説明

電界放出型電子源装置と製造方法

【課題】電界放出型電子源装置におけるトリミング電極と電子源アレイを含む半導体基板を高精度に位置決め接合することができる電界放出型電子源装置およびその製造方法を提供する
【解決手段】複数の電子源セルと前記電子源セルの外周部に設けた複数の回折格子とからなる半導体基板と、前記電子源セルから放出された電子ビームを受ける光電変換膜と、前記電子源セルと前記光電変換膜との間に配置された前記電子ビームを通過させるための貫通孔と前記複数の回折格子の位置に合わせるように設けられた複数の位置決め貫通孔とを有するトリミング電極と、を備えた電界放出型電子源装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界放出型電子源を用いた電界放出型電子源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電界放出型電子源を用いた電界放出型電子源装置において、電子ビームの広がりを抑えた高精細な電界放出型電子源装置の一例を図8に示す。従来の電界放出型電子源装置は、光透過性のガラス部材からなる前面パネル1と、背面パネル2と、側面外囲器3とで構成された真空容器を備える。側面外囲器3と背面パネル2は、例えば高温焼成用のフリットガラス真空封着材4により固着される。一方、側面外囲器3と前面パネル1は、例えば低温封着用にインジウム(In)などの真空封着材5により封着され、真空容器内は真空状態に保たれている。
【0003】
背面パネル2の内面上には、電子源アレイ7が形成された半導体基板8が設置されている。半導体基板8上には、スペーサ部9を備えるトリミング電極10が設置固定されている。前面パネル2のトリミング電極10に対向する内面上には、光透過性の陽極電極11とターゲットと12が形成されている。ターゲット25は、電子源アレイ7から放出された電子の一部を受け取り所定の有益な動作を行う層であり、例えば蛍光体層または、光電変換膜である。
【0004】
前面パネル1、背面パネル2、側面外周器3には、余分なガスを吸着することにより内部を高真空状態に保持するためのゲッターポンプが設置されている(図示せず)。
【0005】
トリミング電極10は、複数の貫通孔13が形成され、貫通孔13は、電子源アレイ7側の面に開口が形成され、この開口からトリミング電極10の厚さ方向に連続した電子ビーム通過行路を備えている。この電子ビーム通過行路の長さは、開口の径より十分に大きいものである。
【0006】
電子源アレイ7から放出された電子ビームのうち、電子ビーム通過行路の延設方向(貫通孔の孔方向)に対して大きな角度をなす方向に進行する電子ビームを電子ビーム通過行路の側壁に衝突させて吸収し除去することができる。このようなトリミング作用により、指定セルからほぼ鉛直方向に放出された電子ビームのみがトリミング電極を通過し、トリミング電極からほぼ鉛直方向に進行してターゲットに到達する。したがって、ターゲット上での電子ビームの広がりは縮小され、より高解像度の画像表示装置あるいは撮像装置を得ることができる。
【0007】
この従来の技術の好ましい形態によれば、複数の電子源からなるひとつの電子源セルの中心軸と、トリミング電極のひとつの貫通孔の開口の中心軸とを一致させることで、ターゲットに到達する電子ビーム量が最大とすることができる。これにより、ターゲットに蛍光体を備えた電界放出型電子源表示装置において輝度を増加させることができ、ターゲットに光電変換膜を備えた電界放出型電子源撮像装置においては、ターゲットに到達する電子ビーム量を十分に確保できるために残像を少なくすることができる。
【0008】
トリミング電極と半導体基板の位置合わせ(アライメント)に適応される技術として、貫通孔を用いたものがある(たとえば特許文献1参照)。図9は、特許文献1に示される電気光学装置の断面図を示す。素子基板26には受光素子27が設置され、筐体28の前記受光素子27の位置に合うように光透過部29が配置される。筐体28の外部に設けられた光源からの光が光透過部29に照射される。筐体28の光透過部29が素子基板26の受光素子27の位置と一致している場合に受光素子27には最大光量の光が入射する。この光量を受光回路、位置ズレ判定回路(いずれも図示せず)を用いて位置ズレ量を判定するものである。
【0009】
先の従来の技術に示したトリミング電極を用いた電界放出型電子源装置では、トリミング電極の開口の大きさに対して非常に長い電子ビーム通過行路を用いる、所謂、高アスペクトの貫通孔が採用されている。このような高アスペクトの貫通孔を介してアライメントする場合、貫通孔を通過した十分な光量が確保できず、受光素子等による検出が難しいという問題がある。十分な光量を得る手段として、光源に直進性の高い短波長レーザー光を用いることができるが、電子源アレイ表面に対し斜めにレーザー光を入射させた場合、前記アライメント用の貫通孔へレーザー光を反射するためには、半導体基板に適当な角度の反射平面を形成する必要があるが、半導体基板に半導体の微細加工プロセスによってそのような傾斜面を形成することは困難である。
【特許文献1】特開2006−78623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記従来の構成では、貫通孔を通過した光を受光素子で受光することにより位置決めをしている。ところが、貫通孔の長さがその直径に比べて非常に大きいため貫通孔を通過する反射光は貫通孔の内壁に吸収され受光素子には十分な光量が届かない。そのため、貫通孔からの反射光を利用してトリミング電極と電子源アレイとを精度よく位置合わせすることが困難であるという課題を有していた。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、電界放出型電子源装置におけるトリミング電極と電子源アレイを含む半導体基板を高精度に位置決め接合することができる電界放出型電子源装置およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電界放出型電子源装置と製造方法は、複数の電子源セルと前記電子源セルの外周部に設けた複数の回折格子とからなる半導体基板と、前記電子源セルから放出された電子ビームを受ける光電変換膜と、前記電子源セルと前記光電変換膜との間に配置された前記電子ビームを通過させるための貫通孔と前記複数の回折格子の位置に合わせるように設けられた複数の位置決め貫通孔とを有するトリミング電極とを備えたことを特徴としたものである。
【0013】
さらに、本発明の電界放出型電子源装置と製造方法は、請求項1に記載の電界放出型電子源装置の前記回折格子にレーザー光を照射するレーザー光照射工程と、前記回折格子からの回折反射光を前記トリミング電極の前記位置決め貫通孔を通し光検出器に入射する第一の位置決め工程と、前記光検出器にて前記回折反射光の量を検出する回折反射光検出工程と、前記回折反射光の量が最大となるように位置合わせをする第二の位置決め工程と、を備えることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電界放出型電子源装置によれば、トリミング電極と電子源アレイを精度よく位置合わせすることができ、電界放出型撮像装置においては、光電変換膜に到達する電子ビームの広がりを抑えた高精細な解像度を得ることができ、また光電変換膜に到達する電子ビーム量を十分に確保でき、残像等による画像品質の劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1に、本発明の実施の形態1における電界放出型電子源装置の断面図を示す。電界放出型電子源装置は、光透過性のガラス部材からなる前面パネル1と、背面パネル2と、側面外囲器3とで構成された真空容器を備える。側面外囲器3と背面パネル2は、例えば高温焼成用のフリットガラス真空封着材4により固着される。一方、側面外囲器3と前面パネル1は、インジウム(In)などの低温封着用真空封着材5およびそれを保持する金属枠6により封着され真空容器を構成している。背面パネル2の内面上には、電子源アレイ7が形成された半導体基板8が配置される。半導体基板8上には、スペーサ部9を備えるトリミング電極10が設置固定される。前面パネル1の電子源アレイ7に対向する内面には、光透過性の陽極電極11と光電変換膜12が形成される。また、前面パネル1、背面パネル2、側面外周器3で構成される真空容器内部には、余分なガスを吸着するゲッターポンプが設置され(図示せず)、真空容器内部を高真空状態に保持されている。
【0017】
半導体基板8の電子源アレイ7は、それぞれが独立して駆動される電子源セルが縦横のマトリクス上に配置される。さらに電子源アレイ7の外周部の半導体基板8上には、複数の回折格子13が配置される。
【0018】
トリミング電極10には、電子ビームを通過させるための複数の貫通孔14が配置され、貫通孔14は、トリミング電極10の厚さ方向に連続した電子ビーム通過行路を備え、その長さは、開口の径より十分に大きいものである。貫通孔14は、半導体基板8の電子源アレイ7のひとつひとつの電子源セルに対応するように同じように配列されている。さらに、トリミング電極10の貫通孔14の外周部には、回折格子13が配置される。電子源アレイ7の個々の電子源セルとトリミング電極10の貫通孔14の位置が一致したときに、位置決め貫通孔15の位置が回折格子13の位置に合致するように配置されている。
【0019】
次に、半導体基板およびトリミング電極の製作方法について説明する。半導体基板8はシリコン(Si)からなり、電子源アレイ7および回折格子13は、LSIなどの半導体デバイス製造で使用される微細加工技術を用いて製作される。加工基板上にホトリソグラフィを用いて微細なレジストパターンを作成し、その後エッチング法により形状加工をおこなう。この方法により、電子源アレイ7および回折格子13は、サブミクロンの加工精度で作成できる。トリミング電極10はシリコンからなり、位置決め貫通孔15や電子ビームを通過させる貫通孔14は、同様な微細加工技術を用いて製作出来る。この位置決め貫通孔15と貫通孔14も、サブミクロン精度の位置精度で作成できる。この結果、位置合わせ用貫通孔15と回折格子13の位置が一致する場合、電子源アレイ7の各電子源セルとトリミング電極10の貫通孔14のそれぞれの相対位置もサブミクロン以下の精度で一致させることができる。トリミング電極10のスペーサ部9の端面と半導体基板8は、金属部材で接合されている。
【0020】
図2に、半導体基板8の上面図を示す。半導体基板8の中央部に電子源アレイ7が形成され、電子源アレイ7の外周部に回折格子13が配置される。回折格子のうち2つ(図2では右上、左上の回折格子)は、その回折格子の格子方向が横に配置され、もうひとつの回折格子(図2では右下の回折格子)の格子方向は縦に配置されている。
【0021】
本実施の形態1で用いた主要な構成要素の代表的な寸法等は、以下に示す通りとする。電子源アレイは、1インチ型の撮像デバイスに対応するものであって、その解像度はVGA仕様(水平方向640ドットx垂直方向480ドット)のものを用いた。ひとつの画素に相当する電子源セルの大きさは、縦横いずれも約20μm角となり、その配列ピッチは20μmである。電子源アレイの外形サイズは、横方向12.8mm、縦方向9.6mmである。対向して配置される電子源アレイとトリミング電極の貫通孔までの距離は100μmとして設計した。電子ビームを通過させる貫通孔の大きさは、15μmの略四角形状をしており、その配列ピッチは20μm、貫通孔の高さは100μmとなる。位置決め貫通孔の大きさは、今回15μmの略四角形状、貫通孔の高さは100μmとして設計を行った。回折格子13は、外形サイズが15μm角の領域に、凸部の幅が0.5μm、凹部の幅が0.5μmからなるラインとスペースからなり、凹部の深さ約0.8μmとした。また、トリミング電極の位置決め貫通孔の内面には、レーザ光に対する反射率を向上させるために、アルミニウムなどの金属膜がメッキ等により形成されている。回折格子の凸部表面には、同じ理由によりアルミニウムなどの金属薄膜やプラチナカーボンなどの高反射多層膜を蒸着形成される。
【0022】
図3はトリミング電極と半導体基板とを位置合わせする際の構造断面図を示す。接合材には、金属材料を用いる。その理由としては、本発明の電界放出型電子源アレイおよびトリミング電極は真空容器内で使用されるため、ガスを放出し易い有機成分を含む接着剤の使用が困難であることから、ガスを放出し難い金属材料を選択した。一方、金属材料を用いた接合方法では、常温での加圧接合法ではその接合信頼性が十分ではないため、接合圧力を高く設定する必要がある。本実施の形態1では、金属材を120℃まで加熱した状態で圧接する熱圧着法を用いた。トリミング電極10のスペーサ部9の端面に、半導体基板8との接合を行うための金属部材16が形成され、金属部材16に対面する半導体基板8の上面には、金属バンプ17が形成される。本実施形態1では、金属バンプ17および金属部材16の材質として、加工制御に優れ、かつ表面酸化が無い安定な金(Au)を採用した。他にも、常温近傍で十分な塑性変形が可能な軟質金属材料として、インジウム(In)を用いることもできる。金属バンプ17は、汎用性の高いスタッドバンプを用いた。バンプの大きさは、約60μmφ、バンプの高さは約40μmとし、スタッドバンプの先端部は半導体基板の上面と略平行になるように平坦化(フラットニング)処理を施したものを用いた。金属材料16は、厚み約15μmで大きさ80um角の略正方形のパッド形状とし、メタルマスクを用いたマスク蒸着法でパターンニング形成したものを用いた。
【0023】
次にトリミング電極10と半導体基板8との相対的な位置決め方法について説明する。トリミング電極10と半導体基板8との位置決めを行う際に、回折格子13に対し、所定の角度を持って入射するレーザー光18を照射する。このレーザー光18に対する照射面の大きさは、回折格子13全体を包含するような大きさに設定することが望ましい。レーザー光18として、汎用性の高いHe―Neレーザー(波長が633nm、パワーが0.5W)を用いた。回折格子13に、レーザー光18のように波長が一定の光が入射すると、その回折反射光は、レーザー光18の入射角に対して、ある一定の方向に強い反射強度を持つことが知られている。回折格子13が形成された半導体基板8の法線方向にレーザー光18の反射光を得るレーザー光の入射角θは(数1)で示される。dは回折格子のピッチ、mは整数、λはレーザー光の波長、レーザー光のθは入射角である。
【0024】
【数1】

【0025】
(数1)を用いて、回折格子13の格子ピッチdを1μm、レーザー光の波長λを633nmとし、また、最も強い反射光量が得られる条件としてm=1を採用し、レーザー光入射角θとして39.27°の値が得られる。
【0026】
なお、回折格子13の格子ピッチdは、(数1)を変形しdについて表すと(数2)となる。
【0027】
【数2】

【0028】
上記構成において、回折格子13にレーザー光18を照射すると、回折格子13の法線方向に強い光強度の回折反射光が反射される。回折反射光は、トリミング電極10と半導体基板8の位置決めの際、半導体基板8の位置決め基準となるマーカーとして用いることができる。トリミング電極10の位置決め貫通孔15を通して、回折反射光の光量を検出することにより、回折格子13と位置決め貫通孔15の位置を合わせることができる。
【0029】
従来のような回折格子を用いない拡散反射面(例えば、アルミニウムなどの金属薄膜を形成し、表面をエッチング溶液あるいは気体を用いて粗らしたもの)を基準マーカーとしてレーザー光などの外部光線を照射した場合、入射角と同じ角度で入射光の反対側へ反射する(正反射する)光成分が最も強く、半導体基板の上面方向には十分な光量が得ることができない。また、位置決め貫通孔の長さがその開孔の直径に比べて非常に大きい場合、位置決め貫通孔を通過する反射光は直進成分が少ないため、貫通孔の内壁に吸収されることにより更に反射光強度が低下してしまう。そのため、貫通孔からの反射光を利用してトリミング電極と電子源アレイとを精度よく位置合わせすることが困難であった。
【0030】
本実施の形態1によれば、半導体基板の上面に法線方向に大きな光量をもつ光を得ることができるため、トリミング電極上方より位置決め貫通孔を介して回折格子の位置を検知すうことができるため、従来に比べ大幅に精度よく位置決めすることが可能となる。
【0031】
また、図2に示したように、その格子方向が互いに直角である2つの回折格子を用いることにより、それぞれの格子方向に直角方向の位置決めによる縦横方向の位置決めを行うことができる。さらにその格子方向が同じである2つの回折格子を用いることにより、回転方向(図2では紙面の法線を回転軸とする回転方向)の位置決めをすることが可能となる。
【0032】
(実施の形態2)
図4に本実施の形態に示す電界放出型電子源装置の製作工程の概略フローを示す。図4(a)は、背面パネル2に側面外囲器3を予めフリットガラス4で固着したパネル構造体と半導体基板8を組立てる工程、図4(b)は、半導体基板8にトリミング電極10を取り付ける工程、図4(c)は、インジウム5が装着された金属枠6を介して前面パネル1を側面外囲器3の端部に封着する工程、図4(d)はその完成状態の電界放出型電子源装置を示す。ここでは説明を省いたが、図4(a)と図4(b)の間では、電子源アレイ7にそれぞれ所望の電圧を供給するために設けられた半導体基板8上の配線パターンと背面パネル2上に形成された配線パターンとをワイヤーボンディング等により電気的に接続する工程がある。また、図4(c)では、真空容器内を真空にするための加熱工程および排気工程さらにゲッターポンプを活性化させるゲッターフラッシュ工程がある(いずれも図示せず)。
【0033】
次に、図5を用いて、先の図4(b)に示した半導体基板8にトリミング電極10を取り付ける工程について具体的に説明する。半導体基板8は、側面外囲器3が固着された状態の背面パネル2上に固着された状態で、下側固定治具19に真空吸着あるいは機械的な保持機構によって固定される。一方、トリミング電極10は、前記下側固定治具治具19と相対的な位置出しが可能なステージ機構(図示せず)に取り付けられた上側固定治具20に真空吸着によって固定される。このステージ機構は、上側固定治具20を下側固定治具19に対して、X,Y,Z、θの4軸について、サブミクロンの送り精度で調整できる機能を有するものである。ここでトリミング電極10を上側固定治具20に真空吸着によって固定し、機械的な保持機構を用いない理由は、トリミング電極10と半導体基板8を接合後、上側固定治具20、下側固定治具19から各部材を開放する際、機械的な保持機構では機械的な力により位置ずれを生じる可能性があるためである。機械的な力が生じにくい真空吸着法を用いることがより望ましい。
【0034】
上側固定治具20には、トリミング電極10上面の平坦部に対応する位置に真空吸着用開口21が形成され、真空ポンプなどと接続された真空配管が装着される(図示せず)。また、トリミング電極10と接する真空吸着用開口21の周囲部は、トリミング電極が変形、破損しないように十分な平面度に加工処理されている。さらに、トリミング電極10の位置決め貫通孔15に対向する位置には光検出器22が設置された検出ユニットが配置される。この光検出器22は、位置決め貫通孔15を通過した光を漏れなく検出することが望ましく、位置決め貫通孔15の開孔の全領域をカバーする大きさ持ち、所望の位置に配置される。
【0035】
次に、半導体基板8にトリミング電極10の位置合せの具体的な手順を説明する。実施の形態1と同様に、レーザー光源23からのレーザー光18を半導体基板10の回折格子13へ所定の角度(ここでは39.27°)で照射する。照射されたレーザー光18は、回折格子13で回折して回折格子13の格子方向にレーザー光が反射する。このレーザー光18のスポットサイズは、回折格子13全体を照射できるような大きさにすることが望ましい。
【0036】
まず、ステージ移動などの機械的な位置合わせ工程を用いて、トリミング電極10を固定した上側固定治具20を移動させる(粗合わせ)。その際に、回折格子から反射した回折反射光を位置決め貫通孔15を通して光検出器22で受光可能であることを確認する(粗調整)。次に、回折反射光の光量を光検出器22にて検出し、光検出器22の検出光量が最大となるよう上側固定治具20を移動させる(微調整)。この際、トリミング電極10と半導体基板8との相対的な位置ずれ量(横軸)と検出光量(縦軸)との関係は、本実施形態の例では図6に示すような関係がある。光検出器22の検出光量は、回折格子13と位置決め貫通孔15の位置が完全に一致したとき最大となることから、この検出光量が最大となるように上側固定治具20を移動させて位置決めを行うことで所望の位置合わせ精度を実現することができる。
【0037】
更に、検出光量が最大となるよう位置を保ちながら、上側固定治具20を下側固定治具19に近接・接触させ、金属バンプ17および金属部材16が金属接合状態になるための条件で圧力を加える。その後、上側固定治具20の真空吸着機能を解除し、上側固定治具20からトリミング電極10を開放し、半導体基板8へのトリミング電極10の取り付けが完了する。
【0038】
このように、光検出器22が上側固定治具20の位置決め貫通孔15の開孔の全領域を含む位置に設置されていることにより、位置決め貫通孔15を通過した回折反射光の光量を測定することで、トリミング電極10と半導体基板8の相対的な位置を精度よく合わせることができる。更に、位置決め貫通孔15が高アスペクトな孔構造を有している場合においても、本実施の形態によれば、位置決め貫通孔の高さ方向に強い光成分をもつ回折反射光を用いていることで、光検出器に対して十分な検出感度を得ることができる。
【0039】
また、前述のように、トリミング電極10は、半導体基板8を金属バンプ17、及び金属部材16を用いて金属接合する場合、微小変形や熱膨張による位置決め精度の劣化が懸念される。しかしながら、本発明の実施の形態によれば、金属接合時および接合後、さらには固定治具からトリミング電極を開放するまでの全工程の期間中おいても、位置検出が可能であることから、上述のような弾性回復や熱膨張による位置ずれを補償することが可能となり、位置決め精度の劣化を防止することができる。
【0040】
なお、実施の形態2のレーザー光照射工程において、回折格子の入射するレーザー光18の一部がトリミング電極10に射突することを避けるために、トリミング電極10のスペーサ9の外側に位置決め貫通孔15が設けられている例を説明した。他の方法として、位置決め貫通孔15をスペーサ部9より内側(電子源アレイ7が形成された側)に形成することも可能である。その場合、図7に示すように、レーザー光18を入射するためにスペーサ部の一部に切り欠き部24をトリミング電極10の外周部に新たに設けることで実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明にかかる電界放出型電子源装置およびその製造方法では、トリミング電極と電子源アレイを精度よく位置合わせすることができ、光電変換膜に到達する電子ビームの広がりを抑えた高精細な電界放出型電子源装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施の形態1における電界放出型電子源装置の側面図
【図2】実施の形態1における半導体基板の上面図
【図3】実施の形態1における接合方法の説明図
【図4】実施の形態2における電界放出型電子源装置の組み立て手順を示す図
【図5】実施の形態2における電界放出型電子源装置の製造方法を示す図
【図6】実施の形態2における検出光量と位置関係を示す図
【図7】本発明における電界放出型電子源装置の別の構成を示す図
【図8】従来の電界放出型電子源装置の側面図
【図9】従来の位置決め方法の説明図
【符号の説明】
【0043】
1 前面パネル
2 背面パネル
3 側面外囲器
4 フリットガラス真空封着材
5 インジウム(In)真空封着材
6 金属枠
7 電子源アレイ
8 半導体基板
9 スペーサ部
10 トリミング電極
11 陽極電極
12 光電変換膜
13 回折格子
14 貫通孔
15 位置決め貫通孔
16 金属バンプ
17 金属部材
18 レーザー光
19 下側固定治具
20 上側固定治具
21 真空吸着孔
22 光検出器
23 レーザー光源
24 スペーサ部の切り欠き
25 ターゲット
26 素子基板
27 受光素子
28 筐体
29 光透過部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子源セルと前記電子源セルの外周部に設けた複数の回折格子とからなる半導体基板と、
前記電子源セルから放出された電子ビームを受ける光電変換膜と、
前記電子源セルと前記光電変換膜との間に配置された前記電子ビームを通過させるための貫通孔と前記複数の回折格子の位置に合わせるように設けられた複数の位置決め貫通孔とを有するトリミング電極と、
を備えた電界放出型電子源装置。
【請求項2】
前記回折格子は、斜めに入射したレーザー光を半導体基板の概法線方向に反射する回折格子ピッチを有する請求項1に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項3】
前記レーザー光の入射角度は、略39°とする請求項2に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項4】
前記回折格子のうち少なくとも2つの回折格子の格子方向が同一である請求項1に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項5】
前記2つの回折格子以外の回折格子は、その格子方向が前記2つの回折格子の格子方向と直交する向きに配置される請求項4に記載の電界放出型電子源装置。
【請求項6】
前記回折格子の格子ピッチは、(数1)を満たす請求項2に記載の電界放出型電子源装置。
ただし、dは回折格子のピッチ、mは整数、λはレーザー光の波長、θはレーザー光の回折格子へ入射する入射角とする。
【数1】

【請求項7】
請求項1に記載の電界放出型電子源装置の前記回折格子にレーザー光を照射するレーザー光照射工程と、
前記回折格子からの回折反射光を前記トリミング電極の前記位置決め貫通孔を通し光検出器に入射する第一の位置決め工程と、
前記光検出器にて前記回折反射光の量を検出する回折反射光検出工程と、
前記回折反射光の量が最大となるように位置合わせをする第二の位置決め工程と、
を備える電界放出型電源装置の製造方法。
【請求項8】
前記レーザー光照射工程でのレーザー光は、前記トリミング電極を避けて、前記回折格子に直接入射する請求項7に記載の電界放出型電源装置の製造方法。
【請求項9】
前記第一の位置決め工程の前に、前記回折格子からの回折反射光を受光するための光検出器を備えた検出ユニットを前記トリミング電極に接続する検出ユニット接続工程をさらに含む請求項7に記載の電界放出型電源装置の製造方法。
【請求項10】
前記検出ユニットの光検出器は、その受光領域が前記トリミング電極の前記位置決め貫通孔の全領域を含む位置に配置された請求項9に記載の電界放出型電源装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−87639(P2009−87639A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254037(P2007−254037)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】