説明

電磁波遮蔽材に於けるアース取り出し方法

【課題】ディスプレイパネルの前面に配置する用途に好適な電磁波遮蔽材について、生産性が良く且つ導電体層の切断や損傷が生じず、確実にアースを取り出せる、アース取り出し方法を提供する。
【解決手段】(a)透明基材1上に導電体層2、粘着剤層3及び機能層4を有する電磁波遮蔽材10として、粘着剤層として電離放射線照射による硬化で粘着力が消失乃至は低下し剥離可能となる電離放射線剥離性粘着剤層を用いたものを準備する電磁波遮蔽材準備工程、(b)接地予定領域Eeの電離放射線剥離性粘着剤層を硬化させる粘着剤層硬化工程、(c)硬化した部分の電離放射線剥離性粘着剤層と機能層を剥がし導電体層を露出させる導電体層露出工程、(d)露出させた導電体層からアース部材5でアースを取り出すアース取り出し工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種の用途、中でも特にディスプレイパネルの前面に配置するのに好適な、電磁波遮蔽材からのアース取り出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ディスプレイパネルとして、プラズマディスプレイパネル(以後PDPとも言う)、液晶パネル、電界発光(EL)パネル等の各種画像表示パネルが普及している。これらの中でも、特に、PDPは不要な電磁波放出が強いため、ディスプレイパネルの前面に電磁波遮蔽材を配置している。
【0003】
ディスプレイの前面に配置する用途の電磁波遮蔽材においては、導電体層として金属層など不透明な導電体層を利用する場合、電磁波遮蔽性能と共に光透過性を実現する必要がある。このため、導電体層としては、印刷メッシュや金属メッシュなどとの不透明な層をメッシュ形状などのパターンで形成して多数の開口部を設けることで、電磁波遮蔽性能と光透過性とを両立させている。
そして、この導電体層からのアース(接地)の取り出しは、電磁波遮蔽材の中央部の画像表示領域の外縁部にて行っている。
【0004】
一方、電磁波遮蔽材は、本来の電磁波遮蔽機能以外に、更に近赤外線吸収、ネオン光吸収、反射防止等の光学フィルタ機能の付与、導電体層の傷付き防止などの為に、導電体層面に光学フィルムなど透明被覆シートを積層したり、導電体層面に樹脂層を塗布形成したりして被覆することが普通であり、これらが絶縁被覆層として導電体層上に存在している。
【0005】
このため、アースを取り出す部分では絶縁被覆層がない様にする工夫が各種提案されている。例えば、導電体層が透明基材に積層された導電体層積層体に対して、大きさが一回り小さい透明被覆シートを導電体層積層体の中央部に貼付し積層することで、四辺全周囲に設けた接地予定領域中に四辺全周囲で導電体層を露出させてアースを取り出す方法、或いは接地予定領域も含めて全面に透明被覆シートを一旦貼付し積層した後に接地予定領域上の透明被覆シートを剥がし除去することで、四辺全周囲で導電体層を露出させてアースを取り出す方法、などである(特許文献1、特許文献2)。
また、透明被覆シートを剥がすには、透明被覆シートに入れた切れ目部分で不要部分を剥がし除去したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−126024号公報(0016、図1)
【特許文献2】特開2003−66854号公報(請求項1、0018、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1や特許文献2などの従来のアース取り出し方法は、生産性の問題や、導電体層を切断したり、透明被覆シートを剥がすときに導電体層も伴って剥がしたりする問題があった。
【0008】
すなわち、本発明の課題は、ディスプレイパネルの前面に配置する用途に好適な電磁波遮蔽材について、生産性が良く且つ導電体層の切断や損傷が生じず、確実にアースを取り出せる、アース取り出し方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明の電磁波遮蔽材に於けるアース取り出し方法では、次の構成とした。
(1)以下の各工程をこの順に含む、電磁波遮蔽材に於けるアース取り出し方法。
(a)透明基材と、該透明基材上に形成された導電体層と、該導電体層を被覆する粘着剤層と、該粘着剤層上に形成された機能層とを少なくとも有し、該粘着剤層として電離放射線照射による硬化で粘着力が消失乃至は低下し剥離可能となる電離放射線剥離性粘着剤層を形成した、電磁波遮蔽材を用意する、電磁波遮蔽材準備工程、
(b)上記電磁波遮蔽材の接地予定領域に電離放射線を照射して、接地予定領域の未硬化状態の電離放射線剥離性粘着剤層を硬化させる、粘着剤層硬化工程、
(c)硬化した部分の電離放射線剥離性粘着剤層をこれに積層している機能層と共に剥がして、導電体層を露出させる、導電体層露出工程、
(d)露出した導電体層からアースを取り出す、アース取り出し工程。
【0010】
(2)上記(b)粘着剤層硬化工程と(c)導電体層露出工程との間に、
(b1)硬化した電離放射線剥離性粘着剤層に対して、接地予定領域の端縁に、機能層側から機能層の全層と電離放射線剥離性粘着剤層の途中まで達するハーフカットを形成する、ハーフカット加工工程を有し、
上記(c)導電体層露出工程が、
(c1)導電体層から剥がした機能層及び硬化した電離放射線剥離性粘着剤層を、上記(b1)ハーフカット加工工程で形成したハーフカットの部分で分離し除去する、分離除去工程を含む、
上記(1)の電磁波遮蔽材に於けるアース取り出し方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接地予定領域の導電体層が粘着剤層と共に機能層で被覆されていても、導電体層が剥離や切断されることなく、容易に接地予定領域の導電体層を露出させて、露出した導電体層からアースを取ることができる。さらに、接地予定領域の端縁部分に機能層側からハーフカットを入れておけば、機能層と硬化した電離放射線剥離性粘着剤層とを容易にハーフカット部分で分離し除去することが出来、アースの取り出しも更に容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるアース取り出し方法の一形態を概念的に示す説明図。
【図2】アース取り出し方法の別の一形態(ハーフカット利用)を説明する断面図。
【図3】一画面分の電磁波遮蔽材に於ける接地予定領域及びその端縁の位置の一形態を例示する平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、工程順に、図面を参照しながら説明する。
【0014】
A.第1の形態:
先ず、本発明について、第1の形態の実施形態例について説明する。第1の形態は、(a)電磁波遮蔽材準備工程、(b)粘着剤層硬化工程、(c)導電体層露出工程、(d)アース取り出し程をこの順に行う。
【0015】
《電磁波遮蔽材準備工程》
(a)電磁波遮蔽材準備工程は、図1(a)に示す様に、特定の構成の電磁波遮蔽材10を用意する工程である。この電磁波遮蔽材10は、透明基材1と、該透明基材1上に形成された導電体層2と、該導電体層2を被覆する粘着剤層3と、該粘着剤層3上に形成された機能層4とを少なくとも有し、該粘着剤層3として、電離放射線照射による硬化で粘着力が消失乃至は低下し剥離可能となる電離放射線剥離性粘着剤層3を用いてある。
【0016】
〔透明基材〕
透明基材1としては、透明であれば特に制限はなく、公知のものを適宜選択使用すれば良い。例えば、樹脂フィルム(乃至シート)、樹脂板、或いは無機材料板等が代表的である。樹脂フィルム(乃至シート)及び樹脂板の樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等である。無機材料板の材料は、例えば、硝子、石英、透明セラミックス等である。なかでも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムはコスト、透明性、機械的強度等の点で好適である。なお、透明基材の厚みは通常20〜5000μm程度である。
透明基材1は、ロール・ツー・ロール方式での連続生産適性の点では、樹脂フィルムがフレキシブルある為に好ましい。ここで、ロール・ツー・ロール方式とは、ロール(巻取り)から連続帯状物を巻き出して加工を施しロールに巻き取る生産方式である。
【0017】
〔導電体層〕
導電体層2としては、電磁波遮蔽性能と光透過性とを確保でき、少なくも見かけ上透明にできるものであれば、特に制限はなく公知のものを適宜選択使用すれば良い。したがって、全面に連続層として形成される銀、ITO(インジウム錫酸化物)などからなる透明導電膜でも良いが、優れた電磁波遮蔽性と優れた透明性を両立できる点では、層自体は不透明だが、この層をパターン状に形成することで光透過性を確保した導電パターン層が好ましい。
【0018】
[導電パターン層]
導電パターン層としては、透明基材1上に積層した、銅、アルミニウム等の金属層(箔)を、ケミカルエッチング法などでメッシュ状などの幾何学形状にパターンニングしたもの、或いは、銀等から成る導電性粒子を樹脂バインダ中に分散させた導電性組成物をインクとして、透明基材1上に印刷して導電性組成物層として形成したもの等が代表的である。
なかでも、後者のインクを用いる印刷法は、ケミカルエッチングの様に化学薬品を用いる湿式処理が不要であり、かつ高生産性でもある点で好ましい。
【0019】
導電体層2を導電パターン層とする場合、そのパターンの平面視形状は、特に制限はなく公知の形状でよく、例えば、メッシュ形状(格子模様)、ストライプ形状(直線状縞模様、螺旋模様など)などである。なかでもメッシュ形状、それも正方格子形状が代表的である。開口部の形状は、メッシュ形状が例えば正方格子形状では正方形、ストライプ形状では帯形状となる。
【0020】
なお、導電体層2は、通常、その表面での光反射が画像表示に悪影響してコントラストが低下しない様に、導電体層2の表面には黒化処理が施される。黒化処理としては、黒化ニッケルめっきなど電磁波遮蔽材において公知のものを適宜採用すれば良い。
【0021】
また、導電体層2及びこの導電体層2が形成された透明基材1の面、つまり電離放射線剥離性粘着剤層3が接する面には、硬化した後の電離放射線剥離性粘着剤層3cの離型性が不足する場合には、硬化させる部分以外での密着性維持や低接地抵抗の確保に支障を来たさない範囲内で、シリコーン系離型剤等による公知の離型処理を施しておいても良い。この際、離型処理は印刷法により、接地予定領域Eeだけ、或いは接地予定領域Ee及びその近傍のみとしても良い。
【0022】
[接地予定領域]
接地予定領域Eeは、図3の平面図でその一例を示す様に、通常、一枚の電磁波遮蔽材10に対して、その全周囲にそった額縁形状の領域となる。接地予定領域Eeで全周囲を囲われた中央部に、画像表示に使われる画像表示領域が存在する。接地予定領域Eeと、その内側の中央部との境界線が、接地予定領域Eeの端縁Ebである。同図の形態では、接地予定領域Eeが額縁形状であったから、端縁Ebは長方形形状となっている。
【0023】
(接地予定領域内でのパターン有無)
接地予定領域Eeは、画像表示に使用されない部分に設けられる。この為、接地予定領域Eeの内部においては、導電体層2を導電パターン層として設ける場合、もはや、透明性確保の為にパターン状にする必要はない。したがって、接地予定領域Ee内においては、導電パターン層はパターン状であっても良いし、パターン状ではなく全面ベタ、つまり開口部のない連続層として形成されていても良い。
【0024】
〔電離放射線剥離性粘着剤層〕
電離放射線剥離性粘着剤層3は、電離放射線で硬化可能な粘着剤層であって硬化前は粘着性を呈する。この電離放射線剥離性粘着剤層3は、電離放射線を照射して硬化させると架橋構造の生成により、粘着力が消失乃至は極端に低下する結果、粘着力による接着力が弱くなり、電離放射線剥離性粘着剤層3を介して接着していた層を容易に剥離できる様になる層である。また、電離放射線剥離性粘着剤層3は電気絶縁性の層である。
電離放射線としては、紫外線、及び電子線が代表的であり、なかでも紫外線は電子線に比べて設備的にも容易であり、好ましい電離放射線である。
【0025】
電離放射線剥離性粘着剤層3には、電離放射線照射による硬化で粘着力が剥離可能な程度まで消失乃至は低下する粘着剤を用いる。電離放射線剥離性粘着剤層3としては、例えば、アクリル系粘着剤やポリエステル系粘着剤と、電離放射線重合性化合物(の未硬化物)との樹脂組成物を用いることができる。電離放射線として紫外線を用いる場合は、さらに該樹脂組成物は重合開始剤を含む。
例えば、上記アクリル系粘着剤としては、公知の粘着剤を用いることができる。アクリル系粘着剤は、通常、(メタ)アクリル酸エステルをモノマー成分として含む共重合体である。例えば、該共重合体としては、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ヒドロキシ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレンなどの重合性化合物(モノマー)との共重合体などが用いられる。
なお、本明細書にて、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートを意味し、単に「アクリレート系」と言うときはメタクリレート系も含む。
【0026】
電離放射線重合性化合物には架橋構造を生成可能な樹脂組成物を組成可能な化合物が用いられる。この様な化合物としては、例えば、ラジカル重合性化合物として、各種モノマー、プレポリマー(含むオリゴマー)が用いられる。
例えば、多官能モノマーとしては、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を用いることができる。
また、多官能プレポリマー(含むオリゴマー)としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等を用いることができる。
重合開始剤には、例えば、ラジカル重合性化合物に対しては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系等が用いられる。
この他、該樹脂組成物は、通常、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、架橋剤、紫外線吸収剤などを含み得る。架橋剤は、ポリイソシアネート、ポリアミン、エポキシ樹脂等である。
【0027】
電離放射線剥離性粘着剤層3は、上記樹脂組成物に更に適宜溶剤を加えた塗液又はインクを、導電体層2上に施して形成するか、或いは機能層4上に施して形成するか、或いは離型フィルム上に施して形成した粘着フィルムから、粘着剤層のみを導電体層2又は機能層4に転写して形成することができる。離型フィルムには、シリコーン等で離型処理したポリエステルフィルムなどを用いることができる。
電離放射線剥離性粘着剤層3の厚みは、例えば10〜100μm、好ましくは20〜50μm程度である。
【0028】
電離放射線剥離性粘着剤層3は、電磁波遮蔽材10を通常の使用時の環境下において、日光、蛍光灯などからの紫外線に晒されて、剥離しない部分での粘着性までが消失するのは好ましくない。この様なことが心配されるときは、電離放射線剥離性粘着剤層3自体の紫外線の透過率を下げておくのが好ましい。より好ましくは、電磁波遮蔽材10をその使用時に、電離放射線剥離性粘着剤層3に対して紫外線が到来する側に位置する層について、紫外線の透過率を下げておくのが望ましい。電離放射線剥離性粘着剤層3に対して紫外線が到来する側に位置する層は、電磁波遮蔽材10をディスプレイパネルに適用する場合、電離放射線剥離性粘着剤層3よりも、ディスプレイの観察者側に位置する層であり、機能層4、或いは透明基材1となる。紫外線の透過率を下げる目安としては、例えば紫外線透過率を60%以下とする。
紫外線透過率を下げるには、電離放射線剥離性粘着剤層3、機能層4、透明基材1などに、紫外線吸収剤を含ませておくと良い。紫外線吸収剤としては、公知のもので良く、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、ベンゾエート系等の有機系紫外線吸収剤、或いは、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、硫酸バリウム等の微粒子からなる無機系紫外線吸収剤などが挙げられる。紫外線吸収剤の配合量は、層中に0.5〜10質量%程度である。
なお、紫外線で硬化する形態の電離放射線剥離性粘着剤層3を用いる場合には、粘着剤層硬化工程に支障を生じないように、紫外線吸収剤の吸収波長帯域を電離放射線剥離性粘着剤層3の硬化波長帯域と合致させた上で、(b)粘着剤層硬化工程の際には、紫外線吸収剤を含有させる層(この場合は電離放射線剥離性粘着剤層3は除く層)とは反対側から電離放射線剥離性粘着剤層3に電離放射線を照射することが好ましい。
【0029】
〔機能層〕
機能層4は、電磁波遮蔽機能以外の機能を担う層であり、機能層が担う機能としては、光学機能と非光学機能とがある。また、機能層4は電気絶縁性の層でもある。機能層4が担う機能としては、ディスプレイパネル全面フィルタ用などの光学フィルタにおいて従来公知の各種機能を挙げることができる。
【0030】
光学機能層としては、例えば、近赤外線を吸収する近赤外線吸収層、紫外線を吸収する紫外線吸収層、プラズマディスプレイパネルからのネオン光を吸収するネオン光吸収層、表示画像を好みの色調に補正する色補正機能、反射防止機能(防眩、反射防止、防眩及び反射防止兼用のいずれか)、特開2007−272161号公報等に記載の微小ルーバによる外光反射防止機能などである。
非光学機能層としては、フィルタの表面を保護する表面保護層、ハードコート層、帯電防止層、汚染防止層、耐衝撃層、2層間の物質移動を防ぐバリア層、電磁波遮蔽材を被着体に貼り付ける為の粘着剤層、この粘着剤層を使用時まで一時的に保護しておく剥離シートなどである。
この様な機能層4は、例えば、近赤外線吸収層は近赤外線吸収色素をバインダ樹脂中に含有させた樹脂層として塗工形成され、ハードコート層は電離放射線硬化性樹脂の硬化物層として塗工形成される。バインダ樹脂は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、アクリレート系電離放射線硬化性樹脂などの硬化性樹脂などである。
機能層4は、これら機能の1又は2以上を備え、単層又は多層構成によって複数機能を兼用することができる。
機能層4は通常、樹脂層として形成される。機能層4は、前記透明基材1で列記したものを支持体として備えても良い。例えば、樹脂フィルムを支持体として備える。
機能層4の厚みは、通常、5〜500μmである。
【0031】
《粘着剤層硬化工程》
(b)粘着剤層硬化工程では、図1(b)に示す様に、上記した電磁波遮蔽材10の接地予定領域Eeに電離放射線を照射して、接地予定領域Eeの電離放射線剥離性粘着剤層3を硬化させて粘着力を剥離可能な程度まで消失乃至は低下させる。粘着剤層硬化工程の前までは、電離放射線剥離性粘着剤層3は、少なくとも積極的乃至は意識的には硬化させていないと言う意味において未硬化状態となっている。同図では、硬化した後の電離放射線剥離性粘着剤層3は、剥離可能になっているので、符号を若干変えて電離放射線剥離性粘着剤層3cとして描いてある。電離放射線としては、紫外線、電子線などを用いる。接地予定領域Eeに電離放射線を照射するには、その部分に電離放射線源から電離放射線を照射すれば良い。接地予定領域Eeの端縁Ebでの、硬化と未硬化との境界をシャープにする必要がある場合は、接地予定領域Ee以外の部分を金属プレート等で一時的に覆いマスキングしても良い。また、接地予定領域Eeの端縁Ebも確実に硬化させるには、端縁Ebの周辺部(端縁Ebから例えば5mm)も硬化させると良い。つまり、接地予定領域Eeよりも広めに電離放射線を照射して硬化させると良い。
【0032】
《導電体層露出工程》
(c)導電体層露出工程では、図1(c)に示す様に、硬化した部分の電離放射線剥離性粘着剤層3cをこれに積層している機能層4と共に剥がして、導電体層2を露出させる。このとき、同図に示す様に、必ずしも、剥がした機能層4と電離放射線剥離性粘着剤層3cとは、分離除去する必要はない。要は、アースを取る部分の導電体層2を、接地処理の作業が出来る程度以上に露出させれば良い。
【0033】
《アース取り出し工程》
(d)アース取り出し工程では、図1(d)に示す様に、露出した導電体層2からアース取り出す。露出した導電体層2からのアース取り出しは、導電性ガスケット、導電ペースト、低融点ハンダなど、公知のアース部材5を導電体層2に接触させる事によって行うことができる。
【0034】
B.第2の形態:
次に、図2を参照して、本発明の第2の形態を説明する。この第2の形態は、以上説明した第1の形態において、(b)粘着剤層硬化工程と(c)導電体層露出工程との間に、(b1)ハーフカット加工工程を有し、さらに、(c)導電体層露出工程が(c1)分離除去工程を含む、形態である。
つまり、第2の形態は、(a)電磁波遮蔽材準備工程、(b)粘着剤層硬化工程、(b1)ハーフカット加工工程、(c1)分離除去工程を含む(c)導電体層露出工程、(d)アース取り出し程をこの順に行う。
(b1)ハーフカット加工工程、及び(c1)分離除去工程以外の工程は、上記第1の形態と同様である。したがって、以下では、この (b1)ハーフカット加工工程と、(c1)分離除去工程以外の工程について説明する。
【0035】
《ハーフカット加工工程》
(b1)ハーフカット加工工程は、図1(b)で説明した(b)粘着剤層硬化工程で硬化させた電離放射線剥離性粘着剤層3cに対して、さらに、図2(a)及び図2(b)(但し、同図に於いては、図の符号(a)、(b)等と工程の符号(a)、(b)とは無関係)に示す様に、接地予定領域Eeの端縁Ebに、機能層4側から機能層4の全層と電離放射線剥離性粘着剤層3cの途中まで達する切れ目としてハーフカット6を形成する。ハーフカット6の形成は、機能層4の表面側から、押し切り刃、回転刃などの公知のカッタCによって行うことができる。この際、ハーフカット6の深さは、機能層4側から電離放射線剥離性粘着剤層3の途中まで到達する深さとするが、好ましくは、導電体層2を切断したり傷付けたりしない様にする為に、導電体層2の表面にまで到達しない深さとする。
【0036】
ハーフカット加工を、電離放射線剥離性粘着剤層3が硬化した電離放射線剥離性粘着剤層3cとなった後で行うことで、ハーフカット加工を繰り返すうちに、カッタ5に粘着剤が付着してきて、切れ味を悪くすることを防げる。もちろん、この心配がない場合は、電離放射線剥離性粘着剤層3を硬化させる前でも可能である。ただ、硬化させた後の方が、確実に粘着剤の付着を防止できる点で好ましい。
ハーフカット加工を行う部分は、図3の平面図で例示の接地予定領域Eeで言えば、端縁Ebに沿ってハーフカット6を入れる。ただ、接地予定領域Eeは、接地をする予定の領域であって、その後、実際に接地を行う、つまりアース取りを行う部分を四方全周囲とするのでなければ、露出の必要な部分に対応した部分の端縁Ebに沿ってハーフカットを入れておいても良い。
端縁Ebに沿ってハーフカットを入れるとは、ハーフカットの位置は硬化した電離放射線剥離性粘着剤層3cとなっていることが必要であり、且つ硬化は端縁Ebを境として接地予定領域Eeに対して電離放射線照射で硬化させているので、端縁Eb自体の位置、或いは、端縁Ebよりも接地予定領域Ee内とすると良い。端縁Ebよりも接地予定領域Ee内にハーフカットを入れる場合、その位置は、例えば、端縁Ebよりも接地予定領域Ee内側5mmの範囲内とすると良い。
【0037】
《分離除去工程》
(c1)分離除去工程は、図1(c)で説明した(c)導電体層露出工程にて導電体層2を露出させると共に、さらに、図2(c)に示す様に、導電体層2から剥離させた機能層4と硬化した電離放射線剥離性粘着剤層3cとを、ハーフカット6の部分で、電磁波遮蔽材10から分離し除去する。機能層4と硬化した電離放射線剥離性粘着剤層3cとの電磁波遮蔽材10からの分離除去は、ハーフカット6が形成されているので、容易にハーフカット6の位置で分離させて除去することができる。
この分離除去工程を設けることによって、図2(d)に示す様に、次のアース取り出し工程で、剥離した後に分離除去しないで残してある機能層4と硬化した電離放射線剥離性粘着剤層3cとが存在しないから、アース取り出し作業の邪魔にならず、アース取り出し作業がより容易となる。
【0038】
C.その他の工程:
なお、本発明によるアース取り出し方法は、本発明の主旨を逸脱しない範囲内であれば、上記した以外のその他の工程を含んでもよい。例えば、導電体層2が積層された側とは反対側の透明基材1の面に、ディスプレイパネルなどの被着体に貼り付ける為の粘着剤層やそのセパレータフィルムなどを積層する工程である。
【0039】
D.用途:
本発明による電磁波遮蔽材は、各種用途に使用可能である。特に、テレビジョン受像機、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器、多目的電子式表示板等の表示部等に用いられるPDP、液晶パネル、ELパネルなどの各種画像表示装置の前面フィルタ用として好適であり、特にPDP用として好適である。又、その他、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車輛、航空機、船舶等の乗り物の窓、電子レンジ等の各種家電製品の窓等に於ける電磁波遮蔽用途にも使用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 透明基材
2 導電体層
3 電離放射線剥離性粘着剤層(未硬化状態)
3c 電離放射線剥離性粘着剤層(硬化後)
4 機能層
5 アース部材
6 ハーフカット
10 電磁波遮蔽材
C カッタ
Eb (接地領域の)端縁
Ee 接地領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の各工程をこの順に含む、電磁波遮蔽材に於けるアース取り出し方法。
(a)透明基材と、該透明基材上に形成された導電体層と、該導電体層を被覆する粘着剤層と、該粘着剤層上に形成された機能層とを少なくとも有し、該粘着剤層として電離放射線照射による硬化で粘着力が消失乃至は低下し剥離可能となる電離放射線剥離性粘着剤層を形成した、電磁波遮蔽材を用意する、電磁波遮蔽材準備工程、
(b)上記電磁波遮蔽材の接地予定領域に電離放射線を照射して、接地予定領域の未硬化状態の電離放射線剥離性粘着剤層を硬化させる、粘着剤層硬化工程、
(c)硬化した部分の電離放射線剥離性粘着剤層をこれに積層している機能層と共に剥がして、導電体層を露出させる、導電体層露出工程、
(d)露出した導電体層からアースを取り出す、アース取り出し工程。
【請求項2】
上記(b)粘着剤層硬化工程と(c)導電体層露出工程との間に、
(b1)硬化した電離放射線剥離性粘着剤層に対して、接地予定領域の端縁に、機能層側から機能層の全層と電離放射線剥離性粘着剤層の途中まで達するハーフカットを形成する、ハーフカット加工工程を有し、
上記(c)導電体層露出工程が、
(c1)導電体層から剥がした機能層及び硬化した電離放射線剥離性粘着剤層を、上記(b1)ハーフカット加工工程で形成したハーフカットの部分で分離し除去する、分離除去工程を含む、
請求項1記載の電磁波遮蔽材に於けるアース取り出し方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−195542(P2012−195542A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60339(P2011−60339)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】