説明

電線処理装置

【課題】長尺の電線の一部を切断することによって所定長さの電線を得る電線処理装置において、電線の送給長さを高精度に計測することを可能とする。
【解決手段】電線処理装置1は、長尺の電線10Aを供給する供給装置11から供給される電線10Aを切断する切断刃21と、供給装置11と切断刃21との間に配置され、電線10Aを切断刃21の側に送給する送給装置13と、送給装置13よりも電線10Aの送給方向の下流側に配置され、電線10Aと接触することなく電線10Aの送給長さを計測する非接触式の測長装置40と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の送給長さを計測する装置を備えた電線処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネス等の製作に利用される電線処理装置は、ドラム等に巻かれた長尺の電線(以下、長尺電線という。)を切断装置に向かって送給し、切断装置における切断と長尺電線の送給とを順次繰り返すことにより、所定の長さの複数本の電線を得る。切断後の電線の長さが予め定められた所定長さとなるように、長尺電線の送給長さが制御される。
【0003】
特許文献1〜3には、長尺電線の送給長さを計測する装置(以下、測長装置という)が記載されている。図8に示すように、特許文献1に記載された測長装置104は、長尺電線Wを挟み込むローラ104aおよび104bを備えており、ローラ104aは回転量の計測が可能なエンコーダローラによって構成されている。測長装置104は、長尺電線Wの供給装置(図示せず)とカッター107a,107bとの間に配置されている。測長装置104とカッター107a,107bとの間には、長尺電線Wを送給する送給装置105が設けられている。
【0004】
カッター107a,107bが長尺電線Wの一部を切断すると、送給装置105が長尺電線Wをカッター107a,107b側に送給する。測長装置104によって計測される長尺電線Wの送給長さが所定長さになると、送給装置105の送給動作は停止され、カッター107a,107bが長尺電線Wを切断する。これにより、長尺電線Wから所定の長さの電線が切り取られる。
【0005】
説明は省略するが、特許文献2および3の測長装置もほぼ同様の構成を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−90043号公報
【特許文献2】特開2001−67956号公報
【特許文献3】実開平7−29716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、従来の測長装置104では、長尺電線Wがローラ104aに対して滑ってしまうことがある。このような滑り(スリップ)が生じると、長尺電線Wの送給長さを正確に計測することはできなくなる。特許文献2には、スリップ率を求め、スリップ率に基づいて計測値を補正することが提案されている。しかし、スリップ自体を抑制することはできないため、計測の高精度化には一定の限界がある。
【0008】
また、従来の測長装置104は、送給装置105よりも送給方向の上流側に位置している。測長装置104とカッター107a,107bとの間の距離は、比較的長い。そのため、測長装置104とカッター107a,107bとの間において、長尺電線Wのたるみが発生しやすい。従来の測長装置104では、長尺電線Wのたるみが原因となって計測の精度が低下する場合があった。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、長尺の電線の一部を切断することによって所定長さの電線を得る電線処理装置において、電線の送給長さを高精度に計測することを可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電線処理装置は、長尺の電線を供給する供給装置から供給される電線を切断するカッターと、前記供給装置と前記カッターとの間に配置され、前記電線を前記カッターの側に送給する送給装置と、前記送給装置よりも前記電線の送給方向の下流側に配置され、前記電線と接触することなく前記電線の送給長さを計測する非接触式の測長装置と、を備えたものである。
【0011】
上記電線処理装置によれば、測長装置は非接触式であるため、測長装置と電線との間に滑りは生じない。そのため、電線の滑りに起因する計測誤差の発生を防止することができる。また、測長装置は送給装置よりも電線の送給方向の下流側に配置されているので、電線の計測位置から下流側の部分の長さを短くすることができる。上記電線処理装置は、電線のたるみの影響を受けにくい。よって、上記電線処理装置によれば、電線の送給長さを高精度に計測することができる。
【0012】
前記電線処理装置は、前記送給装置と前記カッターとの間に配置され、前記電線をその長手方向にガイドするガイド部材を備え、前記測長装置は、前記ガイド部材の入口よりも前記電線の送給方向の下流側に配置されていることが好ましい。
【0013】
このことにより、電線の計測位置は送給方向のより下流側の位置となり、電線のたるみの影響は、より小さくなる。したがって、電線の送給長さをより高精度に計測することができる。
【0014】
前記測長装置は、前記ガイド部材の入口と前記カッターとの間に配置されていてもよい。
【0015】
前記測長装置は、前記ガイド部材に取り付けられていてもよい。
【0016】
このことにより、測長装置を支持する専用の部材が不要となり、部品点数を削減することができる。また、上記専用部材を設置するための余分なスペースは不要であり、省スペース化を図ることができる。
【0017】
前記測長装置は、前記カッターよりも前記電線の送給方向の下流側に配置されていてもよい。
【0018】
このことにより、カッターよりも上流側における電線のたるみの影響を受けることなく、電線の送給長さを計測することができる。電線のカッターによって切り離される部分を直接計測することができ、切断後の電線の長さをより正確に求めることができる。
【0019】
前記電線処理装置は、前記カッターの前記電線の送給方向の下流側に配置され、前記電線を保持する保持機構を備え、前記測長装置は、前記保持機構に取り付けられていてもよい。
【0020】
このことにより、測長装置を支持する専用の部材が不要となり、部品点数を削減することができる。また、上記専用部材を設置するための余分なスペースは不要であり、省スペース化を図ることができる。
【0021】
前記測長装置は、前記電線に向かって光を照射する発光部と、前記電線に反射された光を受ける受光部と、前記受光部が受けた光に基づいて前記電線の移動長さを検出する検出部とを有していてもよい。
【0022】
光学式の測長装置を用いることにより、電線を傷つけることなく、また、電線の性能を損なうことなく、比較的容易に電線の送給長さを計測することができる。
【0023】
前記電線は、導電体からなる芯線と前記芯線を覆う被覆とからなる少なくとも2本の被覆電線からなり、それら被覆電線は、被覆から露出した芯線同士が連結されることによって連結されていてもよい。前記電線処理装置は、前記測長装置の前記受光部が受けた光に基づいて前記両被覆電線の連結部を検出する連結部検出装置を備えていてもよい。
【0024】
切断後の電線のうち、連結部を含むものは不良品となる。上記電線処理装置によれば、測長装置を用いて連結部を検出することができ、例えば、その結果を利用して不良品を容易に分別することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、長尺の電線の一部を切断することによって所定長さの電線を得る電線処理装置において、電線の送給長さを高精度に計測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】電線処理装置の構成を模式的に示す平面図である。
【図2】測長装置の構成を模式的に示す側面図である。
【図3】測長装置が取り付けられたカッターユニットの正面図である。
【図4】測長装置が取り付けられたカッターユニットの側面図である。
【図5】ノズルおよび測長装置等の側面図である。
【図6】リア側のクランプおよび測長装置等の側面図である。
【図7】電線の連結部の側面図である。
【図8】従来の測長装置の構成を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は電線処理装置1の構成を模式的に示す平面図である。電線処理装置1は、長尺の被覆電線(以下、単に電線という。)を所定の長さに切断すると共に、切断された電線の端部の被覆を剥ぎ取り、それら端部に端子を圧着するものである。電線処理装置1により、両端に端子が圧着された電線が得られる。以下の説明では、切断される前の長尺の電線には符号10Aを付し、切断後の電線には符号10Bを付すこととする。
【0028】
図1に示すように、電線処理装置1は、電線10Aを供給する供給装置11と、電線10Aの切断と電線10A,10Bの被覆の剥ぎ取りとを行うカッターユニット20と、フロント側およびリア側の端子圧着装置30F,30Rと、電線10Aの送給長さを計測する測長装置40とを備えている。
【0029】
供給装置11の具体的構成は何ら限定されないが、本実施形態に係る供給装置11は、電線10Aが巻かれた回転自在なドラムによって構成されている。カッターユニット20は、電線10Aを切断する切断刃21と、電線10Aの端部の被覆を剥ぎ取るための剥ぎ取り刃22Fと、電線10Bの端部の被覆を剥ぎ取るための剥ぎ取り刃22Rとを備えている。供給装置11と切断刃21との間には、供給装置11側から切断刃21側に向かって順に、くせ取りローラ12、送給装置13、チューブ14、クランプ15F、ノズル16が配置されている。
【0030】
供給装置11から供給される電線10Aには、曲がり癖がついている場合がある。くせ取りローラ12は、供給装置11から供給された電線10Aの曲がり癖を矯正し、電線10Aを真っ直ぐに延ばすためのものである。くせ取りローラ12の構成は何ら限定されないが、例えば、千鳥状に配置された複数のローラによって構成される。
【0031】
送給装置13は、電線10Aを切断刃21側に向かって送給する装置である。送給装置13の構成も何ら限定されず、公知の各種送給装置を用いることができる。例えば、送給装置13は、サーボモータ等によって駆動される駆動ローラ13aと、従動ローラ13bと、テンショナー13cと、それら駆動ローラ13a、従動ローラ13b、およびテンショナー13cに巻き架けられたベルト13dとを備えた装置であってもよい。送給装置13から送られてきた電線10Aは、チューブ14内を通ることにより、クランプ15Fおよびノズル16に向けて真っ直ぐに導かれる。
【0032】
クランプ15Fは、電線10Aの先端部分を着脱自在に保持する部材である。クランプ15Fは、電線10Aの切断、被覆の剥ぎ取り、端子5の圧着、および電線10Aの旋回移動の際には電線10Aを保持する一方、電線10Aが長手方向に送給されるときには、電線10Aの保持を解除する。クランプ15Fの構成は特に限定されず、公知の各種のクランプを利用することができる。例えば、クランプ15Fとして、電線10Aを左右または上下から挟む込む一対の爪を有するもの等を好適に利用することができる。
【0033】
ノズル16は、電線10Aをガイドするガイド部材の一例である。ノズル16は、電線10Aを切断刃21に向けてガイドする。また、ノズル16は、電線10Aの被覆の剥ぎ取りの際には、電線10Aを剥ぎ取り刃22Fに向けてガイドし、電線10Aに端子5を圧着する際には、電線10Aを端子圧着装置30Fに向けてガイドする。電線処理装置1に電線10Aをセットする際に電線10Aの先端部をノズル16に挿入しやすいように、ノズル16の入口16aは出口16bよりも大きくなっている。
【0034】
チューブ14、クランプ15F、およびノズル16は、台17Fに搭載されている。台17Fは、垂直軸18F周りに旋回自在に構成されている。台17Fは、図示しないモータから駆動力を受け、垂直軸18F周りに旋回する。
【0035】
図2に示すように、切断刃21は、上下一対の刃21a,21bによって構成されている。ただし、電線10Aを切断できる限り、切断刃21の構成は何ら限定される訳ではない。切断刃21は、左右一対の刃を有していてもよい。また、切断刃21は、電線10Aが載せられた台に向かってプレスされる1本の刃によって構成されていてもよい。
【0036】
剥ぎ取り刃22Fは、電線10Aの被覆に切り込みを入れる上下一対の刃によって構成されている。被覆に切り込みが入れられた状態で電線10Aを後退させることにより、電線10Aの被覆が剥ぎ取られる。ただし、剥ぎ取り刃22Fの構成も何ら限定されず、公知の各種の剥ぎ取り刃を利用することができる。また、本実施形態のように切断刃21と剥ぎ取り刃22Fとが別々に構成されていてもよいが、切断刃21が剥ぎ取り刃22Fを兼用していてもよい。
【0037】
端子圧着装置30Fは、電線10Aの端部に端子5を圧着する装置である。端子圧着装置30Fには、公知の各種の端子圧着装置を利用することができる。
【0038】
説明は省略するが、リア側の各部の構成、すなわち、クランプ15R、台17R、剥ぎ取り刃22R、端子圧着装置30R等は、フロント側のクランプ15F、台17F、剥ぎ取り刃22F、端子圧着装置30F等と同様の構成を有している。リア側の剥ぎ取り刃22R、端子圧着装置30Rは、切断された電線10Bの端部に対し、それぞれ被覆の剥ぎ取り、端子5の圧着を行う。
【0039】
測長装置40は、送給装置13よりも電線10Aの送給方向の下流側(以下、単に下流側という。)に配置されている。本実施形態では特に、測長装置40はノズル16の入口16aよりも下流側に配置されている。ただし、測長装置40を送給装置13とノズル16の入口16aとの間に配置することも可能である。後述するように、測長装置40はノズル16に設けられていてもよい。測長装置40は、ノズル16の出口16bと切断刃21との間に配置されていてもよい。後述するように、測長装置40を切断刃21よりも下流側に配置することも可能である。
【0040】
測長装置40は、電線10Aと接触することなく電線10Aの送給長さを計測する装置である。すなわち、測長装置40は、非接触式の測長装置である。測長装置40の具体的構成は何ら限定されず、従来から公知の各種の非接触式測長装置を用いることができる。測長装置40は、光(例えば、レーザ光、赤外線、可視光等)を利用する光学式の非接触式センサ、電磁波を利用する非接触式センサ、超音波を利用する非接触式センサ等を備えたものであってもよい。測長装置40は、カメラを備え、撮像画像を利用して電線10Aの送給長さを計測するものであってもよい。
【0041】
図2に示すように、本実施形態に係る測長装置40は、半導体レーザ等からなる発光素子41と、フォトダイオード等からなる受光素子42と、レンズ44,45と、半導体の集積回路等からなる演算装置43と、それらを収容するケース46とを備えたものである。発光素子41から出力された光は、レンズ44を通過した後、電線10Aに照射される。電線10Aに照射された光は電線10Aの表面にて拡散反射し、その反射光はレンズ45で集光され、受光素子42に受光される。電線10Aからの反射光のパターンは、電線10Aの位置によって異なる。電線10Aの移動に伴い、受光素子42が受ける反射光のパターンは順次移動するように変化する。演算装置43は、受光素子42から信号を受け、受光素子42が受ける反射光のパターンの移動量を演算する。演算装置43は、その演算結果に基づいて電線10Aの移動量、すなわち送給長さを演算する。
【0042】
電線10Aを挟み込む一対のローラおよびエンコーダを備えた従来の接触式の測長装置と異なり、測長装置40は小型かつ軽量である。測長装置40は、切断刃21の近傍の小さなスペースにも配置することができる。また、測長装置40は、簡単な機構によって支持することができる。
【0043】
例えば、図3に示すように、測長装置40はカッターユニット20に取り付けられていてもよい。カッターユニット20は、一対の刃21a,21bを有する切断刃21と、一対の刃22Fa,22Fbを有するフロント側の剥ぎ取り刃22Fと、一対の刃22Ra,22Rbを有するリア側の剥ぎ取り刃22Rとを備えている。カッターユニット20は、支柱23と、支柱23に上下移動自在に支持された上側の移動板24aおよび下側の移動板24bと、それら移動板24a,24bを互いに同期して接近および離反するように駆動するモータ(図示せず)とを備えている。上側の刃21a、22Fa、および22Raは、上側の移動板24aに固定されている。下側の刃21b、22Fb、および22Rbは、下側の移動板24bに固定されている。両移動板24a,24bの移動に伴って、刃21aと刃21b、刃22Faと刃22Fb、刃22Raと刃22Rbは、それぞれ互いに接近または離反する方向に移動する。支柱23には、支持板25が固定されている。測長装置40のケース46は、支持板25に取り付けられている。測長装置40は、下方に向かって光を照射するように配置されている。
【0044】
ただし、測長装置40の設置位置および取付姿勢は、特に限定される訳ではない。図4に示すように、測長装置40を切断刃21(すなわち、刃21aおよび21b)よりも下流側に配置してもよい。図4に示す例では、支持板25は支柱23から切断刃21よりも下流側に向かって延びている。測長装置40は支持板25に取り付けられ、電線10Aの切断刃21よりも下流側に位置する部分に光を照射するように配置されている。
【0045】
測長装置40はカッターユニット20以外の部分に取り付けられていてもよい。図示は省略するが、測長装置40を支持する専用の支柱を設け、その支柱に支持板25を固定してもよい。
【0046】
図5に示すように、測長装置40はノズル16に取り付けられていてもよい。図5に示す例のように、測長装置40のケース46がノズル16に固定されていてもよいが、測長装置40の発光素子41、受光素子42、レンズ44,45、および演算装置43がノズル16に内蔵されていてもよい。図5に示す例では、測長装置40は、電線10Aのうちノズル16の出口16bを出た直後の部分に光を照射するように配置されている。このように、測長装置40は、電線10Aのノズル16外の部分に光を照射するように配置されていてもよい。また、測長装置40は、電線10Aのノズル16内の部分に光を照射するように配置されていてもよい。
【0047】
図6に示すように、測長装置40は、リア側のクランプ15Rに取り付けられていてもよい。クランプ15Rは、基部18と、基部18に設けられた左右一対の爪19とを備えている。両爪19は基部18に対して左右方向に移動自在であり、互いに接近する方向に移動することによって電線10を挟持する。図6に示す例では、測長装置40のケース46はクランプ15Rの基部18に取り付けられている。
【0048】
次に、電線処理装置1の動作について説明する。供給装置11から供給された電線10Aは、くせ取りローラ12によって真っ直ぐな状態に矯正され、送給装置13によってカッターユニット20側に送給される。測長装置40は電線10Aの送給長さを計測し、測長装置40の計測結果はコンピュータ2(図1参照)に送られる。コンピュータ2は、送給装置13を制御することにより、電線10Aの送給長さが所定長さになるまで送給を続け、送給長さが所定長さになると送給を一時的に停止する。これにより、切断刃21の下流側に位置する電線10Aの長さが所定長さとなる。切断刃21が電線10Aを切断すると、電線10Aの切断刃21の下流側部分が切り取られ、フロント側の端部に端子5が圧着された所定長さの電線10Bが得られる。台17F,17Rが旋回し、剥ぎ取り刃22F,22Rによって、電線10Aのフロント側の端部および電線10Bのリア側の端部の被覆が剥ぎ取られる。台17F,17Rは更に旋回し、端子圧着装置30F,30Rによって、電線10Aのフロント側の端部および電線10Bのリア側の端部に端子5が圧着される。両端に端子5が圧着された電線10Bはトレイ31に回収され、台17F,17Rは図1に示す初期位置に再び戻る。その後、同様の動作が繰り返され、両端に端子5が圧着された所定長さの電線10Bが順次得られる。
【0049】
以上のように、電線処理装置1によれば、測長装置40は電線10Aと接触することなく計測を行うので、電線10Aと接触するローラの回転量に基づいて計測を行う従来の測長装置と異なり、側長装置40に対する電線10Aのスリップは発生しない。したがって、スリップに起因する計測誤差の発生を防止することができる。
【0050】
測長装置40は送給装置13よりも下流側に配置されており、測長装置40と切断刃21との間の距離は比較的短くなっている。そのため、測長装置40の測定部分と切断刃21との間において、電線10Aのたるみは生じにくい。測長装置40によれば、電線10Aのたるみに起因する計測誤差を抑制することができる。
【0051】
したがって、測長装置40によれば、電線10Aの送給長さを従来よりも高精度に計測することができる。
【0052】
また、上記従来の測長装置では、一対のローラで電線10Aを挟み込まなければならないため、電線10Aの表面に傷がつくおそれがある。測長装置40によれば、計測に際して電線10Aの表面に傷をつけるおそれがなく、処理後の電線10Bの品質低下を防止することができる。
【0053】
測長装置40をノズル16の入口16aよりも下流側に配置することとすれば、測長装置40の測定部分と切断刃21との間の電線10Aのたるみを更に抑制することができる。測長装置40の計測精度を更に向上させることができる。
【0054】
測長装置40をノズル16に取り付けることとすれば、測長装置40を支持するための専用の支持機構が不要となる。部品点数を削減することができ、また、設置スペースを低減させることができる。
【0055】
測長装置40を切断刃21よりも下流側に配置することとすれば、切断刃21の上流側における電線10Aのたるみの影響を受けることなく、電線10Aの送給長さを計測することができる。測長装置40の計測精度をより一層向上させることができる。電線10Aの切り離される部分(切断刃21よりも下流側の部分)を直接計測することになるので、切り離される手前の部分(切断刃21よりも上流側の部分)を計測する場合、すなわち、切り離される部分を間接的に計測する場合に比べて、切り離される部分の長さをより正確に求めることができる。長さの誤差がより少ない電線10Bを得ることができる。
【0056】
測長装置40をクランプ15Rに取り付けることとすれば、測長装置40を切断刃21よりも下流側で支持するための専用の支持機構が不要となり、部品点数を削減することができ、また、設置スペースを小さく抑えることができる。
【0057】
電線10Aの被覆はビニル等からなり、照射された光を拡散反射する。光学式の測長装置40により、電線10Aと接触することなく送給長さを良好に計測することができる。
【0058】
図7に示すように、電線10Aは、複数の被覆電線51,52の芯線51a,52a同士が連結されることによって構成されていてもよい。芯線51a,52aと被覆51b,52bとでは、反射率が異なる。測長装置40の受光素子42が受ける受光量または受光パターンは、電線10Aの送給に伴って電線10Aの測定部分が被覆51bから芯線51aに変化するとき、および芯線52aから被覆52bに変化するときに、それぞれ急激に変化する。よって、測長装置40を利用して、芯線51a,52aを検出することが可能である。芯線51a,52aは、被覆電線51,52の連結部53である。コンピュータ2(図1参照)は、測長装置40を利用することにより、被覆電線51,52の連結部53を検出することができる。この際、コンピュータ2は、連結部53を検出する連結部検出装置として機能する。
【0059】
切断後の電線10Bのうち連結部53を含むものは、端子付き電線としては不良品となる。そこで、コンピュータ2は、測長装置40の計測結果に基づき、切断後の電線10Bが連結部53を含むか否かを判定し、連結部53を含む場合は、その電線10Bを不良品として除去するようにしてもよい。例えば、図1に示すように、良品を回収するトレイ31の横に不良品を回収するトレイ32を設け、クランプ15Rが不良品をトレイ32に排出するようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 電線処理装置
2 コンピュータ(連結部検出装置)
10A,10B 電線
11 供給装置
13 送給装置
15R リア側のクランプ(保持機構)
16 ノズル(ガイド部材)
16a ノズルの入口(ガイド部材の入口)
21 切断刃(カッター)
40 測長装置
41 発光素子(発光部)
42 受光素子(受光部)
43 演算装置(検出部)
53 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の電線を供給する供給装置から供給される電線を切断するカッターと、
前記供給装置と前記カッターとの間に配置され、前記電線を前記カッターの側に送給する送給装置と、
前記送給装置よりも前記電線の送給方向の下流側に配置され、前記電線と接触することなく前記電線の送給長さを計測する非接触式の測長装置と、
を備えた電線処理装置。
【請求項2】
前記送給装置と前記カッターとの間に配置され、前記電線をその長手方向にガイドするガイド部材を備え、
前記測長装置は、前記ガイド部材の入口よりも前記電線の送給方向の下流側に配置されている、請求項1に記載の電線処理装置。
【請求項3】
前記測長装置は、前記ガイド部材の入口と前記カッターとの間に配置されている、請求項2に記載の電線処理装置。
【請求項4】
前記測長装置は、前記ガイド部材に取り付けられている、請求項3に記載の電線処理装置。
【請求項5】
前記測長装置は、前記カッターよりも前記電線の送給方向の下流側に配置されている、請求項2に記載の電線処理装置。
【請求項6】
前記カッターの前記電線の送給方向の下流側に配置され、前記電線を保持する保持機構を備え、
前記測長装置は、前記保持機構に取り付けられている、請求項5に記載の電線処理装置。
【請求項7】
前記測長装置は、前記電線に向かって光を照射する発光部と、前記電線に反射された光を受ける受光部と、前記受光部が受けた光に基づいて前記電線の送給長さを検出する検出部とを有している、請求項1〜6のいずれか一つに記載の電線処理装置。
【請求項8】
前記電線は、導電体からなる芯線と前記芯線を覆う被覆とからなる少なくとも2本の被覆電線からなり、それら被覆電線は、被覆から露出した芯線同士が連結されることによって連結されており、
前記測長装置の前記受光部が受けた光に基づいて前記両被覆電線の連結部を検出する連結部検出装置を備えている、請求項7に記載の電線処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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