説明

電源装置

【課題】複数の電池を用いて充放電を行なうとともに、各電池の特性のばらつきによる充電時の効率低下を抑制し、かつ放電時における各電池の電力の有効活用を図ることが可能な電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置101は、電池12に対応して設けられ、直列接続された複数のキャパシタ21と、キャパシタ21に対応して設けられ、受けた直流電圧を昇圧または降圧して対応の電池12へ出力する充電動作、対応の電池12から受けた直流電圧を昇圧または降圧して出力する放電動作が可能であり、充電動作における出力電圧および放電動作における出力電圧を調整可能な複数の昇降圧回路11とを備える。充電動作において、直列接続された複数のキャパシタ21の両端において受けた直流電圧の分圧電圧が各昇降圧回路11に与えられる。放電動作において、各昇降圧回路11の出力電圧の合成電圧が上記両端から出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関し、特に、複数の電池を備え、これらの電池を充放電する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繰り返しの充電が可能な二次電池を用いて電力を蓄え、必要なときに当該二次電池から系統に電力を供給する電力貯蔵システムが開発されている(たとえば、三菱重工技報Vol.41、No.5、「リチウムイオン電池電力貯蔵システムの開発」、2004年9月(非特許文献1)参照)。
【0003】
このような電力貯蔵システムは、電力需要の変動を緩和して発電設備の利用率を高める用途の他、太陽光発電および風力発電のように発電量の変動が大きい発電方式を採用する発電設備を補完する用途にも適用可能である(たとえば、電気設備学会誌、平成17年10月、「レドックスフロー電池の風力発電出力平滑化用途への適用」(非特許文献2)参照)。
【0004】
このような用途で用いられる電源装置は、たとえば複数の電池の集合体を備える。二次電池がたとえばリチウムイオン電池である場合には、1つの電池の電圧はたとえば3V〜4V程度であるので、複数の電池を直列に接続する。この直列接続された電池を充電しておくことにより、必要なときに電力を供給することができる。すなわち、充電時には電池の直列体に電流が流れ込んで電力が蓄えられ、放電時には電池の直列体から電流が流れ出て、電力が負荷に供給される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】三菱重工技報Vol.41、No.5、「リチウムイオン電池電力貯蔵システムの開発」、2004年9月
【非特許文献2】電気設備学会誌、平成17年10月、「レドックスフロー電池の風力発電出力平滑化用途への適用」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、直列体の各電池の充電時において、いずれか1つの電池が満充電の状態になると、充電を停止しなければならない。すなわち、他の電池が満充電の状態に達していなくても、当該他の電池をさらに充電することはできない。
【0007】
また、直列体の各電池を放電して負荷に電力を供給する場合には、残量が最も少ない電池が放電限界に達すると、他の電池の残量は十分であっても、放電を継続することはできない。
【0008】
このように、電池の直列体を用いる電源装置では、各電池の特性のばらつきにより、充放電性能がいずれかの電池の特性に拘束されるため、各電池を十分に充電することができず、また、放電時において、各電池に蓄えられた電力を有効活用することができない、という問題点がある。
【0009】
このような充電時の問題点を解決するために、たとえば、満充電状態の電池に充電電流が供給されないように充電電流を他の回路へ逃がす構成が考えられる。しかしながら、このような構成では、損失の発生により充電効率が低下してしまい、また、上述の放電時の問題点を解決することはできない。
【0010】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、複数の電池を用いて充放電を行なうとともに、各電池の特性のばらつきによる充電時の効率低下を抑制し、かつ放電時における各電池の電力の有効活用を図ることが可能な電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる電源装置は、複数の電池と、上記電池に対応して設けられ、直列接続された複数のキャパシタと、上記キャパシタに対応して設けられ、対応の上記キャパシタから受けた直流電圧を昇圧または降圧して対応の上記電池へ出力する充電動作、および対応の上記電池から受けた直流電圧を昇圧または降圧して対応の上記キャパシタへ出力する放電動作が可能であり、上記充電動作における出力電圧および上記放電動作における出力電圧を調整可能な複数の昇降圧回路とを備え、上記充電動作において、直列接続された上記複数のキャパシタの両端において受けた直流電圧の分圧電圧が各上記昇降圧回路に与えられ、上記放電動作において、上記各昇降圧回路の出力電圧の合成電圧が上記両端から出力される。
【0012】
このような構成により、各電池の特性にばらつきがある場合でも、特定の電池の特性に拘束されて充電または放電を停止しなければならなくなることを防ぐことができる。すなわち、各電池を十分に充電し、また、放電時において、各電池に蓄えられた電力を有効活用することができる。さらに、満充電状態の電池に充電電流が供給されないように充電電流を他の回路へ逃がす必要が無くなり、損失の発生による充電効率の低下を防ぐことができる。したがって、複数の電池を用いて充放電を行なうとともに、各電池の特性のばらつきによる充電時の効率低下を抑制し、かつ放電時における各電池の電力の有効活用を図ることができる。
【0013】
好ましくは、上記電源装置は、さらに、上記電池に対応して設けられ、対応の上記電池の電圧を測定するための複数の電圧測定部と、上記電圧測定部によって測定された上記電池の電圧に基づいて、対応の上記昇降圧回路を制御することにより、上記昇降圧回路の出力電圧を調整するための制御部とを備え、上記制御部は、上記充電動作において、各上記電圧測定部の測定結果に基づいて、上記複数の電池の電圧が略等しい状態を保ちながら、上記複数の電池の電圧が共通の目標値に達するように上記各昇降圧回路を制御する。
【0014】
このような構成により、各電池の電圧を均一に変化させることができるため、充電効率を向上させることができる。
【0015】
好ましくは、上記電源装置は、さらに、上記電池に対応して設けられ、対応の上記電池の電圧を測定するための複数の電圧測定部と、上記電圧測定部によって測定された上記電池の電圧に基づいて、対応の上記昇降圧回路を制御することにより、上記昇降圧回路の出力電圧を調整するための制御部とを備え、上記制御部は、上記充電動作において、各上記電圧測定部の測定結果に基づいて、目標値に達する前の所定の閾値に上記電池の電圧が達すると、上記所定の閾値に達した上記電池の電圧の上記目標値への到達が抑制されるように対応の上記昇降圧回路を制御する。
【0016】
このような構成により、各電池の電圧を把握して昇降圧回路を制御する必要が無くなるため、たとえば、電池ごとに安価なCPU(Central Processing Unit)を制御部として設けた構成において、これらのCPU間で電池の電圧情報をやり取りする必要が無くなり、構成および処理の簡易化を図ることができる。
【0017】
好ましくは、上記電源装置は、さらに、上記電池に対応して設けられ、対応の上記電池の電圧を測定するための複数の電圧測定部と、上記電圧測定部によって測定された上記電池の電圧に基づいて、対応の上記昇降圧回路を制御することにより、上記昇降圧回路の出力電圧を調整するための制御部とを備え、上記制御部は、上記放電動作において、各上記電圧測定部の測定結果に基づいて、上記各昇降圧回路を制御することにより、上記複数の電池の電圧が略等しい状態を保ちながら上記複数の電池を放電し、上記複数の電池の電圧が共通の下限値に達すると上記放電を停止する。
【0018】
このような構成により、各電池の電圧を均一に変化させることができるため、放電効率を向上させることができる。
【0019】
好ましくは、上記電源装置は、さらに、上記電池に対応して設けられ、対応の上記電池の電圧を測定するための複数の電圧測定部と、上記電圧測定部によって測定された上記電池の電圧に基づいて、対応の上記昇降圧回路を制御することにより、上記昇降圧回路の出力電圧を調整するための制御部とを備え、上記制御部は、上記放電動作において、各上記電圧測定部の測定結果に基づいて、上記各昇降圧回路を制御することにより上記複数の電池を放電し、共通の下限値よりも絶対値の大きい所定の閾値に上記電池の電圧が達すると、上記閾値に達した上記電池の放電が抑制されるように対応の上記昇降圧回路を制御する。
【0020】
このような構成により、各電池の電圧を把握して昇降圧回路を制御する必要が無くなるため、たとえば、電池ごとに安価なCPUを制御部として設けた構成において、これらのCPU間で電池の電圧情報をやり取りする必要が無くなり、構成および処理の簡易化を図ることができる。
【0021】
好ましくは、上記昇降圧回路は、対応の上記電池に並列接続されたキャパシタを含む。
【0022】
このような構成により、電池を安定化させ、充電動作および放電動作をより良好に行なうことができる。
【0023】
好ましくは、上記キャパシタは、第1端および第2端を有し、上記昇降圧回路は、上記キャパシタの第1端に電気的に接続された第1端と、第2端とを有する第1のスイッチと、上記第1のスイッチの第2端に電気的に接続された第1端と、上記キャパシタの第2端に電気的に接続された第2端とを有する第2のスイッチと、上記第1のスイッチの第2端に電気的に接続された第1端と、上記電池の第1端に電気的に接続された第2端とを有するインダクタとを含み、上記第2のスイッチの第2端および上記電池の第2端が電気的に接続されている。
【0024】
このような構成により、昇降圧回路において、電池側の回路とキャパシタ側の回路とを絶縁するためのトランス等を設けることなく、簡易な構成で昇降圧回路を実現することができる。
【0025】
好ましくは、上記電源装置は、さらに、直列接続された上記複数のキャパシタの両端間に接続され、上記充電動作において、受けた交流電圧を直流電圧に変換して上記複数のキャパシタの両端へ出力し、上記放電動作において、上記複数のキャパシタの両端から受けた直流電圧を交流電圧に変換して負荷へ出力するための電圧変換回路を備える。
【0026】
このような構成により、たとえば交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換して各電池を充電し、また、各電池の出力電圧を交流電圧に変換して負荷に供給することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、複数の電池を用いて充放電を行なうとともに、各電池の特性のばらつきによる充電時の効率低下を抑制し、かつ放電時における各電池の電力の有効活用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る電源装置の構成、および充電動作における接続例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電源装置の構成、および放電動作における接続例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電源装置による充電動作の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る電源装置による充電動作の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る電源装置による放電動作の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る電源装置による放電動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0030】
図1は、本発明の実施の形態に係る電源装置の構成、および充電動作における接続例を示す図である。図2は、本発明の実施の形態に係る電源装置の構成、および放電動作における接続例を示す図である。
【0031】
図1および図2を参照して、電源装置101は、キャパシタ21、昇降圧回路11、電池12、電圧測定部13および制御部14の組を複数備え、さらに、AC/DCコンバータ(電圧変換回路)15と、電圧測定部16とを備える。昇降圧回路11は、キャパシタ25と、スイッチ22,23と、インダクタ24とを含む。スイッチ22,23は、たとえばトランジスタ等の半導体素子である。これにより、高速なスイッチングが可能となる。なお、制御部14は、組ごとに設けられる構成に限らず、すべての組または一部の組で共通化されてもよい。
【0032】
電池12としては、たとえば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池、およびその他各種の充電可能な電池を用いることができる。
【0033】
図1において、交流電源201は、たとえば振幅が100V、周波数が50Hzまたは60Hzの交流電圧を電源装置101に供給する。
【0034】
そして、電源装置101は、交流電源201から供給される交流電圧に基づいて各組の電池12を充電する。
【0035】
図2において、電源装置101は、各組の電池12を放電することにより、たとえば振幅が100V、周波数が50Hzまたは60Hzの交流電圧を負荷202に供給する。
【0036】
より詳細には、電源装置101において、各キャパシタ21は、直列接続されている。AC/DCコンバータ15は、直列接続された複数のキャパシタ21の両端間に接続されている。
【0037】
充電動作において、AC/DCコンバータ15は、交流電源201から受けた交流電圧を直流電圧に変換し、直列接続された複数のキャパシタ21の両端へ出力する。また、放電動作において、AC/DCコンバータ15は、直列接続された複数のキャパシタ21の両端から受けた直流電圧を交流電圧に変換して負荷202へ出力する。
【0038】
昇降圧回路11において、スイッチ22は、キャパシタ21の第1端に電気的に接続された第1端と、第2端とを有する。スイッチ23は、スイッチ22の第2端に電気的に接続された第1端と、キャパシタ21の第2端に電気的に接続された第2端とを有する。インダクタ24は、スイッチ22の第2端に電気的に接続された第1端と、電池12の第1端に電気的に接続された第2端とを有する。スイッチ23の第2端および電池12の第2端が電気的に接続されている。キャパシタ25は、電池12の安定化のために、電池12と並列に接続されている。
【0039】
昇降圧回路11は、双方向動作が可能である。より詳細には、昇降圧回路11は、AC/DCコンバータ15から対応のキャパシタ21経由で受けた直流電圧を昇圧または降圧して対応の電池12へ出力する充電動作、および対応の電池12から受けた直流電圧を昇圧または降圧して対応のキャパシタ21経由でAC/DCコンバータ15へ出力する放電動作が可能である。昇降圧回路11において、充電動作における出力電圧および放電動作における出力電圧は調整可能である。
【0040】
充電動作において、直列接続された複数のキャパシタ21の両端において受けた直流電圧の分圧電圧、すなわちAC/DCコンバータ15の出力電圧の分圧電圧が各昇降圧回路11に与えられる。また、放電動作において、各昇降圧回路11の出力電圧の合成電圧が、直列接続された複数のキャパシタ21の両端からAC/DCコンバータ15へ出力される。
【0041】
電圧測定部13は、電池12に対応して設けられ、対応の電池12の電圧を測定する。また、電圧測定部16は、放電動作において、たとえば、直列接続された複数のキャパシタ21の両端間の電圧を測定する。なお、電圧測定部16の代わりに、各キャパシタ21を通して流れる電流を測定する電流測定部が設けられてもよい。
【0042】
制御部14は、対応の電圧測定部13によって測定された電池12の電圧、および電圧測定部16によって測定された電圧に基づいて、対応の昇降圧回路11を制御することにより、当該昇降圧回路11の出力電圧を調整する。具体的には、制御部14は、対応の昇降圧回路11における各スイッチをPWM(Pulse Width Modulation)制御することにより、当該昇降圧回路11の出力電圧を調整する。
【0043】
より詳細には、制御部14は、充電動作において、スイッチ22をオンし、かつスイッチ23をオフすることにより、AC/DCコンバータ15からの電流をインダクタ24に供給し、インダクタ24にエネルギーを蓄積する動作、およびスイッチ22をオフし、かつスイッチ23をオンすることにより、インダクタ24に蓄えられたエネルギーを電池12へ放出する動作を交互に繰り返すことにより、電池12を充電する。
【0044】
また、制御部14は、放電動作において、スイッチ22をオフし、かつスイッチ23をオンすることにより、電池12からの電流をインダクタ24に供給し、インダクタ24にエネルギーを蓄積する動作、およびスイッチ22をオンし、かつスイッチ23をオフすることにより、インダクタ24に蓄えられたエネルギーをAC/DCコンバータ15へ放出する動作を交互に繰り返すことにより、電池12を放電する。
【0045】
これらの充電動作および放電動作において、制御部14は、たとえば、キャパシタ21の両端電圧と電池12の電圧とが略等しくなるように、昇降圧回路11を制御する。
【0046】
次に、本発明の実施の形態に係る電源装置による充電動作について説明する。以下では、充電動作における電池12の目標値を4.2Vとし、充電動作における電池12の充電前の電圧を3.0Vとする。
【0047】
図3は、本発明の実施の形態に係る電源装置による充電動作の一例を示す図である。
【0048】
図3を参照して、制御部14は、充電動作において、各電圧測定部13の測定結果に基づいて、各電池12の電圧が略等しい状態を保ちながら、各電池12の電圧が共通の目標値に達するように各昇降圧回路11を制御する。
【0049】
より詳細には、制御部14は、タイミングt1において対応の電池12の充電を開始する。ここで、制御部14は、対応の電圧測定部13の測定結果を参照しながら、各電池12の電圧が等しくなるように対応の昇降圧回路11における各スイッチを制御する。
【0050】
具体的には、たとえば、制御部14は、他の制御部14と通信することにより、他の制御部14に対応する電池12と同じタイミングで、自己に対応する電池12の電圧が共通のレベルに達するように対応の昇降圧回路11を制御する。また、各制御部14は、目標値まで段階的に上記共通のレベルを設定する。
【0051】
あるいは、制御部14は、予め設定された所要時間で対応の電池12の電圧が所定値に達するように対応の昇降圧回路11を制御する。また、制御部14は、目標値まで段階的に上記所定値を設定する。上記所要時間および所定値については、制御部14間で共通の値が設定される。この方法では、制御部14間の通信が不要となる。
【0052】
そして、制御部14は、タイミングt2において、対応の電池12の電圧が目標値に達すると、対応の昇降圧回路11におけるスイッチ22およびスイッチ23をオフし、充電動作を終了する。
【0053】
図4は、本発明の実施の形態に係る電源装置による充電動作の一例を示す図である。
【0054】
図4を参照して、制御部14は、充電動作において、各電圧測定部13の測定結果に基づいて、目標値に達する前の所定の閾値に電池12の電圧が達すると、所定の閾値に達した電池12の電圧の目標値への到達が抑制されるように対応の昇降圧回路11を制御する。
【0055】
より詳細には、制御部14は、タイミングt11において対応の電池12の充電を開始する。ここで、制御部14は、最初は、他の制御部14に対応する電池12の電圧を考慮することなく、対応の電池12を充電する。そして、制御部14は、対応の電池12の電圧が、目標値である4.2Vより所定値だけ小さい電圧たとえば4.1Vに達した状態において、他の制御部14に対応する電池12の電圧が4.1Vに達していない場合には、対応の電池12の両端電圧が4.1Vになるように昇降圧回路11を制御する。これにより、対応の電池12の電圧上昇が抑制される。ここでは、電圧が波形A1となる電池12がタイミングt12において4.1Vに達したために電圧上昇が抑制され、電圧が波形A2となる他の電池12と同じタイミングt13で、各電池12の電圧が、目標値である4.2Vに達している。
【0056】
そして、制御部14は、対応の電池12の電圧が目標値に達すると、対応の昇降圧回路11におけるスイッチ22およびスイッチ23をオフし、充電動作を終了する。
【0057】
次に、本発明の実施の形態に係る電源装置による放電動作について説明する。以下では、放電動作における電池12の放電前の電圧を4.2Vとし、電池12の下限値すなわち放電動作を停止すべき電圧値を3.0Vとする。
【0058】
図5は、本発明の実施の形態に係る電源装置による放電動作の一例を示す図である。
【0059】
図5を参照して、制御部14は、放電動作において、各電圧測定部13の測定結果に基づいて、各昇降圧回路11を制御することにより、各電池12の電圧が略等しい状態を保ちながら各電池12を放電する。そして、制御部14は、各電池12の電圧が共通の下限値に達すると放電を停止する。
【0060】
より詳細には、制御部14は、タイミングt21において対応の電池12の放電を開始する。制御部14は、負荷202に供給される電圧のレベルが一定になるように、たとえば電圧測定部16によって測定される電圧が所定値を保つように、対応の昇降圧回路11を制御する。
【0061】
ここで、制御部14は、対応の電圧測定部13の測定結果を参照しながら、各電池12の電圧が等しくなるように対応の昇降圧回路11における各スイッチを制御する。
【0062】
具体的には、たとえば、制御部14は、他の制御部14と通信することにより、他の制御部14に対応する電池12と同じタイミングで、自己に対応する電池12の電圧が共通のレベルまで下降するように対応の昇降圧回路11を制御する。また、各制御部14は、下限値まで段階的に上記共通のレベルを設定する。
【0063】
あるいは、制御部14は、予め設定された所要時間で対応の電池12の電圧が所定値まで下降するように対応の昇降圧回路11を制御する。また、制御部14は、下限値まで段階的に上記所定値を設定する。上記所要時間および所定値については、制御部14間で共通の値が設定される。この方法では、制御部14間の通信が不要となる。
【0064】
そして、制御部14は、タイミングt22において、対応の電池12の電圧が下限値に達すると、対応の昇降圧回路11におけるスイッチ22およびスイッチ23をオフし、放電動作を終了する。
【0065】
図6は、本発明の実施の形態に係る電源装置による放電動作の一例を示す図である。
【0066】
図6を参照して、制御部14は、放電動作において、各電圧測定部13の測定結果に基づいて、各昇降圧回路11を制御することにより各電池12を放電する。そして、制御部14は、共通の下限値よりも絶対値の大きい所定の閾値に電池12の電圧が達すると、閾値に達した電池12の放電が抑制されるように対応の昇降圧回路11を制御する。
【0067】
より詳細には、制御部14は、タイミングt31において対応の電池12の放電を開始する。制御部14は、負荷202に供給される電圧のレベルが一定になるように、たとえば電圧測定部16によって測定される電圧が所定値を保つように、対応の昇降圧回路11を制御する。
【0068】
ここで、制御部14は、最初は、他の制御部14に対応する電池12の電圧を考慮することなく、対応の電池12を放電する。そして、制御部14は、対応の電池12の電圧が、下限値である3.0Vより所定値だけ大きい電圧たとえば3.1Vに達した状態において、他の制御部14に対応する電池12の電圧が3.1Vに達していない場合には、対応の電池12の両端電圧が3.1Vになるように昇降圧回路11を制御する。これにより、対応の電池12の電圧下降が抑制される。ここでは、電圧が波形B1となる電池12がタイミングt32において3.1Vに達したために電圧下降が抑制され、電圧が波形B2となる他の電池12と同じタイミングt33で、各電池12の電圧が、下限値である3.0Vに達している。
【0069】
そして、制御部14は、対応の電池12の電圧が下限値に達すると、対応の昇降圧回路11におけるスイッチ22およびスイッチ23をオフし、放電動作を終了する。
【0070】
ところで、電池の直列体を用いる電源装置では、各電池の特性のばらつきにより、充放電性能がいずれかの電池の特性に拘束されるため、各電池を十分に充電することができず、また、放電時において、各電池に蓄えられた電力を有効活用することができない、という問題点がある。このような充電時の問題点を解決するために、たとえば、満充電状態の電池に充電電流が供給されないように充電電流を他の回路へ逃がす構成が考えられる。しかしながら、このような構成では、損失の発生により充電効率が低下してしまい、また、上述の放電時の問題点を解決することはできない。
【0071】
これに対して、本発明の実施の形態に係る電源装置では、キャパシタ21は、電池12に対応して設けられ、各キャパシタ21は直列接続されている。昇降圧回路11は、キャパシタ21に対応して設けられ、対応のキャパシタ21から受けた直流電圧を昇圧または降圧して対応の電池12へ出力する充電動作、および対応の電池12から受けた直流電圧を昇圧または降圧して対応のキャパシタ21へ出力する放電動作が可能であり、充電動作における出力電圧および放電動作における出力電圧が調整可能である。そして、充電動作において、直列接続された複数のキャパシタ21の両端において受けた直流電圧の分圧電圧が各昇降圧回路11に与えられる。また、放電動作において、各昇降圧回路11の出力電圧の合成電圧が、直列接続された複数のキャパシタ21の両端から出力される。
【0072】
このような構成により、各電池12の特性にばらつきがある場合でも、特定の電池の特性に拘束されて充電または放電を停止しなければならなくなることを防ぐことができる。すなわち、各電池12を十分に充電し、また、放電時において、各電池12に蓄えられた電力を有効活用することができる。さらに、満充電状態の電池に充電電流が供給されないように充電電流を他の回路へ逃がす必要が無くなり、損失の発生による充電効率の低下を防ぐことができる。
【0073】
したがって、本発明の実施の形態に係る電源装置では、複数の電池を用いて充放電を行なうとともに、各電池の特性のばらつきによる充電時の効率低下を抑制し、かつ放電時における各電池の電力の有効活用を図ることができる。
【0074】
また、本発明の実施の形態に係る電源装置では、制御部14は、充電動作において、各電圧測定部13の測定結果に基づいて、各電池12の電圧が略等しい状態を保ちながら、各電池12の電圧が共通の目標値に達するように各昇降圧回路11を制御する。
【0075】
このような構成により、各電池12の電圧を均一に変化させることができるため、充電効率を向上させることができる。
【0076】
また、本発明の実施の形態に係る電源装置では、制御部14は、充電動作において、各電圧測定部13の測定結果に基づいて、目標値に達する前の所定の閾値に電池12の電圧が達すると、所定の閾値に達した電池12の電圧の目標値への到達が抑制されるように対応の昇降圧回路11を制御する。
【0077】
このような構成により、各電池12の電圧を把握して昇降圧回路11を制御する必要が無くなるため、たとえば、電池12ごとに安価なCPU(Central Processing Unit)を制御部として設けた構成において、これらのCPU間で電池12の電圧情報をやり取りする必要が無くなり、構成および処理の簡易化を図ることができる。
【0078】
また、本発明の実施の形態に係る電源装置では、制御部14は、放電動作において、各電圧測定部13の測定結果に基づいて、各昇降圧回路11を制御することにより、各電池12の電圧が略等しい状態を保ちながら各電池12を放電する。そして、制御部14は、各電池12の電圧が共通の下限値に達すると放電を停止する。
【0079】
このような構成により、各電池12の電圧を均一に変化させることができるため、放電効率を向上させることができる。
【0080】
また、本発明の実施の形態に係る電源装置では、制御部14は、放電動作において、各電圧測定部13の測定結果に基づいて、各昇降圧回路11を制御することにより各電池12を放電する。そして、制御部14は、共通の下限値よりも絶対値の大きい所定の閾値に電池12の電圧が達すると、閾値に達した電池12の放電が抑制されるように対応の昇降圧回路11を制御する。
【0081】
このような構成により、各電池12の電圧を把握して昇降圧回路11を制御する必要が無くなるため、たとえば、電池12ごとに安価なCPUを制御部として設けた構成において、これらのCPU間で電池12の電圧情報をやり取りする必要が無くなり、構成および処理の簡易化を図ることができる。
【0082】
また、本発明の実施の形態に係る電源装置では、昇降圧回路11は、対応の電池12に並列接続されたキャパシタ25を含む。
【0083】
このような構成により、電池12を安定化させ、充電動作および放電動作をより良好に行なうことができる。
【0084】
また、本発明の実施の形態に係る電源装置では、昇降圧回路11において、スイッチ22は、キャパシタ21の第1端に電気的に接続された第1端と、第2端とを有する。スイッチ23は、スイッチ22の第2端に電気的に接続された第1端と、キャパシタ21の第2端に電気的に接続された第2端とを有する。インダクタ24は、スイッチ22の第2端に電気的に接続された第1端と、電池12の第1端に電気的に接続された第2端とを有する。スイッチ23の第2端および電池12の第2端が電気的に接続されている。
【0085】
このような構成により、昇降圧回路において、電池12側の回路とキャパシタ21側の回路とを絶縁するためのトランス等を設けることなく、簡易な構成で昇降圧回路を実現することができる。
【0086】
また、本発明の実施の形態に係る電源装置では、AC/DCコンバータ15は、直列接続された複数のキャパシタ21の両端間に接続されている。AC/DCコンバータ15は、充電動作において、受けた交流電圧を直流電圧に変換して複数のキャパシタ21の両端へ出力し、放電動作において、複数のキャパシタ21の両端から受けた直流電圧を交流電圧に変換して負荷202へ出力する。
【0087】
このような構成により、交流電源201から供給される交流電圧を直流電圧に変換して各電池12を充電し、また、各電池12の出力電圧を交流電圧に変換して負荷202に供給することができる。
【0088】
なお、本発明の実施の形態に係る電源装置は、電圧測定部13および制御部14を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。電源装置101の外部に電圧測定部13および制御部14が設けられる構成であってもよい。
【0089】
また、本発明の実施の形態に係る電源装置は、AC/DCコンバータ15を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。AC/DCコンバータ15を備えない構成であっても、外部から供給される直流電圧に基づいて各電池12を充電し、かつ各電池12を放電して直流電圧を外部に供給することが可能である。
【0090】
また、本発明の実施の形態に係る電源装置では、電池12の電圧は正電圧であるとしたが、これに限定するものではなく、電池12の電圧は負電圧であってもよい。
【0091】
また、本発明の実施の形態に係る電源装置において、「インダクタ」は、リアクトルのような大型の部品も含むものとする。
【0092】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0093】
11 昇降圧回路
12 電池
13 電圧測定部
14 制御部
15 AC/DCコンバータ(電圧変換回路)
16 電圧測定部
21,25 キャパシタ
22,23 スイッチ
24 インダクタ
101 電源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池と、
前記電池に対応して設けられ、直列接続された複数のキャパシタと、
前記キャパシタに対応して設けられ、対応の前記キャパシタから受けた直流電圧を昇圧または降圧して対応の前記電池へ出力する充電動作、および対応の前記電池から受けた直流電圧を昇圧または降圧して対応の前記キャパシタへ出力する放電動作が可能であり、前記充電動作における出力電圧および前記放電動作における出力電圧を調整可能な複数の昇降圧回路とを備え、
前記充電動作において、直列接続された前記複数のキャパシタの両端において受けた直流電圧の分圧電圧が各前記昇降圧回路に与えられ、
前記放電動作において、前記各昇降圧回路の出力電圧の合成電圧が前記両端から出力される、電源装置。
【請求項2】
前記電源装置は、さらに、
前記電池に対応して設けられ、対応の前記電池の電圧を測定するための複数の電圧測定部と、
前記電圧測定部によって測定された前記電池の電圧に基づいて、対応の前記昇降圧回路を制御することにより、前記昇降圧回路の出力電圧を調整するための制御部とを備え、
前記制御部は、前記充電動作において、各前記電圧測定部の測定結果に基づいて、前記複数の電池の電圧が略等しい状態を保ちながら、前記複数の電池の電圧が共通の目標値に達するように前記各昇降圧回路を制御する、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記電源装置は、さらに、
前記電池に対応して設けられ、対応の前記電池の電圧を測定するための複数の電圧測定部と、
前記電圧測定部によって測定された前記電池の電圧に基づいて、対応の前記昇降圧回路を制御することにより、前記昇降圧回路の出力電圧を調整するための制御部とを備え、
前記制御部は、前記充電動作において、各前記電圧測定部の測定結果に基づいて、目標値に達する前の所定の閾値に前記電池の電圧が達すると、前記所定の閾値に達した前記電池の電圧の前記目標値への到達が抑制されるように対応の前記昇降圧回路を制御する、請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
前記電源装置は、さらに、
前記電池に対応して設けられ、対応の前記電池の電圧を測定するための複数の電圧測定部と、
前記電圧測定部によって測定された前記電池の電圧に基づいて、対応の前記昇降圧回路を制御することにより、前記昇降圧回路の出力電圧を調整するための制御部とを備え、
前記制御部は、前記放電動作において、各前記電圧測定部の測定結果に基づいて、前記各昇降圧回路を制御することにより、前記複数の電池の電圧が略等しい状態を保ちながら前記複数の電池を放電し、前記複数の電池の電圧が共通の下限値に達すると前記放電を停止する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項5】
前記電源装置は、さらに、
前記電池に対応して設けられ、対応の前記電池の電圧を測定するための複数の電圧測定部と、
前記電圧測定部によって測定された前記電池の電圧に基づいて、対応の前記昇降圧回路を制御することにより、前記昇降圧回路の出力電圧を調整するための制御部とを備え、
前記制御部は、前記放電動作において、各前記電圧測定部の測定結果に基づいて、前記各昇降圧回路を制御することにより前記複数の電池を放電し、共通の下限値よりも絶対値の大きい所定の閾値に前記電池の電圧が達すると、前記閾値に達した前記電池の放電が抑制されるように対応の前記昇降圧回路を制御する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項6】
前記昇降圧回路は、対応の前記電池に並列接続されたキャパシタを含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項7】
前記キャパシタは、第1端および第2端を有し、
前記昇降圧回路は、
前記キャパシタの第1端に電気的に接続された第1端と、第2端とを有する第1のスイッチと、
前記第1のスイッチの第2端に電気的に接続された第1端と、前記キャパシタの第2端に電気的に接続された第2端とを有する第2のスイッチと、
前記第1のスイッチの第2端に電気的に接続された第1端と、前記電池の第1端に電気的に接続された第2端とを有するインダクタとを含み、
前記第2のスイッチの第2端および前記電池の第2端が電気的に接続されている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項8】
前記電源装置は、さらに、
直列接続された前記複数のキャパシタの両端間に接続され、前記充電動作において、受けた交流電圧を直流電圧に変換して前記複数のキャパシタの両端へ出力し、前記放電動作において、前記複数のキャパシタの両端から受けた直流電圧を交流電圧に変換して負荷へ出力するための電圧変換回路を備える、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−99093(P2013−99093A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239287(P2011−239287)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】