説明

電縫管の外面ビード屑処理装置

【要 約】
【課 題】 簡単な構造で人手を要しない電縫管の外面ビード屑処理装置を実現する。
【解決手段】 溶接ビードが進入する孔125を有する固定刃ホルダ123に固定刃121を嵌め込み、これに接して往復移動するスライド刃ホルダ124の孔126の中央部分にスライド刃122を取り付け、溶接ビードを細断してスクラップ処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電縫管(電縫鋼管)の製造工程において溶接部分に発生する外面ビード屑の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電縫管Pは、図5の概念図に示すように、帯鋼をフォーミングロールを通過させて円筒形のオープンパイプOに成形し、合わせ面を溶接接合して製造される。溶接は突き合わされた両エッジ部分をスクイズロール4で加圧しながら、コンタクトチップ5またはワークコイルを接触させて抵抗(誘導)熱で加熱し接合するので、接合部(シーム)Sには内外面にビード(余盛)が発生する。6は溶接用の電源で、主として高周波交流電源が使用される。
【0003】
ビードは円筒面から突出しており、孔をくぐらせたり他の部品を取り付けたりするのに不都合であるばかりでなく美観上も好ましくないので、特に外面のものについては溶接直後に切削除去されるのが普通である。切削除去は、連続して製造され、製造ライン上を移送される電縫管のビード位置に切削バイトを押し当てて行う。バイトによる切削は、ビードの内部がまだ赤熱している高温状態で行うのが好ましいので、通常のライン速度、例えば60m/分であれば、切削バイトの位置はスクイズロールから1500mm以内であることが望ましい。
【0004】
従来一般に使用されている巻取りリール式のビード屑処理装置(スクラップワインダ)の例を図6の概念図に示す。Oは溶接前のオープンパイプ、Pは溶接された電縫管、10は切削バイト、Bは溶接ビード、Sはシーム(継目)、7は巻取りリールである。巻取りリール7は円板の表面から例えば4本の棒が突出しており、切削除去したビードの先端をこれに巻付け、以後巻取りリール7を回転させながら発生するビードをこれに巻き取って行き、所定量巻き取った巻取りリールは交換して巻き付いたビードをスクラップとして回収する。
【0005】
この方式には、最初に巻き付けるとき、ビードの先端を巻取りリールまで人間が誘導する必要があり、これは狭い機械の隙間に入らねばならない危険作業である。また、巻取りリールの回転が適当でないとビードがたるんでリールから外れたり逆に切れたりするので、巻取りリールに対する速度制御が必要である。また、巻取りリールから取り出したビードはゆるく不定型に巻かれた状態であるから、重量に対してかさが大きい、占積効率の悪いスクラップであり、ハンドリングの効率が悪い、などの問題点がある。
【0006】
このほか特に図示しないが、切削したビードを回転式の刃物にはさんで寸断するスクラップチョッパと呼ばれる方式もあるが、刃物部分に所定の大きさが必要なため切断位置を切削バイトにあまり近づけることができず、長い入口ガイドを設けることになって、この部分でスクラップ(ビード)が詰まりやすいという欠点があり、また装置も大掛かりでコストが高い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の巻取りリール方式、スクラップチョッパ方式における以上のような問題点を解消し、簡単な構造で人手を要しない電縫管の外面ビード屑処理装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電縫管の製造工程において溶接部外面のビードを除去処理する電縫管の外面ビード屑処理装置であって、溶接装置の直近下流側に電縫管の溶接部に対して設置された切削バイトと、この切削バイトによって電縫管から剥離された外面の溶接ビードを誘導する入口ガイドと、この溶接ビードが進入する孔を有する固定刃ホルダと、この固定刃ホルダの孔の周囲に嵌め込まれ、対向する両辺に刃面を有する固定刃と、この固定刃ホルダに接して前記対向する両辺の方向に往復移動し、前記溶接ビードが通過する孔を有するスライド刃ホルダと、このスライド刃ホルダの孔の中央部分に取り付けられ、両面に刃面を有するスライド刃と、このスライド刃を往復移動させる往復移動手段とからなるビード細断機と、前記スライド刃ホルダの孔に接続する位置に開口して設けられたスクラップシュートとからなる電縫管の外面ビード屑処理装置であり、望ましくは前記往復移動手段が流体圧シリンダである前記の電縫管の外面ビード屑処理装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電縫管の外面ビード屑処理装置は、構造が簡単でコンパクトであるからコストも低減され、また切削バイトのごく近くに設置することができるので人手によるビード先端部分の誘導が不要であり、また入口で詰まりが発生することもないなどの利点を有し、安全性と生産コストの削減に大きく寄与するという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の電縫管の外面ビード屑処理装置の一実施例を図面により説明する。図1は本発明に係わる電縫管製造ラインの要部を示す部分正面図で、1は外面ビード屑処理装置、そのうち10は切削バイト、11は入口ガイド、12は追って詳しく説明するビード細断機、13はスクラップシュート、2は外面ビード屑処理装置1全体をパイプ径に合わせて昇降させるウォームジャッキ式の昇降装置、3は必要に応じて装置全体をパイプ付近から退避させるクイックオープン装置、4はスクイズロールで、図5で説明したようにここが溶接位置である。Pは電縫管で、矢印は進行方向である。なお、切削バイト10、昇降装置2、クイックオープン装置3については従来のものと何ら変わりはない。
【0011】
図2は本発明実施例の電縫管の外面ビード屑処理装置1の要部、すなわちビード細断機12とこれに付随するスクラップシュート13の一部を示す正面図である。123は図1で示した切削バイト10によって切削され電縫管シーム部から剥離された外面の溶接ビードが通過する孔125を有する固定刃ホルダ、121はこの固定刃ホルダ123の孔125の周囲に嵌め込まれた固定刃、124はこの固定刃ホルダ123に接して前記対向する両辺の方向に往復移動し、同じく溶接ビードが通過する孔を有するスライド刃ホルダ、122はこのスライド刃ホルダ124の孔126の中央部分に取り付けられたスライド刃、127はこのスライド刃122、実際にはスライド刃ホルダ124を往復移動させる往復移動手段で、油圧、あるいは空気圧シリンダなどがコンパクトで望ましい。
【0012】
13は前記スライド刃ホルダの孔126に接続する位置に開口して設けられたスクラップシュートである。
【0013】
切削バイト10によって切削、剥離された溶接ビードは、必要に応じて設ける入口ガイド等を経由してビード細断機12の孔125に進入し、固定刃121、スライド刃122にはさまれて適当な長さで細断され、孔126から排出されてスクラップシュート13内に落下し、用意されたスクラップバッグなどに投入される。
【0014】
図3は実施例の刃物部分、すなわち固定刃121とスライド刃122とをやや分離させて示した部分斜視断面図である。固定刃121は固定刃ホルダ123の孔125の周囲に嵌め込まれ、対向する両辺、図3における左右の両辺に刃面を有する。一方、スライド刃122は、スライド刃ホルダ124の孔126の中央部分に取り付けられ、両面に刃面を有する。
【0015】
図4は実施例のビード細断機におけるビードの細断状況を示す説明図で、(a)では孔125から孔126に進入した溶接ビードBが、矢印方向に下降してきたスライド刃122によって細断される状況を示し、(b)では引き続いて孔125から孔126に進入した溶接ビードBが、矢印方向に上昇するスライド刃122によって細断される状況を示している。スライド刃122が孔126の中央部分に取り付けられていることによって、細断された後の溶接ビードBがつぎに細断される刃面の側に進入するので、スライド刃122の往復移動によって連続的に裁断が行われるのである。
【0016】
本発明のビード細断機12は薄い板状できわめてコンパクトであるから切削バイトの直近に設置することができ、ビード先端部分を人の手で誘導してやる必要もなく、また入口部分に詰まりを起こすおそれもない。従来のビード屑処理装置を備えた既設のラインに追加設置することも容易である。また細断されたビード屑は短い棒状であるからスクラップバッグ内に密に集積され、占積効率がよい。
【実施例】
【0017】
本発明の電縫管の外面ビード屑処理装置を中径管製造向上に設置した。電縫管のサイズは270〜700mm、ライン速度は30m/分である。ビード細断機の外形寸法はシリンダ部を含めて長さおよそ1200mm、幅はわずか150mm程度で、切削バイトはスクイズロールから1500mmの位置に、またビード細断機は切削バイトにごく接近して設置することができた。往復移動手段として20トン仕様の油圧シリンダを使用した。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係わる電縫管製造ラインの要部を示す部分正面図である。
【図2】実施例の電縫管の外面ビード屑処理装置の要部を示す正面図である。
【図3】実施例の刃物部分を示す部分斜視断面図である。
【図4】実施例のビード細断機におけるビードの細断状況を示す説明図である。
【図5】本発明に係わる電縫管製造ラインの概念図である。
【図6】従来の技術を示すビード屑処理装置の概念図である。
【符号の説明】
【0019】
1 外面ビード屑処理装置
2 昇降装置
3 クイックオープン装置
4 スクイズロール
5 コンタクトチップ
6 溶接電源
7 巻取りリール
10 切削バイト
11 入口ガイド
12 ビード細断機
13 スクラップシュート
121 固定刃
122 スライド刃
123 固定刃ホルダ
124 スライド刃ホルダ
125、126 孔
127 流体圧シリンダ(往復移動手段)
B 溶接ビード
O オープンパイプ
P 電縫管
S シーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電縫管の製造工程において溶接部外面の溶接ビードを除去処理する電縫管の外面ビード屑処理装置(1)であって、
溶接装置の直近下流側に電縫管の溶接部に対して設置された切削バイト(10)と、
この切削バイト(10)によって電縫管から剥離された外面の溶接ビードを誘導する入口ガイド(11)と、
この溶接ビードが進入する孔(125)を有する固定刃ホルダ(123)と、この固定刃ホルダ(123)の孔(125)の周囲に嵌め込まれ、対向する両辺に刃面を有する固定刃(121)と、この固定刃ホルダ(123)に接して前記対向する両辺の方向に往復移動し、前記溶接ビードが通過する孔(126)を有するスライド刃ホルダ(124)と、このスライド刃ホルダ(124)の孔(126)の中央部分に取り付けられ、両面に刃面を有するスライド刃(122)と、このスライド刃(122)を往復移動させる往復移動手段(127)とからなるビード細断機(12)と、
前記スライド刃ホルダの孔(126)に接続する位置に開口して設けられたスクラップシュート(13)と
からなる電縫管の外面ビード屑処理装置。
【請求項2】
前記往復移動手段(127)が流体圧シリンダである請求項1に記載の電縫管の外面ビード屑処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−88215(P2006−88215A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−279696(P2004−279696)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】