説明

電算機室空調システム、その局所冷却装置の設置/移動方法

【課題】局所冷却装置の移動や増設を容易に行えるようにする。
【解決手段】冷媒配管11,12の途中(局所空調装置13の近傍)に、複数のジョイント部を備える配管ヘッダー16を設ける。配管ヘッダー16と局所空調装置13との間を屈曲性のあるフレキシブル配管17で接続する。フレキシブル配管17を余長を持つように設置することで、後に局所空調装置13を移動する際に、フレキシブル配管17を配管ヘッダー16と局所空調装置13の両方に接続した状態のまま、局所空調装置13を移動させることができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電算機室空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
サーバ装置等の電算機は、稼動中は発熱するものであり(主にそのCPU等が発熱する)、多数の電算機を収容している電算機室は、平均発熱密度が高い空間となると共に、電算機の設置位置や台数、稼動状態等に応じて、局所的に発熱密度が高いエリアや低いエリアが生じる場合がある。
【0003】
この様な電算機室の空調システムの一例として、複数の局所冷却装置を電算機室内の各所に配置して成る局所空調システムが知られている。この様な局所空調システムは、例えば、局所的に発生する高温問題を解決する為に、冷熱源ユニットと冷媒配管で接続した複数の局所冷却装置を、ラック上に分散設置して、局所的に発生する熱を除去している。
【0004】
図3に、従来の一般的な局所空調システム構成を示す。
図3において、まず、データセンタルーム5内は、床下1、部屋2、天井裏3、機械室4の各空間に区切られている。部屋2内にはサーバ装置等の電算機や各種電子機器等が収納されたラック6が複数配置されている。複数のラック6は、通常、整然と列を成して配置されており、図では1列のみ示すが、通常は複数のラック列が配置されているものである。
【0005】
局所空調システムは、基本的に、上記ラック列の上方に設けられた複数台の局所冷却装置13と、これら複数台の局所冷却装置13に共通の冷熱源ユニット7と、冷熱源ユニット7から複数の局所冷却装置13に冷媒を供給する為の冷媒往路配管11と、冷熱源ユニット7が各局所冷却装置13から冷媒を回収する為の冷媒復路配管12とから構成される。
【0006】
冷熱源ユニット7は、凝縮器8や冷媒圧送ユニット9(ポンプ等)等から成る。凝縮器8には、上記冷媒復路配管12を介して各局所冷却装置13から回収した冷媒が流入すると共に、不図示の外部装置から冷水10が供給されている。凝縮器8において冷媒と冷水10との熱交換が行われた後、この冷媒は冷媒圧送ユニット9によって冷媒往路配管11に圧送されて各局所冷却装置13に供給される。尚、冷熱源ユニット7には更に圧縮機や冷媒貯留槽等があってもよいが、ここでは特に説明しない。
【0007】
上記冷熱源ユニット7は、例えば機械室4内に設置される。また、上記冷媒往路配管11と冷媒復路配管12は、例えば天井裏3に配設される。尚、勿論のこと、冷熱源ユニット7及び各局所冷却装置13は、予め冷媒往路配管11及び冷媒復路配管12に接続されているものである。
【0008】
また、上記局所空調システムの一例が、例えば特許文献1に開示されている。
特許文献1には、通信・情報処理機器を上下方向に搭載したラックが整列してラック列をなし、当該ラック列が複数設置されている通信・情報処理機器室等を空調するシステムであって、この室内の各所に局所冷却装置が設置されており、これら複数台の局所冷却装置に対して冷媒配管を介して冷媒を供給する1台の室外機等を有する空調システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−166729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した複数の局所冷却装置を用いる電算機室空調システム(局所空調システム)は、上記の通り各局所冷却装置は局所的に発生する熱に対応するものであり、その熱源は主にラック内に収納されている電算機(例えばサーバ装置等)である。そして、電算機室の運用において、任意のラック内のサーバ装置等を他のラックに移動したり、またはラックごと移動したり、あるいはサーバ装置等が収納されていなかった空のラックに、新たにサーバ装置等を収納すること(サーバ装置等の増設)等が行われている。これは、熱源が増加したり、熱源が移動することを意味することになり、これに対応して局所冷却装置を移動したり増設することが必要となる。
【0011】
あるいは、この様なサーバ装置等の移動や増設に応じた例に限らず、例えば実際に局所冷却装置を設置して運用開始してみたら、予想と異なり、冷却不足となる箇所が生じてしまい、局所冷却装置を増設/移動する必要が生じる場合も有り得る。
【0012】
上記従来システム構成では、例えばサーバ装置等の増設による熱負荷の増大、或いはサーバの統合等による熱負荷の移動等に伴う空調システムのレイアウト変更(局所冷却装置の移動/増設等)に柔軟に対応できず、局所冷却装置の移動や増設時には、冷媒配管の新設或いは再配置といった大掛かりな工事が必要となる。
【0013】
これに関して、例えば冷媒配管を、基幹部分と枝管とに分けて、基幹部分の各所に枝管を接続可能な接続部を設けることも考えられる。この場合、局所冷却装置の増設時には、新たな局所冷却装置を枝管を接続した状態で用意し、この局所冷却装置を増設箇所まで運んだ後、その近辺の上記接続部に枝管の他端を接続することで、比較的容易に増設を行えるようになる。
【0014】
しかしながら、上記枝管を接続部に接続する構成であっても、既存の局所冷却装置の移動の際には、非常に手間が掛かることになる。冷媒は、冷媒配管内だけでなく局所冷却装置内にも存在するので、枝管を接続部から外すことで、冷媒配管の接続部から冷媒が漏れたり、局所冷却装置に残留している冷媒が漏れる可能性がある。この為、枝管を接続部から外す際に冷媒が漏れないようにする為に、一旦、当該空調システム全体において冷媒を抜かなければならない。これは、非常に手間が掛かるばかりでなく、一時的にでも局所冷却装置を停止するので空調機室の運用までも停止する恐れがある。
【0015】
また、仮に20個のラックから成るラック列に対して最大で10台の局所冷却装置を設置する必要があるとした場合、これら各局所冷却装置をどのラック上に設置するかは分からないのであるから、全てのラックに対応して上記接続部を設ける必要があり、従って20個の接続部を予め設けておき、そのうちの最大10個の接続部に各局所冷却装置を接続することになる。この様に、余分な接続部を設ける必要が生じるという問題もある。
【0016】
本発明の課題は、複数の局所冷却装置に共通の冷媒配管によって冷媒を供給する構成の局所空調システムにおいて、局所冷却装置の移動や増設を容易に行えるようにする電算機室空調システム、その局所冷却装置の設置/移動方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の電算機室空調システムは、電算機室内の各所に設けられる複数の局所冷却装置と、該複数の局所冷却装置に対して冷媒配管を介して冷媒を供給/回収する冷熱源ユニットとを有する電算機室空調システムであって、前記冷媒配管上に複数のジョイント部を備える配管ヘッダーを分散配置し、前記各局所冷却装置と前記配管ヘッダーのジョイント部との間を、フレキシブル配管によって接続した構成とする。
【0018】
そして、例えば、前記フレキシブル配管は余長を持つように設置される。
上記構成の電算機室空調システムにおける局所冷却装置の設置/移動方法は、任意の前記局所冷却装置を任意の場所に設置する際に、前記フレキシブル配管をその一端を該局所冷却装置に接続すると共にその他端を該設置場所近傍にある前記配管ヘッダーの任意の前記ジョイント部に接続し、且つ、該フレキシブル配管を余長を持つように設置し、前記設置済みの局所冷却装置を任意の他の場所に移動する際には、前記フレキシブル配管を前記配管ヘッダーのジョイント部と該局所冷却装置の両方に接続した状態のまま、該局所冷却装置を移動させて設置するものである。
【0019】
任意の場所に局所冷却装置を新規設置/増設する際には、この場所近傍の配管ヘッダーの任意のジョイント部に、フレキシブル配管を接続すればよい。また、その際にフレキシブル配管を余長を持つように設置(例えば“U字配管”等)しておくことで、後にこの局所冷却装置を移動する際に、フレキシブル配管を接続したままの状態で移動させることができ、容易に移動させることができ且つ冷媒が漏れる心配はない。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電算機室空調システム、その局所冷却装置の設置/移動方法等によれば、複数の局所冷却装置に共通の冷媒配管によって冷媒を供給する構成の局所空調システムにおいて、局所冷却装置の移動や増設を容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本例の局所空調システムの構成例である。
【図2】(a)、(b)は、配管ヘッダーの外観図である。
【図3】従来の一般的な局所空調システムの構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本例の局所空調システムの構成例である。
図1において、図3に示す従来構成と略同様の構成要素については同一符号を付してあり、その説明は省略または簡略化するものとする。
【0023】
図1においても、上記図3と同様、データセンタルーム5内(部屋2内)には、サーバ装置等の情報処理機器等を上下方向に搭載したラック6のラック列が設置されている。一般的には複数列のラック列が存在する。このラック列に対応して、複数の局所冷却装置13が任意のラック上方に設置されている。
【0024】
これら複数の局所冷却装置13は、例えばラック列間に形成される空間部を冷却するために、任意の各ラックの上方に設置される。この空間部の空気(冷気)が、近接するラック内に流入して、収容されている電算機(サーバ装置等)を冷却することになる。局所冷却装置13には、不図示の蒸発器や送風機等を備えられ、蒸発器には冷媒が供給され、蒸発器によって空気が冷却されて、この冷気が送風機によって上記空間部に送り込まれる。
【0025】
局所冷却装置13は、例えばサーバ装置等の台数が多い場合やフル稼動の状態等であることによって局所的に発熱密度が高いエリアがある場合に、このエリアに対して設置されるものであり、既に述べたように、移動や増設が必要となる場合が生じる。
【0026】
そして、上記図3と同様、これら複数の局所冷却装置13に対して1台の冷熱源ユニット7が機械室4等に設けられており、複数の局所冷却装置13に共通の冷媒配管(冷媒往路配管11、冷媒復路配管12)を介して、冷媒の供給/回収が行われる。冷媒配管11,12は、例えば天井裏3等を介して設置される。
【0027】
図3で説明したように、冷熱源ユニット7は、凝縮器8、冷媒圧送ユニット9等を有し、冷媒復路配管12を介して各局所冷却装置13から回収した冷媒を、凝縮器8で冷水10と熱交換した後(凝縮液とする)、冷媒圧送ユニット9によって冷媒往路配管11へ圧送することで、冷媒を各局所冷却装置13に供給する。尚、特に図示しないが、凝縮器8と冷媒圧送ユニット9の間に、冷媒を貯留する受液器を設けるようにしてもよい。
【0028】
ここで、図1の構成では、これら冷媒配管11,12の途中に、1または複数の配管ヘッダー16が設けられている。配管ヘッダー16自体は、既存の構成であり(単に“ヘッダー”等と呼ばれている)、主に基幹配管に対して複数の枝管を接続する為に用いられるものであり、各種市販品が存在する。
【0029】
よって、特に詳細には説明しないが、例えば図2(a)、(b)に示すような外観構造を有しており、基幹配管(本例では冷媒往路配管11や冷媒復路配管12)に接続する為の基幹接続部21,21’と、複数の枝管を接続する為の複数のジョイント部22,22’(枝管接続部)等を有する構成となっている。尚、符号21,22はバルブ無し、符号21’、22’はバルブ付の構成であるが、以下、特に区別せずに符号21,22を用いて記すものとする。
【0030】
そして、本例では、これら各ジョイント部22にはフレキシブル配管17が着脱可能となっている。尚、この着脱可能とする構成については、既存技術で実現でき、特に説明しないが、通常、後述する“フレキシブルチューブ”はその両端に管継手が設けられているものである。
【0031】
フレキシブル配管17は、その一端が上記配管ヘッダー16の上記ジョイント部22に着脱可能であり、その他端は局所冷却装置13(その蒸発器等)に接続されている(着脱可能としてもよい)。フレキシブル配管17自体は、既存の構成であり、市販品が存在する。よって、特に詳細には説明しないが、フレキシブル配管17は、例えば、“フレキシブルチューブ”等と呼ばれる柔軟で自由自在に曲げることができる(屈曲性のある)パイプである。また、上記の通り、通常、その両端に管継手が設けられている。フレキシブル配管17には途中に制御弁15が設けられていてもよい。特に図示/説明しないが、この制御弁15は不図示のコントローラによって開閉制御される。
【0032】
尚、“フレキシブルチューブ”は、典型的な例としては、薄肉の金属製(例えばステンレス製)のパイプに波型の絞り加工を施した、自由に曲げることができるチューブが知られているが、勿論、この様な例に限るものではなく、材質や加工方法を特に限定するものではない(但し、当然、冷媒配管として用いることができるものである)。
【0033】
本手法では、冷媒配管11,12上に配管ヘッダー16を分散配置すると共に、配管ヘッダー16と局所冷却装置13(その蒸発器等)との間を、フレキシブル配管17によって接続する構成としている。例えば一例としては、各局所冷却装置13には上記フレキシブル配管17が接続されており、任意の新規の局所冷却装置13を任意の位置に新規設置する際に、当該設置場所近辺の配管ヘッダー16の任意の上記ジョイント部22に、当該フレキシブル配管17の一端を接続する。但し、その際、フレキシブル配管17の設置は余長を持つように行うことが望ましい。
【0034】
余長を持つように設置するとは、例えば“U字配管”(配管をU字状に設置する)等とすることである。“U字配管”によって垂直/水平何れの方向へも大きな移動量を確保できることが知られている。“U字配管”は余長を持つように設置する一例であり、この例に限らないが、後に接続したままの状態で局所冷却装置13を移動可能とする為に、フレキシブル配管17をある程度曲げた状態で設置することが基本となる(後に配管を伸ばす為の余裕を持たせておく)。
【0035】
この様に、新規設置の際にフレキシブル配管17を余長を持つように設置しておくことで、後に局所冷却装置13を移動させる際に、フレキシブル配管17の一端を配管ヘッダー16のジョイント部22に接続したままでも(他端は局所冷却装置13に接続したままである)、局所冷却装置13を移動可能とすることができる。
【0036】
よって、任意の場所に設置済みの局所冷却装置13を任意の他の場所に移動する際には、フレキシブル配管17を配管ヘッダー16のジョイント部22と当該局所冷却装置13の両方に接続した状態のまま、当該局所冷却装置13を任意の移動先に移動させて設置することになる。よって、冷媒配管の新設或いは再配置といった大掛かりな工事を行わなくてもよく、あるいは冷媒を一旦全て抜き取るような大掛かりな作業を行わなくても冷媒が漏れる心配なく、しかも移動させる局所冷却装置を除いたシステム全体の冷却機能を維持しつつ、局所冷却装置13の移動作業を容易に行えるようになる。
【0037】
また、従来では、仮に20個のラックから成るラック列に対して最大で10台の局所冷却装置13を設置する必要があるとした場合、これら各局所冷却装置13をどのラック上に設置するかは分からないのであるから、全てのラックに対応して上記接続部を設ける必要があり、従って20個の接続部を予め設けておき、そのうちの最大10個の接続部に各局所冷却装置13を接続することになる。
【0038】
これに対して本例では、上記フレキシブル配管17と配管ヘッダー16を用いる構成であるので、例えば上記の例では配管ヘッダー16のジョイント部22は10個だけ設けておけば済むことになる。つまり、本構成では位置による制約が無くなるので、接続部を余分に設けておく必要がなくなることになる。
【0039】

上記のように、局所冷却装置13近傍に敷設された冷媒配管11,12に配管ヘッダー16を分散配置し、配管ヘッダー16とその近傍にある局所冷却装置13との間を屈曲性のあるフレキシブル配管17を介してそれぞれ連通させた構成とすることで、局所冷却装置13の移動や増設に対して容易に対応可能となる。
【符号の説明】
【0040】
2 部屋
3 天井裏
4 機械室
5 データセンタルーム
6 ラック
7 冷熱源ユニット
8 凝縮器
9 冷媒圧送ユニット
10 冷水
11 冷媒往路配管
12 冷媒復路配管
13 局所冷却装置
15 制御弁
16 配管ヘッダー
17 フレキシブル配管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電算機室内の各所に設けられる複数の局所冷却装置と、該複数の局所冷却装置に対して冷媒配管を介して冷媒を供給/回収する冷熱源ユニットとを有する電算機室空調システムであって、
前記冷媒配管上に複数のジョイント部を備える配管ヘッダーを分散配置し、
前記各局所冷却装置と前記配管ヘッダーのジョイント部との間を、フレキシブル配管によって接続したことを特徴とする電算機室空調システム。
【請求項2】
前記フレキシブル配管は余長を持つように設置されることを特徴とする請求項1記載の電算機室空調システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の電算機室空調システムにおける局所冷却装置の設置/移動方法であって、
任意の前記局所冷却装置を任意の場所に設置する際に、前記フレキシブル配管をその一端を該局所冷却装置に接続すると共にその他端を該設置場所近傍にある前記配管ヘッダーの任意の前記ジョイント部に接続し、且つ、該フレキシブル配管を冗長化設置し、
前記設置済みの局所冷却装置を任意の他の場所に移動する際には、前記フレキシブル配管を前記配管ヘッダーのジョイント部と該局所冷却装置の両方に接続した状態のまま、該局所冷却装置を移動させて設置することを特徴とする局所冷却装置の設置/移動方法。


【図2】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−257117(P2011−257117A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134509(P2010−134509)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】