説明

電源装置

【課題】負荷で必要な電圧が低い場合であっても、大型化やコストアップを防ぎつつ、低電圧を実現できる電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置100は、変流器1とコンデンサ2と整流回路4と電圧調整手段5と平滑コンデンサ6とを有する。変流器1の一次側に交流電源10が接続されるとともに、変流器1の二次側に負荷20が接続されている。変流器1の一次側には、変流器1の一次コイル1aにコンデンサ2が直列接続され、変流器1の二次側には、変流器1の二次コイル1bに整流回路4が並列接続され、整流回路4に電圧調整手段5および平滑コンデンサが並列接続されている。変流器1の一次コイル1aに交流電源10により交流電流が流れると、二次コイル1bに誘起電圧が発生する。この誘起電圧を整流回路4および平滑コンデンサ6で整流・平滑し、電圧調整手段5により所定の電圧とされて負荷20に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関わり、より詳細には、変流器を備えた電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変圧器を備え商用電源等の交流電源から得られる交流電圧を所定の電圧に変圧して負荷に供給する電源回路が知られている。この電源回路では、変圧器の一次巻線に交流電源が接続され、変圧器の二次巻線には、整流回路や平滑コンデンサ等で構成されるAC/DC変換手段や、スイッチング回路やインバータ回路等といった様々な素子や回路が接続される。
【0003】
例えば、特許文献1には、蓄電式空気調和装置に備えられた電源装置が提案されている。この電源装置に備えられた変圧器は、二次巻線が2つに分割されて2系統の出力が得られる構成となっている。一次巻線には商用電源が接続されている。二次巻線の一方には、整流回路と平滑コンデンサとインバータ回路と負荷である圧縮機モータとが接続されており、二次巻線で発生した誘起電圧は整流回路と平滑コンデンサとによって整流・平滑されて直流電圧とされ、インバータ回路で所定の周波数の交流電力に変換されて圧縮機モータに印加される。
【0004】
二次巻線の他方には、整流回路とサイリスタと蓄電池とが接続されており、二次巻線で発生した誘起電圧は整流回路で整流されて脈動電圧とされ、サイリスタのオンオフに応じて脈動電圧が蓄電池に供給されることで、蓄電池の充電が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−137651号公報(第3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、変圧器の特性パラメータの一つにET積と呼ばれるものがある。これは、変圧器の巻線に印加される電圧Eと電圧が印加される時間Tとの積であり、巻線の巻回数Nと変圧器のコアの断面積Aeとコアの磁束密度Bとの積に等しくなる。従って、巻線に電流が流れた際のコアでの磁束密度は、B=(E・T)/(N/Ae)、となる。
【0007】
上述した特許文献1に記載のものも含め、変圧器を備えた電源装置では、例えばマイコンの電源電圧(Vcc、一般的には5V程度)のように負荷で必要な電圧が電源電圧(商用電源であれば、100V)に比べて大幅に低い場合は、変圧器の一次巻線に比べて二次巻線の巻回数を少なくする必要がある。
【0008】
二次巻線の巻回数が少なくなれば、上述した磁束密度を求める式より、Bが大きくなってコアが磁気飽和を起こす虞がある。これを防ぐためには、コアの断面積Aeを大きくするか、飽和磁束密度の高いコア材料を選択する必要があるが、コアの断面積Aeを大きくすれば、コアが大きくなって電源装置の小型化が行えないという問題があり、飽和磁束密度の高いコア材料を選択すれば、変圧器がコストアップとなるという問題があった。
【0009】
本発明は以上述べた問題点を解決するものであって、負荷で必要な電圧が低い場合であっても、大型化やコストアップを防ぎつつ、低電圧を実現できる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明の電源装置は、変流器の一次側に交流電源が接続されるとともに、変流器の二次側に負荷が接続されたものであって、変流器の一次側には、変流器の一次巻線にコンデンサが直列接続され変流器の二次側には、変流器の二次巻線にAC/DC変換手段が接続されているものである。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成した本発明の電源装置は変流器を備え、変流器の一次側を交流電源に接続し、交流電源から供給される電力により二次側に誘起された誘起電力を負荷に供給する。変流器は二次巻線の巻回数が変圧器を用いる場合と比べて多くできるので、磁束密度を小さくすることができ、変流器のコアでの磁気飽和の発生を抑制できる。従って、コアの断面積を小さくすることができ、変流器の小型化ひいては電源装置の小型化が実現できる。また、変流器を使用することによって、変圧器を使用する場合に比べてコアの材料費を抑えることができ、安価な電源装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例である電源装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。実施例としては、空気調和機の室外機に備えられた電源装置を例に挙げて説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【実施例】
【0014】
図1に示すように、本実施例における電源装置100は、主に変流器1と、コンデンサ2と、インダクタ3と、整流回路4および整流回路30と、電圧調整手段5と、平滑コンデンサ6および平滑コンデンサ40とから構成されている。
【0015】
変流器1は、例えばカレントトランスであり、磁性材料で形成され貫通孔を有する図示しないコアと、コアに所定の巻回数で巻回される一次巻線である一次コイル1aと二次巻線である二次コイル1bとを有している。変流器1では、上述したコアの貫通孔に導体を貫通させるよう設置することでこの導体を一次コイルとして使用し、導体に交流電流が流れることによって二次コイル1bに誘起電圧が発生する。
【0016】
コンデンサ2は、例えば、Xコン(アクロス・ザ・ラインコンデンサ)であり、また、インダクタ3は、例えば、フェライトビーズである。これらコンデンサ2およびインダクタ3で、電源装置100で発生するノーマルモードノイズを除去するフィルタが形成される。
【0017】
整流回路4および整流回路30は、主にブリッジダイオードで構成されており、入力した交流電圧を整流して脈動電圧を得る回路である。平滑コンデンサ6および平滑コンデンサ40は、整流回路4および整流回路30で整流された脈動電圧を平滑する。尚、整流回路4と平滑コンデンサ6とで本発明のAC/DC変換手段が構成される。電圧調整手段5は、ツェナーダイオード5aと抵抗5bとで構成されており、後述する負荷20へ供給する電圧を調整する。
【0018】
以上説明した電源装置100の各構成要素の接続は以下のとおりである。整流回路30の入力側には商用電源等の交流電源10が接続されている。交流電源10の一端と整流回路30の入力側の一端との間にはインダクタ3が直列接続されており、交流電源10の他端と整流回路30の入力側の他端とが接続されている。
【0019】
コンデンサ2の一端は、インダクタ3の一端と整流回路30の入力側の一端との間に接続されており、コンデンサ2の他端は、交流電源10の他端と整流回路30の入力側の他端との間に接続されている。
【0020】
ここで、コンデンサ2の他端と、交流電源10の他端と整流回路30の入力側の他端との間に、変流器1の一次コイル1aが挿入されている。そして、変流器1の二次コイル1bの両端が、整流回路4の両端に各々接続されている。
【0021】
整流回路4の出力側は、その両端が負荷20の両端に各々接続されている。この負荷20は、室外機の運転制御を行う制御部であり、その電源電圧(Vcc)は、交流電源10から供給される電圧(例えば、商用電源であれば100V)に比べ、大幅に低い電圧(例えば、5V)である。
【0022】
電圧調整手段5を構成するツェナーダイオード5aのカソード側は、整流回路4の一端と負荷20の一端との間に接続されており、ツェナーダイオード5aのアノード側は、抵抗5bの一端に接続されている。また、抵抗5bの他端は、整流回路4の他端と負荷20の他端との間に接続されている。
【0023】
平滑コンデンサ6の一端は、整流回路4の一端と負荷20の一端との間に接続されており、平滑コンデンサ6の他端は、整流回路4の他端と負荷20の他端との間に接続されている。従って、整流回路4の出力側には、電圧調整手段5と平滑コンデンサ6と負荷20とが並列接続されている。
【0024】
一方、整流回路30の出力側は、その両端が負荷50に各々接続されている。この負荷50は、例えばスイッチング回路やインバータ回路であり、圧縮機等室外機に備えられた各種電気機器や各種装置へそれらの駆動電力を供給する。また、平滑コンデンサ40の一端は、整流回路30の一端と負荷50の一端との間に接続されており、平滑コンデンサ40の他端は、整流回路30の他端と負荷50の他端との間に接続されている。従って、整流回路40の出力側には、平滑コンデンサ40と負荷50とが並列接続されている。
【0025】
次に、図1を用いて、電源装置100の動作について説明する。交流電源10から供給された交流電圧は、整流回路30に供給される。整流回路30に供給された交流電圧は整流回路30によって整流されて脈動電圧となり、平滑コンデンサ40で平滑されて負荷50に供給される。尚、電源装置100で発生するノーマルモードノイズは、コンデンサ2やインダクタ3の働きによって除去される。
【0026】
一方、交流電源10から供給される交流電圧によって、一次コイル1aには交流電流が流れる。変流器1では、一次コイル1aに流れる交流電流によって二次コイル1bに誘起電圧が発生する。二次コイル1bで発生した誘起電圧は、整流回路4で整流されて脈動電圧となり、電圧調整手段5で負荷20に応じた所定の電圧(例えば、5V)とされ、平滑コンデンサ6で平滑されて負荷20に供給される。
【0027】
以上説明したように、本発明の電源装置100では、変圧器に代えて変流器1を使用して負荷20の駆動電力を取り出している。変圧器は電圧変換を行う場合に使用し、変流器は専ら電流検出を行うために使用するものである。従って、本実施例のように、100Vの交流電圧から電源電圧が5Vの負荷20(制御部)に電力を供給する場合は変圧器を使用すればよいのであるが、交流電圧からの降圧率が大きい場合は、変圧器の二次コイルの巻回数を一次コイルの巻回数と比べて大幅に少なくする必要がある。二次コイルの巻回数が少ないと、背景技術の説明で言及したコアでの磁束密度を求める式、B=(E・T)/(N/Ae)、により磁束密度が高くなってコアが磁気飽和を起こす虞がある。これを防ぐために、変圧器のコアの断面積を大きくする必要があり、変圧器が大型化してしまうという問題があった。
【0028】
これに対し、本実施例では、変圧器に代えて一次コイル1aの巻回数に比べて二次コイル1bの巻回数が多くなる変流器1を用いている。変流器1を使用すると、変圧器を用いる場合に比べて二次コイル1bの巻回数が多いので、コアでの磁束密度Bを低く抑えることができる。従って、コアの断面積を大きくする必要がなくコアを小型化できるので、変流器1の小型化ひいては電源装置100の小型化が実現できる。但し、変流器1を用いて負荷20に電力を供給する場合は、一次コイル1aに電圧を与えるために、一次コイル1aにコンデンサや抵抗等の素子を直列接続する必要がある。本実施例では、ノーマルモードノイズを低減するために電源装置100に予め設けられているコンデンサ2を一次コイル1aに電圧を与えるための素子として共用している。このコンデンサ2に一次コイル1aを接続することで、一次コイル1aに交流電圧を印加しこれにより二次コイル1bに誘起される電圧を使用して負荷20に電力を供給している。
【0029】
また、コアを小型化できるので、変圧器に比べて変流器1の価格を低く抑えることができ、電源装置100のコストアップを抑制することができる。さらには、本発明の電源装置にスイッチング電源回路を用いた場合と比較して、本発明の電源装置では制御用ICやスイッチングトランス、レギュレータ等を使用しないため、部品点数が削減できてコストを抑えることができ、スイッチングに起因するノイズやロスが発生しない。
【符号の説明】
【0030】
1 変流器
1a 一次コイル
1b 二次コイル
2 コンデンサ
3 インダクタ
4 整流回路
5 電圧調整手段
6 平滑コンデンサ
10 交流電源
20 負荷
100 電源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変流器の一次側に交流電源が接続されるとともに、前記変流器の二次側に負荷が接続された電源装置であって、
前記変流器の一次側には、前記交流電源と前記変流器の一次巻線との間にコンデンサが直列接続され、
前記変流器の二次側には、前記変流器の二次巻線にAC/DC変換手段が接続されていることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記変流器の二次側には、前記負荷に印加する電圧を調整する電圧調整手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
交流電源に、同交流電源から供給される交流電力を所定の直流電力あるいは交流電力に変換する電力変換部が接続された電源装置であって、
前記電力変換部の入力側の一端にコンデンサの一端が接続され、前記電力変換部の入力側の他端に変流器の一次側に備えられた一次巻線の一端が接続され、前記コンデンサの他端と前記一次巻線の他端とが接続され、
前記変流器の二次側に備えられた二次巻線に、AC/DC変換手段と負荷とが接続されていることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
前記変流器の二次側には、前記負荷に印加する電圧を調整する電圧調整手段を備えたことを特徴とする請求項3記載の電源装置。

【図1】
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