電線保持具
【課題】電線を保持する複数の部分のうち不具合が生じたもののみを交換可能な電線保持具を提供する。
【解決手段】電線保持具1は複数の保持部材10と連結部材20とを備えている。複数の保持部材10は互いに別体であって、各々が少なくとも1以上の電線を保持する。連結部材20は複数の保持部材10同士を着脱可能に連結する。
【解決手段】電線保持具1は複数の保持部材10と連結部材20とを備えている。複数の保持部材10は互いに別体であって、各々が少なくとも1以上の電線を保持する。連結部材20は複数の保持部材10同士を着脱可能に連結する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線保持具に関し、例えば車両用のワイヤーハーネスを製造する際に用いられる電線保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には車両用のワイヤーハーネスの製造方法が記載されている。ここでいうワイヤーハーネスとは、複数の電線を適宜に集合および分離させつつ、適切な箇所においてテープや結束具などを用いて結束することにより構成されるものである。特許文献1では、一旦、所定数の電線を束ねた電線群(仮結とも呼ばれる)を製造し、かかる電線群をさらに束ねてワイヤーハーネスを製造している。
【0003】
特許文献1では、かかる仮結を束ねるに際して、仮結を保持する仮結保持具(布線バーとも呼ばれる)が用いられる。特許文献1における仮結保持具の一例は弾性板部材を有している。この弾性板部材は例えば一方向に長い略長方形の形状を有している。弾性板部材の長辺の一方側には複数の切り込み部が形成されている。かかる複数の切り込み部は当該一方向に沿って並んで設けられている。これらの切り込み部にそれぞれ仮結が挿入されることによって、弾性板部材が仮結を挟んで保持する。
【0004】
なお、本発明に関連する技術として特許文献2が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−135199号公報
【特許文献2】実開平7−18322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば複数の切り込み部のうち一つのみに不具合が生じた場合、弾性板部材を交換することが考えられる。しかしながら、弾性板部材のうち一つの切り込み部のみに不具合が生じただけで仮結保持具の全体を交換することは、コストの上で望ましくない。
【0007】
そこで、本発明では、電線を保持する複数の部分のうち不具合が生じたもののみを交換可能な電線保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる電線保持具の第1の態様は、互いに別体であって、各々が少なくとも1以上の電線を保持する複数の保持部材と、前記複数の保持部材同士を着脱可能に連結する連結部材とを備える。
【0009】
本発明にかかる電線保持具の第2の態様は、第1の態様にかかる電線保持具であって、前記複数の保持部材の各々は、前記電線が挿入される切り込み部が形成されて前記切り込み部において前記電線を挟む弾性樹脂製の保持部分を有する。
【0010】
本発明にかかる電線保持具の第3の態様は、第2の態様にかかる電線保持具であって、前記切り込み部は前記保持部分の端面から延在し、前記保持部分は、前記切り込み部と交差しつつ前記保持部分を前記電線の延在方向に沿って貫通する複数のスリットを有する。
【0011】
本発明にかかる電線保持具の第4の態様は、第2又は第3の態様にかかる電線保持具であって、前記保持部分は互いに対面する一対の保持板部分を有し、前記切り込み部は前記一対の保持板部分に形成されて、前記一対の保持板部分の端面から延在し、前記一対の保持板部分は前記端面のうち少なくとも前記切り込み部が形成された部分において互いに連続する。
【0012】
本発明にかかる電線保持具の第5の態様は、第1から第4のいずれか一つの態様にかかる電線保持具であって、前記複数の保持部材は所定の第1方向に沿って並んで配置され、前記複数の保持部材の各々は、前記電線を保持する保持部分と、前記第1方向に略垂直な第2方向において前記保持部材と連結し前記連結部材に挿入される挿入部とを有し、前記連結部材は、前記複数の保持部材の前記挿入部が前記第1方向に沿って順に挿入される被挿入部を有し、前記挿入部が挿入された状態で前記第2方向において前記挿入部を挟む。
【0013】
本発明にかかる電線保持具の第6の態様は、第5の態様にかかる電線保持具であって、前記複数の保持部材の一組に対して前記第1方向で隣接し、前記複数の保持部材の各々の前記第1方向における移動を阻害する固定部材を更に有する。
【0014】
本発明にかかる電線保持具の第7の態様は、第1から第4のいずれか一つの態様にかかる電線保持具であって、前記複数の保持部材は所定の第1方向に沿って並んで配置され、前記連結部材は、前記第1方向に沿って間隙を空けて並んで配置される複数の柱部と、前記第1方向に略垂直な第2方向における前記複数の柱部の一端を連結する連結部とを有し、前記複数の保持部材の各々は、前記複数の柱部のうち隣り合う二者に着脱可能に固定される。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる電線保持具の第1の態様によれば、複数の保持部材同士が連結部材によって着脱可能に連結されるので、複数の保持部材の各々を分離することができる。したがって、複数の保持部材のうちのいずれかに不具合が生じた場合に、他の保持部材を取り外すことなく、不具合が生じた保持部材のみを交換することができる。
【0016】
本発明にかかる電線保持具の第2の態様によれば、弾性樹脂製の保持部分は電線との摩擦によって磨耗され、保持部分の交換の頻度が高い。よって、不具合が生じた保持部分のみを交換可能な本電線保持具の効果が特に高い。
【0017】
本発明にかかる電線保持具の第3の態様によれば、複数の電線が切り込み部に挿入されたときに電線が端面から溢れることを抑制でき、或いは電線の保持力を向上できる。
【0018】
本発明にかかる電線保持具の第4の態様によれば、保持部分による電線への力がより均等に作用する。よって電線の傾きを抑制できる。しかも電線に対して4箇所で保持するので保持力を向上できる。
【0019】
本発明にかかる電線保持具の第5の態様によれば、保持部材の挿入部を第1方向に沿って連結部材の被挿入部から抜き、不具合の生じた保持部材のみを交換して再び保持部材を連結部材に挿入することができる。しかも、第1方向における幅が互いに異なる複数の保持部材を採用すれば、保持する電線の間隔を適宜に調整することができる。
【0020】
本発明にかかる電線保持具の第6の態様によれば、複数の保持部分の第1方向における固定をより強固にできる。
【0021】
本発明にかかる電線保持具の第7の態様によれば、保持部材を個別に連結部材から取り外して交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】電線保持具の概念的な一例を示す斜視図である。
【図2】保持部材の概念的な一例を示す正面図である。
【図3】保持部材の概念的な一例を示す断面図である。
【図4】保持部材の概念的な一例を示す上面図である。
【図5】保持部材の概念的な一例を示す下面図である。
【図6】保持部材を連結部材に取り付ける様子を示す図である。
【図7】保持部材の概念的な一例を示す正面図である。
【図8】保持部材の概念的な一例を示す正面図である。
【図9】保持部材の概念的な一例を示す正面図である。
【図10】保持部材の概念的な一例を示す断面図である。
【図11】保持部分に作用する力を示す図である。
【図12】保持部分が電線を挟む様子を示す図である。
【図13】保持部分が電線を挟む様子を示す図である。
【図14】弾性樹脂材料の一例を示す平面図である。
【図15】電線保持具の概念的な一例を示す斜視図である。
【図16】連結部材の概念的な一例を示す斜視図である。
【図17】電線保持具の概念的な一例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1の実施の形態.
図1は電線保持具1の概念的な構成の一例を示す斜視図である。本電線保持具1は、例えば車両用のワイヤーハーネスを製造する際に用いられ、電線を保持するものである。より詳細には、本電線保持具1は複数の保持部材10と連結部材20とを備えている。複数の保持部材10は互いに別体であって、それぞれが少なくとも一つ以上の電線40を保持する。図1の例示では、複数の保持部材10は方向D1(以下、配置方向D1と呼ぶ)において並んで配置される。連結部材20は複数の保持部材10を着脱可能に固定する。
【0024】
なお、図1の例示では、一つの保持部材10によって保持される電線40が図示され、他の保持部材10において保持される電線40は省略されている。
【0025】
本電線保持具1によれば、複数の保持部材10が互いに別体であり、連結部材20によって着脱可能に連結されるので、複数の保持部材10を互いに分離させることができる。したがって複数の保持部材10のいずれかに不具合が生じた場合に、他の保持部材10を取り外すことなく、不具合の生じた保持部材10のみを交換することができる。
【0026】
以下、保持部材10および連結部材20の詳細な構造の一例について図2から図5も参照して説明する。図2は保持部材10の正面図、図3は図2のA−A断面における保持部材10の断面図、図4は保持部材10の上面図、図5は保持部材10の下面図をそれぞれ示している。なお図2では、図1において省略された保持部材10における意匠も表示されている。ただし、本願の本質とは関係がないので詳細な説明については行わない。また図3においては、保持部材10に対する連結部材20の位置を明確にすべく、連結部材20も二点差線で示されている。
【0027】
ここでは、まず電線40を保持する構造の一例について説明する。複数の保持部材10の各々は保持部分11を有している。保持部分11は例えば弾性樹脂材料(例えば有機高分子を主成分とした弾性材料)で形成される。図1,2の例示では、保持部分11は、配置方向D1と交差する方向D2(ここでは配置方向D1に略垂直な水平方向D2)から見て、略長方形の板状形状を有しており、長方形の一辺が配置方向D1に沿う姿勢で配置されている。
【0028】
また保持部分11には水平方向D2において自身を貫通する切り込み部11aが形成される。図1の例示では、切り込み部11aは、例えば方向D1,D2に略垂直な鉛直方向D3の一方側(例えば上方側)に位置する保持部分11の端面から、鉛直方向D3に沿って延在している。ただし、必ずしも鉛直方向D3に沿って延在する必要はなく、切り込み部11aは鉛直方向D3に傾斜して延在していても良い。かかる切り込み部11aに対して当該端面から電線40が挿入されることで、保持部分11は電線40を挟んで保持することができる。
【0029】
また図1,2の例示では、切り込み部11aにおける間隙の、配置方向D1における幅は、保持部分11の当該端面において最も広く、鉛直方向D3の他方側(例えば下方側)に向うに従って狭まって略一定となっている。保持部分11の端面側における切り込み部11aの間隙は電線40が挿入される入り口として機能するので、本形状によれば、電線40を切り込み部11aに挿入しやすい。
【0030】
また図1の例示するように、複数の保持部材10の各々は保持部分11を一対有していてもよい(図1,3参照)。一対の保持部分11は例えば互いに同一形状であって、水平方向D2において間隙を介して互いに対面している。かかる一対の保持部分11にそれぞれ属する切り込み部11aの両方に対して一本の電線40(或いは電線群、以下同様)を挿入することで、保持部材10はこの電線40を2箇所で保持することができる(図1参照)。これによって保持部材10の電線40に対する保持力を向上することができる。
【0031】
図1,3の例示では、一対の保持部分11は連結部分12によって互いに連結されている。連結部分12は、水平方向D2から見て、例えば、鉛直方向D3の一方側(例えば上方側)に開口するコ字状の形状を有している。すなわち、連結部分12は底面部12aと側面部12b,12cとを備えている(図3参照)。底面部12aは鉛直方向D3から見て例えば長方形の板形状を有しており、その長方形の1辺が配置方向D1に沿う姿勢で配置される。側面部12b,12cは配置方向D1から見て例えば長方形の板形状を有しており、その長方形の1辺が鉛直方向D3に沿う姿勢で配置される。側面部12b,12cは底面部12aの配置方向D1における両端部にそれぞれ配置され(図4参照)、互いに間隙を介して対面する。
【0032】
一対の保持部分11は底面部12aの水平方向D2における両端部にそれぞれ配置され、例えば側面部12b,12cにそれぞれ固定される。例えば側面部12b,12cの水平方向D2における端面にネジ孔が形成され、当該ネジ孔に対応して保持部分11には貫通孔11bが形成されている(図2参照)。ネジは貫通孔11bを水平方向D2に沿って貫通してネジ孔に螺合する。これによって、一対の保持部分11が側面部12b,12cに固定される。
【0033】
また図3に例示するように、連結部分12は突部12dを備えても良い。突部12dは底面部12aの水平方向D2における端部から鉛直方向D3に沿って保持部分11側へと突出している。一方、保持部分11には、突部12dを水平方向D2において挟む凹部11cが形成されている。これにより、保持部分11を連結部分12に取り付けるに際して、連結部分12に対する保持部分11の位置決めを容易にすることができる。なぜなら、保持部分11を突部12dに被せることで底面部12aに対する保持部分11の位置が決まるからである。
【0034】
次に、連結部材20の一例と、これによって着脱可能に連結される保持部材10の連結構造の一例について説明する。
【0035】
連結部材20には、保持部材10の一部が配置方向D1に沿って挿入される被挿入部21が形成されている(図1参照)。以下、詳細に説明する。連結部材20は配置方向D1に沿って延在している。連結部材20は、配置方向D1における一方側に向って開口し配置方向D1に沿って延在する空間(被挿入部21)を有している。当該空間には後述するように保持部材10の一部が挿入されることとなる。なお図1の例示では、当該空間は連結部材20を配置方向D1で貫通しているものの、配置方向D1の少なくとも一方側に開口していればよい。また当該空間は鉛直方向D3において一方側(たとえば上方側)に向っても開口する。かかる開口は、連結部材20の配置方向D1における一方側の端から配置方向D1に沿って延在する。
【0036】
図1,3の例示では、連結部材20は下面部20aと側面部20b,20cと上面部20dとを有しており、これらが上述の空間を形成する。下面部20aは、鉛直方向D3から見て、配置方向D1に長い長方形状の板状形状を有している。側面部20b,20cは下面部20aの水平方向D2における両端部に設けられ、水平方向D2から見て、配置方向D1に長い長方形の板状形状を有している。上面部20dは、下面部20aとは反対側において側面部20b,20cの一端に設けられている。上面部20dは鉛直方向D3から見て配置方向D1に長い長方形の板状形状を有しており、鉛直方向D3において下面部20aと対面する。また上面部20dは水平方向D2において互いに離間している。この離間によって、上記空間が鉛直方向D3の一方側に開口する。水平方向D2における離間幅は鉛直方向D3によらずに略等幅である。
【0037】
一方、保持部材10は、被挿入部21に挿入される挿入部13を備えている(特に図3参照)。挿入部13は保持部分11と連結される。ここでは挿入部13は底面部12aに設けられ、連結部分12を介して保持部分11と連結される。挿入部13は例えば幅狭部13aと幅広部13bとを備えている。幅狭部13aの水平方向D2における幅は、上面部20dの間の間隙の水平方向D2における幅よりも狭い。また幅狭部13aの鉛直方向D3における幅は上面部20dの鉛直方向D3における幅よりも広い。幅広部13bは幅狭部13aに対して保持部材10(或いは底面部12a)よりも反対側において幅狭部13aと連結し、その水平方向D2における幅は上面部20dの間の間隙の幅よりも広い。また配置方向D1から見た幅広部13bの輪郭は、配置方向D1から見た連結部材20の内面の輪郭に囲まれている。
【0038】
かかる電線保持具1によれば、図6に例示するように、保持部材10を配置方向D1に沿って移動させることで、幅広部13bを連結部材20(より詳細には被挿入部21)へと挿入することができる。このとき幅狭部13aは上面部20dの間を通過する。なお、図6では挿入部13の形状を簡略して直方体として示している。かかる挿入によって、幅狭部13aは上面部20dによって水平方向D2において挟まれ、幅広部13bは鉛直方向D3において下面部20aと上面部20dとによって挟まれる。したがって、保持部材10が連結部材20に対して水平方向D2および鉛直方向D3において固定される。保持部材10の連結部材20に対する配置方向D1における固定は例えば保持部材10と連結部材20との間の摩擦によって実現されてもよい。或いは更に、図1に例示するように、配置方向D1において、複数の保持部材10の一組の端に固定部材30を設けても良い。固定部材30は保持部材10と同様の連結構造(挿入部)を有し、連結部材20に挿入される。これによって、保持部材10の配置方向D1における移動が阻害され、以って保持部材10の配置方向D1における固定力を向上することができる。
【0039】
かかる電線保持具1によれば、固定部材30を取り外した後に、複数の保持部材10の各々を配置方向D1に沿って移動させることで連結部材20から順に取り外すことができる。したがって、不具合の生じた保持部材10のみを交換し、再び複数の保持部材10を配置方向D1に沿って順に連結部材20に挿入することができる。よって、不具合が生じた保持部材10のみを交換することができる。
【0040】
特に保持部分11が弾性樹脂材料(例えば有機高分子を主成分とする樹脂)で形成されていれば、例えば金属で形成される場合に比べて、保持部分11は電線40との摩擦によって磨耗しやすい。よって、保持部分11の交換要求が生じる頻度が比較的高く、本電線保持具1は特に有効である。
【0041】
なお、保持部分11が連結部分12と着脱可能に設けられていれば、保持部材10が連結部材20に挿入された状態で、保持部分11を連結部分12から取り外して交換してもよい。この場合、連結部分12と挿入部13とは連結部材20の一部として把握されても良い。
【0042】
また複数の保持部材10の各々が連結部材20に着脱可能に固定されるので、連結部材20に取り付けられる保持部材10の個数を調整できる。これによって、種々のワイヤーハーネスに対応した電線保持具1を容易に組み立てることができる。例えばワイヤーハーネスの製造に際して、電線を保持する箇所が10箇所必要である場合には、10個の保持部材10を連結部材20に取り付ければ良い。
【0043】
また図1から図6に例示する電線保持具1において、配置方向D1における幅が互いに異なる複数の保持部材10を採用してもよい。これによって、切り込み部11a同士の配置方向D1における間隔を適宜に調整することができる。例えば図1の例示では、複数の保持部材10は互いに同一形状を備えているので、切り込み部11aは配置方向D1において互いに略等間隔に配置される。一方で、複数の保持部材10のうちその一つの保持部材が他の保持部材10と異なる幅を有していれば、当該保持部材10の切り込み部11aと、その隣の切り込み部11aとの間の間隔は、他の保持部材10の切り込み部11a同士の間隔と相違する。したがって、配置方向D1における幅が互いに異なる複数の保持部材10を適宜に配置することで、切り込み部11aの間の間隔を適宜に調整することができる。これによって、種々のワイヤーハーネスに対応した電線保持具1を組み立てることができる。
【0044】
また複数の保持部材10の各々に対して識別手段を設けても良い。かかる識別手段は例えば保持部分11を着色することで実現される。例えば同じ幅を有する保持部材10に対しては同じ識別手段(同じ色)を付与し、異なる幅を有する保持部材10に対しては異なる識別手段を保持する。これによって電線保持具1の組み立てに要する時間を短縮できる。
【0045】
また一対の保持部分11と連結部分12とを一体化してもよい。即ち、同じ材質で一体的に作成してもよい。これによって、保持部分11と連結部分12との隙間を生じさせずに保持部材10を作成することができる。よって、当該隙間に電線40が挟まるという事態を回避できる。これによって、電線40を電線保持具1にセットする際の作業効率を向上できる。しかも、電線40が当該隙間に挟まることによって予期せぬ変形が電線40に生じる、といった事態も回避できる。
【0046】
また連結構造は図1の例示に限らず、例えば保持部材10同士が配置方向D1に沿ってネジ止め、磁石または機械的な係止構造などにより固定されても良い。この場合、ネジ止め機構、磁石または係止構造が連結部材と把握できる。
【0047】
第2の実施の形態.
第2の実施の形態にかかる電線保持具1の概念的な構成の一例は図1の電線保持具1とほぼ同一である。ただし、図7に例示するように、保持部分11には切り込み部11aと交差する複数のスリット11dが形成されている。複数のスリット11dは切り込み部11aの延在方向に沿って並んで形成され、電線の延在方向(ここでは水平方向D2)において保持部分11を貫通する。図7の例示では、スリット11dは、水平方向D2から見て、配置方向D1に長い長方形の形状を有している。またスリット11dは切り込み部11aに対して配置方向D1の両側に形成されている。以下では、保持部分11のうち鉛直方向D3においてスリット11dと隣接する部分を櫛歯部11eとも呼ぶ。
【0048】
かかる保持部材10によれば、次に詳細に説明するように、電線40が切り込み部11aから溢れることを抑制しえる。ここで図8,9を参照して説明する。図8は図3に例示する保持部材10に対して2つの電線40a,40bが挿入された状態を示している。図8の例示では、比較的小さい径を有する電線40aが、比較的大きい径を有する電線40bよりも切り込み部11aの入り口側に位置する。かかる状態において、電線40bは切り込み部11aにおいてその配置方向D1における間隔を広げる。図8の保持部分11にはスリットが形成されていないので、その間隔は電線40bの中心において最も大きく、鉛直方向D3において当該中心から遠ざかるに従って徐々に低減する。かかる間隔は電線40bの径が大きいほど広がる。したがって、例えば切り込み部11aの入り口からの電線40bまでの距離が短くかつ電線40bの径が大きければ、切り込み部11aの入り口付近の間隔も広がる。この場合、比較的小さい径を有する電線40aが切り込み部11aから溢れ得る。
【0049】
一方、図9の例示では、電線40bは切り込み部11aにおいてスリット11dに配置されている。このとき、電線40bは4つの櫛歯部11eと接触する。図9の例示では、電線40bの径がスリット11dの鉛直方向D3における幅よりも大きい。よって電線40bの中心よりも上方で電線40bと接触する櫛歯部11eは上方に屈曲し、電線40bの中心よりも下方で電線40bと接触する櫛歯部11eは下方に屈曲する。しかしながらこれら4つの櫛歯部11eと鉛直方向D3においてそれぞれ隣り合う櫛歯部11eには変形が生じない、若しくはその変形は少ない。なぜなら櫛歯部11eの屈曲量(ここでは鉛直方向D3における変形量)がスリット11dの鉛直方向D3における幅よりも大きい場合に限って、その隣の櫛歯部11eが変形するからである。したがって隣の櫛歯部11eでの切り込み部11aの配置方向D1における間隔には変化が生じにくく、電線40aが切り込み部11aから溢れることを抑制しえる。
【0050】
しかもスリット11dが設けられた保持部材10によれば、保持部分11が電線40に作用させる鉛直方向D3の力を増大させる。これは、櫛歯部11eの弾性力の主方向は鉛直方向D3であるのに対して、スリット11dが設けられていない保持部分11の弾性力の主方向は配置方向D1だからである。
【0051】
第3の実施の形態.
第3の実施の形態にかかる電線保持具1の概念的な構成の一例は図1の電線保持具1とほぼ同一である。ただし、図10に例示するように、保持部分11は水平方向D2において互いに対面する一対の保持板部分111,112を備えている。一対の保持板部分111,112は例えば互いに同形状であって、第1の実施の形態で説明した保持部分11と同一形状である。すなわち、切り込み部11aは一対の保持板部分111,112に形成され、一対の保持板部分111,112の端面(鉛直方向D3において一方側の端面)から延在する。さらに一対の保持板部分111,112は、当該端面のうち少なくとも切り込み部11aを含んだ部分において互いに連続している。よって切り込み部11aを含んだ断面(図10の断面)において、保持板部分111,112は例えば略U次状の形状を有する。
【0052】
かかる保持部分11へと鉛直方向D3の一方側から力を作用させれば、図11に例示するように、水平方向D2において保持板部分111,112には互いに反対側に力が作用する。したがって、電線40を切り込み部11aに挿入すれば、図12に例示するように、鉛直方向D3から見て、保持板部分111,112はそれぞれ水平方向D2において互いに遠ざかるように屈曲され、屈曲された状態で電線40を挟む。なお、かかる現象は保持板部分111,112の水平方向D2における幅が狭いほど生じやすい。
【0053】
ここで比較のために、図3にかかる保持部分11の切り込み部11aに対して電線40を挿入する場合について考慮する。この場合、図13に例示するように鉛直方向D3から見て、保持部分11のうち電線40に対して配置方向D1の両側に位置する部分の、水平方向D2における屈曲方向が互いに反対となり得る。この場合、図13に例示するように、電線40は曲がって保持される。
【0054】
一方で、図12の例示では、電線40へとより均等に力が作用するので電線40の姿勢の傾きを低減できる。また電線40は4箇所で固定されるので保持力を向上できる。例えば電線40を水平方向D2において一方側、例えば紙面下方に引っ張れば、保持板部分112がより強固に反発する。これは、保持板部分112が水平方向D2において他方側(紙面上方側)へと屈曲しており、屈曲方向と電線40の移動方向とが互いに反対であるからである。また電線40を水平方向D2において他方側、例えば紙面上方に引っ張れば保持板部分111がより強固に反発する。したがって、電線40を水平方向D2においてより強固に保持できる。
【0055】
かかる保持部分11は例えば次のようにして作成してもよい。図14は一枚の弾性樹脂材料を示している。図14の例示では、弾性樹脂材料は長手方向に長い長方形状の板状形状を有している。かかる弾性樹脂材料には、その中央部において自身を貫通して長手方向に延在する切り込み部11aが形成されている。そして、切り込み部11aに対して垂直な仮想線Bを折り目として弾性樹脂材料を折りたたむことで、保持部分11を作成する。つまり、弾性樹脂材料のうち仮想線Bに対して長手方向の両側の部分がそれぞれ保持板部分111,112として機能する。
【0056】
なお、必ずしも切り込み部11aは直線状でなくてもよく、仮想線Bに対して対称に設けられていれば良い。これによって、仮想線Bを折り目として弾性樹脂材料を折りたたんだときに、折りたたまれた状態で仮想線Bの両側の切り込み部11a同士が一致する。これによって、切り込み部11aに電線40を挿入可能な一対の保持板部分111,112を作成することができる。
【0057】
かかる作成方法によれば、複雑な製造工程を経ることなく、容易に保持部分11を作成することができる。
【0058】
なお、保持部材10には第2の実施の形態と同様に、複数のスリットが形成されてもよい。
【0059】
第4の実施の形態.
図15は、第4の実施の形態にかかる電線保持具1の概念的な構成の一例を示す斜視図である。図15の例示でも、電線保持具1は複数の保持部材10と連結部材20とを備えている。図16は図15に例示する連結部材20を示す斜視図である。連結部材20は複数の柱部22と連結部23とを有する。複数の柱部22は配置方向D1に沿って間隔を空けて並んで配置されている。図16の例示では複数の柱部22の各々は長方形の柱状形状を有しており、長方形の一辺が配置方向D1に沿う姿勢で配置されている。連結部23は配置方向D1に沿って延在し、各柱部22の鉛直方向D3における一端を連結する。かかる構成を有する連結部材20は水平方向D2から見て櫛歯状の形状を有する。
【0060】
図15に示すように、複数の保持部材10の各々は柱部22のうち隣り合う二者に固定される。これにより、複数の保持部材10は配置方向D1において並んで配置される。保持部材10は例えば弾性樹脂材料で形成されて電線40を保持する。図15の例示では、保持部材10は水平方向D2から見て長方形の板状形状を有しており、長方形の一辺が配置方向D1に沿う姿勢で配置される。また保持部材10には例えば鉛直方向D3において一方側(例えば上方側)の端面から切り込み部11aが形成されている。かかる切り込み部11aは第1の実施の形態と同様である。言い換えれば、保持部材10は第1の実施の形態における保持部分11を有している、とも把握できる。
【0061】
複数の保持部材10の各々は、柱部22のうち配置方向D1において隣り合う二者に着脱可能に固定されて、配置方向D1に沿って配置される。図15の例示では、保持部材10は水平方向D2において柱部22の二者と固定部材50とによって挟まれてネジ固定される。図17は、固定部材50を水平方向D2において分離した状態を示している。固定部材50は、水平方向D2から見て、鉛直方向D3の一方側に開口する略U字状の形状を有している。言い換えると、固定部材50は鉛直方向D3に沿って延在する一対の延在部51と、一対の延在部51を連結する連結部52とを有する。柱部22には水平方向D2に沿ってネジ孔が形成され、これと対応する位置において保持部材10および固定部材50には水平方向D2で自身を貫通する貫通孔が形成される。そして、所定のネジが固定部材50および保持部材10を貫通して柱部22のネジ孔に螺合される。
【0062】
複数の保持部材10の各々に属する切り込み部11aは、柱部22の相互間に位置し、また延在部51の間に位置する。これにより、柱部22および固定部材50に邪魔されること無く、電線40を切り込み部11aに挿入することができる。
【0063】
また図15の例示では、連結部材20の水平方向D2における両側に保持部材10がそれぞれ着脱可能に設けられている。よって、水平方向D2において一対の保持部材10が間隙を介して互いに対面する。これによって、第1の実施の形態と同様に電線40の保持力を向上できる。
【0064】
本電線保持具1であっても、複数の保持部材10が連結部材20と着脱可能に固定されているので、複数の保持部材10のいずれかに不具合が生じた場合に、他の保持部材10を取り外すことなく、不具合が生じた保持部材10のみを交換できる。しかも、複数の保持部材10を個別に連結部材20から取り外すことができるので、交換に際して他の保持部材10を取り外す必要がなく、交換についての作業性を向上できる。
【0065】
また第1の実施の形態と同様に、配置方向D1における幅が互いに異なる複数の保持部材10を採用し、所定の順序でこれらの複数の保持部材10を並べて配置してもよい。この場合、複数の保持部材10の幅に合わせて柱部22の相互間の間隔およびネジ孔の位置を調整した連結部材20を作成し、同様に複数の保持部材10の幅に合わせた幅を有する固定部材50を作成すればよい。
【0066】
また図15に例示するように、所定の切り込み部11aの鉛直方向D3における長さが他の切り込み部11aの鉛直方向D3における長さと相違していても良い。図15の例示では6つの保持部材10が示されており、そのうちの3つの保持部材10に属する切り込み部11aの長さが、他の3つの保持部材10に属する切り込み部11aの長さよりも長い。よって当該3つの保持部材10は他の3つの保持部材10よりも、より多くの電線を保持することができる。
【0067】
また第2の実施の形態と同様に保持部材10にスリットを形成してもよく、また第3の実施の形態と同様に保持部材10が保持板部分111,112を有していても良い。
【符号の説明】
【0068】
1 電線保持具
10 保持部材
11 保持部分
11a 切り込み部
20 連結部材
22 柱部
23 連結部
30 固定部材
111,112 保持板部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線保持具に関し、例えば車両用のワイヤーハーネスを製造する際に用いられる電線保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には車両用のワイヤーハーネスの製造方法が記載されている。ここでいうワイヤーハーネスとは、複数の電線を適宜に集合および分離させつつ、適切な箇所においてテープや結束具などを用いて結束することにより構成されるものである。特許文献1では、一旦、所定数の電線を束ねた電線群(仮結とも呼ばれる)を製造し、かかる電線群をさらに束ねてワイヤーハーネスを製造している。
【0003】
特許文献1では、かかる仮結を束ねるに際して、仮結を保持する仮結保持具(布線バーとも呼ばれる)が用いられる。特許文献1における仮結保持具の一例は弾性板部材を有している。この弾性板部材は例えば一方向に長い略長方形の形状を有している。弾性板部材の長辺の一方側には複数の切り込み部が形成されている。かかる複数の切り込み部は当該一方向に沿って並んで設けられている。これらの切り込み部にそれぞれ仮結が挿入されることによって、弾性板部材が仮結を挟んで保持する。
【0004】
なお、本発明に関連する技術として特許文献2が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−135199号公報
【特許文献2】実開平7−18322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば複数の切り込み部のうち一つのみに不具合が生じた場合、弾性板部材を交換することが考えられる。しかしながら、弾性板部材のうち一つの切り込み部のみに不具合が生じただけで仮結保持具の全体を交換することは、コストの上で望ましくない。
【0007】
そこで、本発明では、電線を保持する複数の部分のうち不具合が生じたもののみを交換可能な電線保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる電線保持具の第1の態様は、互いに別体であって、各々が少なくとも1以上の電線を保持する複数の保持部材と、前記複数の保持部材同士を着脱可能に連結する連結部材とを備える。
【0009】
本発明にかかる電線保持具の第2の態様は、第1の態様にかかる電線保持具であって、前記複数の保持部材の各々は、前記電線が挿入される切り込み部が形成されて前記切り込み部において前記電線を挟む弾性樹脂製の保持部分を有する。
【0010】
本発明にかかる電線保持具の第3の態様は、第2の態様にかかる電線保持具であって、前記切り込み部は前記保持部分の端面から延在し、前記保持部分は、前記切り込み部と交差しつつ前記保持部分を前記電線の延在方向に沿って貫通する複数のスリットを有する。
【0011】
本発明にかかる電線保持具の第4の態様は、第2又は第3の態様にかかる電線保持具であって、前記保持部分は互いに対面する一対の保持板部分を有し、前記切り込み部は前記一対の保持板部分に形成されて、前記一対の保持板部分の端面から延在し、前記一対の保持板部分は前記端面のうち少なくとも前記切り込み部が形成された部分において互いに連続する。
【0012】
本発明にかかる電線保持具の第5の態様は、第1から第4のいずれか一つの態様にかかる電線保持具であって、前記複数の保持部材は所定の第1方向に沿って並んで配置され、前記複数の保持部材の各々は、前記電線を保持する保持部分と、前記第1方向に略垂直な第2方向において前記保持部材と連結し前記連結部材に挿入される挿入部とを有し、前記連結部材は、前記複数の保持部材の前記挿入部が前記第1方向に沿って順に挿入される被挿入部を有し、前記挿入部が挿入された状態で前記第2方向において前記挿入部を挟む。
【0013】
本発明にかかる電線保持具の第6の態様は、第5の態様にかかる電線保持具であって、前記複数の保持部材の一組に対して前記第1方向で隣接し、前記複数の保持部材の各々の前記第1方向における移動を阻害する固定部材を更に有する。
【0014】
本発明にかかる電線保持具の第7の態様は、第1から第4のいずれか一つの態様にかかる電線保持具であって、前記複数の保持部材は所定の第1方向に沿って並んで配置され、前記連結部材は、前記第1方向に沿って間隙を空けて並んで配置される複数の柱部と、前記第1方向に略垂直な第2方向における前記複数の柱部の一端を連結する連結部とを有し、前記複数の保持部材の各々は、前記複数の柱部のうち隣り合う二者に着脱可能に固定される。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる電線保持具の第1の態様によれば、複数の保持部材同士が連結部材によって着脱可能に連結されるので、複数の保持部材の各々を分離することができる。したがって、複数の保持部材のうちのいずれかに不具合が生じた場合に、他の保持部材を取り外すことなく、不具合が生じた保持部材のみを交換することができる。
【0016】
本発明にかかる電線保持具の第2の態様によれば、弾性樹脂製の保持部分は電線との摩擦によって磨耗され、保持部分の交換の頻度が高い。よって、不具合が生じた保持部分のみを交換可能な本電線保持具の効果が特に高い。
【0017】
本発明にかかる電線保持具の第3の態様によれば、複数の電線が切り込み部に挿入されたときに電線が端面から溢れることを抑制でき、或いは電線の保持力を向上できる。
【0018】
本発明にかかる電線保持具の第4の態様によれば、保持部分による電線への力がより均等に作用する。よって電線の傾きを抑制できる。しかも電線に対して4箇所で保持するので保持力を向上できる。
【0019】
本発明にかかる電線保持具の第5の態様によれば、保持部材の挿入部を第1方向に沿って連結部材の被挿入部から抜き、不具合の生じた保持部材のみを交換して再び保持部材を連結部材に挿入することができる。しかも、第1方向における幅が互いに異なる複数の保持部材を採用すれば、保持する電線の間隔を適宜に調整することができる。
【0020】
本発明にかかる電線保持具の第6の態様によれば、複数の保持部分の第1方向における固定をより強固にできる。
【0021】
本発明にかかる電線保持具の第7の態様によれば、保持部材を個別に連結部材から取り外して交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】電線保持具の概念的な一例を示す斜視図である。
【図2】保持部材の概念的な一例を示す正面図である。
【図3】保持部材の概念的な一例を示す断面図である。
【図4】保持部材の概念的な一例を示す上面図である。
【図5】保持部材の概念的な一例を示す下面図である。
【図6】保持部材を連結部材に取り付ける様子を示す図である。
【図7】保持部材の概念的な一例を示す正面図である。
【図8】保持部材の概念的な一例を示す正面図である。
【図9】保持部材の概念的な一例を示す正面図である。
【図10】保持部材の概念的な一例を示す断面図である。
【図11】保持部分に作用する力を示す図である。
【図12】保持部分が電線を挟む様子を示す図である。
【図13】保持部分が電線を挟む様子を示す図である。
【図14】弾性樹脂材料の一例を示す平面図である。
【図15】電線保持具の概念的な一例を示す斜視図である。
【図16】連結部材の概念的な一例を示す斜視図である。
【図17】電線保持具の概念的な一例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1の実施の形態.
図1は電線保持具1の概念的な構成の一例を示す斜視図である。本電線保持具1は、例えば車両用のワイヤーハーネスを製造する際に用いられ、電線を保持するものである。より詳細には、本電線保持具1は複数の保持部材10と連結部材20とを備えている。複数の保持部材10は互いに別体であって、それぞれが少なくとも一つ以上の電線40を保持する。図1の例示では、複数の保持部材10は方向D1(以下、配置方向D1と呼ぶ)において並んで配置される。連結部材20は複数の保持部材10を着脱可能に固定する。
【0024】
なお、図1の例示では、一つの保持部材10によって保持される電線40が図示され、他の保持部材10において保持される電線40は省略されている。
【0025】
本電線保持具1によれば、複数の保持部材10が互いに別体であり、連結部材20によって着脱可能に連結されるので、複数の保持部材10を互いに分離させることができる。したがって複数の保持部材10のいずれかに不具合が生じた場合に、他の保持部材10を取り外すことなく、不具合の生じた保持部材10のみを交換することができる。
【0026】
以下、保持部材10および連結部材20の詳細な構造の一例について図2から図5も参照して説明する。図2は保持部材10の正面図、図3は図2のA−A断面における保持部材10の断面図、図4は保持部材10の上面図、図5は保持部材10の下面図をそれぞれ示している。なお図2では、図1において省略された保持部材10における意匠も表示されている。ただし、本願の本質とは関係がないので詳細な説明については行わない。また図3においては、保持部材10に対する連結部材20の位置を明確にすべく、連結部材20も二点差線で示されている。
【0027】
ここでは、まず電線40を保持する構造の一例について説明する。複数の保持部材10の各々は保持部分11を有している。保持部分11は例えば弾性樹脂材料(例えば有機高分子を主成分とした弾性材料)で形成される。図1,2の例示では、保持部分11は、配置方向D1と交差する方向D2(ここでは配置方向D1に略垂直な水平方向D2)から見て、略長方形の板状形状を有しており、長方形の一辺が配置方向D1に沿う姿勢で配置されている。
【0028】
また保持部分11には水平方向D2において自身を貫通する切り込み部11aが形成される。図1の例示では、切り込み部11aは、例えば方向D1,D2に略垂直な鉛直方向D3の一方側(例えば上方側)に位置する保持部分11の端面から、鉛直方向D3に沿って延在している。ただし、必ずしも鉛直方向D3に沿って延在する必要はなく、切り込み部11aは鉛直方向D3に傾斜して延在していても良い。かかる切り込み部11aに対して当該端面から電線40が挿入されることで、保持部分11は電線40を挟んで保持することができる。
【0029】
また図1,2の例示では、切り込み部11aにおける間隙の、配置方向D1における幅は、保持部分11の当該端面において最も広く、鉛直方向D3の他方側(例えば下方側)に向うに従って狭まって略一定となっている。保持部分11の端面側における切り込み部11aの間隙は電線40が挿入される入り口として機能するので、本形状によれば、電線40を切り込み部11aに挿入しやすい。
【0030】
また図1の例示するように、複数の保持部材10の各々は保持部分11を一対有していてもよい(図1,3参照)。一対の保持部分11は例えば互いに同一形状であって、水平方向D2において間隙を介して互いに対面している。かかる一対の保持部分11にそれぞれ属する切り込み部11aの両方に対して一本の電線40(或いは電線群、以下同様)を挿入することで、保持部材10はこの電線40を2箇所で保持することができる(図1参照)。これによって保持部材10の電線40に対する保持力を向上することができる。
【0031】
図1,3の例示では、一対の保持部分11は連結部分12によって互いに連結されている。連結部分12は、水平方向D2から見て、例えば、鉛直方向D3の一方側(例えば上方側)に開口するコ字状の形状を有している。すなわち、連結部分12は底面部12aと側面部12b,12cとを備えている(図3参照)。底面部12aは鉛直方向D3から見て例えば長方形の板形状を有しており、その長方形の1辺が配置方向D1に沿う姿勢で配置される。側面部12b,12cは配置方向D1から見て例えば長方形の板形状を有しており、その長方形の1辺が鉛直方向D3に沿う姿勢で配置される。側面部12b,12cは底面部12aの配置方向D1における両端部にそれぞれ配置され(図4参照)、互いに間隙を介して対面する。
【0032】
一対の保持部分11は底面部12aの水平方向D2における両端部にそれぞれ配置され、例えば側面部12b,12cにそれぞれ固定される。例えば側面部12b,12cの水平方向D2における端面にネジ孔が形成され、当該ネジ孔に対応して保持部分11には貫通孔11bが形成されている(図2参照)。ネジは貫通孔11bを水平方向D2に沿って貫通してネジ孔に螺合する。これによって、一対の保持部分11が側面部12b,12cに固定される。
【0033】
また図3に例示するように、連結部分12は突部12dを備えても良い。突部12dは底面部12aの水平方向D2における端部から鉛直方向D3に沿って保持部分11側へと突出している。一方、保持部分11には、突部12dを水平方向D2において挟む凹部11cが形成されている。これにより、保持部分11を連結部分12に取り付けるに際して、連結部分12に対する保持部分11の位置決めを容易にすることができる。なぜなら、保持部分11を突部12dに被せることで底面部12aに対する保持部分11の位置が決まるからである。
【0034】
次に、連結部材20の一例と、これによって着脱可能に連結される保持部材10の連結構造の一例について説明する。
【0035】
連結部材20には、保持部材10の一部が配置方向D1に沿って挿入される被挿入部21が形成されている(図1参照)。以下、詳細に説明する。連結部材20は配置方向D1に沿って延在している。連結部材20は、配置方向D1における一方側に向って開口し配置方向D1に沿って延在する空間(被挿入部21)を有している。当該空間には後述するように保持部材10の一部が挿入されることとなる。なお図1の例示では、当該空間は連結部材20を配置方向D1で貫通しているものの、配置方向D1の少なくとも一方側に開口していればよい。また当該空間は鉛直方向D3において一方側(たとえば上方側)に向っても開口する。かかる開口は、連結部材20の配置方向D1における一方側の端から配置方向D1に沿って延在する。
【0036】
図1,3の例示では、連結部材20は下面部20aと側面部20b,20cと上面部20dとを有しており、これらが上述の空間を形成する。下面部20aは、鉛直方向D3から見て、配置方向D1に長い長方形状の板状形状を有している。側面部20b,20cは下面部20aの水平方向D2における両端部に設けられ、水平方向D2から見て、配置方向D1に長い長方形の板状形状を有している。上面部20dは、下面部20aとは反対側において側面部20b,20cの一端に設けられている。上面部20dは鉛直方向D3から見て配置方向D1に長い長方形の板状形状を有しており、鉛直方向D3において下面部20aと対面する。また上面部20dは水平方向D2において互いに離間している。この離間によって、上記空間が鉛直方向D3の一方側に開口する。水平方向D2における離間幅は鉛直方向D3によらずに略等幅である。
【0037】
一方、保持部材10は、被挿入部21に挿入される挿入部13を備えている(特に図3参照)。挿入部13は保持部分11と連結される。ここでは挿入部13は底面部12aに設けられ、連結部分12を介して保持部分11と連結される。挿入部13は例えば幅狭部13aと幅広部13bとを備えている。幅狭部13aの水平方向D2における幅は、上面部20dの間の間隙の水平方向D2における幅よりも狭い。また幅狭部13aの鉛直方向D3における幅は上面部20dの鉛直方向D3における幅よりも広い。幅広部13bは幅狭部13aに対して保持部材10(或いは底面部12a)よりも反対側において幅狭部13aと連結し、その水平方向D2における幅は上面部20dの間の間隙の幅よりも広い。また配置方向D1から見た幅広部13bの輪郭は、配置方向D1から見た連結部材20の内面の輪郭に囲まれている。
【0038】
かかる電線保持具1によれば、図6に例示するように、保持部材10を配置方向D1に沿って移動させることで、幅広部13bを連結部材20(より詳細には被挿入部21)へと挿入することができる。このとき幅狭部13aは上面部20dの間を通過する。なお、図6では挿入部13の形状を簡略して直方体として示している。かかる挿入によって、幅狭部13aは上面部20dによって水平方向D2において挟まれ、幅広部13bは鉛直方向D3において下面部20aと上面部20dとによって挟まれる。したがって、保持部材10が連結部材20に対して水平方向D2および鉛直方向D3において固定される。保持部材10の連結部材20に対する配置方向D1における固定は例えば保持部材10と連結部材20との間の摩擦によって実現されてもよい。或いは更に、図1に例示するように、配置方向D1において、複数の保持部材10の一組の端に固定部材30を設けても良い。固定部材30は保持部材10と同様の連結構造(挿入部)を有し、連結部材20に挿入される。これによって、保持部材10の配置方向D1における移動が阻害され、以って保持部材10の配置方向D1における固定力を向上することができる。
【0039】
かかる電線保持具1によれば、固定部材30を取り外した後に、複数の保持部材10の各々を配置方向D1に沿って移動させることで連結部材20から順に取り外すことができる。したがって、不具合の生じた保持部材10のみを交換し、再び複数の保持部材10を配置方向D1に沿って順に連結部材20に挿入することができる。よって、不具合が生じた保持部材10のみを交換することができる。
【0040】
特に保持部分11が弾性樹脂材料(例えば有機高分子を主成分とする樹脂)で形成されていれば、例えば金属で形成される場合に比べて、保持部分11は電線40との摩擦によって磨耗しやすい。よって、保持部分11の交換要求が生じる頻度が比較的高く、本電線保持具1は特に有効である。
【0041】
なお、保持部分11が連結部分12と着脱可能に設けられていれば、保持部材10が連結部材20に挿入された状態で、保持部分11を連結部分12から取り外して交換してもよい。この場合、連結部分12と挿入部13とは連結部材20の一部として把握されても良い。
【0042】
また複数の保持部材10の各々が連結部材20に着脱可能に固定されるので、連結部材20に取り付けられる保持部材10の個数を調整できる。これによって、種々のワイヤーハーネスに対応した電線保持具1を容易に組み立てることができる。例えばワイヤーハーネスの製造に際して、電線を保持する箇所が10箇所必要である場合には、10個の保持部材10を連結部材20に取り付ければ良い。
【0043】
また図1から図6に例示する電線保持具1において、配置方向D1における幅が互いに異なる複数の保持部材10を採用してもよい。これによって、切り込み部11a同士の配置方向D1における間隔を適宜に調整することができる。例えば図1の例示では、複数の保持部材10は互いに同一形状を備えているので、切り込み部11aは配置方向D1において互いに略等間隔に配置される。一方で、複数の保持部材10のうちその一つの保持部材が他の保持部材10と異なる幅を有していれば、当該保持部材10の切り込み部11aと、その隣の切り込み部11aとの間の間隔は、他の保持部材10の切り込み部11a同士の間隔と相違する。したがって、配置方向D1における幅が互いに異なる複数の保持部材10を適宜に配置することで、切り込み部11aの間の間隔を適宜に調整することができる。これによって、種々のワイヤーハーネスに対応した電線保持具1を組み立てることができる。
【0044】
また複数の保持部材10の各々に対して識別手段を設けても良い。かかる識別手段は例えば保持部分11を着色することで実現される。例えば同じ幅を有する保持部材10に対しては同じ識別手段(同じ色)を付与し、異なる幅を有する保持部材10に対しては異なる識別手段を保持する。これによって電線保持具1の組み立てに要する時間を短縮できる。
【0045】
また一対の保持部分11と連結部分12とを一体化してもよい。即ち、同じ材質で一体的に作成してもよい。これによって、保持部分11と連結部分12との隙間を生じさせずに保持部材10を作成することができる。よって、当該隙間に電線40が挟まるという事態を回避できる。これによって、電線40を電線保持具1にセットする際の作業効率を向上できる。しかも、電線40が当該隙間に挟まることによって予期せぬ変形が電線40に生じる、といった事態も回避できる。
【0046】
また連結構造は図1の例示に限らず、例えば保持部材10同士が配置方向D1に沿ってネジ止め、磁石または機械的な係止構造などにより固定されても良い。この場合、ネジ止め機構、磁石または係止構造が連結部材と把握できる。
【0047】
第2の実施の形態.
第2の実施の形態にかかる電線保持具1の概念的な構成の一例は図1の電線保持具1とほぼ同一である。ただし、図7に例示するように、保持部分11には切り込み部11aと交差する複数のスリット11dが形成されている。複数のスリット11dは切り込み部11aの延在方向に沿って並んで形成され、電線の延在方向(ここでは水平方向D2)において保持部分11を貫通する。図7の例示では、スリット11dは、水平方向D2から見て、配置方向D1に長い長方形の形状を有している。またスリット11dは切り込み部11aに対して配置方向D1の両側に形成されている。以下では、保持部分11のうち鉛直方向D3においてスリット11dと隣接する部分を櫛歯部11eとも呼ぶ。
【0048】
かかる保持部材10によれば、次に詳細に説明するように、電線40が切り込み部11aから溢れることを抑制しえる。ここで図8,9を参照して説明する。図8は図3に例示する保持部材10に対して2つの電線40a,40bが挿入された状態を示している。図8の例示では、比較的小さい径を有する電線40aが、比較的大きい径を有する電線40bよりも切り込み部11aの入り口側に位置する。かかる状態において、電線40bは切り込み部11aにおいてその配置方向D1における間隔を広げる。図8の保持部分11にはスリットが形成されていないので、その間隔は電線40bの中心において最も大きく、鉛直方向D3において当該中心から遠ざかるに従って徐々に低減する。かかる間隔は電線40bの径が大きいほど広がる。したがって、例えば切り込み部11aの入り口からの電線40bまでの距離が短くかつ電線40bの径が大きければ、切り込み部11aの入り口付近の間隔も広がる。この場合、比較的小さい径を有する電線40aが切り込み部11aから溢れ得る。
【0049】
一方、図9の例示では、電線40bは切り込み部11aにおいてスリット11dに配置されている。このとき、電線40bは4つの櫛歯部11eと接触する。図9の例示では、電線40bの径がスリット11dの鉛直方向D3における幅よりも大きい。よって電線40bの中心よりも上方で電線40bと接触する櫛歯部11eは上方に屈曲し、電線40bの中心よりも下方で電線40bと接触する櫛歯部11eは下方に屈曲する。しかしながらこれら4つの櫛歯部11eと鉛直方向D3においてそれぞれ隣り合う櫛歯部11eには変形が生じない、若しくはその変形は少ない。なぜなら櫛歯部11eの屈曲量(ここでは鉛直方向D3における変形量)がスリット11dの鉛直方向D3における幅よりも大きい場合に限って、その隣の櫛歯部11eが変形するからである。したがって隣の櫛歯部11eでの切り込み部11aの配置方向D1における間隔には変化が生じにくく、電線40aが切り込み部11aから溢れることを抑制しえる。
【0050】
しかもスリット11dが設けられた保持部材10によれば、保持部分11が電線40に作用させる鉛直方向D3の力を増大させる。これは、櫛歯部11eの弾性力の主方向は鉛直方向D3であるのに対して、スリット11dが設けられていない保持部分11の弾性力の主方向は配置方向D1だからである。
【0051】
第3の実施の形態.
第3の実施の形態にかかる電線保持具1の概念的な構成の一例は図1の電線保持具1とほぼ同一である。ただし、図10に例示するように、保持部分11は水平方向D2において互いに対面する一対の保持板部分111,112を備えている。一対の保持板部分111,112は例えば互いに同形状であって、第1の実施の形態で説明した保持部分11と同一形状である。すなわち、切り込み部11aは一対の保持板部分111,112に形成され、一対の保持板部分111,112の端面(鉛直方向D3において一方側の端面)から延在する。さらに一対の保持板部分111,112は、当該端面のうち少なくとも切り込み部11aを含んだ部分において互いに連続している。よって切り込み部11aを含んだ断面(図10の断面)において、保持板部分111,112は例えば略U次状の形状を有する。
【0052】
かかる保持部分11へと鉛直方向D3の一方側から力を作用させれば、図11に例示するように、水平方向D2において保持板部分111,112には互いに反対側に力が作用する。したがって、電線40を切り込み部11aに挿入すれば、図12に例示するように、鉛直方向D3から見て、保持板部分111,112はそれぞれ水平方向D2において互いに遠ざかるように屈曲され、屈曲された状態で電線40を挟む。なお、かかる現象は保持板部分111,112の水平方向D2における幅が狭いほど生じやすい。
【0053】
ここで比較のために、図3にかかる保持部分11の切り込み部11aに対して電線40を挿入する場合について考慮する。この場合、図13に例示するように鉛直方向D3から見て、保持部分11のうち電線40に対して配置方向D1の両側に位置する部分の、水平方向D2における屈曲方向が互いに反対となり得る。この場合、図13に例示するように、電線40は曲がって保持される。
【0054】
一方で、図12の例示では、電線40へとより均等に力が作用するので電線40の姿勢の傾きを低減できる。また電線40は4箇所で固定されるので保持力を向上できる。例えば電線40を水平方向D2において一方側、例えば紙面下方に引っ張れば、保持板部分112がより強固に反発する。これは、保持板部分112が水平方向D2において他方側(紙面上方側)へと屈曲しており、屈曲方向と電線40の移動方向とが互いに反対であるからである。また電線40を水平方向D2において他方側、例えば紙面上方に引っ張れば保持板部分111がより強固に反発する。したがって、電線40を水平方向D2においてより強固に保持できる。
【0055】
かかる保持部分11は例えば次のようにして作成してもよい。図14は一枚の弾性樹脂材料を示している。図14の例示では、弾性樹脂材料は長手方向に長い長方形状の板状形状を有している。かかる弾性樹脂材料には、その中央部において自身を貫通して長手方向に延在する切り込み部11aが形成されている。そして、切り込み部11aに対して垂直な仮想線Bを折り目として弾性樹脂材料を折りたたむことで、保持部分11を作成する。つまり、弾性樹脂材料のうち仮想線Bに対して長手方向の両側の部分がそれぞれ保持板部分111,112として機能する。
【0056】
なお、必ずしも切り込み部11aは直線状でなくてもよく、仮想線Bに対して対称に設けられていれば良い。これによって、仮想線Bを折り目として弾性樹脂材料を折りたたんだときに、折りたたまれた状態で仮想線Bの両側の切り込み部11a同士が一致する。これによって、切り込み部11aに電線40を挿入可能な一対の保持板部分111,112を作成することができる。
【0057】
かかる作成方法によれば、複雑な製造工程を経ることなく、容易に保持部分11を作成することができる。
【0058】
なお、保持部材10には第2の実施の形態と同様に、複数のスリットが形成されてもよい。
【0059】
第4の実施の形態.
図15は、第4の実施の形態にかかる電線保持具1の概念的な構成の一例を示す斜視図である。図15の例示でも、電線保持具1は複数の保持部材10と連結部材20とを備えている。図16は図15に例示する連結部材20を示す斜視図である。連結部材20は複数の柱部22と連結部23とを有する。複数の柱部22は配置方向D1に沿って間隔を空けて並んで配置されている。図16の例示では複数の柱部22の各々は長方形の柱状形状を有しており、長方形の一辺が配置方向D1に沿う姿勢で配置されている。連結部23は配置方向D1に沿って延在し、各柱部22の鉛直方向D3における一端を連結する。かかる構成を有する連結部材20は水平方向D2から見て櫛歯状の形状を有する。
【0060】
図15に示すように、複数の保持部材10の各々は柱部22のうち隣り合う二者に固定される。これにより、複数の保持部材10は配置方向D1において並んで配置される。保持部材10は例えば弾性樹脂材料で形成されて電線40を保持する。図15の例示では、保持部材10は水平方向D2から見て長方形の板状形状を有しており、長方形の一辺が配置方向D1に沿う姿勢で配置される。また保持部材10には例えば鉛直方向D3において一方側(例えば上方側)の端面から切り込み部11aが形成されている。かかる切り込み部11aは第1の実施の形態と同様である。言い換えれば、保持部材10は第1の実施の形態における保持部分11を有している、とも把握できる。
【0061】
複数の保持部材10の各々は、柱部22のうち配置方向D1において隣り合う二者に着脱可能に固定されて、配置方向D1に沿って配置される。図15の例示では、保持部材10は水平方向D2において柱部22の二者と固定部材50とによって挟まれてネジ固定される。図17は、固定部材50を水平方向D2において分離した状態を示している。固定部材50は、水平方向D2から見て、鉛直方向D3の一方側に開口する略U字状の形状を有している。言い換えると、固定部材50は鉛直方向D3に沿って延在する一対の延在部51と、一対の延在部51を連結する連結部52とを有する。柱部22には水平方向D2に沿ってネジ孔が形成され、これと対応する位置において保持部材10および固定部材50には水平方向D2で自身を貫通する貫通孔が形成される。そして、所定のネジが固定部材50および保持部材10を貫通して柱部22のネジ孔に螺合される。
【0062】
複数の保持部材10の各々に属する切り込み部11aは、柱部22の相互間に位置し、また延在部51の間に位置する。これにより、柱部22および固定部材50に邪魔されること無く、電線40を切り込み部11aに挿入することができる。
【0063】
また図15の例示では、連結部材20の水平方向D2における両側に保持部材10がそれぞれ着脱可能に設けられている。よって、水平方向D2において一対の保持部材10が間隙を介して互いに対面する。これによって、第1の実施の形態と同様に電線40の保持力を向上できる。
【0064】
本電線保持具1であっても、複数の保持部材10が連結部材20と着脱可能に固定されているので、複数の保持部材10のいずれかに不具合が生じた場合に、他の保持部材10を取り外すことなく、不具合が生じた保持部材10のみを交換できる。しかも、複数の保持部材10を個別に連結部材20から取り外すことができるので、交換に際して他の保持部材10を取り外す必要がなく、交換についての作業性を向上できる。
【0065】
また第1の実施の形態と同様に、配置方向D1における幅が互いに異なる複数の保持部材10を採用し、所定の順序でこれらの複数の保持部材10を並べて配置してもよい。この場合、複数の保持部材10の幅に合わせて柱部22の相互間の間隔およびネジ孔の位置を調整した連結部材20を作成し、同様に複数の保持部材10の幅に合わせた幅を有する固定部材50を作成すればよい。
【0066】
また図15に例示するように、所定の切り込み部11aの鉛直方向D3における長さが他の切り込み部11aの鉛直方向D3における長さと相違していても良い。図15の例示では6つの保持部材10が示されており、そのうちの3つの保持部材10に属する切り込み部11aの長さが、他の3つの保持部材10に属する切り込み部11aの長さよりも長い。よって当該3つの保持部材10は他の3つの保持部材10よりも、より多くの電線を保持することができる。
【0067】
また第2の実施の形態と同様に保持部材10にスリットを形成してもよく、また第3の実施の形態と同様に保持部材10が保持板部分111,112を有していても良い。
【符号の説明】
【0068】
1 電線保持具
10 保持部材
11 保持部分
11a 切り込み部
20 連結部材
22 柱部
23 連結部
30 固定部材
111,112 保持板部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに別体であって、各々が少なくとも1以上の電線を保持する複数の保持部材と、
前記複数の保持部材同士を着脱可能に連結する連結部材と
を備える、電線保持具。
【請求項2】
前記複数の保持部材の各々は、前記電線が挿入される切り込み部が形成されて前記切り込み部において前記電線を挟む弾性樹脂製の保持部分を有する、請求項1に記載の電線保持具。
【請求項3】
前記切り込み部は前記保持部分の端面から延在し、
前記保持部分は、前記切り込み部と交差しつつ前記保持部分を前記電線の延在方向に沿って貫通する複数のスリットを有する、請求項2に記載の電線保持具。
【請求項4】
前記保持部分は互いに対面する一対の保持板部分を有し、
前記切り込み部は前記一対の保持板部分に形成されて、前記一対の保持板部分の端面から延在し、
前記一対の保持板部分は前記端面のうち少なくとも前記切り込み部が形成された部分において互いに連続する、請求項2又は請求項3に記載の電線保持具。
【請求項5】
前記複数の保持部材は所定の第1方向に沿って並んで配置され、
前記複数の保持部材の各々は、
前記電線を保持する保持部分と、
前記第1方向に略垂直な第2方向において前記保持部材と連結し前記連結部材に挿入される挿入部と
を有し、
前記連結部材は、前記複数の保持部材の前記挿入部が前記第1方向に沿って順に挿入される被挿入部を有し、前記挿入部が挿入された状態で前記第2方向において前記挿入部を挟む、請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の電線保持具。
【請求項6】
前記複数の保持部材の一組に対して前記第1方向で隣接し、前記複数の保持部材の各々の前記第1方向における移動を阻害する固定部材を更に有する、請求項5に記載の電線保持具。
【請求項7】
前記複数の保持部材は所定の第1方向に沿って並んで配置され、
前記連結部材は、
前記第1方向に沿って間隙を空けて並んで配置される複数の柱部と、
前記第1方向に略垂直な第2方向における前記複数の柱部の一端を連結する連結部と
を有し、
前記複数の保持部材の各々は、前記複数の柱部のうち隣り合う二者に着脱可能に固定される、請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の電線保持具。
【請求項1】
互いに別体であって、各々が少なくとも1以上の電線を保持する複数の保持部材と、
前記複数の保持部材同士を着脱可能に連結する連結部材と
を備える、電線保持具。
【請求項2】
前記複数の保持部材の各々は、前記電線が挿入される切り込み部が形成されて前記切り込み部において前記電線を挟む弾性樹脂製の保持部分を有する、請求項1に記載の電線保持具。
【請求項3】
前記切り込み部は前記保持部分の端面から延在し、
前記保持部分は、前記切り込み部と交差しつつ前記保持部分を前記電線の延在方向に沿って貫通する複数のスリットを有する、請求項2に記載の電線保持具。
【請求項4】
前記保持部分は互いに対面する一対の保持板部分を有し、
前記切り込み部は前記一対の保持板部分に形成されて、前記一対の保持板部分の端面から延在し、
前記一対の保持板部分は前記端面のうち少なくとも前記切り込み部が形成された部分において互いに連続する、請求項2又は請求項3に記載の電線保持具。
【請求項5】
前記複数の保持部材は所定の第1方向に沿って並んで配置され、
前記複数の保持部材の各々は、
前記電線を保持する保持部分と、
前記第1方向に略垂直な第2方向において前記保持部材と連結し前記連結部材に挿入される挿入部と
を有し、
前記連結部材は、前記複数の保持部材の前記挿入部が前記第1方向に沿って順に挿入される被挿入部を有し、前記挿入部が挿入された状態で前記第2方向において前記挿入部を挟む、請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の電線保持具。
【請求項6】
前記複数の保持部材の一組に対して前記第1方向で隣接し、前記複数の保持部材の各々の前記第1方向における移動を阻害する固定部材を更に有する、請求項5に記載の電線保持具。
【請求項7】
前記複数の保持部材は所定の第1方向に沿って並んで配置され、
前記連結部材は、
前記第1方向に沿って間隙を空けて並んで配置される複数の柱部と、
前記第1方向に略垂直な第2方向における前記複数の柱部の一端を連結する連結部と
を有し、
前記複数の保持部材の各々は、前記複数の柱部のうち隣り合う二者に着脱可能に固定される、請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の電線保持具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−4340(P2013−4340A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135029(P2011−135029)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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