電磁処理装置と方法
【課題】従来技術に比較して消費電力と設備費が少なく済み、補助薬品の添加もできるだけ必要としないで済む新たな電磁処理装置と電磁場処理方法を提供すること。
【解決手段】被処理流体流路の外部に被処理流体を照射する出力コイル部2を有するフェライト製ヨーク4を配置し、該出力コイル部2を有するフェライト製ヨーク4のコイル部2に単一周波数の交流正弦波を流す電磁発生器3とを備えた電磁処理装置であり、コイル部2に8,000Hz又は4,000Hzの単一周波数の交流正弦波を流すことで、少ない電流値でスケール防止能力に優れた電磁処理ができ、高濃度のカルシウム等を含むスケール障害の激しい排ガス脱硫設備、脱硫排水処理設備、焼却灰スラリー処理設備又は高濃度のカルシウムを含む流体収容容器を持つ石灰スラリー溶解・移送設備等のスケール付着除去又はスケール付着防止効果が十分に得られる。
【解決手段】被処理流体流路の外部に被処理流体を照射する出力コイル部2を有するフェライト製ヨーク4を配置し、該出力コイル部2を有するフェライト製ヨーク4のコイル部2に単一周波数の交流正弦波を流す電磁発生器3とを備えた電磁処理装置であり、コイル部2に8,000Hz又は4,000Hzの単一周波数の交流正弦波を流すことで、少ない電流値でスケール防止能力に優れた電磁処理ができ、高濃度のカルシウム等を含むスケール障害の激しい排ガス脱硫設備、脱硫排水処理設備、焼却灰スラリー処理設備又は高濃度のカルシウムを含む流体収容容器を持つ石灰スラリー溶解・移送設備等のスケール付着除去又はスケール付着防止効果が十分に得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁処理装置と方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、先に異なるタイプの被処理流体であっても、それぞれ異なる方式で被処理流体が流れる配管や貯留槽内の壁面のスケール防止及び腐食防止等に対する効果的な変調電磁場処理を可能にする方法とその方法を実施するための装置について特許出願をした。当該特許出願した発明は、具体的には図36に示す被処理流体を照射するためのコイル部2と、該コイル部2に20Hz〜1MHzの帯域で周波数が時間的に変化する交流電流を流す還元(−)型変調電磁場発生器6aと、前記コイル部2に20Hz〜1MHzの帯域で周波数が時間的に変化する交流電流を流す酸化(+)型変調電磁場発生器6bと、前記2つの変調電磁場発生器6a,6bと前記コイル部2との間に前記2つの変調電磁場発生器6a,6bのいずれかを作動させるための切替器7を備えた変調電磁場処理装置を用いるものであり、異なるタイプの被処理流体であっても、それぞれに適した方式で効果的な変調電磁場処理を効果的に行うことができるというものである。
なお、前記還元(−)型変調電磁場発生器6aは図37に示す電子回路を備え、前記酸化(+)型変調電磁場発生器6bは図38に示す電子回路を備えている。
【特許文献1】特開2005−288436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の技術には次のような問題点があった。
まず、一つ目の問題点は、高濃度のカルシウム等を含むスケール障害の激しい排ガス脱硫設備、脱硫排水処理設備、焼却灰スラリー処理設備又は高濃度のカルシウムを含む流体収容容器の内壁にスケールを形成し易い(以下、このことをスケール性があるということがある)石灰スラリー溶解・移送設備等の装置においては、上記特許文献1記載の変調電磁場処理ではスラリー液による装置内壁面へのスケール付着防止効果が十分に得られない事が多い。また、スケール性の軽減効果は見られながら、定期的清掃を必要とする場合がしばしばあった。
【0004】
後述の比較例で説明するように、上記変調電磁場処理にてより実際に稼働している火力発電所の脱硫排水処理設備に流入する排水配管に巻き付けた出力コイルに主要周波数が7,000Hzで10〜50,000Hzの範囲で時間と共に変調した交流電流を流したときのスケール性判定結果を図34(a)〜(c)に示す。
【0005】
図34(a)に変調電磁場処理をしていない(以下「未処理」という)の場合の脱硫排水処理設備の排水を常法通り、ガラス板上に滴下して乾燥した流体界面の顕微鏡(100倍)写真を示すように、非常に強いスケール性を示す。また、コイル電流値を0.75Aとして変調電磁場処理をした後、排水をガラス板上に滴下して乾燥した流体界面の顕微鏡(100倍)写真の結果を図34(b)に示し、同様にコイル電流値を2.5Aとしたときの流体界面の顕微鏡(100倍)写真の結果を図34(c)に示す。
【0006】
図34(a)〜(c)に示す結果からコイル電流値を0.75Aで変調電磁場処理をしたときにはスケール性がかなり残っているが、コイル電流値を2.5Aで変調電磁場処理をしたときのスケール性は未処理と比較して低下傾向が見られるが、界面への結晶集合性は残ることが分かる。
【0007】
前記脱硫排水処理の実設備に前記変調電磁場処理のための装置を設置して、約6ヶ月間の実証試験を行なったが、排水流路内壁面のスケール付着量の減少と付着物軟質化の効果は確認されたが、スケール付着物の清掃作業は必要であった。 なお、実設備でも出力コイル電流値を上げる事でスケール性の低下傾向が見られる。
【0008】
より以上の効果を得るためには出力コイル2.5A以上の装置を用いる事で解決されることが予想される。しかし、出力コイル電流値3A以上の装置の製造には従来の約5〜10倍以上のコストが掛かる事と変調電磁場処理装置の内部回路の耐久性試験等の開発にある程度時間が掛かること低出力コイル電流値でよりスケール防止能力を有する装置又は方法が望ましいことが分かった。
【0009】
また、前記従来の変調電磁場処理装置を用いる技術ではコイル電流値が少なくても、被処理流体のスケール性を低減化させる方法として薬品との併用処理が行われている。前記脱硫排水処理設備において炭酸ソーダ溶液を注入する事で出力コイル2.5Aにて変調電磁場処理をした場合には図35に示す処理水のガラス板上の乾燥物の顕微鏡(100倍)写真に示すようなスケール判定結果となり、界面部への結晶集合性は大きく低下している。
【0010】
しかし、このように変調電磁場処理を薬品処理と併用して行うと、薬注設備及び薬品コストを新たに要することになる。
上記従来の排水配管など被処理流体流路の回りにコイルを巻き付けて、該コイルに時間的に変化する周波数の交流電流を流す変調電磁場処理装置を用いて被処理流体流路にスケールが付着しないようにする方法では流体に強い界面電位変化を生じさせるために、コイル出力電流を大きくする必要があった。そのため、変調電磁場処理装置Cの運転動力費が無視できないことと変調電磁場発生器の内部回路の発熱対策を含み、製造コストが大きくなる問題がある。
【0011】
また、電磁場処理の界面電位変化を阻害する極性を有する薬品等が混入した被処理水を含む設備においては、薬品などの極性を変化させる作用を有する処理を予め行う必要があった。
【0012】
さらに、2つ目の問題点は、従来の配管外側に巻くコイル方式の変調電磁場処理装置Cでは化学工場内の「防爆地区」では消防法の規定によって使用が出来ない欠点がある。
【0013】
そこで、本発明の課題は、上記従来技術に比較して消費電力と設備費が少なく済み、補助薬品の添加もできるだけ必要としないで済む新たな電磁処理装置と電磁処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記本発明の課題は次の解決手段により解決される。
請求項1記載の発明は、被処理流体流路の近傍に配置するフェライト製ヨークにコイルを巻き付けたヨーク型コイル部と、該コイル部に単一の周波数の交流正弦波を流す電磁発生器とを備えた電磁処理装置である。
【0015】
請求項2記載の発明は、ヨーク型コイル部に(a)8,000Hz、又はその近傍の単一周波数、又は(b)4,000Hz又はその近傍の単一周波数の交流正弦波を流す電磁発生器を用いる請求項1記載の電磁処理装置である。
【0016】
請求項3記載の発明は、ヨーク型コイル部を覆う非磁性材料からなる防爆装置を設けた請求項1又は2記載の変調電磁処理装置である。
【0017】
請求項4記載の発明は、被処理流体流路の近傍でフェライト製ヨークに巻き付けたヨーク型コイルに単一周波数の交流正弦波を流して被処理流体を電磁処理することで被処理流体流路又は被処理流体を貯めた装置の壁面のスケール、その他の成分の付着防止及び/又は除去を行う電磁処理方法である。
【0018】
請求項5記載の発明は、被処理流体を流すテスト流路の近傍に設けたフェライト製ヨーク型コイル部に複数の単一周波数の交流正弦波を、それぞれ複数のコイル電流値で流しながらテスト流路中の被処理流体電磁処理した後、該流体を乾燥させ、乾燥後にできる結晶体粒径が小粒子化し、流体乾燥物の界面付近への結晶体の集合性を失う単一の交流正弦波とその適切な電流値を見い出す被処理水の机上試験を行い、
その机上試験法により得られた流体乾燥物の界面付近への結晶体の集合性を失う単一の交流正弦波と該正弦波の電流値により実設備の同一被処理流体の流路又はその近傍に設けたフェライト製ヨークのコイル部を用いて被処理流体を電磁処理する請求項4記載の変調電磁処理方法である。
【0019】
本発明では従来の変調電磁場処理装置が有する問題点を解決するために供給する交流信号として正弦波を用いて被処理流体の界面電位を(−)又は(+)に帯電させる最も効果的な単一周波数を見出し、磁性体材料(ヨーク)にコイルを巻き付けたヨーク型コイル部を設けて、被処理流体流路外側の対極部(流体流路の外側にそれぞれ位置して前記ヨークの両端が互いに対向する位置にある部分)にヨーク両端を配置して電磁場を形成させる事で少ない電流値でスケール防止能力に優れた被処理流体の電磁処理装置と電磁処理方法を提供することができる。
【0020】
図2に示す電磁処理装置Aにより、例えば8,000Hz又はその近傍の単一周波数を有する交流正弦波信号を前記ヨークの両端に出力する。当該電磁処理装置Aは出力コイル部よりフェライト製ヨークを用いて流体配管内を通過するスケール性を有する被処理流体に電磁場を与えて、該流体のスケール性を低下・消失させる効果を有する。前記電磁場は被処理流体より発生するスケール結晶体の界面電位を最もマイナス(−)に帯電させる作用を有するものと考えられる。
【0021】
また、図4に示す電磁処理装置Bにより、例えば4,000Hz又はその近傍の単一周波数を有する交流正弦波信号を前記ヨークの両端に出力する。当該電磁処理装置Bはヨーク型コイル部より配管内を通過するスケール性を有する被処理流体に電磁場を与えて、該流体のスケール性を低下・消失させる効果を有する。前記電磁場は被処理流体より発生するスケール結晶体の界面電位を最もプラス(+)に帯電させる作用を有するものと考えられる。
【0022】
従来の流体配管外側にコイルを巻き、変調した交流方形波を出力する電磁場処理装置を用いた場合と比較して本発明の単一周波数を有する交流正弦波信号を出力する図2に示す電磁処理装置A又は単一周波数を有する交流正弦波信号を出力する図4に示す電磁処理装置Bと磁性体(フェライト等)のヨークからなるヨーク型コイル部を用いる方法では、より強い界面電位変化を生む事が判った。
【0023】
また、本発明の電磁場処理では前記変調した交流の方形波を出力する従来の変調電磁場処理装置と異なり、正弦波の周波数を(a)8,000Hz又はその近傍に、更には(b)4,000Hz又はその近傍に変える事で界面電位をマイナス(−)側へ変化させたり、プラス(+)側へ変化させる事が可能となり、1台の電磁処理装置で両極性の界面電位を変化させ、適用させる事が可能となった。
【0024】
特に、スケール性を有する被処理流体が流れる配管を挟んでヨーク型コイル部の「コ」字状の磁性体ヨークの両端から流体流路内を流れる被処理流体に電磁場を与えて、該被処理流体のスケール性を低下・消失させる効果を有する。
【0025】
また、本発明によれば、従来必要であった大きいコイル出力電流を流す装置が不要となり、電流を上げなくても界面電位を大きく変化させる作用が得られる。特に、スケール性の高い石灰及び消石灰スラリー等の溶解移送設備、脱硫設備等の高濃度カルシウム含有液の収納設備において効果的である。また、電磁処理の界面電位変化を阻害する極性を有する薬品等が混入する設備においても、その極性を変化させる作用が強い事から充分に前記極性に打ち消す能力を有し、仮に打ち消す事が困難であっても8,000Hz又は4,000Hzの周波数を切り替えることで、被処理流体のスケール性を低下させる最も効果的な界面電位の極性を選択して処理が可能である利点を有する。
【0026】
なお、電磁処理装置A(図2)又は電磁処理装置B(図4)のいずれの機能を適用するかについては、電磁処理済みの流体をガラス板上で乾燥させ、乾燥界面付近の顕微鏡観察による前記界面付近の結晶集合性の有無にて判定する机上試験によりスケール性有無と極性の確認を行ってから決定し、実設備での電磁処理時においては机上試験により得られた適合する極性とコイル電流値により電磁処理を行う必要がある。
【発明の効果】
【0027】
請求項1、2、4記載の発明によれば、交流信号として正弦波を用いて被処理流体の界面電位を(−)又は(+)に帯電させる最も効果的な単一周波数により、少ない電流値でスケール防止能力に優れた電磁処理ができ、高濃度のカルシウム等を含むスケール障害の激しい排ガス脱硫設備、脱硫排水処理設備、焼却灰スラリー処理設備又は高濃度のカルシウムを含む流体収容容器を持つ石灰スラリー溶解・移送設備等のスケール付着除去又はスケール付着防止効果が十分に得られる。
【0028】
また、請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、ヨーク型コイル部を非磁性体材料(アルミ等)で覆う事で「防爆地区」での使用が可能となる。
【0029】
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の発明の効果に加えて、被処理流体の電磁処理効果を判定する被処理水の机上試験を行うことで、適切な単一周波数の正弦波とコイル電流値を見極めて実設備に適用することができ、経済的にかつ迅速に電磁場処理ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の実施例について図面と共に説明する。
本実施例の電磁処理装置としては、下記の電磁処理装置Aと電磁処理装置Bのいずれかを用いる。なお、方形波等の電磁処理用の交流信号形態の影響及びコイル型コイル部とヨーク型コイル部の比較については市販の周波数変換器を用いて実施した。市販の周波数変換器及び増幅器を使用する場合、最大0.5A程度の出力が可能であるが、装置が高価であることと周波数変換器と増幅器の信号を調整するには専門的取り扱い技術を要することより、次の電磁処理装置A及びBを開発した。
【0031】
電磁処理装置Aは図2のブロック図に示す構成からなり、8kHzの発振器と増幅器と同調回路からなり、該電磁処理装置Aから出力する信号は図1に示す信号波形を有する交流正弦波8,000Hzの単一周波数である。
電磁処理装置Bは図4のブロック図に示す構成からなり、該装置Bから出力する信号は図3に示す信号波形からなる交流正弦波4,000Hzの単一周波数を有する。
【0032】
また、電磁処理装置Aと電磁処理装置Bのヨーク型コイル部の概略図を図5の平面図と図6の図5のA−A線矢視図にそれぞれ示す。図5、図6に示すように被処理流体が通過する配管5の外側に、該配管5とは間隔をあけて強磁性体材料からなる「コ」字状のヨーク4を配置する。そして該ヨーク4の両端がそれぞれ配管5の外側の対向する位置に向かい合わせとなるように配置して、該ヨーク4の中央部に電磁処理装置Aと電磁処理装置Bの本体から交流正弦波を流すコイルを巻き付けてヨーク型コイル部2としている。
【0033】
このように、コイル部2の内部に磁性体でできたコア(芯)を入れると磁力線はコアに沿って流れ易く、配管5の外側で互いに対向する位置にあるコア部より磁力線は配管5内の被処理流体に作用し易くなる。
ヨーク4に用いる磁性材料としては抵抗率の高い物質であればある程、渦電流の影響を受けないので高周波動作が可能になる。抵抗率100Ω・cmのフェライトは、抵抗率9.71×10-6の鉄、抵抗率60×10-6のパーマロイに比べて格段に抵抗率が高いので有利である。
【実施例1】
【0034】
次に下記の試料Aからなる被処理液を用いて机上試験法により市販の信号発生機(前記電磁処理装置A、Bではない別の装置であり、信号発生機((株)エヌエフ回路設計ブロック製の「マルチファンクションシンセサイザ」;型式: WF1943B、仕様:出力電圧 AC4.7V、出力電流0.11Aの正弦波/方形波切り替え方式)を用いて、(1)単一周波数による界面電位変化の確認と(2)方形波と正弦波による電磁処理効果の比較を行った。
【0035】
試料A:炭酸カルシウム粉末4.0gと塩化カリウム0.745gを精製水に溶かして1Lとする。
処理方法は図7に示す従来法の机上試験装置における塩化ビニル製の配管5(内径32mm)の外側に3芯1.25φ(1本当たり太さ1.25φmmの銅製巻線を3本を用いたもの)の巻線表面に塩化ビニル製の皮膜を設けたケーブルを11回巻いたコイル部2を用いて、該配管2の内部には5回前記試料Aを通液させて電磁処理した。
【0036】
このように、本実施例1では単一周波数の影響をコイル型コイル部2に方形波と正弦波を流してその比較している。図10〜図13には単一周波数により電磁処理した結果の顕微鏡の観察結果を示す。
【0037】
机上試験の判定方法は、ガラス板上に滴下した試料は常温で乾燥させた後、顕微鏡を用いて倍率100倍で界面部付近における結晶変化状況から判定している。そして、界面への結晶集合性がある場合には「スケール性有り」と判定し、界面への結晶集合性が無い場合には「スケール性無し」と判定する。また、周波数によるスケール性の違いを見るために方形波と正弦波の机上試験で界面への結晶集合性と界面での結晶反発性を観察した。結果を表1と図9〜図13に示す。
【表1】
【0038】
表1には、 未処理時のスケール性を「+」とし、これを基準として次の様に判定する。このとき、「+」又は「−」の数が多い程、変化が大きい事を表す。
ここで、「+」は界面への結晶集合性(スケール性)を示し、「−」は界面での結晶反発性(スケール低下)を示す。なおスケールが形成されやすい被処理流体が触れる配管又は各種装置内壁面は、元々(−)帯電性があるので、前記「+」は界面への結晶集合性(スケール性)を示し、前記「−」は界面での(スケール形成性の粒子の)の反発性(スケール低下)を示すことになる。
【0039】
図9から図13に机上試験によるスケール性判定の顕微鏡写真(100倍)を示す。図9は電磁処理をしていない(以下、「未処理」という)場合を示し、図10には方形波4,000Hzの電磁処理をした結果を示し、図11は正弦波4,000Hzの電磁処理の結果を示す。図10の方形波処理の場合は界面への結晶集合性が増しているのに対して図11の正弦波処理の場合は図10の方形波処理よりもスケール性の増加傾向が見られる。
【0040】
図12には方形波8,000Hzの電磁処理、図13は正弦波8,000Hzの電磁処理の結果を示す。図12の場合は界面への結晶集合性が低下し、スケール性が低下していることが分かる。また図13の場合も方形波処理の場合と同様に界面への結晶集合性が低下し、スケール性が低下しており、図13に示す場合のスケール性の低下傾向は図12に示す場合より大きくなっている。
【0041】
表1と図9〜図13の結果から、次のことが分かる。
a.界面電位の変化は周波数に大きく依存する。すなわち、4,000Hzおよび10MHzにおいて(+)帯電性の増加を生じ、8,000Hzで最も強い(−)帯電性を示す。
b.方形波と比較して正弦波処理の方が界面電位の変化が大きい。
c.(−)帯電作用の範囲は正弦波の方が方形波の場合より広い。
以上の机上試験の結果から、本発明では電磁処理装置A,Bの出力信号は正弦波の単一周波数を用いることとし、(−)帯電作用は8,000Hz又はその近傍の周波数、(+)帯電作用は4,000Hzもしくはその近傍の周波数を用いることにした。
【実施例2】
【0042】
次に、いずれも正弦波を用いて図7に示すコイルを被処理水配管5に巻き付けた従来法(コイル型)と図8に示す被処理水配管5の対向する両側に端部を有するヨーク4にコイルを巻き付けたヨーク型コイル部2を用いた場合の比較を行なった。机上試験法により下記の被処理水をそれぞれ5回流してスケール性を比較した。結果を表2と図14〜図23にスケール性判定の顕微鏡写真(100倍)を示す。
【0043】
炭酸カルシウム濃度の異なる試料A,Bを用いた。なお、試料Aの成分は先に述べたが、試料Bは以下の通りの成分からなる。
試料B: 炭酸カルシウム粉末10.0gと塩化カリウム0.745gを精製水に溶かして1Lとする。
【0044】
本実施例2ではコイル部2としてコイル型(従来法)とヨーク型を比較するために単一周波数,正弦波を用いて比較している。試料A,Bを用いた。図15〜図23は単一周波数により電磁処理した結果の顕微鏡の観察結果を示す。
【0045】
試料A(未処理時)のスケール性「+」を基準として次の様に判定する(「+」又は「−」の数が多い程、変化が大きい事とする)。
+:界面への結晶集合性(スケール性)を示す。
−:界面での結晶反発性(スケール低下)を示す。
【0046】
試料Aについての顕微鏡写真を図14〜図18に示す。
図14は「未処理」の場合を示し、図15には従来法(コイル型)により4,000Hzの電磁処理、図16はヨーク型により4,000Hzの電磁処理を行った結果を示す。図15の場合は界面への結晶集合性が増しているのに対して図16の場合は従来法(コイル型)よりもスケール性の増加傾向が見られる。
【0047】
図17には従来法(コイル型)により8,000Hzの電磁処理、図18はヨーク型により8,000Hzの電磁処理を行った結果を示す。図17の場合は界面への結晶集合性が低下し、スケール性の低下していることが分かる。また図18の場合は従来法に比較してさらに界面への結晶集合性が低下し、スケール性の低下していることが分かる。
【0048】
次に試料Bについての顕微鏡写真を図19〜図23に示す。
図19は「未処理」の場合を示し、図20には従来法(コイル型)により4,000Hzの電磁処理、図21はヨーク型により4,000Hzの電磁処理をそれぞれ行った結果を示す。図20の場合は界面への結晶集合性が増しているのに対して図21の場合は従来法(コイル型)よりもスケール性の増加傾向が見られる。
【0049】
図22には従来法(コイル型)により8,000Hzの電磁処理、図23はヨーク型により8,000Hzの電磁処理を行った結果を示す。図22の場合は界面への結晶集合性が低下し、スケール性が低下していることが分かる。また図23の場合は従来法(コイル型)に比較してさらに界面への結晶集合性が低下し、スケール性が低下していることが分かる。
【表2】
【0050】
以上のことから、次のようなことが分かった。
a.未処理時におけるスケール性は試料Bの方がカルシウム含有量が多い分、スケール性も高い状態である。
b.正弦波4,000Hzではコイル部2が「ヨーク型」である方が「従来法(コイル型)」である場合よりスケール性の増加傾向が大きい。すなわち、(+)帯電力は「ヨーク型」の方が「従来法(コイル型)」より強い事を示す。
c.さらに、正弦波8,000Hzではではコイル部2が「ヨーク型」である方が「従来法(コイル型)」である場合より「スケール性」は低下している。すなわち、コイル部2は(−)帯電力は「ヨーク型」の方が「従来法(コイル型)」より強い事を示す。
以上、コイル部2として「ヨーク型」とした方が正弦波4,000Hzの(+)帯電力を増加させる作用が増し、同じく正弦波8,000Hzの(−)帯電力を増加させる事が判った。
【実施例3】
【0051】
次にコイル部2として変調電磁場処理による従来法(コイル型)と電磁処理装置による正弦波による単一周波数を用いるヨーク型の比較を行った。
このとき用いる被処理流体は前記試料A(炭酸カルシウム粉末4.0gと塩化カリウム0.745gを精製水に溶かして1Lとした被処理水)である。
【0052】
また、従来法では、図36に示す変調電磁場処理装置C((−)還元型変調電磁場発生装置6aと(+)酸化型変調電磁場発生装置6bを備えている)を用いて主要周波数8,000Hzである方形波を10〜50,000Hzで時間の経過と共に変調させ、図7に示す配管にコイルを巻き付けた従来法(コイル型)で、コイルの出力は最大0.75A(可変)として配管に前記被処理流体を5回繰り返して通液する机上試験を行った。
【0053】
また、ヨーク型では、図2に示す電磁処理装置Aを用いて単一周波数8,000Hzである正弦波を、図8に示す配管を挟む位置に両端を配置したヨーク(フェライト製)にコイルを巻き付け、コイルの出力は0.11Aとして配管に前記被処理流体を5回繰り返して通液する机上試験を行った。
【0054】
上記従来法の変調電磁場処理装置(コイル型)と新規電磁処理装置A(ヨーク型)による机上試験を行った被処理水をガラス板上で乾燥させて得られた界面の顕微鏡写真(100倍)により電磁処理効果の比較判定を行った。
このとき未処理時のスケール性「++」を基準として次の様に判定する。このとき、「+」又は「−」の数が多い程、電磁処理による変化が大きい事とする。
「+」は界面への結晶集合性(スケール性)を示し、「−」は界面での反発性(スケール低下)を示す。
結果を表3と図24〜図28に示す。
【0055】
図24は「未処理」の場合を示し、図25には変調電磁場処理装置Cを用いる従来法(コイル型)により0.15Aでの電磁処理、図26は変調電磁場処理装置Cを用いる従来法(コイル型)により0.50Aで電磁処理、図27は変調電磁場処理装置Cを用いる従来法(コイル型)法により0.75Aで電磁処理をそれぞれ行った結果を示す。図24の未処理の場合は界面への結晶集合性が増して強いスケール性を示しており、また図25に示す場合でも未処理と場合と同様に強いスケール性を示している。図26に示す場合は未処理に比べてスケール性が低下し、更に出力電流を大きくした図27に示す場合はスケール性が大きく低下することが分かった。
【0056】
一方、ヨーク型により8,000Hzという単一周波数の正弦波を出力する電磁処理装置Aを用いる場合は0.11Aという比較的小さい電流でもスケールが消失することが図28から分かった。
以上の結果は表3に示す通りである。
【表3】
【0057】
図24〜図28及び表3の結果から次のことが分かる。
a.電磁場処理装置C(従来法(コイル型))はコイル電流値を上げる事でスケール性の低下が見られる。
b.電磁場処理装置C(従来法(コイル型))ではコイル電流0.75Aに対して電磁処理装置A/ヨーク型ではコイル電流値0.11Aでほぼ同等のスケール防止効果が得られている。
このことから、正弦波(単一の8000Hzの周波数)でヨーク型処理を行うと従来法(コイル型)の変調電磁場処理と比較して、約1/7−1/8程度の出力コイル電流値でスケール防止が可能であることが分かった。
【実施例4】
【0058】
次に前記従来法(コイル型)により変調電磁場処理とヨーク型により単一周波数による電磁処理とをそれぞれ机上試験と実設備による実液試験を行って、各電磁処理による机上試験と液試験の比較を行った。
被処理流体は表4に示す水質を有する某ごみ焼却灰スラリーを用いた。
【表4】
【0059】
電磁処理装置は、従来法(コイル型)では図36に示す変調電磁場処理装置Cを用いて主要周波数8,000Hzである方形波を10〜50,000Hzの範囲で時間の経過と共に変調させ、図7に示す配管5にコイル2を巻き付け、コイル2の出力は最大0.75A(可変)として配管5に前記被処理流体を5回繰り返して通液する机上試験を行った。
【0060】
また、ヨーク型では、図2に示す電磁処理装置Aを用いて単一周波数8,000Hzである正弦波を、図8に示す配管5を挟む位置に両端を配置したヨーク4にコイル2を巻き付け、コイル2の出力は0.11Aとして配管5に前記被処理流体を5回繰り返して通液する机上試験を行った。
【0061】
また、判定方法は未処理時のスケール性「+++」を基準として次の様に判定し、その際に「+」、又は「−」の数が多い程、変化が大きい事とし、「+」は界面への結晶集合性(スケール性)を示し、「−」は界面での反発性(スケール低下)を示す。
結果を図29〜図33と表5に示す。
【0062】
図29は「未処理」の場合を示し、図30には変調電磁場処理装置Cを用いる従来法(コイル型)により0.15Aでの電磁処理、図31は変調電磁場処理装置Cを用いる従来法(コイル型)により0.50Aで電磁処理、図32は変調電磁場処理装置Cを用いる従来法(コイル型)により0.75Aで電磁処理をそれぞれ行った結果を示す。図29の未処理の場合は界面への結晶集合性が増して強いスケール性を示しており、また図30に示す場合でも未処理と場合と同様に強いスケール性を示している。図31に示す場合は未処理に比べてスケール性が低下し、更に出力電流を大きくした図32に示す場合はスケール性が大きく低下することが分かった。
【0063】
一方、ヨーク型により8,000Hzという単一周波数の正弦波を出力する電磁処理装置Aを用いる場合は、0.11Aという比較的小さい電流でも界面への結晶集合性は大きく低下して結晶の分散性が見られ、スケール性が低下していることが図33から分かった。
以上の結果は表5に示す通りである。
【表5】
【0064】
以上のことから、次のようなことが判明した。
a.変調電磁場処理装置Cを用いる従来法(コイル型)はコイル電流値を上げる事でスケール性の低下が見られるが、コイル電流値0.75Aにおいてもスケール性低下効果は小さい。
b.変調電磁場処理装置Cで従来法(コイル型)のコイル電流0.75Aとした場合と比較して電磁処理装置Aでヨーク型コイル電流値を0.11Aの方がスケール低下が顕著である。
このことは、実設備による実液試験を行う場合も模擬水で電磁処理を行う場合と同様の結果が得られることが分かった。電磁処理装置Aによる正弦波8,000Hzの単一周波数でヨーク型処理を行う方が、少ないコイル電流値でスケール防止効果が得られることが分かった。
【0065】
[比較例]
従来の技術である変調電磁場処理(従来法(コイル型))にて出力コイル電流値を増加させた時のスケール性判定結果を次に示す。
被処理流体として火力発電所の脱硫排水処理設備に流入する脱硫排水の流路である原水配管(鋼管80A)の外側に前記3芯1.25φの銅製巻線塩化ビニル皮膜ケーブルを11回巻いたコイル部を設け、該コイル部に変調電磁場発生器から主要周波数を7,000Hzとして10〜50,000Hzの間で時間の経過と共に変調する交流電流を流す。
試験方法は上記実設備の脱硫排水配管に巻いたコイル部のコイル電流値を変化させた場合のスケール性を判定する。
【0066】
図34(a)には変調電磁場処理をしていない、いわゆる未処理の場合の脱硫排水処理設備の排水を常法通り、ガラス板上に滴下して乾燥した流体界面の顕微鏡(100倍)写真を示すように、非常に強いスケール性を示す。また、コイル電流値を0.75Aとしたときのテストの結果を図34(b)に示し、コイル電流値を2.5Aとしたときのテストの結果を図34(c)に示す。
【0067】
図34に示す結果からコイル電流値を0.75Aで変調電磁場処理(従来法(コイル型))をしたときにはスケール性がかなり残っているが、コイル電流値を2.5Aで変調電磁場処理(従来法(コイル型))をしたときのスケール性は未処理と比較して低下傾向が見られるが、界面への結晶集合性は残る。
【0068】
前記脱硫排水処理の実設備に設置した条件にて変調電磁場処理(従来法(コイル型))のための装置を設置して、約6ヶ月間の実証試験を行なったが、排水流路内壁面のスケール付着量の減少と付着物軟質化の効果は確認されたが、スケール付着物の清掃作業は必要であった。
なお、出力コイル電流値を上げる事でスケール性の低下傾向が見られる。
【0069】
より以上の効果を得るためには出力コイル2.5A以上の装置を用いる事で解決されるもと予想される。しかし、出力コイル電流値3A以上の装置の製造には従来の約5〜10倍以上のコストが掛かる事と変調電磁場処理装置の内部回路の耐久性試験等の開発期間を考慮すると低出力コイル電流値でよりスケール防止能力を有する装置又は方法が望ましいことが分かった。
【0070】
また、前記従来の変調電磁場処理装置(従来法(コイル型))を用いる技術ではコイル電流値が少なくてもスケール性を低減化させる方法として薬品との併用処理が行われている。前記脱硫排水処理設備において炭酸ソーダ溶液を注入する事で出力コイル2.5Aにて変調電磁場処理をした場合には、次の図35に示す被処理水のガラス板上の乾燥物の顕微鏡(100倍)写真に示すようなスケール判定結果となり、界面部への結晶集合性は大きく低下している。
しかし、このように変調電磁場処理を薬品処理と併用して行うと、薬注設備及び薬品コストを新たに要することになる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、単一周波数により、少ない電流値でスケール防止能力に優れた電磁処理ができ、高濃度のカルシウム等を含むスケール障害の激しい排ガス脱硫設備、脱硫排水処理設備、焼却灰スラリー処理設備又は高濃度のカルシウムを含む流体収容容器を持つ石灰スラリー溶解・移送設備等のスケール付着除去又はスケール付着防止効果が十分に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本実施例の電磁処理装置Aを用いて得られる交流正弦波9,000Hzの単一周波数を有する信号波形である。
【図2】本実施例の電磁処理装置Aの構成図である。
【図3】本実施例の電磁処理装置Bを用いて得られる交流正弦波4,000Hzの単一周波数を有する信号波形である。
【図4】本実施例の電磁処理装置Aの構成図である。
【図5】本実施例の電磁処理装置のヨーク出力部の平面図である。
【図6】図5のA−A線断面図である。
【図7】従来法(コイル型)の机上試験装置である。
【図8】本発明のヨーク型の机上試験装置である。
【図9】実施例1の試料Aの電磁処理をしていない被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図10】実施例1の試料Aの従来法(コイル型)の単一4,000Hz周波数(方形波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図11】実施例1の試料Aの従来法(コイル型)の単一4,000Hz周波数(正弦波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図12】実施例1の試料Aの従来法(コイル型)の単一8,000Hz周波数(方形波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図13】実施例1の試料Aの従来法(コイル型)の単一8,000Hz周波数(正弦波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図14】実施例2の試料Aの電磁処理をしていない被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図15】実施例2の試料Aの従来法(コイル型)の単一4,000Hz周波数(正弦波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図16】実施例2の試料Aのヨーク型の単一4,000Hz周波数(正弦波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図17】実施例2の試料Aの従来法(コイル型)の単一8,000Hz周波数(正弦波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図18】実施例2の試料Aのヨーク型の単一8,000Hz周波数(正弦波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図19】実施例2の試料Bの電磁処理をしていない被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図20】実施例2の試料Bの従来法(コイル型)の単一4,000Hz周波数(正弦波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図21】実施例2の試料Bのヨーク型の単一4,000Hz周波数(正弦波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図22】実施例2の試料Bの従来法(コイル型)の単一8,000Hz周波数(正弦波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図23】実施例2の試料Bのヨーク型の単一8,000Hz周波数(正弦波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図24】実施例3の試料Aの電磁処理をしていない被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図25】実施例3の試料Aの従来法(コイル型)の0.15Aでの変調電磁波処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図26】実施例3の試料Aの従来法(コイル型)の0.50Aでの変調電磁波処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図27】実施例3の試料Aの従来法(コイル型)の0.75Aでの変調電磁波処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図28】実施例3の試料Aのヨーク型の0.11Aでの単一8,000Hz周波数の正弦波による電磁処理をした被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図29】実施例4の電磁処理をしていない被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図30】変調電磁場処理装置Cを用いる従来法(コイル型)により0.15Aでの電磁処理をした被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図31】変調電磁場処理装置Cを用いる従来法(コイル型)により0.50Aで電磁処理をした被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図32】変調電磁場処理装置Cを用いる従来法(コイル型)により0.75Aで電磁処理をした被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図33】実施例4の8,000Hzの単一周波数の正弦波による電磁処理をした被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図34】従来法による変調電磁場処理/従来法(コイル型)をしていない場合の脱硫排水処理設備の排水を机上試験による流体界面の顕微鏡(100倍)写真(図34(a)と、コイル電流値を0.75Aとしたときの机上試験の結果を示す写真(図34(b))と、コイル電流値を2.5Aとしたときの机上試験の結果を示す写真(図34(c))である。
【図35】変調電磁場処理/従来法(コイル型)による薬品と電磁処理との併用による被処理水の机上試験の顕微鏡写真を示す。
【図36】従来技術の変調電磁場処理装置Cの構成図である。
【図37】図36に示す変調電磁場処理装置Cの還元(−)型変調電磁場発生器を示す。
【図38】図36に示す変調電磁場処理装置Cの酸化(+)型変調電磁場発生器を示す。
【符号の説明】
【0073】
2 コイル(部)
3 交流の単一周波数電磁波発生器
4 ヨーク
5 被処理流体配管
6 交流の変調周波数発生器
7 切替器
A、B 電磁処理装置
C 変調電磁場処理装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁処理装置と方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、先に異なるタイプの被処理流体であっても、それぞれ異なる方式で被処理流体が流れる配管や貯留槽内の壁面のスケール防止及び腐食防止等に対する効果的な変調電磁場処理を可能にする方法とその方法を実施するための装置について特許出願をした。当該特許出願した発明は、具体的には図36に示す被処理流体を照射するためのコイル部2と、該コイル部2に20Hz〜1MHzの帯域で周波数が時間的に変化する交流電流を流す還元(−)型変調電磁場発生器6aと、前記コイル部2に20Hz〜1MHzの帯域で周波数が時間的に変化する交流電流を流す酸化(+)型変調電磁場発生器6bと、前記2つの変調電磁場発生器6a,6bと前記コイル部2との間に前記2つの変調電磁場発生器6a,6bのいずれかを作動させるための切替器7を備えた変調電磁場処理装置を用いるものであり、異なるタイプの被処理流体であっても、それぞれに適した方式で効果的な変調電磁場処理を効果的に行うことができるというものである。
なお、前記還元(−)型変調電磁場発生器6aは図37に示す電子回路を備え、前記酸化(+)型変調電磁場発生器6bは図38に示す電子回路を備えている。
【特許文献1】特開2005−288436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の技術には次のような問題点があった。
まず、一つ目の問題点は、高濃度のカルシウム等を含むスケール障害の激しい排ガス脱硫設備、脱硫排水処理設備、焼却灰スラリー処理設備又は高濃度のカルシウムを含む流体収容容器の内壁にスケールを形成し易い(以下、このことをスケール性があるということがある)石灰スラリー溶解・移送設備等の装置においては、上記特許文献1記載の変調電磁場処理ではスラリー液による装置内壁面へのスケール付着防止効果が十分に得られない事が多い。また、スケール性の軽減効果は見られながら、定期的清掃を必要とする場合がしばしばあった。
【0004】
後述の比較例で説明するように、上記変調電磁場処理にてより実際に稼働している火力発電所の脱硫排水処理設備に流入する排水配管に巻き付けた出力コイルに主要周波数が7,000Hzで10〜50,000Hzの範囲で時間と共に変調した交流電流を流したときのスケール性判定結果を図34(a)〜(c)に示す。
【0005】
図34(a)に変調電磁場処理をしていない(以下「未処理」という)の場合の脱硫排水処理設備の排水を常法通り、ガラス板上に滴下して乾燥した流体界面の顕微鏡(100倍)写真を示すように、非常に強いスケール性を示す。また、コイル電流値を0.75Aとして変調電磁場処理をした後、排水をガラス板上に滴下して乾燥した流体界面の顕微鏡(100倍)写真の結果を図34(b)に示し、同様にコイル電流値を2.5Aとしたときの流体界面の顕微鏡(100倍)写真の結果を図34(c)に示す。
【0006】
図34(a)〜(c)に示す結果からコイル電流値を0.75Aで変調電磁場処理をしたときにはスケール性がかなり残っているが、コイル電流値を2.5Aで変調電磁場処理をしたときのスケール性は未処理と比較して低下傾向が見られるが、界面への結晶集合性は残ることが分かる。
【0007】
前記脱硫排水処理の実設備に前記変調電磁場処理のための装置を設置して、約6ヶ月間の実証試験を行なったが、排水流路内壁面のスケール付着量の減少と付着物軟質化の効果は確認されたが、スケール付着物の清掃作業は必要であった。 なお、実設備でも出力コイル電流値を上げる事でスケール性の低下傾向が見られる。
【0008】
より以上の効果を得るためには出力コイル2.5A以上の装置を用いる事で解決されることが予想される。しかし、出力コイル電流値3A以上の装置の製造には従来の約5〜10倍以上のコストが掛かる事と変調電磁場処理装置の内部回路の耐久性試験等の開発にある程度時間が掛かること低出力コイル電流値でよりスケール防止能力を有する装置又は方法が望ましいことが分かった。
【0009】
また、前記従来の変調電磁場処理装置を用いる技術ではコイル電流値が少なくても、被処理流体のスケール性を低減化させる方法として薬品との併用処理が行われている。前記脱硫排水処理設備において炭酸ソーダ溶液を注入する事で出力コイル2.5Aにて変調電磁場処理をした場合には図35に示す処理水のガラス板上の乾燥物の顕微鏡(100倍)写真に示すようなスケール判定結果となり、界面部への結晶集合性は大きく低下している。
【0010】
しかし、このように変調電磁場処理を薬品処理と併用して行うと、薬注設備及び薬品コストを新たに要することになる。
上記従来の排水配管など被処理流体流路の回りにコイルを巻き付けて、該コイルに時間的に変化する周波数の交流電流を流す変調電磁場処理装置を用いて被処理流体流路にスケールが付着しないようにする方法では流体に強い界面電位変化を生じさせるために、コイル出力電流を大きくする必要があった。そのため、変調電磁場処理装置Cの運転動力費が無視できないことと変調電磁場発生器の内部回路の発熱対策を含み、製造コストが大きくなる問題がある。
【0011】
また、電磁場処理の界面電位変化を阻害する極性を有する薬品等が混入した被処理水を含む設備においては、薬品などの極性を変化させる作用を有する処理を予め行う必要があった。
【0012】
さらに、2つ目の問題点は、従来の配管外側に巻くコイル方式の変調電磁場処理装置Cでは化学工場内の「防爆地区」では消防法の規定によって使用が出来ない欠点がある。
【0013】
そこで、本発明の課題は、上記従来技術に比較して消費電力と設備費が少なく済み、補助薬品の添加もできるだけ必要としないで済む新たな電磁処理装置と電磁処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記本発明の課題は次の解決手段により解決される。
請求項1記載の発明は、被処理流体流路の近傍に配置するフェライト製ヨークにコイルを巻き付けたヨーク型コイル部と、該コイル部に単一の周波数の交流正弦波を流す電磁発生器とを備えた電磁処理装置である。
【0015】
請求項2記載の発明は、ヨーク型コイル部に(a)8,000Hz、又はその近傍の単一周波数、又は(b)4,000Hz又はその近傍の単一周波数の交流正弦波を流す電磁発生器を用いる請求項1記載の電磁処理装置である。
【0016】
請求項3記載の発明は、ヨーク型コイル部を覆う非磁性材料からなる防爆装置を設けた請求項1又は2記載の変調電磁処理装置である。
【0017】
請求項4記載の発明は、被処理流体流路の近傍でフェライト製ヨークに巻き付けたヨーク型コイルに単一周波数の交流正弦波を流して被処理流体を電磁処理することで被処理流体流路又は被処理流体を貯めた装置の壁面のスケール、その他の成分の付着防止及び/又は除去を行う電磁処理方法である。
【0018】
請求項5記載の発明は、被処理流体を流すテスト流路の近傍に設けたフェライト製ヨーク型コイル部に複数の単一周波数の交流正弦波を、それぞれ複数のコイル電流値で流しながらテスト流路中の被処理流体電磁処理した後、該流体を乾燥させ、乾燥後にできる結晶体粒径が小粒子化し、流体乾燥物の界面付近への結晶体の集合性を失う単一の交流正弦波とその適切な電流値を見い出す被処理水の机上試験を行い、
その机上試験法により得られた流体乾燥物の界面付近への結晶体の集合性を失う単一の交流正弦波と該正弦波の電流値により実設備の同一被処理流体の流路又はその近傍に設けたフェライト製ヨークのコイル部を用いて被処理流体を電磁処理する請求項4記載の変調電磁処理方法である。
【0019】
本発明では従来の変調電磁場処理装置が有する問題点を解決するために供給する交流信号として正弦波を用いて被処理流体の界面電位を(−)又は(+)に帯電させる最も効果的な単一周波数を見出し、磁性体材料(ヨーク)にコイルを巻き付けたヨーク型コイル部を設けて、被処理流体流路外側の対極部(流体流路の外側にそれぞれ位置して前記ヨークの両端が互いに対向する位置にある部分)にヨーク両端を配置して電磁場を形成させる事で少ない電流値でスケール防止能力に優れた被処理流体の電磁処理装置と電磁処理方法を提供することができる。
【0020】
図2に示す電磁処理装置Aにより、例えば8,000Hz又はその近傍の単一周波数を有する交流正弦波信号を前記ヨークの両端に出力する。当該電磁処理装置Aは出力コイル部よりフェライト製ヨークを用いて流体配管内を通過するスケール性を有する被処理流体に電磁場を与えて、該流体のスケール性を低下・消失させる効果を有する。前記電磁場は被処理流体より発生するスケール結晶体の界面電位を最もマイナス(−)に帯電させる作用を有するものと考えられる。
【0021】
また、図4に示す電磁処理装置Bにより、例えば4,000Hz又はその近傍の単一周波数を有する交流正弦波信号を前記ヨークの両端に出力する。当該電磁処理装置Bはヨーク型コイル部より配管内を通過するスケール性を有する被処理流体に電磁場を与えて、該流体のスケール性を低下・消失させる効果を有する。前記電磁場は被処理流体より発生するスケール結晶体の界面電位を最もプラス(+)に帯電させる作用を有するものと考えられる。
【0022】
従来の流体配管外側にコイルを巻き、変調した交流方形波を出力する電磁場処理装置を用いた場合と比較して本発明の単一周波数を有する交流正弦波信号を出力する図2に示す電磁処理装置A又は単一周波数を有する交流正弦波信号を出力する図4に示す電磁処理装置Bと磁性体(フェライト等)のヨークからなるヨーク型コイル部を用いる方法では、より強い界面電位変化を生む事が判った。
【0023】
また、本発明の電磁場処理では前記変調した交流の方形波を出力する従来の変調電磁場処理装置と異なり、正弦波の周波数を(a)8,000Hz又はその近傍に、更には(b)4,000Hz又はその近傍に変える事で界面電位をマイナス(−)側へ変化させたり、プラス(+)側へ変化させる事が可能となり、1台の電磁処理装置で両極性の界面電位を変化させ、適用させる事が可能となった。
【0024】
特に、スケール性を有する被処理流体が流れる配管を挟んでヨーク型コイル部の「コ」字状の磁性体ヨークの両端から流体流路内を流れる被処理流体に電磁場を与えて、該被処理流体のスケール性を低下・消失させる効果を有する。
【0025】
また、本発明によれば、従来必要であった大きいコイル出力電流を流す装置が不要となり、電流を上げなくても界面電位を大きく変化させる作用が得られる。特に、スケール性の高い石灰及び消石灰スラリー等の溶解移送設備、脱硫設備等の高濃度カルシウム含有液の収納設備において効果的である。また、電磁処理の界面電位変化を阻害する極性を有する薬品等が混入する設備においても、その極性を変化させる作用が強い事から充分に前記極性に打ち消す能力を有し、仮に打ち消す事が困難であっても8,000Hz又は4,000Hzの周波数を切り替えることで、被処理流体のスケール性を低下させる最も効果的な界面電位の極性を選択して処理が可能である利点を有する。
【0026】
なお、電磁処理装置A(図2)又は電磁処理装置B(図4)のいずれの機能を適用するかについては、電磁処理済みの流体をガラス板上で乾燥させ、乾燥界面付近の顕微鏡観察による前記界面付近の結晶集合性の有無にて判定する机上試験によりスケール性有無と極性の確認を行ってから決定し、実設備での電磁処理時においては机上試験により得られた適合する極性とコイル電流値により電磁処理を行う必要がある。
【発明の効果】
【0027】
請求項1、2、4記載の発明によれば、交流信号として正弦波を用いて被処理流体の界面電位を(−)又は(+)に帯電させる最も効果的な単一周波数により、少ない電流値でスケール防止能力に優れた電磁処理ができ、高濃度のカルシウム等を含むスケール障害の激しい排ガス脱硫設備、脱硫排水処理設備、焼却灰スラリー処理設備又は高濃度のカルシウムを含む流体収容容器を持つ石灰スラリー溶解・移送設備等のスケール付着除去又はスケール付着防止効果が十分に得られる。
【0028】
また、請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、ヨーク型コイル部を非磁性体材料(アルミ等)で覆う事で「防爆地区」での使用が可能となる。
【0029】
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の発明の効果に加えて、被処理流体の電磁処理効果を判定する被処理水の机上試験を行うことで、適切な単一周波数の正弦波とコイル電流値を見極めて実設備に適用することができ、経済的にかつ迅速に電磁場処理ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の実施例について図面と共に説明する。
本実施例の電磁処理装置としては、下記の電磁処理装置Aと電磁処理装置Bのいずれかを用いる。なお、方形波等の電磁処理用の交流信号形態の影響及びコイル型コイル部とヨーク型コイル部の比較については市販の周波数変換器を用いて実施した。市販の周波数変換器及び増幅器を使用する場合、最大0.5A程度の出力が可能であるが、装置が高価であることと周波数変換器と増幅器の信号を調整するには専門的取り扱い技術を要することより、次の電磁処理装置A及びBを開発した。
【0031】
電磁処理装置Aは図2のブロック図に示す構成からなり、8kHzの発振器と増幅器と同調回路からなり、該電磁処理装置Aから出力する信号は図1に示す信号波形を有する交流正弦波8,000Hzの単一周波数である。
電磁処理装置Bは図4のブロック図に示す構成からなり、該装置Bから出力する信号は図3に示す信号波形からなる交流正弦波4,000Hzの単一周波数を有する。
【0032】
また、電磁処理装置Aと電磁処理装置Bのヨーク型コイル部の概略図を図5の平面図と図6の図5のA−A線矢視図にそれぞれ示す。図5、図6に示すように被処理流体が通過する配管5の外側に、該配管5とは間隔をあけて強磁性体材料からなる「コ」字状のヨーク4を配置する。そして該ヨーク4の両端がそれぞれ配管5の外側の対向する位置に向かい合わせとなるように配置して、該ヨーク4の中央部に電磁処理装置Aと電磁処理装置Bの本体から交流正弦波を流すコイルを巻き付けてヨーク型コイル部2としている。
【0033】
このように、コイル部2の内部に磁性体でできたコア(芯)を入れると磁力線はコアに沿って流れ易く、配管5の外側で互いに対向する位置にあるコア部より磁力線は配管5内の被処理流体に作用し易くなる。
ヨーク4に用いる磁性材料としては抵抗率の高い物質であればある程、渦電流の影響を受けないので高周波動作が可能になる。抵抗率100Ω・cmのフェライトは、抵抗率9.71×10-6の鉄、抵抗率60×10-6のパーマロイに比べて格段に抵抗率が高いので有利である。
【実施例1】
【0034】
次に下記の試料Aからなる被処理液を用いて机上試験法により市販の信号発生機(前記電磁処理装置A、Bではない別の装置であり、信号発生機((株)エヌエフ回路設計ブロック製の「マルチファンクションシンセサイザ」;型式: WF1943B、仕様:出力電圧 AC4.7V、出力電流0.11Aの正弦波/方形波切り替え方式)を用いて、(1)単一周波数による界面電位変化の確認と(2)方形波と正弦波による電磁処理効果の比較を行った。
【0035】
試料A:炭酸カルシウム粉末4.0gと塩化カリウム0.745gを精製水に溶かして1Lとする。
処理方法は図7に示す従来法の机上試験装置における塩化ビニル製の配管5(内径32mm)の外側に3芯1.25φ(1本当たり太さ1.25φmmの銅製巻線を3本を用いたもの)の巻線表面に塩化ビニル製の皮膜を設けたケーブルを11回巻いたコイル部2を用いて、該配管2の内部には5回前記試料Aを通液させて電磁処理した。
【0036】
このように、本実施例1では単一周波数の影響をコイル型コイル部2に方形波と正弦波を流してその比較している。図10〜図13には単一周波数により電磁処理した結果の顕微鏡の観察結果を示す。
【0037】
机上試験の判定方法は、ガラス板上に滴下した試料は常温で乾燥させた後、顕微鏡を用いて倍率100倍で界面部付近における結晶変化状況から判定している。そして、界面への結晶集合性がある場合には「スケール性有り」と判定し、界面への結晶集合性が無い場合には「スケール性無し」と判定する。また、周波数によるスケール性の違いを見るために方形波と正弦波の机上試験で界面への結晶集合性と界面での結晶反発性を観察した。結果を表1と図9〜図13に示す。
【表1】
【0038】
表1には、 未処理時のスケール性を「+」とし、これを基準として次の様に判定する。このとき、「+」又は「−」の数が多い程、変化が大きい事を表す。
ここで、「+」は界面への結晶集合性(スケール性)を示し、「−」は界面での結晶反発性(スケール低下)を示す。なおスケールが形成されやすい被処理流体が触れる配管又は各種装置内壁面は、元々(−)帯電性があるので、前記「+」は界面への結晶集合性(スケール性)を示し、前記「−」は界面での(スケール形成性の粒子の)の反発性(スケール低下)を示すことになる。
【0039】
図9から図13に机上試験によるスケール性判定の顕微鏡写真(100倍)を示す。図9は電磁処理をしていない(以下、「未処理」という)場合を示し、図10には方形波4,000Hzの電磁処理をした結果を示し、図11は正弦波4,000Hzの電磁処理の結果を示す。図10の方形波処理の場合は界面への結晶集合性が増しているのに対して図11の正弦波処理の場合は図10の方形波処理よりもスケール性の増加傾向が見られる。
【0040】
図12には方形波8,000Hzの電磁処理、図13は正弦波8,000Hzの電磁処理の結果を示す。図12の場合は界面への結晶集合性が低下し、スケール性が低下していることが分かる。また図13の場合も方形波処理の場合と同様に界面への結晶集合性が低下し、スケール性が低下しており、図13に示す場合のスケール性の低下傾向は図12に示す場合より大きくなっている。
【0041】
表1と図9〜図13の結果から、次のことが分かる。
a.界面電位の変化は周波数に大きく依存する。すなわち、4,000Hzおよび10MHzにおいて(+)帯電性の増加を生じ、8,000Hzで最も強い(−)帯電性を示す。
b.方形波と比較して正弦波処理の方が界面電位の変化が大きい。
c.(−)帯電作用の範囲は正弦波の方が方形波の場合より広い。
以上の机上試験の結果から、本発明では電磁処理装置A,Bの出力信号は正弦波の単一周波数を用いることとし、(−)帯電作用は8,000Hz又はその近傍の周波数、(+)帯電作用は4,000Hzもしくはその近傍の周波数を用いることにした。
【実施例2】
【0042】
次に、いずれも正弦波を用いて図7に示すコイルを被処理水配管5に巻き付けた従来法(コイル型)と図8に示す被処理水配管5の対向する両側に端部を有するヨーク4にコイルを巻き付けたヨーク型コイル部2を用いた場合の比較を行なった。机上試験法により下記の被処理水をそれぞれ5回流してスケール性を比較した。結果を表2と図14〜図23にスケール性判定の顕微鏡写真(100倍)を示す。
【0043】
炭酸カルシウム濃度の異なる試料A,Bを用いた。なお、試料Aの成分は先に述べたが、試料Bは以下の通りの成分からなる。
試料B: 炭酸カルシウム粉末10.0gと塩化カリウム0.745gを精製水に溶かして1Lとする。
【0044】
本実施例2ではコイル部2としてコイル型(従来法)とヨーク型を比較するために単一周波数,正弦波を用いて比較している。試料A,Bを用いた。図15〜図23は単一周波数により電磁処理した結果の顕微鏡の観察結果を示す。
【0045】
試料A(未処理時)のスケール性「+」を基準として次の様に判定する(「+」又は「−」の数が多い程、変化が大きい事とする)。
+:界面への結晶集合性(スケール性)を示す。
−:界面での結晶反発性(スケール低下)を示す。
【0046】
試料Aについての顕微鏡写真を図14〜図18に示す。
図14は「未処理」の場合を示し、図15には従来法(コイル型)により4,000Hzの電磁処理、図16はヨーク型により4,000Hzの電磁処理を行った結果を示す。図15の場合は界面への結晶集合性が増しているのに対して図16の場合は従来法(コイル型)よりもスケール性の増加傾向が見られる。
【0047】
図17には従来法(コイル型)により8,000Hzの電磁処理、図18はヨーク型により8,000Hzの電磁処理を行った結果を示す。図17の場合は界面への結晶集合性が低下し、スケール性の低下していることが分かる。また図18の場合は従来法に比較してさらに界面への結晶集合性が低下し、スケール性の低下していることが分かる。
【0048】
次に試料Bについての顕微鏡写真を図19〜図23に示す。
図19は「未処理」の場合を示し、図20には従来法(コイル型)により4,000Hzの電磁処理、図21はヨーク型により4,000Hzの電磁処理をそれぞれ行った結果を示す。図20の場合は界面への結晶集合性が増しているのに対して図21の場合は従来法(コイル型)よりもスケール性の増加傾向が見られる。
【0049】
図22には従来法(コイル型)により8,000Hzの電磁処理、図23はヨーク型により8,000Hzの電磁処理を行った結果を示す。図22の場合は界面への結晶集合性が低下し、スケール性が低下していることが分かる。また図23の場合は従来法(コイル型)に比較してさらに界面への結晶集合性が低下し、スケール性が低下していることが分かる。
【表2】
【0050】
以上のことから、次のようなことが分かった。
a.未処理時におけるスケール性は試料Bの方がカルシウム含有量が多い分、スケール性も高い状態である。
b.正弦波4,000Hzではコイル部2が「ヨーク型」である方が「従来法(コイル型)」である場合よりスケール性の増加傾向が大きい。すなわち、(+)帯電力は「ヨーク型」の方が「従来法(コイル型)」より強い事を示す。
c.さらに、正弦波8,000Hzではではコイル部2が「ヨーク型」である方が「従来法(コイル型)」である場合より「スケール性」は低下している。すなわち、コイル部2は(−)帯電力は「ヨーク型」の方が「従来法(コイル型)」より強い事を示す。
以上、コイル部2として「ヨーク型」とした方が正弦波4,000Hzの(+)帯電力を増加させる作用が増し、同じく正弦波8,000Hzの(−)帯電力を増加させる事が判った。
【実施例3】
【0051】
次にコイル部2として変調電磁場処理による従来法(コイル型)と電磁処理装置による正弦波による単一周波数を用いるヨーク型の比較を行った。
このとき用いる被処理流体は前記試料A(炭酸カルシウム粉末4.0gと塩化カリウム0.745gを精製水に溶かして1Lとした被処理水)である。
【0052】
また、従来法では、図36に示す変調電磁場処理装置C((−)還元型変調電磁場発生装置6aと(+)酸化型変調電磁場発生装置6bを備えている)を用いて主要周波数8,000Hzである方形波を10〜50,000Hzで時間の経過と共に変調させ、図7に示す配管にコイルを巻き付けた従来法(コイル型)で、コイルの出力は最大0.75A(可変)として配管に前記被処理流体を5回繰り返して通液する机上試験を行った。
【0053】
また、ヨーク型では、図2に示す電磁処理装置Aを用いて単一周波数8,000Hzである正弦波を、図8に示す配管を挟む位置に両端を配置したヨーク(フェライト製)にコイルを巻き付け、コイルの出力は0.11Aとして配管に前記被処理流体を5回繰り返して通液する机上試験を行った。
【0054】
上記従来法の変調電磁場処理装置(コイル型)と新規電磁処理装置A(ヨーク型)による机上試験を行った被処理水をガラス板上で乾燥させて得られた界面の顕微鏡写真(100倍)により電磁処理効果の比較判定を行った。
このとき未処理時のスケール性「++」を基準として次の様に判定する。このとき、「+」又は「−」の数が多い程、電磁処理による変化が大きい事とする。
「+」は界面への結晶集合性(スケール性)を示し、「−」は界面での反発性(スケール低下)を示す。
結果を表3と図24〜図28に示す。
【0055】
図24は「未処理」の場合を示し、図25には変調電磁場処理装置Cを用いる従来法(コイル型)により0.15Aでの電磁処理、図26は変調電磁場処理装置Cを用いる従来法(コイル型)により0.50Aで電磁処理、図27は変調電磁場処理装置Cを用いる従来法(コイル型)法により0.75Aで電磁処理をそれぞれ行った結果を示す。図24の未処理の場合は界面への結晶集合性が増して強いスケール性を示しており、また図25に示す場合でも未処理と場合と同様に強いスケール性を示している。図26に示す場合は未処理に比べてスケール性が低下し、更に出力電流を大きくした図27に示す場合はスケール性が大きく低下することが分かった。
【0056】
一方、ヨーク型により8,000Hzという単一周波数の正弦波を出力する電磁処理装置Aを用いる場合は0.11Aという比較的小さい電流でもスケールが消失することが図28から分かった。
以上の結果は表3に示す通りである。
【表3】
【0057】
図24〜図28及び表3の結果から次のことが分かる。
a.電磁場処理装置C(従来法(コイル型))はコイル電流値を上げる事でスケール性の低下が見られる。
b.電磁場処理装置C(従来法(コイル型))ではコイル電流0.75Aに対して電磁処理装置A/ヨーク型ではコイル電流値0.11Aでほぼ同等のスケール防止効果が得られている。
このことから、正弦波(単一の8000Hzの周波数)でヨーク型処理を行うと従来法(コイル型)の変調電磁場処理と比較して、約1/7−1/8程度の出力コイル電流値でスケール防止が可能であることが分かった。
【実施例4】
【0058】
次に前記従来法(コイル型)により変調電磁場処理とヨーク型により単一周波数による電磁処理とをそれぞれ机上試験と実設備による実液試験を行って、各電磁処理による机上試験と液試験の比較を行った。
被処理流体は表4に示す水質を有する某ごみ焼却灰スラリーを用いた。
【表4】
【0059】
電磁処理装置は、従来法(コイル型)では図36に示す変調電磁場処理装置Cを用いて主要周波数8,000Hzである方形波を10〜50,000Hzの範囲で時間の経過と共に変調させ、図7に示す配管5にコイル2を巻き付け、コイル2の出力は最大0.75A(可変)として配管5に前記被処理流体を5回繰り返して通液する机上試験を行った。
【0060】
また、ヨーク型では、図2に示す電磁処理装置Aを用いて単一周波数8,000Hzである正弦波を、図8に示す配管5を挟む位置に両端を配置したヨーク4にコイル2を巻き付け、コイル2の出力は0.11Aとして配管5に前記被処理流体を5回繰り返して通液する机上試験を行った。
【0061】
また、判定方法は未処理時のスケール性「+++」を基準として次の様に判定し、その際に「+」、又は「−」の数が多い程、変化が大きい事とし、「+」は界面への結晶集合性(スケール性)を示し、「−」は界面での反発性(スケール低下)を示す。
結果を図29〜図33と表5に示す。
【0062】
図29は「未処理」の場合を示し、図30には変調電磁場処理装置Cを用いる従来法(コイル型)により0.15Aでの電磁処理、図31は変調電磁場処理装置Cを用いる従来法(コイル型)により0.50Aで電磁処理、図32は変調電磁場処理装置Cを用いる従来法(コイル型)により0.75Aで電磁処理をそれぞれ行った結果を示す。図29の未処理の場合は界面への結晶集合性が増して強いスケール性を示しており、また図30に示す場合でも未処理と場合と同様に強いスケール性を示している。図31に示す場合は未処理に比べてスケール性が低下し、更に出力電流を大きくした図32に示す場合はスケール性が大きく低下することが分かった。
【0063】
一方、ヨーク型により8,000Hzという単一周波数の正弦波を出力する電磁処理装置Aを用いる場合は、0.11Aという比較的小さい電流でも界面への結晶集合性は大きく低下して結晶の分散性が見られ、スケール性が低下していることが図33から分かった。
以上の結果は表5に示す通りである。
【表5】
【0064】
以上のことから、次のようなことが判明した。
a.変調電磁場処理装置Cを用いる従来法(コイル型)はコイル電流値を上げる事でスケール性の低下が見られるが、コイル電流値0.75Aにおいてもスケール性低下効果は小さい。
b.変調電磁場処理装置Cで従来法(コイル型)のコイル電流0.75Aとした場合と比較して電磁処理装置Aでヨーク型コイル電流値を0.11Aの方がスケール低下が顕著である。
このことは、実設備による実液試験を行う場合も模擬水で電磁処理を行う場合と同様の結果が得られることが分かった。電磁処理装置Aによる正弦波8,000Hzの単一周波数でヨーク型処理を行う方が、少ないコイル電流値でスケール防止効果が得られることが分かった。
【0065】
[比較例]
従来の技術である変調電磁場処理(従来法(コイル型))にて出力コイル電流値を増加させた時のスケール性判定結果を次に示す。
被処理流体として火力発電所の脱硫排水処理設備に流入する脱硫排水の流路である原水配管(鋼管80A)の外側に前記3芯1.25φの銅製巻線塩化ビニル皮膜ケーブルを11回巻いたコイル部を設け、該コイル部に変調電磁場発生器から主要周波数を7,000Hzとして10〜50,000Hzの間で時間の経過と共に変調する交流電流を流す。
試験方法は上記実設備の脱硫排水配管に巻いたコイル部のコイル電流値を変化させた場合のスケール性を判定する。
【0066】
図34(a)には変調電磁場処理をしていない、いわゆる未処理の場合の脱硫排水処理設備の排水を常法通り、ガラス板上に滴下して乾燥した流体界面の顕微鏡(100倍)写真を示すように、非常に強いスケール性を示す。また、コイル電流値を0.75Aとしたときのテストの結果を図34(b)に示し、コイル電流値を2.5Aとしたときのテストの結果を図34(c)に示す。
【0067】
図34に示す結果からコイル電流値を0.75Aで変調電磁場処理(従来法(コイル型))をしたときにはスケール性がかなり残っているが、コイル電流値を2.5Aで変調電磁場処理(従来法(コイル型))をしたときのスケール性は未処理と比較して低下傾向が見られるが、界面への結晶集合性は残る。
【0068】
前記脱硫排水処理の実設備に設置した条件にて変調電磁場処理(従来法(コイル型))のための装置を設置して、約6ヶ月間の実証試験を行なったが、排水流路内壁面のスケール付着量の減少と付着物軟質化の効果は確認されたが、スケール付着物の清掃作業は必要であった。
なお、出力コイル電流値を上げる事でスケール性の低下傾向が見られる。
【0069】
より以上の効果を得るためには出力コイル2.5A以上の装置を用いる事で解決されるもと予想される。しかし、出力コイル電流値3A以上の装置の製造には従来の約5〜10倍以上のコストが掛かる事と変調電磁場処理装置の内部回路の耐久性試験等の開発期間を考慮すると低出力コイル電流値でよりスケール防止能力を有する装置又は方法が望ましいことが分かった。
【0070】
また、前記従来の変調電磁場処理装置(従来法(コイル型))を用いる技術ではコイル電流値が少なくてもスケール性を低減化させる方法として薬品との併用処理が行われている。前記脱硫排水処理設備において炭酸ソーダ溶液を注入する事で出力コイル2.5Aにて変調電磁場処理をした場合には、次の図35に示す被処理水のガラス板上の乾燥物の顕微鏡(100倍)写真に示すようなスケール判定結果となり、界面部への結晶集合性は大きく低下している。
しかし、このように変調電磁場処理を薬品処理と併用して行うと、薬注設備及び薬品コストを新たに要することになる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、単一周波数により、少ない電流値でスケール防止能力に優れた電磁処理ができ、高濃度のカルシウム等を含むスケール障害の激しい排ガス脱硫設備、脱硫排水処理設備、焼却灰スラリー処理設備又は高濃度のカルシウムを含む流体収容容器を持つ石灰スラリー溶解・移送設備等のスケール付着除去又はスケール付着防止効果が十分に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本実施例の電磁処理装置Aを用いて得られる交流正弦波9,000Hzの単一周波数を有する信号波形である。
【図2】本実施例の電磁処理装置Aの構成図である。
【図3】本実施例の電磁処理装置Bを用いて得られる交流正弦波4,000Hzの単一周波数を有する信号波形である。
【図4】本実施例の電磁処理装置Aの構成図である。
【図5】本実施例の電磁処理装置のヨーク出力部の平面図である。
【図6】図5のA−A線断面図である。
【図7】従来法(コイル型)の机上試験装置である。
【図8】本発明のヨーク型の机上試験装置である。
【図9】実施例1の試料Aの電磁処理をしていない被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図10】実施例1の試料Aの従来法(コイル型)の単一4,000Hz周波数(方形波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図11】実施例1の試料Aの従来法(コイル型)の単一4,000Hz周波数(正弦波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図12】実施例1の試料Aの従来法(コイル型)の単一8,000Hz周波数(方形波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図13】実施例1の試料Aの従来法(コイル型)の単一8,000Hz周波数(正弦波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図14】実施例2の試料Aの電磁処理をしていない被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図15】実施例2の試料Aの従来法(コイル型)の単一4,000Hz周波数(正弦波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図16】実施例2の試料Aのヨーク型の単一4,000Hz周波数(正弦波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図17】実施例2の試料Aの従来法(コイル型)の単一8,000Hz周波数(正弦波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図18】実施例2の試料Aのヨーク型の単一8,000Hz周波数(正弦波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図19】実施例2の試料Bの電磁処理をしていない被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図20】実施例2の試料Bの従来法(コイル型)の単一4,000Hz周波数(正弦波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図21】実施例2の試料Bのヨーク型の単一4,000Hz周波数(正弦波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図22】実施例2の試料Bの従来法(コイル型)の単一8,000Hz周波数(正弦波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図23】実施例2の試料Bのヨーク型の単一8,000Hz周波数(正弦波)の電磁処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図24】実施例3の試料Aの電磁処理をしていない被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図25】実施例3の試料Aの従来法(コイル型)の0.15Aでの変調電磁波処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図26】実施例3の試料Aの従来法(コイル型)の0.50Aでの変調電磁波処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図27】実施例3の試料Aの従来法(コイル型)の0.75Aでの変調電磁波処理による被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図28】実施例3の試料Aのヨーク型の0.11Aでの単一8,000Hz周波数の正弦波による電磁処理をした被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図29】実施例4の電磁処理をしていない被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図30】変調電磁場処理装置Cを用いる従来法(コイル型)により0.15Aでの電磁処理をした被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図31】変調電磁場処理装置Cを用いる従来法(コイル型)により0.50Aで電磁処理をした被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図32】変調電磁場処理装置Cを用いる従来法(コイル型)により0.75Aで電磁処理をした被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図33】実施例4の8,000Hzの単一周波数の正弦波による電磁処理をした被処理水の乾燥界面の顕微鏡写真である。
【図34】従来法による変調電磁場処理/従来法(コイル型)をしていない場合の脱硫排水処理設備の排水を机上試験による流体界面の顕微鏡(100倍)写真(図34(a)と、コイル電流値を0.75Aとしたときの机上試験の結果を示す写真(図34(b))と、コイル電流値を2.5Aとしたときの机上試験の結果を示す写真(図34(c))である。
【図35】変調電磁場処理/従来法(コイル型)による薬品と電磁処理との併用による被処理水の机上試験の顕微鏡写真を示す。
【図36】従来技術の変調電磁場処理装置Cの構成図である。
【図37】図36に示す変調電磁場処理装置Cの還元(−)型変調電磁場発生器を示す。
【図38】図36に示す変調電磁場処理装置Cの酸化(+)型変調電磁場発生器を示す。
【符号の説明】
【0073】
2 コイル(部)
3 交流の単一周波数電磁波発生器
4 ヨーク
5 被処理流体配管
6 交流の変調周波数発生器
7 切替器
A、B 電磁処理装置
C 変調電磁場処理装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理流体流路の近傍に配置するフェライト製ヨークにコイルを巻き付けたヨーク型コイル部と、該コイル部に単一の周波数の交流正弦波を流す電磁発生器とを備えたことを特徴とする電磁処理装置。
【請求項2】
ヨーク型コイル部に(a)8,000Hz、又はその近傍の単一周波数、又は(b)4,000Hz又はその近傍の単一周波数の交流正弦波を流す電磁発生器を用いることを特徴とする請求項1記載の電磁処理装置。
【請求項3】
ヨーク型コイル部を覆う非磁性材料からなる防爆装置を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の変調電磁処理装置。
【請求項4】
被処理流体流路の近傍でフェライト製ヨークに巻き付けたヨーク型コイルに単一周波数の交流正弦波を流して被処理流体を電磁処理することで被処理流体流路又は被処理流体を貯めた装置の壁面のスケール、その他の成分の付着防止及び/又は除去を行うことを特徴とする電磁処理方法。
【請求項5】
被処理流体を流すテスト流路の近傍に設けたフェライト製ヨーク型のコイル部に複数の単一周波数の交流正弦波を、それぞれ複数のコイル電流値で流しながらテスト流路中の被処理流体電磁処理した後、該流体を乾燥させ、乾燥後にできる結晶体粒径が小粒子化し、流体乾燥物の界面付近への結晶体の集合性を失う単一の交流正弦波とその適切な電流値を見い出す被処理水の机上試験を行い、その机上試験法により得られた流体乾燥物の界面付近への結晶体の集合性を失う単一の交流正弦波と該正弦波の電流値により実設備の同一被処理流体の流路又はその近傍に設けたフェライト製ヨークのコイル部を用いて被処理流体を電磁処理することを特徴とする請求項4記載の変調電磁処理方法。
【請求項1】
被処理流体流路の近傍に配置するフェライト製ヨークにコイルを巻き付けたヨーク型コイル部と、該コイル部に単一の周波数の交流正弦波を流す電磁発生器とを備えたことを特徴とする電磁処理装置。
【請求項2】
ヨーク型コイル部に(a)8,000Hz、又はその近傍の単一周波数、又は(b)4,000Hz又はその近傍の単一周波数の交流正弦波を流す電磁発生器を用いることを特徴とする請求項1記載の電磁処理装置。
【請求項3】
ヨーク型コイル部を覆う非磁性材料からなる防爆装置を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の変調電磁処理装置。
【請求項4】
被処理流体流路の近傍でフェライト製ヨークに巻き付けたヨーク型コイルに単一周波数の交流正弦波を流して被処理流体を電磁処理することで被処理流体流路又は被処理流体を貯めた装置の壁面のスケール、その他の成分の付着防止及び/又は除去を行うことを特徴とする電磁処理方法。
【請求項5】
被処理流体を流すテスト流路の近傍に設けたフェライト製ヨーク型のコイル部に複数の単一周波数の交流正弦波を、それぞれ複数のコイル電流値で流しながらテスト流路中の被処理流体電磁処理した後、該流体を乾燥させ、乾燥後にできる結晶体粒径が小粒子化し、流体乾燥物の界面付近への結晶体の集合性を失う単一の交流正弦波とその適切な電流値を見い出す被処理水の机上試験を行い、その机上試験法により得られた流体乾燥物の界面付近への結晶体の集合性を失う単一の交流正弦波と該正弦波の電流値により実設備の同一被処理流体の流路又はその近傍に設けたフェライト製ヨークのコイル部を用いて被処理流体を電磁処理することを特徴とする請求項4記載の変調電磁処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
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【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【公開番号】特開2010−110667(P2010−110667A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283489(P2008−283489)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000222048)東北特殊鋼株式会社 (15)
【出願人】(598084666)株式会社第一テクノ (8)
【出願人】(503229661)株式会社テクノラボ (4)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000222048)東北特殊鋼株式会社 (15)
【出願人】(598084666)株式会社第一テクノ (8)
【出願人】(503229661)株式会社テクノラボ (4)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
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