説明

電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置

【課題】 決められた温度と圧力の亜臨界水にて短時間で生体内の有用物質を抽出する電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置を提供する。
【解決手段】 反応釜50は釜内に投入した液体を加圧加熱して亜臨界状態とし、釜内に投入した素材と亜臨界水とを反応させるものである。この反応釜50の周囲にコイルを複数回巻きつけ、電流制御部によりコイルに流す電流を制御し、電磁誘導加熱制御にて反応釜50内を急速に加熱するとともに、反応釜50内の亜臨界水の温度と圧力を精度良く調整し、あらかじめ投入しておいた素材と亜臨界水を短時間かつ温度と圧力と反応時間を正確に制御しつつ反応させ、有用成分を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜臨界水の温度と圧力を精度良く調整し、亜臨界水を用いて植物組織、動物組織などの素材を短時間に反応させる亜臨界水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物組織や動物組織内には有用物質成分が多数含まれ、それら成分は様々な用途があり、様々な抽出方法が試みられている。例えば水、アルコール、油などの溶媒を用いて抽出したり、水蒸気蒸留により抽出したりする方法がある。
【0003】
しかし、有用物質の多くは溶媒に浸漬するという簡単な方法ではほとんど抽出できない場合が多い。例えばヒバ等の木材組織に含まれているヒノキチオールは、水に対して溶解度を持つもののわずか1g/リットルである。木片組織内部のヒノキチオールは水抽出が難しく、また、濃縮する処理も大変である。
【0004】
植物組織や動物組織を分解する方法として、超臨界水または亜臨界水を用いる方法がある。
超臨界水とは、温度と圧力が臨界点(374℃、22.1MPa)を越えた状態の水で、気体の性質と液体の性質を合わせ持ち、超臨界水は有機物を強力に分解する性質があり、植物組織や動物組織のバイオマスの分解に適した流体である。
また亜臨界水は臨界点(374℃、22.1MPa)よりも少し下で、飽和蒸気圧曲線よりも上の状態とされ、例えば、250℃付近の亜臨界水は、タンパク質やセルロースといった高分子量の生体物質を高速で加水分解して、ペプチド、アミノ酸やオリゴ糖、単糖に分解し、さらに加水分解が進めば酢酸、プロピオン酸、乳酸などの有機酸に分解する性質を持っている。
【0005】
このように、超臨界水または亜臨界水が強力なバイオマス分解能を持つことに着目し、従来技術においては食物残渣などからタンパク質やセルロースといった高分子量の生体物質を高速で加水分解し、産業廃棄物処理装置などで活用が期待されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−306021号公報
【特許文献2】特開2006−255676号公報
【特許文献3】特開2006−328304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように植物組織や動物組織のバイオマスを分解する方法として、超臨界水または亜臨界水を用いる技術が注目され、たんぱく質やセルロースなどの高分子量の生体物質をペプチド、アミノ酸などの低分子量の有機物に分解できるとされている。
【0008】
しかし、抽出したい植物組織や動物組織内の有用成分を従来の超臨界水または亜臨界水を用いる技術ではうまく抽出できない場合がある。植物組織や動物組織内の有用成分は生体内に存在しているものであり、熱に弱いものが多い。例えば、ヘミセルロースやセルロースの加水分解物はさらに高温にさらされると熱分解してしまう。また、ヒノキチオールは通常は加水分解はしないものの、より高温になると熱分解してしまう。
【0009】
超臨界水や亜臨界水は、水を密閉した釜などで加熱していき、高温高圧状態にし、臨界点を超えて所定状態となるまで加熱して生成する。従来技術のように、食物残渣のタンパク質やセルロースを高速で加水分解して低分子量の有機物に分解する用途であれば、超臨界水や亜臨界水生成への加熱過程において食物残渣のタンパク質やセルロースが分解しても問題はないが、上記のようにヘミセルロースやセルロースの加水分解物、および、ヒノキチオールなどの有用物質は、熱に弱く、亜臨界水への加熱過程で多くが熱分解してしまう。さらに過酷な、超臨界状態まで至るとヘミセルロース、セルロース、ヒノキチオールなどの有用物質のほとんどは熱分解してしまう。
【0010】
このように、ヘミセルロースやセルロースの加水分解物、および、ヒノキチオールなどの生体内の有用物質の多くは高温状態では熱分解してしまうため、従来技術では亜臨界水において低温で長時間抽出する方法が模索されている。
本発明者は、バイオマスから有用物質を低コストで抽出する方法として、亜臨界水を用いつつ有用物質を分解させずに抽出処理できる条件を見いだし、当該抽出条件を可能とする処理装置の開発を行った。
【0011】
上記問題点に鑑み、本発明は、決められた温度と圧力の亜臨界水にて短時間で生体内の有用物質を抽出する電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第1の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置は、
釜内に投入した液体を加圧加熱して亜臨界状態とし、前記釜内に投入した素材と前記亜臨界水とを反応させる反応釜と、
前記反応釜の周囲に複数回巻きつけたコイルと、
前記コイルに流す電流を制御する電流制御部を備え、
前記電流制御部により前記コイルに流す電流を制御し、電磁誘導加熱制御にて前記反応釜内の前記亜臨界水の温度と圧力を精度良く調整し、前記反応釜内の前記素材と前記亜臨界水を短時間に反応させることを特徴とするものである。
【0013】
上記構成により、電磁誘導加熱により反応釜内の液体を急速に加熱加圧して目標温度の亜臨界水状態を創出することができ、また、電磁誘導加熱制御により反応釜壁面における直接の発熱を精度良く制御し、反応釜内の亜臨界水の温度と圧力等の条件を最適に設定することができる。これは従来の亜臨界水処理装置では実現できなかったことである。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第2の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置は、
亜臨界水を発生させる亜臨界水発生装置と、
前記亜臨界水発生装置から亜臨界状態に達した亜臨界水を取り出す導入管と、
前記導入管から前記亜臨界水を導入し、釜内に投入された素材と前記亜臨界水とを反応させる反応釜と、
前記反応釜の周囲に複数回巻きつけたコイルと、
前記コイルに流す電流を制御する電流制御部を備え、
前記電流制御部により前記コイルに流す電流を制御し、電磁誘導加熱制御にて前記反応釜内を流れる前記亜臨界水の温度と圧力を精度良く調整し、前記反応釜内の前記素材と前記亜臨界水を短時間に反応させることを特徴とするものである。
【0015】
上記構成により、連続処理において、液体を加熱加圧して亜臨界水状態を創出する工程と、素材から有用物質を抽出する抽出工程を分離し、所定温度と圧力の亜臨界水を即座に素材に適用することができるとともに、電磁誘導加熱制御により反応釜壁面における直接の発熱を精度良く制御し、反応釜内の亜臨界水の温度と圧力を精度良く維持・調整し、素材に適用する亜臨界水の温度、圧力、処理時間等の条件を最適に設定することができる。これは従来の亜臨界水処理装置では実現できなかったことである。
【0016】
なお、上記本発明の第1および第2の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置において、下記の数々の工夫を加えることができる。
【0017】
第1の工夫は、前記反応釜の周囲に断熱体を巻きつけ、前記断熱体を挟んで前記反応釜の周囲に前記絶縁皮膜銅線をコイル状に巻きつける構成とし、熱緩衝材として前記絶縁皮膜銅線の焼き付きを防止せしめる工夫である。
【0018】
第2の工夫は、前記断熱体の外周表面に多数の溝構造の空隙を設け、前記溝構造の空隙に沿って冷却風を流す冷却ファン等の冷却手段を設け、前記反応釜は前記断熱体により保温しつつ前記断熱体の外側においてコイル状の前記絶縁皮膜銅線を冷却せしめる工夫である。
上記構成により、第1および第2の工夫により、断熱体を反応釜の周囲に巻くことにより反応釜の保温と同時に、断熱体の外側に設けた溝構造の空隙への通風により絶縁皮膜銅線を効果的に冷却して焼き付きを防止することができる。
【0019】
第3の工夫は、前記反応釜に設けられているボルト等の金属製突起物の周囲を磁性体で囲み、漏れ磁束を遮蔽して前記金属製突起物に生じる渦電流を低減させる工夫である。
【0020】
本発明では、反応釜自体に渦電流を発生させるため、反応釜において渦電流が局所的に発生しやすい箇所を少なくすることが望まれる。これにより部品の焼き付けなどの発生を防止することができる。
上記構成による本発明の第1および第2の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置では、電磁誘導加熱制御による反応釜内の亜臨界水の制御温度を50から400℃、圧力を当該温度の飽和水蒸気圧以上にて自在に維持・調整することができる。
【0021】
次に、本発明の第2の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置において、前記導入管から分岐したバイパス管を別に設け、前記亜臨界水発生装置から導入する前記亜臨界水が所定温度範囲および所定圧力範囲にない場合は、前記バイパス管で逃がし、前記所定温度範囲および前記所定圧力範囲にある場合は前記導入管を介して前記反応釜に導入することが好ましい。
【0022】
また、本発明の第2の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置において、前記導入管を介して前記亜臨界水発生装置から前記亜臨界水を前記反応釜内に導入する際に前記反応釜内の圧力を飽和水蒸気圧以上に保つためのガス圧力を前記反応釜内に印加できる加圧手段を備えた構成とすることが好ましい。加圧手段としては不活性ガスを供給するボンベと、当該ボンベからの不活性ガスを所定圧力にて反応釜内に印加する昇圧装置の組み合わせなどがある。
上記構成により、所定温度範囲および所定圧力範囲にある亜臨界水を安定して連続的に供給することができ、導入の際に反応釜の圧力が下がらないようにガス圧力をかけることもでき、反応釜内での亜臨界水を用いた素材からの成分の抽出処理を亜臨界条件下で連続的に実施することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる第1の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置によれば、いわゆるバッチ処理方式の亜臨界水処理装置において、電磁誘導加熱制御により反応釜壁面からの直接発熱を精度良く制御し、反応釜内の亜臨界水の温度と圧力を精度良く維持・調整し、素材に適用する亜臨界水の温度、圧力、処理時間等の条件を最適に設定することができる。
また、本発明にかかる第2の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置によれば、いわゆる連続処理方式の亜臨界水処理装置において、所定温度範囲および所定圧力範囲にある亜臨界水を安定して連続的に供給することができ、導入の際に反応釜の圧力が下がらないようにガス圧力をかけることもでき、反応釜内での亜臨界水を用いた素材からの成分の抽出処理を亜臨界水条件下で連続的に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置を添付図面に示す好適実施例に基づいて詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
以下、本発明に係る第1の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置の構成例を図面を参照しながら説明する。
【0026】
第1の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置100は、いわゆるバッチ処理方式にて亜臨界水を素材に対して適応する装置である。
図1は、本発明の実施例1に係る電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置100の一構成例を例示する概念図である。電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置100は、反応釜50、冷却管70、抽出液タンク80、ニードルバルブ90を備えている。
【0027】
反応釜50は、バイオマスなどの素材と液体をバッチにより投入した後、加熱加圧して液体を亜臨界水状態とし、釜内の温度と圧力を精度良く所望の圧力と温度に調整しつつ素材と亜臨界水を所望の時間だけ反応させて、ターゲットしている有用物質を抽出する部分である。
【0028】
なお、反応釜50は、導入された液体を急速かつ精度良く所望の圧力と所望の温度に調整・維持するために電磁誘導加熱機構51を備えている。電磁誘導加熱機構51であれば、応答性に優れているため、温度制御がやりやすいというメリットが得られる。
【0029】
電磁誘導加熱機構51は金属体の周囲に磁束を発生させ、金属体の内部に渦電流を誘導し、金属体を直接発熱させるものである。この構成例では反応釜50の周囲に絶縁皮膜銅線であるコイル52を複数回コイル状に巻きつけた構成となっている。また、コイル52に流す電流を制御する電流制御部(図示省略)を備えている。
また、反応釜50の内部には高精度の温度センサおよび圧力センサが備えられている(図示省略)。
【0030】
例えば、電磁誘導加熱機構51による反応釜50内の亜臨界水の制御温度は50から400℃の範囲、制御圧力が飽和水蒸気圧以上で調整する能力があることが好ましい。本発明の亜臨界水発生装置を用いてバイオマスから有用物質を分解させずに選択的に抽出処理できる条件としては、温度が100から250℃の範囲、圧力が当該温度における飽和水蒸気圧の1から3倍の範囲が好ましい。
【0031】
本構成例では、絶縁皮膜銅線であるコイル52に流れる電流を電流制御部で制御し、電磁誘導加熱制御にて反応釜50内の亜臨界水の温度と圧力を精度良く調整し、反応釜50内の素材からバッチ処理にて短時間に成分を抽出する。なお、抽出ターゲットとなる有用物質に対する亜臨界水の温度と圧力と処理時間設定の実験例については後述する。
【0032】
ニードルバルブ90は、反応釜50内で亜臨界水と素材の反応が終了した抽出液を反応釜50から取り出すバルブであり、抽出液はニードルバルブ90を開放すれば冷却管70に導かれる。
【0033】
冷却管70は、反応釜50から取り出された抽出液はいまだ高温高圧の亜臨界水に包含された状態であるので、外界に安全に取り出せるように冷却する装置である。
抽出液タンク80は、冷却管70で冷却後の抽出液を貯蔵するタンクである。
【0034】
上記構成の本発明の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置100を用いた有用物質の抽出例を示し、本発明の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置100による優れた精度の良い亜臨界水処理能力について示す。
【0035】
(抽出実験)
図1に示した概念図の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置100を実際に製作し、抽出実験を行った。抽出実験における素材としては輪島産のヒバの乾燥木片を300gを用い、含有されているヒノキチオールをターゲット物質とした。なお、ヒバの乾燥木片300gには約300〜350mg程度のヒノキチオールが含有されているものと推定される。
【0036】
ヒノキチオールの抽出条件を調べるべく、亜臨界水の温度、圧力、亜臨界水とヒバとの反応時間を様々に設定して実験した。
亜臨界水の温度として、150℃、180℃、200℃、230℃、250℃の5つの温度で抽出実験1を行った。亜臨界水の圧力はいずれもその温度における飽和水蒸気圧をやや上回る圧力とした。液体を加熱加圧してゆき、それぞれ目標温度に達した時点でニードルバルブ90を開放して反応釜50外部へ取り出した。
【0037】
抽出実験1により抽出タンク80に溜まった抽出液を観察した。その観察した抽出液サンプルの色や臭いを表1にまとめた。
【表1】

【0038】
[表1]に示すように、抽出温度の上昇と共に着色が濃くなり、230℃を超えると焦げ臭が出てきた。抽出液の性状から200℃あたりが人間の五感にとりもっとも良好な状態で抽出されているようである。
【0039】
また、抽出処理後に反応釜50から取り出したヒバを観察すると、230℃を超えるとヒバが脆くなり内部組織が破壊され始めており、このことからヒバの木質成分の溶解が示唆された。
【0040】
つまり、亜臨界水が230℃を超えると、超臨界水や亜臨界水が持つ加水分解能力が強くなり、木質成分の分解や変質が進んでしまうことが分かる。一方、200℃以下では抽出液の中に含まれる木材由来成分の濃度は薄いようである。
【0041】
実際に、各温度の亜臨界水処理の抽出液中に含まれているヒノキチオール濃度を測定した。抽出実験1の測定結果を図2に示す。図2に示すように、ヒノキチオール成分は、150℃、180℃、200℃、230℃と亜臨界水の温度が上がるほど抽出されるヒノキチオールが増加することが分かる。しかし、250℃の亜臨界水を用いると逆に抽出されるヒノキチオールが減少している。これは、ヒノキチオールの性質からヒノキチオールが熱分解してしまって減少したものと考えられる。
【0042】
図2の測定結果からは230℃の亜臨界水を用いるとヒノキチオールが最も多く抽出されることが分かったが、表1に示したように、230℃では木質成分の溶解が始まっておりそのため細胞内深くに残存しているヒノキチオールがより多く抽出された結果と考えられる。なお、木質成分の溶解によりもっと多くのヒノキチオールが溶解する一方、図2の測定結果が示唆するように熱分解も始まっている可能性もある。
【0043】
図2の抽出結果と表1の観察結果から、温度200℃、圧力が当該温度での飽和水蒸気圧をやや上回る圧力の亜臨界水を用いることが焦げ臭のない良好なヒノキチオールを得るために良い条件であることが分かる。
【0044】
次に、反応時間を検証する。
200℃の亜臨界水と素材との抽出時間(亜臨界水の反応釜内の滞留時間)を変えて、即座に取り出し(0分)、5分維持してから取り出し、10分維持してから取り出しの3パターンで抽出実験2を行った。図3に抽出実験2の測定結果を示す。
【0045】
図3に示すように、抽出時間が0分、5分、10分と長くなるにつれて抽出されるヒノキチオールの量が増えている。この実験結果から反応釜50に200℃で飽和水蒸気圧をやや上回る圧力の亜臨界水を投入して10分間の抽出時間を確保すれば良いことが分かる。ここで、10分以上の抽出時間が必要か否かを検討する。10分間の抽出時間をとった場合の抽出液に含まれているヒノキチオール量は336mgであり、投入した素材のヒバ300gにはヒノキチオールが300〜350mg程度含まれていることが推定されるので、既にほぼ全量のヒノキチオールが抽出されていることが分かる。そのため、10分以上の抽出時間をとれば充分かつ効果的であることが分かる。
【0046】
次に、抽出するターゲット物質の違いによって、抽出に用いる亜臨界水の温度、圧力、反応時間が異なることを実験により示す。
素材として抽出実験1、抽出実験2と同じく輪島産ヒバを用いて亜臨界水による抽出実験を行い、本抽出実験3では抽出液全体をそのまま蒸留して水分を除去し、抽出液に含まれるすべての残渣量を測った。
【0047】
本抽出実験3で抽出される成分としては、ヒノキチオールの他に、ヒバ油、リグニン分解物、セルロース分解物、ヘミセルロース分解物等が考えられる。
抽出実験3では、反応釜50を加熱してゆき、反応釜50内の液体が150℃、180℃、200℃、230℃、250℃の各温度の亜臨界状態に達した時点で即座にニードルバルブ90を開放して取り出し、それぞれの温度における抽出液の蒸留残渣量を測定した。
【0048】
図4に抽出実験3の蒸留残渣量を示す。
図4に見るように、蒸留残渣の総量は亜臨界水が230℃を超えると急に多くなっている。
この230℃の亜臨界水により抽出された抽出液の蒸留残渣の性質を調べると、それらはエタノールやアセトンに溶解することが分かった。ヒバに含まれている物質でエタノールやアセトンに溶解するものはヒバ油やリグニン分解物で構成されていると考えられる。つまり、ヒバ油やリグニン分解物は200℃の亜臨界水ではあまり抽出されないが230℃を超える亜臨界水では抽出されることが分かる。
【0049】
次に、250℃の亜臨界水により抽出された抽出液の蒸留残渣を調べると、蒸留残渣総量は250℃で減少している。これは250℃の高温になると抽出物の一部がさらに分解されて熱分解を受け低分子化したためと考えられる。ターゲット物質の抽出を目的とするならば熱分解物の発生は不都合であり、抽出温度は230℃以下が好ましいことが分かる。
【0050】
図4から分かるように、ヒノキチオールをターゲット物質とする場合は200℃の亜臨界水を用いて抽出する方法が最も良いことが分かる。また、ヒバ油やリグニンをターゲット物質とする場合は230℃の亜臨界水を用いて抽出する方法が最も良いことが分かる。
このように、ターゲット物質が異なると最適な抽出温度が異なることが分かる。
【0051】
抽出実験1、2、3を通して分かったことを整理すると、素材の別、ターゲット物質の別により、それぞれ抽出に適した亜臨界水の温度、圧力、反応時間があり、当該条件を最適化して亜臨界水を素材に適用することが効果的である。
【0052】
従来の亜臨界水の発生装置では、容積2Lものステンレス製反応釜50に1Lの水を入れた状態の反応釜50を数分間で200℃まで昇温することは困難であった。また、従来の亜臨界水の発生装置では、ステンレス製反応釜50内の亜臨界水の温度制御は難しく、変動幅が大きいものであった。つまり、ステンレス製反応釜50内の温度を目標温度にまで昇温した後にステンレス製反応釜50内の温度を当該目標温度にて一定に保つのは難しいものであった。
一方、本発明の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置100は、電磁誘導加熱方式によりステンレス製反応釜50の壁面を直接発熱させ、短時間に急速に昇温することができ、容積2Lのステンレス製反応釜50であっても200℃まで5〜6分程度で昇温することができた。また、250℃まで10分間程度で昇温することができた。また、その後も、電磁誘導加熱制御により反応釜50内の温度を細かく制御することにより、反応釜50内の温度を一定温度に精度良く制御できた。
【0053】
なお、上記実験では、ヒバからのヒノキチオール抽出実験であったが、本発明の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置は、植物系バイオマスからの有用物質の抽出のみならず、動物系バイオマスに対して適用することもできる。例えば、魚の鱗を分解し、アミノ酸を取り出すことも可能である。セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸等の親水性アミノ酸をターゲット物質とする場合は200℃以下の亜臨界水を反応させれば取り出すことができた。なお、親水性アミノ酸の多くは熱分解を起こしやすく、200℃を超える亜臨界水と反応させると熱分解が起こった。イソロイシン、ロイシン、グリシン等の疎水性のアミノ酸をターゲット物質とする場合は250℃付近の亜臨界水を反応させても熱分解は起こらず取り出すことができた。
【0054】
また、本発明の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置は、バイオマス等の熱分解反応のみならず、他の様々な反応にも用いることができる。例えば、バイオマス等の加水分解、バイオマス等のガス化、無機粒子合成、酸化分解など様々な反応に用いることができる。これらの反応においても、合成(反応)生成物の性質によって精度良い温度調整が必要となるが、従来の亜臨界水処理装置では精度良い温度調節が難しいものであったが、本発明の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置では、精度良く亜臨界水反応温度を調節することができるので、バイオマス等の加水分解、バイオマス等のガス化、無機粒子合成、酸化分解など様々な反応にも適用することができる。
【実施例2】
【0055】
実施例2にかかる本発明の第2の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置を説明する。図5は、本発明の第2の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置100aの一構成例を例示する概念図である。電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置100aは、蒸留水タンク10、高圧ポンプ20、亜臨界水発生装置30、導入管40、バイパス管41、反応釜50a、加圧装置60、冷却管70、抽出液タンク80、各種バルブ91〜94を備えている。この第2の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置100aは亜臨界水の供給に関して連続的な処理が可能な構成となっている。
【0056】
蒸留水タンク10は、蒸留水を蓄えているタンクであり、高圧ポンプ20を介して蒸留水を亜臨界水発生装置30に供給する。
【0057】
高圧ポンプ20は、蒸留水タンク10の蒸留水を亜臨界水発生装置30に対して送水するポンプである。
【0058】
亜臨界水発生装置30は、高圧ポンプ20から投入された蒸留水を加熱加圧して亜臨界水を発生させる装置である。亜臨界水発生装置30は蒸留水を亜臨界状態にするために加熱機構(図示せず)を備えている。
【0059】
この加熱機構は特に限定されず、電気炉加熱機構、電磁誘導加熱機構などが可能であるが、本実施例の構成では電磁誘導加熱機構となっている。電磁誘導加熱機構であれば、急速加熱が簡単なことと、加熱後の温度制御がやりやすいというメリットが得られる。後述するように、反応釜50aに亜臨界水を導入する時点において、反応釜50a内において即座に所望の温度、所望の圧力の亜臨界水状態として、所定の抽出反応時間にて素材を抽出しやすくなる。
【0060】
導入管40は、亜臨界水発生装置30から亜臨界状態に達した亜臨界水を取り出して反応釜50aに導入する管である。
【0061】
バイパス管41は亜臨界水発生装置30に対して導入管40とは別に設けた流路であり、亜臨界水発生装置30から導入する亜臨界水が所定温度範囲および所定圧力範囲にない場合は、バイパス管41で逃がして反応釜50aには導入せず、亜臨界水が所定温度範囲および所定圧力範囲にある場合は導入管40を介してそのまま反応釜50aに導入するものである。
【0062】
所定温度範囲および所定圧力範囲にない亜臨界水が反応釜50aに入ってしまうと、反応釜50a内が反応温度、反応圧力ではない状態となってしまい、予定していた反応処理ができなくなってしまう。本発明では、反応温度と反応圧力を精度良く調整して素材と反応させて有用物質を抽出するので、このような状態は好ましくない。そこで、バイパス管41を設けておくことにより、所定温度範囲および所定圧力範囲にない亜臨界水は反応釜50aに入らないようにバイパス管41側に逃がし、亜臨界水発生装置30において所定温度範囲および所定圧力範囲に調整済みの亜臨界水のみ導入管40を介して導入すれば、後述する反応釜50aの電磁誘導加熱機構51により即座に反応温度と反応圧力に精度良く調整することができる。
【0063】
なお、導入管40とバイパス管41の切り替えのため、後述するようにニードルバルブ91、ニードルバルブ92を備えられており、また、ニードルバルブの開閉制御のために必要な各種センサも設けられている(図示省略)。
【0064】
反応釜50aは、バイオマスなどの素材を投入し、亜臨界水発生装置30にて発生した亜臨界水を導入管40を介して導入し、亜臨界水を精度良く所望の圧力と所望の温度に調整しつつ素材と亜臨界水を所望の時間だけ反応させて、ターゲットとしている有用物質を抽出する部分である。なお、所定量の素材を投入するフィーダー装置を備えた構成としても良い。
また、本発明に係る電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置の構成では、複数の反応釜を並列させ、切換え操作で抽出処理を行うこともできる。また、処理の目的に応じ反応釜を直列に配列することもできる。さらに、亜臨界水の導入口および排出口の位置は、反応釜の上部、下部、側部のいずれからも適宜選択することができる。
【0065】
なお、反応釜50aは、実施例1と同様、亜臨界水発生装置30から導入された亜臨界水を精度良く所望の圧力と所望の温度に調整・維持するために電磁誘導加熱機構51を備えている。この構成例でも反応釜50aの周囲に絶縁皮膜銅線であるコイル52を複数回巻きつけた構成となっている。また、実施例1と同様、コイル52に流す電流を制御する電流制御部(図示省略)を備えている。
また、実施例1と同様、反応釜50aの内部にも高精度の温度センサおよび圧力センサが備えられている(図示せず)。
【0066】
実施例2においても、例えば、電磁誘導加熱機構51による反応釜50a内の亜臨界水の制御温度は50から400℃の範囲、制御圧力が飽和水蒸気圧以上で調整する能力があることが好ましい。
【0067】
本実施例2の構成例では、亜臨界水発生装置30で亜臨界水を発生させ、反応釜50aに対して亜臨界水を連続的に流し込み、コイル52の電流を電流制御部で制御して電磁誘導加熱制御にて反応釜50a内を通過する亜臨界水の温度と圧力を精度良く調整し、素材と反応して得られた抽出液を連続的に流し出す。
【0068】
加圧装置60は、導入管40を介して亜臨界水発生装置30から亜臨界水を反応釜50a内に導入する際に反応釜50a内の圧力を飽和水蒸気圧以上に保つためのガス圧力を反応釜50a内に印加できる装置である。例えば、不活性ガス(窒素ガスなど)を供給するガスボンベと、当該ガスボンベからの不活性ガスを所定圧力にて反応釜内に印加する昇圧装置を備えている。亜臨界水状態を保つには飽和水蒸気圧以上の圧力が必要であるが、ガスボンベ圧力は最高圧でも10MPa程度であり、ガスボンベのみの圧力以上の高圧ガスを制御しながら供給するのは難しいので昇圧装置を備えていることが好ましい。
【0069】
連続処理においても、反応釜50a内では、所定温度の所定圧力を維持する必要があるため、亜臨界水発生装置30で発生した亜臨界水を反応釜50aに導入する際に後述するニードルバルブ91を開放するが、圧力が飽和水蒸気圧以下に下がるおそれがある。この際に即座に反応釜50a内の圧力を飽和水蒸気圧以上に補正調節するために加圧装置60によりガス圧力を印加する。
【0070】
冷却管70は、反応釜50から取り出された抽出液はいまだ高温高圧の亜臨界水に包含された状態であるので、冷却する装置である。
抽出液タンク80は、冷却管70で冷却後の抽出液を貯蔵するタンクである。
【0071】
ニードルバルブ91は導入路40と反応釜50aの導通を制御するバルブである。ニードルバルブ92は導入路40とバイパス路41との導通を制御するバルブである。ニードルバルブ91近くの導入管40には高精度の温度センサおよび圧力センサが備えられ(図示せず)、バルブ開閉制御部(図示せず)によりニードルバルブ91およびニードルバルブ92の開閉が制御される。
【0072】
導入管40の亜臨界水の温度および圧力が所定範囲である場合、ニードルバルブ91を開放状態としニードルバルブ92を閉鎖状態として亜臨界水発生装置30で発生した亜臨界水を反応釜50aに導く。導入管40の亜臨界水の温度および圧力が所定範囲にない場合、ニードルバルブ91を閉鎖状態としニードルバルブ92を開放状態とし亜臨界水発生装置30で発生した亜臨界水をバイパス管41から外部へ逃がす。
【0073】
ニードルバルブ93は、加圧装置60と反応釜50aの導通を制御するバルブであり、反応釜50a内の圧力を飽和水蒸気圧以上となるように即座に反応釜50a内の圧力を補正調節する。反応釜50a内の圧力センサ(図示せず)によりニードルバルブ91の開放に伴い反応釜50a内の圧力が飽和水蒸気圧以下に下がってしまった場合は亜臨界水が水蒸気になってしまうので、ニードルバルブ91の開放と連動してニードルバルブ93を開放して反応釜50a内の圧力が飽和水蒸気圧以上となるよう加圧ガスボンベ60から窒素ガスを印加し、亜臨界状態を維持する。
【0074】
なお、実施例1ではニードルバルブ90が設けられており、バッチ処理が終了した抽出液の反応釜50からの取り出しを制御したが、実施例2は連続処理であり、ニードルバルブ90に相当するバルブは不要としても良い。本実施例2ではニードルバルブ90は設けていない構成例となっている。
その代わり、冷却管70の後方にコントロールバルブ94が設けられている。コントロールバルブ94があれば、全自動で圧力を一定にできるというメリットが得られる。例えば不溶成分の影響でバルブが詰まり気味になった場合(圧力が上がる)でも、コントロールバルブ94を自動開放して排出することができるため圧力を一定に保つことが可能となる。
【0075】
以上、本発明の第2の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置によれば、いわゆる連続処理方式の亜臨界水処理装置において、所定温度範囲および所定圧力範囲にある亜臨界水を安定して連続的に供給することができ、導入の際に反応釜の圧力が下がらないようにガス圧力をかけることもでき、反応釜内での亜臨界水を用いた素材からの成分の抽出処理を連続処理とすることができる。
【実施例3】
【0076】
実施例3の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置として、絶縁皮膜銅線であるコイルの焼き付きを有効に防止する工夫を盛り込んだ実施例を示す。
本実施例3では、反応釜の周囲に断熱体を巻きつけ、断熱体を挟んで反応釜の周囲に絶縁皮膜銅線をコイル状に巻きつける構成とし、熱緩衝材として絶縁皮膜銅線の焼き付きを防止せしめたものである。
実施例3にかかる電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置の全体構成は実施例1に示した装置構成と同様で良いが、反応釜50bに工夫が施されている。
【0077】
図6は反応釜50bの周囲の断熱体の形状を模式的に示す図である。
反応釜50bの周囲には断熱体53が巻かれている。この断熱体53は熱緩衝材として働き、抽出釜50自体の保温と同時に抽出釜から絶縁皮膜銅線52への熱伝導を防止するよう工夫している。さらに、この断熱材53はコイル状に巻かれる絶縁皮膜銅線52を抽出釜50の外面に接触させない機能も果たしている。
【0078】
また、本実施例3では断熱体53の外周表面に多数の溝構造54を設け、溝構造54に沿って冷却風を流す冷却ファン(図示せず)を設け、反応釜50bは断熱体53により保温しつつ断熱体53の外側においてコイル状の絶縁皮膜銅線52を冷却せしめる構造となっている。
【0079】
図6は断熱体53の外周表面に多数の溝構造54と絶縁皮膜銅線であるコイル52の関係が分かりやすいように模式的に示した横断面である。
【0080】
断熱体53の外周表面に溝構造54が設けられているので、絶縁皮膜銅線であるコイル52が断熱体53には密着せず空気が通る通り道が確保されている。この溝構造54の空隙に対して冷却ファンにより送風すると反応釜50bから伝導する熱を効果的に放熱することができ、絶縁皮膜が焼き付いたり焦げ付いたりすることがなくなる。
【実施例4】
【0081】
実施例4の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置として、反応釜に設けられているボルト等の金属製突起物の周囲を磁性体で囲み、漏れ磁束を遮蔽して金属製突起物に生じる渦電流を低減させる工夫を盛り込んだ実施例を示す。
【0082】
図7は、電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置の反応釜50cのみを取り出して縦断面において示した縦断面図である。
【0083】
絶縁皮膜銅線であるコイル52に電流が流れると磁界が発生し、磁束が漏れ磁束となり反応釜50cの壁面およびその周囲に磁束が通過する。ここで、反応釜50cには釜蓋を閉じる大きなボルト55があるが、このボルト55の先端には磁束が集中しやすく渦電流が発生しやすい。そのため、ボルト55の先端に焼き付きが発生しやすい。
そこで、本実施例4の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置では磁束が集中しやすく渦電流が発生しやすい金属製突起物の周囲を磁性体で囲み磁束の通過を防止し、渦電流の発生および過昇温を防止せしめたものである。
【0084】
図7に示すように、ボルト55の先端を遮るように磁性体56が設けられている。例えば、フェライトコアなどで良い。
【0085】
図7には磁力線は図示していないが、絶縁皮膜銅線であるコイル52に流れる電流から発生する磁力線はフェライトコアである磁性体56方向に収束し、金属製突起物であるボルト55には磁力線は通過せず、過剰な渦電流が発生することもない。
【0086】
以上、本発明の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置の構成例における好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置は、植物組織や動物組織などのバイオマスから有用物質を亜臨界水を用いて抽出するための亜臨界水処理装置に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施例1に係る電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置100の一構成例を例示する概念図
【図2】抽出実験1の測定結果を示す図
【図3】抽出実験2の測定結果を示す図
【図4】抽出実験3の蒸発残渣量を示す図
【図5】本発明の実施例2に係る電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置100aの一構成例を例示する概念図
【図6】反応釜50bの周囲の断熱体52およびその外周表面に設けられた溝構造53と絶縁皮膜銅線51を模式的に示した横断面
【図7】反応釜50cのボルト55とそれを覆う磁性体56を模式的に示した縦断面
【符号の説明】
【0089】
10 蒸留水タンク
20 高圧ポンプ
30 亜臨界水発生装置
40 導入管
41 バイパス管
50 反応釜
51 電磁誘導加熱機構
52 絶縁皮膜銅線
53 断熱体
54 溝構造
55 ボルト
56 磁性体
60 加圧ガスボンベ
70 冷却管
80 抽出液タンク
90,91,92,93 ニードルバルブ
94 コントロールバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釜内に投入した液体を加圧加熱して亜臨界状態とし、前記釜内に投入した素材と前記亜臨界水とを反応させる反応釜と、
前記反応釜の周囲に複数回巻きつけたコイルと、
前記コイルに流す電流を制御する電流制御部を備え、
前記電流制御部により前記コイルに流す電流を制御し、電磁誘導加熱制御にて前記反応釜内の前記亜臨界水の温度と圧力を精度良く調整し、前記反応釜内の前記素材と前記亜臨界水を短時間に反応させることを特徴とする電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置。
【請求項2】
亜臨界水を発生させる亜臨界水発生装置と、
前記亜臨界水発生装置から亜臨界状態に達した亜臨界水を取り出す導入管と、
前記導入管から前記亜臨界水を導入し、釜内に投入された素材と前記亜臨界水とを反応させる反応釜と、
前記反応釜の周囲に複数回巻きつけたコイルと、
前記コイルに流す電流を制御する電流制御部を備え、
前記電流制御部により前記コイルに流す電流を制御し、電磁誘導加熱制御にて前記反応釜内を流れる前記亜臨界水の温度と圧力を精度良く調整し、前記反応釜内の前記素材と前記亜臨界水を短時間に反応させることを特徴とする電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置。
【請求項3】
前記反応釜の周囲に断熱体を巻きつけ、前記断熱体を挟んで前記反応釜の周囲に前記コイルを巻きつける構成とし、熱緩衝材として前記コイルの焼き付きを防止せしめたことを特徴とする請求項1または2に記載の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置。
【請求項4】
前記断熱体の外周表面に多数の溝構造を設け、前記溝構造に沿って冷却風を流す冷却手段を設け、前記反応釜は前記断熱体により保温しつつ前記断熱体の外側において前記コイルを冷却せしめる構造とした請求項1から3のいずれか1項に記載の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置。
【請求項5】
前記反応釜に設けられているボルト等の金属製突起物の周囲を磁性体で囲み、漏れ磁束を遮蔽して前記金属製突起物に生じる渦電流を低減させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置。
【請求項6】
前記電磁誘導加熱制御による前記反応釜内の前記亜臨界水の制御温度が50から400℃、制御圧力が飽和水蒸気圧以上とした請求項1から5のいずれか1項に記載の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置。
【請求項7】
前記反応釜内での前記亜臨界水を用いた前記素材との反応処理を連続処理とし、前記亜臨界水発生装置に前記導入管とは別にバイパス管を設け、前記亜臨界水発生装置から導入する前記亜臨界水が所定温度範囲および所定圧力範囲にない場合は、前記バイパス管で逃がし、前記所定温度範囲および前記所定圧力範囲にある場合は前記導入管を介して前記反応釜に導入することを特徴とする請求項2に記載の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置。
【請求項8】
前記導入管を介して前記亜臨界水発生装置から前記亜臨界水を前記反応釜内に導入する際に前記反応釜内の圧力を飽和水蒸気圧以上に保つためのガス圧力を前記反応釜内に印加できる加圧手段を備えた請求項7に記載の電磁誘導加熱式亜臨界水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−261992(P2009−261992A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110801(P2008−110801)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(594129437)明興産業株式会社 (8)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
【出願人】(597167748)財団法人新産業創造研究機構 (20)
【Fターム(参考)】