説明

電界下における誘電性砥粒を水に分散させた流体を用いた仕上げ方法及び仕上げ装置

【課題】ITや医療機器産業に用いられるガラス等の脆性材に用いられる電界下における誘電性砥粒を水に分散させた流体を用いた仕上げ方法及び仕上げ装置を提案する。
【解決手段】本発明の仕上げ方法は、電極板11の下面に絶縁性ポリシングパッド13を取り付けて上定盤とし、電極板12の上面に絶縁性ポリシングパッド13を取り付けて下定盤とし、前記構成の各定盤をそれぞれの絶縁性ポリシングパッド13,13を対向させた状態で回転可能とし、前記対向間隔に、回転可能な遊星キャリア15に嵌め付けた被加工物14を臨ませ、さらに水に砥粒を分散させたスラリー16を供給し、前記スラリー16中の水が感応するプラスの低周波繰り返し方形波の電界を与えると共に前記各定盤及び遊星キャリア15を異なる速度又は逆方向に回転させることにより、被加工物14の表裏面を高品位にさらに良好な研磨効率で仕上げることを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ITや医療機器産業に用いられるガラス等の脆性材に用いられる電界下における誘電性砥粒を水に分散させた流体を用いた仕上げ方法及び仕上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の砥石を用いた研削加工は、ガラス、石英、シリコンウエハ、サファイアなどの脆性材試料に形状を施す方法として、合理的な加工方法として知られている。この方法では、微細なスクラッチ痕が発生するという欠点があった。スラリー中に砥粒を分散した遊離砥粒を用いる方法も知られているが、仕上げに時間を要するすなわち加工効率が低いことが知られている。
【0003】
近年、表面仕上げ方法において,電界を与えながら加工する方法として、電流を与えて固定砥石の砥粒を固着している金属製ボンド材を溶かすことで、自ら砥石の目立てを行うメカニズムを特徴とするELID研削法(エリッド研削法)も報告されており、その効果としては、砥石の目詰まりを防止し、いつでもフレッシュな切れ刃を砥石に露出させ高精度・高能率研削法として注目されている。
しかし、この方法でも、砥石の砥粒によるスクラッチ痕が靱性試料には残存することが知られ問題となっている。
【0004】
そこで、既存の遊離砥粒を用いた研磨方法が再認識されている。例えば図7に示す方法(装置)は、回転する上下の定盤71,72の対向面にパッド73を取り付け、対向間隔を約6mmとし、この対向間隔に臨ませた厚み2mmの被加工物(ガラス等)74を研磨仕上げしようとするものであって、一応の研磨効果は見られた。尚、図中、75は被加工物を嵌め付け保持する遊星キャリアである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記図7の方法では、遊離砥粒(スラリー)を用いると、研磨定盤によって発生する遠心力で、砥粒が研磨領域から外側へと飛散すること、また加工圧が被加工物(ガラス等)に与えられるため、被加工物の中央部に遊離砥粒(スラリー)が入り込みにくく、試料の外縁部が大きく削られて、被加工物の中央部は、砥粒が流れ込みにくく仕上げ加工には仕上げ時間がかかるという問題が生じていた。このように、加工効率の低い工法であることが知られていた。
そこで、前記従来の問題点を解消でき、優れた研磨効果を実現する新たな装置や加工法の創出が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記実状に鑑み、提案されたものであり、電極板の下面に絶縁性ポリシングパッドを取り付けて上定盤とし、電極板の上面に絶縁性ポリシングパッドを取り付けて下定盤とし、前記構成の各定盤をそれぞれの絶縁性ポリシングパッドを対向させた状態で回転可能とし、前記対向間隔に、回転可能な遊星キャリアに嵌め付けた被加工物を臨ませ、さらに水に砥粒を分散させたスラリーを供給し、前記スラリー中の水が感応するプラス域の低周波で立ち上がりが良好な繰り返し方形波を与えると共に前記各定盤及び遊星キャリアを異なる速度又は逆方向に回転させることにより、被加工物の表裏面を高品位にさらに良好な研磨効率で仕上げることを特徴とする電界下における誘電性砥粒を水に分散させた流体を用いた仕上げ方法に関するものである。
【0007】
また、本発明は、前記仕上げ方法において、絶縁板の下面に導体と絶縁体とを交互に配した電極板を固定し、その下面に絶縁性ポリシングパッドを取り付けて上定盤とし、絶縁板の上面に導体と絶縁体とを交互に配した電極板を固定し、その上面に絶縁性ポリシングパッドを取り付けて下定盤とすることを特徴とする電界下における誘電性砥粒を水に分散させた流体を用いた仕上げ方法をも提案する。
【0008】
さらに、本発明は、電極板の下面に絶縁性ポリシングパッドを取り付けて上定盤とし、電極板の上面に絶縁性ポリシングパッドを取り付けて下定盤とし、前記構成の各定盤をそれぞれの絶縁性ポリシングパッドを対向させた状態で回転可能とし、前記対向間隔に、回転可能な遊星キャリアに嵌め付けた被加工物を臨ませ、さらに水に砥粒を分散させたスラリーを供給する供給機構と、前記スラリー中の水が感応するプラス域の低周波で立ち上がりが良好な繰り返し方形波で、電界印加、無印加間隔の制御を実施できる制御機構と、前記各定盤及び遊星キャリアを異なる速度又は逆方向に回転させる回転機構とを備えることを特徴とする電界下における誘電性砥粒を用いた仕上げ装置をも提案するものである。
尚、また用いる水は砥粒によって変化する場合もあるが、電界を強制的に与えて、被削材が反応しやすいアルカリ性の電解還元水や酸性の酸化水を用いてもよい。
【0009】
また、本発明は、前記仕上げ装置において、絶縁板の下面に導体と絶縁体とを交互に配した電極板を固定し、その下面に絶縁性ポリシングパッドを取り付けて上定盤とし、絶縁板の上面に導体と絶縁体とを交互に配した電極板を固定し、その上面に絶縁性ポリシングパッドを取り付けて下定盤とすることを特徴とする電界下における誘電性砥粒を水に分散させた流体を用いた仕上げ装置をも提案する。
【0010】
さらに、本発明は、前記仕上げ装置において、導体及び絶縁体がそれぞれ同心円状に配されてなることを特徴とする電界砥粒を用いた仕上げ装置をも提案する。
【0011】
また、本発明は、前記仕上げ装置において、導体及び絶縁体を小環状に配したものを、一つの回転面に複数配してなることを特徴とする電界砥粒を用いた仕上げ装置をも提案する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の仕上げ方法では、スラリーに相対速度が与えられ、定盤の回転の遠心力の作用によって容易に排出されようとするが、上下にある電極から誘電泳動力が作用するため、スラリーの飛散を抑えることができる。そのため、ITや医療機器産業に用いられるガラス等の脆性材の仕上げ加工に好適に利用することができる。
【0013】
本発明の仕上げ装置は、メカノケミカル現象による研磨援用効果と砥粒による研磨現象により合理的な研磨効果を得ることができるものであって、また積極的に水に0.1〜5A程度の電流を流し、イオンを積極的に注入した仕上げ方法を実施できるものである。
【0014】
特に、電極板を導体と絶縁体とを交互に配して構成した場合、誘電率の高い水に正の電界が作用すると正の誘電泳動によってプラスの電界を発生する電極端部に集まる吸引力が作用するため、絶縁部面にスラリーが行き渡り、被加工物表面に配置されることで,その結果、被加工物の表裏面を滑らかに仕上ることができ、スラリーの飛散を抑えることができる。
【0015】
さらに、導体及び絶縁体をそれぞれ同心円状に配した場合、電極間距離を短縮することが可能となり電界強度を高く維持できる。
【0016】
また、導体及び絶縁体を小環状に配したものを、一つの回転面に複数配した場合、被研磨材料が回転配置される方向へ砥粒のブラシが形成され、研磨屑が良好に排出されるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の仕上げ方法及び仕上げ装置では、単一の導体で電極板を構成する場合と、導体と絶縁体とを交互に配して電極板とする場合とがある。
まず、単一の導体で電極板を構成する場合には、図1に示すように、電極板11の下面に絶縁性ポリシングパッド13を取り付けて上定盤とした。また、電極板12の上面に絶縁性ポリシングパッド13を取り付けて下定盤とした。そして、各定盤の絶縁性ポリシングパッド13,13を対向させ、この状態で回転可能とした。また、前記対向間隔には、回転可能な遊星キャリア15に嵌め付けた被加工物14を臨ませ、さらに水に砥粒を分散させたスラリー16を供給している。
【0018】
前記既存の遊離砥粒を用いた研磨方法(図7)と比較するため、断面構成は相似しているが、本発明との相違は、定盤に電極板が設けられる点、水が感応するプラス域の低周波で繰り返し方形波の電界を作用させる点、スラリーとして砥粒を水に分散させたスラリーを用いる点が異なるので、以下にこれらの構成について詳細に説明する。
【0019】
前記電極板11,12としては、鋳鉄製の円盤を用いたが、導体であれば特に限定されるものではない。絶縁性ポリシングパッド13は、ポリウレタン製、或いは酸化セリウム等を予め練りこんだ絶縁性ポリシングパッドである。上定盤及び下定盤は、それぞれに異なる速度或いは方向に回転可能な回転機構及び制御機構(図示せず)を備える。遊星キャリア15は、外周に連続する凸部を有し、大径の支持板(図示せず)に複数の遊星キャリア15を支持させ、回転軸に遊星キャリア15の凸部と噛合する凹部を設けて回転可能に構成した。また、この遊星キャリア15には開口部が設けられ、この開口部に被加工物14を保持させた状態で、被加工物14を遊星キャリア15と共に上定盤及び下定盤とは異なる速度或いは方向に回転させることができる。
【0020】
前記スラリー16としては、誘電性砥粒を水に分散させたスラリーを用いる。
本発明の発明者らは、それまでシリコーンオイルに砥粒を分散させた流体を用いて研究してきたが、環境に配慮し、ガラスと親和性の高い水を使用した。また、シリコーンオイルは誘電率が3程度であるが、水は誘電率80と高く、メカノケミカル効果を出すことにより、研磨効率の向上が見込まれた。即ち水と砥粒を混合したスラリーを研磨に用いることで、メカノケミカル現象による研磨援用効果と砥粒による研磨現象により、合理的な研磨効果が得られることが見込まれた。また、砥粒を含んだスラリーは、電界を用いることにより誘電率が高い水に支配され、この水自体で砥粒の飛散を抑えることが見込まれた。そして、スラリーの水に代えてシリコーンオイルを用いた場合には、ガラスと同じ成分Siを含むため、シリコーンオイルのSiがガラスに付着し,砥粒の飛散は抑えられるが、研磨効率が低下する.
誘電性砥粒としては、硬度が被加工物の硬度と同等或いはそれ以上であるか、被加工物とメカノケミカル作用を有するものが用いられる。具体的にはダイアモンドやコランダム、エメリー、ザクロ石、珪石、焼成ドロマイト、溶融アルミナ、人造エメリー、炭化珪素、酸化ジルコニウムなど、或いはメカノケミカル研磨に使用される酸化クロムや酸化珪素、酸化鉄、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、炭化マグネシウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。
【0021】
そして、この図1の仕上げ方法では、前記図7の方法に比べて格段に優れた仕上げ加工を行うことができ、後述する実施例1にて示すように、1.5倍以上の研磨効率の向上効果を得ることができた。
【0022】
しかし、前記図1の方法では、たとえば被加工物の厚みが増加すると、電極間距離もそれに応じて変化し、スラリーに効果的な砥粒配置特性を与えるためには高電圧を供給する必要があった。このような場合、図2及び図3に示すように導体21と絶縁体22とを交互に配して電極板とすればよい。
【0023】
導体と絶縁体とを交互に配して電極板とする場合、図2に示すように絶縁被覆した2本の導線21に絶縁体22を挟み、図3のように円状に巻き付けて電極を構成する。そして、図3に示すように、上定盤31の下面、下定盤32の上面にそれぞれ絶縁層33及び前記構成の電極板を形成し、さらにその外側に絶縁性ポリシングパッド34を取り付けた。そして、各定盤の絶縁性ポリシングパッド34,34を対向させ、この状態で回転可能とした。また、前記対向間隔には、回転可能な遊星キャリア35に嵌め付けた被加工物36を臨ませ、さらに水に誘電性砥粒を分散させたスラリー37を供給している。
各構成については、前記図1の仕上げ装置と同様であり、具体的には絶縁性ポリシングパッド34は前記絶縁性ポリシングパッド13と同様であり、上定盤及び下定盤に回転機構や制御機構を具備させる点も同様であり、遊星キャリア35についても前記遊星キャリア15はと同様である。
【0024】
そして、導体21及び絶縁体22を交互に配して同心円状に配して図4に示す構成としてもよいし、導体21と絶縁体22とを交互に配して小環状に配したものを、一つの大径の回転面に複数(図面では8こ)配して図5に示す構成としてもよい。
【0025】
この仕上げ装置において、電泳動力(クーロン力)を作用させることにより、前記誘電性砥粒を含んだスラリー37は、図示するように研磨加工を要する場所に集まり、砥粒に加工圧を提供しやすく、さらに砥粒が転動するように、相対速度を提供することで、滑らかに仕上ることができる。
【0026】
このように、導体と絶縁体とを交互に配して電極板とする仕上げ装置では、誘電性砥粒を分散したスラリーが電極の絶縁体に集まり、被加工物面に砥粒が供給される。そのため、研磨装置の回転によって生じる遠心力によって通常飛散する砥粒の飛散性が抑制される。すなわち、被加工物に与える砥粒を介する加工圧の供給が容易となること、被加工物とスラリー等によるメカニケミカル反応作用が合わさって、合理的な仕上げ技術が提供できる。
【0027】
尚、これらの電界を供給する導体及び絶縁体の厚みが厚くなるとことや電極面積の幅を広げると、コンデンサー特性が顕著となり、電極面端面における砥粒の作用する電界は漏洩する電界でこれが抑制される。これにより研磨に用いるスラリーの保持が困難となる。よって、電極面積が小さくなるように幅を狭めること、また幅を細くすることで電極面に漏洩する電界が増加する。これらにより砥粒の配置制御が可能となる。
【0028】
水が感応するプラス域の低周波で繰り返し方形波の電界については、図6に示すグラフに表される。水ベースの流体を電界で吸引するための電界は、図示するようにプラスに印可する。但し、マイナスにも印可することでプラス荷電過剰を防止する。
【実施例】
【0029】
前記図1に示す仕上げ装置にて、回転する上下の定盤11,12を電極とし、対向面に厚み2mmの絶縁性ポリシングパッド13,13を取り付け、被加工物14の厚さ2mm、これより対向電極間隔は約6mmとし、該対向間隔に臨ませた被加工物(ガラス)14を研磨仕上げするため、酸化セリウム粒子等の誘電性砥粒を水に分散させたスラリー16を供給すると共に、スラリー16中の水が感応するプラスの低周波繰り返し方形波の電界として、供給電界2.0kV,0.8Hz,オフセット0.5kVの電界供給条件を与えた。
その結果、電界を与えない既存の研磨工法(図7)に比べると、1.5倍程度の研磨効率の向上が見られた。
【0030】
図2及び図3は、導体21と絶縁体22とを交互に配して電極板を構成した実施例であって、導体21及び絶縁体22がそれぞれ同心円状に配されている。尚、図2の斜視図は、絶縁被覆した2つの導体21に絶縁体22を挟み、巻き付けようとするものである。
図3に示した上定盤31は、絶縁層33の下面に、導体21と絶縁体22とを交互に配した電極板を固定し、その下面に絶縁性ポリシングパッド34を取り付けてなる。
また、下定盤32は、絶縁層33の上面に、導体21と絶縁体22とを交互に配した電極板を固定し、その上面に絶縁性ポリシングパッド34を取り付けてなる。
そして、各定盤31,32はそれぞれの絶縁性ポリシングパッド34,34を対向させた状態で回転可能であって、同方向に異なる速度で回転させてもよいし、逆方向に回転させるようにしてもよい。
【0031】
図4は、導体21及び絶縁体22を交互に配して同心円状に配した構成であって、図5も、導体21と絶縁体22とを交互に配して小環状に配したものを、一つの大径の回転面に複数(図面では8こ)配した構成である。
何れの例も、図示する切断面における断面構造は、前記図3に示す断面構造を有しており、前述のように作動させることができる。
【0032】
〔実施例1〕
前記図1の仕上げ装置において、前記対向間隔に供給するスラリー16としては、水に酸化セリウムを20〜30wt%分散させたスラリーを用いた。被加工物14の形状寸法は,40mm角で厚み2mm,材質はBK−7という通常のガラスを用いた。
そして、供給電界としては、波形は繰り返し方形波とし、交流電界強度 プラスに0.1〜2kV/mm、マイナス側は0.025から0.5kV/mm、周波数は0.1〜20Hz、の電界供給条件を与えた。また加工屑の排出性能の向上を考慮して、電界供給時における電界供給時間を設けた。つまり、電界を与えない時間を与えることで、流体の保持時間が少なくなり、加工屑の排他を促進する。
研磨前の表面粗さ、Ra0.25μmというすりガラス状態の被加工物14を、15分研磨後にRa0.010μmまで仕上げた。また、外縁部ばかりでなく中央部も良好に研磨仕上げされることが確認された。
比較として、同条件下における従来の研磨方法(図7)では、研磨前はRa0.26μmが、15分研磨後にRa0.055μmと、仕上がり粗さの改善がとどまっていた。
これらによって、本発明の仕上げ方法は、従来の方法に対し、研磨効果として2倍以上の研磨効果を有していることが確認された。これは、砥粒を含んだスラリーに電界を与えることによって、砥粒が被加工物の中央部に配置され、研磨が進行しているものと推察できる。さらに、研磨後の被加工物の中央部と外縁部との厚みの差が抑制されていることも確認された。これにより、平坦化処理の時間を縮減する効果を有することを実証した。
【0033】
〔実施例2〕
前記実施例1と同様の条件により、研磨仕上げに関する効果を比較した。
前記図3及び図5の仕上げ装置において、対向間隔に供給するスラリー37としては、水に酸化セリウムを20〜30wt%分散させたスラリーを用いた。
そして、供給電界として交流電界2kV,2.0Hz,オフセット0.5kVの電界供給条件を与えた。
その結果、研磨前の表面粗さRa0.3μmというすりガラス状態の被加工物36を、本研磨法にて15分研磨後にRa0.005μmまで仕上げた.
比較として、同条件下における従来の研磨方法では、研磨前はRa0.28μmが15分研磨後にRa0.049μmと、仕上がり粗さの改善がとどまっていた。
外縁部ばかりでなく中央部も充分に研磨仕上げされることが確認された。これは、電界を与えることによって、被加工物の中央部に砥粒が配置され、研磨が進行しているものと推察できる。さらに、研磨後の被加工物の中央部と外縁部との厚みの差が抑制されていることも確認された。このような結果は、研磨屑が良好に排出され易い環境を形成していることによるものと考察される。
【0034】
以上本発明を図面の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りどのようにでも実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第一の態様を示す断面図である。
【図2】本発明の第二の態様における電極板の形成法の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明の第二の態様を示す断面図である。
【図4】本発明の仕上げ装置の一実施例を示す平面図である。
【図5】本発明の仕上げ装置の他の一実施例を示す平面図である。
【図6】本発明における印加電界波形について示す説明図である。
【図7】遊離砥粒を用いた従来の仕上げ装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
11,12 電極板
13 絶縁性ポリシングパッド
14 被加工物
15 遊星キャリア
16 水に誘電性砥粒を分散させたスラリー
21 導体
22 絶縁体
31 上定盤
32 下定盤
33 絶縁層
34 絶縁性ポリシングパッド
35 遊星キャリア
36 被加工物
37 水に誘電性砥粒を分散させたスラリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極板の下面に絶縁性ポリシングパッドを取り付けて上定盤とし、電極板の上面に絶縁性ポリシングパッドを取り付けて下定盤とし、前記構成の各定盤をそれぞれの絶縁性ポリシングパッドを対向させた状態で回転可能とし、前記対向間隔に、回転可能な遊星キャリアに嵌め付けた被加工物を臨ませ、さらに水に砥粒を分散させたスラリーを供給し、前記スラリー中の水が感応するプラス域の低周波で立ち上がりが良好な繰り返し方形波を与えると共に前記各定盤及び遊星キャリアを異なる速度又は逆方向に回転させることにより、被加工物の表裏面を高品位にさらに良好な研磨効率で仕上げることを特徴とする電界下における誘電性砥粒を水に分散させた流体を用いた仕上げ方法。
【請求項2】
絶縁板の下面に導体と絶縁体とを交互に配した電極板を固定し、その下面に絶縁性ポリシングパッドを取り付けて上定盤とし、絶縁板の上面に導体と絶縁体とを交互に配した電極板を固定し、その上面に絶縁性ポリシングパッドを取り付けて下定盤とすることを特徴とする請求項1に記載の電界下における誘電性砥粒を水に分散させた流体を用いた仕上げ方法。
【請求項3】
電極板の下面に絶縁性ポリシングパッドを取り付けて上定盤とし、電極板の上面に絶縁性ポリシングパッドを取り付けて下定盤とし、前記構成の各定盤をそれぞれの絶縁性ポリシングパッドを対向させた状態で回転可能とし、前記対向間隔に、回転可能な遊星キャリアに嵌め付けた被加工物を臨ませ、さらに水に砥粒を分散させたスラリーを供給する供給機構と、前記スラリー中の水が感応するプラス域の低周波で立ち上がりが良好な繰り返し方形波で、電界印加、無印加間隔の制御を実施できる制御機構と、前記各定盤及び遊星キャリアを異なる速度又は逆方向に回転させる回転機構とを備えることを特徴とする電界下における誘電性砥粒を水に分散させた流体を用いた仕上げ装置。
【請求項4】
絶縁板の下面に導体と絶縁体とを交互に配した電極板を固定し、その下面に絶縁性ポリシングパッドを取り付けて上定盤とし、絶縁板の上面に導体と絶縁体とを交互に配した電極板を固定し、その上面に絶縁性ポリシングパッドを取り付けて下定盤とすることを特徴とする請求項3に記載の電界下における誘電性砥粒を水に分散させた流体に誘電性砥粒を用いた仕上げ装置。
【請求項5】
導体及び絶縁体がそれぞれ同心円状に配されてなることを特徴とする請求項4に記載の電界下における誘電性砥粒を水に分散させた流体に誘電性砥粒を用いた仕上げ装置。
【請求項6】
導体及び絶縁体を小環状に配したものを、一つの回転面に複数配してなることを特徴とする請求項4に電界下における誘電性砥粒を水に分散させた流体を用いた仕上げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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