの混合物のいずれであってもよい。
【0035】
上記不溶不融性基体は、上記芳香族系縮合ポリマーを熱処理することにより得られるものであり、特公平1−44212号,特公平3−24024号公報等に記載されているポリアセン系骨格構造を有する不溶不融性基体をすべて含むものである。ポリアセン系骨格構造を有する活物質は高容量でありこれは容量を保持しながら電極体積を低減するのには有利である。
【0036】
前記不溶不融性基体は、例えば次のようにして製造することができる。すなわち、上記芳香族系縮合ポリマーを、非酸化性雰囲気(真空を含む)中で例えば400〜900[℃]の適当な温度まで徐々に加熱することにより、水素原子/炭素原子の原子比(以下H/Cと記す)が0.50〜0.05、好ましくは0.35〜0.10の不溶不融性基体を得ることができる。
【0037】
上記不溶不融性基体はX線回折(CuKα)によれば、メインピークの位置は2θで表して24[°]以下に存在し、また該メインピークの41〜46[°]の間にブロードな他のピークが存在する。すなわち、芳香族系多環構造が適度に発達したポリアセン系骨格構造を有し、かつアモルファス構造をとると示唆され、イオンを安定にドーピング、脱ドーピングできることから電極活物質として有用である。
【0038】
この不溶不融性基体は、そのH/Cが0.50〜0.05であることが好ましい。すなわち、H/Cが0.50を超える場合は、芳香族系多環構造が充分に発達していないため、リチウムのドーピング、脱ドーピングがスムーズに行なわれず、電池を組んだ際に充放電効率が低下するという問題が生じるし、また逆に、H/Cが0.05未満の場合には本発明の電池の容量が低下するおそれがあるからである。本発明で用いる電極活物質の形状は、粉末状、短繊維状等、成形可能であれば特に限定されない。
【0039】
次に、本発明における電極34,36は、前記電極活物質に特定のバインダを加え溶媒と混合しスラリ化して、導電性薄膜を備えた27[μm]のアルミ箔集電体33上に両面塗付し乾燥する。アルミ箔集電体33上の電極層の厚みは片面9[μm]であり、電極34,36としての厚みは45[μm]となる。
【0040】
前記セパレータ32としては、電解コンデンサ紙(ニッポン高度紙工業株式会社製)TF4030 厚み30[μm]を用いる。電解液としては、溶媒がPC,もしくはPCとDMCECなどの混合物、溶質がピロリジニウム塩の有機電解質溶液(濃度1.4[mol/l])を用いた。すなわち、本実施例では、前記アルミ箔集電体33の表面に塗布された導電性薄膜が分極性電極で、電解液に濡れた前記電極表面付近に電気二重層が形成される構造となっている。そして、前記アルミ箔とポリプロピレン性の融着フィルムを貼りあわせた総厚113[μm]のアルミラミネート材(大日本印刷株式会社製 #01D−EL40H(II)など)を外装ラミネート38A,38Bとして使用する。
【0041】
<製造方法>・・・次に、本実施例のキャパシタセルの30製造方法の一例を説明する(太字部分WO02/089245からの引用)。まず、水溶性レゾール(約60%濃度)/塩化亜鉛/水を重量比で10/25/4の割合で混合した水溶液を100[mm]×100[mm]×2[mm]の型に流し込み、その上にガラス板を被せ水分が蒸発しない様にした後、約100[℃]の温度で1時間加熱して硬化させた。
【0042】
該フェノール樹脂をシリコンユニット電機炉中に入れ、窒素気流中で40[℃/時間]の速度で昇温して、500[℃]まで熱処理を行った。次に該熱処理物を希塩酸で洗った後、水洗し、その後、乾燥することによって板状のPASを得た。かくして得られたPASをナイロンボールミル又はディスクミル等で粉砕して粉砕条件の違いにより平均粒径1[μm]と4[μm]のPAS粉末を得、これらの粉を1[μm]:4[μm]=1:2の重量割合に混合して用いた。前記PAS粉末に、重量比でPAS:CMC:SBR:AB=100:2:1:1となるように添加物を加え、水と混合・攪拌を行い、固形分30%のスラリとした。なお、前記添加物のうち、CMCはカルボキシメチルセルロース(分散材),SBRはジエン系ゴムバインダ,ABはアセチレンブラック(導電材)である。
【0043】
次に、ガラス板の上にアンカ層として黒鉛の導電性塗料を塗布した基材アルミ箔27[μm]を配置してドクターブレード、もしくはバーコードでスラリを塗布する。その後、ガラス板ごと70[℃]〜100[℃]で5分程度イナートもしくは熱風の乾燥を行い、片面ずつ2回の塗付,乾燥を行い両面を塗工する。量産などでは、塗工の時にあらかじめ溶接部分を確保するために両面ストライプのパターン塗工を行うとよい。パターン塗工をしない場合は、両面塗工後に電極層をはぎとりタブ溶接の部分を確保する。その後に所定のサイズに電極をカットする。電極寸法は、例えば、電極部分が15[mm]×8[mm],端子溶接部分が2[mm]×5[mm]である。
【0044】
そして、2つ折りにした紙セパレータ32の間に電極36を挿入し、その上に対向する電極34を積層する。図3の例では、電極34が3層,電極36が2層(電極層数5層)、セパレータ32が4層となっている。このように積層した電極の端子溶接部分に、外部接続用の端子として幅3[mm]の融着シール付きアルミタブ2本を、正負極それぞれを超音波溶接機で溶接する。端子溶接後の素子は、金属性の乾燥容器に並べて185[℃],12時間の真空乾燥を行う。乾燥取り出し後の作業は、全てドライ雰囲気において行われた。
【0045】
乾燥後の素子を2つ折りにした外装用アルミラミネートに挿入し、開口している3辺のうち先に2辺を熱融着により封止する。素子挿入については、素子位置を定めやすくするためにアルミラミネートに予めエンボス加工を施してもよい。そして、残り1辺の開口部分から、電解液を40mg〜50mg定量注液する。定量の注液にはマイクロシリンジもしくはハイバポンプなどを用いる。その後、最終の1辺を熱融着してセル封止を完了する。封止はシーラなどを用いてシール部分を熱で溶かして融着する。シール部分がポリプロピレンの溶融温度140度になるように、温度のかけ方や圧力の加え方などを調整する。
【0046】
本実施例のように、直列にセルを接続して耐圧をアップさせる場合があるが、3セルを直列に接続する場合は、3セルを積層した状態でそれぞれ直列に接続する。そして、素子作製の時と同様に、アルミタブ端子を超音波溶接により接続する。片側2端子でアルミタブを重ねるようにして積層すると、最終的なセルの実装面積を小さくできる。各セル間の充電電圧を均等に調整する場合などは、4端子の外部端子が必要であるが、この場合は、各両側に2端子を取り出し4端子とする。なお、アルミタブは、そのままでは基板とのハンダ溶接ができないため、ハンダが容易になるように純ニッケルのタブ,もしくはニッケルメッキ済みのSUSや銅の金属タブ,もしくはアルミにSnメッキ済みのタブをアルミリードに溶接する。
【0047】
<評価>・・・次に、白色LED16をフラッシュ点灯させた場合を想定した単セル3[V]での充放電試験(15万回のサイクル試験)で信頼性(特性及びセルの厚み)の評価を行った。試験条件は以下の通りである。
(1)充放電試験条件・・・充電:1[Amax] 3[V]×1[sec]
放電:8[A]×0.033[sec]
(2)サイクル試験条件・・・充電:0.4[Amax] 3[V]×0.27[sec]
放電:0.4[A]×0.09[sec]
【0048】
試験結果が下記の表1に示されている。

表1に示すように、放電後の電圧は、3直換算した場合の合格ラインを超えており、また、セルの厚みは、15万回のサイクル後にもほとんど膨れがみられなかった。
【0049】
このように、実施例1によれば、電源10を昇圧回路装置12によって昇圧させ、該昇圧させた電圧を低ESRキャパシタセル14に印加して充電させた後、電源出力に接続した白色LED16を動作させるLED点灯装置において、電圧検出回路20によって、前記昇圧回路装置12の起動タイミングを検知し、白色LED16に必要な電流を制御する電流制御装置18を制御して、負荷動作の直前に瞬間的にキャパシタ14を充電してから白色LED16を点灯させることとしたので、次のような効果がある。
【0050】
(1)キャパシタ14に対する電圧ストレスを軽減でき、信頼性を損なうことなく使用電圧を大幅に引き上げることができる。その結果、より高出力,高エネルギの放電特性を得ることが可能となる。
(2)待機中のリーク電流がなくなることで、電源回路自体の低消費電力化が可能になる。
(3)電圧検出回路20を設けることで、キャパシタ14の充電状態を確実に把握して、充電後、無駄な時間なくすぐに白色LED16を点灯させることができる。
(4)1秒以内の充電時間tcにおいて、キャパシタの内部抵抗Rと、キャパシタの容量Fとの積であるR×Fが、0.1×tc以下であるキャパシタ14を用いることとしたので、実用的な瞬時充放電が可能となる。
【実施例2】
【0051】
次に、図4を参照しながら本発明の実施例2を説明する。なお、上述した実施例1と同一ないし対応する構成要素には同一の符号を用いることとする。本実施例のLED点灯装置は、図4に示すように、キャパシタ14の充電は、電源10から昇圧回路装置12を介して行われる。前記白色LED16は、前記電流制御装置18に接続され、該電流制御装置18には、遅延回路装置22が接続されている。該遅延回路装置22は、前記キャパシタ14の充電完了に必要な所定時間経後に、電流制御装置18を動作させるための制御信号を出力するためのものである。
【0052】
このような回路構成のLED点灯装置では、定常時は、前記昇圧回路装置12は動作していない。この状態では、キャパシタ14に電圧印加はないか、未動作時の昇圧回路装置12の出力仕様による入力電源以下の低電圧が印加されているのみである。昇圧動作を行うための制御信号CNT4が、前記昇圧回路装置12に入力されると、該昇圧回路装置12が動作する。また、前記制御信号CNT4は、前記遅延回路装置22にも入力される。該遅延回路装置22は、事前に把握してあるキャパシタ14の充電完了までに必要な諸時間が経過したのち、前記電流制御装置18を動作させるための制御信号を出力する。この制御信号をうけて、電流制御装置18は、白色LED16が動作するための所定電流を放電する。なお、前記遅延回路装置22は、図示のように独立して設けてもよいし、前記昇圧回路装置12内もしくは電流制御装置18内に設けてもよい。本実施例によれば、簡単な構成で制御手段を構成できるため、低価格化に有利である。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法,材料は一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。
(2)前記低ESRキャパシタの製造方法も一例であり、同様の効果を奏するように適宜変更してよい。
(3)前記実施例で示したキャパシタにおける電極やセパレータの積層数も一例であり、必要に応じて適宜増減してよい。
【0054】
(4)前記実施例で示した昇圧回路装置12の起動タイミングの検知及び電流制御装置18の制御は一例であり、同様の効果を奏するように適宜設計変更してよい。例えば、前記実施例2では、遅延回路装置22を用いることとしたが、これも一例であり、前記遅延回路装置22の代わりに、機械的に遅延信号を出力するようなスイッチ装置を利用してもよい。
(5)前記実施例では、白色LED16のフラッシュ点灯に本発明を適用したが、基本的には、動作タイミングが同期信号などで把握できるような場合であれば、同様に、負荷変動をバックアップする補助電源として瞬時充電の方法が使用できる。例えば、携帯用機器(デジカメ,ゲーム機,パソコン)の電源として利用可能である。これらの場合、電源スイッチの投入のタイミングでキャパシタの充電を行うようにする。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、低キャパシタの特性を生かして機器の動作直前に瞬時充電することとしたので電源装置の用途に適用できる。特に、薄型モバイル機器の主電源に対して負荷変動を抑制するのに好適な電源が得られ、特に携帯用の電子機器に好適である。
【符号の説明】
【0056】
10:電源
12:昇圧回路装置
13:キャパシタ(キャパシタ4直セル)
14:低ESRキャパシタセル(キャパシタ3直セル)
16:白色LED
18:電流制御装置
20:電圧検出回路
22:遅延回路装置
30:キャパシタセル
32:セパレータ
33:アルミ箔集電体
34,36:電極
38A,38B:外装ラミネート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電源を昇圧させる昇圧回路装置と、該昇圧回路装置の出力電圧の印加により充電されるキャパシタと、前記昇圧回路装置の出力に接続した負荷と、該負荷に必要な電流を制御する電流制御装置とを有する電源装置であって、
前記昇圧回路装置の起動タイミングを検知し、前記電流制御装置の動作を制御するタイミング制御手段,
を設けるとともに、
前記タイミング制御手段は、負荷動作の直前に前記キャパシタが充電されてから、前記電流制御装置を動作させることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記タイミング制御手段として、前記昇圧回路装置の電圧を検知する電圧検出回路を用いたことを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記タイミング制御手段として、前記昇圧回路装置の起動タイミングから所定時間経過後、前記電流制御装置を駆動するための制御信号を出力する遅延回路装置を用いたことを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項4】
前記キャパシタが、1秒以内の充電時間tcにおいて、キャパシタの内部抵抗Rと、キャパシタの容量Fの積であるR×Fが、0.1×tc以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電源装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の電源装置を利用したことを特徴とするLED点灯装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の電源装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−50229(P2011−50229A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199095(P2009−199095)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(503419044)太陽誘電エナジーデバイス株式会社 (6)
【Fターム(参考)】