電磁誘導コイルおよび誘導加熱装置
【課題】コイル導線として、多数本の素線を束ねた集合線いわゆるリッツ線を用いるものにおいて、2段の渦巻き状にしながらも、厚さをできるだけ薄くでき、しかも平坦度も出し易く、クロスポイントの発生もなく、引出し線の配線処理も容易に行うことができる電磁誘導コイルを提供する。
【解決手段】誘導加熱コイル(電磁誘導コイル)24は、リッツ線からなる1本のコイル導線30により、それぞれ径方向に渦巻き状に巻回された一対の渦巻き状部47,48を対向状態で有する構成とされるとともに、一対の渦巻き状部47,48のそれぞれの最内周部同士が繋がった構成とする。
【解決手段】誘導加熱コイル(電磁誘導コイル)24は、リッツ線からなる1本のコイル導線30により、それぞれ径方向に渦巻き状に巻回された一対の渦巻き状部47,48を対向状態で有する構成とされるとともに、一対の渦巻き状部47,48のそれぞれの最内周部同士が繋がった構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数本の素線を束ねた集合線(いわゆるリッツ線)を用いた電磁誘導コイル、およびこの電磁誘導コイルを誘導加熱コイルに用いた誘導加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、誘導加熱装置で加熱できる金属は透磁率が高い鉄系のものに限られていたが、近年、鉄以外の銅やアルミニウムといった金属の加熱も望まれている。特に、誘導加熱コイルを調理器に応用した誘導加熱調理器(電磁調理器)においては、鉄鍋以外に銅鍋やアルミニウム鍋なども使いたいという要望が高くなっている。銅鍋やアルミニウム鍋を誘導加熱するには、それらの透磁率が鉄鍋に比べて低いため、鉄鍋に適した20〜30kHzよりも高い40〜100kHzの高周波電流を誘導加熱コイルに流す必要がある。周波数が高くなればなるほど、いわゆる表皮効果により高周波電流が導線の表面付近だけを流れるようになるため、実効抵抗がはなはだしく増大する。そのため、表面積を増やし実効的に抵抗を減少する方法として、従来用いられていた導線(直径が0.3〜0.5mmの導線)に代えて、それよりも細い導線(直径が0.1mm以下の導線)を多数本用いるようにすることが考えられている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
例えば直径が0.05mmの断面が円形の素線(導体の外周部に絶縁層が設けられたもの)を多数本束ねて形成された小集合線を複数本撚り合わせて、断面がほぼ円形の集合線(リッツ線)とし、この集合線をコイル導線として、渦巻き状に巻回して誘導加熱コイルを形成していた。図11には、このような誘導加熱コイルを用いた誘導加熱調理器の一例が示されている。
【0004】
図11において、調理器のケース1の上面に、被加熱物となる鍋2が載置されるトッププレート1aが設けられ、このトッププレート1aの下方に、誘導加熱コイル3は配設されている。誘導加熱コイル3は、リッツ線から構成されたコイル導線4を渦巻き状に形成してコイルベース5にセットされている。コイル導線4の巻き始めと巻き終わりとなる引出し線4a、4bは、高周波発生回路を有する制御回路6が実装されたプリント配線基板7に接続されている。
【0005】
この場合、誘導加熱コイル3としては、被加熱物となる鍋2の大きさや、当該誘導加熱コイル3の外径寸法の制約などの理由で、コイル導線4を複数段の段巻きにする必要がある場合がある。図11、図12、および図13(b)には、コイル導線4を2段巻き(2−2−2段巻き)にしたものが示されている。図13(c)は、コイル導線4を3段巻き(3−2−3段巻き)にしたものが示されている。
【0006】
図14には、2段巻きをする場合の巻線治具8の一例が示されている。この巻線治具8を用いて2段巻きをする場合について説明する。まず、コイル導線4の直径に合わせた誘導加熱コイル3の2段巻きの厚さを決めるため、回転軸9に、左端面固定板10をセットし、次に、誘導加熱コイル3の内径寸法に応じた内径固定板11をセットする。そして、その内径固定板11の右横に右端面固定板12をセットする。そして、コイル導線4の巻き始め側の引出し線4aを内径固定板11付近に位置決めした状態で、コイル導線4を、左右の端面固定板10,12間に位置させた状態で、内径固定板11の外周部に巻回していく。図14には、コイル導線4を巻く順番を数字で示している。この場合、コイル導線4は、内径固定板11の外周面に接触した部分から径方向の外側に向けて渦巻き状に巻いていくが、内周部から2層目以降のコイル導線4は、前層のコイル導線4の隙間に落ち込んで巻かれていく。なお、コイルの段巻きをする場合、内径固定板11の軸方向(図14において左右方向)の並び数を段、この軸方向と直交する径方向(図14において上下方向)の並び数を層と呼ぶのが一般的である。図14の巻き方は、2段多層巻きと呼ばれる。
【0007】
このような2段多層巻きの場合、例えば2層目に注目してみると、2層目のコイル導線4は、内側の1層目と外側の3層目に対して軸方向(図14では左右方向)にずれており、いわゆる千鳥状に並んでいる。このような巻き方を、ここでは、2段多層千鳥状巻きと称することとする。なお、コイル導線を複数段、例えば3段多層巻き(3−2−3段巻き)した例は、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3601533号公報
【特許文献2】特許第4048927号公報
【特許文献3】特開2005−57309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した2段多層千鳥状巻きをした誘導加熱コイル3においては、次のような問題点がある。
1.誘導加熱コイル3は、図13(b)に示すように、高さ方向の厚さ寸法H1が厚くなる。このため、図11に示すように、最下段のコイル導線4と被加熱物(鍋2)との間の距離L1が遠くなり、加熱効率が悪くなる。また、誘導加熱コイル3の厚さ寸法H1が大きくなることに伴い、ケース1の高さ寸法も大きくなってしまう。
【0010】
2.誘導加熱コイル3は、径方向の層ごとにコイル導線4が上下にジグザグした形態(千鳥状)となっているため、面(径方向)の平坦度が出難い。また、特に、コイル導線4の外周部に融着層を設け、その融着層を融着して隣り合ったコイル導線4同士を固着して誘導加熱コイル3の形状を安定化させる場合には、上下方向に飛び出した状態のコイル導線4の融着性が低下し、剥がれやすくなる。
【0011】
3.誘導加熱コイル3には、コイル導線4を巻回する際にクロスポイント(外側のコイル導線4が内側のコイル導線4を斜めに横切るときに発生する段差)が発生するため、真円度が出難くなる。
【0012】
4.誘導加熱コイル3において、コイル導線4の巻き始めの引出し線4aは誘導加熱コイル3の内周部側にあり、巻き終わりの引出し線4bは誘導加熱コイル3の外周部側にあり、引出し線4aと引出し線4bの引出し位置が分かれているため、配線処理がし難くなる。特に、誘導加熱調理器において、図11に示すように、制御回路6が誘導加熱コイル3の外側に配置されるような場合には、誘導加熱コイル3の内側の引出し線4aは誘導加熱コイル3を径方向に横切るようになるため、誘導加熱コイル3の駆動時に、その引出し線4aにノイズが入り易くなってしまう。
【0013】
なお、特許文献3には、金属箔線をコイルの素線とし、この素線により、それぞれ径方向に渦巻き状に巻かれた一対の渦巻き状部を対向状態で有する構成とされるとともに、前記一対の渦巻き状部のそれぞれの最内周部の素線同士が繋がった構成のアルファ巻きコイルが開示されている。
【0014】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コイル導線として、多数本の素線を束ねた集合線いわゆるリッツ線を用いるものにおいて、2段の渦巻き状にしながらも、厚さをできるだけ薄くでき、しかも平坦度も出し易く、クロスポイントの発生もなく、引出し線の配線処理も容易に行うことができる電磁誘導コイル、およびこのような電磁誘導コイルを誘導加熱コイルに用いた誘導加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した目的を達成するために、本発明の電磁誘導コイルは、
導体の外周部に絶縁層が設けられた断面が円形の素線を多数本撚り合わせて構成もしくは前記素線を多数本束ねた小集合線を複数本撚り合わせて構成された1本の集合線をコイル導線とし、この1本のコイル導線により、それぞれ径方向に渦巻き状に巻回された一対の渦巻き状部を対向状態で有する構成とされるとともに、前記一対の渦巻き状部のそれぞれの最内周部同士が繋がった構成とされており、
前記一対の渦巻き状部を対向状態で重ね合わせた状態で、それぞれの前記渦巻き状部の径方向に隣り合う前記コイル導線同士が前記径方向で密着し、かつ、前記一対の渦巻き状部の重ね合わせ方向に対向した前記コイル導線同士が前記重ね合わせ方向で密着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電磁誘導コイルは、コイル導線として、多数本の素線を束ねた集合線いわゆるリッツ線を用いている。そして、電磁誘導コイルは、対向する一対の渦巻き状部を有していて、これら一対の渦巻き状部を対向状態で重ね合わせた状態で、それぞれの渦巻き状部の径方向に隣り合うコイル導線同士が径方向で密着し、しかも、一対の渦巻き状部の重ね合わせ方向に対向したコイル導線同士が重ね合わせ方向で密着しているので、重ね合わせ方向の厚さ寸法をできるだけ薄くすることができる。各渦巻き状部は、径方向に隣り合うコイル導線同士が径方向で密着しているから、平坦度も出し易い。また、コイル導線が他のコイル導線を斜めに横切ることがないので、クロスポイントの発生もない。さらに、一対の渦巻き状部はそれぞれの最内周部のコイル導線同士が繋がった形態となっており、各渦巻き状部の引出し線は、それぞれの渦巻き状部の外周部となり、引出し線の配線処理も容易に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態を示す誘導加熱調理器(誘導加熱装置)の縦断側面図
【図2】コイルユニットの断面図
【図3】誘導加熱コイルを示すもので、(a)は平面図、(b)は縦断面図
【図4】コイルの巻き方(アルファ巻き)を説明するための説明図
【図5】コイル導線を示すもので、(a)は素線、(b)は集合線の縦断面図、(c)はコイル導線の斜視図
【図6】本発明の第2実施形態を示す図5相当図
【図7】本発明の第3実施形態を示す図5相当図
【図8】本発明を両面ヒータに適用した第4実施形態を示すもので、(a)は両面ヒータの正面図、(b)は縦断側面図
【図9】比較例を示す図8相当図
【図10】本発明の第5実施形態を示す給電システムの電気的構成を示す概略図
【図11】従来例を示す図1相当図
【図12】図2相当図
【図13】誘導加熱コイルを示すもので、(a)は平面図、(b)は2段多層巻き(2−2−2段巻き)の縦断面図、(c)は3段多層巻き(3−2−3段巻き)の縦断面図
【図14】2段多層巻きをする場合の巻線治具の断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の複数の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。この第1実施形態は、本発明の電磁誘導コイルを誘導加熱装置のひとつである誘導加熱調理器の誘導加熱コイルに適用した実施形態を示している。まず、誘導加熱調理器の概略構成について図1および図2を参照して説明する。誘導加熱調理器21のケース22の上面に、当該ケース22の上面開口部を塞ぐようにトッププレート23が装着されている。ケース22の内部には、誘導加熱コイル24(電磁誘導コイル)を備えたコイルユニット25が配設されているとともに、誘導加熱コイル24を制御する制御回路26が配設されている。制御回路26は、プリント配線基板27に複数の電子部品28や放熱部材28aを実装して構成されている。トッププレート23上には、被加熱物を構成する金属製の調理用鍋29が載置される。誘導加熱コイル24は、後述するコイル導線30を、図2にも示すように、2段の渦巻き状に巻回して構成され、コイルベース31に装着した状態でトッププレート23の下面近くに配置されている。なお、ケース22の前面部には、操作スイッチや表示部などが設けられた操作パネル18が設けられ、ケース22内の後部には、前記制御回路26の電子部品28や放熱部材28aなどを冷却する冷却ファン19が設けられている。
【0019】
次に、上記誘導加熱コイル24のコイル導線30の構造について、図5を参照して説明する。コイル導線30の断面図を示す図5(b)において、小集合線33は、素線34(図5(a)参照)を多数本撚り合わせて構成されている。各素線34は、断面が円形で直径が例えば0.05mmの細い銅の導体34aの外周部に、電気絶縁性を有する絶縁層34bを被覆して構成されたものである。絶縁層34bとしては、ワニス(例えば、ポリエステルイミド)である。前記小集合線33を複数本例えば7本束ねてこれらを撚り合わせることにより、集合線35を形成している。集合線35としては、小集合線33を形成せずに、多数本の素線34を一度にまとめて撚り合わせて構成したものとしてもよい。
【0020】
そして、この集合線35の外周部に絶縁体36(図5(c)参照)を設けている。この場合、絶縁体36は、帯状の絶縁テープを巻き付けることによって形成している。絶縁テープとしては、この場合、耐熱性および電気絶縁性に優れた有機材料のうち、非溶融性の樹脂である熱硬化性樹脂のポリイミド樹脂製で、厚さが0.025mm(25μm)のものを用い、この絶縁テープを、一部が重なるようにして螺旋状に巻き付けている。絶縁テープの厚さとしては、取り扱い性や品質を考慮すると、0.2mm〜0.01mmのものが好ましい。また、絶縁テープを螺旋状に巻く際のラップ幅は、内部の集合線35の素線34が露出しないようにするため、絶縁テープの幅の1/2〜1/5が好ましい。
【0021】
絶縁体36(絶縁テープ)の材料としては、有機材料のうち耐熱性および電気絶縁性に優れた非溶融性を有する熱硬化性樹脂であればポリアミドイミド樹脂でも良く、また、熱可塑性樹脂であっても溶融し難い熱可塑性樹脂であれば、例えば熱可塑性ポリイミド樹脂(融点が388℃)、あるいはPTFE(融点が327℃)でも良い。さらに、絶縁体36の材料としては、耐熱性および電気絶縁性に優れた無機材料、例えばマイカでも良い。
【0022】
上記絶縁体36の外周部には、当該絶縁体36を覆うように固着性絶縁体37を設けている。この固着性絶縁体37は、絶縁体36よりも融点が低い熱可塑性樹脂のフッ素樹脂であるFEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)(融点が250℃〜270℃)を溶融押出成形することによってチューブ状に設けている。固着性絶縁体37の厚さは0.2〜0.3mmである。このような構成により、長尺なコイル導線30が形成されている。
【0023】
次に、このような構成のコイル導線30を用いて、図1および図2に示すような誘導加熱コイル24を製造する方法について説明する。
ここで、図4は、一般的なアルファ巻き40の巻き方を説明するための説明図である。このアルファ巻き40は、一本のコイル導線41により、それぞれ径方向に渦巻き状に巻回された一対の渦巻き状部42,43を対向状態で有する構成とされるとともに、これら一対の渦巻き状部42,43の最内周部同士が繋がった構成とされていて、その最内周部同士が繋がった部分を巻き始め部44としている。アルファ巻き40は、その巻き始め部44を起点として、2本に分岐したコイル導線41を同時に渦巻き状に巻いていくことにより、一対の渦巻き状部42,43を巻く方法である。各渦巻き状部42,43の巻き終わり部42a,43aは、対応する渦巻き状部42,43の外周部となる。そして、アルファ巻き40は、渦巻き状に巻いた一対の渦巻き状部42,43を対向状態で重ね合わせて貼り合わせることによって構成される。なお、図4では、巻き始め部44の長さは、説明のために誇張して長く示されているが、実質的な長さは、一対の渦巻き状部42,43を重ね合わせた厚み分の長さとなる。
【0024】
本実施形態の上記誘導加熱コイル24も、1本のコイル導線30を、上記アルファ巻き40と同様の巻き方で巻くことにより、図3に示すように、それぞれ径方向に渦巻き状に巻回された一対の渦巻き状部47,48を対向状態で有する構成とされるとともに、これら一対の渦巻き状部47,48の最内周部同士が繋がった構成とされる。各渦巻き状部47,48の巻き終わりとなる引出し線47a,48aは、対応する渦巻き状部47,48の外周部となる。そして、図3(b)に示すように、一対の渦巻き状部47,48を対向状態に重ね合わせた状態で、コイル導線30の両端部となる引出し線47a,48a間に短時間電流を流しコイル導線30(各素線34)を発熱させて固着性絶縁体37を溶融させ、これを固化させることにより隣り合った固着性絶縁体37同士が固着し、コイル導線30は形状が安定した状態で固化されるようになる。このようにして誘導加熱コイル24が形成されている。
【0025】
ここで、誘導加熱コイル24は、図3(b)に示すように、一対の渦巻き状部47,48を対向状態に重ね合わせた状態で、それぞれの渦巻き状部47,48の径方向(図3(b)で左右方向)に隣り合うコイル導線30同士が径方向で密着し、かつ、一対の渦巻き状部47,48の重ね合わせ方向(図3(b)で上下方向)で対向したコイル導線30同士が重ね合わせ方向で密着している。このような巻き方を、ここでは2段多層均等巻きと称する。
【0026】
このように構成された誘導加熱コイル24は、図1に示すように、前記コイルベース31に装着した状態で前記誘導加熱調理器21のケース22内に配設され、外周部側の2本の引出し線47a,48aが、プリント配線基板27に接続される。
【0027】
上記構成において、トッププレート23上に金属製の調理用鍋29を載置した状態で、誘導加熱コイル24のコイル導線30に高周波電流を流すと磁束が発生し、その磁束によって調理用鍋29に誘導電流(渦電流)が流れ、その際の渦電流損により調理用鍋29が発熱し、この熱により調理用鍋29内の被調理物が加熱される。
【0028】
上記した実施形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。
誘導加熱コイル24は、コイル導線30として、多数本の素線を束ねた集合線いわゆるリッツ線を用いている。そして、この誘導加熱コイル24は、一対の渦巻き状部47,48を有していて、これら一対の渦巻き状部47,48を対向状態で重ね合わせた状態で、それぞれの渦巻き状部47,48の径方向に隣り合うコイル導線30同士が径方向で密着し、しかも、一対の渦巻き状部47,48の重ね合わせ方向に対向したコイル導線30同士が重ね合わせ方向で密着しているので、従来の2段多層千鳥状巻きの場合に比べ、重ね合わせ方向の厚さ寸法H2(図3(b)参照)をできるだけ薄くすることができる(H2<H1)。これに伴い、図1に示すように、誘導加熱コイル24における最下段のコイル導線30と被加熱物(調理用鍋29)との間の距離L2をできるだけ近づけることが可能になり、従来の誘導加熱コイル3よりも加熱効率を向上できる。また、誘導加熱コイル24の厚さ寸法H2を小さくできることに伴い、ケース22の高さ寸法が大きくなることも防止できる。
【0029】
誘導加熱コイル24における各渦巻き状部47,48は、径方向に隣り合うコイル導線30同士が径方向で密着しているから、従来の2段多層千鳥状巻きの場合に比べ、各渦巻き状部47,48の面の平坦度も出し易い。また、特に、コイル導線30の外周部に固着性絶縁体37を設け、その固着性絶縁体37を融着して隣り合ったコイル導線30同士を固着して誘導加熱コイル24の形状を安定化させた場合でも、径方向および重ね合わせ方向に隣り合ったコイル導線30同士は整列状態で密着しているので、従来の2段多層千鳥状巻きの場合に比べ、コイル導線30が剥がれ難くできる。また、本実施形態の2段多層均等巻きの場合、コイル導線30が他のコイル導線を斜めに横切ることがないので、クロスポイントの発生がなく、各渦巻き状部47,48、ひいては誘導加熱コイル24の真円度が出し易くなる。
【0030】
さらに、一対の渦巻き状部47,48はそれぞれの最内周部のコイル導線30同士が繋がった形態となっており、各渦巻き状部47,48の引出し線47a,48aは、それぞれの渦巻き状部47,48の外周部となり、引出し線4a,4bが内周部側と外周部側とに分かれていた従来の場合とは違い、引出し線47a,48aの配線処理を容易に行うことができるようになる。特に、誘導加熱調理器21において、図1に示すように、制御回路26が誘導加熱コイル24の外側に配置されるような場合でも、誘導加熱コイル24の両引出し線47a,48aを、これらが誘導加熱コイル24を径方向に横切るようなことなく、プリント配線基板27に接続することが可能になる。これにより、誘導加熱コイル24の駆動時に、引出し線47a,48aにノイズが入り易くなることを防止できる。
【0031】
(第2実施形態)
図6は第2実施形態を示す。この第2実施形態は、誘導加熱コイル24に使用するコイル導線50の構成が第1実施形態と異なっている。すなわち、素線34、小集合線33および集合線35の形成の仕方は第1実施形態と同じであるが、集合線35の外周部に設けた絶縁体51が、第1実施形態の絶縁体36とは異なっている。この絶縁体51は、珪素樹脂(シリコーン)によりチューブ状に形成されていて、厚さは0.5mm以下が好ましい。なお、素線34の太さは、直径を0.3mm以下とすることが好ましい。素線34が、直径0.3mmを超える太さであると、珪素樹脂の加工時に絶縁体51が破れるおそれがある。この絶縁体51の外周部には、第1実施形態と同様な固着性絶縁体37を設けている。固着性絶縁体37は、破れ易い絶縁体51の保護と、融着機能とを兼ねている。
【0032】
このような構成のコイル導線50を、第1実施形態と同様に2段多層均等巻きし、前記固着性絶縁体37を溶融固化させることにより、誘導加熱コイル24を構成する。このような構成の誘導加熱コイル24は防水性に優れていて、水がかかり易い場所で使用される場合にも対応できる。
【0033】
(第3実施形態)
図7は第3実施形態を示す。この第3実施形態は、誘導加熱コイル24に使用するコイル導線53の構成が第1および第2実施形態と異なっている。すなわち、素線34は、絶縁層34bの外周部に、融着層34cを設けた構成としている。融着層34cとしては、例えば、ポリエステル系の融着用ワニスを用いる。このような構成の素線34を多数本束ねて撚り合わせることにより小集合線33を形成し、この小集合線33を複数本束ねて撚り合わせることにより集合線35を形成し、この集合線35をコイル導線53とする。この場合、集合線35全体を覆うような絶縁体や固着性絶縁体は設けていない。このような構成のコイル導線53を、第1実施形態と同様に2段多層均等巻きし、前記素線34の融着層34cを溶融固化させることにより、誘導加熱コイル24を構成する。
【0034】
(第4実施形態)
図8は第4実施形態を示す。この第4実施形態は、第1実施形態で示した2段多層均等巻きした誘導加熱コイル24を、両面加熱ヒータ55に用いた例である。この場合、誘導加熱コイル24のコイル導線50は、第2実施形態のものを用いる。両面加熱ヒータ55は、2段多層均等巻きした前記誘導加熱コイル24を、対向する一対の加熱板56,56で挟み込んだ構成とする。加熱板56,56としては、例えばステンレス板を用いる。誘導加熱コイル24の引出し線47a,48aは、誘導加熱コイル24の外側へ引き出している。
【0035】
この構成において、誘導加熱コイル24のコイル導線50に高周波電流を流すと磁束が発生し、その磁束によって両加熱板56,56に誘導電流(渦電流)が流れ、その際の渦電流損により加熱板56,56が発熱する。この場合、特にコイル導線50として、防水性に優れたものを用いることにより、両面加熱ヒータ55を水中でも使用することが可能となる。
【0036】
図9は、この第4実施形態に対する比較例を示した両面加熱ヒータ58を示している。この両面加熱ヒータ58は、従来の2段多層千鳥状巻きした前記誘導加熱コイル3を、対向する一対の加熱板56,56で挟み込んだ構成としている。この場合、誘導加熱コイル3の内周部側の引出し線4aは、一方の加熱板56に形成した孔から外側へ引き出し、外周側の引出し線4bは、両加熱板56,56間から外側へ引出している。
【0037】
図8の本発明の第4実施形態と図9の比較例を比較すると、第4実施形態の両面加熱ヒータ55の厚さA1は、比較例の両面加熱ヒータ58の厚さA2よりも薄くすることができる(A1<A2)。また、第4実施形態においては、誘導加熱コイル24の2本の引出し線47a,48aを、2枚の加熱板56,56の間から外側へ容易に引き出すことができる。さらに、2段多層均等巻きした誘導加熱コイル24は平坦度が出ているため、加熱板56との密着性がよく、加熱効率もよくなる。
【0038】
(第5実施形態)
図10は第5実施形態を示す。この第5実施形態は、本発明の電磁誘導コイルを、非接触給電システム61にける一次側の給電コイル62と二次側の受電コイル63に適用したものである。非接触給電システム61は、電磁誘導作用により一次側の給電コイル62から、二次側の受電コイル63に非接触で電力を供給するものである。給電コイル62および受電コイル63に、第1実施形態の誘導加熱コイル24と同様の構成のコイルを用いる。
【0039】
非接触給電システム61は、給電装置64と受電装置65とから構成される。給電装置64は、例えば給電施設に設けられ、商用交流電源66を電源とし、整流回路67およびコイル駆動回路68を備えた給電回路69と、給電コイル62を備えている。受電装置65は、例えば自動車などの車両に搭載され、受電コイル63と、平滑回路などを備えた受電回路70と、負荷駆動回路71と、モータなどの負荷72を備えている。
【0040】
受電装置65を給電装置64に近づけた状態で、給電装置64の給電コイル62に電流を流すと、これの周りに磁束が発生し、この磁束が受電装置65の受電コイル63を貫く。この磁束が変化すると、受電コイル63に電圧が発生する。この現象を利用することで、非接触で受電装置65側に電力を供給することができる。通常、給電回路69は、励磁電流を小さくするため、インバータ回路にて数十kHzの高周波が用いられる。高周波電流は、表皮効果によって、高周波になればなるほど、導線の表面付近だけを流れようとし、実効抵抗は著しく増大する。このため、上記給電コイル62、受電コイル63共に、素線を多数本束ねた集合線(リッツ線)が必要となる。
【0041】
これら給電コイル62、受電コイル63に、第1実施形態の誘導加熱コイル24と同様なリッツ線の2段多層均等巻きの電磁誘導コイルを用いることで、これら給電コイル62、受電コイル63の厚さ寸法を抑えることができ、また、引出し線の配線処理も容易にできるなど、基本的に第1実施形態と同様な作用効果を得ることができる。また、給電コイル62、受電コイル63のコイル導線に、第2実施形態の防水性に優れたコイル導線50を用いることで、水を使用する場所でも使用することが可能になる。
【0042】
本発明は上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
図面中、21は誘導加熱調理器(誘導加熱装置)、24は誘導加熱コイル(電磁誘導コイル)、29は調理用鍋(被加熱物)、30はコイル導線、33は小集合線、34は素線、34aは導体、34bは絶縁層、34cは融着層、35は集合線、36は絶縁体、37は固着性絶縁体、47,48は渦巻き状部、47a,48aは引出し線、50はコイル導線、51は絶縁体(珪素樹脂)、53はコイル導線、55は両面加熱ヒータ、61は非接触給電システム、62は給電コイル(電磁誘導コイル)、63は受電コイル(電磁誘導コイル)を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数本の素線を束ねた集合線(いわゆるリッツ線)を用いた電磁誘導コイル、およびこの電磁誘導コイルを誘導加熱コイルに用いた誘導加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、誘導加熱装置で加熱できる金属は透磁率が高い鉄系のものに限られていたが、近年、鉄以外の銅やアルミニウムといった金属の加熱も望まれている。特に、誘導加熱コイルを調理器に応用した誘導加熱調理器(電磁調理器)においては、鉄鍋以外に銅鍋やアルミニウム鍋なども使いたいという要望が高くなっている。銅鍋やアルミニウム鍋を誘導加熱するには、それらの透磁率が鉄鍋に比べて低いため、鉄鍋に適した20〜30kHzよりも高い40〜100kHzの高周波電流を誘導加熱コイルに流す必要がある。周波数が高くなればなるほど、いわゆる表皮効果により高周波電流が導線の表面付近だけを流れるようになるため、実効抵抗がはなはだしく増大する。そのため、表面積を増やし実効的に抵抗を減少する方法として、従来用いられていた導線(直径が0.3〜0.5mmの導線)に代えて、それよりも細い導線(直径が0.1mm以下の導線)を多数本用いるようにすることが考えられている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
例えば直径が0.05mmの断面が円形の素線(導体の外周部に絶縁層が設けられたもの)を多数本束ねて形成された小集合線を複数本撚り合わせて、断面がほぼ円形の集合線(リッツ線)とし、この集合線をコイル導線として、渦巻き状に巻回して誘導加熱コイルを形成していた。図11には、このような誘導加熱コイルを用いた誘導加熱調理器の一例が示されている。
【0004】
図11において、調理器のケース1の上面に、被加熱物となる鍋2が載置されるトッププレート1aが設けられ、このトッププレート1aの下方に、誘導加熱コイル3は配設されている。誘導加熱コイル3は、リッツ線から構成されたコイル導線4を渦巻き状に形成してコイルベース5にセットされている。コイル導線4の巻き始めと巻き終わりとなる引出し線4a、4bは、高周波発生回路を有する制御回路6が実装されたプリント配線基板7に接続されている。
【0005】
この場合、誘導加熱コイル3としては、被加熱物となる鍋2の大きさや、当該誘導加熱コイル3の外径寸法の制約などの理由で、コイル導線4を複数段の段巻きにする必要がある場合がある。図11、図12、および図13(b)には、コイル導線4を2段巻き(2−2−2段巻き)にしたものが示されている。図13(c)は、コイル導線4を3段巻き(3−2−3段巻き)にしたものが示されている。
【0006】
図14には、2段巻きをする場合の巻線治具8の一例が示されている。この巻線治具8を用いて2段巻きをする場合について説明する。まず、コイル導線4の直径に合わせた誘導加熱コイル3の2段巻きの厚さを決めるため、回転軸9に、左端面固定板10をセットし、次に、誘導加熱コイル3の内径寸法に応じた内径固定板11をセットする。そして、その内径固定板11の右横に右端面固定板12をセットする。そして、コイル導線4の巻き始め側の引出し線4aを内径固定板11付近に位置決めした状態で、コイル導線4を、左右の端面固定板10,12間に位置させた状態で、内径固定板11の外周部に巻回していく。図14には、コイル導線4を巻く順番を数字で示している。この場合、コイル導線4は、内径固定板11の外周面に接触した部分から径方向の外側に向けて渦巻き状に巻いていくが、内周部から2層目以降のコイル導線4は、前層のコイル導線4の隙間に落ち込んで巻かれていく。なお、コイルの段巻きをする場合、内径固定板11の軸方向(図14において左右方向)の並び数を段、この軸方向と直交する径方向(図14において上下方向)の並び数を層と呼ぶのが一般的である。図14の巻き方は、2段多層巻きと呼ばれる。
【0007】
このような2段多層巻きの場合、例えば2層目に注目してみると、2層目のコイル導線4は、内側の1層目と外側の3層目に対して軸方向(図14では左右方向)にずれており、いわゆる千鳥状に並んでいる。このような巻き方を、ここでは、2段多層千鳥状巻きと称することとする。なお、コイル導線を複数段、例えば3段多層巻き(3−2−3段巻き)した例は、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3601533号公報
【特許文献2】特許第4048927号公報
【特許文献3】特開2005−57309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した2段多層千鳥状巻きをした誘導加熱コイル3においては、次のような問題点がある。
1.誘導加熱コイル3は、図13(b)に示すように、高さ方向の厚さ寸法H1が厚くなる。このため、図11に示すように、最下段のコイル導線4と被加熱物(鍋2)との間の距離L1が遠くなり、加熱効率が悪くなる。また、誘導加熱コイル3の厚さ寸法H1が大きくなることに伴い、ケース1の高さ寸法も大きくなってしまう。
【0010】
2.誘導加熱コイル3は、径方向の層ごとにコイル導線4が上下にジグザグした形態(千鳥状)となっているため、面(径方向)の平坦度が出難い。また、特に、コイル導線4の外周部に融着層を設け、その融着層を融着して隣り合ったコイル導線4同士を固着して誘導加熱コイル3の形状を安定化させる場合には、上下方向に飛び出した状態のコイル導線4の融着性が低下し、剥がれやすくなる。
【0011】
3.誘導加熱コイル3には、コイル導線4を巻回する際にクロスポイント(外側のコイル導線4が内側のコイル導線4を斜めに横切るときに発生する段差)が発生するため、真円度が出難くなる。
【0012】
4.誘導加熱コイル3において、コイル導線4の巻き始めの引出し線4aは誘導加熱コイル3の内周部側にあり、巻き終わりの引出し線4bは誘導加熱コイル3の外周部側にあり、引出し線4aと引出し線4bの引出し位置が分かれているため、配線処理がし難くなる。特に、誘導加熱調理器において、図11に示すように、制御回路6が誘導加熱コイル3の外側に配置されるような場合には、誘導加熱コイル3の内側の引出し線4aは誘導加熱コイル3を径方向に横切るようになるため、誘導加熱コイル3の駆動時に、その引出し線4aにノイズが入り易くなってしまう。
【0013】
なお、特許文献3には、金属箔線をコイルの素線とし、この素線により、それぞれ径方向に渦巻き状に巻かれた一対の渦巻き状部を対向状態で有する構成とされるとともに、前記一対の渦巻き状部のそれぞれの最内周部の素線同士が繋がった構成のアルファ巻きコイルが開示されている。
【0014】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コイル導線として、多数本の素線を束ねた集合線いわゆるリッツ線を用いるものにおいて、2段の渦巻き状にしながらも、厚さをできるだけ薄くでき、しかも平坦度も出し易く、クロスポイントの発生もなく、引出し線の配線処理も容易に行うことができる電磁誘導コイル、およびこのような電磁誘導コイルを誘導加熱コイルに用いた誘導加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した目的を達成するために、本発明の電磁誘導コイルは、
導体の外周部に絶縁層が設けられた断面が円形の素線を多数本撚り合わせて構成もしくは前記素線を多数本束ねた小集合線を複数本撚り合わせて構成された1本の集合線をコイル導線とし、この1本のコイル導線により、それぞれ径方向に渦巻き状に巻回された一対の渦巻き状部を対向状態で有する構成とされるとともに、前記一対の渦巻き状部のそれぞれの最内周部同士が繋がった構成とされており、
前記一対の渦巻き状部を対向状態で重ね合わせた状態で、それぞれの前記渦巻き状部の径方向に隣り合う前記コイル導線同士が前記径方向で密着し、かつ、前記一対の渦巻き状部の重ね合わせ方向に対向した前記コイル導線同士が前記重ね合わせ方向で密着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電磁誘導コイルは、コイル導線として、多数本の素線を束ねた集合線いわゆるリッツ線を用いている。そして、電磁誘導コイルは、対向する一対の渦巻き状部を有していて、これら一対の渦巻き状部を対向状態で重ね合わせた状態で、それぞれの渦巻き状部の径方向に隣り合うコイル導線同士が径方向で密着し、しかも、一対の渦巻き状部の重ね合わせ方向に対向したコイル導線同士が重ね合わせ方向で密着しているので、重ね合わせ方向の厚さ寸法をできるだけ薄くすることができる。各渦巻き状部は、径方向に隣り合うコイル導線同士が径方向で密着しているから、平坦度も出し易い。また、コイル導線が他のコイル導線を斜めに横切ることがないので、クロスポイントの発生もない。さらに、一対の渦巻き状部はそれぞれの最内周部のコイル導線同士が繋がった形態となっており、各渦巻き状部の引出し線は、それぞれの渦巻き状部の外周部となり、引出し線の配線処理も容易に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態を示す誘導加熱調理器(誘導加熱装置)の縦断側面図
【図2】コイルユニットの断面図
【図3】誘導加熱コイルを示すもので、(a)は平面図、(b)は縦断面図
【図4】コイルの巻き方(アルファ巻き)を説明するための説明図
【図5】コイル導線を示すもので、(a)は素線、(b)は集合線の縦断面図、(c)はコイル導線の斜視図
【図6】本発明の第2実施形態を示す図5相当図
【図7】本発明の第3実施形態を示す図5相当図
【図8】本発明を両面ヒータに適用した第4実施形態を示すもので、(a)は両面ヒータの正面図、(b)は縦断側面図
【図9】比較例を示す図8相当図
【図10】本発明の第5実施形態を示す給電システムの電気的構成を示す概略図
【図11】従来例を示す図1相当図
【図12】図2相当図
【図13】誘導加熱コイルを示すもので、(a)は平面図、(b)は2段多層巻き(2−2−2段巻き)の縦断面図、(c)は3段多層巻き(3−2−3段巻き)の縦断面図
【図14】2段多層巻きをする場合の巻線治具の断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の複数の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。この第1実施形態は、本発明の電磁誘導コイルを誘導加熱装置のひとつである誘導加熱調理器の誘導加熱コイルに適用した実施形態を示している。まず、誘導加熱調理器の概略構成について図1および図2を参照して説明する。誘導加熱調理器21のケース22の上面に、当該ケース22の上面開口部を塞ぐようにトッププレート23が装着されている。ケース22の内部には、誘導加熱コイル24(電磁誘導コイル)を備えたコイルユニット25が配設されているとともに、誘導加熱コイル24を制御する制御回路26が配設されている。制御回路26は、プリント配線基板27に複数の電子部品28や放熱部材28aを実装して構成されている。トッププレート23上には、被加熱物を構成する金属製の調理用鍋29が載置される。誘導加熱コイル24は、後述するコイル導線30を、図2にも示すように、2段の渦巻き状に巻回して構成され、コイルベース31に装着した状態でトッププレート23の下面近くに配置されている。なお、ケース22の前面部には、操作スイッチや表示部などが設けられた操作パネル18が設けられ、ケース22内の後部には、前記制御回路26の電子部品28や放熱部材28aなどを冷却する冷却ファン19が設けられている。
【0019】
次に、上記誘導加熱コイル24のコイル導線30の構造について、図5を参照して説明する。コイル導線30の断面図を示す図5(b)において、小集合線33は、素線34(図5(a)参照)を多数本撚り合わせて構成されている。各素線34は、断面が円形で直径が例えば0.05mmの細い銅の導体34aの外周部に、電気絶縁性を有する絶縁層34bを被覆して構成されたものである。絶縁層34bとしては、ワニス(例えば、ポリエステルイミド)である。前記小集合線33を複数本例えば7本束ねてこれらを撚り合わせることにより、集合線35を形成している。集合線35としては、小集合線33を形成せずに、多数本の素線34を一度にまとめて撚り合わせて構成したものとしてもよい。
【0020】
そして、この集合線35の外周部に絶縁体36(図5(c)参照)を設けている。この場合、絶縁体36は、帯状の絶縁テープを巻き付けることによって形成している。絶縁テープとしては、この場合、耐熱性および電気絶縁性に優れた有機材料のうち、非溶融性の樹脂である熱硬化性樹脂のポリイミド樹脂製で、厚さが0.025mm(25μm)のものを用い、この絶縁テープを、一部が重なるようにして螺旋状に巻き付けている。絶縁テープの厚さとしては、取り扱い性や品質を考慮すると、0.2mm〜0.01mmのものが好ましい。また、絶縁テープを螺旋状に巻く際のラップ幅は、内部の集合線35の素線34が露出しないようにするため、絶縁テープの幅の1/2〜1/5が好ましい。
【0021】
絶縁体36(絶縁テープ)の材料としては、有機材料のうち耐熱性および電気絶縁性に優れた非溶融性を有する熱硬化性樹脂であればポリアミドイミド樹脂でも良く、また、熱可塑性樹脂であっても溶融し難い熱可塑性樹脂であれば、例えば熱可塑性ポリイミド樹脂(融点が388℃)、あるいはPTFE(融点が327℃)でも良い。さらに、絶縁体36の材料としては、耐熱性および電気絶縁性に優れた無機材料、例えばマイカでも良い。
【0022】
上記絶縁体36の外周部には、当該絶縁体36を覆うように固着性絶縁体37を設けている。この固着性絶縁体37は、絶縁体36よりも融点が低い熱可塑性樹脂のフッ素樹脂であるFEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)(融点が250℃〜270℃)を溶融押出成形することによってチューブ状に設けている。固着性絶縁体37の厚さは0.2〜0.3mmである。このような構成により、長尺なコイル導線30が形成されている。
【0023】
次に、このような構成のコイル導線30を用いて、図1および図2に示すような誘導加熱コイル24を製造する方法について説明する。
ここで、図4は、一般的なアルファ巻き40の巻き方を説明するための説明図である。このアルファ巻き40は、一本のコイル導線41により、それぞれ径方向に渦巻き状に巻回された一対の渦巻き状部42,43を対向状態で有する構成とされるとともに、これら一対の渦巻き状部42,43の最内周部同士が繋がった構成とされていて、その最内周部同士が繋がった部分を巻き始め部44としている。アルファ巻き40は、その巻き始め部44を起点として、2本に分岐したコイル導線41を同時に渦巻き状に巻いていくことにより、一対の渦巻き状部42,43を巻く方法である。各渦巻き状部42,43の巻き終わり部42a,43aは、対応する渦巻き状部42,43の外周部となる。そして、アルファ巻き40は、渦巻き状に巻いた一対の渦巻き状部42,43を対向状態で重ね合わせて貼り合わせることによって構成される。なお、図4では、巻き始め部44の長さは、説明のために誇張して長く示されているが、実質的な長さは、一対の渦巻き状部42,43を重ね合わせた厚み分の長さとなる。
【0024】
本実施形態の上記誘導加熱コイル24も、1本のコイル導線30を、上記アルファ巻き40と同様の巻き方で巻くことにより、図3に示すように、それぞれ径方向に渦巻き状に巻回された一対の渦巻き状部47,48を対向状態で有する構成とされるとともに、これら一対の渦巻き状部47,48の最内周部同士が繋がった構成とされる。各渦巻き状部47,48の巻き終わりとなる引出し線47a,48aは、対応する渦巻き状部47,48の外周部となる。そして、図3(b)に示すように、一対の渦巻き状部47,48を対向状態に重ね合わせた状態で、コイル導線30の両端部となる引出し線47a,48a間に短時間電流を流しコイル導線30(各素線34)を発熱させて固着性絶縁体37を溶融させ、これを固化させることにより隣り合った固着性絶縁体37同士が固着し、コイル導線30は形状が安定した状態で固化されるようになる。このようにして誘導加熱コイル24が形成されている。
【0025】
ここで、誘導加熱コイル24は、図3(b)に示すように、一対の渦巻き状部47,48を対向状態に重ね合わせた状態で、それぞれの渦巻き状部47,48の径方向(図3(b)で左右方向)に隣り合うコイル導線30同士が径方向で密着し、かつ、一対の渦巻き状部47,48の重ね合わせ方向(図3(b)で上下方向)で対向したコイル導線30同士が重ね合わせ方向で密着している。このような巻き方を、ここでは2段多層均等巻きと称する。
【0026】
このように構成された誘導加熱コイル24は、図1に示すように、前記コイルベース31に装着した状態で前記誘導加熱調理器21のケース22内に配設され、外周部側の2本の引出し線47a,48aが、プリント配線基板27に接続される。
【0027】
上記構成において、トッププレート23上に金属製の調理用鍋29を載置した状態で、誘導加熱コイル24のコイル導線30に高周波電流を流すと磁束が発生し、その磁束によって調理用鍋29に誘導電流(渦電流)が流れ、その際の渦電流損により調理用鍋29が発熱し、この熱により調理用鍋29内の被調理物が加熱される。
【0028】
上記した実施形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。
誘導加熱コイル24は、コイル導線30として、多数本の素線を束ねた集合線いわゆるリッツ線を用いている。そして、この誘導加熱コイル24は、一対の渦巻き状部47,48を有していて、これら一対の渦巻き状部47,48を対向状態で重ね合わせた状態で、それぞれの渦巻き状部47,48の径方向に隣り合うコイル導線30同士が径方向で密着し、しかも、一対の渦巻き状部47,48の重ね合わせ方向に対向したコイル導線30同士が重ね合わせ方向で密着しているので、従来の2段多層千鳥状巻きの場合に比べ、重ね合わせ方向の厚さ寸法H2(図3(b)参照)をできるだけ薄くすることができる(H2<H1)。これに伴い、図1に示すように、誘導加熱コイル24における最下段のコイル導線30と被加熱物(調理用鍋29)との間の距離L2をできるだけ近づけることが可能になり、従来の誘導加熱コイル3よりも加熱効率を向上できる。また、誘導加熱コイル24の厚さ寸法H2を小さくできることに伴い、ケース22の高さ寸法が大きくなることも防止できる。
【0029】
誘導加熱コイル24における各渦巻き状部47,48は、径方向に隣り合うコイル導線30同士が径方向で密着しているから、従来の2段多層千鳥状巻きの場合に比べ、各渦巻き状部47,48の面の平坦度も出し易い。また、特に、コイル導線30の外周部に固着性絶縁体37を設け、その固着性絶縁体37を融着して隣り合ったコイル導線30同士を固着して誘導加熱コイル24の形状を安定化させた場合でも、径方向および重ね合わせ方向に隣り合ったコイル導線30同士は整列状態で密着しているので、従来の2段多層千鳥状巻きの場合に比べ、コイル導線30が剥がれ難くできる。また、本実施形態の2段多層均等巻きの場合、コイル導線30が他のコイル導線を斜めに横切ることがないので、クロスポイントの発生がなく、各渦巻き状部47,48、ひいては誘導加熱コイル24の真円度が出し易くなる。
【0030】
さらに、一対の渦巻き状部47,48はそれぞれの最内周部のコイル導線30同士が繋がった形態となっており、各渦巻き状部47,48の引出し線47a,48aは、それぞれの渦巻き状部47,48の外周部となり、引出し線4a,4bが内周部側と外周部側とに分かれていた従来の場合とは違い、引出し線47a,48aの配線処理を容易に行うことができるようになる。特に、誘導加熱調理器21において、図1に示すように、制御回路26が誘導加熱コイル24の外側に配置されるような場合でも、誘導加熱コイル24の両引出し線47a,48aを、これらが誘導加熱コイル24を径方向に横切るようなことなく、プリント配線基板27に接続することが可能になる。これにより、誘導加熱コイル24の駆動時に、引出し線47a,48aにノイズが入り易くなることを防止できる。
【0031】
(第2実施形態)
図6は第2実施形態を示す。この第2実施形態は、誘導加熱コイル24に使用するコイル導線50の構成が第1実施形態と異なっている。すなわち、素線34、小集合線33および集合線35の形成の仕方は第1実施形態と同じであるが、集合線35の外周部に設けた絶縁体51が、第1実施形態の絶縁体36とは異なっている。この絶縁体51は、珪素樹脂(シリコーン)によりチューブ状に形成されていて、厚さは0.5mm以下が好ましい。なお、素線34の太さは、直径を0.3mm以下とすることが好ましい。素線34が、直径0.3mmを超える太さであると、珪素樹脂の加工時に絶縁体51が破れるおそれがある。この絶縁体51の外周部には、第1実施形態と同様な固着性絶縁体37を設けている。固着性絶縁体37は、破れ易い絶縁体51の保護と、融着機能とを兼ねている。
【0032】
このような構成のコイル導線50を、第1実施形態と同様に2段多層均等巻きし、前記固着性絶縁体37を溶融固化させることにより、誘導加熱コイル24を構成する。このような構成の誘導加熱コイル24は防水性に優れていて、水がかかり易い場所で使用される場合にも対応できる。
【0033】
(第3実施形態)
図7は第3実施形態を示す。この第3実施形態は、誘導加熱コイル24に使用するコイル導線53の構成が第1および第2実施形態と異なっている。すなわち、素線34は、絶縁層34bの外周部に、融着層34cを設けた構成としている。融着層34cとしては、例えば、ポリエステル系の融着用ワニスを用いる。このような構成の素線34を多数本束ねて撚り合わせることにより小集合線33を形成し、この小集合線33を複数本束ねて撚り合わせることにより集合線35を形成し、この集合線35をコイル導線53とする。この場合、集合線35全体を覆うような絶縁体や固着性絶縁体は設けていない。このような構成のコイル導線53を、第1実施形態と同様に2段多層均等巻きし、前記素線34の融着層34cを溶融固化させることにより、誘導加熱コイル24を構成する。
【0034】
(第4実施形態)
図8は第4実施形態を示す。この第4実施形態は、第1実施形態で示した2段多層均等巻きした誘導加熱コイル24を、両面加熱ヒータ55に用いた例である。この場合、誘導加熱コイル24のコイル導線50は、第2実施形態のものを用いる。両面加熱ヒータ55は、2段多層均等巻きした前記誘導加熱コイル24を、対向する一対の加熱板56,56で挟み込んだ構成とする。加熱板56,56としては、例えばステンレス板を用いる。誘導加熱コイル24の引出し線47a,48aは、誘導加熱コイル24の外側へ引き出している。
【0035】
この構成において、誘導加熱コイル24のコイル導線50に高周波電流を流すと磁束が発生し、その磁束によって両加熱板56,56に誘導電流(渦電流)が流れ、その際の渦電流損により加熱板56,56が発熱する。この場合、特にコイル導線50として、防水性に優れたものを用いることにより、両面加熱ヒータ55を水中でも使用することが可能となる。
【0036】
図9は、この第4実施形態に対する比較例を示した両面加熱ヒータ58を示している。この両面加熱ヒータ58は、従来の2段多層千鳥状巻きした前記誘導加熱コイル3を、対向する一対の加熱板56,56で挟み込んだ構成としている。この場合、誘導加熱コイル3の内周部側の引出し線4aは、一方の加熱板56に形成した孔から外側へ引き出し、外周側の引出し線4bは、両加熱板56,56間から外側へ引出している。
【0037】
図8の本発明の第4実施形態と図9の比較例を比較すると、第4実施形態の両面加熱ヒータ55の厚さA1は、比較例の両面加熱ヒータ58の厚さA2よりも薄くすることができる(A1<A2)。また、第4実施形態においては、誘導加熱コイル24の2本の引出し線47a,48aを、2枚の加熱板56,56の間から外側へ容易に引き出すことができる。さらに、2段多層均等巻きした誘導加熱コイル24は平坦度が出ているため、加熱板56との密着性がよく、加熱効率もよくなる。
【0038】
(第5実施形態)
図10は第5実施形態を示す。この第5実施形態は、本発明の電磁誘導コイルを、非接触給電システム61にける一次側の給電コイル62と二次側の受電コイル63に適用したものである。非接触給電システム61は、電磁誘導作用により一次側の給電コイル62から、二次側の受電コイル63に非接触で電力を供給するものである。給電コイル62および受電コイル63に、第1実施形態の誘導加熱コイル24と同様の構成のコイルを用いる。
【0039】
非接触給電システム61は、給電装置64と受電装置65とから構成される。給電装置64は、例えば給電施設に設けられ、商用交流電源66を電源とし、整流回路67およびコイル駆動回路68を備えた給電回路69と、給電コイル62を備えている。受電装置65は、例えば自動車などの車両に搭載され、受電コイル63と、平滑回路などを備えた受電回路70と、負荷駆動回路71と、モータなどの負荷72を備えている。
【0040】
受電装置65を給電装置64に近づけた状態で、給電装置64の給電コイル62に電流を流すと、これの周りに磁束が発生し、この磁束が受電装置65の受電コイル63を貫く。この磁束が変化すると、受電コイル63に電圧が発生する。この現象を利用することで、非接触で受電装置65側に電力を供給することができる。通常、給電回路69は、励磁電流を小さくするため、インバータ回路にて数十kHzの高周波が用いられる。高周波電流は、表皮効果によって、高周波になればなるほど、導線の表面付近だけを流れようとし、実効抵抗は著しく増大する。このため、上記給電コイル62、受電コイル63共に、素線を多数本束ねた集合線(リッツ線)が必要となる。
【0041】
これら給電コイル62、受電コイル63に、第1実施形態の誘導加熱コイル24と同様なリッツ線の2段多層均等巻きの電磁誘導コイルを用いることで、これら給電コイル62、受電コイル63の厚さ寸法を抑えることができ、また、引出し線の配線処理も容易にできるなど、基本的に第1実施形態と同様な作用効果を得ることができる。また、給電コイル62、受電コイル63のコイル導線に、第2実施形態の防水性に優れたコイル導線50を用いることで、水を使用する場所でも使用することが可能になる。
【0042】
本発明は上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
図面中、21は誘導加熱調理器(誘導加熱装置)、24は誘導加熱コイル(電磁誘導コイル)、29は調理用鍋(被加熱物)、30はコイル導線、33は小集合線、34は素線、34aは導体、34bは絶縁層、34cは融着層、35は集合線、36は絶縁体、37は固着性絶縁体、47,48は渦巻き状部、47a,48aは引出し線、50はコイル導線、51は絶縁体(珪素樹脂)、53はコイル導線、55は両面加熱ヒータ、61は非接触給電システム、62は給電コイル(電磁誘導コイル)、63は受電コイル(電磁誘導コイル)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体の外周部に絶縁層が設けられた断面が円形の素線を多数本撚り合わせて構成もしくは前記素線を多数本束ねた小集合線を複数本撚り合わせて構成された1本の集合線をコイル導線とし、この1本のコイル導線により、それぞれ径方向に渦巻き状に巻回された一対の渦巻き状部を対向状態で有する構成とされるとともに、前記一対の渦巻き状部のそれぞれの最内周部同士が繋がった構成とされており、
前記一対の渦巻き状部を対向状態で重ね合わせた状態で、それぞれの前記渦巻き状部の径方向に隣り合う前記コイル導線同士が前記径方向で密着し、かつ、前記一対の渦巻き状部の重ね合わせ方向に対向した前記コイル導線同士が前記重ね合わせ方向で密着していることを特徴とする電磁誘導コイル。
【請求項2】
前記コイル導線は、前記集合線の外周部を覆うように設けられた絶縁体を備えていることを特徴とする請求項1記載の電磁誘導コイル。
【請求項3】
前記コイル導線は、前記集合線の外周部に設けられた前記絶縁体の外周部に固着性絶縁体を備えていて、
前記一対の渦巻き状部を対向状態で重ね合わせた状態で、前記固着性絶縁体を溶融固化させることにより隣り合った前記固着性絶縁体同士を固着して前記コイル導線の形状を安定化させたことを特徴とする請求項2記載の電磁誘導コイル。
【請求項4】
前記素線は、前記絶縁層の外周部に融着層を備えていて、
前記一対の渦巻き状部を対向状態で重ね合わせた状態で、前記融着層を溶融固化させることにより隣り合った前記融着層同士を固着して前記コイル導線の形状を安定化させたことを特徴とする請求項1記載の電磁誘導コイル。
【請求項5】
前記集合線の外周部に設けられた絶縁体は、珪素樹脂であることを特徴とする請求項2または3記載の電磁誘導コイル。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電磁誘導コイルを誘導加熱コイルとして用いたことを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項1】
導体の外周部に絶縁層が設けられた断面が円形の素線を多数本撚り合わせて構成もしくは前記素線を多数本束ねた小集合線を複数本撚り合わせて構成された1本の集合線をコイル導線とし、この1本のコイル導線により、それぞれ径方向に渦巻き状に巻回された一対の渦巻き状部を対向状態で有する構成とされるとともに、前記一対の渦巻き状部のそれぞれの最内周部同士が繋がった構成とされており、
前記一対の渦巻き状部を対向状態で重ね合わせた状態で、それぞれの前記渦巻き状部の径方向に隣り合う前記コイル導線同士が前記径方向で密着し、かつ、前記一対の渦巻き状部の重ね合わせ方向に対向した前記コイル導線同士が前記重ね合わせ方向で密着していることを特徴とする電磁誘導コイル。
【請求項2】
前記コイル導線は、前記集合線の外周部を覆うように設けられた絶縁体を備えていることを特徴とする請求項1記載の電磁誘導コイル。
【請求項3】
前記コイル導線は、前記集合線の外周部に設けられた前記絶縁体の外周部に固着性絶縁体を備えていて、
前記一対の渦巻き状部を対向状態で重ね合わせた状態で、前記固着性絶縁体を溶融固化させることにより隣り合った前記固着性絶縁体同士を固着して前記コイル導線の形状を安定化させたことを特徴とする請求項2記載の電磁誘導コイル。
【請求項4】
前記素線は、前記絶縁層の外周部に融着層を備えていて、
前記一対の渦巻き状部を対向状態で重ね合わせた状態で、前記融着層を溶融固化させることにより隣り合った前記融着層同士を固着して前記コイル導線の形状を安定化させたことを特徴とする請求項1記載の電磁誘導コイル。
【請求項5】
前記集合線の外周部に設けられた絶縁体は、珪素樹脂であることを特徴とする請求項2または3記載の電磁誘導コイル。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電磁誘導コイルを誘導加熱コイルとして用いたことを特徴とする誘導加熱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−99389(P2012−99389A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247391(P2010−247391)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(503433176)鈴木工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(503433176)鈴木工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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