説明

電線把持用コネクタ

【課題】取付け作業性が良く、且つ、撤去時に分離脱落することのない電線把持用コネクタを提供する。
【解決手段】第1のコネクタ本体10と第2のコネクタ本体20と、コネクタ本体10、20が配電線80と分岐線90とを把持して固定するボルト30と、ナット40とを有し、互いに接する第1のコネクタ本体10の接触面には、配電線90を把持するための凹部16と分岐線90を把持するための凸部18とを具備し、同様に第2のコネクタ本体20の接触面には、凹部24、部26を具備し、ボルト30は、頭部32、角根部34、ネジ部36から成り、ネジ部36の先端は、カシメ部38を有し、角根部34は、カシメ部38の長さを加算した所定の長さを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電線と分岐線を把持する電線把持用コネクタに係り、詳しくは、取付け作業性が良く、且つ、撤去時に分離脱落することのない電線把持用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の電線把持用コネクタの取付け時の構成図である。図4aにおいて、従来の電線把持用コネクタ200は、第1のコネクタ本体10と第2のコネクタ本体20とボルト70と平座金60とバネ座金50とナット40とを有している。互いに接する第1のコネクタ本体10の接触面には、図4bに示す配電線80を把持するための凹部16と分岐線90を把持するための凸部18とを具備し、互いに接する第2のコネクタ本体20の接触面には、配電線80を把持するための凹部24と分岐線90を把持するための凹部26とを具備している。
【0003】
また、第1のコネクタ本体10の接触面には、凹部16と凸部18との間にボルト70の図5に明示されるネジ部76が貫通する貫通孔12を有し、且つ、第1のコネクタ本体10の接触面の反対側には、ボルト70の角根部74が収まる貫通孔12に連続した角根孔14を有し、第2のコネクタ本体20の接触面には、2つの凹部24、26の間にボルト70のネジ部76が貫通する貫通孔22を有している。図5は、従来のボルトの構造を示すボルト構造図である。図5において、ボルト70は、頭部72と、角根部74と、ネジ部76とから成っている。
【0004】
再び図4aにおいて、従来の電線把持用コネクタ200が、配電線80と分岐線90とを把持するために、ナット40が緩められる。通常電線把持用コネクタの取付け作業は、間接活線工法により行われため、ナット40は、絶縁操作棒の先に取付けられたソケットレンチを有する間接活線工具(図示せず)により、第1、2のコネクタ本体10、20が配電線80と分岐線90とを把持するに十分な幅に開口するまで緩められる。
【0005】
図4bにおいて、電線把持用コネクタ200が配電線80と分岐線90とを捉えると、安定してナット40を締め込むために、ソケットレンチがナット40を押し込むように、間接活線工具が操作される。この時ナット40はボルト70の方向に押されるため、ボルト70の角根部74が第1のコネクタ本体10の角根孔14から飛び出し、角根部74が角根孔14と接触しなくなり、ボルト70が空回りしてナット40を締め込むことができなくなる。
【0006】
図6は、従来の電線把持用コネクタの撤去時の構成図である。図6aは、従来の電線把持用コネクタ200が配電線80と分岐線90とを把持した取付け完了時の状態を示している。この状態において、線把持用コネクタ200を撤去する場合、取付け時と同様の間接活線工具により、ナット40が緩められる。図6bは、ナット40が過剰に緩められ、ボルト70から離脱した状態を示す。このような状態になると、第1、2のコネクタ本体10、20が取付け時の状態にまで開口して、配電線80と分岐線90とを把持できなくなり、従来の電線把持用コネクタ200が離脱落下するという事故が発生する。
【0007】
特許文献1には、コネクタ本体25の半円溝25dは、リード線たる撚線導体29の外接円と略一致する半円状の当接面を備えており、また、押え金具26のV溝26bの幅lは、リード線(撚線導体)29の外径と略同等とされ、V溝26bの深さhは、リード線(撚線導体)29の半径rよりも少なくされ、相対する半円溝25d及びV溝26bで把持せれるリード線(撚線導体)29は、コネクタ本体25と押え金具26間を貫通するボルト27及びナット28により締結される、旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−339835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、取付け作業性が良く、且つ、撤去時に分離脱落することのない電線把持用コネクタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電線把持用コネクタは、配電線と分岐線を把持する電線把持用コネクタであって、コネクタ本体と、コネクタ本体が配電線と分岐線とを把持した状態で固定するボルトと、ナットとを有し、コネクタ本体は、第1のコネクタ本体と第2のコネクタ本体とから成り、互いに接する第1のコネクタ本体の接触面には、配電線を把持するための凹部と分岐線を把持するための凸部とを具備し、互いに接する第2のコネクタ本体の接触面には、配電線を把持するための凹部と分岐線を把持するための凹部とを具備し、ボルトは、頭部と、角根部と、ネジ部とから成り、ネジ部の先端には、カシメ部を有し、第1のコネクタ本体の接触面には、凹部と凸部との間にボルトのネジ部が貫通する貫通孔を有し、且つ、第1のコネクタ本体の接触面の反対側には、角根部が収まる貫通孔に連続した角根孔を有し、第2のコネクタ本体の接触面には、2つの凹部の間にボルトのネジ部が貫通する貫通孔を有し、角根部は、カシメ部の長さを加算した所定の長さを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、取付け作業性が良く、且つ、撤去時に分離脱落することのない電線把持用コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の電線把持用コネクタの取付け時の構成図。
【図2】本発明のボルトの構造を示すボルト構造図。
【図3】本発明の電線把持用コネクタの撤去時の構成図。
【図4】従来の電線把持用コネクタの取付け時の構成図。
【図5】従来のボルトの構造を示すボルト構造図。
【図6】従来の電線把持用コネクタの撤去時の構成図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0013】
本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。図1は、本発明の電線把持用コネクタの取付け時の構成図である。図1において、ボルト30が図4におけるボルト70とは異なり、他は同様であるため、ボルト30を図2において説明し、他の説明を省略する。図2は、本発明のボルトの構造を示すボルト構造図である。図2において、ボルト30は、頭部32と、角根部34と、ネジ部36とから成り、ネジ部36の先端には、カシメ部38を有している。また、角根部34は、カシメ部38の長さを加算した所定の長さを有している。
【0014】
再び図1aにおいて、本願発明の電線把持用コネクタ100が、配電線80と分岐線90とを把持するために、ナット40が間接活線工具により、第1、2のコネクタ本体10、20が、配電線80と分岐線90とを把持するに十分な幅に開口するまで緩められる。図1bにおいて、電線把持用コネクタ100が配電線80と分岐線90とを捉えると、安定してナット40を締め込むために、ソケットレンチがナット40を押し込むように、間接活線工具が操作される。この時ナット40はボルト70の方向に押されるが、カシメ部38を越えて緩むことはできないため、ボルト30の角根部34が第1のコネクタ本体10の角根孔14から飛び出すことはない。これにより、角根部74と角根孔14との接触は保たれ、ボルト70が空回りすることはなく、ナット40は安定して所定の量だけ締め込まれ、配電線80と分岐線90とを所定の強度で把持することができる。
【0015】
図3は、本発明の電線把持用コネクタの撤去時の構成図である。図3aは、本発明の電線把持用コネクタ100が、配電線80と分岐線90とを把持した取付け完了時の状態を示している。この状態において電線把持用コネクタ100を撤去する場合、取付け時と同様の間接活線工具により、ナット40が緩められる。図3bは、ナット40が緩められ、カシメ部38の位置で止まっている状態を示している。このように、ナット40はカシメ部38の位置を越えて緩むことはできないため、ボルト32から離脱することはない。このため、電線把持用コネクタ100が離脱落下するという事故の発生を防止することが可能となる。
【0016】
以上説明したように本発明によれば、取付け作業性が良く、且つ、撤去時に分離脱落することのない電線把持用コネクタを提供することができる。
【符号の説明】
【0017】
10 第1のコネクタ本体
12 貫通孔
14 角根孔
16 凹部
18 凸部
20 第2のコネクタ本体
22 貫通孔
24 凹部
26 凹部
30 ボルト
32 頭部
34 角根部
36 ネジ部
38 カシメ部
40 ナット
50 バネ座金
60 平座金
70 ボルト
72 頭部
74 角根部
76 ネジ部
80 配電線
90 分岐線
100 本発明の電線把持用コネクタ
200 従来の電線把持用コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線と分岐線を把持する電線把持用コネクタであって、
コネクタ本体と、前記コネクタ本体が前記配電線と前記分岐線とを把持した状態で固定するボルトと、ナットとを有し、
前記コネクタ本体は、第1のコネクタ本体と第2のコネクタ本体とから成り、互いに接する前記第1のコネクタ本体の接触面には、前記配電線を把持するための凹部と前記分岐線を把持するための凸部とを具備し、互いに接する前記第2のコネクタ本体の接触面には、前記配電線を把持するための凹部と前記分岐線を把持するための凹部とを具備し、
前記ボルトは、頭部と、角根部と、ネジ部とから成り、前記ネジ部の先端には、カシメ部を有し、
前記第1のコネクタ本体の前記接触面には、前記凹部と前記凸部との間に前記ボルトのネジ部が貫通する貫通孔を有し、且つ、前記第1のコネクタ本体の前記接触面の反対側には、前記角根部が収まる前記貫通孔に連続した角根孔を有し、
前記第2のコネクタ本体の前記接触面には、2つの前記凹部の間に前記ボルトのネジ部が貫通する貫通孔を有し、
前記角根部は、前記カシメ部の長さを加算した所定の長さを有することを特徴とする電線把持用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−55053(P2012−55053A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194413(P2010−194413)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000117010)旭電機株式会社 (127)
【Fターム(参考)】