説明

電線保護具およびワイヤハーネス

【課題】電線の分岐部において、電線の周囲を覆う電線保護具を、同形状の部材の組み合わせから形成できる技術を提供する。
【解決手段】電線保護具1は、互いに組み合わされることによって分岐した筒体を形成する、一対の分割部材11を備える。分割部材11は、複数の半筒形状の分岐部111と、複数の爪部2と、複数の爪受部3とを備える。ここにおいて、分割部材11の線対称軸の少なくとも1個について、当該線対称軸に対して対称な一対の位置の一方に爪部2が形成されるとともに、他方に爪受部3が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の周囲を覆う電線保護具およびそれを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスは、電線(あるいは、複数の電線を束ねた電線束)の周囲を覆う電線保護具を備えることが多い。電線は、電線保護具で覆われることにより、振動又は可動部の動きに応じて周囲の部材との接触することがなくなり、耐久性が高まる。
【0003】
ところで、電線保護具は、一般に電線の周囲を覆う筒状の部材である。電線のストレート部分を覆う電線保護具は、例えば、ストレートの筒体を半分に分割した分割部材で電線を挟み込んで形成することができる。分割部材同士を連結させるには、例えば、一方の分割部材に爪を形成するとともに、他方の分割部材の対応する位置に爪受けを形成しておき、一対の分割部材で電線を挟み込んだ状態で、一方の分割部材に形成された爪を他方の分割部材に形成された爪受けに嵌め入れて固定すればよい。ただし、この構成においては、爪部が形成された分割部材と、爪受部が形成された分割部材とをそれぞれ準備する必要があるため、部品の製造に用いる金型も2種類準備する必要がある。したがって、電線保護具の製造コストが高くついてしまう。
【0004】
この点において、例えば特許文献1では、矩形の箱形に形成された「被覆本体11」に対し、これと同形の「被覆本体11」を反転させて被せて電線を挟み込んで、電線を雑音障害から護るための雑音吸収装置を形成している。この構成によると、同形の分割部材を組み合わせて雑音吸収装置を形成するので、部品の製造に必要な金型も1種類ですみ、製造コストを抑えることができる。
【0005】
また、特許文献2には、爪部が形成された分割部材と、爪受けが形成された分割部材とをヒンジ連結により一体化する構成が開示されている。この構成においては、爪部が形成された分割部材と爪受けが形成された分割部材とを、別個に成型する必要がない。したがって、部品の製造に必要な金型も1種類ですむ。しかしながら、この構成は、部品点数が1点ですむという利点はあるものの、分割部材を2つ並べた部材を製造することになるので、部品の成型に必要な金型のサイズも大きくなる。したがって、結局は、電線保護具の製造コストを効果的に抑えることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−126990号公報
【特許文献2】特開平8−182145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ワイヤハーネスは常にストレート形状とされるものではなく、途中で分岐されることもあり、この分岐部分において電線を保護する電線保護具は、電線と同じように分岐している必要がある。電線の分岐部分を覆う電線保護具は、例えば、分岐した筒体を半分に分割した分割部材で電線を挟み込んで形成することができる。
【0008】
この場合も、電線保護具の製造コストを抑えるためには、分割部材を同形状とすることが好ましい。ところが、分岐した形状の電線保護具を形成する場合、分割部材は、複数の分岐部を持つ複雑な形状となるため、爪部、爪受部の形成位置によっては、同形の分割部材の一方を反転させて他方の分割部材に被せた場合に、爪部と爪部、あるいは、爪受部と爪受部とが対向してしまい、分割部材同士を連結できないという事態が生じる可能性が非常に高くなる。このため、従来においては、分岐した電線保護具を形成する場合には、爪部が形成された分割部材と、爪受部が形成された分割部材とを、それぞれ形成する、あるいは、これらをヒンジ連結した部材を形成する、という態様をとらざるを得なかった。
【0009】
この発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電線の分岐部において電線の周囲を覆う電線保護具を、同形状の部材の組み合わせから形成できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様に係る発明は、電線の分岐部において前記電線の周囲を覆う電線保護具であって、互いに組み合わされることによって分岐した筒体を形成する、一対の分割部材、を備え、前記分割部材が、複数の半筒形状の分岐部と、複数の雄部と、複数の雌部と、を備え、前記分割部材の線対称軸の少なくとも1つについて、当該線対称軸に対して対称な一対の位置の全てにおいて、対とされている一方の位置に前記雄部が、他方の位置に前記雌部が形成される。
【0011】
第2の態様に係る発明は、第1の態様に係る電線保護具であって、前記分割部材の線対称軸のうち、当該線対称軸に対して対称な一対の位置の全てにおいて、対とされている一方の位置に前記雄部が、他方の位置に前記雌部が形成されるような線対称軸を特定線対称軸とした場合に、前記分割部材の全ての線対称軸が、前記特定線対称軸となっている。
【0012】
第3の態様に係る発明は、第1または第2の態様に係る電線保護具であって、前記分割部材が、前記分岐部の筒面に形成された窓部、を備える。
【0013】
第4の態様に係る発明は、第1または第2の態様に係る電線保護具であって、前記分割部材が、前記分岐部の両側縁に形成された切り欠き部、を備える。
【0014】
第5の態様に係る発明は、第1または第2の態様に係る電線保護具であって、前記分割部材が、前記分岐部の先端からさらに先に向かって延設されたベロ状の突起部、を備える。
【0015】
第6の態様に係る発明は、第5の態様に係る電線保護具であって、前記突起部が、前記分岐部の表裏方向に揺動可能に着設される。
【0016】
第7の態様に係る発明は、電線の分岐部において前記電線の周囲を覆う電線保護具であって、互いに組み合わされることによって分岐した筒体を形成する、一対の分割部材、を備え、前記分割部材が、複数の半筒形状の分岐部と、前記複数の分岐部のそれぞれの一方の側縁に形成された雄部、および、他方の側縁に形成された雌部と、を備え、前記複数の分岐部のそれぞれが、分岐中心からみて同形状とされる。
【0017】
第8の態様に係る発明は、分岐した電線と、前記電線の分岐部において前記電線の周囲を覆う電線保護具とを備えるワイヤハーネスであって、前記電線保護具が、互いに組み合わされることによって分岐した筒体を形成する、一対の分割部材、を備え、前記分割部材が、複数の半筒形状の分岐部と、複数の雄部と、複数の雌部と、を備え、前記分割部材の線対称軸の少なくとも1つについて、当該線対称軸に対して対称な一対の位置の全てにおいて、対とされている一方の位置に前記雄部が、他方の位置に前記雌部が形成される。
【0018】
第9の態様に係る発明は、分岐した電線と、前記電線の分岐部において前記電線の周囲を覆う電線保護具とを備えるワイヤハーネスであって、前記電線保護具が、互いに組み合わされることによって分岐した筒体を形成する、一対の分割部材、を備え、前記分割部材が、複数の半筒形状の分岐部と、前記複数の分岐部のそれぞれの一方の側縁に形成された雄部、および、他方の側縁に形成された雌部と、を備え、前記複数の分岐部のそれぞれが、分岐中心からみて同形状とされる。
【発明の効果】
【0019】
第1〜第9の態様に係る発明によると、一方の分割部材を、線対称軸を軸にして裏返して他方の分割部材と突き合わすと、一方の分割部材に形成された複数の雄部のそれぞれと、他方の分割部材に形成された複数の雌部のそれぞれとが対向することになり、この状態で雄部と雌部とを嵌め合わすことによって分岐した筒体を形成することができる。この構成によると、同形状の分割部材を2個組み合わせることによって、分岐した電線保護具を形成することができる。すなわち、電線の分岐部において電線の周囲を覆う電線保護具を、同形状の部材の組み合わせから形成することができる。
【0020】
特に、第2、第7、および第9の態様に係る発明によると、一方の分割部材を、どの線対称軸を軸にして裏返しても他方の分割部材と嵌め合わすことができる。この構成によると、一対の分割部材を組み合わせて分岐した筒体を形成する際の作業効率が良好なものとなる。
【0021】
特に、第3の態様に係る発明によると、電線保護具により電線の周囲が覆われた状態において、分割部材に形成された窓部から電線の一部が露出することになる。この構成においては、例えば、電線保護具の窓部の内部に沿わせるようにして電線保護具にテープ等を巻き付けることによって、電線を電線保護具に対して固定することができる。
【0022】
特に、第4の態様に係る発明によると、電線保護具により電線の周囲が覆われた状態において、一方の分割部材の側縁に形成された切り欠き部と他方の分割部材の側縁に形成された切り欠き部とが対向して1個の窓部が形成され、この窓部から電線の一部が露出することになる。この構成においては、例えば、電線保護具の窓部の内部に沿わせるようにして電線保護具にテープ等を巻き付けることによって、電線を電線保護具に対して固定することができる。
【0023】
特に、第5の態様に係る発明によると、電線保護具により電線の周囲が覆われた状態において電線保護具の筒端部にベロ状の突起部が形成されることになる。この構成によると、例えば、電線保護具の筒内部から延びる電線と、筒端部に形成された突起部とをテープ巻き等することによって、電線を電線保護具に対して固定することができる。
【0024】
特に、第6の態様に係る発明によると、突起部を揺動させてこれを電線保護具の筒内部から延びる電線に密着させることが可能となり、この状態で、電線と突起部とをテープ巻き等することによって、電線を電線保護具に対して固定することができる。この構成によると、電線の径が小さい場合であっても、これを電線保護具に対して確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施の形態に係るワイヤハーネスの斜視図である。
【図2】分割部材の斜視図である。
【図3】連結用部材の配置ルールを説明するための図である。
【図4】ワイヤハーネスの製造方法を説明するための図である。
【図5】第2の実施の形態に係るワイヤハーネスの斜視図である。
【図6】ワイヤハーネスにおける固定用テープが巻かれた部分を示す図である。
【図7】ワイヤハーネスの断面図である。
【図8】第3の実施の形態に係るワイヤハーネスの斜視図である。
【図9】分割部材における分岐部の先端付近を拡大して示す図である。
【図10】ワイヤハーネスにおける固定用テープが巻かれた部分を示す図である。
【図11】3個の分岐部を備える分割部材における、連結用部材の配置ルールを説明するための図である。
【図12】3個の分岐部を備える分割部材における、連結用部材の配置ルールを説明するための図である。
【図13】第2の変形例に係るワイヤハーネスの斜視図である。
【図14】第3の変形例に係るワイヤハーネスの斜視図である。
【図15】第4の変形例に係るワイヤハーネスの斜視図である。
【図16】第4の変形例に係るワイヤハーネスの斜視図である。
【図17】第4の変形例に係るワイヤハーネスの斜視図である。
【図18】第5の変形例に係るワイヤハーネスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。本発明の実施形態に係るワイヤハーネスは、例えば、自動車などの車両に搭載され、バッテリ又はインバータ回路などの電力供給源と電装機器との間、又は複数の電装機器相互間を接続する。
【0027】
<第1の実施の形態>
<1.ワイヤハーネス>
図1を参照しつつ、本発明の第1の実施形態に係るワイヤハーネス100について説明する。図1は、ワイヤハーネス100の斜視図である。
【0028】
ワイヤハーネス100は、1本又は複数本の電線9と、電線保護具1とを備える。電線9は途中で分岐しており、電線保護具1は電線9と同じように分岐して、電線9の分岐部分に装着される。なお、図1では、4分岐した電線9に4分岐した電線保護具1が装着された様子が示されているが、電線9および電線保護具1の分岐数は4分岐に限らない。電線9がn(nは2以上の整数)股に分岐している場合、これに装着される電線保護具1はn股に分岐した形状とされる。
【0029】
<1−1.電線>
電線9は、導線が絶縁被覆によって覆われたケーブルであり、例えば、丸ケーブル又はフラットケーブルなどである。電線9の端部には、通常、コネクタ(図示省略)等が設けられる。電線9は、その分岐部に電線保護具1が取り付けられることにより、分岐部周辺が周囲に存在する物体との接触によって破損することが防止される。なお、電線9と電線保護具1との間には、電線9の周囲を覆う編組線などのシールド部材が設けられてもよい。
【0030】
<1−2.電線保護具>
電線保護具1は、電線9の分岐部において電線9の周囲を覆う、分岐した筒体を形成する用具である。電線保護具1は、分岐した筒体を半分に分割した形状の分割部材11で電線9を挟み込んで形成される。ここで、一対の分割部材11は、同形状の部材である。
【0031】
分割部材11の構成について、図2を参照しながら説明する。図2は、分割部材11の斜視図である。
【0032】
分割部材11は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの樹脂を例えば一体成形することにより形成される。
【0033】
分割部材11は、互いに組み合わされることによって分岐した筒体を形成する部材であり、複数の分岐部111を備える。図2には、いずれも同じ長さであり、かつ、互いに等しい分岐角度で分岐した(すなわち、分岐中心Qから均等な分岐角度で延びる)、4個の分岐部111を備える分割部材11が示されている。分割部材11が備える複数の分岐部111のそれぞれは、半筒形状に形成され、内側に電線9が挿入される溝を形成する。なお、図示の例では、各分岐部111は、半円筒形状に形成されているが、各分岐部111は、内側に電線9が挿入される溝を形成する半筒状の部材であれば他の形状の部材であってもよい。例えば、半楕円筒状又は半角柱状であってもよい。
【0034】
分割部材11の各分岐部111の先端部における、半筒体の周方向に沿う端部位置Pには、連結用の部材である爪部2あるいは爪受部3が形成される。ただし、分割部材11には、爪部2と爪受部3とが同数個ずつ形成される。つまり、分割部材11が例えばn個の分岐部111を備える場合、2n個の端部位置Pが存在し、このうちのn箇所に爪部2が形成され、残りのn箇所に爪受部3が形成されることになる。
【0035】
爪部2と爪受部3とは互いに嵌め合い可能な形状とされている。具体的には、爪受部3は係合用の貫通孔31を備え、この貫通孔31に爪部2が挿入され、爪部2の先端に形成された突起21が引っ掛かることによって、爪部2が爪受部3に抜け留め防止状態に嵌め合わされる(図1参照)。ただし、爪部2および爪受部3は、互いに嵌め合い可能な形状であればどのようなものでもよく、必ずしも上記の形状である必要はない。
【0036】
<1−3.連結用部材の配置ルール>
上述したとおり、分割部材11には、分岐部111の個数と同数個の爪部2と、爪部2と同数個の爪受部3とが形成される。ここで、複数個の爪部2と複数個の爪受部3とを、分割部材11においてどのように配置するかは、定められた配置ルールにしたがって決定される。この配置ルールについて、図3を参照しながら説明する。図3は、連結用部材の配置ルールを説明するための図である。
【0037】
まず、分割部材11の線対称軸を1つ選択する(第1ステップ)。ただし、分割部材11に複数の線対称軸が存在する場合、いずれの線対称軸が選択されてもよい。例えば、図3に例示されるように、各分岐部111がいずれも同じ長さであり、かつ、等しい分岐角度で分岐しているような分割部材11には4つの線対称軸が存在するが、この4つの線対称軸のうちのいずれが選択されてもよい。図3においては、「線対称軸K1」と示される線対称軸が選択されたとする。
【0038】
続いて、選択された線対称軸K1を挟んで一方の側(例えば左側)にある複数の端部位置Pに爪部2、あるいは、爪受部3を配置する(第2ステップ)。この側には、爪部2、あるいは、爪受部3をどのように配置してもよい。
【0039】
例えば、第2ステップにおいて、線対称軸K1を挟んで一方の側(例えば左側)にある複数の端部位置Pの全てに爪部2を配置してもよい(配置パターンA1参照)。
【0040】
また例えば、第2ステップにおいて、線対称軸K1を挟んで一方の側(例えば左側)にある1つの端部位置Pに例えば爪部2を配置した場合、当該端部位置Pと線対称軸(選択された線対称軸K1とは別の線対称軸)K2を挟んで対象となる端部位置Pには、異なる種類の連結用部材である爪受部3を配置する、といった具合に連結用部材を配置していってもよい(配置パターンA2参照)。この場合、線対称軸K1を挟んで一方の側(例えば左側)にある複数の端部位置Pのうち、ある端部位置Pと、当該端部位置Pと線対称軸K2を挟んで対象となる端部位置Pとには、異なる種類の連結用部材がそれぞれ配置されることになる。
【0041】
また例えば、第2ステップにおいて、線対称軸K1を挟んで一方の側(例えば左側)にある1つの端部位置Pに例えば爪部2を配置した場合、当該端部位置Pといずれかの線対称軸(分割部材11が有する複数の線対称軸のうちのいずれかの線対称軸)K2,K3,K4を挟んで対象となる各端部位置Pには、異なる種類の連結用部材である爪受部3を配置する、といった具合に連結用部材を配置していってもよい(配置パターンA3参照)。この場合、線対称軸K1を挟んで一方の側(例えば左側)にある複数の端部位置Pのうち、ある端部位置Pと、当該端部位置Pといずれかの線対称軸K2,K3,K4を挟んで対象となる各端部位置Pとには、異なる種類の連結用部材がそれぞれ配置されることになる。
【0042】
選択された線対称軸K1を挟んで一方の側(例えば左側)にある複数の端部位置Pのそれぞれに爪部2、あるいは、爪受部3が配置されると、続いて、他方の側にある複数の端部位置Pに爪部2、あるいは、爪受部3を配置する(第3ステップ)。ここでは、線対称軸K1を挟んで対称となる一対の端部位置Pには、異なる種類の連結用部材が配置されるように、爪部2あるいは爪受部3を配置する。つまり、第2ステップにおいて爪部2が配置された端部位置Pと線対称軸K1を挟んで対象となる端部位置Pには、異なる種類の連結用部材である爪受部3を配置する。また、第2ステップにおいて爪受部3が配置された端部位置Pと線対称軸K1を挟んで対象となる端部位置Pには、異なる種類の連結用部材である爪部2を配置する。
【0043】
第1ステップ〜第3ステップにしたがって連結用部材を配置すると、第1ステップで選択された線対称軸K1に対して対称の位置にある端部位置Pをペアとみた場合に、全てのペアのそれぞれにおいて、異なる種類の連結用部材が配置されることになる。つまり、ペアとされた端部位置Pの一方に爪部2が、他方に爪受部3がそれぞれ配置されることになる。
【0044】
以下において、分割部材11に規定される複数の線対称軸のうち、当該線対称軸について対称の位置にある端部位置Pをペアとみた場合に、全てのペアのそれぞれにおいて、異なる種類の連結用部材が配置されているような線対称軸を、「特定線対称軸」という。図3に例示される各配置パターンA1,A2,A3においては、第1ステップで選択された線対称軸K1が特定線対称軸となっている。特に、配置パターンA2の場合、当該線対称軸K1だけでなく、これとは別の線対称軸K2も特定線対称軸となっている。また、配置パターンA3の場合、分割部材11が有する全ての線対称軸K1〜K4が特定線対称軸となっている。
【0045】
ところで、配置パターンA3(すなわち、分割部材11が有する全ての線対称軸K1〜K4が特定線対称軸となるような配置パターン)は、上記に説明した配置ルールとは異なる配置ルールにしたがって形成することもできる。すなわち、配置パターンA3は、分割部材11が備える複数の分岐部111のそれぞれを分割部材11の分岐中心Qからみて同形状とすることによって形成することができる。例えば、各分岐部111において、いずれも、その根元部分(分割部材11の分岐中心Q)からみて同じ方向(例えば左方向)にある端部位置Pを爪部2の形成位置とし、他方の端部位置Pを爪受部3の形成位置とすれば、各分岐部111は、分割部材11の分岐中心Qからみて同形状となる。このような配置ルールにしたがって連結用部材を配置しても、配置パターンA3を形成することができる。
【0046】
<2.製造方法>
ワイヤハーネス100の製造方法について、図4を参照しながら説明する。図4は、ワイヤハーネス100の製造方法を説明するための図である。
【0047】
ワイヤハーネス100を製造する場合、作業者は、溝部を下に向けた姿勢とした分割部材11と、裏返して溝部を上に向けた姿勢とした分割部材11とで電線9を挟み込む。この際、作業者は、同形状の2個の分割部材11の一方を、特定線対称軸を軸にして裏返して、電線9を挟んで他方の分割部材11と突き合わせる。すると、一方の分割部材11に形成された複数の爪部2のそれぞれと、他方の分割部材11に形成された複数の爪受部3のそれぞれとが対向した状態となる。ただし、分割部材11を、特定線対称軸以外の線対称軸を軸にして裏返して他方の分割部材11と突き合わした場合、一部の端部位置Pにおいて爪部2同士、あるいは、爪受部3同士が対向する箇所がでてきてしまう。この場合は、どちらかの分割部材11を、分岐中心Qを通る回転軸を中心に回転させて位置あわせを行うことによって、一方の分割部材11に形成された複数の爪部2のそれぞれと、他方の分割部材11に形成された複数の爪受部3のそれぞれとが対向した状態とすることができる。
【0048】
続いて作業者は、互いに対向し合う爪部2と爪受部3とを嵌め合わせて、一方の分割部材11に形成された複数の爪部2のそれぞれを、他方の分割部材11に形成された対向する爪受部3のそれぞれにはめ込んだ状態とする。これによって、一対の分割部材11が連結されて筒状となり、電線保護具1が電線9に装着されたワイヤハーネス100が得られることになる(図1)。
【0049】
電線保護具1を電線9に装着する際の作業性を考えると、分岐中心Qを軸として回転させる位置あわせの作業を行わなくてすむ方が好ましい。この点において、例えば、図3に例示される配置パターンA3は、分割部材11の全ての線対称軸K1〜K4が特定線対称軸となっているので、分割部材11を線対称軸K1〜K4のいずれを軸にして裏返しても、全ての端部位置Pにおいて爪部2と爪受部3とが対向することになる。すなわち、回転による位置あわせは不要となり、作業者の作業効率が良好なものとなる。
【0050】
<3.効果>
上記の実施の形態においては、一方の分割部材11を、特定線対称軸を軸にして裏返して他方の分割部材11と突き合わすと、一方の分割部材11に形成された複数の爪部2のそれぞれと、他方の分割部材11に形成された複数の爪受部3のそれぞれとが対向することになり、この状態で対向する爪部2と爪受部3とを嵌め合わすことによって分岐した筒体を形成することができる。この構成によると、同形状の分割部材11を2個組み合わせることによって、分岐した電線保護具1を形成することができる。すなわち、電線9の分岐部において、電線9の周囲を覆う電線保護具1を、同形状の部材の組み合わせから形成することができる。
【0051】
特に、配置パターンA3を採用すれば、一方の分割部材11を、どの線対称軸を軸にして裏返しても他方の分割部材11と嵌め合わすことができる。この構成によると、一対の分割部材11を組み合わせて分岐した筒体を形成する際の作業効率が良好なものとなる。
【0052】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施形態に係るワイヤハーネス100a、および、ワイヤハーネス100aが備える電線保護具1aについて、図5〜図7を参照しながら説明する。図5は、ワイヤハーネス100aの斜視図である。図6は、ワイヤハーネス100aにおける固定用テープ90が巻かれた部分を拡大して示す図である。また、図7は、ワイヤハーネス100aを図6の矢印A方向から見た断面図である。ただし、図5〜図7において、図1から図4に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。また、以下において、上述したワイヤハーネス100と同じ部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0053】
<1.分割部材11a>
ワイヤハーネス100aが備える電線保護具1aは、一対の分割部材11aを備える。分割部材11aが備える各分岐部111aの筒面には、窓部4が形成される。窓部4は、電線保護具1a内に挿通された電線9の一部を露出させるための機能部である。窓部4は、その長さ(分岐部111aの延在方向に沿う長さ)が、少なくとも固定用テープ90の幅より大きく形成される。また、窓部4は、その幅(分岐部111aの周方向に沿う長さ)が、例えば分岐部111aの幅(周方向に沿う長さ)の例えば3分の2以上とされることが好ましい。なお、図の例では、窓部4は矩形状とされているが、必ずしも矩形状でなくともよく、例えば楕円形状等であってもよい。
【0054】
なお、窓部4は、分割部材11aの分岐中心Qと分岐部111との先端との中央付近に形成されてもよいし、分岐部111aの先端に寄りに形成されてもよい。後者の場合、後に明らかになるように、電線保護具1aにおける各分岐部の先端付近(すなわち、電線9の出口付近)において、電線9を電線保護具1aに対して固定することができるため、電線9が保護部材付電線1aからより抜けにくいという利点がある。
【0055】
<2.製造方法>
ワイヤハーネス100aの製造方法について説明する。ワイヤハーネス100aを製造する場合、作業者は、一対の分割部材11aの間に電線9を挟み込んで、一対の分割部材11aを互いに連結して筒状とする。この工程の詳細は、第1の実施の形態において説明した通りである。上述したとおり、分割部材11aの各分岐部111aには窓部4が形成されている。したがって、一対の分割部材11aが電線9の上下側から組み合わされて形成される電線保護具1aにおいては、各分岐部に、上下に対向する一対の窓部4が形成されることになり、この一対の窓部4から電線9の上側と下側とが露出することになる。
【0056】
電線保護具1aが電線9に装着されると、続いて、作業者は、窓部4の内部に沿わせるようにして固定用テープ90を巻き付ける。これによって、電線9が電線保護具1aに対して固定される。具体的には、図7に示されるように、電線保護具1aの内部において、固定用テープ90が電線9を上下(分割部材11aの対向方向)から挟み込むようにして電線9を固定する。この構成においては、電線9は、その延在方向について電線保護具1aに対して固定されるとともに、電線保護具1aの内部において上下に動かないように抑えられる。
【0057】
<3.効果>
保護部材付電線1aに対して電線9が固定されていない場合、保護部材付電線1aのいずれか分岐部から電線9が過剰に引っ張り出されてしまい、電線保護具1aの分岐中心Qと電線9の分岐中心とがずれてしまう可能性がある。このような事態が生じると、電線9を定められた寸法で車両内等に配索することができず、問題となる。この実施の形態に係る電線保護具1aにおいては、窓部4の内部に沿わせるようにして電線保護具1aに固定用テープ90を巻き付けることによって電線9を電線保護具1aに対して固定することができるので、上記の問題は生じない。
【0058】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施形態に係るワイヤハーネス100b、および、ワイヤハーネス100bが備える電線保護具1bについて、図8〜図10を参照しながら説明する。図8は、ワイヤハーネス100bの斜視図である。図9は、分割部材11bにおける分岐部111bの先端付近を拡大して示す図である。図10は、ワイヤハーネス100bにおける固定用テープ90が巻かれた部分を拡大して示す図である。ただし、図8〜図10において、図1から図4に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。また、以下において、上述したワイヤハーネス100と同じ部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0059】
<1.分割部材11b>
ワイヤハーネス100bが備える電線保護具1bは、一対の分割部材11bを備える。分割部材11bが備える各分岐部111bの先端には、その先端位置からさらに先に向かって延設されたベロ状の突起部5が形成される。突起部5は、例えば、各分岐部111bの先端に板状部材を着設することにより形成される。なお、半円筒状の分岐部111bの先端に板状部材を着設するにあたっては、例えば図9に示されるように、分岐部111bの先端における溝の底部にリブ51を形成し、リブ51の側面に板状部材の側端面を着設すればよい。
【0060】
突起部5の着設端部の付近には、その厚み(分岐部111bの表裏方向に沿う厚み)が他の部分よりも薄い肉薄部52が形成される。これによって、突起部5は、分岐部111bの表裏方向に揺動可能とされている。
【0061】
<2.製造方法>
ワイヤハーネス100bの製造方法について説明する。ワイヤハーネス100bを製造する場合、作業者は、一対の分割部材11bの間に電線9を挟み込んで、一対の分割部材11bを互いに連結して筒状とする。この工程の詳細は、第1の実施の形態において説明した通りである。上述したとおり、分割部材11bの各分岐部111bの先端には突起部5が形成されている。したがって、一対の分割部材11bが電線9の上下側から組み合わされて形成される電線保護具1bにおいては、各分岐部の先端(すなわち、電線9の出口)に、上下に対向する一対の突起部5が形成されることになる。
【0062】
電線保護具1bが電線9に装着されると、続いて、作業者は、電線保護具1bの各分岐部の先端からのびる一対の突起部5で電線9を上下から挟み込んで、固定用テープ90を巻き付ける。ただし、上述したとおり、各突起部5は分割部材11bの表裏方向(すなわち、電線保護具1bの径方向)に揺動可能とされている。したがって、電線9の径が小さい場合は、突起部5を電線保護具1bの筒中心に向けて揺動させて、突起部5を電線9に密着させ、この状態で固定用テープ90を巻き付ける。これによって、電線9が電線保護具1bに対して確実に固定される。この構成においては、電線9は、その延在方向について電線保護具1bに対して固定されるとともに、電線保護具1bの内部において上下および左右に動かないように抑えられる。
【0063】
なお、分割部材11においては、必ずしも全ての分岐部111bに突起部5を形成する必要はない。例えば、特定線対称軸を挟んで対称の位置にある一対の分岐部111bの少なくとも一方のみに突起部5を形成する構成としてもよい。この構成によると、一対の分割部材11bが電線9の上下側から組み合わされて形成される電線保護具1bにおいては、各分岐部の先端において、少なくとも上下のいずれかに突起部5が形成されることになる。1個の突起部5が形成された分岐部の先端においては、当該突起部5と電線9とを密着させ、この状態で固定用テープ90を巻き付けることによって、電線9を電線保護具1bに対して固定することができる。
【0064】
<3.効果>
この実施の形態に係る電線保護具1bにおいては、電線保護具1bの筒内部から延びる電線9と、筒端部に形成された突起部5とをテープ巻き等することによって、電線9を電線保護具1bに対して固定することができる。したがって、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
特に、上記の実施の形態によると、突起部5を揺動させてこれを電線保護具1bの筒内部から延びる電線9に密着させることが可能となり、この状態で、電線9と突起部5とをテープ巻き等することによって、電線9を電線保護具1bに対して固定することができる。この構成によると、電線9の径が小さい場合であっても、これを電線保護具1bに対して確実に固定することができる。
【0066】
<第1の変形例>
上述したとおり、上記の各実施の形態に係る電線保護具1,1a,1bが備える分岐の個数は4個に限られるものではない。分割部材11,11a,11bがn個の分岐部111,111a,111bを備える場合、2n個の端部位置Pにn個の爪部2とn個の爪受部3とをどのように配置するかは、上記に説明したルールに従って決定される。
【0067】
図11には、いずれも同じ長さであり、かつ、等しい分岐角度で分岐した3個の分岐部を備える分割部材11cにおいて、上記に説明したルールにしたがった爪部2および爪受部3の配置パターンが3個例示されている。ここに例示される各配置パターンA11,A12,A13においては、線対称軸L1が特定線対称軸となっている。特に、配置パターンA13の場合、分割部材11cの全ての線対称軸L1〜L3が特定線対称軸となっている。
【0068】
図12には、いずれも同じ長さであり、異なる分岐角度で分岐した3個の分岐部を備える分割部材11dにおいて、上記に説明したルールにしたがった爪部2および爪受部3の配置パターンが3個例示されている。ここに例示される各配置パターンA21,A22,A23においては、線対称軸M1が特定線対称軸となっている。
【0069】
<第2の変形例>
第2の実施の形態に係るワイヤハーネス100aにおいては、その備える電線保護具1aを形成する分割部材11aにおいて、各分岐部111aの筒面に窓部4が形成されていた。ここで、窓部4に代えて、各分岐部111eの筒面の両側縁に切り欠き部6を形成する構成としてもよい。
【0070】
図13には、この変形例に係るワイヤハーネス100eが示されている。この変形例においては、一対の分割部材11eの間に電線9を挟み込んで、一対の分割部材11eを互いに連結して筒状とした状態において、各分割部材11eに形成された切り欠き部6が向かい合って1個の窓部60が形成される。すなわち、一対の分割部材11eが電線9の上下側から組み合わされて形成される電線保護具1eにおいては、各分岐部に、左右(分割部材11eの対向方向および電線9の延在方向と直交する方向)に対向する一対の窓部60が形成されることになり、この一対の窓部60から電線9の左側と右側とが露出することになる。
【0071】
ここでも、作業者が、窓部60の内部に沿わせるようにして固定用テープ90を巻き付けることによって、電線9を電線保護具1eに対して固定することができる。ここでは、電線保護具1eの内部において、固定用テープ90が電線9を左右(分割部材11aの対向方向と直交する方向)から挟み込むようにして電線9を固定する。したがって、電線9は、その延在方向について電線保護具1eに対して固定されるとともに、電線保護具1eの内部において左右に動かないように抑えられる。
【0072】
<第3の変形例>
第3の実施の形態に係るワイヤハーネス100bにおいては、その備える電線保護具1bを形成する分割部材11bにおいて、各分岐部111bの先端に突起部5が形成されていた。ここで、突起部5を分割部材11bに着設する態様は、上記に説明したリブ51を設ける構成に限らない。例えば、図14に示されるように、電線保護具1fを形成する各分割部材11fの各分岐部111fに、その延在方向に沿う平坦部53を形成し、平坦部53の側面に板状部材の側端面を着設する構成としてもよい。
【0073】
<第4の変形例>
第3の実施の形態に係るワイヤハーネス100bにおいては、その備える電線保護具1bを形成する分割部材11bにおいて、各分岐部111bの先端に板状部材を着設することにより突起部5が形成されていたが、突起部5を形成する態様はこれに限らない。例えば、図15〜図17に示されるように、分岐部の先端の一部を切り欠くことによって突起部を形成してもよい。
【0074】
図15に示されるワイヤハーネス100gにおいては、電線保護具1gを形成する各分割部材11gの各分岐部111gは、その先端部において、筒面の両側縁に切り欠き710が形成される。これによって、筒面の中央にベロ状の突起部71が形成されることになる。この分割部材11gが電線9の上下側から組み合わされて形成される電線保護具1gにおいては、各分岐部の先端(すなわち、電線9の出口)に、上下に対向する一対の突起部71が形成されることになる。作業者が、上下に対向する一対の突起部71の周囲に沿わせるようにして固定用テープ90を巻き付けることによって、電線9が電線保護具1gに対して固定される。ここでは、電線保護具1gの内部において、固定用テープ90が電線9を左右(分割部材11gの対向方向と直交する方向)から挟み込むようにして電線9を固定する。したがって、電線9は、その延在方向について電線保護具1gに対して固定されるとともに、電線保護具1gの内部において左右に動かないように抑えられる。
【0075】
図16に示されるワイヤハーネス100hにおいては、電線保護具1hを形成する分割部材11hの各分岐部111hは、その先端部において、筒面の一方の側縁に切り欠き720が形成される。これによって、筒面の側方にベロ状の突起部72が形成されることになる。この分割部材11hが電線9の上下側から組み合わされて形成される電線保護具1hにおいては、各分岐部の先端(すなわち、電線9の出口)に、斜め方向(分割部材11hの対向方向に対して斜めの方向)に対向する一対の突起部72が形成されることになる。作業者が、斜め方向に対向する一対の突起部72の周囲に沿わせるようにして固定用テープ90を巻き付けることによって、電線9が電線保護具1hに対して固定される。ここでは、電線保護具1hの内部において、固定用テープ90が電線9を斜め方向(分割部材11hの対向方向に対して斜めの方向)から挟み込むようにして電線9を固定する。したがって、電線9は、その延在方向について電線保護具1hに対して固定されるとともに、電線保護具1hの内部において斜め方向に動かないように抑えられる。
【0076】
図17に示されるワイヤハーネス100iにおいては、電線保護具1iを形成する分割部材11iの各分岐部111iは、その先端部において、筒面の中央に切り欠き730が形成される。これによって、筒面の両側方にベロ状の突起部73が形成されることになる。この分割部材11iが電線9の上下側から組み合わされて形成される電線保護具1iにおいては、各分割部材11iに形成された突起部73が連なり合って1個の突起部74が形成される。すなわち、一対の分割部材11iが電線9の上下側から組み合わされて形成される電線保護具1iにおいては、各分岐部の先端(すなわち、電線9の出口)に、左右に対向する一対の突起部74が形成されることになる。作業者が、左右に対向する一対の突起部74の周囲に沿わせるようにして固定用テープ90を巻き付けることによって、電線9が電線保護具1hに対して固定される。ここでは、電線保護具1hの内部において、固定用テープ90が電線9を上下(分割部材11iの対向方向)から挟み込むようにして電線9を固定する。したがって、電線9は、その延在方向について電線保護具1iに対して固定されるとともに、電線保護具1iの内部において上下に動かないように抑えられる。
【0077】
<第5の変形例>
第3の実施の形態に係るワイヤハーネス100bにおいては、その備える電線保護具1bを形成する分割部材11bにおいて、ベロ状の突起部5を形成していたが、突起部5は必ずしもベロ状でなくてもよい。例えば、分割部材の分岐部に巻き付け用の余長部を形成してもよい。
【0078】
図18には、この変形例に係るワイヤハーネス100jが示されている。この変形例は、いずれの分岐部111jも通らない特定線対称軸が存在する分割部材11j(例えば、図3の配置パターンA3)において適用することができる。この変形例においては、分割部材11jにおいて、いずれの分岐部111jも通らない特定線対称軸K4を挟んで互いに対称の位置にある分岐部111jをペアとする。そして、全ペアにおいて、ペアとされた一対の分岐部111jの一方のみに余長部8を形成する。
【0079】
この分割部材11jが電線9の上下側から組み合わされて形成される電線保護具1jにおいては、各分岐部において、いずれか一方の分割部材11jに形成された余長部8が突出する。すなわち、電線保護具1jの各分岐部の先端には、半筒状の突起が形成されることになる。作業者が、余長部8の溝に沿って電線9を嵌め入れた状態で、余長部8の周囲に沿わせるようにして固定用テープ90を巻き付けることによって、電線9が電線保護具1jに対して固定される。
【符号の説明】
【0080】
100,100a〜100j ワイヤハーネス
1,1a〜1j 電線保護具
11,11a〜11j 分割部材
4 窓部
5,7 突起部
6 切り欠き部
8 余長部
9 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の分岐部において前記電線の周囲を覆う電線保護具であって、
互いに組み合わされることによって分岐した筒体を形成する、一対の分割部材、
を備え、
前記分割部材が、
複数の半筒形状の分岐部と、
複数の雄部と、
複数の雌部と、
を備え、
前記分割部材の線対称軸の少なくとも1つについて、当該線対称軸に対して対称な一対の位置の全てにおいて、対とされている一方の位置に前記雄部が、他方の位置に前記雌部が形成される、電線保護具。
【請求項2】
請求項1に記載の電線保護具であって、
前記分割部材の線対称軸のうち、当該線対称軸に対して対称な一対の位置の全てにおいて、対とされている一方の位置に前記雄部が、他方の位置に前記雌部が形成されるような線対称軸を特定線対称軸とした場合に、
前記分割部材の全ての線対称軸が、前記特定線対称軸となっている電線保護具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電線保護具であって、
前記分割部材が、
前記分岐部の筒面に形成された窓部、
を備える電線保護具。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電線保護具であって、
前記分割部材が、
前記分岐部の両側縁に形成された切り欠き部、
を備える電線保護具。
【請求項5】
請求項1または2に記載の電線保護具であって、
前記分割部材が、
前記分岐部の先端からさらに先に向かって延設されたベロ状の突起部、
を備える電線保護具。
【請求項6】
請求項5に記載の電線保護具であって、
前記突起部が、前記分岐部の表裏方向に揺動可能に着設される電線保護具。
【請求項7】
電線の分岐部において前記電線の周囲を覆う電線保護具であって、
互いに組み合わされることによって分岐した筒体を形成する、一対の分割部材、
を備え、
前記分割部材が、
複数の半筒形状の分岐部と、
前記複数の分岐部のそれぞれの一方の側縁に形成された雄部、および、他方の側縁に形成された雌部と、
を備え、
前記複数の分岐部のそれぞれが、分岐中心からみて同形状とされる電線保護具。
【請求項8】
分岐した電線と、前記電線の分岐部において前記電線の周囲を覆う電線保護具とを備えるワイヤハーネスであって、
前記電線保護具が、
互いに組み合わされることによって分岐した筒体を形成する、一対の分割部材、
を備え、
前記分割部材が、
複数の半筒形状の分岐部と、
複数の雄部と、
複数の雌部と、
を備え、
前記分割部材の線対称軸の少なくとも1つについて、当該線対称軸に対して対称な一対の位置の全てにおいて、対とされている一方の位置に前記雄部が、他方の位置に前記雌部が形成される、ワイヤハーネス。
【請求項9】
分岐した電線と、前記電線の分岐部において前記電線の周囲を覆う電線保護具とを備えるワイヤハーネスであって、
前記電線保護具が、
互いに組み合わされることによって分岐した筒体を形成する、一対の分割部材、
を備え、
前記分割部材が、
複数の半筒形状の分岐部と、
前記複数の分岐部のそれぞれの一方の側縁に形成された雄部、および、他方の側縁に形成された雌部と、
を備え、
前記複数の分岐部のそれぞれが、分岐中心からみて同形状とされるワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−195998(P2012−195998A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56217(P2011−56217)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】