説明

電界放出型ランプの駆動装置

【課題】簡素な回路構成で電界放出型ランプを一定電力で駆動し、回路部品の増大による装置の大型化やコスト上昇を回避する。
【解決手段】電力制御回路部20において、コンパレータCPの反転入力端子(−端子)に基準電圧Vrを印加する一方、非反転入力端子(+端子)に、入力電圧Vinを比較用として入力するための抵抗R1を接続すると共に、ランプLのカソード電極を接続し、更に抵抗R2を介して接地する。そして、コンパレータCPの反転入力端子(−端子)に印加される基準電圧Vrと非反転入力端子(+端子)に印加される電圧(抵抗R2の両端電圧)とを比較して、コンパレータCPの出力で制御素子Qの導通を制御し、ゲート電圧安定化回路部10を介したランプLのゲート電圧制御を行うと共に、ランプ電圧Vaの変動に対してランプLを一定電力で駆動する定電力制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出源から電界放出された電子により蛍光体を励起発光させる電界放出型ランプの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、白熱電球や蛍光灯といった従来のランプに対し、電界放出型のランプが開発されている。この種のランプは、真空容器内で、電子放出源を有するカソード電極に対して正の電圧を与えて電子を電界放出させ、放出させた電子をアノード電極上の蛍光体に衝突させて蛍光発光させるものであり、カソード電極とアノード電極との間に設けたゲート電極の電圧を適正に制御することで、低消費電力でありながら、高輝度の発光を得ることができる。
【0003】
このような電界放出型ランプを駆動するには、スイッチング電源等による高圧の直流電圧が必要であり、例えば、特許文献1には、スイッチングされた入力電圧を昇圧する昇圧トランスの有する浮遊静電容量を利用した共振回路を用い、この共振回路の共振条件にスイッチング信号のオン/オフタイミングをマッチングさせることで、電源回路の構成部品による損失を排除して電圧変換効率を高めるとともに、全体の回路構成を単純化して小型コンパクト化及び低コスト化を図ることのできる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−238414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電界放出型ランプには、電子放出源や蛍光体の特性バラツキ、電極間距離の製造上のバラツキ、経年変化等に起因するランプ特性のバラツキが存在することは避けられず、最適な駆動条件がランプ毎に異なるという問題がある。このため、電界放出型ランプを一定の電力で駆動しようとすると、駆動装置の回路構成が複雑化して回路部品が増大し、駆動装置全体の大型化、コスト上昇を招いてしまう。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、簡素な回路構成で電界放出型ランプを一定電力で駆動することができ、回路部品の増大による装置の大型化やコスト上昇を回避することのできる電界放出型ランプの駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による電界放出型ランプの駆動装置は、真空容器の内部に電子放出源を有するカソード電極と蛍光体を有するアノード電極とを所定間隔で配置し、前記カソード電極と前記アノード電極との間にゲート電極を配置した3極構造を有する電界放出型ランプの駆動装置であって、前記電界放出型ランプのゲート電極に、安定化したゲート電圧を印加するゲート電圧安定化回路部と、前記アノード電極に印加されるランプ電圧に比例する電圧と、前記カソード電極に流れるランプ電流に比例する電圧との和が一定の基準電圧となるよう、前記ゲート電圧安定化回路部から印加される前記ゲート電圧を制御し、前記電界放出型ランプを一定電力で駆動する電力制御回路部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡素な回路構成で電界放出型ランプを一定電力で駆動することができ、回路部品の増大による装置の大型化やコスト上昇を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ランプ駆動装置の回路ブロック図
【図2】電力制御回路部の構成図
【図3】ランプ電力とランプ電圧との関係を示す説明図
【図4】電力制御回路部の他の構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
先ず、本発明の実施の第1形態について説明する。図1において、符号1は、電界放出型ランプLを駆動するランプ駆動装置1であり、電界放出型ランプLは、真空中で電子放出源から電界放出させた電子を高速で蛍光体に衝突させることで蛍光体を励起発光させる周知の冷陰極電界放出型発光装置である。以下では、電界放出型ランプLを、単に「ランプL」と記載する。
【0011】
ランプ駆動装置1は、真空容器の内部に電子放出源を有するカソード電極と蛍光体を有するアノード電極とを所定間隔で配置し、カソード電極とアノード電極との間にゲート電極を配置した3極構造のランプを駆動対象としている。このため、ランプ駆動装置1は、入力電圧VGinから所定の直流高電圧を生成し、安定化したゲート電圧VgをランプLのゲート電極Gに印加するゲート電圧安定化回路部10と、ゲート電圧安定化回路部10を介して印加されるランプLのゲート電圧を制御し、ランプLを一定電力で駆動する電力制御回路部20とを主要部として構成されている。
【0012】
具体的には、ランプLのゲート電極Gは、ゲート電圧安定化回路部10の出力端に接続されると共に、抵抗Rg1,Rg2を介してグランドGNDに接続(接地)されている。抵抗Rg1,Rg2の接続部は、ランプLのゲート電極Gに印加される電圧を制御するため、ゲート電圧安定化回路部10に接続され、抵抗Rg1の両端電圧が検出されてゲート電圧安定化回路部10に入力される。また、抵抗Rg2とグランドGNDとの間には、電界効果トランジスタ(FET)等からなる制御素子Qが並列に介装され、この制御素子Qの導通が電力制御回路部20によって制御される。
【0013】
尚、ランプLのアノード電極Aには、図示しない電源回路からゲート電圧Vgよりも高圧のアノード電圧(ランプ電圧)Vaが印加される。
【0014】
図2に示すように、電力制御回路部20は、制御素子Qを駆動制御するコンパレータ(比較回路)CPを主要として構成されている。詳細には、コンパレータCPの出力側は、制御素子Qの制御入力端子に接続されると共に、抵抗R3を介して入力電圧Vin側に接続されている。また、コンパレータCPの入力側は、反転入力端子(−端子)に、外部の入力電圧Vinから抵抗R4とダイオードDとにより生成される基準電圧Vrが印加される一方、非反転入力端子(+端子)に、入力電圧Vinを比較用として入力するための第1の抵抗としての抵抗R1が接続されると共に、ランプLのカソード電極が接続され、更に第2の抵抗としての抵抗R2を介して接地されている。
【0015】
尚、電力制御回路部20への入力電圧Vinは、ランプ電圧Vaに基づく電圧であり、ランプ電圧Vaに比例する電圧である。このようなランプ電圧に比例する電圧は、例えば、高圧のランプ電圧を生成する電源回路内のトランスや倍電圧整流回路等を利用して生成することができる。
【0016】
このような構成を有する電力制御回路部20は、コンパレータCPの反転入力端子(−端子)に印加される基準電圧Vrと、非反転入力端子(+端子)に印加される電圧(抵抗R2の両端電圧)とを比較して制御素子Qを制御し、ゲート電圧安定化回路部10を介したランプLのゲート電圧制御を行うと共に、ランプ電圧Vaの変動に対してランプLを一定電力で駆動する定電力制御を行う。
【0017】
先ず、ランプLのゲート電圧制御について説明する。制御素子QのインピーダンスをZとすると、ランプLのゲート電極GとグランドGNDとの間の合成抵抗Rは、以下の(1)式で与えられる。従って、合成抵抗R(Rg1,Rg2,Z)を流れる電流をIgとすると、ランプLのゲート電圧Vgは、以下の(2)式で与えられる。
R=Rg1+(Rg2×Z)/(Rg2+Z) …(1)
Vg=(Rg1+(Rg2×Z)/(Rg2+Z))×Ig …(2)
【0018】
このため、ゲート電圧安定化回路部10により、ゲート電極Gに接続される抵抗Rg1の両端電圧VRg1が一定値となるように制御すれば、電流Ig(=VRg1/Rg1)が一定値となり、コンパレータCPで制御素子Qの導通を制御してインピーダンスZを可変することにより、ランプLのゲート電圧Vgを制御することができる。
【0019】
詳細には、ランプ電圧Vaが一定の場合、ゲート電圧Vgが上昇すると、カソード電極KからコンパレータCPの非反転入力端子(+端子)側の抵抗R2を経てグランドGNDに流れる電流(ランプ電流)Ikが増加し、抵抗R2の両端電圧が上昇する。この抵抗R2の両端電圧が基準電圧Vrを超えると、コンパレータCPの出力がハイレベルとなり、制御素子QがON(導通)方向に制御されてインピーダンスZが減少する。
【0020】
その結果、(2)式から分かるようにランプLのゲート電圧Vgが低下し、ゲート電圧Vgの低下に伴ってランプ電流Ikが減少する。すなわち、ランプ電圧Vaが一定の場合、抵抗R2の両端電圧が基準電圧Vrと等しくなるようにゲート電圧Vgを制御し、ランプ電流Ikを制御することになる。
【0021】
一方、ランプ電圧Vaが変動した場合には、電力制御回路部20は、ランプ電流Ikの変動による抵抗R2の両端電圧の変動を検出し、抵抗R2の両端電圧が基準電圧Vrと等しくなるようにゲート電圧を制御することで、ランプLの電力が一定となるように制御する。すなわち、電力制御回路部20への入力電圧Vin(ランプ電圧Vaに比例する電圧)を、以下の(3)式の条件を満足するように設定すると、この条件下で抵抗R1,R2を流れる電流Iinは、(4)式で表すことができる。
Vin>>Vr …(3)
Iin≒K1×Va …(4)
但し、K1:係数
【0022】
従って、ランプ電力Pは、P=Va×Ikであることから、(4)式の関係を用いて以下の(5)式でランプ電力Pを近似的に求めることができる。
P=Va×Ik
≒K2×Iin×Ik …(5)
但し、K2:係数
【0023】
ここで、抵抗R2の両端電圧V2は、以下の(6)式に示すように、ランプ電圧Vaに比例する電圧からの電流Iinと、ランプ電流Ikとの和から求めることができる。
V2=R2×(Iin+Ik) …(6)
【0024】
従って、V2=Vrとするとき、(5)式のランプ電力Pは、以下の(7)式で表現することができる。
P≒K2×(K1×Va×Vr/R2−K12×Va2) …(7)
【0025】
図3は、(7)式によるランプ電圧Vaとランプ電力Pとの関係を示しており、Iin=Ikのとき(R2×Iin=R2×Ik=0.5Vrのとき)、ランプ電力Pが100%となる。従って、コンパレータCPの非反転入力である電圧V2(=R2×(Iin+Ik))が反転入力である一定の基準電圧Vrと等しくなるように、制御素子Qを介してランプLのゲート電圧を制御することにより、ランプ電圧Vaが変動してもランプLを一定の電力で駆動することが可能となる。
【0026】
以上の電力制御回路部20は、コンパレータCPにおいて基準電圧Vrと比較する比較用電圧V2を2本の抵抗R1,R2を用いて生成しており、部品点数の少ない簡素な回路構成で耐ノイズ性の高い定電力駆動を実現することができるが、ランプ電圧Vaに比例する電圧である入力電圧Vinからランプ電流Ikと等しい電流Iinを流すため、回路の消費電力が若干増加する。
【0027】
このため、電力制御回路部20は、図4に示すような回路構成としても良い。すなわち、抵抗R1と抵抗R2との間に、第3の抵抗としての抵抗R12を追加し、抵抗R1と抵抗R12との接続点をコンパレータCPの非反転入力端子(+端子)に接続することで、抵抗R12の両端電圧と抵抗R2の両端電圧との和と基準電圧Vrとを比較し、制御素子Qを介してランプLのゲート電圧を制御する。
【0028】
詳細には、入力電圧Vinにより抵抗R1及び抵抗R12を介して抵抗R2に流れる電流をIin'、抵抗R12の両端電圧をV12、抵抗R2の両端電圧をV2とすると、以下の(8)〜(10)式の条件を満足するように、抵抗R1,R12,R2を設定する。
Vin>>V12+V2 …(8)
Va>>V2 …(9)
Ik>>Iin' …(10)
【0029】
(8)〜(10)式の条件下では、抵抗R2の両端電圧V2はランプ電流Ikにほぼ比例し、また、抵抗R12の両端電圧V12は入力電圧Vinにほぼ比例する。このため、抵抗R12の両端電圧V12は、ランプ電圧Vaを用いて以下の(11),(12)式のように近似することができる。
V2 ≒R2×Ik …(11)
V12≒K3×Va …(12)
但し、K3:係数
【0030】
ここで、電圧(V12+V2)が基準電圧Vrと等しくなるように(V12+V2=Vr)、制御素子Qを介してランプLのゲート電圧を制御するとき、ランプ電力Pは、以下の(13)式で表現することができる。
P≒(Vr×Va−K3×Va2)/R2 …(13)
【0031】
(13)式によるランプ電圧Vaとランプ電力Pとの関係は、前述の図3と同様であり、V12=V2のとき(V12=V2=0.5Vrのとき)、ランプ電力Pは100%となる。図4の回路構成においては、コンパレータCPの非反転入力である電圧(V12+V2)が反転入力である一定の基準電圧Vrと等しくなるように制御素子Qを介してランプLのゲート電圧を制御するため、入力電圧Vinからの電流Iin'をランプ電流Ikよりも大幅に小さくすることができ、回路の消費電力を低減しつつ、ランプLを一定の電力で駆動することが可能となる。
【0032】
このように本実施の形態においては、コンパレータCPの比較入力側に設けた数本の抵抗(抵抗R1,R2、或いは抵抗R1,R12,R2)による簡素な回路構成で、ランプ電圧に比例する電圧とランプ電流に比例する電圧との和が一定の基準電圧となるようゲート電圧を制御してランプLを低電力駆動することができ、回路部品の増大による装置の大型化やコスト上昇を回避して、小型、安価な駆動装置を実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0033】
1 ランプ駆動装置
10 ゲート電圧安定化回路部
20 電力制御回路部
CP コンパレータ(比較回路)
R1 抵抗(第1の抵抗)
R2 抵抗(第2の抵抗)
R12 抵抗(第3の抵抗)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器の内部に電子放出源を有するカソード電極と蛍光体を有するアノード電極とを所定間隔で配置し、前記カソード電極と前記アノード電極との間にゲート電極を配置した3極構造を有する電界放出型ランプの駆動装置であって、
前記電界放出型ランプのゲート電極に、安定化したゲート電圧を印加するゲート電圧安定化回路部と、
前記アノード電極に印加されるランプ電圧に比例する電圧と、前記カソード電極に流れるランプ電流に比例する電圧との和が一定の基準電圧となるよう、前記ゲート電圧安定化回路部から印加される前記ゲート電圧を制御し、前記電界放出型ランプを一定電力で駆動する電力制御回路部と
を備えたことを特徴とする電界放出型ランプの駆動装置。
【請求項2】
前記電力制御回路部は、
前記ランプ電圧が一定の電圧であるとき、前記ランプ電圧に比例する電圧と前記ランプ電流に比例する電圧とが等しくなるよう、前記ゲ−ト電圧を制御することを特徴とする請求項1記載の電界放出型ランプの駆動装置。
【請求項3】
前記電力制御回路部は、
前記ランプ電圧に比例する電圧から第1の抵抗を介して第1の電流を流すと共に、前記ランプ電流と前記第1の抵抗を経由した前記第1の電流とを第2の抵抗を介してグランドへ流す回路と、
前記第2の抵抗の両端電圧と前記基準電圧とを比較する比較回路とを備え、
前記比較回路の出力により、前記第2の抵抗の両端電圧が前記基準電圧と等しくなるよう前記ゲ−ト電圧を制御することを特徴とする請求項1又は2記載の電界放出型ランプの駆動装置。
【請求項4】
前記電力制御回路部は、
前記ランプ電圧に比例する電圧から第1の抵抗を介して第2の抵抗へ第1の電流を流すと共に、前記ランプ電流と前記第1の抵抗及び前記第2の抵抗を経由した前記第1の電流とを第3の抵抗を介してグランドへ流す回路と、
前記第2の抵抗の両端電圧と前記第3の抵抗の両端電圧との和を前記基準電圧と比較する比較回路とを備え、
前記比較回路の出力により、前記第2の抵抗の両端電圧と前記第3の抵抗の両端電圧との和が前記基準電圧と等しくなるよう前記ゲ−ト電圧を制御することを特徴とする請求項1又は2記載の電界放出型ランプの駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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