電磁波導波路及びバンドパスフィルタ
【課題】電磁波の透過特性を安定させることができるとともにサイズを小型化することができる電磁波導波路及び該電磁波導波路を備えるバンドパスフィルタを提供する。
【解決手段】方形の主導波管が、両端部にてアンテナ部分を有する同軸導波管と結合してあり、主導波管と同軸導波管との結合部分がアンテナ部分を中心にした半円柱形の突起部として構成してある。半円柱形の突起部の半径は、前記主導波管の横幅の三十二分の七以上三十二分の十二以下となるようにしてある。
【解決手段】方形の主導波管が、両端部にてアンテナ部分を有する同軸導波管と結合してあり、主導波管と同軸導波管との結合部分がアンテナ部分を中心にした半円柱形の突起部として構成してある。半円柱形の突起部の半径は、前記主導波管の横幅の三十二分の七以上三十二分の十二以下となるようにしてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方形の主導波管の内部を電磁波が安定して伝搬することが可能な透過特性を有する電磁波導波路及び該電磁波導波路を備えるバンドパスフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、同軸導波管を方形の誘電体導波管に結合した構造では、電磁波が誘電体導波管内を、広帯域にて損失なく安定して伝搬することは困難であり、誘電体導波管内を通過する電磁波の損失を低減するための設計手法は必ずしも確立しているとは言えなかった。一般には、誘電体導波管の開口部の形状が、縦幅が遮断波長の四分の一、横幅が遮断波長の二分の一となるように設計することが多い。
【0003】
例えば、非特許文献1には、方形の誘電体導波管内の電磁波伝搬の様子が開示されており、誘電体導波管の開口部の形状が、縦幅が遮断波長の四分の一、横幅が遮断波長の二分の一となるように設計された方形の誘電体導波管と同軸導波管とを結合する位置が、方形の誘電体導波管の短絡端から遮断波長の四分の一の位置とすることにより、短絡端による反射波と進行波とが同位相となり、励振効率が向上することが開示されている。
【0004】
また、特許文献1では、ピン・ストリップ線路垂直変換器が開示されており、導体ピンの回りの導電性枠体が、該導体ピンを中心とする略半円柱形を構成するようにしたことにより、インピーダンス整合がとれ、回路特性が良好となることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−283911号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】本郷廣平、「電波光学の基礎」、実業出版、1998年、p.154
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献1を含めた同軸導波管を方形の誘電体導波管に結合した従来の構造では、誘電体導波管の開口部の形状が、縦幅が遮断波長の四分の一、横幅が遮断波長の二分の一となるように設計した場合であっても、目的、利用形態によっては常に最適な設計であるとは限らない。
【0008】
例えば誘電体導波管内部の誘電体が、複数の円柱状の誘電体柱を周期的に配置したフォトニック結晶にて構成されている場合、その特性を十分に発揮させるためには、誘電体導波管の幅は、導波方向に略直交する方向である横方向に少なくともフォトニック結晶4格子分以上の幅が必要となる。斯かる問題を解決するために、例えば空洞同軸導波変換器を用いることで誘電体導波管内に平面波を発生させることにより、より均等に電磁波を透過させるように工夫している。しかし、同軸導波管と誘電体導波管との結合部分に別個に空洞同軸導波変換器を設ける必要があることから、導波管全体のサイズを小型化することが困難になるという問題点があった。
【0009】
また特許文献1では、導体ピンBの周囲の電磁エネルギーを均一にすることにより回路特性を改善しているが、方形の誘電体導波管内にストリップ線路を有していない場合、電磁波の反射波による干渉を考慮する必要が生じることから、物理的な構造から単純に特性インピーダンスを算出するように、透過特性を推定することができるものでもない。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、電磁波の透過特性を安定させることができるとともにサイズを小型化することができる電磁波導波路及び該電磁波導波路を備えるバンドパスフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために第1発明に係る電磁波導波路は、方形の主導波管が、両端部にてアンテナ部分を有する同軸導波管と結合してあり、前記主導波管と前記同軸導波管との結合部分が前記アンテナ部分を中心にした半円柱形の突起部として構成してあることを特徴とする。
【0012】
第1発明では、方形の主導波管が、両端部にてアンテナ部分を有する同軸導波管と結合してあり、該主導波管と同軸導波管との結合部分がアンテナ部分を中心にした半円柱形の突起部として構成してあることにより、電磁波の主導波管内の透過特性を改善することができ、別個に空洞同軸導波変換器を設ける必要がないことから、電磁波導波路全体のサイズを小型化することが可能となる。
【0013】
また、第2発明に係る電磁波導波路は、第1発明において、前記主導波管は、内部に誘電率1以上の材料を充填してあることを特徴とする。
【0014】
第2発明では、方形の主導波管は、内部に誘電率1以上の材料、例えば合成樹脂等を充填した場合、電磁波の短縮効果により、主導波管のサイズを小型化することが可能となる。
【0015】
また、第3発明に係る電磁波導波路は、第1又は第2発明において、半円柱形の前記突起部の半径は、前記主導波管の横幅の三十二分の七以上三十二分の十二以下となるようにしてあることを特徴とする。
【0016】
また、第4発明に係る電磁波導波路は、第1又は第2発明において、半円柱形の前記突起部の半径は、前記主導波管の横幅の三十二分の十以上三十二分の十二以下となるようにしてあることを特徴とする。
【0017】
第3発明では、半円柱形の突起部の半径は、主導波管の横幅の三十二分の七以上三十二分の十二以下となることが好ましく、第4発明では、半円柱形の突起部の半径は、主導波管の横幅の三十二分の十以上三十二分の十二以下となることがより好ましい。目的とする周波数帯域にて極度の減衰が見られず、良好な透過特性を示すからである。
【0018】
また、第5発明に係る電磁波導波路は、第1乃至第4発明のいずれか1つにおいて、前記主導波管は、内部に複数の円柱状の誘電体柱を周期的に配置したフォトニック結晶を備えることを特徴とする。
【0019】
第5発明では、方形の主導波管の内部に、複数の円柱状の誘電体柱を周期的に配置することにより、周期性を有するフォトニック結晶を構成することができる。
【0020】
また、第6発明に係る電磁波導波路は、第5発明において、前記主導波管の横幅が、前記フォトニック結晶4格子分以上となるようにしてあることを特徴とする。
【0021】
第6発明では、方形の主導波管の横幅が、フォトニック結晶4格子分以上となることにより、主導波管内に用いているフォトニック結晶の周期性を効率良く活用することができる。
【0022】
また、第7発明に係る電磁波導波路は、第5又は第6発明において、前記主導波管内部の中心部分に、円柱状の磁性体柱を配置してあることを特徴とする。
【0023】
第7発明では、方形の主導波管内部の中心部分に、円柱状の磁性体柱を配置することにより、中心部分に配置してある磁性体柱へ電磁波が集中しやすく、印加される磁界の大きさに応じて透過することができる電磁波の周波数を変動させることが可能な可変バンドパスフィルタを構成することができる。
【0024】
次に上記目的を達成するために第8発明に係るバンドパスフィルタは、第7発明の電磁波導波路を備えることを特徴とする。
【0025】
第8発明では、上述した電磁波導波路を備えたバンドパスフィルタを構成することにより、電磁波の方形の主導波管内の透過特性を改善することができ、別個に空洞同軸導波変換器を設ける必要がない、小型のバンドパスフィルタを提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
上記構成によれば、方形の主導波管が、両端部にてアンテナ部分を有する同軸導波管と結合してあり、該主導波管と同軸導波管との結合部分がアンテナ部分を中心にした半円柱形の突起部として構成してあることにより、電磁波の主導波管内の透過特性を改善することができ、別個に空洞同軸導波変換器を設ける必要がないことから、電磁波導波路全体のサイズを小型化したバンドパスフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】電磁波導波路の構成を示す斜視図である。
【図2】従来の電磁波導波路による透過特性を示すグラフである。
【図3】本発明の実施の形態1に係る電磁波導波路による透過特性を示すグラフである。
【図4】半円柱形の突起部の半径Rを5.0mmに設定した場合の本発明の実施の形態1に係る電磁波導波路による透過特性を示すグラフである。
【図5】半円柱形の突起部の半径Rを5.0mmに設定した場合の本発明の実施の形態1に係る電磁波導波路による反射特性を示すグラフである。
【図6】本発明の実施の形態1に係る電磁波導波路の構成を示す両端部に配置してある同軸導波管の中心線を含む面での断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路の構成を示す斜視図である。
【図8】フォトニック結晶の構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路の透過特性を示すグラフである。
【図10】本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路の反射特性を示すグラフである。
【図11】特定の周波数で共振するように設計された誘電率の異なる磁性体柱を備える本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路を備える狭帯域バンドパスフィルタの構成を示す斜視図である。
【図12】磁性体柱を備える本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路の透過特性を示すグラフである。
【図13】本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路を備えるバンドパスフィルタの構成を示す両端部に配置してある同軸導波管の中心線を含む面での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、電磁波導波路の構成を示す斜視図である。図1(a)は、従来の電磁波導波路の構成を示す斜視図を、図1(b)は、本発明の実施の形態1に係る電磁波導波路の構成を示す斜視図を、それぞれ示している。
【0030】
図1(a)に示すように従来の電磁波導波路1は、方形の主導波管11と、主導波管11の両端にアンテナ部分13、13を有する同軸導波管12、12とで構成されている。主導波管11の内部には比誘電率εが2.8である光造形エポキシ樹脂が充填されている。もちろん、用途に応じて比誘電率εの相違する他の合成樹脂が充填されていても良いし、何も充填しない空洞であっても良い。
【0031】
以下、10GHz以上の電磁波を透過させたい場合について説明する。遮断周波数を10GHzとした場合、電磁波の遮断波長λは30.0mmとなる。実際には主導波管11の内部に充填されている光造形エポキシ樹脂の比誘電率εに応じて、式(1)により遮断波長λは波長λact に短縮される。
【0032】
λact =λ/√ε ・・・ 式(1)
【0033】
式(1)により、遮断波長λは18.0mm(=λact)となる。主導波管11の横幅Wは、従来の設計手法に従う場合、遮断波長λの二分の一となることから、横幅Wは9.0mmで設計される。しかし、主導波管11内にフォトニック結晶を収容して、その特性を利用する場合には、フォトニック結晶の大きさが問題となる。理想とされる、無限遠の長さを有するフォトニック結晶に近い特性を得るためには、フォトニック結晶の横幅を4格子分以上とすることが望ましい。フォトニック結晶の横幅を4格子以上とした場合、フォトニック結晶の格子の大きさによっては、従来の設計手法による横幅では不十分となるおそれがある。
【0034】
例えばフォトニック結晶4格子分以上を確保するために横幅16.0mmが必要な場合、図1(a)に示す主導波管11の横幅Wを16.0mmとして設計することもできる。この場合、遮断周波数は5.6GHzとなる。
【0035】
図1(b)では、従来の電磁波導波路1とは異なり、主導波管11と同軸導波管12、12との結合部分を、アンテナ部分13、13を中心にした半円柱形の突起部14、14として構成してある。方形の主導波管11と同軸導波管12との結合部分が、図1(a)に示すように方形の主導波管11の短絡端から所定の位置に設けてある場合、結合部分の位置によって、短絡端による反射波と進行波との位相が変動し、電磁波の透過効率が変動する。
【0036】
しかし、図1(b)に示すようにアンテナ部分13、13を中心にした半円柱形の突起部14、14を設けることにより、短絡端による反射波はアンテナ部分13、13へと集中する。したがって、反射波と進行波との位相の相違により電磁波の主導波管11の内部の透過効率が大きく変動することなく、安定した透過効率を有する電磁波導波路1を提供することができる。
【0037】
図2は、従来の電磁波導波路1による透過特性を示すグラフである。図2は、横幅Wを9.0mmとした場合、及び横幅Wを16.0mmとした場合について示している。結合部分と短絡端との距離は、それぞれ4.5mmと8.0mmとし、主導波管11の縦幅Dは、3.0mmとしている。図2では、縦軸に電磁波の減衰量(dB)を、横軸に周波数(GHz)をとり、周波数変化に対する透過特性を示している。すなわち、電磁波の減衰量の多い周波数帯域では電磁波の透過特性が低く、少ない周波数帯域では電磁波の透過特性が高いことになる。
【0038】
0〜−2dBの範囲を容認することができる減衰量であるとした場合、従来の設計手法に従って横幅Wを9.0mmとしたときには、目的とする10GHz以上の周波数帯域において、約5GHzの透過周波数幅を得ることができる。しかし、無理に横幅Wを広げて16.0mmとした場合、透過周波数幅は1GHzにも満たない。
【0039】
図3は、本発明の実施の形態1に係る電磁波導波路1による透過特性を示すグラフである。図2と同様、縦軸に電磁波の減衰量(dB)を、横軸に周波数(GHz)をとり、周波数変化に対する減衰特性を示している。すなわち、電磁波の減衰量の多い周波数帯域では電磁波の透過特性が低く、少ない周波数帯域では電磁波の透過特性が高いことになる。図3では、横幅Wの大きさを16.0mmと固定し、半円柱形の突起部14の半径Rを変動させて透過特性を比較した。主導波管11の縦幅Dは、3.0mmである。
【0040】
図3より、本発明の実施の形態1に係る電磁波導波路1では、目的とする10GHz以上の周波数帯域において広い透過周波数幅を得ることがわかる。0〜−2dBの範囲を容認することができる減衰量であるとした場合の、半径Rと透過周波数の上限値、下限値及び透過周波数幅との関係を(表1)に示す。同様に、0〜−1dBの範囲を容認することができる減衰量であるとした場合の、半径Rと透過周波数の上限値、下限値及び透過周波数幅との関係をについて(表2)に示す。図3、(表1)及び(表2)から、半円柱形の突起部14の半径Rを3.5mm以上6.0mm以下に設定した場合に優れた透過特性を示し、さらに5.0mm以上6.0mm以下にした場合に特に優れた透過特性を示すことがわかる。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
図3、(表1)、及び(表2)に基づいて半径Rと主導波管11の横幅Wとの関係を考察した場合、半径Rを主導波管11の横幅Wの三十二分の七以上三十二分の十二以下となるように設定したときに、電磁波の高い透過特性を維持することができると考えられる。また、半径Rを主導波管11の横幅Wの三十二分の十以上三十二分の十二以下となるように設定したとき、電磁波の透過特性はより安定していると考えることができる。
【0044】
また、半円柱形の突起部14の半径Rを5.0mmに設定した場合には、透過特性が格別に向上する。図4は、半円柱形の突起部14の半径Rを5.0mmに設定した場合の本発明の実施の形態1に係る電磁波導波路1による透過特性を示すグラフである。図2、図3と同様、縦軸に電磁波の減衰量(dB)を、横軸に周波数(GHz)をとり、周波数変化に対する透過特性を示している。
【0045】
図4に示すように、半円柱形の突起部14の半径Rを5.0mmに設定した場合、10.3GHzから14.6GHzの間の周波数帯域にて、減衰量が0〜−1dBの範囲内で収束しており、特に安定した透過特性を示している。
【0046】
一方、図5は、半円柱形の突起部14の半径Rを5.0mmに設定した場合の本発明の実施の形態1に係る電磁波導波路1による反射特性を示すグラフである。縦軸に電磁波の減衰量(dB)を、横軸に周波数(GHz)をとり、周波数変化に対する反射特性を示している。
【0047】
図5に示すように、半円柱形の突起部14の半径Rを5.0mmに設定した場合、電磁波の減衰量が−10dB以下で安定した反射特性を示す周波数帯域は、図4にて安定した透過特性を示している周波数帯域と略一致していることがわかる。したがって、電磁波の透過特性が良好であり、しかも安定している電磁波導波路1を提供することができる。
【0048】
図6は、本発明の実施の形態1に係る電磁波導波路1の構成を示す両端部に配置してある同軸導波管12、12の中心線を含む面での断面図である。実施の形態1に係る電磁波導波路1は、方形の主導波管11の両端にアンテナ部分13、13を有する同軸導波管12、12を結合してある。主導波管11と同軸導波管12、12との結合部分は、アンテナ部分13、13を中心にした半円柱形の突起部14、14として構成してある。
【0049】
方形の主導波管11は、Al、Cu、あるいは合成樹脂にCuメッキ、Agメッキ等を施した材料を用いる。主導波管11の内部には、比誘電率εが2.8である光造形エポキシ樹脂が充填されている。
【0050】
10GHz以上の電磁波を透過させたい場合、従来の設計手法に従ったときには、主導波管11の横幅Wは9.0mmとなる。しかし、ここでは16.0mmとし、主導波管11の縦幅Dは、3.0mmとした。
【0051】
また、半円柱形の突起部14の半径Rは、5.0mmに設定してあり、方形の主導波管11の内部を伝搬する電磁波の透過特性は、図3の半径R=5.0mmの場合の透過特性となる。したがって、周波数が9.0GHzから16.4GHzまでは電磁波をほとんど減衰することなく透過させることができ、安定して電磁波を伝搬させることができる電磁波導波路1を提供することが可能となる。
【0052】
(実施の形態2)
方形の主導波管11の内部に、複数の円柱状の誘電体柱を周期的に配置して、周期性を有するフォトニック結晶を構成しても良い。図7は、本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路1の構成を示す斜視図である。
【0053】
図7に示すように実施の形態2に係る電磁波導波路1は、方形の主導波管11と、主導波管11の両端にアンテナ部分13、13を有する同軸導波管12、12とで構成されている。主導波管11の内部には複数の円柱状の誘電体柱25、25、・・・が周期的に配置され、周囲を比誘電率εが2.8である光造形エポキシ樹脂で充填したフォトニック結晶が構成されている。
【0054】
実施の形態1と同様、主導波管11の横幅Wは16.0mmとし、主導波管11の縦幅Dは、3.0mmとした。
【0055】
図8は、フォトニック結晶の構成を示す斜視図である。図8に示すように、比較的低い比誘電率εを有する光造形エポキシ樹脂が主導波管11に充填され、その中に周期的に複数の円柱状の誘電体柱25、25、・・・が配置されている。誘電体柱25、25、・・・は(Zr、Sn)TiO4 系セラミックスにて、直径2mmの円柱状に構成されている。比誘電率εは39と比較的高い。配列は三角格子であり、バンドギャップを約10〜15GHzになる様に設計されており、誘電体柱25、25の間隔は3.85mmである。このフォトニック結晶の4格子分の大きさは、主導波管11の幅方向に約15.3mmなので、これを収容するためには主導波管11の幅Wは約16mm必要となる。
【0056】
また、半円柱形の突起部14の半径Rを5.0mmに設定した場合、方形の主導波管11の内部を伝搬する電磁波の透過特性は、周波数が9.0GHzから16.4GHzの間で安定する。図9は、本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路1の透過特性を示すグラフであり、図10は、本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路1の反射特性を示すグラフである。
【0057】
図9及び図10に示すように、周波数が11GHzから16GHzの間では、電磁波はほとんど透過されることなく反射されている。つまり、主導波管11に周期性を有するフォトニック結晶を構成することにより、フォトニック結晶の周期性を活用してバンドギャップを生じさせることが可能となる。
【0058】
なお、方形の主導波管11の内部に、複数の円柱状の誘電体柱25、25、・・・を周期的に配置するだけでなく、中心部分に特定の周波数で共振するように設計された誘電率の異なる円柱状の誘電体柱、磁性体柱等を欠陥素子として配置することができる。これにより、特定の周波数帯域のみを透過させる狭帯域バンドパスフィルタ(帯域通過フィルタ)を構成することができる。また、磁性体柱を配置した場合には、印加する磁界の大きさに応じて透過することができる周波数帯域を変動させることが可能なバンドパスフィルタを構成することができる。図11は、特定の周波数で共振するように設計された誘電率の異なる磁性体柱を備える本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路1を備える狭帯域バンドパスフィルタの構成を示す斜視図である。もちろん、磁性体柱に限定されるものではなく、誘電体柱であっても良い。
【0059】
図11に示すように、磁性体柱26を備える本実施の形態2に係る電磁波導波路1は、方形の主導波管11と、主導波管11の両端にアンテナ部分13、13を有する同軸導波管12、12とで構成されている。主導波管11の内部には複数の円柱状の誘電体柱25、25、・・・が周期的に配置され、誘電体柱25、25、・・・が配置されている中心には、円柱状の磁性体柱26が配置されている。そして、周囲を比誘電率εが2.8である光造形エポキシ樹脂で充填することにより、フォトニック結晶が構成されている。磁性体柱26はNiCuZn系フェライトにて、直径2.4mmの円柱状に構成されている。比誘電率εは11.8と比較的低い。
【0060】
実施の形態1と同様、主導波管11の横幅Wは16.0mmとし、主導波管11の縦幅Dは3.0mmとしてある。
【0061】
また、半円柱形の突起部14の半径Rを5.0mmに設定した場合、方形の主導波管11の内部を伝搬する電磁波の透過特性は、周波数が10GHzから16GHzの間で大きく減衰するが、印加する直流磁界Hの大きさに応じて透過することが可能な周波数帯域が出現する。図12は、磁性体柱26を備える本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路1の透過特性を示すグラフである。
【0062】
図12に示すように、方形の主導波管11の内部を伝搬する電磁波の透過特性は、周波数が10GHzから16GHzの間で大きく減衰しているが、周波数13GHz近傍にて透過することが可能な周波数帯域が出現している。これは、磁性体柱26の存在により、透過することが可能な周波数帯域が出現したものと考えることができ、さらに直流磁界Hの大きさを変動させることにより、所望の周波数帯域の電磁波を透過させることが可能な可変バンドパスフィルタを構成することができる。
【0063】
図13は、本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路1を備えるバンドパスフィルタの構成を示す両端部に配置してある同軸導波管12、12の中心線を含む面での断面図である。実施の形態2に係るバンドパスフィルタは、方形の主導波管11の両端にアンテナ部分13、13を有する同軸導波管12、12を結合してある。主導波管11と同軸導波管12、12との結合部分は、アンテナ部分13、13を中心にした半円柱形の突起部14、14として構成してある。
【0064】
方形の主導波管11の内部を伝搬する電磁波の電界振幅の方向が図13の紙面の上下方向となり、磁界振幅の方向が図13の紙面に向かって垂直な方向となるよう、方形の主導波管11を挟み込む位置に直流磁界Hを印加する電磁石60を配置してある。方形の主導波管11は、Al、Cu、あるいは合成樹脂にCuメッキ、Agメッキ等を施した材料を用いる。直流磁界Hがシールドされないようにするためである。斯かる構成とすることにより、11GHzから16GHzまでの周波数帯域において、直流磁界Hの大きさを変動させることにより、13GHz近傍での所望の周波数帯域の電磁波を透過させることが可能な狭帯域可変バンドパスフィルタを提供することができる。
【0065】
以上のように本実施の形態2によれば、方形の主導波管11が、両端部にてアンテナ部分13、13を有する同軸導波管12、12を結合してあり、主導波管11と同軸導波管12、12との結合部分がアンテナ部分13、13を中心にした半円柱形の突起部14、14として構成してあることにより、主導波管11の内部の電磁波透過特性を改善することができ、別個に空洞同軸導波変換器を設ける必要がないことから、電磁波導波路1全体のサイズを小型化したバンドパスフィルタを提供することができる。
【0066】
なお、上述した実施の形態1及び2は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。すなわち、実施の形態1及び2に開示した電磁波導波路及びバンドパスフィルタを構成する主導波管11のサイズは、伝搬させる電磁波の周波数帯域に応じて変動するものであり、上述した実施の形態に限定されるものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
1 電磁波導波路
11 主導波管
12 同軸導波管
13 アンテナ部分
14 突起部
25 誘電体柱
26 磁性体柱
【技術分野】
【0001】
本発明は、方形の主導波管の内部を電磁波が安定して伝搬することが可能な透過特性を有する電磁波導波路及び該電磁波導波路を備えるバンドパスフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、同軸導波管を方形の誘電体導波管に結合した構造では、電磁波が誘電体導波管内を、広帯域にて損失なく安定して伝搬することは困難であり、誘電体導波管内を通過する電磁波の損失を低減するための設計手法は必ずしも確立しているとは言えなかった。一般には、誘電体導波管の開口部の形状が、縦幅が遮断波長の四分の一、横幅が遮断波長の二分の一となるように設計することが多い。
【0003】
例えば、非特許文献1には、方形の誘電体導波管内の電磁波伝搬の様子が開示されており、誘電体導波管の開口部の形状が、縦幅が遮断波長の四分の一、横幅が遮断波長の二分の一となるように設計された方形の誘電体導波管と同軸導波管とを結合する位置が、方形の誘電体導波管の短絡端から遮断波長の四分の一の位置とすることにより、短絡端による反射波と進行波とが同位相となり、励振効率が向上することが開示されている。
【0004】
また、特許文献1では、ピン・ストリップ線路垂直変換器が開示されており、導体ピンの回りの導電性枠体が、該導体ピンを中心とする略半円柱形を構成するようにしたことにより、インピーダンス整合がとれ、回路特性が良好となることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−283911号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】本郷廣平、「電波光学の基礎」、実業出版、1998年、p.154
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献1を含めた同軸導波管を方形の誘電体導波管に結合した従来の構造では、誘電体導波管の開口部の形状が、縦幅が遮断波長の四分の一、横幅が遮断波長の二分の一となるように設計した場合であっても、目的、利用形態によっては常に最適な設計であるとは限らない。
【0008】
例えば誘電体導波管内部の誘電体が、複数の円柱状の誘電体柱を周期的に配置したフォトニック結晶にて構成されている場合、その特性を十分に発揮させるためには、誘電体導波管の幅は、導波方向に略直交する方向である横方向に少なくともフォトニック結晶4格子分以上の幅が必要となる。斯かる問題を解決するために、例えば空洞同軸導波変換器を用いることで誘電体導波管内に平面波を発生させることにより、より均等に電磁波を透過させるように工夫している。しかし、同軸導波管と誘電体導波管との結合部分に別個に空洞同軸導波変換器を設ける必要があることから、導波管全体のサイズを小型化することが困難になるという問題点があった。
【0009】
また特許文献1では、導体ピンBの周囲の電磁エネルギーを均一にすることにより回路特性を改善しているが、方形の誘電体導波管内にストリップ線路を有していない場合、電磁波の反射波による干渉を考慮する必要が生じることから、物理的な構造から単純に特性インピーダンスを算出するように、透過特性を推定することができるものでもない。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、電磁波の透過特性を安定させることができるとともにサイズを小型化することができる電磁波導波路及び該電磁波導波路を備えるバンドパスフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために第1発明に係る電磁波導波路は、方形の主導波管が、両端部にてアンテナ部分を有する同軸導波管と結合してあり、前記主導波管と前記同軸導波管との結合部分が前記アンテナ部分を中心にした半円柱形の突起部として構成してあることを特徴とする。
【0012】
第1発明では、方形の主導波管が、両端部にてアンテナ部分を有する同軸導波管と結合してあり、該主導波管と同軸導波管との結合部分がアンテナ部分を中心にした半円柱形の突起部として構成してあることにより、電磁波の主導波管内の透過特性を改善することができ、別個に空洞同軸導波変換器を設ける必要がないことから、電磁波導波路全体のサイズを小型化することが可能となる。
【0013】
また、第2発明に係る電磁波導波路は、第1発明において、前記主導波管は、内部に誘電率1以上の材料を充填してあることを特徴とする。
【0014】
第2発明では、方形の主導波管は、内部に誘電率1以上の材料、例えば合成樹脂等を充填した場合、電磁波の短縮効果により、主導波管のサイズを小型化することが可能となる。
【0015】
また、第3発明に係る電磁波導波路は、第1又は第2発明において、半円柱形の前記突起部の半径は、前記主導波管の横幅の三十二分の七以上三十二分の十二以下となるようにしてあることを特徴とする。
【0016】
また、第4発明に係る電磁波導波路は、第1又は第2発明において、半円柱形の前記突起部の半径は、前記主導波管の横幅の三十二分の十以上三十二分の十二以下となるようにしてあることを特徴とする。
【0017】
第3発明では、半円柱形の突起部の半径は、主導波管の横幅の三十二分の七以上三十二分の十二以下となることが好ましく、第4発明では、半円柱形の突起部の半径は、主導波管の横幅の三十二分の十以上三十二分の十二以下となることがより好ましい。目的とする周波数帯域にて極度の減衰が見られず、良好な透過特性を示すからである。
【0018】
また、第5発明に係る電磁波導波路は、第1乃至第4発明のいずれか1つにおいて、前記主導波管は、内部に複数の円柱状の誘電体柱を周期的に配置したフォトニック結晶を備えることを特徴とする。
【0019】
第5発明では、方形の主導波管の内部に、複数の円柱状の誘電体柱を周期的に配置することにより、周期性を有するフォトニック結晶を構成することができる。
【0020】
また、第6発明に係る電磁波導波路は、第5発明において、前記主導波管の横幅が、前記フォトニック結晶4格子分以上となるようにしてあることを特徴とする。
【0021】
第6発明では、方形の主導波管の横幅が、フォトニック結晶4格子分以上となることにより、主導波管内に用いているフォトニック結晶の周期性を効率良く活用することができる。
【0022】
また、第7発明に係る電磁波導波路は、第5又は第6発明において、前記主導波管内部の中心部分に、円柱状の磁性体柱を配置してあることを特徴とする。
【0023】
第7発明では、方形の主導波管内部の中心部分に、円柱状の磁性体柱を配置することにより、中心部分に配置してある磁性体柱へ電磁波が集中しやすく、印加される磁界の大きさに応じて透過することができる電磁波の周波数を変動させることが可能な可変バンドパスフィルタを構成することができる。
【0024】
次に上記目的を達成するために第8発明に係るバンドパスフィルタは、第7発明の電磁波導波路を備えることを特徴とする。
【0025】
第8発明では、上述した電磁波導波路を備えたバンドパスフィルタを構成することにより、電磁波の方形の主導波管内の透過特性を改善することができ、別個に空洞同軸導波変換器を設ける必要がない、小型のバンドパスフィルタを提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
上記構成によれば、方形の主導波管が、両端部にてアンテナ部分を有する同軸導波管と結合してあり、該主導波管と同軸導波管との結合部分がアンテナ部分を中心にした半円柱形の突起部として構成してあることにより、電磁波の主導波管内の透過特性を改善することができ、別個に空洞同軸導波変換器を設ける必要がないことから、電磁波導波路全体のサイズを小型化したバンドパスフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】電磁波導波路の構成を示す斜視図である。
【図2】従来の電磁波導波路による透過特性を示すグラフである。
【図3】本発明の実施の形態1に係る電磁波導波路による透過特性を示すグラフである。
【図4】半円柱形の突起部の半径Rを5.0mmに設定した場合の本発明の実施の形態1に係る電磁波導波路による透過特性を示すグラフである。
【図5】半円柱形の突起部の半径Rを5.0mmに設定した場合の本発明の実施の形態1に係る電磁波導波路による反射特性を示すグラフである。
【図6】本発明の実施の形態1に係る電磁波導波路の構成を示す両端部に配置してある同軸導波管の中心線を含む面での断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路の構成を示す斜視図である。
【図8】フォトニック結晶の構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路の透過特性を示すグラフである。
【図10】本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路の反射特性を示すグラフである。
【図11】特定の周波数で共振するように設計された誘電率の異なる磁性体柱を備える本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路を備える狭帯域バンドパスフィルタの構成を示す斜視図である。
【図12】磁性体柱を備える本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路の透過特性を示すグラフである。
【図13】本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路を備えるバンドパスフィルタの構成を示す両端部に配置してある同軸導波管の中心線を含む面での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、電磁波導波路の構成を示す斜視図である。図1(a)は、従来の電磁波導波路の構成を示す斜視図を、図1(b)は、本発明の実施の形態1に係る電磁波導波路の構成を示す斜視図を、それぞれ示している。
【0030】
図1(a)に示すように従来の電磁波導波路1は、方形の主導波管11と、主導波管11の両端にアンテナ部分13、13を有する同軸導波管12、12とで構成されている。主導波管11の内部には比誘電率εが2.8である光造形エポキシ樹脂が充填されている。もちろん、用途に応じて比誘電率εの相違する他の合成樹脂が充填されていても良いし、何も充填しない空洞であっても良い。
【0031】
以下、10GHz以上の電磁波を透過させたい場合について説明する。遮断周波数を10GHzとした場合、電磁波の遮断波長λは30.0mmとなる。実際には主導波管11の内部に充填されている光造形エポキシ樹脂の比誘電率εに応じて、式(1)により遮断波長λは波長λact に短縮される。
【0032】
λact =λ/√ε ・・・ 式(1)
【0033】
式(1)により、遮断波長λは18.0mm(=λact)となる。主導波管11の横幅Wは、従来の設計手法に従う場合、遮断波長λの二分の一となることから、横幅Wは9.0mmで設計される。しかし、主導波管11内にフォトニック結晶を収容して、その特性を利用する場合には、フォトニック結晶の大きさが問題となる。理想とされる、無限遠の長さを有するフォトニック結晶に近い特性を得るためには、フォトニック結晶の横幅を4格子分以上とすることが望ましい。フォトニック結晶の横幅を4格子以上とした場合、フォトニック結晶の格子の大きさによっては、従来の設計手法による横幅では不十分となるおそれがある。
【0034】
例えばフォトニック結晶4格子分以上を確保するために横幅16.0mmが必要な場合、図1(a)に示す主導波管11の横幅Wを16.0mmとして設計することもできる。この場合、遮断周波数は5.6GHzとなる。
【0035】
図1(b)では、従来の電磁波導波路1とは異なり、主導波管11と同軸導波管12、12との結合部分を、アンテナ部分13、13を中心にした半円柱形の突起部14、14として構成してある。方形の主導波管11と同軸導波管12との結合部分が、図1(a)に示すように方形の主導波管11の短絡端から所定の位置に設けてある場合、結合部分の位置によって、短絡端による反射波と進行波との位相が変動し、電磁波の透過効率が変動する。
【0036】
しかし、図1(b)に示すようにアンテナ部分13、13を中心にした半円柱形の突起部14、14を設けることにより、短絡端による反射波はアンテナ部分13、13へと集中する。したがって、反射波と進行波との位相の相違により電磁波の主導波管11の内部の透過効率が大きく変動することなく、安定した透過効率を有する電磁波導波路1を提供することができる。
【0037】
図2は、従来の電磁波導波路1による透過特性を示すグラフである。図2は、横幅Wを9.0mmとした場合、及び横幅Wを16.0mmとした場合について示している。結合部分と短絡端との距離は、それぞれ4.5mmと8.0mmとし、主導波管11の縦幅Dは、3.0mmとしている。図2では、縦軸に電磁波の減衰量(dB)を、横軸に周波数(GHz)をとり、周波数変化に対する透過特性を示している。すなわち、電磁波の減衰量の多い周波数帯域では電磁波の透過特性が低く、少ない周波数帯域では電磁波の透過特性が高いことになる。
【0038】
0〜−2dBの範囲を容認することができる減衰量であるとした場合、従来の設計手法に従って横幅Wを9.0mmとしたときには、目的とする10GHz以上の周波数帯域において、約5GHzの透過周波数幅を得ることができる。しかし、無理に横幅Wを広げて16.0mmとした場合、透過周波数幅は1GHzにも満たない。
【0039】
図3は、本発明の実施の形態1に係る電磁波導波路1による透過特性を示すグラフである。図2と同様、縦軸に電磁波の減衰量(dB)を、横軸に周波数(GHz)をとり、周波数変化に対する減衰特性を示している。すなわち、電磁波の減衰量の多い周波数帯域では電磁波の透過特性が低く、少ない周波数帯域では電磁波の透過特性が高いことになる。図3では、横幅Wの大きさを16.0mmと固定し、半円柱形の突起部14の半径Rを変動させて透過特性を比較した。主導波管11の縦幅Dは、3.0mmである。
【0040】
図3より、本発明の実施の形態1に係る電磁波導波路1では、目的とする10GHz以上の周波数帯域において広い透過周波数幅を得ることがわかる。0〜−2dBの範囲を容認することができる減衰量であるとした場合の、半径Rと透過周波数の上限値、下限値及び透過周波数幅との関係を(表1)に示す。同様に、0〜−1dBの範囲を容認することができる減衰量であるとした場合の、半径Rと透過周波数の上限値、下限値及び透過周波数幅との関係をについて(表2)に示す。図3、(表1)及び(表2)から、半円柱形の突起部14の半径Rを3.5mm以上6.0mm以下に設定した場合に優れた透過特性を示し、さらに5.0mm以上6.0mm以下にした場合に特に優れた透過特性を示すことがわかる。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
図3、(表1)、及び(表2)に基づいて半径Rと主導波管11の横幅Wとの関係を考察した場合、半径Rを主導波管11の横幅Wの三十二分の七以上三十二分の十二以下となるように設定したときに、電磁波の高い透過特性を維持することができると考えられる。また、半径Rを主導波管11の横幅Wの三十二分の十以上三十二分の十二以下となるように設定したとき、電磁波の透過特性はより安定していると考えることができる。
【0044】
また、半円柱形の突起部14の半径Rを5.0mmに設定した場合には、透過特性が格別に向上する。図4は、半円柱形の突起部14の半径Rを5.0mmに設定した場合の本発明の実施の形態1に係る電磁波導波路1による透過特性を示すグラフである。図2、図3と同様、縦軸に電磁波の減衰量(dB)を、横軸に周波数(GHz)をとり、周波数変化に対する透過特性を示している。
【0045】
図4に示すように、半円柱形の突起部14の半径Rを5.0mmに設定した場合、10.3GHzから14.6GHzの間の周波数帯域にて、減衰量が0〜−1dBの範囲内で収束しており、特に安定した透過特性を示している。
【0046】
一方、図5は、半円柱形の突起部14の半径Rを5.0mmに設定した場合の本発明の実施の形態1に係る電磁波導波路1による反射特性を示すグラフである。縦軸に電磁波の減衰量(dB)を、横軸に周波数(GHz)をとり、周波数変化に対する反射特性を示している。
【0047】
図5に示すように、半円柱形の突起部14の半径Rを5.0mmに設定した場合、電磁波の減衰量が−10dB以下で安定した反射特性を示す周波数帯域は、図4にて安定した透過特性を示している周波数帯域と略一致していることがわかる。したがって、電磁波の透過特性が良好であり、しかも安定している電磁波導波路1を提供することができる。
【0048】
図6は、本発明の実施の形態1に係る電磁波導波路1の構成を示す両端部に配置してある同軸導波管12、12の中心線を含む面での断面図である。実施の形態1に係る電磁波導波路1は、方形の主導波管11の両端にアンテナ部分13、13を有する同軸導波管12、12を結合してある。主導波管11と同軸導波管12、12との結合部分は、アンテナ部分13、13を中心にした半円柱形の突起部14、14として構成してある。
【0049】
方形の主導波管11は、Al、Cu、あるいは合成樹脂にCuメッキ、Agメッキ等を施した材料を用いる。主導波管11の内部には、比誘電率εが2.8である光造形エポキシ樹脂が充填されている。
【0050】
10GHz以上の電磁波を透過させたい場合、従来の設計手法に従ったときには、主導波管11の横幅Wは9.0mmとなる。しかし、ここでは16.0mmとし、主導波管11の縦幅Dは、3.0mmとした。
【0051】
また、半円柱形の突起部14の半径Rは、5.0mmに設定してあり、方形の主導波管11の内部を伝搬する電磁波の透過特性は、図3の半径R=5.0mmの場合の透過特性となる。したがって、周波数が9.0GHzから16.4GHzまでは電磁波をほとんど減衰することなく透過させることができ、安定して電磁波を伝搬させることができる電磁波導波路1を提供することが可能となる。
【0052】
(実施の形態2)
方形の主導波管11の内部に、複数の円柱状の誘電体柱を周期的に配置して、周期性を有するフォトニック結晶を構成しても良い。図7は、本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路1の構成を示す斜視図である。
【0053】
図7に示すように実施の形態2に係る電磁波導波路1は、方形の主導波管11と、主導波管11の両端にアンテナ部分13、13を有する同軸導波管12、12とで構成されている。主導波管11の内部には複数の円柱状の誘電体柱25、25、・・・が周期的に配置され、周囲を比誘電率εが2.8である光造形エポキシ樹脂で充填したフォトニック結晶が構成されている。
【0054】
実施の形態1と同様、主導波管11の横幅Wは16.0mmとし、主導波管11の縦幅Dは、3.0mmとした。
【0055】
図8は、フォトニック結晶の構成を示す斜視図である。図8に示すように、比較的低い比誘電率εを有する光造形エポキシ樹脂が主導波管11に充填され、その中に周期的に複数の円柱状の誘電体柱25、25、・・・が配置されている。誘電体柱25、25、・・・は(Zr、Sn)TiO4 系セラミックスにて、直径2mmの円柱状に構成されている。比誘電率εは39と比較的高い。配列は三角格子であり、バンドギャップを約10〜15GHzになる様に設計されており、誘電体柱25、25の間隔は3.85mmである。このフォトニック結晶の4格子分の大きさは、主導波管11の幅方向に約15.3mmなので、これを収容するためには主導波管11の幅Wは約16mm必要となる。
【0056】
また、半円柱形の突起部14の半径Rを5.0mmに設定した場合、方形の主導波管11の内部を伝搬する電磁波の透過特性は、周波数が9.0GHzから16.4GHzの間で安定する。図9は、本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路1の透過特性を示すグラフであり、図10は、本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路1の反射特性を示すグラフである。
【0057】
図9及び図10に示すように、周波数が11GHzから16GHzの間では、電磁波はほとんど透過されることなく反射されている。つまり、主導波管11に周期性を有するフォトニック結晶を構成することにより、フォトニック結晶の周期性を活用してバンドギャップを生じさせることが可能となる。
【0058】
なお、方形の主導波管11の内部に、複数の円柱状の誘電体柱25、25、・・・を周期的に配置するだけでなく、中心部分に特定の周波数で共振するように設計された誘電率の異なる円柱状の誘電体柱、磁性体柱等を欠陥素子として配置することができる。これにより、特定の周波数帯域のみを透過させる狭帯域バンドパスフィルタ(帯域通過フィルタ)を構成することができる。また、磁性体柱を配置した場合には、印加する磁界の大きさに応じて透過することができる周波数帯域を変動させることが可能なバンドパスフィルタを構成することができる。図11は、特定の周波数で共振するように設計された誘電率の異なる磁性体柱を備える本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路1を備える狭帯域バンドパスフィルタの構成を示す斜視図である。もちろん、磁性体柱に限定されるものではなく、誘電体柱であっても良い。
【0059】
図11に示すように、磁性体柱26を備える本実施の形態2に係る電磁波導波路1は、方形の主導波管11と、主導波管11の両端にアンテナ部分13、13を有する同軸導波管12、12とで構成されている。主導波管11の内部には複数の円柱状の誘電体柱25、25、・・・が周期的に配置され、誘電体柱25、25、・・・が配置されている中心には、円柱状の磁性体柱26が配置されている。そして、周囲を比誘電率εが2.8である光造形エポキシ樹脂で充填することにより、フォトニック結晶が構成されている。磁性体柱26はNiCuZn系フェライトにて、直径2.4mmの円柱状に構成されている。比誘電率εは11.8と比較的低い。
【0060】
実施の形態1と同様、主導波管11の横幅Wは16.0mmとし、主導波管11の縦幅Dは3.0mmとしてある。
【0061】
また、半円柱形の突起部14の半径Rを5.0mmに設定した場合、方形の主導波管11の内部を伝搬する電磁波の透過特性は、周波数が10GHzから16GHzの間で大きく減衰するが、印加する直流磁界Hの大きさに応じて透過することが可能な周波数帯域が出現する。図12は、磁性体柱26を備える本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路1の透過特性を示すグラフである。
【0062】
図12に示すように、方形の主導波管11の内部を伝搬する電磁波の透過特性は、周波数が10GHzから16GHzの間で大きく減衰しているが、周波数13GHz近傍にて透過することが可能な周波数帯域が出現している。これは、磁性体柱26の存在により、透過することが可能な周波数帯域が出現したものと考えることができ、さらに直流磁界Hの大きさを変動させることにより、所望の周波数帯域の電磁波を透過させることが可能な可変バンドパスフィルタを構成することができる。
【0063】
図13は、本発明の実施の形態2に係る電磁波導波路1を備えるバンドパスフィルタの構成を示す両端部に配置してある同軸導波管12、12の中心線を含む面での断面図である。実施の形態2に係るバンドパスフィルタは、方形の主導波管11の両端にアンテナ部分13、13を有する同軸導波管12、12を結合してある。主導波管11と同軸導波管12、12との結合部分は、アンテナ部分13、13を中心にした半円柱形の突起部14、14として構成してある。
【0064】
方形の主導波管11の内部を伝搬する電磁波の電界振幅の方向が図13の紙面の上下方向となり、磁界振幅の方向が図13の紙面に向かって垂直な方向となるよう、方形の主導波管11を挟み込む位置に直流磁界Hを印加する電磁石60を配置してある。方形の主導波管11は、Al、Cu、あるいは合成樹脂にCuメッキ、Agメッキ等を施した材料を用いる。直流磁界Hがシールドされないようにするためである。斯かる構成とすることにより、11GHzから16GHzまでの周波数帯域において、直流磁界Hの大きさを変動させることにより、13GHz近傍での所望の周波数帯域の電磁波を透過させることが可能な狭帯域可変バンドパスフィルタを提供することができる。
【0065】
以上のように本実施の形態2によれば、方形の主導波管11が、両端部にてアンテナ部分13、13を有する同軸導波管12、12を結合してあり、主導波管11と同軸導波管12、12との結合部分がアンテナ部分13、13を中心にした半円柱形の突起部14、14として構成してあることにより、主導波管11の内部の電磁波透過特性を改善することができ、別個に空洞同軸導波変換器を設ける必要がないことから、電磁波導波路1全体のサイズを小型化したバンドパスフィルタを提供することができる。
【0066】
なお、上述した実施の形態1及び2は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。すなわち、実施の形態1及び2に開示した電磁波導波路及びバンドパスフィルタを構成する主導波管11のサイズは、伝搬させる電磁波の周波数帯域に応じて変動するものであり、上述した実施の形態に限定されるものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
1 電磁波導波路
11 主導波管
12 同軸導波管
13 アンテナ部分
14 突起部
25 誘電体柱
26 磁性体柱
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形の主導波管が、両端部にてアンテナ部分を有する同軸導波管と結合してあり、
前記主導波管と前記同軸導波管との結合部分が前記アンテナ部分を中心にした半円柱形の突起部として構成してあることを特徴とする電磁波導波路。
【請求項2】
前記主導波管は、内部に誘電率1以上の材料を充填してあることを特徴とする請求項1記載の電磁波導波路。
【請求項3】
半円柱形の前記突起部の半径は、前記主導波管の横幅の三十二分の七以上三十二分の十二以下となるようにしてあることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁波導波路。
【請求項4】
半円柱形の前記突起部の半径は、前記主導波管の横幅の三十二分の十以上三十二分の十二以下となるようにしてあることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁波導波路。
【請求項5】
前記主導波管は、内部に複数の円柱状の誘電体柱を周期的に配置したフォトニック結晶を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電磁波導波路。
【請求項6】
前記主導波管の横幅が、前記フォトニック結晶4格子分以上となるようにしてあることを特徴とする請求項5記載の電磁波導波路。
【請求項7】
前記主導波管内部の中心部分に、円柱状の磁性体柱を配置してあることを特徴とする請求項5又は6記載の電磁波導波路。
【請求項8】
請求項7に記載の電磁波導波路を備えることを特徴とするバンドパスフィルタ。
【請求項1】
方形の主導波管が、両端部にてアンテナ部分を有する同軸導波管と結合してあり、
前記主導波管と前記同軸導波管との結合部分が前記アンテナ部分を中心にした半円柱形の突起部として構成してあることを特徴とする電磁波導波路。
【請求項2】
前記主導波管は、内部に誘電率1以上の材料を充填してあることを特徴とする請求項1記載の電磁波導波路。
【請求項3】
半円柱形の前記突起部の半径は、前記主導波管の横幅の三十二分の七以上三十二分の十二以下となるようにしてあることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁波導波路。
【請求項4】
半円柱形の前記突起部の半径は、前記主導波管の横幅の三十二分の十以上三十二分の十二以下となるようにしてあることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁波導波路。
【請求項5】
前記主導波管は、内部に複数の円柱状の誘電体柱を周期的に配置したフォトニック結晶を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電磁波導波路。
【請求項6】
前記主導波管の横幅が、前記フォトニック結晶4格子分以上となるようにしてあることを特徴とする請求項5記載の電磁波導波路。
【請求項7】
前記主導波管内部の中心部分に、円柱状の磁性体柱を配置してあることを特徴とする請求項5又は6記載の電磁波導波路。
【請求項8】
請求項7に記載の電磁波導波路を備えることを特徴とするバンドパスフィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−30055(P2011−30055A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175194(P2009−175194)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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