説明

電源装置

【課題】出力負荷のバラツキおよびスイッチングレギュレータの製造バラツキによる電力効率バラツキが発生したときに、スイッチングレギュレータの内部損失を最小とする電源装置を提供する。
【解決手段】入力電圧を負荷に対応した出力電圧に変換して出力し、負荷に電力を供給するスイッチングレギュレータと、スイッチングレギュレータへの入力電圧を監視する入力電圧監視手段と、スイッチングレギュレータへの入力電流を監視する入力電流監視手段と、入力電圧と入力電流とに基づいて、スイッチングレギュレータへの入力電力を演算する入力電力演算手段と、出力電圧を出力後に演算された入力電力が、予め定められた目標消費電力を上回るか否かを判定する電力判定手段と、入力電力が予め定められた目標消費電力を上回ると判定したとき、スイッチングレギュレータの動作モードを、入力電力がより小さくなる動作モードに遷移させる動作モード制御手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関し、例えばスキャナ・ファクシミリ・複写機などの機能を含む画像処理装置に用いられる電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気を使う各種装置を駆動させる電源装置には様々なレベルの電圧を出力する必要があり、様々なレベルの電圧を出力するための手段として、スイッチングレギュレータ,シリーズレギュレータがよく用いられる。スイッチングレギュレータは低消費電流時に効率が悪くなる特性を持つ。シリーズレギュレータは、入出力電位差により効率が決まるため、高電流出力時にレギュレータ損失が大きくなる特性を持つ。そのため、低消費電力化を実現するために、スイッチングレギュレータに関しては、低電流出力時にFET駆動周波数を小さくするPFM(Pulse Frequency Modulation:パルス周波数変調)方式が用いられる。しかし、PFM方式は消費電力を小さくすることができるが、出力電圧のリプル電圧が大きくなってしまう。そのため、PFM方式のリプル電圧増加の問題を解決する方式として、出力電流を監視し、低消費電流時にはシリーズレギュレータ、高消費電流時にはスイッチングレギュレータに切り替える装置が知られている。
【0003】
例えば、入力電圧の変化による変換効率の悪化を防止することのできるDC−DCコンバータを提供する目的で、入力電圧を電圧変換した出力電圧を一定に制御するスイッチングレギュレータおよびリニアレギュレータと、スイッチングレギュレータとリニアレギュレータのいずれか一方を動作させる制御回路とを備え、制御回路は、入力電圧,出力電圧,および出力電流を監視し、該監視結果に基づき、その出力電流において、スイッチングレギュレータとリニアレギュレータとで効率のよいレギュレータを選択して動作させるようにしたことを特徴とするDC−DCコンバータが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−082273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
出力電流を監視し、低消費電流時にはシリーズレギュレータ、高消費電流時にはスイッチングレギュレータに切り替える従来の構成では、電力効率を改善することはできるが、出力負荷のバラツキおよびスイッチングレギュレータの製造バラツキによる電流−電力効率バラツキを考慮していないため、この電力効率バラツキが発生したときに、スイッチングレギュレータの内部損失を最小に最適化することができないという問題がある。
【0006】
特許文献1の構成は、確かにDC−DCコンバータの効率を改善する効果を奏するが、スイッチングレギュレータの製造バラツキおよび出力負荷のバラツキによる電流−電力効率バラツキを考慮していないため、この電力効率バラツキが発生したときに、スイッチングレギュレータの内部損失を最小に最適化することができないという問題は解消できていない。
【0007】
上記問題点を背景として、本発明の課題は、出力負荷のバラツキおよびスイッチングレギュレータの製造バラツキによる電力効率バラツキが発生したときに、スイッチングレギュレータの内部損失を最小とする電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
上記課題を解決するための電源装置は、
入力電圧を負荷に対応した出力電圧に変換して出力し、負荷に電力を供給するスイッチングレギュレータと、スイッチングレギュレータへの入力電圧を監視する入力電圧監視手段と、スイッチングレギュレータへの入力電流を監視する入力電流監視手段と、入力電圧と入力電流とに基づいて、スイッチングレギュレータへの入力電力を演算する入力電力演算手段と、出力電圧を出力後に演算された入力電力が、予め定められた目標消費電力を上回るか否かを判定する電力判定手段と、入力電力が予め定められた目標消費電力を上回ると判定したとき、スイッチングレギュレータの動作モードを、入力電力がより小さくなる動作モードに遷移させる動作モード制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成によって、出力負荷のバラツキおよびスイッチングレギュレータの製造バラツキによる電力効率バラツキが発生したとしても、スイッチングレギュレータの内部損失を小さく最適化することができる。
【0010】
また、本発明の電源装置は、スイッチングレギュレータの動作モードにおいて、スイッチングレギュレータの電流−電力効率分布の特性が良好な状態における出力電流を出力可能な動作モードをデフォルトの動作モードとする。
【0011】
上記構成によって、動作モードを変動させる確率を小さくし、動作モード選定時に、電力効率が悪い箇所で使用する機会を減らし、スイッチングレギュレータの内部損失を小さく最適化することができる。
【0012】
また、本発明の電源装置は、スイッチングレギュレータにおける平均消費電力量を演算する平均消費電力量演算手段を備え、動作モード制御手段は、スイッチングレギュレータにおける平均消費電力量を変化させることなく、該スイッチングレギュレータにおける瞬間的な消費電流を小さくするように該スイッチングレギュレータを動作させる。
【0013】
上記構成によって、スイッチングレギュレータの電流−電力効率分布が集中している箇所よりも電流が小さい箇所で電力効率が高くなるレギュレータに対して、瞬間的な消費電流を小さくすることにより、スイッチングレギュレータの内部損失を小さく最適化することができる。また、瞬間的な消費電流を小さくするため、電源装置から放射する電磁波のエネルギーを小さくすることができる。
【0014】
また、本発明の電源装置は、スイッチングレギュレータにおける平均消費電力量を演算する平均消費電力量演算手段を備え、動作モード制御手段は、スイッチングレギュレータにおける平均消費電力量を変化させることなく、該スイッチングレギュレータにおける瞬間的な消費電流を大きくするように該スイッチングレギュレータを動作させる。
【0015】
上記構成によって、スイッチングレギュレータの電流−電力効率分布が集中している箇所よりも電流が大きい箇所で電力効率が高くなるレギュレータに対して、瞬間的な消費電流を大きくすることにより、スイッチングレギュレータの内部損失を小さく最適化することができる。
【0016】
また、本発明の電源装置は、負荷における負荷抵抗を調整する負荷抵抗調整手段を備え、動作モード制御手段は、負荷抵抗を通常の状態より大きくし、スイッチングレギュレータにおける瞬間的な消費電流を大きくするように該スイッチングレギュレータを動作させる。
【0017】
上記構成によっても、スイッチングレギュレータの電流−電力効率分布が集中している箇所よりも電流が大きい箇所で電力効率が高くなるレギュレータに対して、瞬間的な消費電流を大きくすることにより、スイッチングレギュレータの内部損失をより小さく最適化することができる。
【0018】
また、本発明の電源装置における入力電流監視手段は、スイッチングレギュレータに対して入力電力が供給される経路である入力電力供給経路と直列に、抵抗値の低い低抵抗を接続し、その低抵抗において発生する電位差を増幅し、その電位差を増幅したものをAD変換した結果を入力電流とする。
【0019】
上記構成によって、入力電流を監視する時に発生する消費電力を抑えることができる。低抵抗を用いることで、低抵抗で発生する電位差を小さくすることができる。また、低抵抗で発生する電位差が小さくなったとしても、電圧増幅をすることで、AD変換器で電位差を測定することが可能となる。
【0020】
また、本発明の電源装置はにおける入力電力供給経路は、低抵抗に並列に接続されたFETを含み、入力電流の監視を行わない場合、低抵抗に流れる電流をFETへバイパスする。
【0021】
上記構成によって、入力電流を監視しないときに、低抵抗で発生する損失を抑制することができる。
【0022】
また、本発明の電源装置は、スイッチングレギュレータの出力電流を監視する出力電流監視手段と、出力電流が異常であるか否かを判定する出力電流判定手段と、を備える。
【0023】
上記構成によって、出力電流を監視することで、設計時に想定できなかった電流の挙動の検出をすることが可能となる。
【0024】
また、本発明の電源装置は、出力電流が異常であると判定したときに、負荷への電力の供給を停止する電力供給停止手段を備える。
【0025】
上記構成によって、異常電流が発生した時に、安全に電力の供給を止めることができる。
【0026】
また、本発明の電源装置における動作モード制御手段は、出力電流が予め定められたピーク値を超えたときに、スイッチングレギュレータの動作モードを、出力電流がより小さくなる動作モードに遷移させる。
【0027】
上記構成によって、電源装置から放射する電磁波のエネルギーを抑制することができる。
【0028】
また、本発明の電源装置における動作モード制御手段は、前記出力電流が周波数毎に予め定められた出力電流の閾値を超えたときに、スイッチングレギュレータの動作モードを、閾値を超えた周波数においての電流値がより小さくなる動作モードに遷移させる。
【0029】
上記構成によって、電源装置から放射する特定周波数の電磁波のエネルギーを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】電源装置の基本構成を示す図。
【図2】従来技術による電圧生成部の回路構成を示す図。
【図3】従来技術による電力供給を説明するフロー図。
【図4】スイッチングレギュレータの電力効率について説明する図。
【図5】本発明の電圧生成部の回路構成を示す図。
【図6】動作モード制御処理を説明するフロー図。
【図7】動作モードの一例を示す図。
【図8】本発明におけるスイッチングレギュレータの電力効率について説明する図。
【図9】入力電力検出部の別例を示す図。
【図10】本発明の電圧生成部の回路構成を示す図(変形例)。
【図11】出力電流異常判定処理を説明するフロー図。
【図12】動作モード制御処理を説明するフロー図(変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る電源装置の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に、電源装置の構成図を示す。図1のように、電源装置100は、電力供給部1および電圧生成部2を含み、電力供給部1より電力を供給された電圧生成部2が、負荷3に応じて様々なレベルの電圧を生成・出力する。負荷3では、電圧生成部2からの電圧が入力され、CPU4がROM5に格納された内容に基づき、RAM6を作業領域として動作し、そのCPU4を含む制御部30が、メカ駆動部7,通信制御部8,センサ部9を制御する。なお、CPU4が本発明の入力電力演算手段,入力電流監視手段,電力判定手段,動作モード制御手段,平均消費電力量演算手段,負荷抵抗調整手段,出力電流監視手段,出力電流判定手段,電力供給停止手段に相当する。
【0032】
負荷3は、例えば、例えばスキャナ・ファクシミリ・複写機などの機能を併せ持つ画像処理装置の構成要素である。この場合、メカ駆動部7は原稿や用紙の搬送を行うものであり、通信制御部8はネットワーク通信あるいはFax通信を行うものであり、センサ部9は原稿や用紙の位置の検出を行うものである。
【0033】
図2に、従来技術による電圧生成部2の回路構成を示す。電圧生成部2は、電力供給部1から供給される電圧VCC0を用い、スイッチングレギュレータ(以下、REGと表記)1(31)によりVCC1を生成し、負荷41に電力を供給している。なお、負荷41は、制御部30を含む。また、REG2(32)によりVCC2を生成し、負荷42に電力を供給している。なお、負荷42は、CPU4の外部I/F(図示せず),通信制御部8,センサ部9を含む。また、REG3(33)によりVCC3を生成し、負荷43に電力を供給している。なお、負荷43は、メカ駆動部7を含む。
【0034】
シリーズレギュレータと異なり、スイッチングレギュレータは出力電流が高い程、高電力効率が期待されるため、上述のようにスイッチングレギュレータを用いて、各負荷に応じた電源電圧を生成することが一般的である。
【0035】
図3を用いて、従来技術による電力供給を説明する。電力供給部1からの電力の供給が開始されると(S11)、スイッチングレギュレータを有する電圧生成部2は、各負荷(41〜43)に応じた電源電圧の生成を開始する(S12)。そして、電圧生成部2から各負荷に該電源電圧が印加されて、各負荷の動作が開始する(S13)。
【0036】
図4を用いて、スイッチングレギュレータ(REG1〜REG3)の電力効率について説明する。スイッチングレギュレータは、上述のように各負荷(41〜43)の電源電圧(VCC1〜VCC3)の生成に用いられている。しかし、スイッチングレギュレータは製造上のバラツキにより、スイッチングレギュレータの負荷電流−電力効率特性にバラツキがある。この負荷電流−電力効率特性を適した箇所で使用しないと、スイッチングレギュレータの内部損失が大きくなり、無駄な消費電力が発生してしまう。
【0037】
ここでは一例として、REG1(31)(以下、REG1と表記)の製造バラツキによるスイッチングレギュレータの効率バラツキについて説明する。図4のように、REG1の出力電流Iと電力効率ηの関係は、グラフ61のように表される。よって、負荷電流が、REG1の最大電力効率η11(内部損失が最小になる)を得られるI11となるようにREG1を動作制御する。しかし、同じ負荷電流I11でもREG1の製造バラツキにより電力効率ηは異なり、出力電流Iと電力効率ηの関係がグラフ62のように表される場合は、負荷電流がI11のときの電力効率ηはη12となり、最大電力効率は得られない。また、出力電流Iと電力効率ηの関係がグラフ63のように表される場合は、負荷電流がI11のときの電力効率ηはη13となり、最大電力効率は得られない。このように、電力効率ηが低くなり、REG1の内部損失が大きくなってしまう。
【0038】
また、図4において、負荷電流Iが変わることにより、REG1の電力効率ηが変わってしまうことも分かる。
【0039】
上述のように、従来技術による電源供給方法では、スイッチングレギュレータの製造バラツキによる負荷電流−電力効率のバラツキを考慮していないため、出力負荷のバラツキおよびスイッチングレギュレータの製造バラツキによる電力効率のバラツキが発生したときに、スイッチングレギュレータの内部損失を最小に最適化することができないという問題があった。
【0040】
以下、上記問題を解決するための本発明の構成について説明する。スイッチングレギュレータ(REG1,REG2,REG3)の内部損失を最小にする方法は、同一であるため、ここではREG1を例に挙げてスイッチングレギュレータ1の内部損失を最小に最適化する方法を説明する。
【0041】
まず、図5を用いて、電圧生成部2の詳細について説明する。電圧生成部2は、REG1(31)の他に、入力電流検出抵抗301を含むREG1の入力電流検出部300,等価負荷305に一定の電力を出力するためのREG1出力調整用コイル302,等価負荷305への電力供給を平準化するためのREG1出力調整用ココンデンサ303を有する。そして、入力電流検出抵抗(本発明の低抵抗,以下「低抵抗」と表記)301の両端の電圧を増幅する増幅器であるAMP1を有する。そして、AMP1の出力電圧をAD変換器330に入力し、CPU4にREG1の入力電流情報を伝える等価負荷抵抗306および等価負荷コンデンサ307を最適に制御する。なお、入力電流検出部300,AMP1,AD変換器330,およびCPU4が本発明の入力電流監視手段に相当する。
【0042】
340は、CPU4の等価負荷305に対する制御線を示したものである。この制御線340により、CPU4は等価負荷305に対して例えば以下のような制御を行う。
・動作モードの変更(例えば、図7の動作モードA,B,Cのように変更)。
【0043】
本発明の電源生成部2を用いて入力電力を計測する方法を説明する。低抵抗301の両端(N300,N301:入力電力供給経路)の電位差をREG1(31)の入力電流検出電圧増幅用オペアンプ(以下、「オペアンプ」と略称)314にて増幅し、AD変換器330に入力する。ここで、オペアンプ314の電圧増幅調整用抵抗310,312の値を10kΩとし、電圧増幅調整用抵抗311,313の値を1kΩとすると、低抵抗301の両端の電位差の10倍の値がAD変換器330に入力される。
【0044】
上述の構成により、低抵抗301の抵抗値は既知であるため、AD変換器330への入力電圧情報を元に、(低抵抗301の両端の電位差)/(低抵抗301の抵抗値)を求めることにより、REG1の入力電流を検出することができる。なお、AD変換器330が本発明の入力電圧監視手段に相当する。
【0045】
また、REG1への入力電圧VCC0’をAD変換器330へ入力することにより、REG1への入力電圧を計測することができる。よって、CPU4において、AD変換後の(REG1の入力電流)×(REG1への入力電圧)を算出することで、REG1の入力電力をリアルタイムで監視することが可能となる。
【0046】
図6を用いて、算出した入力電力情報を基に、REG1の内部損失を最小に最適化する、CPU4が実行する動作モード制御処理について説明する。従来の方法(図3参照)と異なる点は、動作モード選定(ステップS201),入力電力算出(ステップS202),目標消費電力判定(ステップS203),動作モード確定(ステップS204)が追加された点である(ステップS200,S205については別途後述)。以下、これらの詳細を説明し、図3と同一の構成については説明を割愛する。
【0047】
まず、図3と同様に、電力供給部1からの電力の供給が開始されると(S11)、電圧生成部2は、等価負荷305に応じた電源電圧の生成を開始する(S12)。次に、CPU4は、予めROM5に格納されている初期設定動作モード(本発明の「デフォルトの動作モード」)にしたがってREG1を動作させる(S201)。
【0048】
動作モードとは、図7のように、どれだけの出力電流をどのようなタイミングで出力するかを定めたものである。例えば、動作モードAは、時間t1をおいて出力電流I1を時間T1の間、連続して出力する。動作モードBは、周期T2で出力電流I2を時間t2の間出力する。動作モードCは、周期T3で出力電流I3を時間t3の間出力する。
【0049】
初期動作モードは、スイッチングレギュレータを多数用意したときに、スイッチングレギュレータの電流−電力効率分布の特性が良い箇所が集中している出力電流が得られるような動作モードを設定することが望ましい。これにより、動作モードを変動させる確率を小さくし、動作モード選定時に、電力効率が悪い箇所で使用する機会を減らし、スイッチングレギュレータの内部損失を小さく最適なものとすることができる。
【0050】
図6に戻り、上述の方法で、CPU4は、この初期設定動作モードで動作中のREG1における入力電力を算出する(S202)。そして、CPU4は、入力電力が予めROM5に格納されている目標消費電力以下であるか否かを判定する。例えば、動作モード時間をT0(例えば1分)と設定し、[(VCC0×I1in+VCC0×I2in+VCC0×I3in)×t]をT0時間積分した値(動作モード時間における入力電力)と、目標消費電力とを比較して判定する。ここで、VCC0:電力供給部1から供給される電圧,I1in:REG1の入力電流,I2in:REG2の入力電流,I3in:REG3の入力電流、となっている。
【0051】
図6に戻り、入力電力が目標消費電力以下であるとき(S203:Yes)、CPU4は、初期設定動作モードを現在の動作モードとして確定する(S204)。その後、CPU4の制御指令により、等価負荷305に該電源電圧が印加されて等価負荷305の動作が開始される(S13)。
【0052】
一方、入力電力が目標消費電力を上回るとき(S203:No)、CPU4は、ステップS201に戻り、他の動作モード(初期設定動作モードが動作モードAであれば、動作モードBあるいはC)を選定し、入力電力の算出(S202),入力電力と目標消費電力との比較(S203)を、入力電力が目標消費電力以下となるまで行う。これにより、負荷のバラツキに応じ、スイッチングレギュレータの内部損失を最小に最適化できる動作モードを決定できる。
【0053】
入力電力が目標消費電力を上回るとき(S203:No)、ステップS201において、他の動作モードを選定する代わりに、現在の動作モードにおいて、出力電流の値あるいは出力電流の出力タイミング(出力時間,周期)を変更してもよい。
【0054】
また、入力電力が目標消費電力を上回るとき、負荷(すなわち等価負荷305)に可変抵抗(図示せず)を含む構成とし、入力電力が目標消費電力を上回るとき(S203:No)、CPU4の制御により可変抵抗の値を変化させることで、スイッチングレギュレータの瞬間的な消費電力を大きくするようにしてもよい。
【0055】
なお、上記処理は、電力供給中に、予め定められたタイミングで繰り返し実行するようにしてもよい。
【0056】
図8を用いて、図5の構成におけるスイッチングレギュレータ(REG1,REG2,REG3)の電力効率ηについて、REG1を例に挙げて説明する。製造バラツキによりREG1の電力効率ηがばらついたとしても、REG1の動作モードを負荷電流A,負荷電流B,負荷電流Cとなる状態に順次変化させ、目標消費電力判定(図6のステップS203)を実施することにより、REG1の損失電力がより小さくなる動作モードを決定することができる。
【0057】
最適電力効率η0が、REG1の内部損失が最小となる効率とすると、REG1の負荷電流Iと電力効率ηとの関係がグラフ61で表される場合、動作モードを変化すなわち負荷電流Iを変化させることにより、最適電力効率η0を得られる負荷電流Aを見つけ、この状態を新たな動作モードとしてREG1を動作させる。同様に、REG1の負荷電流Iと電力効率ηとの関係がグラフ63で表される場合、負荷電流Iを変化させることにより、最適電力効率η0を得られる負荷電流Cを見つけ、この状態を新たな動作モードとしてREG1を動作させる。こうすることで、スイッチングレギュレータおよび負荷のバラツキに応じ、スイッチングレギュレータの内部損失を小さく最適化できる。
【0058】
図9を用いて、図5の電圧生成部2に含まれる入力電力検出部300の構成の別例について説明する。入力電力供給経路(N(ノード)300,N301間)に含まれる入力電流検出用の低抵抗301には、バイパス用のPチャネルFET400が並列に接続されている。そして、例えばCPU4から制御信号SIG1が、トランジスタ413や抵抗411,412を含むスイッチング回路410に入力され、スイッチング回路410からの出力信号に基づいてFET400をON/OFFさせる。
【0059】
ここで、REG1の入力電流を検出しないときに(例えば、図6のステップS205のタイミング)、FET400をON状態とするための制御信号SIG1を、CPU4からスイッチング回路410に出力する。FET400の内部抵抗は、低抵抗301の値に比べて十分低いので、電流は全てFET400を流れ、低抵抗301で電力を消費することを防ぐことが可能となる。
【0060】
一方、REG1の入力電流を検出するときは(例えば、図6のステップS200のタイミング)、FET400をOFF状態とするための制御信号SIG1を、CPU4からスイッチング回路410に出力する。これにより、電流は全て低抵抗301を流れ、REG1の入力電流を検出することが可能となる。
【0061】
図10を用いて、本発明の構成の別例について説明する。なお、本構成は、図5の変形例であるため、図5と同様の構成のものについては同一の符号を付記し、ここでの詳細な説明は割愛する。図5の構成と異なる点は、REG1の出力電流検出用抵抗(以下、単に「抵抗」と称する)304,およびAMP2(構成はAMP1と同様)が追加されていることである。なお、AD変換器330,CPU4,出力電流検出用抵抗304,およびAMP2が本発明の出力電流監視手段に相当する。
【0062】
図10の構成において、抵抗304の両端に発生する電圧をAMP2により所定の増幅率で増幅し、AD変換器330に入力してAD変換を行うことで、該電圧を算出することができる。CPU4で該電圧を抵抗304の既知の値で割ることにより、REG1の出力電流を算出することができる。また、REG1の出力電流とREG1の出力電圧VCC1’との積を、REG1の出力電力とすることができる。
【0063】
図11を用いて、CPU4が実行する出力電流異常判定処理について説明する。まず、上述の方法を用いてREG1における出力電流を算出する(S31)。次に、出力電流が異常か否かを判定する。例えば、出力電流が予め定められた閾値を超えた状態が予め定められた時間連続したときに、出力電流が異常であると判定する。出力電流が異常であると判定されたとき(S32:Yes)、CPU4は、REG1の等価負荷305に対する電源の供給を停止させる(S33)。
【0064】
図12を用いて、図10の構成における動作モード制御処理について説明する。なお、本処理は、図6の変形例であるため、図6と同様の構成のものについては同一の符号を付記し、ここでの詳細な説明は割愛する。
【0065】
まず、図6と同様に、電力供給部1からの電力の供給が開始されると(S11)、電圧生成部2は、等価負荷305に応じた電源電圧の生成を開始する(S12)。次に、CPU4は、予めROM5に格納されている初期設定動作モードにしたがってREG1を動作させる(S201)。
【0066】
次に、上述の方法で、CPU4は、この初期設定動作モードで動作中のREG1における出力電流を算出する(S202a)。続いて、CPU4は、例えば、出力電流のFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)演算結果により周波数毎の出力電流を算出する(S202b)。
【0067】
そして、CPU4は、動作モードを変更する必要があるか否かを判定する。例えば、以下の少なくとも1つが成立したときに、動作モードを変更する必要があると判定する。
・出力電流が予め定められたピーク値を超えたとき。
・周波数毎の出力電流に予め定められた出力電流の閾値を超えたとき
【0068】
動作モードを変更する必要がないとき(S203a:Yes)、CPU4は、初期設定動作モードを現在の動作モードとして確定する(S204)。その後、CPU4の制御指令により、等価負荷305に該電源電圧が印加されて動作が開始する(S13)。
【0069】
一方、動作モードを変更する必要があるとき(S203a:No)、CPU4は、ステップS201に戻り、他の動作モード(例えば、初期設定動作モードが動作モードAであれば、動作モードBあるいはC)を選定し、出力電流の算出(S202a),周波数毎の出力電流の測定(S202b),動作モードを変更するか否かの判定(S203)を、動作モードを変更する必要がなくなるまで行う。
【0070】
無論、図10の構成において、入力電流検出用の低抵抗301に、バイパス用のPチャネルFET400を並列に接続してもよい。この場合、図12のステップS201の前(図6のステップS200のタイミングと同様)でFET400をOFF状態とし、図12のステップS204の後(図6のステップS205のタイミングと同様)でFET400をON状態とする。
【0071】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
画像処理装置以外の、スイッチングレギュレータを用いる装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0073】
1 電力供給部
2 電圧生成部
3 負荷
4 CPU(入力電力演算手段,入力電流監視手段,電力判定手段,動作モード制御手段,平均消費電力量演算手段,負荷抵抗調整手段,出力電流監視手段,出力電流判定手段,電力供給停止手段)
31 スイッチングレギュレータ1(REG1)
41〜43 負荷
300 入力電流検出部(入力電流監視手段)
301 入力電流検出抵抗(低抵抗)
304 出力電流検出用抵抗(出力電流監視手段)
305 等価負荷
330 AD変換器(入力電圧監視手段,入力電流監視手段,出力電流監視手段)
400 FET
AMP1 増幅器(入力電流監視手段)
AMP2 増幅器(出力電流監視手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を負荷に対応した出力電圧に変換して出力し、前記負荷に電力を供給するスイッチングレギュレータと、
前記スイッチングレギュレータへの入力電圧を監視する入力電圧監視手段と、
前記スイッチングレギュレータへの入力電流を監視する入力電流監視手段と、
前記入力電圧と前記入力電流とに基づいて、前記スイッチングレギュレータへの入力電力を演算する入力電力演算手段と、
前記出力電圧を出力後に演算された前記入力電力が、予め定められた目標消費電力を上回るか否かを判定する電力判定手段と、
前記入力電力が予め定められた目標消費電力を上回ると判定したとき、前記スイッチングレギュレータの動作モードを、前記入力電力がより小さくなる動作モードに遷移させる動作モード制御手段と、
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記スイッチングレギュレータの動作モードにおいて、前記スイッチングレギュレータの電流−電力効率分布の特性が良好な状態における出力電流を出力可能な動作モードをデフォルトの動作モードとする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記スイッチングレギュレータにおける平均消費電力量を演算する平均消費電力量演算手段を備え、
前記動作モード制御手段は、前記スイッチングレギュレータにおける平均消費電力量を変化させることなく、該スイッチングレギュレータにおける瞬間的な消費電流を小さくするように該スイッチングレギュレータを動作させる請求項1または請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記スイッチングレギュレータにおける平均消費電力量を演算する平均消費電力量演算手段を備え、
前記動作モード制御手段は、前記スイッチングレギュレータにおける平均消費電力量を変化させることなく、該スイッチングレギュレータにおける瞬間的な消費電流を大きくするように該スイッチングレギュレータを動作させる請求項1または請求項2に記載の電源装置。
【請求項5】
前記負荷における負荷抵抗を調整する負荷抵抗調整手段を備え、
前記動作モード制御手段は、前記負荷抵抗を通常の状態より大きくし、前記スイッチングレギュレータにおける瞬間的な消費電流を大きくするように該スイッチングレギュレータを動作させる請求項1または請求項2に記載の電源装置。
【請求項6】
前記入力電流監視手段は、前記スイッチングレギュレータに対して入力電力が供給される経路である入力電力供給経路と直列に、抵抗値の低い低抵抗を接続し、その低抵抗において発生する電位差を増幅し、その電位差を増幅したものをAD変換した結果を前記入力電流とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項7】
前記入力電力供給経路は、前記低抵抗に並列に接続されたFETを含み、
前記入力電流の監視を行わない場合、前記低抵抗に流れる電流を前記FETへバイパスする請求項6に記載の電源装置。
【請求項8】
前記スイッチングレギュレータの出力電流を監視する出力電流監視手段と、
前記出力電流が異常であるか否かを判定する出力電流判定手段と、
を備える請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項9】
前記出力電流が異常であると判定したときに、前記負荷への電力の供給を停止する電力供給停止手段を備える請求項8に記載の電源装置。
【請求項10】
前記動作モード制御手段は、前記出力電流が予め定められたピーク値を超えたときに、前記スイッチングレギュレータの動作モードを、前記出力電流がより小さくなる動作モードに遷移させる請求項8または請求項9に記載の電源装置。
【請求項11】
前記動作モード制御手段は、前記出力電流が周波数毎に予め定められた前記出力電流の閾値を超えたときに、前記スイッチングレギュレータの動作モードを、前記閾値を超えた周波数においての電流値がより小さくなる動作モードに遷移させる請求項10に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−97775(P2011−97775A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250869(P2009−250869)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】