説明

電源装置

【課題】交流電源のゼロクロス検出の高精度化を図ることで、入力力率を維持した電源装置を提供する。
【解決手段】交流電源をリアクタを介して短絡する短絡手段と、交流電圧と所定の基準電圧との大小関係に対応した2値信号を出力する手段と、2値信号に基づいて短絡手段を駆動する制御手段を備え、2値信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジのどちらか片方向のエッジを待つ入力部と、2値信号のパルス幅から検出されたエッジ方向と時刻を記憶するか否か、かつ入力部が待つエッジの方向を切り替えるか否かを判断する判断部と、判断部に基づいて立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジの時刻とエッジ方向を記憶する記憶部と、算出部にて次のゼロクロス点を算出する際に、算出部が演算する時刻から記憶部に最も直近に記憶された立ち上がりエッジと立ち下がりエッジに対応する各時刻の中点と交流電源の周期を用いることで、高力率を維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源からの交流電圧を整流して負荷へ直流電圧を供給する電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電源電圧の歪みや2値信号のチャタリングによってゼロクロス点がずれるとPAM波形の出力タイミングを補正して所定のPAM波形を確実に生成する方法が考案されている(例えば、特許文献1参照)。図8に示すように、2値信号の立ち下がり位置が左側にずれた場合、カウントのスタート位置を△tだけ補正することで立ち下がり位置のずれが吸収されて、ゼロクロス点Pから通常時と同様のタイミングでPAM波形のパルス信号を出力させることができる。
【0003】
一方、2値信号の立ち上がり時刻と立ち下がり時刻を用いて電源電圧のゼロクロス時刻を算出する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。図9から明らかなように、電源電圧波形の立ち上がり時刻ton(2)と立ち下がり時刻toff(2)の中間時刻tpは電源電圧のピーク時刻となる。したがって、ピーク時刻tpから90度(tac/4)遅れの時刻が立ち下がりのゼロクロス時刻であり、ピーク時刻tpから270度(3・tac/4)遅れの時刻が立ち上がりのゼロクロス時刻となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−253102号公報
【特許文献2】特開2001−45763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の電源装置は比較的良好な特性を有するが、図8に示すような2値信号の立ち下がり信号のずれ量に応じて補正する方式は電源電圧の歪みや2値信号のチャタリングに対して有効であったが、図2に示すような周期毎に電源電圧が歪む場合は常に2値信号がずれる形になるので、ゼロクロス点を正確に検出するのは困難であった。一方、図2に示すような2値信号の立ち上がり時刻と立ち下がり時刻からゼロクロス時刻を算出する方式は、ゼロクロス時刻を正確に得ることはできていたが、電源電圧の歪みや2値信号のチャタリングに対しては、不十分であるという課題を有していた。
【0006】
本発明の電源装置は、前記のような従来の課題を解決するもので、電源電圧の歪みやチャタリングによって図2に示すような2値信号になっても交流電源のゼロクロス点を正確に検出することができる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の電源装置は、交流電源をリアクタを介して短絡する短絡手段と、交流電源の交流電圧と所定の基準電圧との大小関係に対応した2値信号を出力する手段と、2値信号に基づいて短絡手段を駆動する制御手段を有する電源装置において、2値信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジのどちらか片方向のエッジを待つ入力部と、2値信号のパルス幅に応じて検出された2値信号のエッジ方向と時刻を記憶するか否か、かつ入力部が待つエッジの方向を切り替えるか否かを判断する判断部と、判断部に基づいて2値信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジの時刻とエッジ方向を記憶する記憶部と、算出部にて次のゼロクロス点を算出する際に、算出部が演算する時
刻から記憶部に最も直近に記憶された立ち上がりエッジと立ち下がりエッジに対応する各時刻の中点と交流電源の周期を用いたものである。
【0008】
これによって、2値信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジが検出されるごとに、検出されたエッジと逆方向のエッジで、かつ最も直近に記憶された時刻からの時間から、検出された時刻とエッジの方向を記憶するか否か判断することで、図2に示すような2値信号になっても交流電源のゼロクロス点を正確に検出することができるので、高力率を維持することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電源装置は、電源電圧の歪みや2値信号のチャタリングによって2値信号の検出位置がずれても交流電源のゼロクロス点を正確に検出することができるので、高力率を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1における電源装置の構成図
【図2】チャタリング発生時における交流入力電圧と2値信号との関係を示す波形図
【図3】本発明の実施の形態1における各部動作の説明図
【図4】本発明の実施の形態1における判断部の処理内容を示すフローチャート
【図5】本発明の実施の形態1における2値信号の一例に係る各部動作の説明図
【図6】本発明の実施の形態1における算出部の説明図
【図7】本発明の実施の形態2における各部動作の説明図
【図8】従来の電源供給回路の一例に係る構成図
【図9】従来のコンバータ回路の一例に係る構成図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、交流電源をリアクタを介して短絡する短絡手段と、交流電源の交流電圧と所定の基準電圧との大小関係に対応した2値信号を出力する手段と、2値信号に基づいて短絡手段を駆動する制御手段を有する電源装置において、2値信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジのどちらか片方向のエッジを待つ入力部と、2値信号のパルス幅に応じて検出された2値信号のエッジ方向と時刻を記憶するか否か、かつ入力部が待つエッジの方向を切り替えるか否かを判断する判断部と、判断部に基づいて2値信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジの時刻とエッジ方向を記憶する記憶部と、算出部にて次のゼロクロス点を算出する際に、算出部が演算する時刻から記憶部に最も直近に記憶された立ち上がりエッジと立ち下がりエッジに対応する各時刻の中点と交流電源の周期を用いることにより、2値信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジが検出されるごとに、検出されたエッジと逆方向のエッジで、かつ最も直近に記憶された時刻からの時間から、検出された時刻とエッジの方向を記憶するか否か判断することで、図2に示すような2値信号になっても交流電源のゼロクロス点を正確に検出することができるので、高力率を維持することができる。
【0012】
第2の発明は、特に第1発明の判断部は、2値信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジが検出されるごとに、検出されたエッジと逆方向のエッジで、かつ最も直近に記憶された時刻からの時間が、所定の値より小さい場合は、入力部を検出されたエッジと同一方向を待つ状態に保つものであり、所定の値より小さく、かつ入力部を検出されたエッジと同一方向を待つ状態に保つ場合と逆方向のエッジが検出されている場合は、入力部を検出されたエッジと逆方向のエッジを待つ状態に切り替えるものであり、所定の値より大きい場合は、検出された時刻とエッジ方向を記憶部に記憶した後に、入力部を検出されたエッジと逆方向のエッジを待つ状態に切り替えるようにした電源装置であり、所定の値より大小を比較して、検出された時刻とエッジ方向を記憶するか否か判断することで、交流
電源のゼロクロス点を正確に検出することが実現できる。
【0013】
第3の発明は、特に第1から第2の発明の交流電源の周期を算出部の演算に用いた立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジの検出周期を算出することによって得られるようにした電源装置であり、算出部の演算に用いたエッジの検出周期を交流電源の周期とすることで、交流電源のゼロクロス点をより精度よく検出することができる。
【0014】
第4の発明は、特に第1〜第3の発明の交流電源の周期を算出部の演算に用いた立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジと1周期前のゼロクロス点の算出に用いた立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジの時刻差とすることによって得られるようにした電源装置であり、最も直近に記憶された立ち上がりエッジまたは立ち下がりと1周期前に記憶された立ち上がりエッジまたは立ち下がりの時刻差を交流電源の周期とすることで、交流電源の周期が変動してもゼロクロス点を正確に検出することができる。
【0015】
第5の発明は、特に第1〜第4の発明の算出部の演算に用いた立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジの検出周期があらかじめ設定された上限値以上、または下限値未満の場合は、判断部は異常と判断し、短絡手段を停止するようにした電源装置であり、検出周期によって判断部が異常と判断することで、仮に交流電源の周期が想定外の値になった場合には短絡手段を停止できるので、システムの安全性が向上する。
【0016】
第6の発明は、特に第1〜第5の発明の算出部は、1周期前に算出されたゼロクロス点から交流電源の周期の概略3/4に相当する時間だけ加算した時刻に、次のゼロクロス点を算出するようにした電源装置であり、交流電源のピーク時刻付近で次のゼロクロス点を算出することで、正規の2値信号のエッジに近すぎて誤った時刻を用いて演算してしまう可能性が低くなるので、最も周波数変動に対応できる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明にかかる第1の実施の形態の電源装置を示す構成図である。図1において、交流電源1の出力端からリアクタ2を経由して4個のダイオード4a、4b、4c、4dからなるブリッジ回路に入力される。ブリッジ整流回路の出力には平滑コンデンサ5、負荷6が接続されている。また、交流電源1の出力端からリアクタ2を介して交流電源1を短絡する短絡手段3が接続されることで、電源装置の力率を改善するようになっている。
【0019】
また、交流電源1の両端には交流電源1の電源電圧の位相を2値信号で出力し、この2値信号を入力部8に供給する2値信号出力手段7が接続されている。
【0020】
この2値信号出力手段7は、図2に示すように、電源電圧に応じてON−OFF信号を出力するように構成されており、例えば、電源電圧がある基準値以上になるとON信号を出力し、基準値以下になるとOFFになるものである。例えば、フォトカプラ等で組まれる構成があり、本実施の形態1の所定の基準電圧は極めて0Vに近い値、または0Vも含まれる。また、図2には交流電源1の負サイクルに2値信号が出力される波形を示しているが、正サイクルに2値信号が出力される波形でも本実施の形態1を利用できる。
【0021】
次に、図2に示すように、2値信号のチャタリングが生じると、2値信号が通常時よりも短い周期でON−OFFを繰り返す。このまま2値信号をゼロクロス点の算出に用いると、交流電源1の本来のゼロクロス点とは異なった点を算出してしまう。そのため、2値
信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジが検出されるごとに、検出されたエッジと逆方向のエッジで、かつ最も直近に記憶された時刻からの時間によって、検出されたエッジの時刻を記憶するか否か判断を行ない、最も直近に記憶された時刻のみをゼロクロス点の算出に用いるようにする。
【0022】
なお、仮に交流電源1の入力に不具合があり周期的に2値信号がずれる場合として、図3に示すような正規のパルス幅(時刻1から時刻8の区間)から、ある程度の間隔毎に細いパルスtz(例えば、1μs程度)が発生する場合が一般的であり、本発明は、図3に示すような2値信号の場合に交流電源1のゼロクロス点を正確に検出するのに有効である。
【0023】
次に、図4に示すフローチャートを用いて判断部9の動作を説明する。まず、2値信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジが検出されるごとに、検出されたエッジと逆方向のエッジで、かつ最も直近に記憶された時刻からの時間が、ステップ(あ)で所定の値より大きかったら正規のパルス幅に達成していると判断して、ステップ(う)、ステップ(え)に進んで検出された時刻とエッジ方向が記憶部10に記憶され、入力部8を検出されたエッジと逆方向のエッジを待つ状態に切り替える。一方、ステップ(あ)で所定の値より小さかったらステップ(い)に進み、さらに検出されているエッジが立ち下がりの場合は、ステップ(え)で入力部8を検出されたエッジと逆方向のエッジを待つ状態に切り替える。ちなみに、ステップ(い)で検出されているエッジが立ち上がりの場合は、特に何も処理されず終了フラグに進む。
【0024】
次に図3に示す2値信号の場合にどの時刻で入力部8がどちらのエッジを待ち、かつ記憶部10に時刻を記憶するかを順に説明する。なお、図3の所定の値はtzより十分大きく、かつ正規のパルス幅(時刻1から時刻8の区間)より小さくなるように設定されているものとする。
【0025】
まず、時刻1の時点で立ち下がりエッジ時刻T1が記憶部10に記憶され、入力部8を立ち下がりエッジ待ちから立ち上がりエッジ待ちに切り替えている。
【0026】
次に、時刻2の時点で最も直近の立ち下がりエッジ時刻T1までの時間は、所定の値より小さくなるので、時刻2の立ち上がりエッジ時刻は記憶部10に記憶されず、立ち上がりエッジ待ちの状態が維持される。そのため、次の立ち下がりエッジの情報は受け付けず、時刻3では何も処理されないこととなる。
【0027】
次に、時刻4の時点で最も直近の立ち下がりエッジ時刻T1までの時間を所定の値より大きくなるとすると、立ち上がりエッジ時刻T2が記憶部10に記憶され、入力部8を立ち上がりエッジ待ちから立ち下がりエッジ待ちに切り替えている。
【0028】
次に、時刻5の時点で最も直近の立ち上がりエッジ時刻T2までの時間は、所定の値より小さくなるので、時刻5の立ち下がりエッジ時刻は記憶部10に記憶されず、入力部8を立ち下がりエッジ待ちから立ち上がりエッジ待ちに切り替えている。そのため、時刻6の時点で立ち上がりエッジの時刻が検出され、最も直近の立ち下がりエッジ時刻T1までの時間は、所定の値より大きくなるので、立ち上がりエッジ時刻T3が記憶部10に記憶され、入力部8を立ち上がりエッジ待ちから立ち下がりエッジ待ちに切り替えている。
【0029】
次に、時刻7の時点で最も直近の立ち上がりエッジ時刻T3までの時間は、所定の値より小さくなるので、時刻7の立ち下がりエッジ時刻は記憶部10に記憶されず、入力部8を立ち下がりエッジ待ちから立ち上がりエッジ待ちに切り替えている。そのため、時刻8の時点で、立ち上がりエッジの時刻が検出され、最も直近の立ち下がりエッジ時刻T1ま
での時間は、所定の値より大きくなるので、立ち上がりエッジ時刻T4が記憶部10に記憶され、入力部8を立ち上がりエッジ待ちから立ち下がりエッジ待ちに切り替えている。
【0030】
以上のように処理することで、A点からC点の間で記憶部10に記憶された時刻は、立ち上がりエッジ時刻T2、T3、T4、立ち下がりエッジ時刻T1の4つとなる。
【0031】
次に、算出部11の動作を説明する。算出部11はB点からC点の間で記憶部10に記憶された時刻からゼロクロス点Cを算出するものであり、次のゼロクロス点Cの直近の立ち上がりエッジ時刻T4と立ち下がりエッジ時刻T1の中間時刻tpは電源電圧のピーク時刻となる。したがって、ピーク時刻tpから270度(3・tac/4)遅れの時刻が立ち上がりのゼロクロス点Cとなる。ここでのtacは交流電源1の周期であり、例えば50Hz電源の場合は20ms、60Hz電源の場合は16.667msのような所定の値である。また、図3では立ち上がりのゼロクロス点を算出していたが、ピーク時刻tpから450度(5・tac/4)遅れの時刻となる立ち下がりのゼロクロス点、さらには2周期目以降のゼロクロス点も同様に算出することもできる。
【0032】
今回は、立ち上がりエッジ時刻T2、T3、T4すべてを記憶しているが、算出部11では次のゼロクロス点Cの直近の立ち上がりエッジ時刻T4がゼロクロス点Cの算出に用いられるので、時刻6の時点でT2からT3、時刻8の時点でT3からT4と、立ち上がりエッジ時刻の情報が更新されるたびに上書きしていってもよい。
【0033】
以上、交流電源1の負のサイクルに2値信号が出力される場合について説明したが、図5に示すような正のサイクルに2値信号が出力される波形でも、同様の効果が得られる。具体的には、図5のケースAに示す入力部8と記憶部10の動作になるが、図4のフローチャートに従うと、記憶部10には、立ち上がりエッジ時刻T1、T2、立ち下がりエッジ時刻T3が記憶され、次のゼロクロス点Cの直近の立ち上がりエッジ時刻T2と立ち下がり時刻T3の中間時刻tpは電源電圧のピーク時刻となる。
【0034】
さらに、立ち上がりエッジ検出時と立ち下がりエッジ検出時の処理内容を逆にしても、同様の効果が得られる。つまり、図4のフローチャートのステップ(い)の立ち上がりエッジ待ちで分岐させているのを、立ち下がりエッジ待ちで分岐させるようにしてもよいことである。具体的には、図5のケースBに示す入力部8と記憶部10の動作になるが、記憶部10には、立ち上がりエッジ時刻T1、立ち下がりエッジ時刻T2、T3が記憶され、次のゼロクロス点Cの直近の立ち上がりエッジ時刻T1と立ち下がりエッジ時刻T3の中間時刻tpは、判断部の分岐を逆にする前と同じように、電源電圧のピーク時刻tpとほぼ同等になるので、次のゼロクロス点Cを算出できることとなる。
【0035】
また、算出部11で次のゼロクロス点Cを算出する時刻は次のゼロクロス点Cより手前で行なえばよいが、正規の2値信号のエッジに近すぎると誤った時刻を用いて演算してしまう可能性がある。例えば、図6に示すように1周期前のゼロクロス点Aから約3/4tacだけ加算した時刻(点P)、つまり交流電源1のピーク時刻付近で算出することで、誤った時刻を用いて演算してしまう可能性は低くなるので、最も周波数変動に対応できる。
【0036】
(実施の形態2)
図7は、本発明にかかる第2の実施の形態の電源装置を示す波形図である。交流電源1の周期を立ち上がりエッジtbとtcの検出周期tac(n)として、ゼロクロス点Cの算出を行なうようにする。例えば50Hz電源の場合は20ms、60Hz電源の場合は16.667msのような所定の値をあらかじめ設定した場合、仮に交流電源1の周期が変動した時に、ピーク時刻tpから算出したゼロクロス点も変動してしまう。しかし、立
ち上がりエッジtbとtcの検出周期tac(n)を用いることで、周期が変動すれば当然立ち上がりエッジ時刻も変動するので、周期の変動に対応できる。
【0037】
さらに、立ち上がりエッジtbとtcの検出周期tac(n)、検出周期tac(n−1)、さらにそれ以前の検出周期とを平均した周期をゼロクロス点Cの算出に用いる。そうすることで、周期のばらつきにも対応できるので、交流電源1のゼロクロス点をより精度よく算出することができる。
【0038】
さらに、立ち上がりエッジtbとtcの検出周期tac(n)があらかじめ設定した上限値以上、または下限値未満になった場合、判断部9は入力部8がどちらのエッジ方向を待ち、かつ記憶部10に時刻を記憶するかどうか判断するのではなく、異常信号を記憶部10、算出部11を経由して制御手段12に、または直接制御手段12に優先的に出力し、短絡手段3を停止する。仮に交流電源の周期が想定外の値になった場合、そのまま追従して動作を続けるのではなく、判断部9が異常と判断して短絡手段3を停止することで、システムの安全性が向上する。
【0039】
図7では、立ち上がりエッジ間の検出周期で説明したが、立ち下がりエッジ間の検出周期を用いても、実施の形態2に適用することはできる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明にかかる電源装置は、電源電圧の歪みや2値信号のチャタリングによって2値信号の検出位置がずれても交流電源のゼロクロス点を正確に検出することができるので、空気調和器や冷蔵庫をはじめ、洗濯機などの電化製品の電源装置、さらに交流電源の入力電圧の位相を検出する検出装置として適用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 交流電源
2 リアクタ
3 短絡手段
4a、4b、4c、4d ダイオード
5a、5b 電解コンデンサ
6 負荷
7 2値信号出力手段
8 入力部
9 判断部
10 記憶部
11 算出部
12 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源をリアクタを介して短絡する短絡手段と、前記交流電源の交流電圧と所定の基準電圧との大小関係に対応した2値信号を出力する手段と、前記2値信号に基づいて前記短絡手段を駆動する制御手段を有する電源装置において、前記2値信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジのどちらか片方向のエッジを待つ入力部と、前記2値信号のパルス幅に応じて検出された前記2値信号のエッジ方向と時刻を記憶するか否か、かつ前記入力部が待つエッジの方向を切り替えるか否かを判断する判断部と、前記判断部に基づいて前記2値信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジの時刻とエッジ方向を記憶する記憶部と、算出部にて次のゼロクロス点を算出する際に、前記算出部が演算する時刻から前記記憶部に最も直近に記憶された立ち上がりエッジと立ち下がりエッジに対応する各時刻の中点と前記交流電源の周期を用いることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記判断部は、前記2値信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジが検出されるごとに、検出されたエッジと逆方向のエッジで、かつ最も直近に記憶された時刻からの時間が、所定の値より小さい場合は、前記入力部を検出されたエッジと同一方向を待つ状態に保つものであり、前記所定の値より小さく、かつ前記入力部を検出されたエッジと同一方向を待つ状態に保つ場合と逆方向のエッジが検出されている場合は、前記入力部を検出されたエッジと逆方向のエッジを待つ状態に切り替えるものであり、前記所定の値より大きい場合は、検出された時刻とエッジ方向を記憶部に記憶した後、入力部を検出されたエッジと逆方向のエッジを待つ状態に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記交流電源の周期は、算出部の演算に用いた立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジの検出周期を算出することによって得られることを特徴とする請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記交流電源の周期は、算出部の演算に用いた立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジと1周期前のゼロクロス点の算出に用いた立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジの時刻差とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項5】
算出部の演算に用いた立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジの検出周期があらかじめ設定された上限値以上、または下限値未満の場合は、判断部は異常と判断し、前記短絡手段を停止することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項6】
前記算出部は、1周期前に算出されたゼロクロス点から前記交流電源の周期の概略3/4に相当する時間だけ加算した時刻に、次のゼロクロス点を算出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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