説明

電線くず高品位回収装置

【課題】粉砕物に含まれるミスカット材を効率よく分離回収できるようにして銅材等の回収率を向上させた電線くず高品位回収装置を提供する。
【解決手段】選別台10上の下方部分に、選別台の幅方向に亘って選別台上を流れる水の一部を堰き止める堰11を設けると、粉砕物に含まれるミスカット材43は、堰により形成される水のプール12の上端付近の領域に集まるので、選別台上に選別台上のミスカット材が集まる上記領域に一端が開口した水が流れないミスカット材回収通路を形成する仕切板13、14を設け、このミスカット材回収通路を用いてミスカット材を分離回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線くずを粉砕してその粉砕物に含まれる銅材等をその比重差を利用して回収する電線くず高品位回収装置に関し、特に、高純度の銅材等を高回収率で回収できるようにした電線くず高品位回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物等に含まれる電線くずが利用可能な有効資源として注目されている。電線くずから銅材を回収するには、一般に、電線くずを粉砕機で細かく粉砕し、その粉砕物に含まれる銅材をその比重差を利用して回収する乾式若しくは湿式の銅回収装置が知られている。
【0003】
ここで、湿式の銅回収装置は、銅材を高品位、高回収率で回収することができることから有望な銅回収装置として注目されている。
【0004】
この湿式の銅回収装置としては、特許文献1に記載されているように、斜めに傾斜した選別台の上面に水を流すとともに、この選別台に斜め上方に向かう振動を与え、この選別台上に粉砕した電線くずを投入することにより、粉砕物に含まれる銅材と樹脂くずとの比重差を利用して粉砕物から樹脂くずを分離して、銅材を回収するように構成されている。
【0005】
投入された粉砕物に含まれる樹脂くずは、水より比重が小さいので、水に浮かび、水流により選別台の下方に移動する。これに対して、投入された粉砕物に含まれる銅材は、水より比重が大きいので、沈降して選別台の上面に接し、この状態で選別台に与えられた振動が作用して、銅材を選別台の上方に移動する。この現象を利用して電線くずの粉砕物から樹脂くずを分離して銅材を回収する。
【0006】
ところで、上記粉砕物には、十分に粉砕されていず、銅材等に樹脂くずが一部付着した粉砕物(以下、ミスカット材という)が含まれており、上記銅回収装置では、このミスカット材をどのようにして分離回収するかが大きな問題となっている。
【0007】
すなわち、上記ミスカット材には、銅材が含まれているので、このミスカット材に含まれる銅等を回収しないと、電線くずからの銅材等の回収率をさらに上げることはできないという問題があり、また、上記ミスカット材が回収した銅材に混合してしまうと、回収した銅材の純度が低下してしまうという問題がある。
【0008】
そこで、特許文献1に記載された電線くずの銅回収装置においては、選別台2の下流側の端部に、選別台2の台面の下方に凹む受け槽26を設け、この受け槽26の前方壁に、受け槽26の上層の浮遊物を排出する排出口を設けると共に、この受け槽26の側方に、上記選別台2と一体に振動する第二選別台27を上記選別台2に沿って斜めに設け、上記受け槽26の底部に堆積する粉砕物を第二選別台27の台面に連絡通路28を通って供給し、この第二選別台27の台面にシャワー装置29により水を流すことによって、浮遊物をさらに分離してミスカット材を回収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−136427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記特許文献1に記載された構成においては、樹脂くずの分離率は向上しても、ミスカット材を効率よく回収することはできない。このために、特許文献1に記載された構成においては、銅材の回収率を高くすることができないという問題があった。
【0011】
そこで、本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、粉砕物に含まれるミスカット材を効率よく分離回収できるようにして銅材等の回収率を向上させた電線くず高品位回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明は、傾斜した選別台上にシャワー装置から水を流すとともに、前記選別台に斜め上方に向かう振動を与え、粉砕した電線くずを前記選別台上に投入することにより、該粉砕物に含まれる銅材等を前記選別台上の上方に移動させて回収し、該粉砕物に含まれる樹脂くずを前記選別台上の下方に移動させて分離する電線くず高品位回収装置において、前記選別台上の下方部分に、該選別台の幅方向に亘って該選別台上を流れる水の一部を堰き止める堰を設けるとともに、前記選別台上の少なくとも一側部分に、前記堰により形成される水のプールの上端付近で一端が開口した水を流していないミスカット材回収通路を形成する仕切板を設け、前記粉砕物に含まれる銅材等に樹脂くずが一部付着したミスカット材を、前記ミスカット材回収通路を介して分離回収することを特徴とする。
【0013】
すなわち、本願発明においては、粉砕物に含まれるミスカット材は、その比重が粉砕物に含まれる銅材等の比重と粉砕物に含まれる樹脂くずの比重との間にあるので、選別台上に、該選別台の幅方向に亘って該選別台上を流れる水の一部を堰き止める堰を設けると、このミスカット材は、堰により形成される水のプールの上端付近の領域に集まるという現象に着目して、選別台上のミスカット材が集まる領域に一端が開口した水が流れないミスカット材回収通路を形成する仕切板を設け、このミスカット材回収通路を用いてミスカット材を分離回収するようにしている。
【0014】
ここで、前記仕切板は、前記選別台上の一側部側に形成するようにしてもよいが、効率を考えると選別台上の両側部側に形成するのが好ましい。
【0015】
また、前記仕切板は、その端部が前記選別台の幅方向中央部側に向かって屈曲しているように構成することができる。このような構成によると上記仕切板の屈曲部で水位が上昇するので、ミスカット材を効率よくミスカット材回収通路に導くことが可能になる。
【0016】
また、ミスカット材回収通路には水が流れていないので、ミスカット材回収通路に導かれたミスカット材は、選別台の斜め上方に向かう振動によりミスカット材回収通路上を上方に移動する。この移動に伴って、ミスカット材からは水分が除かれるので、ミスカット材の回収口は、ミスカット材回収通路の上部に設けるのが好ましい。
【0017】
ただし、ミスカット材から水分を除く必要がない場合は、ミスカット材の回収口を、ミスカット材回収通路の下部付近に設けてもよい。
【0018】
また、前記堰は、前記選別台の幅方向に亘って所定距離離間して複数列設けられるように構成することができる。このような構成によると、堰と堰との間に未回収のミスカット材を堰と堰との間に沈殿させて回収することができる。
【0019】
また、前記シャワー装置は、前記ミスカット材とともに回収され、フィルタでろ過された水が注水される一辺が低く形成された受箱と、前記受箱の低く形成された一辺に設けられた所定の間隔の複数の仕切と、を具備し、前記受箱からオーバーフローした水を前記仕切の間から前記選別台上に流すように構成することができる。
【0020】
このような構成によると、受箱に注入された水に樹脂くずが混入していても、この樹脂くずは水に浮くので、シャワー装置で目詰まりして、均一な水流を得ることができなくなるという不都合は生じない。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、粉砕物に含まれるミスカット材は、堰により形成される水のプールの上端付近の領域に集まるという現象に着目して、選別台上に選別台上の上記ミスカット材が集まる上記領域に一端が開口した水が流れないミスカット材回収通路を形成する仕切板を設け、このミスカット材回収通路を用いてミスカット材を分離回収するようにしたので、ミスカット材を効率よく分離回収でき、これにより銅材等の回収率を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明に係る電線くず高品位回収装置の実施例1を示す概略側面図である。
【図2】図2は、図1に示した実施例1の電線くず高品位回収装置の上面図である。
【図3】図3は、図1に示した実施例1の電線くず高品位回収装置における水の循環処理を説明するための図である。
【図4】図4は、図1に示した実施例1の電線くず高品位回収装置で用いるシャワー装置の一例を説明する図である。
【図5】図5は、本発明に係る電線くず高品位回収装置の実施例2を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための実施例について、願書に添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明に係る電線くず高品位回収装置の実施例1を示す概略側面図を示し、図2は、図1に示した実施例1の電線くず高品位回収装置の上面図を示す。
【0025】
なお、本発明の電線くず高品位回収装置の回収対象である銅材等には、銅、アルミニューム、金等の配線くずに含まれる各種金属を含むが、以下に示す実施例においては、本発明の電線くず高品位回収装置の回収対象である銅材等が銅である場合について説明する。
【0026】
図1および図2において、この電線くず高品位回収装置100は、角度d傾いて配設される選別台10、この選別台10に斜め上方のX方向の振動を与える振動発生装置20、選別台10上に水を流すシャワー装置30、図示しない粉砕機で電線くずを粉砕した粉砕物を選別台10上に投入する粉砕物投入装置40、選別台10の下端から粉砕物に含まれる樹脂くず42を回収する樹脂くず回収ボックス50、選別台10の上端から粉砕物に含まれる銅材41を回収する銅材回収ボックス60、選別台10上に設けられた仕切板13、14により形成されるミスカット材回収通路15、16を介して分離したミスカット材43を回収するミスカット材回収ボックス70を具備して構成される。
【0027】
また、選別台10の下方部分には、該選別台の幅方向に亘って該選別台上を流れる水の一部を堰き止める堰11が設けられており、この堰11によって、選別台10上の下部一部に水のプール12が形成される。
【0028】
また、振動発生装置20は、例えば、偏心モータから構成され、X方向のリンク20aを介して選別台10の底面に設けられたリンク取付部10aに接続され、選別台10にX方向の振動を与える。
【0029】
また、樹脂くず回収ボックス50の下面にはフィルタ50aが設けられており、樹脂くず回収ボックス50の下面から回収した水を循環再利用するように構成されている。
【0030】
なお、この実施例1では、選別台10の角度dを5度に設定しているが、この角度dは、3度から10度の範囲で設定可能である。
【0031】
また、振動発生装置20により選別台10に与えられる振動方向Xは、この実施例1では45度に設定されており、また、その振幅は2〜3ミリになるように設定されている。また、堰11の高さは、この実施例1においては10〜15ミリに設定されている。
【0032】
粉砕物投入装置40から選別台10上に投入される粉砕物には、銅材41、樹脂くず42、ミスカット材43が含まれており、銅材41の比重は7.9、樹脂くず42の比重は0.9〜1.9の範囲、ミスカット材43の比重は、銅材41と樹脂くず42の比重の間にある。
【0033】
上記構成の電線くず高品位回収装置100において、シャワー装置30から選別台10上に水を流していない状態で、粉砕物投入装置40から粉砕物を選別台10上に投入すると、粉砕物に含まれる銅材41、樹脂くず42、ミスカット材43は、振動発生装置20により選別台10に与えられる振動により、小さなジャンプを繰り返しながら選別台10上を上方に移動する。
【0034】
さて、この電線くず高品位回収装置100においては、シャワー装置30により選別台10の上面に均一な水流(図2で矢印Yで示す)を生じさせる。この水流により粉砕物投入装置40から選別台10上に投入された銅材41、樹脂くず42、ミスカット材43を含む粉砕物は選別台10の下方に流され、堰11により形成されたプール12に至り、ここで洗浄される。
【0035】
ここで、銅材41は、その比重は水より大きいので、このプール12の底面に沈降して、選別台10の上面に接し、振動発生装置20により選別台10に与えられる振動により、小さなジャンプを繰り返しながら選別台10上を上方に移動する。図2の矢印Aは、この銅材41の移動方向を示す。
【0036】
この選別台10上を上方に移動した銅材41は、選別台10の上端で下方に落下し、銅材回収ボックス60に回収される。
【0037】
これに対して、樹脂くず42は、その比重が水より小さいので、このプール12でプールの上面に浮かび、水流により流されて選別台10上を下方に移動し、堰11を乗り越えて選別台10の下端に至る。図2の矢印Bは、この樹脂くず42の移動方向を示す。
【0038】
この選別台10上を下方に移動した樹脂くず42は、水と共に選別台10下端で下方に落下して樹脂くず回収ボックス50に回収される。
【0039】
一方、ミスカット材43は、プール12で沈降するが、その比重は、銅材41と樹脂くず42の比重の間にあるので、選別台10上を上方に移動する力と、水流で下方に流す力とがほぼ等しくなり、プール12の上端付近に留まり、このプール12の上端付近で増え続ける。
【0040】
この状態を放置すると、このミスカット材43は、選別台10上を上方に移動する力が大きくなり、いずれ上方に移動する。このミスカット材43が銅材41に混入してしまうと回収した銅材の品位が低下してしまうので、このミスカット材43を除去する必要がある。
【0041】
そこで、この実施例1では、選別台10上の両側部に選別台10の上端からプール12の上端付近に至る仕切板13、14を設け、仕切板13と仕切板14との間の長さLの領域は、シャワー装置30から水を流すが、仕切板13と仕切板14により仕切られた選別台10上の両側領域は水を流さないように構成して、仕切板13と仕切板14により仕切られた選別台10上の両側領域にミスカット材回収通路15、16を形成し、このミスカット材回収通路15、16を介して、プール12の上端付近に留まっているミスカット材43を、回収するように構成されている。
【0042】
なお、この実施例1においては、仕切板13、14のミスカット材回収通路15、16の開口部に対応する端部13a、14aは、選別台10の幅方向中央部側に向かって屈曲するように構成されている。
【0043】
その理由は、プール12の上端付近に留まっているミスカット材43を効率よく選別台10上の両側領域に形成されたミスカット材回収通路15、16に導くためである。
【0044】
すなわち、仕切板13、14の端部13a、14aを、選別台10の幅方向中央部側に向かって屈曲するように構成すると、この部分でシャワー装置30から流された水の水路は狭められるので、水位が上昇し、プール12の上端付近に留まっているミスカット材43を効率よく選別台10上の両側領域に形成されたミスカット材回収通路15、16に導くことができる。
【0045】
ミスカット材回収通路15、16に導かれたミスカット材43は、ミスカット材回収通路15、16に水が流されていないので、振動発生装置20により選別台10に与えられる振動により、小さなジャンプを繰り返しながらミスカット材回収通路15、16を矢印Cに示す方向に移動する。
【0046】
また、このミスカット材43は、ミスカット材回収通路15、16を上方に移動する間に、水切りがなされ、ミスカット材回収通路15、16上方の回収口15a、16aを通ってミスカット材回収ボックス70に回収される。
【0047】
なお、ミスカット材回収ボックス70に回収されたミスカット材43には、少量の銅材41および樹脂くず42が含まれるが、このミスカット材回収ボックス70に回収されたミスカット材43を、再び図示しない粉砕機で再粉砕して、粉砕物投入装置40から選別台10上に再投入することにより、銅材の再回収が可能になる。
【0048】
このように、この実施例1によれば、ミスカット材43に含まれる銅材も効率よく回収できるので、電線くずからの銅材の回収率をさらに向上させることができる。
【0049】
なお、上記実施例1では、選別台10上の両側部に仕切板13、14を設け、選別台10上の両側領域にミスカット材回収通路15、16を形成し、ミスカット材43を、このミスカット材回収通路15、16を介して回収するように構成したが、選別台10上の片側部にのみ、仕切板を設けることにより、選別台10上の片側領域にミスカット材回収通路を形成し、このミスカット材回収通路を介してミスカット材43を回収するように構成してもよい。
【0050】
また、この実施例1の電線くず高品位回収装置100においては、図3に示すように、樹脂くず回収ボックス50の下面に、フィルタ50aを設け、樹脂くず回収ボックス50の下面から回収した水をフィルタ50aを介してシャワー装置30に戻すことにより、選別台10上に流した水を再利用する循環方式を採用している。
【0051】
この循環方式を採用する場合、フィルタ50aで取り残した樹脂くずや飛散した樹脂くずの一部が水に混じり、この樹脂くずによりシャワー装置30で目詰まりを起こし、均一な水流を得ることができない場合がある。シャワー装置30で均一な水流を得ることができないと、選別台10上で、水流の隙間ができ、この部分で樹脂くず42が選別台10上を上方に移動し、これが銅材41に混入すると回収した銅材の品位が劣化する。
【0052】
そこで、この実施例1においては、シャワー装置30として、図4に示すようなオーバーフロー方式を採用する。
【0053】
図4に示すシャワー装置30においては、樹脂くず回収ボックス50の下面から回収した水を長さLの長方形の受箱30aに注入し、この受箱30aの一辺30bを低くして、ここから水をオーバーフローさせて選別台10上に流す。ここで、このオーバーフロー部には、所定の間隔S、例えば2cm間隔センチの複数の仕切30cが設けられている。
【0054】
このような構成によると、仕切30cの作用により、選別台10上に、シャワー状の均一な水を供給することができる。また、このとき、受箱30aに注入された水に樹脂くずが混入していても、この樹脂くずは水に浮くので、シャワー装置30で目詰まりして、均一な水流を得ることができなくなるという不都合は生じない。
【実施例2】
【0055】
図5に、本発明に係る電線くず高品位回収装置の実施例2を示す。図5は、本発明に係る電線くず高品位回収装置の実施例2の上面図を示している。
【0056】
図5に示す実施例2の電線くず高品位回収装置200は、ミスカット材回収通路15、16の回収口15a、16aをミスカット材回収通路15、16の下部付近に設けた点および選別台10の下方部分に設けた堰11の代わり2重の堰11a、11bを設けた点が図1乃至4で説明した実施例1と異なる。その他の構成は図1乃至4で説明した実施例1と同様である。なお、図5においては、説明の便宜上、実施例1と同一の機能を果たす箇所に関して実施例1で用いた符号と同じ符号を付する。
【0057】
この実施例2の電線くず高品位回収装置200は、図1乃至4で説明した実施例1と同様に、選別台10は、角度d、例えば5度傾いて配設され、選別台10には、図1に示した振動発生装置20により、斜め上方45度の角度で2〜3ミリの振幅の振動が与えられている。また、図1に示したシャワー装置30により選別台10の上面に均一な水流(図5で矢印Yで示す)を生じさせている。
【0058】
また、選別台10の下方部分に所定距離離間して2重の堰11a、11bが設けられ、堰11aにより選別台10上の下部一部に水のプール12aが形成され、堰11bによりプール12aの下方に水のプール12bが形成されている。
【0059】
また、選別台10上の両側部に選別台10の上端からプール12aの上端付近に至る仕切板13、14を設け、仕切板13と仕切板14との間の長さLの領域は、シャワー装置30から水を流すが、仕切板13と仕切板14により仕切られた選別台10上の両側領域は水を流さないように構成して、仕切板13と仕切板14により仕切られた選別台10上の両側領域にミスカット材回収通路15、16を形成している。
【0060】
このような構成の電線くず高品位回収装置200において、図1に示した粉砕物投入装置40から選別台10上に銅材41、樹脂くず42、ミスカット材43を含む粉砕物が投入されると、この粉砕物は、シャワー装置30からの水流により選別台10の下方に流され、堰11aにより形成されたプール12aに至り、ここで洗浄される。
【0061】
ここで、銅材41は、その比重は水より大きいので、このプール12aで沈降して、選別台10の上面に接し、振動発生装置20により選別台10に与えられる振動により、小さなジャンプを繰り返しながら選別台10上を上方に移動する。図5の矢印Aは、この銅材41の移動方向を示す。この選別台10上を上方に移動した銅材41は、選別台10の上端で下方に落下し、銅材回収ボックス60に回収される。
【0062】
これに対して、樹脂くず42は、その比重が水より小さいので、このプール12aでプールの上面に浮かび、水流により流されて選別台10上を下方に移動し、堰11a、11bを乗り越えて選別台10の下端に至る。図5の矢印Bは、この樹脂くず42の移動方向を示す。この選別台10上を下方に移動した樹脂くず42は、水と共に選別台10の下端で下方に落下して樹脂くず回収ボックス50に回収される。
【0063】
一方、ミスカット材43は、プール12の上端付近に留まる。このミスカット材43は、ミスカット材回収通路15、16に導かれ、振動発生装置20により選別台10に与えられる振動により、小さなジャンプを繰り返しながらミスカット材回収通路15、16を上方に移動し、回収口15a、16aから矢印C方向に回収される。
【0064】
ここでは、ミスカット材回収通路15、16の長さが短いので、ミスカット材43の十分な水切りはなされない。
【0065】
なお、ミスカット材回収ボックス70に回収されたミスカット材43には、少量の銅材41および樹脂くず42が含まれ、また、堰11aの上流側および堰11aと堰11bの間には、少量のミスカット材43が沈殿する。この堰11aの上流側および堰11aと堰11bの間に沈殿されたミスカット材43は回収口15a、16aから回収したミスカット材43と共に、再び図示しない粉砕機で再粉砕して、粉砕物投入装置40から選別台10上に再投入する。
【0066】
このように、この実施例2によれば、堰11aの上流側および堰11aと堰11bの間に沈殿されたミスカット材43も含めて、ミスカット材43に含まれる銅材の回収が可能になるので、電線くずからの銅材の回収率を更に向上させることができる。
【0067】
なお、上記実施例2においても、選別台10上の片方の側部にのみ仕切板を設け、選別台10上の片側領域にミスカット材回収通路を形成することにより、ミスカット材43を、このミスカット材回収通路を介して回収するように構成してもよい。
【0068】
また、ミスカット材回収通路15、16の回収口15a、16aは、ミスカット材回収通路15、16の下部付近に設けたが、実施例1と同様にミスカット材回収通路15、16の上方に設けてもよい。
【0069】
なお、上記実施例においては、本発明の電線くず高品位回収装置の回収対象が銅材である場合について説明したが、回収対象が、アルミニューム、金等の配線くずに含まれるその他の金属である場合も同様に構成することができる。
【0070】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内であれば、当業者の通常の創作能力によって多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0071】
10…選別台
10a…リンク取付部
11…堰
11a…堰
11b…堰
12…プール
12a…プール
12b…プール
13…仕切板
14…仕切板
15…ミスカット材回収通路
15a…回収口
16…ミスカット材回収通路
16a…回収口
20…振動発生装置
20a…リンク
30…シャワー装置
30a…受箱
40…粉砕物投入装置
41…銅材
42…樹脂くず
43…ミスカット材
50…樹脂くず回収ボックス
50a…フィルタ
60…銅材回収ボックス
70…ミスカット材回収ボックス
100…電線くず高品位回収装置
200…電線くず高品位回収装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜した選別台上にシャワー装置から水を流すとともに、前記選別台に斜め上方に向かう振動を与え、粉砕した電線くずを前記選別台上に投入することにより、該粉砕物に含まれる銅材等を前記選別台上の上方に移動させて回収し、該粉砕物に含まれる樹脂くずを前記選別台上の下方に移動させて分離する電線くず高品位回収装置において、
前記選別台上の下方部分に、該選別台の幅方向に亘って該選別台上を流れる水の一部を堰き止める堰を設けるとともに、
前記選別台上の少なくとも一側部分に、前記堰により形成される水のプールの上端付近で一端が開口した水を流していないミスカット材回収通路を形成する仕切板を設け、
前記粉砕物に含まれる銅材等に樹脂くずが一部付着したミスカット材を、前記ミスカット材回収通路を介して分離回収することを特徴とする電線くず高品位回収装置。
【請求項2】
前記仕切板は、前記選別台上の両側部分に設けられ、
前記ミスカット材回収通路は、前記選別台上の両側部分に形成されることを特徴とする請求項1に記載の電線くず高品位回収装置。
【請求項3】
前記仕切板は、前記ミスカット材回収通路の開口部に対応する端部が前記選別台の幅方向中央部側に向かって屈曲していることを特徴とする請求項1または2に記載の電線くず高品位回収装置。
【請求項4】
前記ミスカット材は、前記ミスカット材回収通路上を上方に移動し、該ミスカット材回収通路の上部に設けられた回収口を通って回収されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電線くず高品位回収装置。
【請求項5】
前記ミスカット材回収通路を介して分離されたミスカット材は、該ミスカット材回収通路の下部付近に設けられた回収口を通って回収されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電線くず高品位回収装置。
【請求項6】
前記堰は、前記選別台の幅方向に亘って所定距離離間して複数列設けられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電線くず高品位回収装置。
【請求項7】
前記シャワー装置は、
前記ミスカット材とともに回収され、フィルタでろ過された水が注水される一辺が低く形成された受箱と、
前記受箱の低く形成された一辺に設けられた所定の間隔の複数の仕切と、
を具備し、前記受箱からオーバーフローした水を前記仕切の間から前記選別台上に流すことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電線くず高品位回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−22522(P2013−22522A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160044(P2011−160044)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【特許番号】特許第4823392号(P4823392)
【特許公報発行日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(595123678)三立機械工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】