説明

電磁継電器

【課題】 接点閉成時の接点バウンスの発生が少ない電磁継電器を提供する。
【解決手段】 電磁継電器において、面で接触する常開固定接点6aと可動接点ばね3の撓みによって生じる可動接点3aと常開固定接点6aの摺動の摺動方向からみた、前記固定接点6aと前記可動接点3aの、接触前の対向角度θが0°<θ<45°になるよう構成することを特徴とし、板状の常開固定接点6aと板状の可動接点3aをあらかじめ一定の角度を持たせて面対向するように構成し、前記接点同士が面接触する際、一方の接点の一部が他の接点の一部に接触したのち、前記可動接点3aを支持するアーム形状のばね部材の弾性により前記可動接点3aが摺動しながらねじれ動作し、前記接点の残部が接触することにより衝突時の反発力を減少させ、接点バウンスの発生を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関し、特に車載用等として使用される電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁継電器は、自動車の電装部品などに用いられている。これらの車載用として一般的な電磁継電器について説明する。
【0003】
図1は一般的な電磁継電器の全体斜視図、図2は図1に示した電磁継電器の分解斜視図、図3は図1に示した電磁継電器の構造を説明する部分側面図である。ベース7上にコイル1を設け、継鉄2および接極子4を介して、可動接点ばね3が設けられている。可動接点ばね3の端部は可動接点3aとして機能し、前記可動接点3aは、対向して設けられた常閉固定接点部材5および常開固定接点部材6と、常閉固定接点5aおよび常開固定接点6aと交互に接触して、電磁継電器10として作動する。
【0004】
また、可動接点ばね3はコイル1に設けられたスプール8および鉄心9と接触子4を介して接触する。
【0005】
図3において、コイル1に電圧が印加されると、可動接点ばね3および可動接点3aはA方向に動作し、常開固定接点6aに面当接すると、該可動接点ばね3が撓み、該可動接点3aは、B方向に摺動する。
【0006】
図8は図1乃至図3に示した電磁継電器の接点摺動方向(図3のB方向)からみた可動接点3aおよび常閉固定接点5a、常開固定接点6aの動作を示す説明図で、図8(a)は、無励磁状態を、図8(b)は、励磁状態を示した部分側面図である。図8(a)に示すように、従来の電磁継電器は、コイル1に電圧を印加されると、可動接点3aが常開固定接点6aに衝突し摺動する。前記摺動方向から見た可動接点3aと常開固定接点6aが対向する面の成す角度は、平行となるように固定されている。図8(b)に示すように、コイル1に電圧が印加されると、可動接点3aは、常開固定接点6aに衝突し、反発力を受けて、図中、破線で示した移動後の可動接点11のように動作する。これを接点バウンスという。
【0007】
一般的に、ランプ負荷やコンデンサー負荷などは、接点閉成時に非常に大きな電流が流れる。従って、電磁継電器の接点寿命に大きく影響を与えるのが、上述した接点閉成時の接点バウンスである。
【0008】
大きい電流が流れている状態で、接点バウンスが発生すると、アーク電流が発生し、その発生熱が原因となって、接点溶着あるいは接点表面の突起や穴形成によるロッキングなどの故障が発生する恐れがある。
【0009】
接点閉成時のバウンス発生を減少させる手段としては、固定接点部材のスティフネスを下げて、固定接点部材自体に弾性を持たせることで、可動接点が衝突時の反発力を抑制し、バウンス発生をも抑制するという方法があり、例えば、特許文献1に開示されている。
【0010】
【特許文献1】実開平5−83994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述のように接点バウンスによるアーク発生を軽減するために例えば、特許文献1では固定接点ばねに弾性を付与する構成としているが、固定接点部材自体に弾性を持たせるため、板厚を薄くしなければならず、通電断面積の減少により通電能力が減少する。また、防振部材を付設するに至っては部品点数の増加およびそれに伴う工数増加やコスト増などの新たな問題が生じる。
【0012】
したがって、本発明の課題は、通電能力の減少、部品点数の増加を招くことなく、確実に接点閉成時の接点バウンスを減少させた電磁継電器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、常閉固定接点を有する固定接点部材と、常開固定接点を有する固定接点部材と、前記常閉固定接点および常開固定接点の各々に面対向する可動接点を有する可動接点ばねと、前記可動接点ばねを結合した接極子と、前記接極子を吸引するためのコイルを巻回した鉄心、とを有し、前記コイルへの励磁電流によって、前記可動接点ばねのばね力と前記励磁電流による磁力との相互作用により、前記常閉固定接点もしくは前記常開固定接点のいずれかと、前記可動接点を面接触により断続させる電磁継電器であって、前記可動接点ばねの撓みによって生じる前記可動接点と前記常開固定接点の摺動の前記摺動方向からみた、前記常開固定接点と前記可動接点の、前記面接触前の対向角度θが0°<θ<45°になるよう構成されてなることを特徴とする電磁継電器が得られる。
【0014】
本発明では、板状の常開固定接点と板状の可動接点をあらかじめ一定の角度を持たせて面対向するよう構成し、前記接点同士が面接触する際、一方の接点の一部が他の接点の一部に接触したのち、前記可動接点を支持するアーム形状のばね部材の弾性により前記可動接点が摺動しながらねじれ動作し、前記接点の残部が接触することにより衝突時の反発力を減少させ、接点バウンスの発生を抑制する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、接点閉成時の接点バウンスが減少し、接点寿命の長い電磁継電器の提供が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態としては、常開固定接点または可動接点の少なくともいずれか一方をその支持自体をあらかじめ傾けて構成し当接する接点を含む面の成す角度θが0°<θ<45°とするのがよい。また、支持体を傾けて構成するのではなく接点部分のみを傾斜を持たせた凸状面に形成しても同様の作用効果を奏する。
なお、ここでθを上記範囲に設定したのは、45°以上の傾斜を持たせると接触不良が発生する理由によるもので、接点消耗の観点から好ましくは、5°<θ<20°に設定するのがより好ましい。
【実施例】
【0017】
以下、代表的な例をあげて詳述する。
【0018】
(実施例1)
図4は、本発明の実施例を示す説明図で、可動接点3aの摺動方向からみた接点部分の側面を示す。常開固定接点6aは傾斜しており、可動接点3aと常開固定接点6aは、傾斜角θを成している。電磁継電器のコイルに電圧が印加すると、傾斜した常開固定接点6aは、可動接点3aと接点面同士が面で当接する。このとき、可動接点ばね3が撓み、可動接点3aと常開固定接点6aは摺動し、吸着する。
【0019】
サンプルとして、図4に示す構造を有し、傾斜角θを5°毎にθ=5°からθ=45°まで変化させたものを試料2から試料10として、各々10個ずつ用意し、図7に示す試験回路でランプ負荷の電気的寿命試験を行った。また、比較のため、従来例として、図3に示す従来の接点構造をもつもの、すなわち常開固定接点6aの傾斜角θ=0°のものを試料1として用意し、同様の回路で電気的寿命試験を行った。このとき、コイル電圧、ランプ負荷電圧は、ともに14Vとし、常温環境で実施し、初期バウンス時間および故障するまでの動作回数を測定して、その平均値を求めた。
【0020】
上記試験結果を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
表1において、従来例(試料1)と本発明例(試料2〜9)を比較すると、従来例(試料1)は初期バウンスが発生し、電気的寿命が約4万回しか満足できなかったのに対し、試料2〜9は、初期バウンスが発生しなかった。また、動作回数が10万回を越えても故障は発生しなかった。これは、本発明構造によって、接点閉成時のアーク電流発生が抑制されている為と考えられる。なお、傾斜角θ=45°の試料10は、初期バウンスは発生しなかったものの、7万回を越えたところで、故障した。原因は、常開接点の傾斜過多による接触不良であった。
【0023】
表1には示していないが、試料2〜9について10万回を越えて動作させたところ、試料2から試料5は、特に良好な結果を示した。これは、動作時のバウンスによるアーク発生が抑制されたばかりでなく、復旧時のアーク発生による接点消耗も減少したことが原因と考えられる。従って、傾斜角θは0°を含まず、0°より大きく、45°未満で初期バウンスの発生が抑制され、電気的にも長寿命である電磁継電器が得られる。また、傾斜角θは、5°以上20°以下と設定するのがより好ましい。
【0024】
(実施例2)
図5は、本発明の他の実施例を示す説明図で、可動接点3aの摺動方向からみた接点部分の側面を示す。可動接点3aは傾斜しており、可動接点3aと常開固定接点6aは、傾斜角θを成している。電磁継電器のコイルに電圧が印加すると、傾斜した可動接点3aは、常開固定接点6aと接点面同士が面で当接する。このとき、可動接点ばね3が撓み、可動接点3aと常開固定接点6aは摺動し、吸着する。
【0025】
サンプルとして、図5に示す構造を有し、傾斜角θを5°毎にθ=5°からθ=45°まで変化させたものを試料として、各々10個ずつ用意し、図7に示す試験回路でランプ負荷の電気的寿命試験を行った。また、比較のため、従来例として、図3に示す従来の接点構造をもつもの、すなわち常開固定接点6aの傾斜角θ=0°のものを試料1として用意し、同様の回路で電気的寿命試験を行った。このとき、コイル電圧、ランプ負荷電圧は、ともに14Vとし、常温環境で実施し、初期バウンス時間および故障するまでの動作回数を測定して、その平均値を求めた。
【0026】
その結果、実施例1とほぼ同様の結果が得られた。つまり、可動接点3aと常開固定接点6aとが成す傾斜角θは0°を含まず、0°より大きく、45°未満で初期バウンスの発生を抑制され、電気的にも長寿命である電磁継電器が得られる。また、傾斜角θは、5°以上20°以下と設定するのがより好ましい。
【0027】
(実施例3)
図6は、本発明の他の実施例を示す説明図で、可動接点3aの摺動方向からみた接点部分の側面を示す。常開固定接点6aには、凸形状で傾斜角θを有する傾斜面が形成されている。電磁継電器のコイルに電圧が印加すると、可動接点3aは、常開固定接点6aの前記傾斜面と面で当接する。このとき、可動接点ばね3が撓み、可動接点3aと常開固定接点6aは摺動し、吸着する。
【0028】
サンプルとして、図6に示す構造を有し、傾斜角θを5°毎にθ=5°からθ=45°まで変化させたものを試料として、各々10個ずつ用意し、図7に示す試験回路でランプ負荷の電気的寿命試験を行った。また、比較のため、従来例として、図3に示す従来の接点構造をもつもの、すなわち常開固定接点6aの傾斜角θ=0°のものを試料1として用意し、同様の回路で電気的寿命試験を行った。このとき、コイル電圧、ランプ負荷電圧は、ともに14Vとし、常温環境で実施し、初期バウンス時間および故障するまでの動作回数を測定して、その平均値を求めた。
【0029】
その結果、実施例1および実施例2とほぼ同様の結果が得られた。つまり、常開固定接点6aの傾斜面の傾斜角θは0°を含まず、0°より大きく、45°未満で、初期バウンスの発生が抑制され、電気的にも長寿命である電磁継電器が得られる。また、傾斜角θは、5°以上20°以下と設定するのがより好ましい。
【0030】
なお、上述の各実施例以外であっても、可動接点3aと常開固定接点6aの成す角度θが実質的に0°を含まず、0°より大きく、45°未満であれば、初期バウンスの発生が抑制され、電気的にも長寿命である電磁継電器が得られる。また、前記傾斜角θを、5°以上20°以下と設定するとより電気的に長寿命の電磁継電器が得られる。
【0031】
以上、例を挙げて、この発明の実施の形態を説明したが、この発明は、これらの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然なしえるであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の電磁継電器を用いることにより、自動車部品や電装部品の信頼性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】電磁継電器の全体斜視図である。
【図2】電磁継電器の分解斜視図である。
【図3】電磁継電器の部分側面図である。
【図4】本発明に係る電磁継電器の説明図である。
【図5】本発明に係る電磁継電器の説明図である。
【図6】本発明に係る電磁継電器の説明図である。
【図7】ランプ負荷寿命試験の電気回路図である。
【図8】従来の電磁継電器の部分側面図であり、図8(a)は無励磁状態を示し、図8(b)は励磁状態を示す。
【符号の説明】
【0034】
1 コイル
2 継鉄
3 可動接点ばね
3a 可動接点
4 接極子
5 常閉固定接点部材
5a 常閉固定接点
6 常開固定接点部材
6a 常開固定接点
7 ベース
8 スプール
9 鉄心
10 電磁継電器
11 移動後の可動接点
θ 傾斜角
A 可動接点動作方向
B 可動接点摺動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常閉固定接点を有する固定接点部材と、常開固定接点を有する固定接点部材と、前記常閉固定接点および常開固定接点の各々に面対向する可動接点を有する可動接点ばねと、前記可動接点ばねを結合した接極子と、前記接極子を吸引するためのコイルを巻回した鉄心とを有し、前記コイルへの励磁電流によって、前記可動接点ばねのばね力と前記励磁電流による磁力との相互作用により、前記常閉固定接点もしくは前記常開固定接点のいずれかと、前記可動接点を面接触により断続させる電磁継電器であって、前記可動接点ばねの撓みによって生じる前記可動接点と前記常開固定接点の摺動の前記摺動方向からみた、前記常開固定接点と前記可動接点の、前記面接触前の対向角度θが0°<θ<45°になるよう構成されてなることを特徴とする電磁継電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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