説明

電縫管のシーム熱処理設備

【課題】電縫管製造ラインにおいて、シーム捩れが生じるような場合でも、溶接シーム部を適切に熱処理することができる電縫管のシーム熱処理設備を提供する。
【解決手段】管周方向に移動可能なシーム部誘導加熱装置16と、シーム部誘導加熱装置16の下流側に配置された冷却装置17と、冷却装置17の下流側に配置され、管軸を中心にして素管2を転回することでシーム捩れを矯正するシーム捩れ矯正装置20とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電縫管のシーム部を熱処理するためのシーム熱処理設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は従来の電縫管製造ラインにおける設備構成の一例を示した図である(例えば、特許文献1参照。)。この図4において、コイル状に巻回された鋼帯1が、アンコイラー11で巻き戻され、成形ロール群12を順次経るうちに次第に断面円形状に成形され、その後、高周波加熱装置13により板縁部を溶融状態にまで加熱され、スクイズロール14によって溶着接合されて素管2となる。そして、素管2は、その後ビード切削機15、シーム部誘導加熱装置16、冷却装置17を経てサイジングロール群18を通過し、切断機19によって定尺に切断され、所望の特性を有する電縫管3となる。
【0003】
その際に、電縫管3の肉厚、規格グレード、用途等に基づいて、図5(a)に示すように、素管2の溶接シーム部4をシーム部誘導加熱装置16によって所定の加熱条件で昇温した後、冷却装置17によって所定の冷却条件で急冷する。これによって、溶接シーム部4の材質特性が整えられる。
【特許文献1】特開平10−140251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、素管2は切断機19まで連続しており、シーム部4が管周方向へ捩れることがある。このようなシーム捩れが生じた状態でシーム部誘導加熱装置16によって加熱すると、図5(b)に示すように、シーム部4がシーム部誘導加熱装置16の誘導加熱領域5から外れてしまって、シーム部4の熱処理が適切に行なわれなくなる。その結果、所望の材質特性が得られず、電縫管3の品質不良を招くことになる。
【0005】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、電縫管製造ラインにおいて、シーム捩れが生じるような場合でも、溶接シーム部を適切に熱処理することができる電縫管のシーム熱処理設備を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0007】
[1]電縫管製造ラインにおいて、溶接された管のシーム部を熱処理する設備であって、管周方向に移動可能なシーム部誘導加熱装置と、該シーム部誘導加熱装置の下流側に配置された冷却装置と、該冷却装置の下流側に配置され、管軸を中心にして管を転回することでシーム捩れを矯正するシーム捩れ矯正装置とを備えていることを特徴とする電縫管のシーム熱処理設備。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、管周方向に移動可能なシーム部誘導加熱装置と、水冷後の管を管軸を中心にして転回することでシーム捩れを矯正するシーム捩れ矯正装置を備えているので、それらを組み合わせることによって、シーム捩れが生じるような場合でも、溶接シーム部を適切に熱処理することができる。その結果、良好な品質の電縫管を安定して製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施形態における電縫管製造ラインの設備構成を示した図である。図1において、コイル状に巻回された鋼帯1が、アンコイラー11で巻き戻され、成形ロール群12を順次経るうちに次第に断面円形状に成形され、その後、高周波加熱装置13により板縁部を溶融状態にまで加熱され、スクイズロール14によって溶着接合されて素管2となる。そして、素管2は、その後ビード切削機15、シーム熱処理設備21を経てサイジングロール群18を通過し、切断機19によって定尺に切断され、所望特性を有する電縫管3となる。
【0011】
そして、この実施形態においては、シーム熱処理設備21が、素管2のシーム部4を所定の加熱条件で昇温するためのシーム部誘導加熱装置16と、加熱されたシーム部4を所定の冷却条件で急冷するための冷却装置17と、冷却装置17を通過した素管2の管軸を中心にして転回することでシーム捩れを矯正するシーム捩れ矯正装置20とから構成されている。
【0012】
ここで、シーム部誘導加熱装置16は、図2(a)に示すように、その誘導子16aが素管2の真上から管周方向に±θの角度範囲で移動可能になっていて、シーム捩れが生じた場合に、図2(b)に示すように、その捩れ方向に移動することで、誘導加熱領域5にシーム部4が位置するようにする。
【0013】
なお、誘導子16aの管周方向への可動角度範囲をあまり大きくすると、装置が大掛かりになるので、可動角度範囲θは30°程度とするのが好ましい。
【0014】
また、シーム捩れ矯正装置20は、図3に示すように、素管2を左右で挟み、一方が素管2のパスライン高さに固定され、他方が高さを上下に移動自在な一対の鼓状ロール20a、20bを備えたものである。これにより、上下移動自在なロール20bの高さ位置を上方へ移動させれば、素管2は管軸を中心にAの矢印方向に転回され、下方へ移動させれば、Bの矢印方向に転回されるようになっている。
【0015】
なお、シーム捩れ矯正装置20を冷却装置17の下流側に配置しているのは、シーム部誘導加熱装置16での加熱直後は素管2が変形しやすいためにシーム捩れ矯正装置20による捩れ矯正効果がほとんど得られないのに対して、冷却装置17で冷却した後は素管2が常温になり変形しにくくなっているのでシーム捩れ矯正装置20による捩れ矯正効果が得られやすいからである。
【0016】
そして、上記のシーム熱処理設備21においては、シーム部誘導加熱装置16の出側と、シーム捩れ矯正装置20の入側において、シーム検出器またはオペレータの目視によってシーム4の管周方向の位置を観測し、その観測結果からシーム捩れが発生していると判断された場合には、シーム部誘導加熱装置16あるいはシーム捩れ矯正装置20を以下のように作動させる。
【0017】
まず、シーム捩れ矯正装置20入側でのシーム4の管周方向位置が素管2の真上から管周方向に±θの角度範囲内(例えば、±30°の範囲内)である場合には、シーム部誘導加熱装置16の誘導子16aを管周方向に移動させて、誘導加熱領域5をシーム4の位置に合わせるようにする。
【0018】
一方、シーム捩れ矯正装置20入側でのシーム4の管周方向位置が素管2の真上から管周方向に±θの角度範囲外(例えば、±30°の範囲外)である場合には、シーム捩れ矯正装置20によってシーム4の管周方向位置を±θの角度範囲内(例えば、±30°の範囲内)に矯正してから、シーム部誘導加熱装置16の誘導子16aを管周方向に移動させて、誘導加熱領域5をシーム4の位置に合わせるようにする。
【0019】
このようにして、この実施形態においては、管周方向に移動可能なシーム部誘導加熱装置16と、水冷後の素管2を管軸を中心にして転回することでシーム捩れを矯正するシーム捩れ矯正装置20とを備えているので、それらを組み合わせることによって、シーム捩れが生じるような場合でも、シーム部4を適切に熱処理することができる。その結果、良好な品質の電縫管を安定して製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態における電縫管製造ラインの設備構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるシーム部誘導加熱装置の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるシーム捩れ矯正装置の説明図である。
【図4】従来の電縫管製造ラインの設備構成の一例を示す図である。
【図5】従来のシーム部誘導加熱装置の説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1 鋼帯
2 素管
3 電縫管
4 溶接ビード部
5 誘導加熱領域
11 アンコイラー
12 成形ロール群
13 高周波加熱装置
14 スクイズロール
15 ビード切削機
16 シーム部誘導加熱装置
16a 誘導子
17 冷却装置
18 サイジングロール群
19 切断機
20 シーム捩れ矯正装置
20a 上下位置固定のロール
20b 上下位置可動のロール
21 シーム熱処理設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電縫管製造ラインにおいて、溶接された管のシーム部を熱処理する設備であって、管周方向に移動可能なシーム部誘導加熱装置と、該シーム部誘導加熱装置の下流側に配置された冷却装置と、該冷却装置の下流側に配置され、管軸を中心にして管を転回することでシーム捩れを矯正するシーム捩れ矯正装置とを備えていることを特徴とする電縫管のシーム熱処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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