説明

電線被覆カッタ

【課題】被覆電線の被覆を簡単に切断することができる電線被覆カッタを提供する。
【解決手段】電線被覆カッタ(1)は、長手方向が第1方向(Y)であり深さ方向が第2方向(Z)である溝(21)と、溝(21)の側面に隣接して設けられた円周カット部(30)と、第3方向(X)に沿ってスライド可能な刃(41)と、を備える。円周カット部(30)は、第2方向(Z)に沿って円周カット部(30)を貫通する貫通孔(31)と、第3方向(X)に沿って円周カット部(30)を貫通して溝(21)の側面に達し、且つ、貫通孔(31)と交差するように形成されたトンネル部(32)と、を備える。刃(41)は、トンネル部(32)の中を第3方向(X)に沿ってスライドするように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆電線の被覆を切断するための電線被覆カッタに関する。
【背景技術】
【0002】
図1Aは、典型的な被覆電線100を示している。被覆電線100は、導体である芯線101と、その芯線101の周囲を覆う絶縁体である被覆102を備えている。
【0003】
被覆電線100の被覆102を切断する一般的な手法は、次の通りである。まず、被覆電線100の所望の位置において、被覆102が円周方向に切断される。続いて、その位置から被覆電線100の端まで、軸方向に沿って被覆102が切断される。切断された被覆102を剥がすことによって、図1Bに示されるように、所望の長さだけ芯線101が露出する。
【0004】
このような被覆102の切断には、従来、カッタナイフが使用されていた。しかしながら、カッタナイフの刃は外部に露出しているため、作業中、作業者が受傷する恐れがあった。
【0005】
特許文献1には、ケーブル(被覆電線)の被覆カバーの除去を行うケーブルストリッパが開示されている。そのケーブルストリッパは、ケーブルの周壁を摺動可能に保持するガイドと、該ガイドに保持されるケーブルに対し進退自在な板状のカッタ刃と、を有する。そのカッタ刃は、ガイドの軸線方向と直交する回転軸に対し回動自在に、かつ、該回転軸に対し偏心して支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−145926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の1つの目的は、被覆電線の被覆を簡単に切断することができる電線被覆カッタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、[発明を実施するための形態]で使用される番号・符号を用いて、[課題を解決するための手段]を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための形態]との対応関係を明らかにするために括弧付きで付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0009】
本発明の1つの観点において、電線被覆カッタ(1)が提供される。その電線被覆カッタ(1)は、長手方向が第1方向(Y)であり深さ方向が第1方向(Y)と直交する第2方向(Z)である溝(21)と、溝(21)の側面に隣接して設けられた円周カット部(30)と、第1方向(Y)と第2方向(Z)とに直交する第3方向(X)に沿ってスライド可能な刃(41)と、を備える。円周カット部(30)は、第2方向(Z)に沿って円周カット部(30)を貫通する貫通孔(31)と、第3方向(X)に沿って円周カット部(30)を貫通して溝(21)の側面に達し、且つ、貫通孔(31)と交差するように形成されたトンネル部(32)と、を備える。刃(41)は、トンネル部(32)の中を第3方向(X)に沿ってスライドするように配置されている。
【0010】
刃(41)の全体がトンネル部(32)に挿入された場合、刃(41)の先端が溝(21)の内部に露出する。
【0011】
円周カット部(30)は、本体(10)と一体である固定部(30B)と、本体(10)から着脱可能な着脱ユニット(30A)と、を含んでいてもよい。この場合、貫通孔(31)は、第2方向(Z)に沿って着脱ユニット(30A)を貫通する第1貫通孔(31A)と、第2方向(Z)に沿って固定部(30B)を貫通する第2貫通孔(31B)と、を含む。更に、第1貫通孔(31A)と第2貫通孔(31B)とは第2方向(Z)に沿って一直線に並ぶ。
【0012】
着脱ユニット(30A)は、溝(21)に露出していてもよい。
【0013】
トンネル部(32)は、着脱ユニット(30A)と固定部(30B)との間の空間として形成されてもよい
【0014】
刃(41)は、刃ユニット(40)に取り付けられていてもよい。この場合、刃ユニット(40)は、第3方向(X)に沿ってスライド可能なように本体(10)に取り付けられている。
【0015】
電線被覆カッタ(1)は、刃ユニット(40)と円周カット部(30)との間に介在するバネ(50)を更に備えてもよい。
【0016】
円周カット部(30)は透明であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る電線被覆カッタによれば、被覆電線の被覆を簡単に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】図1Aは、被覆電線の被覆を切断する一般的な手法を示す概念図である。
【図1B】図1Bは、被覆電線の被覆を切断する一般的な手法を示す概念図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る電線被覆カッタを示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る電線被覆カッタを示す平面図及び断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係る電線被覆カッタの着脱ユニットを示す斜視図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係る電線被覆カッタの使用方法を説明するための図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態に係る電線被覆カッタの使用方法を説明するための図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態に係る電線被覆カッタの使用方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
1.構造
図2は、本実施の形態に係る電線被覆カッタ1を示す斜視図である。図3は、本実施の形態に係る電線被覆カッタ1を示す平面図、及びその平面図中の線A−Aに沿った断面図である。尚、X方向、Y方向、及びZ方向は、互いに直交している。
【0021】
電線被覆カッタ1の本体10は、縦線カット部20、円周カット部30、及び刃ユニット40を備えている。電線被覆カッタ1の本体10は、例えば透明プラスチックで形成される。
【0022】
縦線カット部20には、溝21が形成されている。その溝21の長手方向はY方向であり、その深さ方向はZ方向である。
【0023】
円周カット部30は、上記溝21の側面に隣接して設けられている。この円周カット部30は、貫通孔31とトンネル部32を備えている。貫通孔31は、Z方向に沿って円周カット部30を貫通するように形成されている。一方、トンネル部32は、X方向に沿って円周カット部30を貫通するように形成されている。より詳細には、トンネル部32は、X方向に沿って円周カット部30を貫通し、上記溝21の側面に達している。溝21側のトンネル部32の開口はトンネル口32aであり、溝21と反対側のトンネル部32の開口はトンネル口32bである。更に、X方向のトンネル部32とZ方向の貫通孔31とは、互いに交差するように形成されている。尚、円周カット部30は透明であることが好適である。
【0024】
また、図3に示されるように、円周カット部30は、着脱ユニット30Aと固定部30Bとに区分けされていてもよい。着脱ユニット30Aは、本体10から着脱可能である。一方、固定部30Bは、本体10と一体である。この場合、円周カット部30の貫通孔30は、第1貫通孔31Aと第2貫通孔31Bとに区分けされる。第1貫通孔31Aは、Z方向に沿って着脱ユニット30Aを貫通するように形成されている。一方、第2貫通孔31Bは、Z方向に沿って固定部30Bを貫通するように形成されている。第1貫通孔31Aと第2貫通孔31Bは、Z方向に沿って一直線に並び、貫通孔31を形成する。
【0025】
図4は、着脱ユニット30Aの一例を示している。図4の例では、着脱ユニット30Aの底面(固定部30Bと対向する面)に、トンネル部32に相当する溝が形成されている。この場合、着脱ユニット30Aが本体10に取り付けられた際、着脱ユニット30Aと固定部30Bとの間の空間がトンネル部32として形成される。
【0026】
尚、図2及び図3に示されるように、着脱ユニット30Aは、上記溝21に露出していることが好適である。この場合、着脱ユニット30Aを部分的に溝21内部にはみ出させることができる。また、第1貫通孔31Aの直径が異なる複数種の着脱ユニット30Aが用意されてもよい。
【0027】
刃ユニット40は、円周カット部30から見て溝21とは逆側に設けられている。言い換えれば、円周カット部30が溝21と刃ユニット40によって挟まれるように、溝21、円周カット部30及び刃ユニット40が配置されている。
【0028】
刃ユニット40の円周カット部30と対向する側面には、刃41が取り付けられている。また、刃ユニット40は、X方向に沿ってスライド可能(摺動可能)なように本体10に取り付けられている。例えば、刃ユニット40の側面にはX方向に沿ってガイドレール42が形成されており、本体10側のガイドに沿って刃ユニット40がスライドする。刃ユニット40のスライドに伴って、刃41もX方向に沿ってスライドする。
【0029】
刃41は、トンネル部32の中をX方向にスライド可能なように配置されている。より詳細には、刃41は、X方向に沿ってスライドすることにより、トンネル口32bからトンネル部32に挿入される。刃41が更にスライドすると、刃41はトンネル部32内部で貫通孔31と交差し、最終的には反対側のトンネル口32a(溝21)に達する。刃41の全体がトンネル部32に挿入された場合、刃41の先端は、トンネル口32aから溝21の内部に露出する。このとき、トンネル口32aから溝21の内部に突き出ている刃41の長さは、被覆電線100の被覆102の厚さ程度である。逆に、トンネル口32aから溝21の内部に突き出る刃41の長さが被覆102の厚さ程度になるように、円周カット部30及び刃41が設計される。
【0030】
図3に示されるように、円周カット部30と刃ユニット40との間にはバネ50が介在していてもよい。例えば、バネ50は、円周カット部30の固定部30Bと刃ユニット40との間をつなぐように配置される。このようなバネ50を設けることにより、円周カット部30の方に押し込まれた刃ユニット40が、自動的に元の位置に戻るようになり、好適である。
【0031】
2.使用方法
本実施の形態に係る電線被覆カッタ1の使用方法は、次の通りである。
【0032】
<円周方向の切断>
まず、被覆電線100の所望の位置において、被覆102が円周方向に切断される。図5を参照して、円周方向の切断方法を説明する。
【0033】
作業者は、被覆電線100を貫通孔31に挿入する。このとき、作業者は、所望の切断位置がトンネル部32の位置と一致するように、位置調整を行う。
【0034】
続いて、作業者は、刃ユニット40を、X方向に沿って円周カット部30の方にスライドさせる(押し込む)。その結果、トンネル口32bからトンネル部32に挿入された刃41は、トンネル部32の中をX方向にスライドし、貫通孔31に達する。刃41が貫通孔31内の被覆102に突き刺さった段階で、作業者は、刃ユニット40の押し込みを止める。このとき、円周カット部30が透明であると、刃41の位置を調整し易く、好適である。
【0035】
この状態で、作業者は、電線被覆カッタ1を、被覆電線100の軸方向の周りに回転させる。その結果、被覆電線100の所望の位置において、被覆102が刃41によって円周方向に切断され、切れ目110が形成される。
【0036】
その後、作業者が力を緩めると、バネ50の力により、刃ユニット40及び刃41が元の位置に自動的に戻る。作業者は、切れ目110が形成された被覆電線100を貫通孔31から引き抜く。
【0037】
<軸方向の切断>
次に、切れ目110の位置から被覆電線100の端まで、軸方向に沿って被覆102が切断される。図6を参照して、軸方向の切断方法を説明する。
【0038】
作業者は、被覆電線100を溝21にはめ込む。このとき、作業者は、切れ目110の位置がトンネル部32(トンネル口32a)の位置と概ね一致するように、位置調整を行う。
【0039】
続いて、作業者は、刃ユニット40を、X方向に沿って円周カット部30の方にスライドさせる(押し込む)。その結果、トンネル口32bからトンネル部32に挿入された刃41は、トンネル部32の中をX方向にスライドし、反対側のトンネル口32a(溝21)に達する。作業者は、刃41の先端が溝21内の被覆102の切れ目110に当たるように、微調整を行う。このとき、円周カット部30が透明であると、被覆電線100の位置を調整し易く、好適である。
【0040】
更に、作業者は、刃ユニット40を最後まで押し込む。このとき、トンネル口32aから溝21の内部に突き出ている刃41の長さは、被覆電線100の被覆102の厚さ程度である。つまり、刃41は、切れ目110の位置において被覆102だけに突き刺さっており、芯線101を傷つけない。
【0041】
この状態で、作業者は、被覆電線100をY方向に引き抜く。その結果、切れ目110の位置から被覆電線100の端まで、軸方向に沿って被覆102が切断される。このとき、刃41が芯線101を傷つけることはない。
【0042】
その後、作業者が力を緩めると、バネ50の力により、刃ユニット40及び刃41が元の位置に自動的に戻る。作業者は、被覆電線100を溝21から取り出す。
【0043】
このようにして切断された被覆102を剥がすことによって、図1Bに示されるように、所望の長さだけ芯線101が露出する。
【0044】
以上に説明されたように、本実施の形態に係る電線被覆カッタ1を用いることによって、被覆電線100の被覆102を簡単に切断することができる。また、刃41が本体10の外部に露出しないため、作業中や保管中に作業者が受傷する恐れが無い。
【0045】
更に、本実施の形態の電線被覆カッタ1によれば、一枚の刃41で、円周方向の切断と軸方向の切断の両方が可能である。ここで、特許文献1の場合のように刃を回転軸に対して回転自在に設ける必要はないことに留意されたい。すなわち、シンプルな構造で、且つ、簡単なメカニズムで被覆102を切断することが可能である。従って、特許文献1に記載されたケーブルストリッパと比較して、製造が容易であり、製造コストも削減され、更に、故障の発生も抑制される。
【0046】
また、円周カット部30が着脱ユニット30Aを含んでいる場合、被覆電線100の種類に応じて着脱ユニット30Aを入れ替えることができる。第1貫通孔31Aの直径が異なる複数種の着脱ユニット30Aが用意することによって、多種多様な被覆電線100に対応可能となり、好適である。
【0047】
例えば、図7は、直径が比較的小さい被覆電線100が対象である場合を示している。着脱ユニット30Aに形成された第1貫通孔31Aの直径R2は、固定部30Bに形成された第2貫通孔31Bの直径R1よりも小さい(R2<R1)。また、着脱ユニット30Aは溝21に露出しているため、図7に示されるように、着脱ユニット30Aを部分的に溝21内部にはみ出させることができる。これにより、溝部21の実効的な幅L2を、溝部21の元々の幅L1よりも小さくすることができる(L2<L1)。このように、被覆電線100の直径に応じて、着脱ユニット30Aを交換し、また、着脱ユニット30Aの設置位置を調整することによって、多種多様な被覆電線100に対応可能となる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態が添付の図面を参照することにより説明された。但し、本発明は、上述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で当業者により適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0049】
1 電線被覆カッタ
10 本体
20 縦線カット部
21 溝
30 円周カット部
30A 着脱ユニット
30B 固定部
31 貫通孔
31A 第1貫通孔
31B 第2貫通孔
32 トンネル部
32a トンネル口
32b トンネル口
40 刃ユニット
41 刃
42 ガイドレール
50 バネ
100 被覆電線
101 芯線
102 被覆
110 切れ目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向が第1方向であり、深さ方向が前記第1方向と直交する第2方向である溝と、
前記溝の側面に隣接して設けられた円周カット部と、
前記第1方向と前記第2方向とに直交する第3方向に沿ってスライド可能な刃と
を備え、
前記円周カット部は、
前記第2方向に沿って前記円周カット部を貫通する貫通孔と、
前記第3方向に沿って前記円周カット部を貫通して前記溝の側面に達し、且つ、前記貫通孔と交差するように形成されたトンネル部と
を備え、
前記刃は、前記トンネル部の中を前記第3方向に沿ってスライドするように配置された
電線被覆カッタ。
【請求項2】
請求項1に記載の電線被覆カッタであって、
前記刃の全体が前記トンネル部に挿入された場合、前記刃の先端が前記溝の内部に露出する
電線被覆カッタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電線被覆カッタであって、
前記円周カット部は、
本体と一体である固定部と、
前記本体から着脱可能な着脱ユニットと
を含み、
前記貫通孔は、
前記第2方向に沿って前記着脱ユニットを貫通する第1貫通孔と、
前記第2方向に沿って前記固定部を貫通する第2貫通孔と
を含み、
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とは前記第2方向に沿って一直線に並ぶ
電線被覆カッタ。
【請求項4】
請求項3に記載の電線被覆カッタであって、
前記着脱ユニットは、前記溝に露出している
電線被覆カッタ。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の電線被覆カッタであって、
前記トンネル部は、前記着脱ユニットと前記固定部との間の空間として形成される
電線被覆カッタ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の電線被覆カッタであって、
前記刃は、刃ユニットに取り付けられており、
前記刃ユニットは、前記第3方向に沿ってスライド可能なように本体に取り付けられている
電線被覆カッタ。
【請求項7】
請求項6に記載の電線被覆カッタであって、
前記刃ユニットと前記円周カット部との間に介在するバネを更に備える
電線被覆カッタ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の電線被覆カッタであって、
前記円周カット部は透明である
電線被覆カッタ。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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