説明

電線の表面欠陥検出装置

【課題】 電線の表面に点在する表面欠陥による凸部を装置構成が複雑でなく、設置が簡単で、低コストで検出することが可能な電線の表面欠陥検出装置を提供する。
【解決手段】 内部に中空部を有する筒状体とその端面に設けられた検出導体に被検出対象である電線を貫通移動させる。検出導体は、電線の表面に点在する表面欠陥による凸部と接触可能な位置に配置されており、電線が貫通移動する際、電線の表面欠陥による凸部が存在した場合には、その凸部が検出導体と接触する。
検出導体には外部への接点出力と電源を持つ検出出力部が接続されておりその一方は接地されている。被検出対象の電線の端も接地されており、電線の表面欠陥による凸部が検出導体と接触した場合に、閉ループが構成され、検出出力部から外部に所定の出力が送出することにより電線の表面欠陥による凸部の検出が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の製造、敷設等において、電線を長手方向に移動させ、連続してその電線の表面の凸部の表面欠陥を検出する検出装置に関する。
ここで電線とは、送電線やトロリー線などの裸線、非複線、ケーブルなどの種々の電力線、通信線を含む。
【背景技術】
【0002】
電線の表面の外観検査方法としては、例えば電線の製造工程において、外観検査にカメラ等の光学装置を用いた外観検査装置が特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−249081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光学装置を用いた外観検査装置では、光量補正用カメラ、照明部、ハーフミラー、画像処理用演算装置等の各装置が必要となり、外観検査装置の構成が複雑で大がかりになるという問題があった。また、画像処理を適切に行うため、観察する電線の位置に合わせて各々の装置を適切に配置する必要があり、測定時の光量も測定前に事前に調整しておく必要があった。
【0005】
更に、カメラからの画像データを画像処理して外観判定を行うため、高額な画像処理用演算装置が必要であった。
【0006】
そこで、本発明の解決するための課題は、装置構成が複雑でなく、設置調整が簡単で、低コストな電線の表面欠陥検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために第1発明に係る電線の表面欠陥検出装置は、被検出対象となる電線が貫通移動可能な中空部を有する筒状体と該筒状体の少なくとも一方の端面に設けられた検出導体と、検出出力部とを有する、電線の表面欠陥検出装置であって、前記検出導体は、前記筒状体の中空部を貫通移動する電線の表面に点在する表面欠陥による凸部と接触可能な位置に配置され、前記検出出力部は、前記検出導体及び前記電線と電気的に接続され、該検出導体と該電線とが接触した場合に所定出力を送出することを特徴とする。
【0008】
また、第2発明に係る電線の表面欠陥検出装置は、第1発明において、前記所定出力は前記電線の移動を止めるための電気的出力を含むことを特徴とする。
【0009】
また、第3発明に係る電線の表面欠陥検出装置は、第1又は第2発明において、前記筒状体の中空部は、筒状体の中心部近傍は前記電線の径より略大きく、かつ端面部に向かってテーパ状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、第4発明に係る電線の表面欠陥検出装置は、第1乃至第3発明において、前記筒状体は、前記電線の移動方向に位置決めされ、直交する方向には位置決めされていないことを特徴とする。
【0011】
第1発明では、
電線の表面欠陥検出装置は被検出対象となる電線が貫通移動可能な中空部を有する筒状体と該筒状体の少なくとも一方の端面に設けられた検出導体と、検出出力部とを有する。被検出対象となる電線は前記筒状体の中空部を貫通移動し、前記検出導体は、貫通移動する電線の表面に点在する表面欠陥による凸部と接触可能な位置に配置される。
ここで電線とは、送電線やトロリー線などの裸線、非複線、ケーブルなどの種々の電力線、通信線を含むが、特に表面に導電性材料が露出している電線に有効である。
また、ここで凸部とは例えば、直径0.2mm程度で長さ100mm程度の電線表面欠陥でバリ等によるヒゲ状の導電性突起物である。
前記検出導体は前記欠陥の大きさに合わせるように位置決め配置され、確実に接触するようにしてある。
そして前記検出出力部は、検出導体及び前記電線と電気的に接続され、該検出導体と該電線とが接触した場合に所定出力を送出する。
【0012】
本第1発明は筒状体の中を電線を貫通移動させることにより、機構が簡便となっている。更に筒状体の端面に検出導体を好適な位置に配置していることにより確実に電線の表面欠陥による凸部を検出可能となっている。また、筒状体は特別な固定方法も行っていないため、設置が簡単で電線の移動を制限することなく、低コストで装置の実現が可能となっている。
【0013】
第2発明では、第1発明において、前記所定出力は前記電線の移動を止めるための電気的出力を含むことを特徴とする。これにより、移動する電線の表面欠陥が検出された場合に、該電線の移動装置を停止させることが可能となり、欠陥部分を次工程に流すことを防ぐことができる。
ここで電気的出力とは、リレー出力等の電気接点、電圧出力、電流出力などのいずれでも良い。
【0014】
第3発明では、第1又は第2発明において、表面欠陥検出装置の前記筒状体の中空部は、筒状体の中心部近傍は前記電線の径より略大きく、かつ端面部に向かってテーパ状に形成されている。これにより前記筒状体を貫通移動する電線は、筒状体の中心部を移動する。したがって該電線は、前記筒状体の端部に設けられている検出導体とは、表面欠陥がない場合は接触せず、電線の表面に点在する表面欠陥による凸部のみが検出導体と接触することになり、表面欠陥を精度よく検出することが可能となる。
【0015】
第4発明では、第1乃至第3発明において、前記筒状体は、前記電線の移動方向に位置決めされ、直交する方向には位置決めされていない。ここでの位置決めとは前記筒状体の固定状態のことであり、該筒状体は、電線の移動方向(長手方向)には電線の移動と共に移動方向に追従しない程度に柔軟性を持って簡便に固定されている。一方、直交方向には固定されていない。
これにより、筒状体は移動する電線の上下左右の振れに対して追従することが可能となり、複雑な設置固定方法を採る必要がない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前記のように、装置構成が複雑でなく、設置が簡単であり、接触式で電線の表面に点在する表面欠陥による凸部を確実に検出可能な、低コストの電線の表面欠陥検出装置の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明の実施の形態にかかる電線の表面欠陥検出装置の構成を示す模式図である。本実施の形態では電線4が束ねられた繰り出し部42から、被検出対象となる電線4が巻き取りドラム5に巻き取られており、その中間に該電線が貫通移動可能な中空部を有する筒状体1とその筒状体の一方の端面に設けられた検出導体2とが配置されている。
該筒状体は、弾性力のあるロープ51により柔軟性を持って固定されている。ロープの他端はアンカー52により固定されている。
検出導体は、配線が接続されており、検出出力部3と電気的に接続されている。また、検出出力部からは接点信号出力線31が巻き取りドラム5の駆動部に接続されている。
また、前記検出出力部3と前記被検出対象の電線4は各々接地されている。
【0018】
図2は筒状体1及び検出導体2とで、被検出対象の電線の表面に点在する表面欠陥による凸部を検出する仕組みを示した図であり、図2(a)は基本構造を示した模式図、図2(b)は実際構成の模式図である。
以下、図2(a)により、表面欠陥による凸部の検出の仕組みを説明する。
被検出対象の電線は筒状体1の中空部を貫通移動する。該電線の表面に、欠陥による凸部41が存在した場合には、その凸部が筒状体を通過する際に、筒状体の端面に設けられた検出導体2と接触する。
筒状体1の中空部の中心部近傍は前記電線の径より略大きくなしてあり、該電線はその中を滑りながら貫通移動していく。中空部は筒状体の端面部に向かってテーパ状に形成されている。この構造により、該電線が貫通移動する際の振動による検出導体との誤接触を防ぐことが可能となっている。
図2(b)に示す実際構成では、筒状体1及び検出導体2は半割構造になっており、電線の挿入性がよく、電線を挟み込んだ後に、固定金具11により半割構造が開かないようになっている。
筒状体1の内部は電線が接触しながら進むため、摩耗しにくく、すべりのよいナイロンを使用しているが、対摩耗性があり、すべりのよい素材ならば、ナイロンに限定されない。また内部のテーパは電線の挿入側の片方向だけにあればよい。検出導体は、例えば銅のような導電性のよい金属を用いる。
【0019】
図3は本発明に係る検出出力部の電気的な等価回路の一例を示した図である。本図では検出出力部だけでなく、その他の構成要素についても電気的な等価回路として表している。
検出出力部3については内部の接点機構32にリレーを用いているが半導体スイッチ等でもよい。また、駆動電源34として交流電源を用いているが直流電源やバッテリー等を用いてももちろんよい。駆動電源に安全のため直列に保護抵抗33が挿入されているが、別の手段で安全機構を実現してももちろんよい。
【0020】
以下、電線の表面欠陥による凸部の電気的な検出の仕組みを説明する。
該電線4の表面に点在する表面欠陥による凸部41は検出導体2と接触したときスイッチとして機能する。前記電線4と検出出力部3の一方は各々接地されている。凸部41と検出導体2が接触した時は電線と検出導体と検出出力部とで電気的に閉ループ回路が形成される。閉ループ回路が形成されることにより、検出出力部の駆動電源が動作し、検出出力部のリレー接点機構32がON状態となる。リレー接点機構がON状態になることにより、接点出力31が巻き取りドラムの駆動を止めるための出力として送出される。また、同時に検出出力部に取り付けられた表示ランプ35が点灯して、電線の表面欠陥の存在を作業者等に知らせることが可能となっている。
【0021】
前記接点出力31は、図1において巻き取りドラムの巻き取りを止めるための信号として機能し、電線の移動を止める。
【0022】
図2において前記筒状体1と前記電線4とは電線に直交する方向には位置決めされておらず、移動方向にのみ位置決めされている。
図1により前記位置決めの構成を示す。筒状体1はアンカーにより固定された弾性力のあるロープ51により、柔軟性を持って位置決め固定されている。
この構成により、筒状体は電線の移動方向(長手方向)には電線の移動と共に追従せず、一方直交方向である移動する電線の上下左右の振れに対しては追従することが可能となり、複雑な設置固定方法を採る必要がない。
これにより、筒状体は電線の移動による振動による振れに追従する動きをさせることができ、位置決め機構は複雑でなく、簡便な構成とすることが可能となっている。
【0023】
前記のように本発明においては、接触による表面欠陥の検知方法を採用しているため、画像処理等の複雑な構成は必要なく、低コストで電線の表面欠陥を検出することが可能となる。
【0024】
以上のように本実施の形態によれば、装置構成が複雑でなく、設置が簡単で、低コストな電線の表面欠陥検出装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る表面欠陥装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る表面欠陥装置において、被検出対象の電線の表面に点在する表面欠陥による凸部を検出する仕組みを示した図であり、図2(a)は基本構造を示した模式図、図2(b)は実際構成の模式図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る表面欠陥装置の電気的な等価回路の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0026】
1 筒状体
2 検出導体
3 検出出力部
31 電気的(接点)出力
32 リレー接点機構
33 保護抵抗
34 駆動電源
35 表示ランプ
4 電線
41 電線の表面に点在する表面欠陥による凸部
42 束ねた電線
5 巻き取りドラム
51 ロープ
52 アンカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出対象となる電線が貫通移動可能な中空部を有する筒状体と
該筒状体の少なくとも一方の端面に設けられた検出導体と、
検出出力部とを有する、電線の表面欠陥検出装置であって、
前記検出導体は、前記筒状体の中空部を貫通移動する電線の表面に点在する表面欠陥による凸部と接触可能な位置に配置され、
前記検出出力部は、前記検出導体及び前記電線と電気的に接続され、該検出導体と該電線とが接触した場合に所定出力を送出することを特徴とする電線の表面欠陥検出装置。
【請求項2】
前記所定出力は前記電線の移動を止めるための電気的出力を含むことを特徴とする請求項1に記載の電線の表面欠陥検出装置。
【請求項3】
前記筒状体の中空部は、筒状体の中心部近傍は前記電線の径より略大きく、かつ端面部に向かってテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電線の表面欠陥検出装置。
【請求項4】
前記筒状体は、前記電線の移動方向に位置決めされ、直交する方向には位置決めされていないことを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載の電線の表面欠陥検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−309763(P2007−309763A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138500(P2006−138500)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】