説明

電磁操作形遮断器

【課題】電磁操作形遮断器の遮断部と操作器との配置構成を改良し、該遮断器の小型化を図る。
【解決手段】 3相の真空バルブ2A〜2C(および絶縁ケース3A〜3C)を、それぞれ所定間隔を隔てて並列に配置(一列に配置)する。電磁操作器4においては、真空バルブ2A〜2C(および絶縁ケース3A〜3C)に対して並列するように、相間領域3Dの床面5Bに対して配置する。前記の相間領域3Dに対する電磁操作器4の配置構成は、その電磁操作器4の少なくとも一部が相間領域3D内に位置するように配置(例えば、絶縁ケース3A〜3Cと2個の電磁操作器4とが千鳥足状で交互に配置)する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列に配置された複数相の遮断部と、それら各遮断部を電力的に開閉させる電磁操作器と、から成る電磁操作形遮断器であって、その遮断部や操作器の配置構成に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な遮断器として用いられている真空遮断器は、例えば3相の真空バルブ内に固定電極および可動電極を互いに対向するように配置(対向配置)し、それら各電極の背面には該背面から真空バルブ外側方向に対してそれぞれ延設された導電性の固定側ロッド,可動側ロッドが備えられている。そして、可動側ロッドを固定電極に対して往復運動させることにより、その可動電極が固定電極に対して接離し、可動電極と固定電極とが電気的に開閉する。真空遮断器では、前記の各電極の電気的開閉を操作器で行なうように構成される。
【0003】
3相真空バルブ内の電極背面から真空バルブ外側方向に延設される導電性のロッドは、例えば回動自在な操作レバー(例えば、回動軸を介して支持された操作レバー)の一端側に連結(操作レバーの回動に応じてロッドが移動するように連結)され、その操作レバーの他端側は操作器の操作ロッドに連結(操作ロッドの動作に応じて操作レバーが回動するように連結)される。前記の操作器は電磁力やバネの弾性力等による往復運動を操作ロッドに伝達するものであり、その操作ロッドの動作力は操作レバー,回動軸,可動側ロッドを介して電極を電気的に開閉させ、真空バルブの電力を電気的に開閉する遮断部の機能を果たす。
【0004】
また、前記の操作器は、3相の真空バルブが並列に配置(一列に配置)される領域(各真空バルブ(および絶縁ケース等)等の遮断部を配置するために確保される領域;以下、遮断部配置領域と称する)の外周側に対し、隣接して配置される。この配置構成としては、3相の真空バルブが並列に配置される方向(以下、真空バルブ並列方向と称する)と同方向に配置(すなわち、3相の真空バルブと操作器とが一列に配置;例えば、特許文献1等)、または真空バルブ並列方向に対して直角な方向(以下、真空バルブ直交方向と称する)の一方側(例えば、遮断器の正面側)に配置した構成が知られている。
【特許文献1】特開平8―222091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記の2つの配置構成のうち、前者では操作器を収納した操作箱が遮断部配置領域の外周側における真空バルブ並列方向(すなわち、真空遮断器の幅方向)の一方側に配置されるため、真空遮断器の幅寸法が大きくなる恐れがある。また、後者の配置構成では、遮断部配置領域の外周側における真空バルブ直交方向(すなわち、真空遮断器の奥行方向)に配置されるため、真空遮断器の奥行寸法が大きくなる恐れがある。したがって、いずれの配置構成においても、真空遮断器が大型化してしまう傾向を有する。
【0006】
本発明の目的は、前記課題に基づいてなされたものであり、遮断器における操作器(遮断部を電気的に開閉する操作器)の配置構成を改良して小型化された電磁操作形遮断器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題の解決を図るために、請求項1記載の発明は、並列に配置された複数相の遮断部と、それら各遮断部を電気的に開閉させる電磁操作器と、を備えた遮断器であって、前記の電磁操作器の少なくとも一部を、前記の各遮断部間に形成された相間領域に配置することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記の各遮断部を覆うように絶縁バリヤをそれぞれ設け、前記の各絶縁バリヤ間に形成された相間領域に対して、前記の電磁操作器の少なくとも一部を配置することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記遮断部および絶縁バリヤと電磁操作器との対向面は、それぞれ横断面曲線形状であることを特徴とする。
【0010】
本発明のような電磁操作形遮断器によれば、遮断部配置領域と操作器4の少なくとも一部とが、相間領域にて互いにオーバーラップする、あるいは歯合する(例えば、歯車同士が合う)ように配置されるため、従来の遮断器のように遮断部配置領域の外周側に操作器を配置する場合と比較して、該電磁操作形遮断器の奥行寸法あるいは幅寸法を縮小化することができる。
【0011】
また、遮断部や絶縁バリヤと電磁操作器との対向面をそれぞれ横断面曲線形状にすることにより、前記のように電磁操作形遮断器の奥行寸法あるいは幅寸法を縮小化するだけでなく、電界集中を起こり難くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上示したように本発明によれば、電磁操作器の少なくとも一部を各遮断部間に形成される相間領域に配置することにより、奥行寸法あるいは幅寸法を縮小し、電磁操作形遮断器の小型化を図ることが可能となる。
【0013】
また、遮断部や絶縁バリヤと電磁操作器との対向面をそれぞれ横断面曲線形状にすることにより、電界集中が起こり難く、絶縁耐圧の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に実施の形態における電磁操作型遮断器の一例を図面等に基づいて詳細に説明する。図1は電磁操作形遮断器(図1中では符号1)の概略説明図(斜視図)であり、図2は図1の電磁操作形遮断器の概略側面図(部分断面図)であり、図3は図1の電磁操作型遮断器の概略平面図(横断方向に切断し上方から見た概略平面図)である。
【0015】
図1において、電磁操作形遮断器1は、3相の真空バルブ2A,2B,2Cと、絶縁ケース3A,3B,3Cと、電磁操作器(図1,図3中では2個の電磁操作器)4と、を移動支持台5に配置している。真空バルブ2A,2B,2Cおよび電磁操作器4の外観は、例えば横断面(水平方向の断面)が円弧状の曲線形状(以下、横断面曲線形状と称する)をなしている。また、少なくとも、真空バルブ2A,2B,2Cおよび絶縁ケース3A,3B,3Cと、電磁操作器4と、が互いに対向する対向面においても、それぞれ横断面曲線形状(例えば、後述の横断面曲線形状部分4Y)をなしている。
【0016】
次に、3相真空バルブ2A,2B,2Cに関して、それぞれ同様の構造であるため真空バルブ2Aを主に説明し、他相の真空バルブ2B,2Cは必要に応じて適宜に説明する。また、絶縁ケース3A,3B,3Cにおいてそれぞれ同様の構造であるため、必要に応じて適宜に説明する。
【0017】
図2,図3に示すように、真空バルブ2Aは絶縁ケース3A内に配置され、その真空バルブ2A内部には固定電極6と可動電極7とが対向配置して構成される。これら固定電極6および可動電極7の背面には、該背面から真空バルブ2A外側方向に対して延設された導電性の固定側ロッド6A,可動側ロッド7Aがそれぞれ備えられる。真空バルブ2A内の可動側ロッド7Aと真空バルブ2A端部との間にはベローズ8が設けられ、そのベローズ8により可動側ロッド7Aが軸方向に対して移動自在(すなわち、可動電極7が固定電極6に対して接離するように移動自在)に構成されている。
【0018】
真空バルブ2Aと絶縁ケース3Aとは、移動支持台5に支持された構造であり、その移動支持台5を介して同時に移動できるように構成されている。移動支持台5に設けられた車輪5Aは、該移動支持台5を移動自在にすると共に、接地の役割も兼ねている。絶縁ケース3Aの一方側には、開口部9が設けられる。
【0019】
絶縁ケース3Aの上部側には、該上部側を貫通するように孔が穿設され、その孔には前記の固定側ロッド6Aが挿入される。このように孔に挿入された固定側ロッド6Aは、絶縁ケース3A上部側に固定された電源側導体(電源側断路部(図示省略)と接触する電源側導体)11に対して、ボルト等により締結される。前記の電源側導体11は、例えば固定側ロッド6Aに直交する方向である開口部9側に対して延設するように構成される。
【0020】
可動側ロッド7Aにおいては、絶縁ケース3A内の中央部を貫通し、絶縁操作ロッド12に対して接続される。絶縁ケース3Aの中央部には、負荷側断路部(図示省略)に接続する負荷側導体13が設けられる。この負荷側導体13は、例えば可動側ロッド7Aに直交する方向である開口部9側に延設して構成され、可動側ロッド7Aに対して摺動集電するコンタクト13Aが設けられる。
【0021】
前記の絶縁操作ロッド12は、回動軸(図2中では、操作レバー15の中央部に位置する回動軸)17を介して支持(例えば、移動支持台5に支持)された操作レバー15の一端側に対し、連結軸14を介して連結(操作レバー15の回動に応じて絶縁操作ロッド12が移動するように連結)される。前記の操作レバー15の他端側においては、電磁操作器4内のプランジャー軸(電磁操作器内に構成されるプランジャーの軸;図示省略)に連結されている操作ロッド16に対し、連結軸18を介して連結(操作ロッド16の動作に応じて操作レバー15が回動するように連結)される。
【0022】
電磁操作器4内の励磁コイル(図示省略)を励磁することにより、該電磁操作器4内のプランジャーの駆動に伴って操作ロッド16が駆動し、この駆動力が連結軸18を介して操作レバー15に伝達される。この駆動力の伝達により、操作レバー15が回動軸17を介して回動し、この回動力が連結軸14を介して絶縁操作ロッド12に伝達され、絶縁操作ロッド12および可動側ロッド7Aが昇降し、可動電極7が固定電極6に対して接離し電気的に開閉される。
【0023】
3相の真空バルブ2A,2B,2C(および真空バルブ2A,2B,2Cをそれぞれ包囲する絶縁ケース3A,3B,3C)は、図1,図3に示すように、それぞれ所定間隔を隔てて並列に配置(一列に配置)される。電磁操作器4においては、図1乃至図3に示すように、真空バルブ2A,2B,2Cをそれぞれ包囲する絶縁ケース3A,3B,3Cに対して並列するように、絶縁ケース3Bと該絶縁ケース3Bに対向して位置する絶縁ケース3Aおよび絶縁ケース3Cとの間に形成された領域(すなわち、所定間隔を隔てて配置された各絶縁ケース間の領域;以下、相間領域と称する)3Dの床面5Bに対し、それぞれ配置(すなわち、図1,図2中では、絶縁ケース3A,3B,3Cと2個の電磁操作器4とが交互に配置)される。
【0024】
前記の相間領域3Dに対する電磁操作器4の配置構成は、相間領域3D内に電磁操作器4全体が位置するように配置(すなわち、絶縁ケース3A,3B,3Cと2個の電磁操作器4とが一列で交互に配置)する構成と、電磁操作器4の一部が相間領域3D内に位置するように配置(すなわち、絶縁ケース3A,3B,3Cと2個の電磁操作器4とが千鳥足状で交互に配置)する構成とがある。
【0025】
前記のように、電磁操作器4の少なくとも一部が相間領域3D内に位置する構成の場合においては、その電磁操作器4の横断面曲線形状部分4Yのうち少なくとも一部(図3中では、電磁操作器4の約半分)が該相間領域3D内に位置する。すなわち、図1,図3に示すように、各真空バルブ2A,2B,2Cおよび各絶縁ケース3A,3B,3Cが配置される遮断部配置領域30と、電磁操作器4の少なくとも一部と、が相間領域3Dにて互いにオーバーラップする、あるいは歯合する(例えば、歯車同士が合う)ように配置される。
【0026】
なお、図1乃至図3における電磁操作器4の外観は横断面が円弧状(横断面曲線形状部分4Yが円弧状)であるが、これ以外の楕円状,矩形状,多角形状等の曲線形状であっても良い。。
【0027】
以上示したように、電磁操作器4の少なくとも一部(あるいは、横断面曲線形状部分4Y)を遮断部配置領域30内の相間領域3Dに配置することにより、従来の電磁操作形遮断器(例えば、操作器が遮断部配置領域の外周側に配置されたもの)と比較して、電磁操作形遮断器1の奥行寸法Dあるいは幅寸法Wを縮小化することができ、結果として電磁操作形遮断器1の小型化を図ることができる。
【0028】
特に、図1,図3に示したように例えば3相の真空バルブ2A,2B,2Cに対して2個の電磁操作器4を使用する場合には、1個の電磁操作器を使用する場合と比較して、各電磁操作器4の性能を減縮(半減)、すなわち各電磁操作器4の容量を小さくできるため、該電磁操作器4の直径を小さくできるだけでなく、電磁操作形遮断器1自体を縮小化することができる。
【0029】
また、使用する電磁操作器4の個数を変えることにより、その電磁操作器4の容量を種々変えることが可能となり、複数定格の遮断器を容易な設計(例えば、一度の設計)で構成することが可能となる。
【0030】
さらに、真空バルブ2および絶縁ケース3と電磁操作器4との対向面は、それぞれ横断面曲線形状をなしているため電界集中が起こり難く、絶縁耐圧の向上を図ることができるだけでなく、更なる遮断器の縮小ができる。
【0031】
さらにまた、電磁操作器4は接地(車輪5Aを介して接地)された接地金属であるため、例えば通電中に作業者が該電磁操作器4に触れても感電する恐れはなく、安全性を確保することができる。
【0032】
なお、本実施の形態では、真空バルブ2および絶縁ケース3を備える遮断部が複数相構成された電磁操作形遮断器の一例を示したが、それら各遮断部は例えば真空バルブ2のみを備えたものであっても、同様の作用効果が得られる。また、各遮断部を支持する手段として、床面5Bを有する移動支持台5を一例として示したが、床面以外の例えば支持柱等を使用した手段であっても、同様の作用効果が得られる。
【0033】
さらに、真空バルブ2を覆うように設けられる絶縁バリヤとして横断面略U字状の絶縁ケース3を一例として示したが、他の形状を有する絶縁バリヤを用いた場合であっても、同様の作用効果が得られる。さらにまた、本実施の形態では真空遮断器の一例を示したが、電力の開閉,通電容量の可変等を行うための油入り遮断器,磁気遮断器,真空遮断器等に適用した場合においても、同様の作用効果が得られる。
【0034】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施の形態における電磁操作形遮断器の一例を示す概略説明図。
【図2】図1の電磁操作形遮断器の概略側面図。
【図3】図1の電磁操作形遮断器の概略平面図。
【符号の説明】
【0036】
1…電磁操作形遮断器(真空遮断器)、2,2A,2B,2C…真空バルブ、3,3A,3B,3C…絶縁ケース、3D…相間領域、4…電磁操作器、4Y…横断面曲線形状部分、5…移動支持台、5A…車輪、5B…床面、6…固定電極、6A…固定側ロッド、7…可動電極、7A…可動側ロッド、8…ベローズ、11…電源側導体、12…絶縁操作ロッド、13…負荷側導体、13A…コンタクト、14,18…連結軸、15…操作レバー、16…操作ロッド、17…回動軸、30…遮断部配置領域、D…奥行寸法、W…幅寸法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に配置された複数相の遮断部と、それら各遮断部を電気的に開閉させる電磁操作器と、を備えた遮断器であって、
前記の電磁操作器の少なくとも一部を、前記の各遮断部間に形成された相間領域に配置することを特徴とする電磁操作形遮断器。
【請求項2】
前記の各遮断部を覆うように絶縁バリヤをそれぞれ設け、
前記の各絶縁バリヤ間に形成された相間領域に対して、前記の電磁操作器の少なくとも一部を配置することを特徴とする請求項1記載の電磁操作形遮断器。
【請求項3】
前記遮断部および絶縁バリヤと電磁操作器との対向面は、それぞれ横断面曲線形状であることを特徴とする請求項1または2記載の電磁操作形遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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