説明

電磁シールド構造

【課題】 導電性ガスケットを介して配線基板のグランドパターンをシールド板に電気的に導通させる場合に、コスト高をきたさずに導電性ガスケットが剥がれ落ちるおそれをなくする。
【解決手段】 シールド板10と、導電性ガスケット40と、接触片30とを有する。配線基板100の片面102にシールド板10の座部11をビス止めする。配線基板100の他面103に配備した導電性ガスケット40を、配線基板100の他面103との相互間で弾圧している接触片30をシールド板10に一体形成しておく。接触片30が、脚片部31と接片部32とを有して、配線基板100の他面103と接片部32とにより導電性ガスケット40を弾圧させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁シールド構造、特に、配線基板のグランドパターンと配線基板に実装されたシールド板とが、弾力性を有する導電性ガスケットを介して電気的に導通されている電磁シールド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は従来例による電磁シールド構造の概略正面図である。この電磁シールド構造では、一面が開放している箱形のシールド板10の開放端側の4つのコーナ部に曲成されている座部11が、取付ビス20によって配線基板100に実装されている。また、シールド板10には、その開放端の一部に接触片30が形成されている。そして、配線基板100にシールド板10が実装されている状態では、配線基板100に備わっているグランドパターンと上記接触片30との相互間に弾力性を有する導電性ガスケット40が挟み込まれている。導電性ガスケット40は、たとえば帯状の弾性部材を導電性編組で包み込んだ構成を備えている。そのような帯状の導電性ガスケットは、使用時に所定長さに切断して用いられている。また、導電性ガスケット40は粘着剤を用いて配線基板100に接着されている。
【0003】
電磁シールド構造において、配線基板100のグランドパターンを上記したような導電性ガスケット40を介してシールド板10に電気的に導通させておくと、配線基板100のグランドパターン形成箇所に凹凸が存在していたり、配線基板100のグランドパターン形成箇所に反り変形が生じていたりしても、導電性ガスケット40がその弾力性によって凹凸や反り形状に馴染むために電気的接触信頼性が損なわれにくいという利点がある。
【0004】
一方、従来より、電子機器のシールド構造として、シールド天板とシールド板金の開口端との間に弾性ガスケットを挟み込みこみ、これにより密着性を高めて電磁ノイズの漏れを防止する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。また、プロジェクションテレビのシールド装置にあっては、シールドユニットの構成要素であるベース金具、シールド板、シャーシ金具などの結合手段として、ベース金具に切起し形成した爪部をシールド板に係合させ、シールド板に切起し形成した爪部をシャーシ金具の孔縁に係合させる構成が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−97874号公報(図2、0007)
【特許文献2】特開2002−171463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4を参照して説明した従来例としての電磁シールド構造は、配線基板100にビス止めしたシールド板10の接触片30と配線基板100のグランドパターンとの相互間にただ単に弾力性を有する導電性ガスケット30を挟み込んでいるだけであるために、導電性ガスケット30は、取付ビス20の締付力に見合う力で接触片30と配線基板100とにより挟圧されているだけである。そのため、経時や振動などの影響を受けて取付ビス20が緩んだり、導電性ガスケット40を配線基板100に接着している粘着剤の粘着力が低下したりすると、導電性ガスケット40の反発力が作用してその導電性ガスケット40が接触片30と配線基板100との間から剥がれ落ちることがあるという問題があった。この問題は、上掲の特許文献1や特許文献2によって提案されている技術によっては到底解決し得ない。
【0007】
本発明は以上の問題に鑑みてなされたものであり、導電性ガスケットを介して配線基板のグランドパターンをシールド板に電気的に導通させる場合に、コスト高をきたさずに導電性ガスケットが剥がれ落ちるおそれをなくすることができて、導電性ガスケットによる導通信頼性を向上させることのできる電磁シールド構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電磁シールド構造は、配線基板に実装されたシールド板と、上記配線基板のグランドパターンに接触状態で重ね合わされた弾力性を有する導電性ガスケットと、この導電性ガスケットを介して上記グランドパターンを上記シールド板に電気的に導通させる接触片と、を有する。そして、上記配線基板の片面に上記シールド板に具備された座部が重なり状に着座され、上記配線基板の他面に配備された上記導電性ガスケットを、その配線基板の当該他面との相互間で弾圧している上記接触片が、上記シールド板に一体形成されている。
【0009】
この構成であると、シールド板とそのシールド板に一体形成されている接触片とが配線基板を挟んで片面側と他面側とに位置しているので、経時や振動の影響などの影響を受けて配線基板の他面と接触片との相互間隔が拡がるという事態が生じにくい。そのため、配線基板の他面と上記接触片との相互間で弾圧挟持されている導電性ガスケットが、それらの間から剥がれ落ちるおそれがなくなる。
【0010】
本発明において、上記シールド板の座部は、上記配線基板の片面にビス止めされることによってその配線基板の片面に着座している、という構成を採用することが可能である。この構成であると、シールド板を配線基板にビス止めによって容易に実装することができるにもかかわらず、仮に取付ビスが緩んだとしても、上記の理由により、配線基板の他面と上記接触片との相互間で弾圧挟持されている導電性ガスケットが、それらの間から剥がれ落ちるおそれがない。
【0011】
本発明では、上記接触片が、上記シールド板の端縁を起点として延び出て上記配線基板に開設された開口を貫通している脚片部と、この脚片部の端部に曲成されて上記配線基板の他面に対峙している接片部とを有して、上記配線基板の他面と上記接片部とにより上記導電性ガスケットが弾圧されているという構成を採用することが可能である。この構成であれば、接触片をシールド板と共に1枚の金属素板から打抜き形成することができるため、部品点数を増やさずに、導電性ガスケットが剥がれ落ちるおそれをなくすることができる。
【0012】
本発明では、上記接片部が上記脚片部よりも幅広に形成され、配線基板の上記開口が、上記脚片部と共に上記接片部が挿入される幅広口部と、この幅広口部に連通されてその幅広口部に挿入された上記脚片部をずらすことによってその脚片部が嵌合される幅狭口部とを有し、かつ、その幅狭口部に上記脚片部を嵌合して位置決めしたときに、上記座部に形成されているねじ孔が上記配線基板に備わっているビス挿通孔に位置合わせされるように構成されている、という構成を採用することが可能である。この構成によれば、シールド板を配線基板の片面側に配備する工程、接触片を配線基板の他面側に配備する工程や、導電性ガスケットを配線基板の他面と接触片の接片部との間に挟み込む工程、シールド板をビス止めする工程を、連続して容易に正確に行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、コスト高をきたさずに導電性ガスケットが剥がれ落ちるおそれをなくすることができて、導電性ガスケットによる導通信頼性を向上させることができる。そのため、FCC/CEなどの不要輻射の遮蔽信頼性を安価に高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る電磁シールド構造の概略平面図である。
【図2】同実施形態に係る電磁シールド構造の一部破断概略正面図である。
【図3】要部を分解斜視図で示した組立工程の説明図である。
【図4】従来例による電磁シールド構造の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明の実施形態に係る電磁シールド構造の概略平面図、図2は同実施形態に係る電磁シールド構造の一部破断概略正面図である。また、図3は要部を分解斜視図で示した組立工程の説明図である。
【0016】
図1及び図2に示したように、この電磁シールド構造では、一面が開放している箱形のシールド板10の開放端側の4つのコーナ部に曲成されている座部11が、取付ビス20によって配線基板100の片面102にビス止めされている。具体的には、取付ビス20による取付箇所では、配線基板100に開設されているビス挿通孔101に挿通された取付ビス20が、上記座部11に形成されているねじ孔12にねじ込まれて締め付けられている。この構成でシールド板10を配線基板100に実装する場合には、配線基板100に対する座部11の重なり箇所、又は、配線基板100に対する取付ビス20の頭部の重なり箇所に、グランドパターンを形成しておいてもよい。
【0017】
シールド板10の開放端の複数箇所に凹所13が形成されていて、相隣接する凹所13,13の相互間部分に接触片30が設けられている。図例では、接触片30が、シールド板10の開放端の端縁を起点として延び出ている板片状の脚片部31と、この脚片部31の端部に内向きに直角に曲成された接片部32とによって形成されている。脚片部31と接片部32とを有する接触片30は、シールド板10と共に1枚の金属素板(たとえばアルミニウム板)から打抜き形成されている。
【0018】
そして、脚片部31が、配線基板100に開設されている開口110を貫通し、接片部32が、配線基板100の他面103に一定の間隔を隔てて対峙している。また、配線基板100の他面103と上記接片部32との相互間に、導電性ガスケット40が弾圧状態で挟持されている。この実施形態において、配線基板100の他面103の導電性ガスケット40との重なり箇所にグランドパターンが形成されている。
【0019】
導電性ガスケット40は、非圧縮状態(自然状態)での厚さ寸法が、配線基板100の他面103と接片部32との相互間の間隔寸法よりも長くなっている。したがって、配線基板100の他面103と上記接片部32との相互間で挟持されている導電性ガスケット40は、その弾性復元力に見合う力でグランドパターンと接触片32とに接触している。
【0020】
なお、必要に応じて、導電性ガスケット40が配線基板100の他面103に粘着剤を用いて接着しておいてもよい。
【0021】
上記構成を有する電磁シールド構造によると、シールド板10と接触片30とが配線基板100を挟んで片面102側と他面103側とに位置しているので、経時や振動の影響などの影響を受けて配線基板100の他面103と接触片30の接片部32との相互間隔が拡がるという事態が生じにくい。そのため、配線基板の他面と上記接触片との相互間で弾圧挟持されている導電性ガスケットが、それらの間から剥がれ落ちるおそれがなくなる。仮に、取付ビス20が緩んだときにも同様の作用が発揮される。すなわち、導電性ガスケットが剥がれ落ちるおそれがなくなる。
【0022】
図3に示したように、この実施形態では、接触片30に関して、接片部30が脚片部31よりも幅広に形成されている。これに対し、配線基板100の開口110は、幅広口部111とそれに連通している幅狭口部112とを有していて、幅狭口部112の1つの端面が、脚片部31を相手方部材とする位置決め面113として形成されている。
【0023】
この構成を採用しているために、シールド板10を配線基板100に実装するときには、接触片30の全体、すなわち、脚片部31と接片部32とを開口110の幅広口部111に挿入した後、幅広口部111に挿入した脚片部31を図3矢印Yのようにずらして幅狭口部112に嵌合し、その脚片部31を上記位置決め面113に当て付けるだけで、シールド板10が配線基板100の片面102側で定位置に位置決めされる。
【0024】
この実施例では、上記のようにして脚片部31を位置決め面113に当て付けたときに、シールド板10の座部11に形成されているねじ孔12が配線基板100に備わっているビス挿通孔101に位置合わせされるように構成されている。したがって、シールド板10を配線基板100の片面102側に配備する工程、接触片30の接片部32を配線基板100の他面103側に配備する工程、導電性ガスケット40を配線基板100の他面103と接片部32との間に挟み込む工程、シールド板10をビス止めする工程を、連続して容易に正確に行うことができる。
【0025】
本発明において、接触片30の形状ないし構成は上記したものに限定されないことは勿論である。たとえば、接触片30の脚片部31と接片部32とを同一幅に形成することも可能である。また、シールド板10は、図例のような箱形である必要はなく、平形、又は、L字形ないしコ字形の板片状であってもよい。さらに、この実施形態では、接触片30をシールド板10の2箇所に設けてあるけれども、接触片30を2箇所だけに設けても、3箇所以上の箇所に設けてもよい。
【0026】
なお、図1〜図4においては、説明の便宜上、同一又は相応する要素には同一符号を付してある。
【符号の説明】
【0027】
10 シールド板
11 座部
12 ねじ孔
30 接触片
31 脚片部
32 接片部
40 導電性ガスケット
100 配線基板
101 ビス挿通孔
102 配線基板の片面
103 配線基板の他面
110 開口
111 幅広口部
112 幅狭口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板に実装されたシールド板と、上記配線基板のグランドパターンに接触状態で重ね合わされた弾力性を有する導電性ガスケットと、この導電性ガスケットを介して上記グランドパターンを上記シールド板に電気的に導通させる接触片と、を有する電磁シールド構造において、
上記配線基板の片面に上記シールド板に具備された座部が重なり状に着座され、上記配線基板の他面に配備された上記導電性ガスケットを、その配線基板の当該他面との相互間で弾圧している上記接触片が、上記シールド板に一体形成されていることを特徴とする電磁シールド構造。
【請求項2】
上記シールド板の座部は、上記配線基板の片面にビス止めされることによってその配線基板の片面に着座している請求項1に記載した電磁シールド構造。
【請求項3】
上記接触片が、上記シールド板の端縁を起点として延び出て上記配線基板に開設された開口を貫通している脚片部と、この脚片部の端部に曲成されて上記配線基板の他面に対峙している接片部とを有して、上記配線基板の他面と上記接片部とにより上記導電性ガスケットが弾圧されている請求項1又は請求項2に記載した電磁シールド構造。
【請求項4】
上記接片部が上記脚片部よりも幅広に形成され、配線基板の上記開口が、上記脚片部と共に上記接片部が挿入される幅広口部と、この幅広口部に連通されてその幅広口部に挿入された上記脚片部をずらすことによってその脚片部が嵌合される幅狭口部とを有し、かつ、その幅狭口部に上記脚片部を嵌合して位置決めしたときに、上記座部に形成されているねじ孔が上記配線基板に備わっているビス挿通孔に位置合わせされるように構成されている請求項2又は請求項3に記載した電磁シールド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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