説明

電磁放射の指向性ビームによる原料処理のための処理槽、それを有する装置、およびその処理方法

【課題】ビーム7を処理槽の内部に伝達する光学素子である連接窓9で、処理槽の内側に有する窓面9aの光学面の清潔さをより効果的に維持し、ビーム偏向を極力回避できる。
【解決手段】連接窓9の周囲壁部12にあって、連接窓の一方の側に設けられ、第1ガス18が連接窓の窓面9a上で実質的に接線方向に流れ込むように策定された第1注入口16と、第2ガス25が第1ガスの流れと実質的に同一方向で前記窓面から距離を隔てて流れ込むように策定されて設けられた第2注入口23とを備え、二つのガス流を形成することで、窓面付近での汚染物を吹き飛ばすと共に、ビーム経路の温度勾配を形成させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射の指向性ビームによる原料処理のための処理槽、それを有するレーザ装置、およびその処理方法に関し、特に、レーザ焼結装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ焼結装置は、周知のように、レーザおよび処理槽を有し、勿論、レーザ光をその処理槽内に結び付ける連接窓を有する。処理槽では、被加工物が形成処理される。
【0003】
レーザが局所的に粉状原料に命中しそしてその粉末原料が熱せられた際には、その原料の少量が蒸発するであろう。その過程で、蒸発の原料、それと同様の成分、または化学反応生成物が処理槽の大気中に浮遊する塵埃も同様に、連接窓に堆積する。このことは、連接窓の透過性の低減を、そしてそのためにレーザ光強度の減少を引き起こす。
【0004】
特許文献1(WO−97/06918)によるレーザ焼結装置が知られている。その装置では、連接窓に吹き付けるガスを導入するノズルが備えられ、ノズルは連接窓の処理槽に面する側で連接窓を環状に包囲している。そのガスは、連接窓の表面に接線方向に流れている。
【0005】
しかしながら、その周知の装置では、連接窓の表面全面で清浄な状態を維持してはいない。また、連接窓での一方の吹付けガスと他方の処理槽内部のガスとの間の温度勾配が、ビーム偏向への干渉を引き起こす。吹付けガスは、第2の問題を緩和するため、一方向から供給してもよい。しかしながら、このことは、連接窓の上面での汚れのより高速な堆積を引き起こす。
【0006】
また、特許文献2(DE−19853947−C1)による選択的レーザ溶融用処理槽が知られている。その処理槽では、保護ガスが第1注入口を介して処理槽に導入され、その作用表面を流れている。環状に供給される第2のライターガス用の第2注入口は処理槽の活性化領域に設けられ、その活性化領域には連接窓が配置されている。その結果、その活性化領域内で、第2のライターガスの一種の緩衝空間が形成され、その作用区域に発生する蒸気は連接窓から隔離される。しかしながら、これによっても、温度勾配に起因するビーム偏向への干渉問題は解決されない。
【0007】
【特許文献1】WO−97/06918
【特許文献2】DE−19853947−C1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、電磁放射の指向性ビームによる原料処理のための処理槽、それを有するレーザ装置、およびその処理方法を提供することであり、特に、レーザ焼結装置のためのものである。
【0009】
そして、解決しようとする課題は、その装置の連接窓を汚染から効果的に防御すること、および、連接窓近辺の温度勾配によるビーム偏向問題を最小にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による電磁放射の指向性ビームによる材料処理のための処理槽は、その目的を達成するため、
ビーム(7)を処理槽(10)の内部に結び付ける光学素子で、その処理槽の内側に窓面(9a)を有する連接窓(9)と、
前記連接窓周囲の壁部(12)と、
前記連接窓(9)の一方の側に設けられ、第1ガス(18)が前記連接窓の窓面(9a)上で実質的に接線方向に流れ込むように策定された第1注入口(16)と、
第2ガス(25)が前記第1ガス(18)の流れと実質的に同一方向で前記窓面(9a)から距離を隔てて流れ込むように策定されて設けられた第2注入口(23)と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
また、その方法は、
電磁放射の指向性ビーム(7)を、処理槽(10)の内側に窓面(9a)を有する連接窓(9)を介して処理槽の内部に方向付けするステップと、
前記窓面(9a)上に実質的に接しかつ撫でて一方から流れ込むように注入される第1ガス(18)を前記処理槽に供給するステップと、
前記第1ガス(18)の流れと実質的に同一方向で前記窓面(9a)から距離を隔てて流れ込むように注入される第2ガス(25)を前記処理槽に供給するステップと、
を有することを特徴とする。
【0012】
更に、従属項によりその発明の成果を記載した。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明における処理槽を有する装置は、第2ガスが連接窓から離れた方向で流れているので、処理面から発生する汚れを取り込んだガスを連接窓から引き離すという改善が可能である。それによって、連接窓の光学面は、清潔さをより効果的に維持することができる。更に、ビーム偏向については、流動ガスと処理槽ガスとの間の温度勾配があっても、広範囲になることが回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施例について図1に示すレーザ焼結装置を参照して説明する。
【0015】
図1は、三次元被加工物を層毎に製造するためのデバイスであるレーザ焼結装置の、本発明による一実施例を示す説明図である。
【0016】
レーザ焼結装置は容器1を備える。容器1は、頂上部が開放され、容器1内で垂直方向に移動可能で、形成される被加工物3を支える支持具2を有する。支持具2は、被加工物層が固体化される際に加工平面4に在るように、垂直方向に調整される。更に、構築材料に作用する作用器5が備えられる。構築材料は粉末形状であり、電磁放射によって固形化される。その装置はレーザ6もまた備える。レーザによって生成されるレーザ光7は、偏向器8によって連接窓9に方向付けられ、連接窓9により処理槽10に伝送されて加工平面4内の所定点で焦点合わせされる。
【0017】
例えば、連接窓9を、処理槽10の上面壁に装着することができる。その場合、レーザ光が上面から処理槽に注入されるように配備され、被加工物3は垂直方向で生産される。その連接窓9は、レーザ光が透過するガラスまたは透明プラスチックのような材質でできている。処理槽10には、図示されていないが、加工平面の特定な環境を維持するために、例えば窒素のような不活性ガス用の注入口を有することができる。
【0018】
制御設備11もまた装備される。制御設備11によって、装置の構成要素が製造工程の実行に際して協調的に制御される。
【0019】
図2は、連接窓9の周囲での一部領域の断面を斜視により示した処理槽10における拡大説明図である。この例示される連接窓9は矩形に形成されている。連接窓9は、それ自身が加工平面でレーザ光を焦点合わせするレンズまたはレンズシステムのような光学素子とすることができる。しかしながら、連接窓9は、レーザ光に対して透明で、その後ろに位置する光学素子を保護する保護窓にもなる。
【0020】
連接窓9は、処理槽の上面壁の壁部12に、上部領域で処理槽を厳重に密閉するように装着される。連接窓9は、加工平面4に対面する窓面9aをもまた有する。
【0021】
図2で見られるように、壁部12は第1傾斜部12aを有する。第1傾斜部12aは連接窓の縦方向側部13に隣接し、そこでは、第1傾斜部12aの傾斜面が連接窓9から角度をもって延在している。方向変換構造部12bは、実質的には中空円筒でありまたは中空円筒の断面形状を有し、第1傾斜部12aに隣接して設けられる。この円筒軸は、連接窓の縦方向側部13に平行に延在する。中空円筒部の頂上部14は、好ましくは、第1傾斜部12aのエッジ部15より高く位置している。それゆえ、方向変換構造部12bは、溝のような構造を有している。第1傾斜部12aおよび方向変換構造部12bのそれぞれは、縦方向側部13に沿って実質的に全体か、またはそれを少々越えた位置まで延在している。
【0022】
連接窓9に面した壁部12における第1傾斜部12aの端部に、ギャップ形状の第1注入口16が設けられる。第1注入口16は、実質的に連接窓の縦方向側部13の横方向に沿って延在し、第1ガスを供給する第1注入穴17に接続される。第1ガスの供給は、例えばバルブによって停止可能なように策定される。第1注入口16は、供給された第1ガス18が一つの縦方向側部13から反対側の縦方向逆側部20まで連接窓の窓面9a上を接して流動するように調整された幅と形状を有する。
【0023】
処理槽の壁部12はまた実質的に水平な横方向壁部21を備える。横方向壁部21は、これに接続する第2傾斜部22と共に、第1注入口16の反対側の領域で連接窓の縦方向逆側部20に隣接している。それにより、第1注入口16を介して流入する第1ガス18は、連接窓の窓面9a上の全体で実質的に接線方向に流れ込み、そして第2傾斜部22によって実質的に連接窓から引き離される。
【0024】
第2の壁部である方向変換構造部12bには、ギャップ形状の第2注入口23が備えられる。第2注入口23は、第1注入口16に平行に、そして実質的には連接窓の縦方向側部13の全体かまたはそれを越える位置まで延在する。第2注入口23は第2注入穴24に接続され、第2注入穴24から第2ガス25が供給される。第2ガスの供給もまた、供給停止可能なように策定される。第2注入口23は方向変換構造部12bに備えられる。方向変換構造部12bは、断面が中空円筒形状を有し、連接窓から離れた領域に位置するので、第2注入口23から流出する第2ガス25は中空円筒形状の断面により形成される溝部内に最初に流入する。第2注入口23は、鉛直方向で連接窓9が加工平面4の上部にある場合、第1注入口16より下に位置する。
【0025】
第1傾斜部12aが中空円筒形状の方向変換構造部12bに対してなす角度は、ビーム経路を損なうことのないように設定される。
【0026】
更に、図示されていないが、処理槽にガス放出用開口が備えられ、そこに吸引機構が接続されるであろう。
【0027】
第1ガスおよび第2ガスとして窒素が用いられるであろう。しかしながら、適用領域にある他種のガスも使用可能である。第1がスと第2ガスとは互に相違するものであってもよい。
【0028】
処理槽の壁部は、連接窓の短辺側と定めており、実質的に横方向である。そのため、ギャップ形状の第1注入口と第2注入口とから生じるガス流が構造によって渦巻くことはない。
【0029】
オプションとして制御が供給される。制御は、ガス18、25の流量および/または速度を、独立させて、または相互に関連付けて制御する。
【0030】
動作としては、3次元被加工物がレーザ光で層ごとに粉末構築材料を固形化することによって生成される。ギャップ形状の第1注入口16および第2注入口23にガスが供給され、第1注入口16および第2注入口23から処理槽内に流れ込む。第1注入口16からの第1ガス18は、連接窓9の加工平面に対向する窓面9aで実質的に接線方向に沿って流れ、その反対側で引き離される。それによって、第1ガスは、連接窓の窓面9aへの停滞を防ぐことができ、そして、窓面9aの表面を清潔に維持できる。
【0031】
第2ガス25は、第2注入口23の設備設計に起因して第2注入口23から流出するものであって、実質的に中空円筒形状の方向変換構造部12bの内壁に沿って流れ、第1傾斜部12aと方向変換構造部12bとで形成するエッジ部15に到達した際には、加工平面ほうこうである下方向への加勢を得る。第2ガス25は、エッジ部15を通過した後、実質的に窓面9aから距離を置いてその表面に沿って平行に流れる。方向変換構造部12bが溝状に形成されることにより、下側の第2ガス25は、連接窓の表面から隔てられた距離を維持して流れる。それ故、二つの実質的に薄い層を成すガス流はほとんど混合しない。その結果、加工平面から生じたガスのような汚濁されたガスの分離が強化される。このようなガスは凝縮物および/または塵埃粒子またはその他の汚染物を含む。上記ガス流は、このような汚濁ガスが光学素子である連接窓まで進むことを阻止する。更に、温度勾配に起因するビーム偏向は下方の第2ガス25の流れにより顕著に低減される。それ故、窓面9aは十分に清潔に維持され、また、ビーム偏向は最小化される。
【0032】
器具の変更が可能である。連接窓は長方形に形成される必要はない。むしろ、例えば、正方形、円形、若しくは楕円形が可能であり、または他の形状でもよい。しかしながら、ガスが供給される注入口のギャップと連接窓の対応側面とが実質的に平行であるとき、その効果は向上させられる。ギャップ形状の第1注入口16および第2注入口23は連接窓の縦方向側面よりやや広い幅が好ましい。しかしながら、それらはまたより短くてもよい。そのときにはエッジでのガス流による一掃が不十分であるけれど。
【0033】
壁部である第1傾斜部12aと方向変換構造部12bとの形状もまた、相違したデザインでよい。第1傾斜部12aは、例えば、処理槽の内側で凸状であってもよい。溝状の方向変換構造部12bは、円筒断面形状である必要はない。むしろ、ガス流に対して溝が形成されるような形状が用いられてよい。
【0034】
溝状壁部の方向変換構造部12bをなしで済ますことも可能である。その代わり、第2注入口23のギャップは、流出ガスが連接窓から離れた方向に加勢されるように形成される。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、例えば、レーザ融解デバイスのような、3次元被加工物を層ごとに製造するためのデバイスに適用可能である。そのようなデバイスでは、他の処理デバイスと同様、ほとんどの場合に金属性の粉末状である構築材料がレーザによって精錬される。そのため、これらの処理デバイスでは、ガスまたは蒸気が処理槽内に発生し、連接窓を汚染する。しかし、本発明により汚染を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明によるレーザ焼結装置の一実施例をブロック構成で示した説明図である。
【図2】図1の連接窓を含む処理槽の一部領域断面を処理槽内部側からの斜視により示した説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射の指向性ビームによる原料処理のための処理槽において、
ビーム(7)を処理槽(10)の内部に結び付ける光学素子で、その処理槽の内側に窓面(9a)を有する連接窓(9)と、
前記連接窓周囲の壁部(12)と、
前記連接窓(9)の一方の側に設けられ、第1ガス(18)が前記連接窓の窓面(9a)上で実質的に接線方向に流れ込むように策定された第1注入口(16)と、
第2ガス(25)が前記第1ガス(18)の流れと実質的に同一方向で前記窓面(9a)から距離を隔てて流れ込むように策定されて設けられた第2注入口(23)と、
を備えることを特徴とする処理槽。
【請求項2】
請求項1に記載の処理槽において、前記注入口(16,23)は互に離れた位置に設けられることを特徴とする処理槽。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の処理槽において、第1ガス(18)と第2ガス(25)とは実質的に薄層流であることを特徴とする処理槽。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのうちの一つに記載の処理槽において、第1注入口(16)および第2注入口(23)の一方または両方がスリット形状を有することを特徴とする処理槽。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのうちの一つに記載の処理槽において、処理槽(10)の壁部(12)は、第2注入口(23)を介して流れ込むガスが前記窓面(9a)から離れた方向に推進力が得られるように策定されて設けられる方向変換構造部(12b)を有することを特徴とする処理槽。
【請求項6】
請求項5に記載の処理槽において、前記方向変換構造部(12b)は溝のような形状を有することを特徴とする処理槽。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の処理槽において、前記第2注入口の作用上の位置は前記第1注入口から離れた位置であることを特徴とする処理槽。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのうちの一つに記載の処理槽において、前記指向性ビームがレーザ光であることを特徴とする処理槽。
【請求項9】
レーザ(6)と請求項1から請求項8までのうちの一つに記載の処理槽とを有することを特徴とするレーザ焼結装置。
【請求項10】
電磁放射の指向性ビームによる原料処理のための方法において、
電磁放射の指向性ビーム(7)を、処理槽(10)の内側に窓面(9a)を有する連接窓(9)を介して処理槽の内部に方向付けするステップと、
前記窓面(9a)上に実質的に接しかつ撫でて一方から流れ込むように注入される第1ガス(18)を前記処理槽に供給するステップと、
前記第1ガス(18)の流れと実質的に同一方向で前記窓面(9a)から距離を隔てて流れ込むように注入される第2ガス(25)を前記処理槽に供給するステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、処理槽内の原料をレーザ光によって処理するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の方法において、請求項1から請求項8までのうちの一つに記載の処理槽を用いることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10から請求項12までのうちの一つに記載の方法において、その方法がレーザ焼結法であることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−542550(P2008−542550A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515230(P2008−515230)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001390
【国際公開番号】WO2007/112808
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(503267906)イーオーエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング イレクトロ オプティカル システムズ (50)
【Fターム(参考)】