説明

電源装置

【課題】均等化のための無駄な電力消費を解消し、またジュール熱による発熱を防止する。いずれの電池モジュールをも過放電することなく有効に放電して、全ての電池モジュールに蓄電された電力を効率よく出力する。
【解決手段】電源装置は、複数の電池モジュール1を双方向インバータ2を介して並列に接続し、各々の電池モジュール1の直流電力を、これに接続している各々の双方向インバータ2を介して出力側に出力している。電源装置は、各々の電池モジュール1の電圧又は残容量を検出して、双方向インバータ2の電流制限値を制御する制御回路3を備え、制御回路3が、電圧が低く又は残容量の小さい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の放電電流制限値を、電圧が高く又は残容量の大きい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の放電電流制限値よりも小さく制限して、各々の電池モジュール1の電圧又は残容量を均等化している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池モジュールを双方向インバータを介して並列に接続してなる電源装置に関し、とくに、各々の電池モジュールの電圧又は残容量を均等化しながら放電でき、又は充電できる電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置は、複数の電池モジュールを双方向インバータを介して並列に接続することで出力を大きくできる。各々の電池モジュールは、双方向インバータを介して出力することで、トータル出力を大きくできる。双方向インバータは、電池モジュールの直流を交流に変換して出力し、また交流を直流に変換して電池モジュールを充電することができる。この回路構成の電源装置は、双方向インバータの出力を大きくすることなく、電源装置と双方向インバータの個数を増加することで、トータル出力を大きくできる特徴がある。また、特定の電池モジュールや双方向インバータが故障しても、他の電池モジュールと双方向インバータで交流を出力できる特徴もあって、大容量の電源装置として使用されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−286071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の電池モジュールを双方向インバータを介して並列に接続すると、電池モジュールの電圧又は残容量がアンバランスになることがある。たとえば、特定の電池モジュールを交換し、あるいは特定の電池モジュールをリフレッシュしたときには、特定の電池モジュールの電圧又は残容量がアンバランスとなる。電圧又は残容量がアンバランスな状態にある複数の電池モジュールを一緒に放電すると、電圧が低く、あるいは残容量の小さい電池モジュールが先に過放電される状態となる。電池モジュールの過放電は、電池の電気特性を著しく低下して寿命を短くするので、過充電を防止するために、放電を停止する必要がある。このため、特定の電池モジュールの電圧が最低電圧まで低下し、あるいは残容量が少なくなって過放電される状態になると、この電池モジュールの放電を停止して過放電を防止する必要がある。
【0005】
電池モジュールの電圧又は残容量がアンバランスな状態にあると、特定の電池モジュールが過放電される状態となっても、他の電池モジュールは放電できる状態にある。したがって、過放電される状態になった電池モジュールの放電を停止して、他の電池モジュールから放電することで全ての電池モジュールの電力を有効に利用できる。ただ、この状態は、複数の電池モジュールを備える電源装置においては、必ずしも理想的な放電状態とは言えない。それは、特定の電池モジュールの電圧が最低電圧まで低下し、あるいは特定の電池モジュールの残容量が少なくなって過放電される状態になると、この電池モジュールを劣化させることになるからである。また、過放電状態にある特定の電池モジュールの放電を停止する状態で、他の放電可能な電池モジュールから放電する状態では、放電可能な各電池モジュールから放電される放電量が大きくなって、各電池モジュールの負担が大きくなり、これらの電池モジュールを劣化させる原因にもなる。
【0006】
さらに、複数の電池モジュールが過放電される状態においては、これらの電池モジュールの放電を停止して、他の放電可能な電池モジュールから放電しようとしても、放電可能な電池モジュールのトータルの放電量が所定の放電量に不足すると、放電できなくなる問題が生じる。したがって、この状態になると、放電可能な電池モジュールがあるにも関わらず、この電池モジュールの電力を有効に利用できなくなる。
【0007】
本発明は、以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、いずれかの電池モジュールの電圧又は残容量がアンバランスな状態であっても、いずれの電池モジュールをも過放電させることなく、特定の電池モジュールが劣化するのを有効に防止できると共に、各々の電池モジュールの劣化度合いのバラツキを少なくしながら、全ての電池モジュールに蓄電される電力を効率よく出力できる電源装置を提供することにある。
【0008】
また、電池モジュールの電圧又は残容量がアンバランスな状態になる欠点は、電池モジュールの電圧や残容量を均等化することで解消できる。すなわち、残容量の大きい電池モジュールを専用の均等化回路で放電することで、電池モジュールを均等化できる。ただ、電池モジュールを均等化回路に放電して均等化する電源装置は、電池モジュールの放電によって無駄に電力が消費されるばかりでなく、発生するジュール熱を放熱する必要がある。ここで、複数の電池モジュールを双方向インバータを介して並列に接続する回路構成は、大型の電源装置に最適であるから、電池モジュールの容量も大きく、均等化による放電の電力消費が大きくなって、無駄な電力消費が大きく、ジュール熱による発熱量も相当に大きくなって放熱が難しく、さらに放電に使用する負荷抵抗にも大電力に耐える大きなものを使用する必要があるなど、種々の弊害がある。
【0009】
本発明の他の大切な目的は、均等化のための無駄な電力消費を解消し、またジュール熱による発熱を防止できると共に、放電に使用する大容量の負荷抵抗を省略して、いずれの電池モジュールをも過放電することなく、全ての電池モジュールを均等化しながら放電できる電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0010】
本発明の電源装置は、電池モジュール1の直流を出力側の交流に変換し、かつ出力側の交流を電池側の直流に変換する双方向インバータ2を介して複数の電池モジュール1を並列に接続し、各々の電池モジュール1の直流電力を、これに接続している各々の双方向インバータ2を介して出力側に出力している。さらに、電源装置は、各々の電池モジュール1の電圧又は残容量を検出して、双方向インバータ2の電流制限値を制御する制御回路3を備えており、制御回路3が、電圧が低く又は残容量の小さい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の放電電流制限値を、電圧が高く又は残容量の大きい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の放電電流制限値よりも小さく制限して、各々の電池モジュール1の電圧又は残容量を均等化している。
【0011】
以上の電源装置は、いずれかの電池モジュールの電圧又は残容量がアンバランスな状態であっても、いずれの電池モジュールをも過放電させることなく、特定の電池モジュールが劣化するのを有効に防止できると共に、各々の電池モジュールの劣化度合いのバラツキを少なくしながら、全ての電池モジュールに蓄電される電力を効率よく出力できる特徴がある。それは、以上の電源装置が、電圧が低下し、又は残容量が小さい電池モジュールの放電電流制限値を小さく制限して、均等化させながら放電するので、この電池モジュールの過放電を防止しながら、全ての電池モジュールを放電して、全ての電池モジュールに蓄電される電力を効率よく出力できるからである。
【0012】
以上の電源装置は、いずれかの電池モジュールの電圧が低下し、又は残容量が小さくなってアンバランスが生じた場合に、特定の電池モジュールが過放電される状態となるまで放電するのではなく、電圧が低下し、又は残容量が小さくなった電池モジュールの放電電流制限値を小さく制限しながら、全ての電池モジュールから放電する。このため、特定の電池モジュールが過放電されるのを有効に防止し、かつ、他の電池モジュールと均等化しながら理想的な放電が実現できる。このように、複数の電池モジュールを備える電源装置において、全ての電池モジュールの電気特性を同じ状態に揃えて、各電池モジュールが負担する負荷を等しくしながら放電することは理想的であり、これにより、各電池モジュール間に劣化度合いのバラツキが発生するのを有効に防止して、長寿命にできる。
【0013】
さらに、以上の電源装置は、各々の電池モジュールを均等化するために無駄な電力を消費せず、また電池モジュールを抵抗放電して均等化しないので、均等化のためのジュール熱による発熱を防止できる。さらに、電池モジュールを抵抗放電して均等化する必要がないので、電池モジュールを均等化するために使用する大容量の負荷抵抗を省略することができる。
【0014】
本発明の電源装置は、制御回路3が、電圧が高く又は残容量が大きい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の充電電流制限値を、電圧が低く又は残容量の小さい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の充電電流制限値よりも小さく制御して、各々の電池モジュール1の電圧又は残容量を均等化することができる。
以上の電源装置は、電圧が高く、あるいは残容量の大きい電池モジュールを過充電することなく、電池モジュールの電圧又は残容量を均等化しながら、効率よく全ての電池モジュールを充電できる。
【0015】
本発明の電源装置は、制御回路3が、電圧が最も低く又は残容量の最も小さい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の放電電流制限値を他の電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の放電電流制限値よりも小さく制限して放電することで、各々の電池モジュール1の電圧又は残容量を均等化することができる。
以上の電源装置は、制御回路が簡単な制御で電池モジュールを均等化しながら放電できる。
【0016】
本発明の電源装置は、制御回路3が、各々の電池モジュール1の電圧又は残容量の比率に相当するように、各々の電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の電流制限値をコントロールして、各々の電池モジュール1の電圧又は残容量を均等化することができる。
以上の電源装置は、電池モジュールを速やかに均等化しながら効率よく放電できる。
【0017】
本発明の電源装置は、制御回路3が、全ての電池モジュール1の電圧又は残容量の平均値を演算し、演算される平均値よりも電圧又は残容量の小さい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の放電電流制限値を他の双方向インバータ2の放電電流制限値よりも小さく制限して、各々の電池モジュール1の電圧又は残容量を均等化することができる。
以上の電源装置は、制御回路の簡単な制御で電池モジュールを均等化しながら効率よく放電できる。
【0018】
本発明の電源装置は、制御回路3が、全ての電池モジュール1の電圧又は残容量の平均値を演算し、演算された平均値よりも電圧又は残容量の小さい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の放電電流制限値を他の双方向インバータ2の放電電流制限値よりも小さく制限すると共に、平均値よりも電圧又は残容量の小さい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の放電電流制限値を、平均値からの差が大きくなるにしたがって小さく制限することができる。
以上の電源装置は、電圧が低く又は残容量の小さい電池モジュールを過放電することなく速やかに均等化しながら全ての電池モジュールを効率よく放電してトータル出力を大きくできる。
【0019】
本発明の電源装置は、制御回路3が、全ての電池モジュール1の電圧又は残容量の平均値を演算し、演算される平均値よりも電圧又は残容量の大きい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の充電電流制限値を他の双方向インバータ2の充電電流制限値よりも小さく制限して、各々の電池モジュール1の電圧又は残容量を均等化することができる。
以上の電源装置は、制御回路の簡単な制御で電池モジュールを均等化しながら効率よく充電できる。
【0020】
本発明の電源装置は、制御回路3が、全ての電池モジュール1の電圧又は残容量の平均値を演算し、演算された平均値よりも電圧又は残容量の大きい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の充電電流制限値を他の双方向インバータ2の充電電流制限値よりも小さく制限すると共に、平均値よりも電圧又は残容量の大きい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の充電電流制限値を、平均値からの差が大きくなるにしたがって小さく制限することができる。
以上の電源装置は、電圧が高く又は残容量の大きい電池モジュールを過充電することなく速やかに均等化しながら全ての電池モジュールを効率よく充電できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例にかかる電源装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す電源装置の双方向インバータの回路図である。
【図3】図1に示す電源装置が残容量の異なる電池モジュールを放電しながら均等化する状態を示す図である。
【図4】図1に示す電源装置が残容量の異なる電池モジュールを充電しながら均等化する状態を示す図である。
【図5】図3に示す状態の電池モジュールを放電する双方向インバータの放電電流制限値と放電電流を示す図である。
【図6】残容量の異なる電池モジュールを放電する双方向インバータの放電電流制限値と放電電流の他の一例を示す図である。
【図7】残容量の異なる電池モジュールを放電する双方向インバータの放電電流制限値と放電電流の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための電源装置を例示するものであって、本発明は電源装置を以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0023】
図1に示す電源装置は、複数の電池モジュール1を双方向インバータ2を介して並列に接続している。電池モジュール1は、充電できる複数の電池4を備える。複数の電池4は直列に接続して出力電圧を高く、また並列に接続して出力電流を大きくしている。電池モジュール1の電池4には、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛電池などが使用できる。電池モジュール1は、直列に接続する電池4の数で出力電圧を用途に適した電圧としている。電池モジュール1は、たとえば、出力電圧を10V〜300V、好ましくは30V〜200Vとするように、直列に接続する電池4の個数を調整している。さらに、電池モジュール1は、複数の電池4を並列に接続して出力電流を大きくしている。複数の電池モジュール1を双方向インバータ2を介して並列に接続する電源装置は、大出力な用途に使用されることから、電池4を直列に接続して出力電圧を高く、また、電池4を並列に接続し、あるいは大容量の電池4を使用して出力電流を大きくしている。
【0024】
双方向インバータ2は、電池モジュール1の直流を出力側の交流に変換して出力し、また出力側の交流を電池4側の直流に変換して電池モジュール1を充電する。図2は双方向インバータ2の回路図を示している。この双方向インバータ2は、直流を交流に変換し、また、交流を直流に変換するスイッチング素子5を備えている。この双方向インバータ2は、スイッチング素子5をオンオフに切り換えて、直流を交流に変換して出力し、また入力される交流を直流に変換して電池モジュール1を充電する。この双方向インバータ2は、電池モジュール1の電圧が出力側よりも高い状態でスイッチング素子5をオンオフに切り換えて、電池モジュール1の直流を交流に変換して出力側に出力し、出力側の電圧が電池モジュール1よりも高い状態でスイッチング素子5をオンオフに切り換えて、交流を直流に変換して電池モジュール1を充電する。
【0025】
図2の双方向インバータ2は、スイッチング素子5の出力を直接に出力側の出力ライン7に接続しているが、スイッチング素子の出力側にトランスを設け、このトランスで電圧変換して交流を出力ラインに出力することもできる。また、スイッチング素子の出力側にフィルターを設け、出力波形をサイン波として出力ラインに出力することもできる。
【0026】
図1の電源装置は、複数の双方向インバータ2を介して並列に接続されるので、各々の双方向インバータ2のスイッチング素子5は、互いに同期してスイッチングされて、直流を交流に変換して出力ライン7に出力し、また出力ライン7の交流を直流に変換して電池モジュール1を充電する。
【0027】
双方向インバータ2は、スイッチング素子5をオンオフに切り換えるスイッチング回路6を備えている。スイッチング回路6は、スイッチング素子5をオンオフに切り換えるデューティーを制御して、双方向インバータ2の放電電流制限値と充電電流制限値とを制御する。スイッチング回路6は、スイッチング素子5をオンに切り換えるタイミングを長く、すなわちデューティーを大きくして、放電電流制限値と充電電流制限値とを大きくする。
【0028】
各々の双方向インバータ2のスイッチング素子5を同期してオンオフに切り換え、また、双方向インバータ2の充電電流制限値と放電電流制限値とをコントロールするために、スイッチング回路6には制御回路3から同期信号と制御信号とが入力される。
【0029】
制御回路3は、各々の電池モジュール1の電圧又は残容量から各々の双方向インバータ2の放電電流制限値と充電電流制限値とを演算して、スイッチング回路6に制御信号を出力する。また、全ての双方向インバータ2が同期してスイッチング素子5をオンオフに切り換えて、同相の交流を出力するように、各々の双方向インバータ2に同期信号を出力する。双方向インバータ2のスイッチング回路6は、入力される制御信号でもって、スイッチング素子5をオンオフに切り換えるデューティーを制御して、放電電流制限値と充電電流制限値とをコントロールする。また、同期信号でスイッチング素子5をオンオフに切り換えて、同相の交流を出力側に出力する。
【0030】
制御回路3は、各々の電池モジュール1の電圧又は残容量を検出して、双方向インバータ2の電流制限値をコントロールする。図2の電源装置は、電池モジュール1の電圧又は残容量を検出する検出回路8を各々の電池モジュール1に設けている。電池モジュール1の電圧を検出して、双方向インバータ2の電流制限値をコントロールする制御回路3は、電池モジュール1に検出回路8を設けることなく、電池モジュール1の電圧を検出して双方向インバータ2の電流制限値をコントロールすることもできる。残容量を検出して双方向インバータ2の電流制限値をコントロールする電源装置は、検出回路8で電池モジュール1の残容量を検出し、検出した残容量を制御回路3に出力する。この検出回路8は、電池モジュール1の充放電電流を積算して残容量を演算し、あるいは電池モジュール1の電圧から残容量を演算し、さらに充放電電流で演算する残容量を電圧で補正して残容量を検出する。
【0031】
制御回路3は、電池モジュール1を放電する状態においては、電圧が低く又は残容量の小さい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の放電電流制限値を、電圧が高く又は残容量の大きい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の放電電流制限値よりも小さく制限して、各々の電池モジュール1の電圧又は残容量を均等化しながら放電する。
【0032】
図3は、残容量が異なる4組の電池モジュールA、B、C、Dを放電して均等化する状態を示している。この図は、残容量が70%の電池モジュールBと、残容量が80%の電池モジュールA、C、Dを放電して均等化する状態を示している。残容量が小さい電池モジュールBは、これに接続している双方向インバータの放電電流制限値を10Aと他の双方向インバータよりも小さく制限し、その他の電池モジュールA、C、Dに接続している双方向インバータの放電電流制限値を40Aとし、トータルの放電電流を100Aとする状態で、均等化する状態を例示している。残容量を70%とする電池モジュールBは、放電電流制限値を10Aとする双方向インバータを介して放電されるので、トータル放電電流を100Aとする状態において、10Aで放電される。他の電池モジュールA、C、Dは30Aで放電されて、トータル放電電流は100Aとなる。
【0033】
以上の状態で放電されると、放電電流の小さい電池モジュールBは、放電電流が大きい他の電池モジュールA、C、Dに比較して残容量の減少が少なくなる。したがって、所定の時間経過すると、残容量が小さかった電池モジュールBの残容量は、他の電池モジュールA、C、Dの残容量に等しくなる。残容量が等しくなって均等化されると、その後は放電電流制限値を同じ40Aに設定して、全ての電池モジュールA、B、C、Dを同じ電流、すなわち25Aで放電して、トータル放電電流を100Aとする。この状態で放電される各々の電池モジュールA、B、C、Dは、残容量が等しいので、同時に残容量を0%とするまで放電される。すなわち、特定の電池モジュールを過放電することなく、全ての電池モジュールを一緒に完全に放電できる。
【0034】
図4は、残容量が異なる4組の電池モジュールA、B、C、Dを充電して均等化する状態を示している。この図は、残容量が30%の電池モジュールBと、残容量が20%の電池モジュールA、C、Dを充電して均等化する状態を示している。残容量が大きい電池モジュールBは、これに接続している双方向インバータの充電電流制限値を10Aとし、その他の電池モジュールA、C、Dに接続している双方向インバータの充電電流制限値を40Aとし、トータルの充電電流を100Aとする状態で、充電しながら均等化する状態を例示している。残容量を30%とする電池モジュールBは、充電電流制限値を10Aとする双方向インバータを介して充電されるので、トータル充電電流を100Aとする状態において、10Aで充電される。他の電池モジュールA、C、Dは30Aで充電されて、トータル充電電流は100Aとなる。
【0035】
以上の状態で充電されると、充電電流の小さい電池モジュールBは、充電電流が大きい他の電池モジュールA、C、Dに比較して残容量の増加が少なくなる。したがって、所定の時間経過すると、残容量が大きかった電池モジュールBの残容量は、他の電池モジュールA、C、Dの残容量に等しくなる。残容量が等しくなって均等化されると、その後は充電電流制限値を同じ40Aに設定して、全ての電池モジュールA、B、C、Dを同じ電流、すなわち25Aで充電して、トータル充電電流を100Aとする。この状態で充電される各々の電池モジュールA、B、C、Dは、残容量が等しいので、同時に残容量を100%となるまで充電される。すなわち、特定の電池モジュールを過充電することなく、全ての電池モジュールを一緒に満充電できる。
【0036】
双方向インバータ2の放電電流制限値や充電電流制限値は、制御回路3が双方向インバータ2のスイッチング回路6を介してスイッチング素子5をオンオフに切り換えるデューティーをコントロールして制御される。図1と図2の電源装置の制御回路3は、電池モジュール1の残容量を検出し、この残容量でもって、双方向インバータ2の電流制限値をコントロールして、各々の電池モジュール1の残容量を均等化しながら放電し、あるいは充電する。
【0037】
図5は、図3に示す状態の電池モジュールA、B、C、Dを放電する双方向インバータの放電電流制限値と放電電流を示している。この図に示すように、電源装置は、制御回路3でもって、最も残容量の小さい電池モジュールBに接続している双方向インバータ2の放電電流制限値を、他の電池モジュールA、C、Dに設定している双方向インバータ2の放電電流制限値よりも小さく制限して放電して、各々の電池モジュールA、B、C、Dの残容量を均等化している。図5のグラフにおいて、外枠部分が放電電流制限値を示し、斜線部分が、実際の放電電流値を示している。
【0038】
電源装置は、図6に示すように、制御回路3でもって、各々の電池モジュール1の残容量の比率に相当するように、各々の電池モジュールに接続している双方向インバータの電流制限値をコントロールして、各々の電池モジュールの残容量を均等化することができる。この図は、残容量を80%とする電池モジュールAと、残容量を70%とする電池モジュールBと、残容量を75%とする電池モジュールCと、残容量を80%とする電池モジュールDとを放電して均等化する状態を示している。この電源装置は、電池モジュールB、Cの残容量が小さいので、残容量の比率に相当するように、電池モジュールB、Cに接続している双方向インバータの電流制限値を小さく制御して、すなわち、電池モジュールBに接続している双方向インバータの放電電流制限値を10A、電池モジュールCに接続している双方向インバータの放電電流制限値を20Aに制限し、電池モジュールA、Dに接続している双方向インバータの放電電流制限値を40Aに設定して放電して、全ての電池モジュールの残容量を均等化する。放電のトータル電流を100Aとする状態において、電池モジュールBの放電電流を10A、電池モジュールCの放電電流を20A、電池モジュールA、Dの放電電流を35Aとしている。この状態で放電されると、電池モジュールB、Cは残容量が減少する割合が電池モジュールA、Dに比較して少なく、さらに、電池モジュールBは、電池モジュールCよりも残容量の減少する割合が少なく、所定時間放電して残容量が均等化される。
【0039】
さらに、電源装置の制御回路3は、全ての電池モジュールの電圧又は残容量の平均値を演算し、演算される平均値よりも電圧又は残容量の小さい電池モジュールに接続している双方向インバータ2の放電電流制限値を他の双方向インバータ2よりも小さく制限して、各々の電池モジュール1の電圧又は残容量を均等化することができる。電源装置は、制御回路3でもって、演算された平均値よりも電圧又は残容量の小さい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の放電電流制限値を他の双方向インバータ2よりも小さく制限すると共に、平均値よりも電圧又は残容量の小さい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の放電電流制限値を、平均値からの差が大きくなるにしたがって小さく制限することで、電池モジュール1を放電しながら均等化することができる。
【0040】
この状態を図7に示している。この図は、電池モジュールA、C、Dの残容量を80%、電池モジュールBの残容量を70%とする状態で、均等化する状態を示している。電池モジュールA、B、C、Dの残容量の平均値は77.5%となるので、電池モジュールBの残容量が平均値よりも7.5%小さくなる。したがって、残容量が平均値よりも小さい電池モジュールBに接続している双方向インバータの放電電流制限値を小さく制限し放電することで、電池モジュールを均等化できる。また、電池モジュールBの放電電流制限値は、平均値からの差が大きくなるにしたがって小さく制限することで、電池モジュールを放電しながら速やかに均等化できる。
【0041】
以上は、電池モジュール1の残容量で双方向インバータ2の放電電流制限値をコントロールするが、残容量と同じように電池モジュール1の電圧で双方向インバータ2の放電電流制限値をコントロールして、電池モジュール1を均等化することができる。
【0042】
さらに、電源装置は、電池モジュール1を充電しながら均等化することもできる。この電源装置は、制御回路3でもって、電圧が高く又は残容量が大きい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の充電電流制限値を、電圧が低く又は残容量の小さい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の充電電流制限値よりも小さく制御して、各々の電池モジュール1の電圧又は残容量を均等化する。
【0043】
以上の電源装置は、前述したように放電して均等化するのと同じようにして、制御回路3でもって、全ての電池モジュール1の電圧又は残容量の平均値を演算し、演算される平均値よりも電圧又は残容量の大きい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の充電電流制限値を他の双方向インバータ2の充電電流制限値よりも小さく制限して、各々の電池モジュール1の電圧又は残容量を均等化することができる。この電源装置は、制御回路3でもって、演算された平均値よりも電圧又は残容量の大きい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の充電電流制限値を他の双方向インバータ2の充電電流制限値よりも小さく制限すると共に、平均値よりも電圧又は残容量の大きい電池モジュール1に接続している双方向インバータ2の充電電流制限値を、平均値からの差が大きくなるにしたがって小さく制限するようにして、電池モジュール1の電圧又は残容量を速やかに均等化しながら充電できる。
【符号の説明】
【0044】
1…電池モジュール
2…双方向インバータ
3…制御回路
4…電池
5…スイッチング素子
6…スイッチング回路
7…出力ライン
8…検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池モジュール(1)が、電池モジュール(1)の直流を出力側の交流に変換し、かつ出力側の交流を電池(4)側の直流に変換する双方向インバータ(2)を介して並列に接続され、各々の電池モジュール(1)の直流電力が、これに接続している各々の双方向インバータ(2)を介して出力側に出力されるようにしてなる電源装置であって、
各々の電池モジュール(1)の電圧又は残容量を検出して、双方向インバータ(2)の電流制限値を制御する制御回路(3)を備えており、
前記制御回路(3)が、電圧が低く又は残容量の小さい電池モジュール(1)に接続している双方向インバータ(2)の放電電流制限値を、電圧が高く又は残容量の大きい電池モジュール(1)に接続している双方向インバータ(2)の放電電流制限値よりも小さく制限して、各々の電池モジュール(1)の電圧又は残容量を均等化するようにしてなる電源装置。
【請求項2】
前記制御回路(3)が電圧が高く又は残容量が大きい電池モジュール(1)に接続している双方向インバータ(2)の充電電流制限値を、電圧が低く又は残容量の小さい電池モジュール(1)に接続している双方向インバータ(2)の充電電流制限値よりも小さく制御して、各々の電池モジュール(1)の電圧又は残容量を均等化するようにしてなる請求項1に記載される電源装置。
【請求項3】
前記制御回路(3)が、電圧が最も低く又は残容量の最も小さい電池モジュール(1)に接続している双方向インバータ(2)の放電電流制限値を他の電池モジュール(1)に接続している双方向インバータ(2)の放電電流制限値よりも小さく制限して放電することで、各々の電池モジュール(1)の電圧又は残容量を均等化する請求項1又は2に記載される電源装置。
【請求項4】
前記制御回路(3)が、各々の電池モジュール(1)の電圧又は残容量の比率に相当するように、各々の電池モジュール(1)に接続している双方向インバータ(2)の電流制限値をコントロールして、各々の電池モジュール(1)の電圧又は残容量を均等化する請求項1ないし3のいずれかに記載される電源装置。
【請求項5】
前記制御回路(3)が、全ての電池モジュール(1)の電圧又は残容量の平均値を演算し、演算される平均値よりも電圧又は残容量の小さい電池モジュール(1)に接続している双方向インバータ(2)の放電電流制限値を他の双方向インバータ(2)の放電電流制限値よりも小さく制限して、各々の電池モジュール(1)の電圧又は残容量を均等化する請求項1又は2に記載される電源装置。
【請求項6】
前記制御回路(3)が、全ての電池モジュール(1)の電圧又は残容量の平均値を演算し、演算された平均値よりも電圧又は残容量の小さい電池モジュール(1)に接続している双方向インバータ(2)の放電電流制限値を他の双方向インバータ(2)の放電電流制限値よりも小さく制限すると共に、平均値よりも電圧又は残容量の小さい電池モジュール(1)に接続している双方向インバータ(2)の放電電流制限値を、平均値からの差が大きくなるにしたがって小さく制限するようにしてなる請求項5に記載される電源装置。
【請求項7】
前記制御回路(3)が、全ての電池モジュール(1)の電圧又は残容量の平均値を演算し、演算される平均値よりも電圧又は残容量の大きい電池モジュール(1)に接続している双方向インバータ(2)の充電電流制限値を他の双方向インバータ(2)の充電電流制限値よりも小さく制限して、各々の電池モジュール(1)の電圧又は残容量を均等化する請求項1又は2に記載される電源装置。
【請求項8】
前記制御回路(3)が、全ての電池モジュール(1)の電圧又は残容量の平均値を演算し、演算された平均値よりも電圧又は残容量の大きい電池モジュール(1)に接続している双方向インバータ(2)の充電電流制限値を他の双方向インバータ(2)の充電電流制限値よりも小さく制限すると共に、平均値よりも電圧又は残容量の大きい電池モジュール(1)に接続している双方向インバータ(2)の充電電流制限値を、平均値からの差が大きくなるにしたがって小さく制限するようにしてなる請求項7に記載される電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−78242(P2013−78242A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218101(P2011−218101)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】