説明

電磁アクチュエータ

【課題】小型化が可能であり、作業性が高く、かつ回転軸の保持が可能な電磁アクチュエータを提供する。
【解決手段】ロータの内穴に立てる軸ピンの代わりに、ロータ11の外径部分と接触するように動作ガイドとなるピン13を複数立てて、ロータ11の回転軸を保持する。これにより、軸ピンとロータ11の組み立てが不要となることで作業性が上がる。また、不要となった軸ピン用の内穴を磁石で埋めることで、磁力が上がり、小型化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カメラのシャッタや絞り等で使用する小型の電磁アクチュエータは、コイル、ステータ、回転動作用の永久磁石からなるロータの基本3部品から構成されている。例えば特許文献1に示すように、ロータは、通常、円筒状の永久磁石から構成され、その内穴に軸となるピンを外部から入れて、回転軸としていた。
【0003】
【特許文献1】実開平3−29837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した構成において、ロータの回転中心軸のピンが一定のスペースをとり、また磁石を作製できる最小の肉厚を確保するために、これ以上のロータの小型化が困難になっていた。
【0005】
また、回転軸ピンを永久磁石から構成されたロータに圧入することによる圧入割れの恐れがあり、作業性が悪いという問題があった。
【0006】
また、回転軸の保持を回転軸ピン1本のみが担っており、回転軸がぶれることがあった。
【0007】
また、ロータの内穴部分は、磁石がないため、その分磁力が弱くなってしまう。
【0008】
さらに、ロータに異方性焼結磁石を使用した場合、異方化磁場により内穴が楕円になってしまい、表面磁束密度のピークが弱くなっていた。また、内穴の形状の制御も困難なため、表面磁束密度波形がばらつくといった問題があった。
【0009】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、小型化が可能であり、製造時の作業性が高く、かつ回転軸の保持が可能な電磁アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の電磁アクチュエータは、
回動可能に設けられたロータと、
前記ロータの外周面に対向する少なくとも一対の磁極部を有するステータと、
前記ステータに巻回されたコイルと、
前記ロータの外周面と当接し、前記ロータの回転軸方向に延在し、前記ロータの位置を規制する位置規制手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
前記位置規制手段は、例えば、複数のピンから構成される。この場合、前記複数のピンは、前記ロータの回転角を制御する回転角制御ピンを兼ねてもよい。また、前記ピンが前記ステータと前記ロータの位置決めピンを兼ねてもよい。
【0012】
例えば、前記ロータの回転を制限する制限手段を備え、前記ロータの回転中心から外側へ延伸する出力部材と、前記出力部材に立設した出力ピン部と、を備え、前記ロータが停止位置にいるときの前記出力ピン部と前記ロータの回転中心を結んだ線と同じ平面内でかつ直角方向に延びる線上に前記ピンの中心が配置される。
【0013】
前記位置規制手段は、例えば、前記ロータの少なくとも端部が挿入された凹部を備える支持部材から構成されてもよい。
例えば、前記ステータに供給する電力を制御する回路基板を備え、前記位置規制手段は、前記ロータの少なくとも端部が挿入された前記回路基板の凹部から構成されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、小型化が可能であり、作業性が高く、かつ回転軸の保持が可能な電磁アクチュエータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
図1(a)〜図2(b)は、本発明の第1の実施形態に係る電磁アクチュエータ10の正面図と部分断面図である。ここで、図1(a)は、電磁アクチュエータ10から出力部材を外した状態の正面図であり、図1(b)のA−A線での矢視図に相当する。また、図2(a)は、ピンと出力部との位置関係を示す図であり、(b)は、上基板の構成を示す平面図である。
図1(a)及び(b)に示すように、電磁アクチュエータ10は、ロータ11と、ステータ12と、ピン13(13a,13b,13c)、と、コイル14と、出力部材15(15a、15b)と、出力ピン部16と、上基板17と、下基板18とを備えている。
【0017】
ロータ11は、ステータ12との間の磁力により発生する回転トルクによって、回転運動するものである。ロータ11は、例えば希土類・鉄系などの磁石材料により形成され、円筒状又は円板状に形成されている。ロータ11は、回転方向に交互に極性の異なる複数の磁極を有するように着磁されている。
【0018】
ステータ12は、励磁されたコイル14の磁束をロータ11の着磁された磁極へと導くためのものである。ステータ12は、磁性材料によりU字状に形成されてその両端部である磁極部12aは、ロータ11の外周面と所定の空隙を有するように配置されている。このステータ12に巻回されたコイル14に通電することにより、磁極部12aのロータ11の外周面に対向する面に磁極を構成する。
【0019】
ピン13(13a,13b,13c)は、ロータ11の外形部分に当接し、ロータ11の回転軸を保持するように下基板18に3本立てられている。ピン13は、プラスチック材料や磁性のない金属により形成される。
【0020】
出力部材15(15a、15b)は、嵌合等の方法によりロータ11に固定され、ロータ11と一体となって回転するものであり、図1(b)、図2(a)に示すように、ロータ11に積層された円板部15aと、円板部15aから水平方向に突出する突出部15bから構成される。突出部15bの先端部に、出力ピン部16が配置されている。
【0021】
上基板17には、図2(b)に示すように、出力部材15に設けられた出力ピン部16の回動を逃がすための逃げ孔21が形成され、出力ピン部16は逃げ孔21に貫通して所定範囲の揺動が許容される。
【0022】
電磁アクチュエータ10は、コイル14を励磁して磁極部12aを磁化すると、二つの磁極部12a間の磁力により発生する回転トルクによって、ロータ11はピン13を外径ガイドとして回転軸を保持しながら、回転運動する。ただし、ロータ11の動きは、出力ピン部16の動きが逃げ孔21により制限されるため、揺動動作となる。
【0023】
このように本実施の形態では、ロータ11の内穴に立てる回転軸ピンの代わりに、ロータ11の外径部分にガイドとなるピン13を立てることにより回転軸を保持するため、回転中心軸のピンが不要となり、電磁アクチュエータ10の小型化が可能である。
また、ロータ11には内穴がないため、その分磁力があがり、回転速度を増すことができる。または、内穴を開けていたときと同じ磁力を得るのに、ロータ11を小型化することができる。
また、回転軸ピンとロータを組み立てることが不要となるので、作業性が上がり、圧入割れなどの問題がなくなる。
【0024】
なお、上述した本実施形態において、3本のピン13でロータ11の回転軸を保持しているが、図3(a)に示すように4本以上のピン13で保持してもよい。
【0025】
また、複数のピン13でロータ11の回転軸を保持しているが、図3(b)に示すようにロータ11の外周面に沿った円弧状の複数の壁22で保持してもよい。
【0026】
また、図3(c)に示すようにロータ11とステータ12の磁極部12aとの間にエアギャップを空け、その部分にピン13を立ててもよい。
【0027】
また、図3(d)に示すようにロータ11とステータ12の磁極部12aを同心円でなくし、その隙間にピン13を立ててもよい。
【0028】
また、ピン13を下基板18に直接成形してもよい。これにより作業性を上げることができる。
【0029】
また、ロータ11とピン13の当接面の動摩擦力を小さくするための手段を用いることとしてもよい。例えば、当接部材の表面処理により摺動性を向上させたりすることができる。
【0030】
また、出力部材15の突出部15bの外径部分で動作ガイドとなるピン13を受けるようにしてもよい。これにより、ロータ11のマグネット部分でピン13を受けるよりも、摩擦を小さくすることができる。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態においては、回転軸を保持するピン13はステータ12とロータ11の位置決めピンを兼ねるように配置される。即ち、ロータ11の位置は3本のピン13により位置決めされ、ステータ12の位置も3本のピン12により位置決めされる。これにより、スペース効率が上がり、ロータ11とステータ12の間隔を狭くすることができる。
【0032】
具体的には、図4に示すように、ピン13を例えば、3本とし、ステータ12の開口部の端に2本、ロータ11の真下に1本配置する構成としてもよい。これにより、プレスの際にステータ12の開口部分を閉じる方向にかかる応力による変形を防止することができる。
【0033】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態は、外径ガイドとなるピン13の位置を出力部材15の回動を妨げない位置に配置する。例えば、図5(a)に示すように、ピン13が、出力部材15とロータ11の中心と平行に位置しているときは、ロータ11が動こうとするときの反作用で、ピン13とピン13の間にロータ11が嵌ってしまう。これを防ぐために、図5(b)に示すように、ロータ11が停止位置にいるとき(出力ピン16が基板17に形成された逃げ孔21の一端に接しているとき)の、出力部材15とロータ11の中心を結んだ線から直角方向に動作ガイドとなるピン13を立てて、出力部材15の回動を規制する。また、図5(c)に示すように、ロータ11が停止位置と反対側の停止位置にいるとき(出力ピン16が基板17に形成された逃げ孔21の他端に接しているとき)も同様に、ピン13を立てて出力部材15の回動を規制する。
【0034】
次に本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態においては、図6(a)に示すように、ロータ11を上下方向に伸ばし、上基板17と下基板18で直接ロータ11の外径ガイドをする。これにより、電磁アクチュエータ10の組み立て効率が高くなる。また、ロータ11を上下に長くするため、磁石部分を長くすることができ、磁力を大きく、又は従来品と同じ磁力で小型化することができる。
【0035】
また、本実施形態において、出力部材15とロータ11の取り付け方法として、ロータ11の上に出力部材15を接着する(図6(a)参照)、出力部材15の下面に凹部を設けてロータ11を嵌め込む(図6(b)参照)、出力部材15をインサート成形する(図6(c)参照)、円環状の出力部材15に円筒状のロータ11を嵌め込む等の手法により出力部材15とロータ11を固定する(図6(d)参照)方法が可能である。
【0036】
また、本実施形態において、上基板17又は下基板18とロータ11との動摩擦力を小さくするための手段を用いることとしてもよい。例えば、図7(a)に示すように、出力部材15の上部にロータ11の外径よりも小さな円筒状の凸部を設け、この凸部と嵌合する凹部を上基板17のロータ11側に設けることで、ガイドする部分が細くなり、動摩擦力を小さくすることができる。また、本実施形態に係る電磁アクチュエータを上基板側からみたから見た図7(b)に示すように、上基板17又は下基板18のガイド部に複数の半球状の凸部を設け、出力部材15を数点で指示するような形状にしたり、図7(c)に示すように、出力部材15の凸部をテーパー状に形成したりすることで、さらに動摩擦力を小さくすることができる。
【0037】
また、本実施形態において、図7(d)に示すようにロータ11のガイド部としてロータ11の上下両方にプラスチック部材をつけ、磁石でガイドを受けないようにすることで、ロータを摩耗しにくくすることができる。
【0038】
また、本実施形態において、図7(e)に示すように、ロータ11の下部の回転中心部に凹部を設け、その凹部と嵌合する円錐状の凸部を下基板18に設けることで、回転軸を保持しつつ、動摩擦力を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る電磁アクチュエータについて出力部材を外した状態の平面図、(b)は部分断面図である。
【図2】(a)はピンと出力部との関係を示す図、(b)は上基板の平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る電磁アクチュエータにおける実施パターンを表す出力部材を外した状態の平面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る電磁アクチュエータにおける実施パターンを表す出力部材を外した状態の平面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る電磁アクチュエータの構成を説明するための平面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る電磁アクチュエータにおける実施パターンを表す部分断面図である。
【図7】(a)、及び(c)乃至(e)は本発明の第4の実施形態に係る電磁アクチュエータにおける実施パターンを表す部分断面図、(b)は上基板側から見た部分断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 電磁アクチュエータ
11 ロータ
12 ステータ
12a 磁極部
13(13a、13b、13c) ピン
14 コイル
15 出力部材
15a 円板部
15b 突出部
16 出力ピン部
17 上基板
18 下基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動可能に設けられたロータと、
前記ロータの外周面に対向する少なくとも一対の磁極部を有するステータと、
前記ステータに巻回されたコイルと、
前記ロータの外周面と当接し、前記ロータの回転軸方向に延在し、前記ロータの位置を規制する位置規制手段と、
を備えたことを特徴とする電磁アクチュエータ。
【請求項2】
前記位置規制手段は、複数のピンから構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項3】
前記複数のピンは、前記ロータの回転角を制御する回転角制御ピンを兼ねる、ことを特徴とする請求項2に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項4】
前記ピンが前記ステータと前記ロータの位置決めピンを兼ねること、を特徴とする請求項2又は3に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項5】
前記ロータの回転を制限する制限手段を備え、
前記ロータの回転中心から外側へ延伸する出力部材と、
前記出力部材に立設した出力ピン部と、を備え、
前記ロータが停止位置にいるときの前記出力ピン部と前記ロータの回転中心を結んだ線と同じ平面内でかつ直角方向に延びる線上に前記ピンの中心が配置されること、を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項6】
前記位置規制手段は、前記ロータの少なくとも端部が挿入された凹部を備える支持部材から構成されている、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項7】
前記ステータに供給する電力を制御する回路基板を備え、
前記位置規制手段は、前記ロータの少なくとも端部が挿入された前記回路基板の凹部から構成されている、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電磁アクチュエータ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−110189(P2010−110189A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282390(P2008−282390)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)