説明

電熱ヒーター用基板

【課題】予め電熱ヒーターとして組み立てる必要がなく、別個に、電熱ヒーターの要素、例えば、ヒーター線、断熱材、カバー部材等を準備して、現場で組み立て得ることから、複雑な配管、装置等の加熱及び保温に容易かつ適切に対応可能であり、現場での取付け施工を著しく簡便化し得るばかりではなく、自体簡単な形状であり、かつ、用途に応じて、他の電熱ヒーターの要素を適切に選択し得ることから、加熱及び保温に要する設計、施工及び製造コストを著しく低減し得る電熱ヒーター用基板を提供する。
【解決手段】金属製平板1から成り、該金属製平板1が、その少なくとも一つの面に、互いに略平行な複数の溝2を備え、該金属製平板1が、上記の互いに略平行な複数の溝2の長さ方向に沿って折り曲げ可能であり、かつ、上記の互いに略平行な複数の溝が、その中に絶縁されたヒーター線をはめ込み可能に形成されている、電熱ヒーター用基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電熱ヒーター用基板に関し、更に詳しくは、主として、半導体製造装置等の配管及び機器を加熱するために使用する電熱ヒーター用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電熱ヒーターは、高温を必要とする機器及び配管を加熱又は保温するために使用されるものであり、例えば、マントルヒーター、リボンヒーター又はジャケットヒーター等が知られている。そして、近年、非常に多くの分野で使用されるようになり、とりわけ、半導体製造装置等では非常に高度な要求がされるようになってきている。
【0003】
第一に、加熱の均一性が強く要求されるようになり、発熱量の小さなヒーター線を緻密に配列することが要求された。特許文献1には、この問題を解決した電熱ヒーターが記載されている。図14に示すように、特許文献1に記載されたヒーター線130は、ニクロム線131の表面にセラミック繊維からなるフェルト状の第1の被覆層132を形成し、その表面にセラミック繊維の編物等からなる第2の被覆層133を形成したものである。このヒーター線130は、絶縁性に優れていると共に柔軟性に富んでいるために、小さな曲げ半径で折り曲げることが可能である。
【0004】
また、図15に示すように、特許文献1に記載された電熱ヒーター110は、シート状の基材120の表面にヒーター線130を所定の形状で配列して固定糸121で固定し、これを断熱材140と共にカバー部材150に納めて構成している。ヒーター線130は、絶縁性と柔軟性に富んでいるために緻密な配列をすることが可能であり、このため加熱の均一性に優れたヒーターとすることができる。
【0005】
更に、図15に示すような平面形状ではなく、対象物の形状に合わせた形状とすることにより、加熱の均一性を一層高めることが要求された。特許文献2には、配管、継手、弁等の加熱や保温を目的として、対象物の外観形状に対応する形状に加工した電熱ヒーターが記載されている。例えば、図16に示す電熱ヒーター110は配管用であり、基材120にヒーター線130を取り付けて断熱材140と共にカバー部材150に納めた構成は図15と同様であるが、全体が配管の形状に対応するように加工されているので加熱の均一性が一層高められている。
【0006】
第二に、電熱ヒーターから発生するパーティクルを低減することが強く要求されるようになった。図15に示すように、電熱ヒーター110を構成している基材120、固定糸121、断熱材140等は、電気絶縁性及び耐熱性を必要とするために、セラミック繊維等の織物やフェルトが用いられ、パーティクルの発生が非常に多い材料である。このため、これらを収納するカバー部材150については、パーティクルの発生が少ない材料とすることが要求された。
【0007】
特許文献3には、この問題を解決した電熱ヒーターが記載され、カバー部材の材料としてフッ素樹脂繊維又は芳香族ナイロン繊維を使用することが記載されている。また、多孔質のフッ素樹脂フィルムを使用することが記載されている。これらの材料は、耐熱性、電気絶縁性、柔軟性、安全性を備えると共に、物理的な耐久性を備えて破損し難いために、低発塵性の材料として使用することができる。
【0008】
また、特許文献4には、金属製の配管部材等に適用して着脱を繰り返しても破損しない十分な強度を有し、パーティクルが発生することもない電熱ヒーターが記載されている。そして、カバー部材の材質として、加熱面にはPBO繊維を、側面及び背面には芳香族ナイロン繊維を使用することが記載されている。
【0009】
このように、電熱ヒーターは高度に精密な形態で製作されることとなった。しかしながら、半導体製造装置等における配管は、通常、狭い空間に複雑に入り込んだ配管であり、正確な配管図面が存在しない場合が多い。このために、設計者が現場に赴いて複雑な配管をスケッチして、詳細な採寸を行わなければならない。特に、配管の途中にある継手、バルブ等の位置を正確に採寸すると共に、ステー等の障害物についても入念に採寸する必要がある。この結果、電熱ヒーターの設計段階で多大な費用が発生することになる。
【0010】
製造工程においても、標準化することができず、一品ごとに異なる図面に従って製造することとなるために、多大な労力を必要とすることになる。また、図16に示すように、電熱ヒーター110を立体的な一体形状とするために、断熱材140及びカバー部材150等の寸法取り、裁断、縫合等の作業が、非常に複雑な作業となり、多大な労力を費やすことになる。さらに、製品の確認や検査等における労力も多大となる。この結果、製造段階でも多大な費用が発生することになる。
【0011】
すなわち、現在の状況下では、電熱ヒーターを標準化することは困難であり、客先からの依頼を受けた後に、設計及び製作を行なわざるを得ないという問題がある。そして、設計段階及び製造段階における多大な労力は、多大なコストの発生となるのみならず、製品の納期に多大な期間を必要とするという問題がある。
【0012】
そこで、本発明者は、特許文献5において、シート状の基材、該基材の表面又はその近傍に配列されたヒーター線、及びこれらを収納するヒーターカバーを備える加熱部と、断熱材及びこれを収納する断熱材カバーを備える保温部とを有する電熱ヒーターにおいて、前記加熱部が、切り込み可能な切込部を備えている電熱ヒーターを提案した。該電熱ヒーターによれば、現場において、適宜、切込部を切断することにより、半導体製造装置等における複雑な配管等に対応可能である故、現場における複雑なスケッチ作業や採寸作業をする必要がなく設計工程を簡略化することができる。従って、電熱ヒーターを標準化して在庫可能な商品とすることができる。それに伴って、設計及び製造コストも低減でき、かつ納期も短縮することができる。このように、特許文献5記載の電熱ヒーターによれば、従来の問題点を大きく改善することができた。しかし、それで十分と言うものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−347017号公報
【特許文献2】特開2002−295783号公報
【特許文献3】特開2004−185910号公報
【特許文献4】特開2005−166352号公報
【特許文献5】特開2009−199967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、予め電熱ヒーターとして組み立てる必要がなく、別個に、電熱ヒーターの要素、例えば、ヒーター線、断熱材、カバー部材等を準備して、現場で組み立て得ることから、複雑な配管、装置等の加熱及び保温に容易かつ適切に対応可能であり、現場での取付け施工を著しく簡便化し得るばかりではなく、自体簡単な形状であり、かつ、用途に応じて、他の電熱ヒーターの要素を適切に選択し得ることから、加熱及び保温に要する設計、施工及び製造コストを著しく低減し得る電熱ヒーター用基板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、特許文献5記載の電熱ヒーターを改良すべく、更なる検討を試みた。特許文献5記載の電熱ヒーターは、加熱部が切り込み可能な切込部を備えていることにより、複雑な配管、装置等の加熱及び保温においても、該切込部を適宜切断することにより、効率よく対応することができる。その一方、該電熱ヒーターは一体型に形成されており、また、所定の位置に切込部を設ける必要があることから、従来品に比べれば製造コスト、設置コスト等を低減し得るとはいうものの、改善の余地がないわけではなかった。また、実際の配管等に設置した際、不要な切込部分が存在したりする等、改善を必要とする問題も存在していた。そこで、本発明者は、このような一体型の電熱ヒーターと言う既存の考えから脱却し、電熱ヒーター用基板、ヒーター線、保温材等の個々の要素を、夫々、別々に提供できれば、そして、これらの要素の全て、とりわけ、電熱ヒーター用基板を標準化できれば、これら要素を予め一体型に組み立てて電熱ヒーターとして提供する必要はなく、現場で、実際の配管、装置等に合わせて、適宜、これらの要素を選択して組立てることにより電熱ヒーターとすることができ、作業性、並びに、設計、施工及び製造コスト等を著しく低減し得るのではないかという観点に立って、本発明を完成したのである。
【0016】
即ち、本発明は、
(1)金属製平板から成り、該金属製平板が、その少なくとも一つの面に、互いに略平行な複数の溝を備え、該金属製平板が、上記の互いに略平行な複数の溝の長さ方向に沿って折り曲げ可能であり、かつ、上記の互いに略平行な複数の溝が、その中に絶縁されたヒーター線をはめ込み可能に形成されている、電熱ヒーター用基板である。
【0017】
好ましい態様として、
(2)一つの面に備えられる、互いに略平行な複数の溝の直径が略同一である、上記(1)記載の電熱ヒーター用基板、
(3)上記の互いに略平行な複数の溝が、上記の金属製平板の相対する二つの面に備えられている、上記(1)又は(2)記載の電熱ヒーター用基板、
(4)上記の金属製平板の一方の面に備えられている溝の直径と他方の面に備えられている溝の直径とが互いに異なる、上記(3)記載の電熱ヒーター用基板、
(5)上記の金属製平板の面に備えられている溝の直径が、0.8〜5.0mmの範囲から選ばれる、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の電熱ヒーター用基板、
(6)上記の金属製平板の面に備えられている溝の直径が、1.8〜2.8mmの範囲から選ばれる、上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の電熱ヒーター用基板、
(7)上記の金属製平板の一方の面に備えられている溝の直径が、1.8〜2.0mmであり、他方の面に備えられている溝の直径が2.6〜2.8mmである、上記(3)又は(4)記載の電熱ヒーター用基板、
(8)上記の金属製平板が長方形又は正方形である、上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の電熱ヒーター用基板、
(9)上記の金属製平板がアルミニウム又はアルミニウム合金製である、上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の電熱ヒーター用基板、
(10)上記の金属製平板が、上記の複数の溝の長さ方向に略平行な金属製平板端部で、該金属製平板同士を水平又は垂直方向に接続可能に形成されている、上記(1)〜(9)のいずれか一つに記載の電熱ヒーター用基板、
(11)上記の互いに略平行な複数の溝をその長さ方向に垂直な面で切断したときの溝の断面が、略U字形又は略半円形である、上記(1)〜(10)のいずれか一つに記載の電熱ヒーター用基板、
(12)上記の金属製平板の厚さが2.0〜12.0mmである、上記(1)〜(11)のいずれか一つに記載の電熱ヒーター用基板、
(13)上記の金属製平板の厚さが3.0〜8.0mmである、上記(1)〜(11)のいずれか一つに記載の電熱ヒーター用基板、
(14)上記の金属製平板の厚さが4.0〜6.0mmである、上記(1)〜(11)のいずれか一つに記載の電熱ヒーター用基板、
(15)上記の金属製平板の、溝に垂直な方向の全長(幅)が50〜300mmである、上記(1)〜(14)のいずれか一つに記載の電熱ヒーター用基板、
(16)上記の金属製平板の幅が70〜200mmである、上記(1)〜(14)のいずれか一つに記載の電熱ヒーター用基板、
(17)上記の金属製平板の幅が90〜100mmである、上記(1)〜(14)のいずれか一つに記載の電熱ヒーター用基板、
(18)上記の金属製平板の、溝に水平な方向の全長(長さ)が、3,000mm以下である、上記(1)〜(17)のいずれか一つに記載の電熱ヒーター用基板、
(19)上記の金属製平板の長さが、1,500〜2,500mmである、上記(1)〜(17)のいずれか一つに記載の電熱ヒーター用基板、
(20)上記の金属製平板の長さが、1,900〜2,100mmである、上記(1)〜(17)のいずれか一つに記載の電熱ヒーター用基板
を挙げることができる。
【0018】
従来、プレートヒーター(スペースヒーター)は、金属製の厚板、例えば、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の厚板をドリル等で切削して穴を空け、この穴に棒状の電熱ヒーターを差し込むことにより製造していた。しかし、ドリルでの切削により穴を空ける方法では、その穴の長さに限界があるばかりではなく、該方法によれば、相当の製造コストが必要であり、結局、プレートヒーターの価格に該コストを転嫁せざるを得なかった。そこで、本発明者は、上記の電熱ヒーター用基板をプレートヒーターとして使用できないかを鋭意検討した。その結果、上記の電熱ヒーター用基板の互いに略平行な複数の溝に絶縁されたヒーター線をはめ込み、そして、その面上、また、必要に応じて反対の面上に、金属製平板を設置すれば、上記の互いに略平行な複数の溝を備える電熱ヒーター用基板は、押出成型で容易に作製し得ることから、従来品のようにドリルで切削して穴を空けることなく、簡便かつ著しく安価にプレートヒーターを製造し得ることを見出した。また、押出成型であることから、穴の長さも、ドリル切削で穴を空ける方法に存在するような限界もない。
【0019】
本発明は、また、
(21)互いに略平行な複数の溝に絶縁されたヒーター線がはめ込まれている、上記(1)〜(20)のいずれか一つに記載の電熱ヒーター用基板の、ヒーター線がはめ込まれている側の面及び/又は該面と反対側の面に、金属製平板が備えられてなるプレートヒーターである。
【0020】
好ましい態様として、
(22)上記電熱ヒーター用基板上に備えられる金属製平板が電熱ヒーター用基板と接する面と、該金属製平板が備えられる電熱ヒーター用基板面とが略一致している、上記(21)記載のプレートヒーター、
(23)上記電熱ヒーター用基板上に備えられる金属製平板の厚さが、2.0〜30.0mmである、上記(21)又は(22)記載のプレートヒーター、
(24)上記電熱ヒーター用基板上に備えられる金属製平板の厚さが、5.0〜20.0mmである、上記(21)又は(22)記載のプレートヒーター、
(25)上記電熱ヒーター用基板上に備えられる金属製平板が、アルミニウム又はアルミニウム合金製である、上記(21)〜(24)のいずれか一つに記載のプレートヒーター
を挙げることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電熱ヒーター用基板は、その中に絶縁されたヒーター線をはめ込むことができる互いに略平行な複数の溝を備えており、かつ、該基板は、該溝の長さ方向に沿って折り曲げ可能であることから、現場において、加熱又は保温すべき配管及び機器等に合わせて、配管及び機器等に該基板を巻き付け、そして、加熱又は保温に必要な熱量を与えるように、該基板上に備えられた複数の溝に、絶縁されたヒーター線を、適宜、はめ込むことができる。従って、配管及び機器等を適切に加熱又は保温することができ、現場での取付け施工を著しく簡便化し得る。また、実際の装置においては使用される配管径は限定される故、予めそれに適合する基板を準備する等、規格化が容易である。加えて、従来の電熱ヒーターのように一体型ではなく、電熱ヒーターを構成する要素ごとに保管及び提供して、その場で組み立て可能であることから、作業性、並びに、製造及び設置コスト等を著しく改善し得る。また、溝の直径を、市販の絶縁されたヒーター線がはめ込み可能に設計すれば、市販の絶縁されたヒーター線を効果的に使用することができ、更なる、コスト削減を達成することができる。好ましくは、本発明の電熱ヒーター用基板は、基板の相対する二つの面、即ち、表裏両面に、好ましくは、直径の異なる溝を備えることができる。これにより、配管及び機器等の加熱又は保温に必要な熱量に合わせて、いずれかの直径の溝を選ぶことができ、そして、その溝に適合する絶縁されたヒーター線をはめ込むことにより、より適切かつ簡便に、配管等の加熱又は保温を達成することができる。加えて、本発明の電熱ヒーター用基板は、金属製平板より成ることから、例えば、半導体製造において低減することを強く要求されているパーティクルの発生がない。また、本発明の電熱ヒーター用基板を使用すれば、簡便かつ著しく安価にプレートヒーターを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の電熱ヒーター用基板の一実施態様を示した平面図(a)及びそのA−A断面図(b)である。
【図2】図2は、図1に示した電熱ヒーター用基板のA−A断面図の部分拡大図である。
【図3】図3は、本発明の電熱ヒーター用基板を構成する金属製平板に備えられた互いに略平行な複数の溝に絶縁されたヒーター線をはめ込んだ状態の平面図(a)及びそのB−B断面図(b)である。
【図4】図4は、本発明の電熱ヒーター用基板の他の一実施態様を示した平面図(a)、底面図(b)及びC−C断面図(c)である。
【図5】図5は、図4に示した電熱ヒーター用基板(A)のC−C断面図(c)の部分拡大図である。
【図6】図6は、電熱ヒーター用基板の一方の端部と他方の端部の一実施態様の概略を示した図である。
【図7】図7は、二枚の電熱ヒーター用基板を水平方向に接続したとき(a)と垂直方向に接続したとき(b)の概略図である。
【図8】図8は、水平方向に接続した、二枚の電熱ヒーター用基板を、ストッパーを使用して固定した状態を示す概略図である。
【図9】図9は、電熱ヒーター用基板を配管に巻き付ける状態を示す概略図である。
【図10】図10は、溝と溝とを隔てる部分が取り除かれた電熱ヒーター用基板に絶縁されたヒーター線をはめ込んだ状態の平面図である。
【図11】図11は、ヒーター線保護カバー(a)及びそれを電熱ヒーター用基板に装着したとき(b)の概略図である。
【図12】図12は、電熱ヒーター用基板を直角方向に接続したときに使用するヒーター線保護カバー(a)及びそれを電熱ヒーター用基板に装着したとき(b)の概略図である。
【図13】図13は、本発明のプレートヒーターの一実施態様の断面を示す概略図である。
【図14】図14は、ヒーター線の例を示す概略斜視図である。
【図15】図15は、従来の電熱ヒーターの一例を示す概略斜視図である。
【図16】図16は、従来の電熱ヒーターの他の例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の電熱ヒーター用基板の一実施態様の平面図(a)及びそのA−A断面図(b)を図1に示した。図1に示す通り、本発明の電熱ヒーター用基板(A)は金属製平板(1)から成り、かつ、該金属製平板(1)は、その少なくとも一つの面に、互いに略平行な複数の溝(2)を備えている。また、金属製平板(1)は、互いに略平行な複数の溝(2)の長さ方向に沿って折り曲げ可能、即ち、人力又は簡便な治具により容易に折り曲げることができるものである。例えば、金属製平板(1)を人力で配管に押し付けることにより、配管に沿って容易に折り曲げることができる。これにより、例えば、加熱又は保温をする配管及び機器等に、金属製平板(1)を自在に巻き付けることができる。該金属製平板(1)としては、上記のように複数の溝(2)の長さ方向に沿って、容易に折り曲げ可能であると共に、熱伝導が良好である材質が選ばれる。通常、加工の容易さ及び価格等の観点から、好ましくはアルミニウム又はアルミニウム合金(例えば、JIA A 6063T1等)が使用される。該金属製平板(1)は、切削等の金属加工により製造することもできるが、特に好ましくは、押出成型により製造する。これにより、著しく製造コストを低減し得る。また、互いに略平行な複数の溝(2)は、その中に絶縁されたヒーター線をはめ込むことができるように形成されている。図2は、図1に示した電熱ヒーター用基板(A)のA−A断面図(b)の部分拡大図である。互いに略平行な複数の溝(2)の断面、即ち、該溝(2)をその長さ方向に垂直な面で切断したときの溝の断面は、好ましくは、略U字形又は略半円形であり、より好ましくは、図1及び2に示すように略U字形である。該溝(2)の直径(3)、即ち、該溝(2)の断面の開口部の幅は、絶縁されたヒーター線をはめ込むことができればよく、通常、絶縁されたヒーター線の直径とほぼ等しいか又はやや小さい。やや小さめとすることにより、はめ込んだヒーター線の脱落を防止し得る。該溝の直径(3)は、好ましくは0.8〜5.0mmの範囲から選ばれ、より好ましくは1.8〜2.8mmの範囲から選ばれる。絶縁されたヒーター線としては、オリジナル製品を使用することもできるが、市販品を使用することが特に好ましい。市販品を使用することにより、とりわけ、絶縁されたヒーター線を特注する必要がなく、コスト低減を達成することができる。絶縁されたヒーター線の市販品としては、例えば、株式会社加島製マイクロヒーター等を使用することができる。また、一つの面に備えられる、互いに略平行な複数の溝(2)の直径(3)は、略同一であることが好ましい。これにより、基板(1)の製造を簡略化し得る。図3には、本発明の電熱ヒーター用基板を構成する金属製平板に備えられた互いに略平行な複数の溝(2)に絶縁されたヒーター線(4)をはめ込んだ状態の平面図(a)、及び、そのB−B断面図を示した。このように絶縁されたヒーター線(4)は、金属製平板に備えられた互いに略平行な複数の溝(2)中にはめ込まれる。図3においては、絶縁されたヒーター線(4)は全ての互いに略平行な複数の溝(2)中に嵌め込まれているが、もちろん、互いに略平行な複数の溝(2)の1本おき、又は、2本おき等、適宜、定めて嵌め込むことができる。
【0024】
図4には、本発明の電熱ヒーター用基板の他の一実施態様の平面図(a)、底面図(b)及びC−C断面図(c)を示した。図4に示す通り、本発明の電熱ヒーター用基板(A)は金属製平板(1)から成り、かつ、該金属製平板(1)は、その相対する二つの面、即ち、表裏面に、互いに略平行な複数の溝(2,2’)を備えている。また、金属製平板(1)は、上記と同様に、表裏面に備えられた互いに略平行な複数の溝(2,2’)の長さ方向に沿って、表裏面のいずれの側にも折り曲げ可能である。これにより、例えば、加熱又は保温をする配管及び機器等に、金属製平板(1)を自在に巻き付けることができる。また、互いに略平行な複数の溝(2,2’)は、その中に絶縁されたヒーター線をはめ込むことができるように形成されている。該金属製平板(1)の材質は上記と同様である。また、上記と同様に押出成型により製造することが好ましい。図5は、図4に示した電熱ヒーター用基板(A)のC−C断面図(c)の部分拡大図である。互いに略平行な複数の溝(2,2’)の断面は、上記と同じく、好ましくは、略U字形、略半円形であり、より好ましくは、図4及び5に示すように略U字形である。該溝(2,2’)の直径(3,3’)、即ち、該溝(2,2’)の断面の開口部の幅は、絶縁されたヒーター線をはめ込むことができればよく、通常、絶縁されたヒーター線の直径とほぼ等しいか又はやや小さい。上記と同様にやや小さいほうが好ましい。該溝の直径(3,3’)は、好ましくは0.8〜5.0mmの範囲から選ばれ、より好ましくは1.8〜2.8mmの範囲から選ばれる。この実施態様においては、金属製平板(1)の一の面、即ち、表面に備えられている互いに略平行な複数の溝(2)の直径(3)と、他の面、即ち、裏面に備えられている互いに略平行な複数の溝(2’)の直径(3’)は、互いに異なる。好ましくは、金属製平板の一の面に備えられている溝の直径(3)が、2.6〜2.8mmであり、他の面に備えられている溝の直径(3’)が1.8〜2.0mmである。これにより、加熱又は保温すべき配管及び機器等に必要な熱量に合わせて、いずれかの面又は両面を使用して加熱又は保温をすることができる。
【0025】
本発明の電熱ヒーター用基板を構成する金属製平板の、複数の溝を備える面及びその反対側の面の形状は、好ましくは、四角形であり、より好ましくは、正方形、長方形であり、更に好ましくは長方形である。また、金属製平板(1)の厚さ(5)は、溝の高さ(深さ)(6,6’)、並びに、上記所定の材質で製造した際に、平板(1)が複数の溝の長さ方向に沿って折り曲げ可能であるか否か、その強度及び製造コスト等に依存して定められる。通常、図1に示したような一面のみに溝(2)を有する態様の電熱ヒーター用基板(A)にあっては、金属製平板(1)の厚さ(5)は、溝の高さ(6)に加えて、好ましくは0.5〜2.0mm程度であり、図4に示したような表裏両面に溝(2,2’)を有する態様の電熱ヒーター用基板(A)にあっては、金属製平板(1)の厚さ(5)は、一の面に備えられた溝の高さ(6)と他の面に備えられた溝の高さ(6’)の合計に加えて、好ましくは0.5〜2.0mm程度である。金属製平板(1)の厚さ(5)は、好ましくは2.0〜12.0mm、より好ましくは3.0〜8.0mm、更に好ましくは4.0〜6.0mmである。例えば、金属製平板の一の面に備えられている溝の直径(3)が、2.6〜2.8mmであり、他の面に備えられている溝の直径(3’)が1.8〜2.0mmであるときには、金属製平板(1)の厚さ(5)は、好ましくは4.8〜5.2mm程度である。
【0026】
金属製平板(1)の、溝(2)に垂直な方向の全長(8)、即ち、金属製平板(1)の幅(8)は、通常、加熱又は保温する配管及び機器の寸法、例えば、配管径に依存して定められる。半導体製造装置等の配管では、通常、使用している配管径が限定される故、それに応じて、金属製平板(1)の幅(8)を定めることができる。金属製平板(1)の幅(8)は、好ましくは50〜300mm、より好ましくは70〜200mm、更に好ましくは90〜100mmである。金属製平板(1)に備えられる互いに略平行な複数の溝の数には特に制限はなく、金属製平板(1)の幅(8)に応じて適宜定めることができる。通常、溝と溝とを隔てる部分の間隔が0.5〜3.0mm、好ましくは1.0〜2.0mm程度になるように定められる。また、金属製平板(1)は、金属製平板(1)の、複数の溝の長さ方向に略平行な端部(9)、即ち、金属製平板(1)の幅(8)方向の端部(9)で、金属製平板(1)同士を水平又は垂直方向に接続可能に形成されている。図6には、金属製平板(1)の一方の端部(9)と他方の端部(9’)の一実施態様を示した。図7には、図6に示した、夫々異なる端部を有する金属製平板を二枚(1,1’)用意し、これらを水平方向に接続したとき(a)と垂直方向に接続したとき(b)の概略図を示す。これにより、複数の金属製平板(1,1’)を接続して幅方向の長さを任意の長さに調節することができると共に、例えば、機器類のかどの部分等を加熱又は保温する際に金属製平板(1)の方向を90度変更することができる。また、金属製平板(1)の溝に水平な方向の全長(7)、即ち、金属製平板(1)の長さ(7)に特に制限はなく、好ましくは3,000mm以下、より好ましくは1,500〜2,500mm、更に好ましくは1,900〜2,100mmである。金属製平板(1)の長さ(7)は、加熱又は保温する配管及び機器等の長さに応じて適宜切断することができる。本発明の金属製平板(1)は、好ましくは400℃以下の加熱及び保温に使用可能である。より好ましくは300℃以下、更に好ましくは220〜280℃の加熱及び保温に使用可能である。250℃以下の低温で使用する際には、絶縁されたヒーター線(4)の絶縁能力が多少低いものであってもよく、また、200℃以下の低温で使用する際には、金属製平板(1)の表面をアルマイト加工することにより金属製平板(1)自体に絶縁性を持たせることもできる。
【0027】
次に、本発明の電熱ヒーター用基板を配管に取り付け、絶縁されたヒーター線をはめ込んで電熱ヒーターを配管に敷設する手順を簡単に説明する。まず、加熱又は保温する配管径に合わせて、かつ、加熱又は保温に必要なおおよその熱量を考慮して、所定寸法及び所定の溝直径を有する電熱ヒーター用基板(A)及び絶縁されたヒーター線(4)を準備する。配管径が大きい場合、例えば、直径50mm以上の配管には、それに合わせて複数の電熱ヒーター用基板(A)を用意して、上記の図7(a)に示したように接続して使用することもできる。水平に接続して使用するとき、作業中に該接続部分が外れることがないように、例えば、図8に示したように固定具(15)を使用して固定することもできる。もちろん、所定の熱量を与えることができれば、配管の全周を電熱ヒーター用基板(1)で覆う必要はない。電熱ヒーター用基板(1)の長さ(7)が長すぎる場合には、適切な寸法に切断する。次いで、図9に示すように、電熱ヒーター用基板(1)を溝の長さ方向に沿って折り曲げて、配管の周囲に巻き付ける。そして、このようにして巻き付けた電熱ヒーター用基板(1)の複数の溝(2,2’)に絶縁されたヒーター線(4)をはめ込む。この際、絶縁されたヒーター線(4)は、直接配管に接触する側の溝(2’)に嵌め込まれることが好ましい。また、絶縁されたヒーター線(4)は、配管に接触しない側の溝(2)に嵌め込まれていてもよく、あるいは、両側の溝(2,2’)に嵌め込まれてもよい。配管に接触しない側の溝(2)に嵌め込む際には、その上を、数ミリメートル、好ましくは1〜2mmのアルミニウム又はアルミニウム合金の板で覆うこともできる。また、図10に示すように、電熱ヒーター用基板の溝と溝とを隔てる部分(16)を機械加工、例えば、フライスにより、適宜、取り除いて、絶縁されたヒーター線が電熱ヒーター用基板の外側へと突出することを回避することができる。これにより、ヒーター線の破損等を未然に防止することができる。また、電熱ヒーター用基板(A)を折り曲げることなく使用したとき、電熱ヒーター用基板(A)の複数の溝(2,2’)に絶縁されたヒーター線(4)をはめ込んだ後、図11に示したようなヒーター線保護カバー(10)を使用して、ヒーター線(4)が突出している端部(13)を保護することもできる。これによりヒーター線の破損等を防ぐことができる。また、図12には、電熱ヒーター用基板(A,A’)を直角方向に接続したときに使用するヒーター線保護カバー(10’)を示した。次いで、その上を所定の保温材で覆い、固定具、例えば、固定バンド等で固定することにより作業が完了する。半導体装置等では、保温材は極力パーティクルの発生しない素材、例えば、フッ素樹脂繊維、芳香族ナイロン繊維等のカバーで覆われたものを使用することが好ましい。
【0028】
図13は、本発明のプレートヒーター(B)の一実施態様の断面を示す概略図である。図13に示すプレートヒーター(B)は、例えば、図4に示した本発明の電熱ヒーター用基板(A)の複数の溝(2,2’)に絶縁されたヒーター線(4,4’)をはめ込み、かつ、ヒーター線がはめ込まれている二つの面に密着するように、金属製平板(14,14’)を設置したものである。該金属製平板(14,14’)の材質は、好ましくは、アルミニウム又はアルミニウム合金製である。また、該金属製平板(14,14’)は、電熱ヒーター用基板(A)の面とほぼ一致するように、電熱ヒーター用基板(A)の面の幅及び長さとほぼ同一の寸法を有していることが好ましい。該金属製平板(14,14’)の厚さは、特に制限はなく、適宜定めることができるが、好ましくは2.0〜30.0mm、より好ましくは5.0〜20.0mmである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の電熱ヒーター用基板は、複雑な配管、装置等の加熱及び保温に容易かつ適切に対応可能であることから、現場での取付け施工を著しく簡便化し得るばかりではなく、自体簡単な形状であることから、加熱及び保温に要する設計及び製造コストを著しく低減し得る。従って、複雑な配管、装置等の加熱及び保温を要求される分野、とりわけ、半導体製造分野等での使用が今後大いに期待される。また、本発明の電熱ヒーター用基板を使用して製造したプレートヒーターは安価である。従って、種々の配管、装置等の加熱及び保温に使用されることが期待される。
【符号の説明】
【0030】
A 電熱ヒーター用基板
B プレートヒーター
1,1’ 金属製平板
2,2’ 溝
3,3’ 溝の直径
4,4’ 絶縁されたヒーター線
5 金属製平板の厚さ
6,6’ 溝の高さ
7 金属製平板の、溝に水平な方向の全長(金属製平板の長さ)
8 金属製平板の、溝に垂直な方向の全長(金属製平板の幅)
9,9’ 金属製平板の、溝の長さ方向に略平行な端部(金属製平板の幅方向の端部)
10,10’ ヒーター線保護カバー
11 配管
12,12’ ヒーター線保護カバーのストッパー
13,13’ ヒーター線突出端部
14,14’ 金属製平板
15 基板接続部固定具
16 溝と溝とを隔てる部分
110 電熱ヒーター
120 基材
121 固定糸
130 ヒーター線
131 ニクロム線
132 第1の被覆層
133 第2の被覆層
140 断熱材
150 カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製平板から成り、該金属製平板が、その少なくとも一つの面に、互いに略平行な複数の溝を備え、該金属製平板が、上記の互いに略平行な複数の溝の長さ方向に沿って折り曲げ可能であり、かつ、上記の互いに略平行な複数の溝が、その中に絶縁されたヒーター線をはめ込み可能に形成されている、電熱ヒーター用基板。
【請求項2】
一つの面に備えられる、互いに略平行な複数の溝の直径が略同一である、請求項1記載の電熱ヒーター用基板。
【請求項3】
上記の互いに略平行な複数の溝が、上記の金属製平板の相対する二つの面に備えられており、かつ、該金属製平板の一方の面に備えられている溝の直径と他方の面に備えられている溝の直径とが互いに異なる、請求項1又は2記載の電熱ヒーター用基板。
【請求項4】
上記の金属製平板の面に備えられている溝の直径が、0.8〜5.0mmの範囲から選ばれる、請求項1〜3のいずれか一つに記載の電熱ヒーター用基板。
【請求項5】
上記の金属製平板の一方の面に備えられている溝の直径が、1.8〜2.0mmであり、他方の面に備えられている溝の直径が2.6〜2.8mmである、請求項3記載の電熱ヒーター用基板。
【請求項6】
上記の金属製平板が、上記の複数の溝の長さ方向に略平行な金属製平板端部で、該金属製平板同士を水平又は垂直方向に接続可能に形成されている、請求項1〜5のいずれか一つに記載の電熱ヒーター用基板。
【請求項7】
上記の金属製平板がアルミニウム又はアルミニウム合金製である、請求項1〜6のいずれか一つに記載の電熱ヒーター用基板。
【請求項8】
互いに略平行な複数の溝に絶縁されたヒーター線がはめ込まれている、請求項1〜7のいずれか一つに記載の電熱ヒーター用基板の、ヒーター線がはめ込まれている側の面及び/又は該面と反対側の面に、金属製平板が備えられてなるプレートヒーター。
【請求項9】
上記電熱ヒーター用基板上に備えられる金属製平板が電熱ヒーター用基板と接する面と、該金属製平板が備えられる電熱ヒーター用基板面とが略一致しており、かつ、上記電熱ヒーター用基板上に備えられる金属製平板の厚さが、2.0〜30.0mmである、請求項8記載のプレートヒーター。
【請求項10】
上記電熱ヒーター用基板上に備えられる金属製平板が、アルミニウム又はアルミニウム合金製である、請求項8又は9記載のプレートヒーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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