電荷制御剤等として使用されるモノアゾ鉄錯体化合物
【課題】有害金属を含まず、容易に発火や爆発のおそれのない帯電付与効果に優れた電荷制御剤及び負帯電性トナーに有用な化合物の提供。
【解決手段】例えば下記式で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【解決手段】例えば下記式で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真、静電記録等の分野で静電潜像を顕像化するための画像形成装置で用いられる電荷制御剤等として使用される新規なモノアゾ鉄錯体化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成プロセスでは、無機又は有機材料からなる感光体に静電潜像を形成し、これをトナーにより現像し、紙やプラスチックフィルム等に転写、定着して可視画像を得る。感光体にはその構成により負帯電性と正帯電性があり、露光により印字部を静電潜像として残す場合は逆符号帯電性トナーにより現像する。一方、印字部を除電して反転現像を行う場合は同符号帯電性トナーにより現像する。
【0003】
トナーは、結着樹脂、着色剤、及びその他の添加剤により構成される。望ましい帯電特性(帯電速度、帯電レベル、帯電安定性等)、経時安定性、環境安定性等を付与するために一般に電荷制御剤が添加される。この電荷制御剤の添加によりトナーの特性は大きく改善される。
【0004】
従来、提案され実用化された負帯電制御性の付与効果を有する電荷制御剤としては、中心金属がクロムであるモノアゾ金属錯体化合物や同じく鉄であるモノアゾ金属錯体化合物、更にはアルキルサリチル酸又は芳香族オキシカルボン酸の金属錯体又は塩を挙げることができる。
【0005】
しかしながら、これらの電荷制御剤は、トナーの結着樹脂に対する親和性や摩擦帯電付与効果が不十分であったり、帯電の立ち上がり速度が不十分なために、初期の複写画像が鮮明性に欠けたり、連続複写中における複写画像の品質が変動し易いという欠点があった。またアルキルサリチル酸又は芳香族オキシカルボン酸の金属錯体又は塩を成分とする電荷制御剤は、環境条件に対するトナー帯電特性の変動幅が大きく、季節要因により画質が著しく変化してしまう欠点を有している。
【0006】
モノアゾクロム錯体化合物の中には、これらの問題を一部解決しているものもあるが、燃焼廃棄時に有害な6価クロムがごく微量生成する可能性が完全には否定できず、環境や人体に与える影響が懸念される。従って、より安全な金属を使用し、且つ性能面においても十分に満足できる電荷制御剤が望まれていた。
【0007】
また、特許文献1には中心金属が鉄である電荷制御剤を使用したトナーが開示されている。中心金属としてクロムを使用しない負帯電性の電荷制御剤としては、実用的な帯電量(少なくとも−10μc/g)を有するものの、帯電立ち上がりがクロム錯体に比べ鈍く、且つ高湿度環境下における帯電量の低下という問題が解決されていない。また、特許文献2には、いくつかのアゾ鉄錯体が開示されているが、性能の良好なものは全てニトロ基を複数有するアゾ錯体であることから、化合物の合成中に発火・爆発の危険が常に伴う。特に中心金属が鉄の場合は、発火・爆発の発生が著しく、乾燥及び粉砕工程が極めて危険な作業となる。また粉砕型のトナーは、押し出し混練機等により混練され、且つそれを粉砕し製造することが一般的であることから、トナー製造時における粉体爆発の可能性も小さくない。中心金属をクロムとした場合は鉄より発火・爆発の危険性は低下するが、この場合においても得られたニトロ基を有するアゾクロム錯体は、自己反応性物質(第5類危険物)に該当するものが多い。
【0008】
【特許文献1】特開昭61−155464号公報
【特許文献2】特表平8−500912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、クロムの如き有害金属を含まず、また、ニトロ基を含有する化合物のように容易に発火や爆発を起こすおそれのない帯電付与効果に優れた電荷制御剤等として使用される新規なモノアゾ鉄錯体化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するための鋭意研究の結果得られたものであり、以下を要旨とするものである。
【0011】
1.式[1]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【化1】
式[1]中、A1、A2、B1、B2は、相互に独立して、H、アルキル基又はハロゲン原子を示す。アルキル基は炭素数が1〜8のものが好ましく、炭素数が1〜4のものが更に好ましい。ハロゲン原子は塩素が好ましい。Jは、H、アルカリ金属、NH4、又はアルキルアンモニウムを示し、これらは2種以上であってもよい。アルキルアンモニウムのアルキル基は、炭素数が1〜12、好ましくは3〜8のものが好ましく、窒素原子に同一又は異なったアルキル基が1〜4個結合したものでもよい。X1、X2は、相互に独立して、H、アルキル基、ハロゲン原子を示し、Y1、Y2は、相互に独立して、H、アルキル基、又はアルキル基若しくはハロゲンで置換された芳香族基又は無置換の芳香族基を示す。アルキル基は炭素数が1〜8が好ましく、炭素数1〜4が更に好ましい。(ただし、A1、A2、B1、B2、X1、X2、Y1、Y2が同時に水素の場合を除く。)
【0012】
2.式[2]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【化2】
式[2]中、Jは、H、Na、NH4、又はアルキルアンモニウムを示し、これらは2種以上であってもよい。アルキルアンモニウムのアルキル基は、炭素数が1〜12、好ましくは3〜8が好ましく、窒素原子に同一又は異なったアルキル基が1〜4個結合したものでもよい。X1、X2は、相互に独立して、H、アルキル基、又はハロゲン原子を示し、Z1、Z2は、相互に独立して、H、アルキル基、又はハロゲン原子を示す。アルキル基は炭素数が1〜8が好ましく、炭素数1〜4が更に好ましい。ハロゲン原子は塩素が好ましい。
【0013】
3.式[3]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【化3】
式[3]中、Jは、H、Na、NH4、又はアルキルアンモニウムを示し、これらは2種以上であってもよい。アルキルアンモニウムのアルキル基は、炭素数が1〜12、好ましくは3〜8が好ましく、窒素原子に同一又は異なったアルキル基が1〜4個結合したものでもよい。
【0014】
4.式[4]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【化4】
式[4]中、Jは、H、Na、NH4、又はアルキルアンモニウムを示し、これらの2種以上であってもよい。
【0015】
5.式[5]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【化5】
【0016】
6.上記1乃至5のいずれか1項記載のモノアゾ鉄錯体化合物を有効成分とする電荷制御剤。
7.電荷制御剤の体積平均粒径が0.1〜20μmである、上記6に記載の電荷制御剤。
8.少なくとも上記1乃至5のいずれか1項記載のモノアゾ鉄錯体化合物、着色剤及び結着樹脂を含有するトナー。
9.モノアゾ鉄錯体化合物が、結着樹脂100質量部当り0.1〜10質量部、トナー粒子に内添されている、上記8記載のトナー。
10.モノアゾ鉄錯体化合物が、結着樹脂100質量部当り0.2〜5質量部、トナー粒子に内添されている、上記8記載のトナー。
11.結着樹脂は、酸価が0.1〜100mgKOH/gである、上記8乃至10のいずれか1項記載のトナー。
12.着色剤は、磁性体である、上記8乃至11のいずれか1項記載のトナー。
13.磁性体は、磁性酸化鉄である、上記12記載のトナー。
14.磁性体は、結着樹脂100質量部当り10〜200質量部含有されている、上記12又は13記載のトナー。
15.着色剤は、非磁性の着色剤であり、結着樹脂100質量部当り0.1〜20質量部含有されている、上記8乃至11のいずれか1項記載のトナー。
16.ワックスが更に含有されている、上記8乃至15のいずれか1項記載のトナー。
17.ワックスは融点が70℃〜140℃である、上記16記載のトナー。
18.ワックスは、結着樹脂100質量部当り0.2〜20質量部含有されている、上記16又は17記載のトナー。
19.トナーの体積平均粒径は、2〜15μmである、上記8乃至18のいずれか1項記載のトナー。
20.トナーの体積平均粒径は、3〜12μmである、上記8乃至18のいずれか1項記載のトナー。
21.上記8乃至20のいずれか1項記載の負帯電性トナーから成る1成分系現像剤。
22.負帯電性トナー及びキャリアを有する2成分系現像剤において、該トナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤及びモノアゾ鉄錯体化合物を含有しており、該モノアゾ鉄錯体化合物は、上記1乃至5のいずれか1項記載のモノアゾ鉄錯体化合物である2成分系現像剤。
23.モノアゾ鉄錯体化合物が、結着樹脂100質量部当り0.1〜10質量部、トナー粒子に内添されている、上記22記載の2成分系現像剤。
24.モノアゾ鉄錯体化合物が、結着樹脂100質量部当り0.2〜5質量部、トナー粒子に内添されている、上記22記載の2成分系現像剤。
25.トナーは、スチレン−アクリル系樹脂を結着樹脂として含有している、上記22乃至24のいずれか1項記載の2成分系現像剤。
26.結着樹脂は、酸価が0.1〜100mgKOH/gである、上記25に記載の2成分系現像剤。
27.結着樹脂は、酸価が0.1〜50mgKOH/gである、上記25に記載の2成分系現像剤。
28.結着樹脂は、ガラス転移点(Tg)が35〜80℃である、上記22乃至27のいずれか1項記載の2成分系現像剤。
29.ワックスが更に含有されている、上記22乃至28のいずれか1項記載の2成分系現像剤。
30.ワックスは融点が70℃〜140℃である、上記29記載のトナー。
31.ワックスは、結着樹脂100質量部当り0.2〜20質量部含有されている、上記29又は30記載のトナー。
32.トナーの体積平均粒径は、2〜15μmである、上記22乃至31のいずれか1項記載の2成分系現像剤。
33.トナーの体積平均粒径は、3〜12μmである、上記22乃至31のいずれか1項記載の2成分系現像剤。
34.キャリアは、樹脂コートキャリアである、上記22乃至33のいずれか1項記載の2成分系現像剤。
35.樹脂コートキャリアは、キャリアコア粒子及び該キャリアコア粒子表面を被覆(コート)する樹脂である被覆材からなり、該被覆(コート)材は、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂から選択される1種以上の樹脂を有している上記34記載の2成分系現像剤。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電荷制御剤は、帯電の立ちあがりが著しく良好であり、従来の電荷制御剤よりも、短い時間でトナーを帯電させ、帯電量についても、高い帯電付与効果を有しており、また、周囲の温度、湿度等の環境の変化に対して、帯電量は安定している。更にクロムといった環境に対し懸念がある金属を含まないこと、及びニトロ基の如き発火性の高い置換基を有していないため、化合物の安全性も高い。
当該電荷制御剤を含有するトナーは、1成分あるいは2成分いずれの現像方式においても、画像濃度、カブリ濃度、ドット再現性あるいは、細線再現性等の画像特性評価に対して、優れた画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のモノアゾ鉄錯体化合物は、環境安定性に優れた化合物であり、かつ帯電制御効果に優れた化合物である。本発明のモノアゾ鉄錯体化合物をトナーに用いることにより、すばやい立ち上がりと高い帯電量を得ることができ、結果として鮮明な画像を得ることができる。
【0019】
本発明のモノアゾ鉄錯体化合物の製造方法については、公知のモノアゾ錯体化合物の製造方法を用いて製造できるが、以下に代表的な製造方法を記載するがこれに限定されるものではない。まず4−クロロ−2−アミノフェノール等のジアゾ成分に、塩酸や硫酸のような鉱酸を加え、内温が5℃以下になったら、水に溶解させた亜硝酸ナトリウムを内温10℃以下に維持しながら滴下する。10℃以下で30分乃至3時間撹拌し反応させることにより、4−クロロ−2−アミノフェノールをジアゾ化する。スルファミン酸を加え、ヨウ化カリウムでんぷん紙により過剰に亜硝酸が残存していないことを確認する。
【0020】
次に、3−メチル−1−(4−クロロフェニル)−5−ピラゾロン等のカップリング成分、水酸化ナトリウムの水溶液、炭酸ナトリウム、ブタノール等の有機溶媒を添加し、室温で攪拌溶解する。そこに前記ジアゾ化合物を注加し、室温で数時間攪拌しカップリングを行う。撹拌後、ジアゾ化合物とレゾルシンとの反応がないことを確認し反応終了とする。水を加えた後十分に攪拌し、静置してから分液する。更に水酸化ナトリウム水溶液を加え、攪拌洗浄し分液を行う。
【0021】
上記カップリングの際のブタノール以外の有機溶媒としては、カップリングの際に、使用できる溶媒であればよく、1価のアルコール、又は2価のアルコールが好ましい。1価のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル(炭素数1〜4)等が挙げられる。2価のアルコールとしては、エチレングリコール等が挙げられ、なかでも、溶剤は、ブタノールが好ましい。
【0022】
上記モノアゾ化合物のブタノール溶液に、水、サリチル酸、n−ブタノール、炭酸ナトリウムを添加し攪拌する。塩化第二鉄水溶液と炭酸ナトリウムを注加する。内温を30〜40℃に昇温し、TLCで反応を追跡する。5〜10時間後、原料のスポットが消失したことを確認し反応終了とする。攪拌停止後静止し、分液を行う。更に水、ブタノール、水酸化ナトリウム水溶液を加え、アルカリ洗浄を行う。濾過を行いケーキを取り出し、水で洗浄する。
【0023】
硫酸アンモニウムを水に加え、昇温しながら攪拌し、内温が85〜90℃になったら、上記のケーキの分散溶液を滴下する。97℃〜99℃でブタノールを留去しながら1時間攪拌し、冷却濾過後、水によりケーキを洗浄する。真空乾燥させ恒量に達したことを確認し、本発明のモノアゾ鉄錯体化合物を得ることができる。
【0024】
次に、第1表、第2表に、本発明のモノアゾ鉄錯体化合物の具体例を列挙するが、本発明は記載の化合物に限定されるものではない。但し、第1表、第2表の記号A1、A2、B1、B2、J、X1、X2、Y1、Y2は前記式[1]に記載のそれぞれに、また、表中の結合部位は、前記式[1]に記載されている置換位置の数字に対応している。また、表2中の化合物No.19、No.20の対イオンJのBu、Prは、それぞれノルマルブチル基、ノルマルプロピル基を示し、化合物No.21の対イオンである、Jは、90%がNH4、5%がNa、5%がHである。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
本発明の電荷制御剤は、前記式[1]、好ましくは前記式[2]、更に好ましくは前記式[4]最も好ましくは前記式[3]、[5]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物であり、前記式[1]乃至[5]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物を1種又は2種以上併用してもよい。また、未反応の原料又は中間体、あるいはサリチル酸の如き反応促進剤が10%以下混入していてもよい。
【0028】
本発明の電荷制御剤は、電荷制御特性、耐環境性、及び耐久性に優れており、トナーに用いた場合に、カブリがなく、画像濃度、ドット再現性、細線再現性が良好な画像を得ることができる。
本発明のモノアゾ鉄錯体化合物を含有したトナーは、高湿あるいは低湿環境下においても帯電特性の変動が少なく、安定した現像特性を保持できる。
【0029】
本発明の電荷制御剤は、体積平均粒径を0.1〜20μmに調整し、使用するのが好ましく、更に好ましくは0.1〜10μmである。上記体積平均粒径が0.1μmより小さいと、トナー表面に出現する該電荷制御剤が極めて少なくなり目的の電荷制御効果が得られなくなり、また20μmより大きいと、トナーから欠落する電荷制御剤が増加し、機内汚染等の悪影響が出るため好ましくない。
【0030】
本発明に使用する電荷制御剤であるモノアゾ鉄錯体化合物をトナーに含有させる方法としては、結着樹脂に着色剤等とともに添加し、混練し、粉砕する方法(粉砕トナー)、又は重合性の単量体モノマーにモノアゾ鉄錯体化合物を添加し、重合せしめてトナーを得る方法(重合トナー)のように、予めトナー粒子の内部に添加する方法(内添)と、予めトナー粒子を製造し、トナー粒子の表面に添加(外添)する方法がある。トナー粒子に内添する場合の好ましい本発明のモノアゾ鉄錯体化合物の添加量としては結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは、0.2〜5質量部で用いられる。また、トナー粒子に外添する場合は、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.01〜2質量部である。また、メカノケミカル的にトナー粒子表面に固着させるのが好ましい。
【0031】
また本発明のモノアゾ鉄錯体化合物を有効成分とする電荷制御剤は、既知の他の負帯電性の電荷制御剤と併用することができる。併用する好ましい電荷制御剤としては、本発明以外のアゾ系鉄錯体又は錯塩、アゾ系クロム錯体又は錯塩、アゾ系マンガン錯体又は錯塩、アゾ系コバルト錯体又は錯塩、アゾ系ジルコニウム錯体又は錯塩、カルボン酸誘導体のクロム錯体又は錯塩、カルボン酸誘導体の亜鉛錯体又は錯塩、カルボン酸誘導体のアルミ錯体又は錯塩、カルボン酸誘導体のジルコニウム錯体又は錯塩が挙げられる。前記カルボン酸誘導体は、芳香族ヒドロキシカルボン酸が好ましく、更に好ましくは、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸がよい。更にホウ素錯体又は錯塩、負帯電性樹脂型電荷制御剤等が挙げられる。
【0032】
本発明の電荷制御剤と他の電荷制御剤を併用する場合の添加量は、結着樹脂100質量部に対して本発明のモノアゾ鉄錯体である電荷制御剤以外の電荷制御剤は、0.1〜10質量部が好ましい。
【0033】
本発明に使用される結着樹脂の種類として、結着樹脂としては、公知のものであればいずれも使用できる。スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等のビニル重合体、又はこれらの単量体2種類以上からなる共重合体等、ポリエステル系重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。
【0034】
前記ビニル重合体、又は共重合体を形成するスチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体について以下に例示するがこれらに限定されるものではない。
【0035】
スチレン系単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フエニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−アミルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−へキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン、又はその誘導体等が挙げられる。
【0036】
アクリル系単量体としては、アクリル酸、あるいはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸、又はそのエステル類等が挙げられる。
【0037】
メタクリル系単量体としては、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸又はそのエステル類等が挙げられる。
【0038】
前記ビニル重合体、又は共重合体を形成する他のモノマーの例としては、以下の(1)〜(18)が挙げられる。(1)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフイン類;(2)ブタジエン、イソプレン等のポリエン類;(3)塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;(4)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;(5)ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;(6)ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;(7)N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;(8)、ビニルナフタリン類;(9)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体等;(10)マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;(11)マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;(12)マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アルケニルコハク酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、メサコン酸モノメチルエステルの如き不飽和二塩基酸のモノエステル;(13)ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;(14)クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;(15)クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物;(16)該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマー;(17)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;(18)4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルへキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマー。
【0039】
本発明のトナーにおいて、結着樹脂のビニル重合体、又は共重合体は、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよいが、この場合に用いられる架橋剤は、芳香族ジビニル化合物として例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられる。アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、又は上記の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。
【0040】
エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、又は上記の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたものが挙げられる。
【0041】
その他、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物、又はジメタクリレート化合物も挙げられる。ポリエステル型ジアクリレート類としては例えば、商品名MANDA(日本化薬社)が挙げられる。
【0042】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0043】
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、好ましくは、0.01〜10質量部用いることができ、特に、0.03〜5質量部用いることが好ましい。これらの架橋性モノマーのうち、トナー用樹脂に定着性、耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を1つ含む結合鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。これらの中でも、スチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0044】
本発明のビニル重合体又は共重合体の製造に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、1,1'−アゾビス(1−シクロへキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2',4'−ジメチル−4'−メトキシバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパ−オキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロへキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジークミルパーオキサイド、α−(tert−ブチルパーオキシ)イソプロピルべンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルへキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−エトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロへキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサレート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチル−オキシベンゾエ−ト、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキアリルカーボネート、イソアミルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシへキサハイドロテレフタレート、tert−ブチルパーオキシアゼレート等が挙げられる。
【0045】
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂の場合、樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)に可溶分のGPCによる分子量分布で、分子量3千〜5万(数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在し、分子量10万以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する樹脂が、定着性、オフセット性、保存性の点で好ましい。またTHF可溶分は、分子量分布10万以下の成分が50〜90%となるような結着樹脂も好ましい。更に好ましくは、分子量5千〜3万の領域に、最も好ましくは5千〜2万の領域にメインピークを有するのがよい。
【0046】
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂等のビニル重合体の酸価が、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gが更によく、更に好ましくは0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gがよい。
【0047】
ポリエステル系重合体を構成するモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、又は、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオール等が挙げられる。
【0048】
ポリエステル樹脂を架橋させるために3価以上のアルコールを併用することが好ましい。3価以上の多価アルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチルー1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等が挙げられる。
【0049】
上記ポリエステル系重合体を形成する酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物、こはく酸、アジピン酸、セバシン酸;アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物等があげられる。また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメツト酸、ピロメツト酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0050】
結着樹脂がポリエステル系樹脂の場合は、樹脂成分のTHF可溶成分の分子量分布で、分子量3千〜5万の領域に少なくとも1つのピークが存在するのがトナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましく、また、THF可溶分は、分子量10万以下の成分が60〜100%となるような結着樹脂も好ましい。更に好ましくは、分子量5千〜2万の領域に少なくとも1つのピークが存在するのがよい。
【0051】
結着樹脂がポリエステル樹脂の場合、その酸価が、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gが更によく、更に好ましくは0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gがよい。
本発明において、結着樹脂の分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0052】
本発明のトナーに使用できる結着樹脂として、前記ビニル重合体成分及び/又はポリエステル系樹脂成分中に、これらの両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含む樹脂も使用することができる。ポリエステル系樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。ビニル重合体成分を構成するモノマーとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸若しくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
また、ポリエステル系重合体、ビニル重合体とその他の結着樹脂を併用する場合、全体の結着樹脂の酸価が0.1〜50mgKOH/gを有する樹脂を60質量%以上有するものが好ましい。
【0053】
本発明において、トナー組成物の結着樹脂成分の酸価は、以下の方法により求め、基本操作はJIS K−0070に準ずる。
(1)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂及び架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5〜2.0gを精秤し、重合体成分の重さをWgとする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤又は磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
(2)300(ml)のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液150(ml)を加え溶解する。
(3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB(ml)とし、以下の式(1)で算出する。ただしfはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)=[(S−B)×f×5.61]/W (1)
【0054】
トナーの結着樹脂及び結着樹脂を含む組成物は、トナー保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が好ましくは35〜80℃、特に好ましくは40〜75℃である。Tgが35℃より低いと高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなる。またTgが80℃を超えると、定着性が低下する傾向にある。
【0055】
本発明で使用できる磁性体としては、(1)マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄。又は(2)鉄、コバルト、ニッケルのような金属、あるいは、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金。(3)及びこれらの混合物等が用いられる。
【0056】
磁性体として具体的に例示すると、Fe3O4、γ−Fe2O3、ZnFe2O4、Y3Fe5O12、CdFe2O4、Gd3Fe5O12、CuFe2O4、PbFe12O、NiFe2O4、NdFe2O、BaFe12O19、MgFe2O4、MnFe2O4、LaFeO3、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉等が挙げられる、上述した磁性体を単独で或いは2種以上の組合せて使用する。特に好適な磁性体は、四三酸化鉄又はγ−三二酸化鉄の微粉末である。
【0057】
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。異種元素を例示すると、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム等が挙げられる。好ましい異種元素としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、又はジルコニウムから選択される。異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていてもよいし、又は表面に酸化物あるいは水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されているのが好ましい。
【0058】
上記の異種元素は、磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させpH調整により、粒子中に取り込むことができる。また、磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出することができる。
【0059】
上記磁性体の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、磁性体10〜200質量部、好ましくは20〜150質量部使用するのがよい。これらの磁性体は個数平均粒径は0.1〜2μmが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5μmが好ましい。個数平均径は透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。
【0060】
また、磁性体の磁気特性としては、10Kエルステッド印加での磁気特性がそれぞれ、抗磁力20〜150エルステッド、飽和磁化50〜200emu/g、残留磁化2〜20emu/gのものが好ましい。
【0061】
前記磁性体は、着色剤としても使用することができる。本発明で使用できる着色剤としては黒色トナーの場合、黒色又は青色の染料又は顔料粒子が挙げられる。黒色又は青色の顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等がある。黒色又は青色の染料としてはアゾ系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、メチン系染料等も挙げられる。
【0062】
カラー用トナーとして使用する場合には、着色剤として、次の様なものが挙げられる。マゼンダ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基性染料、レーキ染料、ナフトール染料、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、顔料系のマゼンダ着色剤としては、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,39,40,41,48,49,50,51,52,53,54,55,57,58,60,63,64,68,81,83,87,88,89,90,112,114,122,123,163,202,206,207,209、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35等が挙げられる。
上記顔料を単独で使用しても構わないが、染料と顔料と併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
【0063】
染料系マゼンタ着色剤としては、C.I.ソルベントレッド1,3,8,23,24,25,27,30,49,81,82,83,84,100,109,121、C.I,デイスパースレッド9、C.I.ソルべントバイオレット8,13,14,21,27、C.I.デイスパースパイオレット1等の油溶染料、C.I.べーシックレッド1,2,9,12,13,14,15,17,18,22,23,24,27,29,32,34,35,36,37,38,39,40、C.I.ベーシックバイオレツト1,3,7,10,14,15,21,25,26,27,28等の塩基性染料が挙げられる。
【0064】
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン、塩基染料レーキ化合物が利用できる。具体的に挙げると、顔料系のシアン着色剤としては、C.I.ピグメントブルー2,3,15,16,17、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45又はフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料である。
【0065】
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が用いられる。具体的には、イエロー用顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,7,10,11,12,13,14,15,16,17,23,65,73,83、C.I.バットイエロー1,3,20等が挙げられる。
上記の着色剤の使用量は結着樹脂100量部に対して、0.1〜20質量部が好ましい。
【0066】
本発明のトナーは、キャリアと混合して2成分現像剤として使用してもよい。本発明に使用するキャリアは、通常のフェライト、マグネタイト等のキャリアも樹脂コートキャリアも使用することができる。
【0067】
樹脂コートキャリアは、キャリアコア粒子とキャリアコア粒子表面を被覆(コート)する樹脂である被覆材からなり、該被覆材に使用する樹脂としては、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル系樹脂、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素含有樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂が好ましく、他にはアイオモノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等のキャリアの被覆(コート)材として使用できる樹脂であればよく、これらの樹脂単独、あるいは、複数用いることができる。
【0068】
また、樹脂中に磁性粉が分散されたバインダー型のキャリアコアも用いることができる。
樹脂コートキャリアにおいて、キャリアコアの表面を少なくとも樹脂被覆剤で被覆する方法としては、樹脂を溶剤中に溶解若しくは懸濁せしめて塗布したキャリアコアに付着せしめる方法、あるいは単に粉体状態で混合する方法が適用できる。樹脂コートキャリアに対して樹脂被覆材の割合は、適宜決定すればよいが、樹脂コートキャリアに対し好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%がよい。
【0069】
2種以上の混合物の被覆(コート)剤で磁性体を被覆する使用例としては、(1)酸化チタン微粉体100質量部に対してジメチルジクロロシランとジメチルシリコンオイル(質量比1:5)の混合物12質量部で処理したもの、(2)シリカ微粉体100質量部に対してジメチルジクロロシランとジメチルシリコンオイル(質量比1:5)の混合物20質量部で処理したものが挙げられる。
【0070】
上記の樹脂中、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、含フッ素樹脂とスチレン系共重合体との混合物、又はシリコーン樹脂が好ましく用いられ、特にシリコーン樹脂が好ましい。
【0071】
含フッ素樹脂とスチレン系共重合体との混合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデンとスチレン−メタクリ酸メチル共重合体との混合物、ポリテトラフルオロエチレンとスチレン−メタクリル酸メチル共重合体との混合物、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合(共重合体質量比10:90〜90:10)とスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体(共重合質量比10:90〜90:10)とスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル−メタクリル酸メチル共重合体(共重合体質量比20〜60:5〜30:10:50)との混合物が挙げられる。
【0072】
シリコーン樹脂としては、含窒素シリコーン樹脂、及び含窒素シランカップリング剤とシリコーン樹脂とが反応することにより生成された変性シリコーン樹脂が挙げられる。
【0073】
キャリアコアの磁性材料としては、フェライト、鉄過剰型フェライト、マグネタイト、γ−酸化鉄等の酸化物や、鉄、コバルト、ニッケルのような金属、又はこれらの合金を用いることができる。またこれらの磁性材料に含まれる元素としては、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムが挙げられる。好ましいものとして、銅、亜鉛、及び鉄成分を主成分とする銅−亜鉛−鉄系フェライト、マンガン、マグネシウム及び鉄成分を主成分とするマンガン−マグネシウム−鉄系フェライトが挙げられる。
【0074】
キャリアの抵抗値は、キャリアの表面の凹凸度合い、被覆する樹脂の量を調整して106〜1010Ω・cmにするのがよい。キャリアの粒径は4〜200μmのものが使用できるが、好ましくは、10〜150μm、より好ましくは20〜100μmである。特に、樹脂コートキャリアは、50%粒径が20〜70μmであることが好ましい。
【0075】
2成分系現像剤ではキャリア100質量部に対して、本発明のトナー1〜200質量部で使用することが好ましく、より好ましくは、キャリア100質量部に対して、トナー2〜50質量部で使用するのがよい。
【0076】
本発明のトナーは更に、ワックスを含有していてもよい。本発明に用いられるワックスは次のようなものがある。例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス。酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物。又はそれらのブロック共重合体。キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろうの如き植物系ワックス。みつろう、ラノリン、鯨ろうの如き動物系ワックス。オゾケライト、セレシン、ペテロラタムの如き鉱物系ワックス、モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類。脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したものが挙げられる。
【0077】
ワックスの例としては、更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に直鎖のアルキル基を有する直鎖アルキルカルボン酸類の如き飽和直鎖脂肪酸。プランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸。ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウピルアルコール、セリルアルコール、メシリルアルコール、あるいは長鎖アルキルアルコールの如き飽和アルコール。ソルビトールの如き多価アルコール。リノール酸アミド、オレフィン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド。メチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド。エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセパシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類。m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド。ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪酸金属塩。脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス。ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物。植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
【0078】
好ましく用いられるワックスとしては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン。高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン。低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒の如き触媒を用いて重合したポリオレフィン。放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン。高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン。パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィツシャートロプシュワックス。ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス。炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基の如き官能基を有する炭化水素系ワックス。炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物。これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸の如きビニルモノマーでグラフト変性したワックスが挙げられる。
【0079】
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものを好ましく用いられる。
【0080】
本発明に使用するワックスは、定着性と耐オフセット性のバランスを取るために融点が70〜140℃であることが好ましく、更には70〜120℃であることが好ましい。70℃未満では耐ブロッキング性が低下する傾向があり、140℃を超えると耐オフセット効果が発現しにくくなる。
【0081】
また、2種以上の異なる種類のワックスを併用することにより、ワックスの作用である可塑化作用と離型作用を同時に発現されることができる。
可塑化作用を有するワックスの種類としては、例えば融点の低いワックス、又は分子の構造上に分岐のあるものや極性基を有する構造のものであり、離型作用を有するワックスとしては、融点の高いワックス、分子の構造では、直鎖構造のものや、官能基を有さない無極性のものが挙げられる。使用例としては、2種以上の異なるワックスの融点の差が10℃〜100℃のものの組み合わせや、ポリオレフィンとグラフト変性ポリオレフィンの組み合わせ等が挙げられる。
【0082】
2種のワックスを選択する場合は、同様構造のワックスの場合は、相対的に、融点の低いワックスが可塑化作用を発揮し、融点の高いワックスが離型作用を発揮する。この時、融点の差が10〜100℃の場合に、機能分離が効果的に発現する。10℃未満では機能分離効果が表れにくく、100℃を超える場合には相互作用による機能の強調が行われにくい。この場合、少なくとも一方のワックスの融点が好ましくは70〜120℃がよく、更に好ましくは、70〜100℃であり、機能分離効果を発揮しやすくなる傾向がある。
【0083】
また、ワックスは、相対的に、枝分かれ構造のものや官能基の如き極性基を有するものや主成分とは異なる成分で変性されたものが可塑作用を発揮し、より直鎖構造のものや官能基を有さない無極性のものや未変性のストレートなものが離型作用を発揮する。好ましい組み合わせとしては、エチレンを主成分とするポリエチレンホモポリマー又はコポリマーとエチレン以外のオレフィンを主成分とするポリオレフィンホモポリマー又はコポリマーの組み合わせ;ポリオレフィンとグラフト変成ポリオレフィンの組み合わせ;アルコールワックス、脂肪酸ワックス又はエステルワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせ;フイシャートロプシュワックス又はポリオレフィンワックスとパラフィンワックス又はマイクロクリスタルワックスの組み合わせ;フィッシャートロプシュワックスとポルリオレフィンワックスの組み合わせ;パラフィンワックスとマイクロクリスタルワックスの組み合わせ;カルナバワックズ、キャンデリラワックス、ライスワックス又はモンタンワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせが挙げられる。
【0084】
いずれの場合においてもトナーのDSC測定において観測される吸熱ピークにおいて70〜110℃の領域に最大ピークのピークトップ温度があることが好ましく、更に好ましくは70〜110℃の領域に最大ピークを有しているのがよい。このことより、トナー保存性と定着性のバランスをとりやすくなる。
【0085】
本発明のトナーにおいては、これらのワックスの総含有量は、結着樹脂100質量部に対し、好ましくは、0.2〜20質量部が用いられ、更に好ましくは0.5〜10質量部で用いられるのが効果的である。
【0086】
本発明では、ワックスの融点は、DSCにおいて測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもってワックスの融点とする。
【0087】
本発明においてワックス又はトナーのDSC測定では、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。測定方法は、ASTM D3418−82に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/minで、昇温させた時に測定されるDSC曲線を用いる。
【0088】
本発明のトナーには、流動性向上剤を添加してもよい。流動性向上剤は、トナー表面に添加することにより、トナーの流動性を改善(流動しやすくなる)するものである。例えば、カーボンブラック、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナ、それらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤若しくはシリコーンオイルにより表面処理を施した、処理シリカ,処理酸化チタン,処理アルミナが挙げられる。なかでも、微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナが好ましく、また、これらをシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカが更に好ましい。流動性向上剤の粒径は、平均一次粒径として、0.001〜2μmであることが好ましく、特に好ましくは、0.002〜0.2μmである。
【0089】
好ましい微粉末シリカは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。
【0090】
ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば以下の様な商品名で市販されているものがある。AEROSIL(日本アエロジル社商品名、以下同じ)−130、−300、−380、−TT600、−MOX170、−MOX80、−COK84:Ca−O−SiL(CABOT社商品名)−M−5、−MS−7、−MS−75、−HS−5、−EH−5、Wacker HDK(WACKER−CHEMIEGMBH社商品名)−N20 V15、−N20E、−T30、−T40:D−CFineSi1ica(ダウコーニング社商品名):Franso1(Fransi1社商品名)等が市販されている。
【0091】
更には、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が好ましくは30〜80%の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化は、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的あるいは物理的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法がよい。
【0092】
有機ケイ素化合物としては、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロルエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し、未端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0〜1個含有するジメチルポリシロキサン等がある。更に、ジメチルシリコーンオイルの如きシリコーンオイルが挙げられる。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
【0093】
流動性向上剤は、個数平均粒径が5〜100nmになるものがよく、更に好ましくは5〜50nmがよい。BET法で測定した窒素吸着による比表面積が好ましくは30m2/g以上、より好ましくは60〜400m2/gのものが好ましく、表面処理された微粉体としては、20m2/g以上が好ましく、特に40〜300m2/gが好ましい。これらの微粉体の好ましい適用量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.03〜8質量部である。
【0094】
本発明のトナーには、他の添加剤として、感光体・キャリアーの保護、クリーニング性の向上、熱特性・電気特性・物理特性の調整、抵抗調整、軟化点調整、定着率向上等を目的として、各種金属石けん、フッ素系界面活性剤、フタル酸ジオクチルや、導電性付与剤として酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化アンチモン等や、酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ等の無機微粉体等を必要に応じて添加することができる。又、これらの無機微粉体は必要に応じて疎水化してもよい。また、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等の滑剤、酸化セシウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、ケーキング防止剤、更に、トナー粒子と逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。
【0095】
これらの添加剤は、帯電量コントロール等の目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤、又は種々の処理剤で処理することも好ましい。
【0096】
本発明の電荷制御剤を、上記の如き添加剤およびトナーと一緒に、ヘンシェルミキサー、ボールミル、ナウターミキサー、V型ミキサー、W型ミキサー、スーパーミキサー等の混合機により充分に混合攪拌し、トナー粒子表面に均一に外添処理することにより目的とする静電荷現像用トナーを得ることもできる。
【0097】
本発明のトナーは熱的にも安定であり電子写真プロセス時に熱的変化を受けることがなく、安定した帯電特性を保持することが可能である。また、どのような結着樹脂にも均一に分散することから、フレッシュトナーの帯電分布が非常に均一である。そのため、本発明のトナーは未転写、回収トナー(廃トナー)においても、フレッシュトナーと較べて飽和摩擦帯電量、帯電分布とも変化はほとんど認められない。しかし、本発明の静電荷像現像用トナーから出る廃トナーを再利用する場合は、脂肪族ジオールを含むポリエステル樹脂を結着樹脂に選択したり、金属架橋されたスチレン−アクリル共重合体を結着樹脂とし、これに多量のポリオレフィンを加えた方法でトナーを製造することによってフレッシュトナーと廃トナーの隔差を更に小さくすることができる。
【0098】
本発明のトナーを製造する方法としては、既知の製造法によって製造することができる。製造方法について例示すると、結着樹脂、電荷制御剤、着色剤等の上述したトナー構成材料をボールミル等の混合機により十分混合する。その混合物を熱ロールニーダの如き加熱混練装置により良く混練し、冷却固化し、粉砕後、分級して得る方法(粉砕法)が好ましい。
【0099】
また上記混合物を溶媒に溶解させ噴霧により微粒化、乾燥、分級して得る方法でも製造できる。更に、結着樹脂を構成すべき単量体に所定の材料を混合して乳化又は懸濁液とした後に、重合させてトナーを得る重合法によるトナー製造法、コア材及びシェル材から成るいわゆるマイクロカプセルトナーにおいて、コア材あるいはシェル材、あるいはこれらの両方に所定の材料を含有させる方法によっても製造できる。更に必要に応じ所望の添加剤とトナー粒子とをヘンシェルミキサーの如き混合機により十分に混合することにより、本発明のトナーを製造することができる。
【0100】
上記粉砕法による本発明のトナーの製造法を更に詳しく説明すると、初めに結着樹脂と着色剤、電荷制御剤、その他必要な添加剤を均一に混合する。混合には既知の攪拌機、例えばヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ボールミル等を用いて混合することができる。得られた混合物を、密閉式のニーダー、あるいは1軸、又は2軸の押出機を用いて、熱溶融混練する。混練物を冷却後に、クラッシャーやハンマーミルを用いて粗粉砕し、更にジェットミル、高速ローター回転式ミル等の粉砕機で微粉砕する。更に風力分級機、例えばコアンダ効果を利用した慣性分級方式のエルボジェット、サイクロン(遠心)分級方式のミクロプレックス、DSセパレーター等を使用し、所定の粒度にまで分級を行う。更に外添剤等をトナー表面に処理する場合は、トナーと外添剤を高速攪拌機、例えばヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等で攪拌混合する。
【0101】
また、本発明のトナーは、懸濁重合法又は乳化重合法によっても製造できる。懸濁重合法においては、重合性単量体、着色剤、重合開始剤、電荷制御剤、更に必要に応じて架橋剤、その他の添加剤を、均一に溶解又は分散させて、単量体組成物を調整した後、この単量体組成物を分散安定剤を含有する連続相、たとえば水相中に適当な攪拌機及び分散機、例えばホモミキサー、ホモジナイザー、アトマイザー、マイクロフルイダイザー、一液流体ノズル、気液流体ノズル、電気乳化機等を用いて分散せしめる。好ましくは、重合性単量体組成物の液滴が所望のトナー粒子のサイズを有するように撹拌速度、温度、時間を調整し、造粒する。同時に重合反応を40〜90℃で行い、所望の粒径を有するトナー粒子を得ることができる。得られたトナー粒子を洗浄しろ取した後、乾燥する。トナー粒子の製造後の外添処理は前記記載の方法が使用できる。
【0102】
乳化重合法で製造すると上述の懸濁重合法より得られた粒子と比べ、均一性には優れるものの平均粒子径が0.1〜1.0μmと極めて小さいため、場合によっては乳化粒子を核として重合性単量体を後添加し粒子を成長させる、いわゆるシード重合や、乳化粒子を適当な平均粒径にまで合一、融着させる方法で製造することもできる。
【0103】
これらの重合法による製造は、粉砕工程を経ないためトナー粒子に脆性を付与させる必要がなく、更に従来の粉砕法では使用することが困難であった低軟化点物質を多量に使用できることから材料の選択幅を広げることができる。トナー粒子表面に疎水性の材料である離型剤や着色剤が露出しにくく、このためトナー担持部材、感光体、転写ローラーや定着器への汚染が少なくすることができる。
【0104】
本発明のトナーを重合法によって製造することによって、画像再現性、転写性、色再現性の如き特性を更に向上させることができ、微小ドットに対応するためにトナーの粒径を小径化し、比較的容易に粒度分布がシャープなトナーを得ることができる。
【0105】
本発明のトナーを重合方法で製造する際に使用する重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が用いられる。該ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体あるいは多官能性重合性単量体を使用することができる。
【0106】
単官能性重合性単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−フェニルスチレンの如きスチレン系重合性単量体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートメチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ジエチルフォスフェートメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体;不飽和脂肪族モノカルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニルの如きビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンの如きビニルケトン類が挙げられる。
【0107】
多官能性重合性単量体としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル等が挙げられる。
【0108】
本発明においては、前記単官能性重合性単量体を単独あるいは2種以上組み合わせて、また、単官能性重合性単量体と多官能性重合性単量体を組み合わせて使用することができる。また前記多官能性重合性単量体を架橋剤として使用することも可能である。上記した重合性単量体の重合の際に用いられる重合開始剤としては、油溶性開始剤及び/又は水溶性開始剤が用いられる。例えば、油溶性開始剤としては、2,2'−アゾビズイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルの如きアゾ化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、デカノニルパーオキシカーボネート、デカノニルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドの如きパーオキサイド系開始剤が挙げられる。
【0109】
水溶性開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2'−アゾビス(N、N'−ジメチレンイソブチロアミジン)塩酸塩、2,2'−アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩、アゾビス(イソブチルアミジン)塩酸塩、2,2'−アゾビスイソブチロニトリルスルホン酸ナトリウム、硫酸第1鉄又は過酸化水素が挙げられる。
【0110】
重合開始剤は重合性単量体100質量部に対して0.5〜20質量部の添加量が好ましく、単独又は併用してもよい。
重合トナーを製造する際に使用する分散剤としては、例えば無機系酸化物としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等が挙げられる。有機系化合物としては、例えばポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン等が使用されている。これらの分散剤は、重合性単量体100質量部に対して0.2〜2.0質量部を使用することが好ましい。
【0111】
これら分散剤は市販のものをそのまま使用してもよいが細かい均一な粒度を有する分散粒子を得るために、分散媒体中にて高速撹拌下にて該無機化合物を生成させることもできる。
【0112】
上記重合法で得られるトナーは、特別な処理をしない粉砕法によるトナーに較べトナー粒子の凹凸の度合いが小さい傾向にあり、不定形であるために静電潜像担持体とトナーとの接触面積が増加することにより、トナー付着力が高くなり、結果として機内汚染が少なく、より高画像濃度、より高品位な画像を得られやすい。
【0113】
また、粉砕法によるトナーにおいても、トナー粒子を、水中に分散させ加熱する湯浴法、熱気流中を通過させる熱処理法、又は機械的エネルギーを付与して処理する機械的衝撃法等によりトナー表面の凹凸の度合いを小さく方法が挙げられる。凹凸の度合いを小さくするために有効な装置としては、乾式メカノケミカル法を応用したメカノフージョンシステム(ホソカワミクロ社製)、I式ジェットミル、ローターとライナーを有する混合装置であるハイブリダイザー(奈良機械製作所社製)、高速撹拌羽を有する混合機であるヘンシェルミキサー等が挙げられる。
【0114】
前記トナー粒子の凹凸の度合いを示す値の一つとして、平均円形度で表現することができる。平均円形度(C)とは、下式(2)により円形度(Ci)を求め、更に下式(3)で示すように測定された全粒子の円形度の総和を測定された全粒子数(m)で除した値を意味する。
【0115】
【数1】
【0116】
【数2】
【0117】
上記円形度(Ci)は、フロー式粒子像分析装置(例えば、東亜医用電子製FPIA-1000)を用いて測定する。測定方法としては、ノニオン界面活性剤約0.1mgを溶解している水10mlにトナー約5mgを分散させた分散液を調整し、超音波(20kHz、50W)を分散液に5分間照射し、分散液濃度を5000〜20000個/μリットルとして、上記フロー式粒子像測定装置を用い、0.60μm以上159.21μm未満の円相当径を有する粒子の円形度分布を測定する。
【0118】
上記平均円形度の値は、0.955乃至0.990が好ましく、更に好ましくは、0.960乃至0.985にトナー粒子を調整すると、転写残トナーの増加を招くという現象が小さく、再転写を起こしにくい傾向にある。
【0119】
本発明のトナーの場合、画像性とトナーの生産性の面から、例えばミクロンサイザー(例えば、セイシン企業社製)等のレーザー式粒度分布測定機を使用した測定において、トナーの粒子径が体積基準の平均粒径で2〜15μmが好ましい。より好ましくは3〜12μmである。15μmを超える平均粒径になると解像度や鮮鋭性が鈍くなる傾向にあり、また、2μm未満の平均粒径では解像性は良好となるものの、トナー製造時の歩留まりの悪化によるコスト高の問題や機内でのトナー飛散、皮膚浸透等の健康への障害が生じる傾向がある。
【0120】
トナーの粒度分布に関して、本発明のトナーの場合、例えばコールターカウンター(コールター社製TA−II)による粒度測定により、2μm以下の粒子含有量が個数基準で10〜90%のものが望ましく、12.7μm以上の粒子の含有量が体積基準で0〜30%のものが望ましい。
【0121】
本発明の静電荷現像用トナーの場合、トナーの比表面積は、脱吸着ガスを窒素としたBET比表面積測定において、1.2〜5.0m2/gが好ましい。より好ましくは1.5〜3.0m2/gである。比表面積の測定は、例えばBET比表面積測定装置(例えば、島津製作所社製、FlowSorbII2300)を使用し、50℃で30分間トナー表面の吸着ガスを脱離後、液体窒素により急冷して窒素ガスを再吸着し、更に再度50℃に昇温し、このときの脱ガス量から求めた値と定義する。
【0122】
本発明のトナーの場合、見かけ比重(かさ密度)は、例えばパウダーテスター(例えば、ホソカワミクロン社製)を用いて測定した。非磁性トナーの場合は0.2〜0.6g/cm3が好ましく、磁性トナーの場合は磁性粉の種類や含有量にもよるが0.2〜2.0g/cm3が好ましい。
【0123】
本発明のトナーの場合、非磁性トナーの場合の真比重は0.9〜1.2g/cm3が好ましく、磁性トナーの場合は磁性粉の種類や含有量にもよるが0.9〜4.0g/cm3が望ましい。トナーの真比重は、次のようにして算出される。トナー1.000gを精秤し、これを10mmΦの錠剤成型器に入れ、真空下で200kgf/cm2の圧力をかけながら圧縮成型する。この円柱状の成型物の高さをマイクロメーターで測定し、これより真比重を算出する。
【0124】
トナーの流動性は、例えば、安息角測定装置(例えば、筒井理化社製)による流動安息角と静止安息角により定義する。流動安息角は本発明の電荷制御剤を使用した静電荷現像用トナーの場合、5度〜45度のものが望ましい。また静止安息角は10〜50度のものが望ましい。
本発明のトナーは、粉砕型トナーの場合の形状係数(SF−1)の平均値が100〜400が好ましく、形状係数2(SF−2)の平均値が100〜350が好ましい。
【0125】
本発明において、トナーの形状係数を示すSF−1、SF−2とは、例えばCCDカメラを備えた光学顕微鏡(例えば、オリンパス社製BH−2)を用い、1000倍に拡大したトナー粒子群を一視野に30個程度となるようサンプリングし、得られた画像を画像解析装置(例えば、ニレコ社製ルーゼックスFS)に転送し、同作業をトナー粒子に対し約1000個となるまで繰り返し行い形状係数を算出した。形状係数(SF−1)と形状係数2(SF−2)は以下の式によって算出する。
SF−1=((ML2×π)/4A)×100
(式中、MLは粒子の最大長、Aは一粒子の投影面積を示す。)
SF−2=(PM2/4Aπ)×100
(式中、PMは粒子の周囲長、Aは一粒子の投影面積を示す。)
【0126】
SF−1は粒子の歪みを表し、粒子が球に近いものほど100に近く、細長いものであるほど数値が大きくなる。またSF−2は粒子の凹凸を表し、粒子が球に近いものほど100に近く、粒子の形が複雑であるほど数値が大きくなる。
【0127】
本発明のトナーは、トナーの体積抵抗率が、非磁性トナーの場合は1×1012〜1×1016Ω・cmが望ましく、また磁性トナーの場合は磁性粉の種類や含有量にもよるが、1×108〜1×1016Ω・cmのものが望ましい。この場合のトナー体積抵抗率は、トナー粒子を圧縮成型し直径50mm、厚み2mmの円盤状の試験片を作製し、これを固体用電極(例えば、安藤電気社製SE−70)にセットし、高絶縁抵抗計(例えば、ヒューレットパッカッ−ド社製、4339A)を用いて、直流電圧100Vを連続印加した時の1時間経過後の値と定義する。
【0128】
本発明のトナーは、トナーの誘電正接が、非磁性トナーの場合は1.0×10-3〜15.0×10-3が望ましく、また磁性トナーの場合は磁性粉の種類や含有量にもよるが、2×10-3〜30×10-3のものが望ましい。この場合のトナー体積抵抗率は、トナー粒子を圧縮成型し、直径50mm、厚み2mmの円盤状の試験片を作製し、これを固体用電極にセットし、LCRメーター(例えば、ヒューレットパッカッ−ド社製、4284A)を用いて、測定周波数1KHz、ピークトゥーピーク電圧0.1KVで測定した時に得られる誘電正接値(Tanδ)と定義する。
【0129】
本発明のトナーは、トナーのアイゾット衝撃値が0.1〜30kg・cm/cmが望ましい。この場合のトナーのアイゾット衝撃値とは、トナー粒子を熱溶融し板状の試験片を作製し、これをJIS規格K−7110(硬質プラスチックの衝撃試験法)に準じて測定する。
【0130】
本発明のトナーは、トナーのメルトインデクス(MI値)が10〜150g/10minが望ましい。この場合のトナーのメルトインデクス(MI値)とは、JIS規格K−7210(A法)に準じて測定するものである。この場合、測定温度が125℃、加重を10kgとする。
【0131】
本発明のトナーは、トナーの溶融開始温度が80〜180℃が望ましく、4mm降下温度が90〜220℃であることが望ましい。この場合のトナー溶融開始温度は、トナー粒子を圧縮成型し直径10mm、厚み20mmの円柱状の試験片を作製し、これを熱溶融特性測定装置、例えばフローテスター(例えば、島津製作所社製CFT−500C)にセットし、荷重20kgf/cm2で測定した時の溶融が始まりピストンが降下し始める値と定義する。また同様の測定で、ピストンが4mm降下したときの温度を4mm降下温度と定義する。
【0132】
本発明のトナーは、トナーのガラス転移温度(Tg)が35〜80℃が望ましく、より望ましくは40〜75℃である。この場合のトナーのガラス転移温度は、示差熱分析装置(DSC)を用いて測定し、一定温度で昇温後、急冷し、再昇温したときに現れる相変化のピーク値より求めるものと定義する。トナーのTgが35℃を下回ると、耐オフセット性や保存安定性が低下する傾向にあり、80℃を超えると画像の定着強度が低下する傾向がある。
本発明のトナーのDSC測定において観測される吸熱ピークにおいて70〜120℃の領域に最大ピークのピークトップ温度があることが好ましい。
【0133】
本発明のトナーは、トナーの溶融粘度が1000〜50000ポイズが望ましく、より好ましくは1500〜38000ポイズである。この場合のトナー溶融粘度は、トナー粒子を圧縮成型し直径10mm、厚み20mmの円柱状の試験片を作製し、これを熱溶融特性測定装置、例えばフローテスター(島津社製CFT−500C)にセットし、荷重20kgf/cm2で測定した時の値と定義する。
【0134】
本発明のトナーは、トナー表面に存在する電荷制御剤であるモノアゾ鉄錯体化合物の量がトナー1g当たり、少なくとも1mg以上存在するものが好ましい。トナー表面のモノアゾ鉄錯体化合物の定量は、トナーの樹脂、着色剤、ワックスに不溶であり、且つモノアゾ鉄錯体化合物のみ溶解させる有機溶媒、例えばメタノールを用いて、トナー表面のモノアゾ鉄錯体化合物を十分に洗浄し、その洗浄溶液の濃度を吸光光度計等を用いて測定し、予め作成しておいた検量線を用いて比色により行う。
【0135】
本発明のトナーは、トナー表面に存在するモノアゾ鉄錯体化合物の体積基準平均粒径が0.05μm〜3μmであるものが好ましく、より好ましくは0.1μm〜1μmである。トナー表面の電荷制御剤の平均粒径が0.05μmを下回ると、電荷制御剤が十分な効果を発揮せず、また平均粒径が3μm以上の場合は、電荷制御剤が摩擦帯電時に欠落する割合が多くなり、キャリア汚染による帯電量の低下、逆極性トナー増加によるかぶりの発生、トナーの機内飛散といった問題を引き起こすことになる。トナー表面に存在するモノアゾ鉄錯体化合物の粒度測定は、一定量のトナーを熱溶融薄膜化し、これを、例えばCCDカメラを備えた偏光顕微鏡(例えば、オリンパス社製BH−2)を用い、500倍程度に拡大した上で、トナー中のモノアゾ鉄錯体化合物粒子のみ識別出来るようにする。得られた画像を画像解析装置(例えば、ニレコ社製ルーゼックスFS)に転送し、モノアゾ鉄錯体化合物粒子の粒度分布を画像解析により算出する。また、同様の方法により、トナー表面からモノアゾ鉄錯体化合物のみを抽出したトナーを熱溶融薄膜化し、このときの粒度分布も測定した。このようにして得られたトナー全体に存在するモノアゾ鉄錯体化合物の粒度分布とトナー内部のみに存在するモノアゾ鉄錯体化合物の分布の差から、トナー表面に存在しているモノアゾ鉄錯体化合物の粒度分布を推定する。このときの平均粒径を、トナー表面に存在するモノアゾ鉄錯体化合物の平均粒径と定義した。
【0136】
本発明のトナーの溶媒溶解残分は、THF不溶分として0〜30質量%、酢酸エチル不溶分として0〜40質量%及びクロロホルム不溶分として0〜30質量%のものが好ましい。ここでの溶媒溶解残分は、トナー1gをTHF、酢酸エチル及びクロロホルムの各溶剤100mlに均一に溶解/又は分散させ、この溶液/又は分散液を圧ろ過し、ろ液を乾燥させ定量し、この値からトナー中の有機溶剤への不溶解物の割合を算出した値とする。
【0137】
本発明のトナーは画像形成方法の1つである1成分現像方式に使用することができる。1成分現像方式とは、薄膜化させたトナーを潜像担持体に供給して潜像を現像する方式である。トナーの薄膜化は、通常、トナー搬送部材、トナー層厚規制部材及びトナー補給補助部材を備え、かつ該補給補助部材とトナー搬送部材並びにトナー層厚規制部材とトナー搬送部材とがそれぞれ当接している装置を用いて行われる。
【0138】
本発明のトナーを2成分現像法について適用する場合について具体的に説明する。2成分現像方式とは、トナーとキャリア(帯電付与材及びトナー搬送材としての役割を持つもの)を使用する方式であり、キャリアは上述した磁性材やガラスビーズが使用される。現像剤(トナー及びキャリア)は、攪拌部材によって攪拌される事により、所定の電荷量を発生させ、マグネットローラー等によって現像部位にまで搬送される。マグネットローラー上では磁力により、ローラー表面に現像剤が保持され、現像剤規制板等により適当な高さに層規制された磁気ブラシを形成する。現像剤は現像ローラーの回転に伴って、ローラー上を移動し、静電荷潜像保持体と接触又は一定の間隔で非接触状態で対向させ、潜像を現像可視化する。非接触状態での現像の場合は、通常、現像剤と潜像保持体の間に直流電界を生じさせる事によりトナーが一定間隔の空間を飛翔する駆動力を得ることができるが、より鮮明な画像に現像するために、交流を重畳させる方式にも適用することができる。
【0139】
また、更に本発明の電荷制御剤は静電粉体塗装用塗料における電荷制御剤(電荷増強剤)としても好適である。すなわち、この電荷増強剤を用いた静電塗装用塗料は、耐環境性、保存安定性、特に熱安定性と耐久性に優れ、塗着効率が100%に達し、塗膜欠陥のない厚膜を形成することができる。
【0140】
また、本発明の電荷制御剤を二成分現像用のキャリア被覆剤に添加することも極めて有効である。この場合、トナーに与える静電荷は通常トナーに使用した場合の逆の正帯電型となるが、立ち上がり特性に優れている本発明の電荷制御剤は、キャリア側からの帯電付与効果もまた、トナー使用時と同様に立ち上がり性のよい帯電制御効果を付与することができる。また耐熱性・堅牢性に優れており、長期ランニング特性(耐刷性)にも優れている。
【実施例】
【0141】
以下、実施例をもって本発明を説明するが、これらは本発明をなんら制限するものではない。実施例において、「部」は全て「質量部」を表わす。
【0142】
[製造例1](表1中の化合物No.1の製造例)
4−クロロ−2−アミノフェノール10部を水76.5部、及び35%塩酸15.2部に加え、冷却下で攪拌溶解した。内温10℃以下で水24.6部に溶解させた亜硝酸ナトリウム13.6部を前記塩酸水溶液に滴下し、適宜砕氷10部を加えながら5〜10℃を維持した。滴下終了後、10℃で2時間攪拌し反応させた。スルファミン酸0.2部を加え10分反応させた後、ヨウ化カリウムでんぷん紙により過剰に亜硝酸が残存していないことを確認し、ジアゾ溶液を調製した。
【0143】
次に、3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロン12.0部を、水87部、25%水酸化ナトリウム12.1部、炭酸ナトリウム4.9部、及びn−ブタノール104.6部の混合溶液に添加し、室温で攪拌溶解した。そこに上記ジアゾ溶液を注加し、20〜22℃で4時間攪拌しカップリング反応を行った。4時間後、レゾルシンとの反応がないことを確認し反応終了とした。水30.4部を加えた後十分に攪拌し、静置してから下部水層を分液した。更に水92.8部、25%水酸化ナトリウム8.7部を加え攪拌洗浄し、下部水層を分液した。
【0144】
水42.2部、サリチル酸5.9部、n−ブタノール24.6部、及び15%炭酸ナトリウム48.5部を上記反応液に添加し攪拌した。38%塩化第二鉄水溶液15.1部と15%炭酸ナトリウム48.5部を注加し、内温を30℃に昇温後、8時間攪拌し錯体化反応を行った。8時間後、TLCで原料のスポットが消失したことを確認し反応終了とした。攪拌停止後静置し、下部水層を分液した。更に水92.8部、n−ブタノール12.3部、及び25%水酸化ナトリウム8.7部を加え攪拌洗浄し、下部水層を分液した。濾過を行い鉄錯体化合物を取り出し、水253部で洗浄した。
【0145】
水82.3部に硫酸アンモニウム5.9部を加え、昇温しながら攪拌した。内温が90℃になったところで、上記鉄錯体化合物を水113.9部に分散させた混合液をピペットにより滴下した。97℃〜99℃でn−ブタノールを留去しながら1時間攪拌した。冷却濾過後、水253部でケーキを洗浄した。60℃真空乾燥の後、恒量に達したことを確認し、目的化合物24.8部を得た。
【0146】
得られた化合物を赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより、化合物No.1の化合物であることを確認した。
なお、赤外吸収スペクトルについては錠剤法(KBr)によって測定した。以下同様な方法で赤外吸収スペクトルの測定を行った。
【0147】
[製造例2](表1中の化合物No.2の製造法)
4−クロロ−2−アミノフェノール10部を、水76.5部、及び35%塩酸15.2部に加え、冷却下で攪拌溶解した。内温10℃以下で水24.6部に溶解させた亜硝酸ナトリウム13.6部を前記塩酸水溶液に滴下し、適宜砕氷10部を加えながら5〜10℃を維持した。滴下終了後、10℃で2時間攪拌し反応させた。スルファミン酸0.2部を加え10分反応させた後、ヨウ化カリウムでんぷん紙により過剰に亜硝酸が残存していないことを確認し、ジアゾ溶液を調製した。
【0148】
次に、3−メチル−1−(4−クロロフェニル)−5−ピラゾロン14.4部を、水87部、25%水酸化ナトリウム12.1部、炭酸ナトリウム4.9部、及びn−ブタノール104.6部の混合溶液に添加し、室温で攪拌溶解した。そこに上記ジアゾ溶液を注加し、20〜22℃で4時間攪拌しカップリング反応を行った。4時間後、レゾルシンとの反応がないことを確認し反応終了とした。水30.4部を加えた後十分に攪拌し、静置してから下部水層を分液した。更に水92.8部、25%水酸化ナトリウム8.7部を加え攪拌洗浄し、下部水層を分液した。
【0149】
水42.2部、サリチル酸5.9部、n−ブタノール24.6部、及び15%炭酸ナトリウム48.5部を上記反応液に添加し攪拌した。38%塩化第二鉄水溶液15.1部と15%炭酸ナトリウム48.5部を注加し、内温を30℃に昇温後、8時間攪拌し錯体化反応を行った。8時間後、TLCで原料のスポットが消失したことを確認し反応終了とした。攪拌停止後静置し、下部水層を分液した。更に水92.8部、n−ブタノール12.3部、及び5%水酸化ナトリウム8.7部を加え攪拌洗浄し、下部水層を分液した。濾過を行い鉄錯体化合物を取り出し、水253部で洗浄した。
【0150】
水82.3部に硫酸アンモニウム5.9部を加え、昇温しながら攪拌した。内温が90℃になったところで、上記鉄錯体化合物を水113.9部に分散させた溶液をピペットにより滴下した。97℃〜99℃でn−ブタノールを留去しながら1時間攪拌した。冷却濾過後、水253部でケーキを洗浄した。60℃真空乾燥の後、恒量に達したことを確認し、目的化合物27.1部を得た。
得られた化合物を赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより、化合物No.2の化合物であることを確認した。
【0151】
[製造例3](表1中の化合物No.3の製造法)
4−クロロ−2−アミノフェノール10部、水76.5部、及び35%塩酸15.2部を加え、冷却下で攪拌溶解した。内温10℃以下で水24.6部に溶解させた亜硝酸ナトリウム13.6部を滴下し、適宜砕氷10部を加えながら5〜10℃を維持した。滴下終了後、10℃で2時間攪拌し反応させた。スルファミン酸0.2部を加え10分反応させた後、ヨウ化カリウムでんぷん紙により過剰に亜硝酸が残存していないことを確認し、ジアゾ溶液を調製した。
【0152】
次に、3−メチル−1−(4−クロロフェニル)−5−ピラゾロン14.4部、水87部、25%水酸化ナトリウム12.1部、炭酸ナトリウム4.9部、及びn−ブタノール104.6部を添加し、室温で攪拌溶解した。そこに上記ジアゾ溶液を注加し、20〜22℃で4時間攪拌しカップリング反応を行った。4時間後、レゾルシンとの反応がないことを確認し反応終了とした。水30.4部を加えた後十分に攪拌し、静置してから下部水層を分液した。更に水92.8部、25%水酸化ナトリウム8.7部を加え攪拌洗浄し、下部水層を分液した。
【0153】
水42.2部、サリチル酸5.9部、n−ブタノール24.6部、及び15%炭酸ナトリウム48.5部を上記反応液に添加し攪拌した。38%塩化第二鉄水溶液15.1部と15%炭酸ナトリウム18.0部を注加し、酢酸でpHを4.5に調整した。内温を30℃に昇温後、8時間攪拌し錯体化反応を行った。8時間後、TLCで原料のスポットが消失したことを確認し反応終了とした。攪拌停止後静置し、下部水層を分液した。更に水189.9部を加え攪拌洗浄し、下部水層を分液した。濾過後、水253部でケーキを洗浄した。60℃真空乾燥の後、恒量に達したことを確認し、目的化合物26.5部を得た。
【0154】
得られた化合物を赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより、化合物No.3の化合物であることを確認した。
【0155】
[製造例4](表1中の化合物No.4の製造例)
4−クロロ−2−アミノフェノール10部、水76.5部、及び35%塩酸15.2部を加え、冷却下で攪拌溶解した。内温10℃以下で水24.6部に溶解させた亜硝酸ナトリウム13.6部を滴下し、適宣砕氷10部を加えながら5〜10℃を維持した。滴下終了後、10℃で2時間攪拌し反応させた。スルファミン酸0.2gを加え、10分反応させた後、ヨウ化カリウムでんぷん紙により過剰に亜硝酸ナトリウムが残存していないことを確認し、ジアゾ溶液を調製した。
次に3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロン12.0部、水87部、25%水酸化ナトリウム12.1部、炭酸ナトリウム4.9部及びブタノール104.6部を添加し、室温で攪拌溶解した。そこに上記ジアゾ溶液を注加し、20〜22℃で4時間攪拌しカップリング反応を行った。4時間後、レゾルシンとの反応が無いことを確認し反応終了とした。水30.4部を加えた後十分に攪拌し、静置してから下部水層を分液した。更に水92.8部、25%水酸化ナトリウム8.7部を加え攪拌洗浄し、下部水層を分液した。
水42.2部、サリチル酸5.9部、ブタノール24.6部、及び15%炭酸ナトリウム48.5部を上記反応液に添加し攪拌した。38%塩化第二鉄水溶液15.1部と15%炭酸ナトリウム18.0部を注加し、酢酸でpHを4.5に調整した。内温を30℃に昇温後、8時間攪拌し錯体化反応を行った。8時間後、TLCで原料のスポットが消失したことを確認し反応終了とした。攪拌停止後、静置して下部水層を分液した。更に水189.9部を加え攪拌洗浄し、下部水層を分液した。濾過後、水253部でケーキを洗浄した。60℃真空乾燥の後、恒量に達したことを確認し、目的化合物24.2部を得た。
得られた化合物を赤外吸収スペクトル、可使部吸収スペクトル、元素分析(C、H、N)、原子吸光分析、マススペクトルより、化合物No.4の化合物であることを確認した。
【0156】
また、製造例1〜4と同様な方法で表1及び表2に記載した化合物5〜20および化合物22についても製造した。
化合物21は、製造例2の硫酸アンモニウムの量を半分にした以外は製造例2と同様な方法で製造し、化合物21を得た。
【0157】
[比較電荷制御剤1]
既知の電荷制御剤である、以下の構造を有する鉄アゾ錯体(保土谷化学工業社製、商品名:T-77)。下式中、a+b+cは1である。
【0158】
【化6】
【0159】
[比較電荷制御剤2]
既知の電荷制御剤である、以下の構造を有するクロムアゾ錯体(保土谷化学工業社製、商品名:T-95)。
【0160】
【化7】
【0161】
[比較製造例3]
0.5モルの水酸化ナトリウムと水に対して、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸を0.4モル加え、加熱し溶解した。この溶液にAl2(SO4)30.1モルの水溶液を加え反応させた。50℃で3時間反応させた後、析出した白色結晶を濾取した。これを水洗して減圧にて40℃で24時間乾燥した。得られた反応物は目的とするアルミニウム原子に対し、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸が2原子結合する化合物であった。
【0162】
[実施例1]
スチレンーアクリル系共重合体樹脂(酸価0.1mgkOH/g) 91部
(三井化学社製、商品名CPR−100)
製造例1で得られた化合物 1部
カーボンブラック(三菱化学社製、商品名MA−100) 5部
低分子量ポリプロピレン(三洋化成社製、商品名ビスコール550P)
3部
【0163】
上記混合物を130℃の加熱混合装置(2軸押出混練機)により溶融混合し、冷却した混合物をハンマーミルで粗粉砕した。更にジェットミルで微粉砕した後、分級して体積平均粒径9±0.5μmの非磁性トナーを得た。このトナーをシリコンコート系のフェライトキャリア(商品名、F96−100、パウダーテック社製)と4対100質量部(トナー:キャリア)の割合で混合振とうし、トナーを負に帯電させた後、ブローオフ粉体帯電量測定装置で測定した。
【0164】
また帯電立ち上がり性の指標である時定数(τ)についても算出した。時定数(τ)は、飽和帯電に達するまでの帯電量を一定時間ごとにブローオフ帯電量測定装置で測定し、[電子写真学会誌、P307、第27巻、第3号(1988)]に記載される、次式によってln(qmax−q)を算出し、時間tとln(qmax−q)の関係をグラフにプロットし、時定数τを求めた。
(qmax−q)/(qmax-q0)=exp(-t/τ)
ここで、qmaxは飽和帯電量、q0は初期帯電量(ここでは帯電時間10秒のとき)、tが各測定時間であり、そのときの帯電量がqである。
帯電立ち上がりのよいものは、時定数がより小さな値となる。時定数の単位は秒である。
【0165】
また、帯電の環境安定性についての評価も行った。環境安定性の評価方法は、通常の25℃−50%RH(相対湿度)の環境下での測定に加え、低湿環境(10℃−30%RH)と高湿環境(35℃−85%RH)での帯電量測定を行うことにより判定した。帯電量測定は各環境下に24時間暴露した現像剤を、その環境においたままで十分に帯電させ、飽和帯電量をブローオフ帯電量測定器により測定した。3つの環境で帯電量の変動が10%未満であるものを良好(○)、10〜20%であるものを、やや不良(△)、20%を超えるものを不良(×)とした。帯電量、時定数、環境安定性の結果を表3に示した。
【0166】
[実施例2〜22]
「製造例1で得られた化合物」の代わりに、表1及び表2中の化合物No.2〜22をそれぞれ使用した以外は添加量を含めて実施例1と同様の方法で非磁性トナーを調製し、ブローオフ粉体帯電量測定装置による帯電量、時定数、環境安定性を評価し、それぞれ実施例2〜実施例22として結果を表3に示した。
【0167】
[比較例1〜3]
「製造例1で得られた化合物」の代わりに、比較電荷制御剤1、比較電荷制御剤2及び比較製造例3の化合物をそれぞれ使用した以外は添加量を含めて実施例1と同様の方法で非磁性トナーを調製し、ブローオフ粉体帯電量測定装置による帯電量、時定数、環境安定性を評価し、それぞれ比較例1〜3として、結果を表3に示した。
【0168】
【表3】
【0169】
表3から明らかなように、実施例1〜22の非磁性トナーは、実用的に充分な帯電量を有しかつ、時定数が低いことから帯電の立ち上がりが優れ、及び環境安定性に優れた、高い帯電能力を兼備したトナーであることがわかる。
【0170】
(非磁性2成分現像方法による画像特性評価)
実施例1〜4と比較例1〜3で使用した非磁性トナーと、シリコンコート系のフェライトキャリア(パウダーテック社製、F96−100、)とを4:100部の割合で混合した現像剤を用い、非磁性2成分現像方式による画像特性評価を行った。画像特性評価に用いる画像形成装置は市販の非磁性2成分現像方式複写機を改良し、感光体表面電位、現像ローラー印加電圧、転写電圧、定着温度が任意に制御できるようにしてあり、初期画像で印字が最良となるよう各条件を設定した。印刷はトナーを連続補給しながら、テストチャート印刷を開始してからそれぞれ10枚目(初期画像)、5千枚連続印刷後、2万枚連続印刷後の画像をサンプリングし、画像特性評価し、それぞれ実施例23〜26、比較例4〜6とした。
【0171】
画像濃度は普通紙(75g/m2)を使用し、所定の枚数を印刷した後の画像をサンプリングし、黒ベタ部分をマクベス反射濃度計(サカタインクス(株)社製、RD−918)を用いて測定した。かぶり濃度は、未印字部分の反射濃度を測定し、この値からベース値として印刷前の普通紙の反射濃度(0.05)を差し引いた値とした。細線再現性に関してはテストチャートの30μmの細線が忠実に再現できるかどうかで評価した。メモリー発生状況に関しては目視による観察を行った。結果を表4に示した。表4中、細線再現性については、忠実に再現できているものについて良好、忠実に再現できていないものについては不良とした。
【0172】
【表4】
【0173】
実施例23〜26において、画像濃度は複写機で望ましいとされる1.40〜1.45であり良好であった。更に長期の連続印刷において殆ど濃度の変化がなく安定していた。かぶり濃度値も極めて低く、且つ連続印刷においても増加しなかった。細線再現性も良く、安定していた。
【0174】
比較例4〜6では、初期画像では満足できる画像を得たが、5千枚の連続印刷を実施すると画像濃度が若干低下し、かぶり濃度が上昇した。更に2万枚の連続印刷を実施した後では、更にこれらの画像劣化が顕著になり、問題となるレベルとなった。長期の連続印刷により細線再現性は大きく劣化した。
【0175】
[実施例27]
スチレンーアクリル系共重合体樹脂(酸価0.1mgkOH/g) 100部
(三井化学社製、商品名CPR−100、)
製造例1で得られた化合物 2部
磁性酸化鉄 (チタン工業社製、商品名BL−200) 90部
低分子量ポリプロピレン (三洋化成社製、商品名ビスコール550P)
3部
上記混合物を130℃の加熱混合装置(2軸押出混練機)により溶融混合し、冷却した混合物をハンマーミルで粗粉砕した。更にジェットミルで微粉砕した後、分級して体積平均粒径9±0.5μmの磁性トナーを得た。
【0176】
[実施例28〜30]
「製造例1で得られた化合物」の代わりに、それぞれ、「製造例2で得られた化合物」、「製造例3で得られた化合物」及び「製造例4で得られた化合物」を使用した他は、添加量を含めて実施例27と同様にして磁性トナーを調製し、これらをそれぞれ、実施例28、実施例29及び実施例30とした。
【0177】
[比較例7〜9]
「製造例1で得られた化合物」の代わりに、それぞれ、比較電荷制御剤1、比較電荷制御剤2、比較製造例3で得られた化合物を使用した他は、添加量を含めて実施例27と同様にして磁性トナーを調整し、これらをそれぞれ比較例7〜9とした。
【0178】
(磁性1成分現像方式による画像特性評価)
実施例27〜30と比較例7〜9で製造した磁性トナーを用い、磁性1成分現像方式による画像特性評価を行った。
本実施例で適用される画像形成装置は市販の磁性1成分現像方式プリンター(解像度600dpi)を改造し、感光体表面電位、現像ローラー印加電圧、転写電圧、定着温度が任意に制御できるようにしてあり、初期画像で印字が最良となるよう各条件を設定した。
【0179】
印刷はトナーを連続補給しながら、パーソナルコンピューターからテストチャートを転送して行った。印刷開始から10枚までの初期画像と、1000枚連続印刷後、5千枚後の画像をサンプリングし、画像特性評価を行った。
【0180】
画像濃度は普通紙(75g/m2)に所定の枚数を印刷した後の画像をサンプリングし、黒ベタ部分をマクベス反射濃度計(サカタインクス(株)社製、RD−918)を用いて測定した。また、かぶり濃度は、未印字部分の反射濃度を測定し、この値からベース値として印刷前の普通紙の反射濃度(0.05)を差し引いた値とした。ドット再現性に関してはテストチャートのドットが忠実に再現できるかの評価であり、ドット再現は約50μmの孤立ドットパターンが欠損なく再現できるかどうかで判断した。約50個のドットの内、欠損ドットが1割以上ある場合に不良とし、それ以下の場合を良好とした。メモリー発生状況に関しては、その有無を目視観察により判定した。結果を表5に示す。
【0181】
【表5】
【0182】
実施例27〜30において、画像濃度はプリンターで望ましいとされる1.45〜1.55であり良好であった。更に長期の連続印刷において殆ど濃度の変化がなく安定していた。かぶり濃度値も極めて低く、且つ連続印刷においても増加しなかった。ドット再現性も良く、安定していた。
【0183】
比較例7〜9では、初期画像では満足できる画像を得たが、1千枚の連続印刷を実施すると画像濃度が低下し、かぶり濃度が上昇した。更に5千枚の連続印刷を実施した後では、更にこれらの画像劣化が顕著となり、問題となるレベルとなった。長期の連続印刷によりドット再現性は大きく劣化した。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】本発明の表1のNO.1の化合物の赤外線吸収スペクトルのチャート
【図2】本発明の表1のNO.2の化合物の赤外線吸収スペクトルのチャート
【図3】本発明の表1のNO.3の化合物の赤外線吸収スペクトルのチャート
【図4】本発明の表1のNO.4の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【図5】本発明の表1のNO.5の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【図6】本発明の表1のNO.6の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【図7】本発明の表1のNO.11の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【図8】本発明の表2のNO.12の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【図9】本発明の表2のNO.13の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【図10】本発明の表2のNO.14の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【図11】本発明の表2のNO.15の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【図12】本発明の表2のNO.19の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【図13】本発明の表2のNO.21の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【図14】本発明の表2のNO.22の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真、静電記録等の分野で静電潜像を顕像化するための画像形成装置で用いられる電荷制御剤等として使用される新規なモノアゾ鉄錯体化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成プロセスでは、無機又は有機材料からなる感光体に静電潜像を形成し、これをトナーにより現像し、紙やプラスチックフィルム等に転写、定着して可視画像を得る。感光体にはその構成により負帯電性と正帯電性があり、露光により印字部を静電潜像として残す場合は逆符号帯電性トナーにより現像する。一方、印字部を除電して反転現像を行う場合は同符号帯電性トナーにより現像する。
【0003】
トナーは、結着樹脂、着色剤、及びその他の添加剤により構成される。望ましい帯電特性(帯電速度、帯電レベル、帯電安定性等)、経時安定性、環境安定性等を付与するために一般に電荷制御剤が添加される。この電荷制御剤の添加によりトナーの特性は大きく改善される。
【0004】
従来、提案され実用化された負帯電制御性の付与効果を有する電荷制御剤としては、中心金属がクロムであるモノアゾ金属錯体化合物や同じく鉄であるモノアゾ金属錯体化合物、更にはアルキルサリチル酸又は芳香族オキシカルボン酸の金属錯体又は塩を挙げることができる。
【0005】
しかしながら、これらの電荷制御剤は、トナーの結着樹脂に対する親和性や摩擦帯電付与効果が不十分であったり、帯電の立ち上がり速度が不十分なために、初期の複写画像が鮮明性に欠けたり、連続複写中における複写画像の品質が変動し易いという欠点があった。またアルキルサリチル酸又は芳香族オキシカルボン酸の金属錯体又は塩を成分とする電荷制御剤は、環境条件に対するトナー帯電特性の変動幅が大きく、季節要因により画質が著しく変化してしまう欠点を有している。
【0006】
モノアゾクロム錯体化合物の中には、これらの問題を一部解決しているものもあるが、燃焼廃棄時に有害な6価クロムがごく微量生成する可能性が完全には否定できず、環境や人体に与える影響が懸念される。従って、より安全な金属を使用し、且つ性能面においても十分に満足できる電荷制御剤が望まれていた。
【0007】
また、特許文献1には中心金属が鉄である電荷制御剤を使用したトナーが開示されている。中心金属としてクロムを使用しない負帯電性の電荷制御剤としては、実用的な帯電量(少なくとも−10μc/g)を有するものの、帯電立ち上がりがクロム錯体に比べ鈍く、且つ高湿度環境下における帯電量の低下という問題が解決されていない。また、特許文献2には、いくつかのアゾ鉄錯体が開示されているが、性能の良好なものは全てニトロ基を複数有するアゾ錯体であることから、化合物の合成中に発火・爆発の危険が常に伴う。特に中心金属が鉄の場合は、発火・爆発の発生が著しく、乾燥及び粉砕工程が極めて危険な作業となる。また粉砕型のトナーは、押し出し混練機等により混練され、且つそれを粉砕し製造することが一般的であることから、トナー製造時における粉体爆発の可能性も小さくない。中心金属をクロムとした場合は鉄より発火・爆発の危険性は低下するが、この場合においても得られたニトロ基を有するアゾクロム錯体は、自己反応性物質(第5類危険物)に該当するものが多い。
【0008】
【特許文献1】特開昭61−155464号公報
【特許文献2】特表平8−500912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、クロムの如き有害金属を含まず、また、ニトロ基を含有する化合物のように容易に発火や爆発を起こすおそれのない帯電付与効果に優れた電荷制御剤等として使用される新規なモノアゾ鉄錯体化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するための鋭意研究の結果得られたものであり、以下を要旨とするものである。
【0011】
1.式[1]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【化1】
式[1]中、A1、A2、B1、B2は、相互に独立して、H、アルキル基又はハロゲン原子を示す。アルキル基は炭素数が1〜8のものが好ましく、炭素数が1〜4のものが更に好ましい。ハロゲン原子は塩素が好ましい。Jは、H、アルカリ金属、NH4、又はアルキルアンモニウムを示し、これらは2種以上であってもよい。アルキルアンモニウムのアルキル基は、炭素数が1〜12、好ましくは3〜8のものが好ましく、窒素原子に同一又は異なったアルキル基が1〜4個結合したものでもよい。X1、X2は、相互に独立して、H、アルキル基、ハロゲン原子を示し、Y1、Y2は、相互に独立して、H、アルキル基、又はアルキル基若しくはハロゲンで置換された芳香族基又は無置換の芳香族基を示す。アルキル基は炭素数が1〜8が好ましく、炭素数1〜4が更に好ましい。(ただし、A1、A2、B1、B2、X1、X2、Y1、Y2が同時に水素の場合を除く。)
【0012】
2.式[2]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【化2】
式[2]中、Jは、H、Na、NH4、又はアルキルアンモニウムを示し、これらは2種以上であってもよい。アルキルアンモニウムのアルキル基は、炭素数が1〜12、好ましくは3〜8が好ましく、窒素原子に同一又は異なったアルキル基が1〜4個結合したものでもよい。X1、X2は、相互に独立して、H、アルキル基、又はハロゲン原子を示し、Z1、Z2は、相互に独立して、H、アルキル基、又はハロゲン原子を示す。アルキル基は炭素数が1〜8が好ましく、炭素数1〜4が更に好ましい。ハロゲン原子は塩素が好ましい。
【0013】
3.式[3]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【化3】
式[3]中、Jは、H、Na、NH4、又はアルキルアンモニウムを示し、これらは2種以上であってもよい。アルキルアンモニウムのアルキル基は、炭素数が1〜12、好ましくは3〜8が好ましく、窒素原子に同一又は異なったアルキル基が1〜4個結合したものでもよい。
【0014】
4.式[4]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【化4】
式[4]中、Jは、H、Na、NH4、又はアルキルアンモニウムを示し、これらの2種以上であってもよい。
【0015】
5.式[5]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【化5】
【0016】
6.上記1乃至5のいずれか1項記載のモノアゾ鉄錯体化合物を有効成分とする電荷制御剤。
7.電荷制御剤の体積平均粒径が0.1〜20μmである、上記6に記載の電荷制御剤。
8.少なくとも上記1乃至5のいずれか1項記載のモノアゾ鉄錯体化合物、着色剤及び結着樹脂を含有するトナー。
9.モノアゾ鉄錯体化合物が、結着樹脂100質量部当り0.1〜10質量部、トナー粒子に内添されている、上記8記載のトナー。
10.モノアゾ鉄錯体化合物が、結着樹脂100質量部当り0.2〜5質量部、トナー粒子に内添されている、上記8記載のトナー。
11.結着樹脂は、酸価が0.1〜100mgKOH/gである、上記8乃至10のいずれか1項記載のトナー。
12.着色剤は、磁性体である、上記8乃至11のいずれか1項記載のトナー。
13.磁性体は、磁性酸化鉄である、上記12記載のトナー。
14.磁性体は、結着樹脂100質量部当り10〜200質量部含有されている、上記12又は13記載のトナー。
15.着色剤は、非磁性の着色剤であり、結着樹脂100質量部当り0.1〜20質量部含有されている、上記8乃至11のいずれか1項記載のトナー。
16.ワックスが更に含有されている、上記8乃至15のいずれか1項記載のトナー。
17.ワックスは融点が70℃〜140℃である、上記16記載のトナー。
18.ワックスは、結着樹脂100質量部当り0.2〜20質量部含有されている、上記16又は17記載のトナー。
19.トナーの体積平均粒径は、2〜15μmである、上記8乃至18のいずれか1項記載のトナー。
20.トナーの体積平均粒径は、3〜12μmである、上記8乃至18のいずれか1項記載のトナー。
21.上記8乃至20のいずれか1項記載の負帯電性トナーから成る1成分系現像剤。
22.負帯電性トナー及びキャリアを有する2成分系現像剤において、該トナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤及びモノアゾ鉄錯体化合物を含有しており、該モノアゾ鉄錯体化合物は、上記1乃至5のいずれか1項記載のモノアゾ鉄錯体化合物である2成分系現像剤。
23.モノアゾ鉄錯体化合物が、結着樹脂100質量部当り0.1〜10質量部、トナー粒子に内添されている、上記22記載の2成分系現像剤。
24.モノアゾ鉄錯体化合物が、結着樹脂100質量部当り0.2〜5質量部、トナー粒子に内添されている、上記22記載の2成分系現像剤。
25.トナーは、スチレン−アクリル系樹脂を結着樹脂として含有している、上記22乃至24のいずれか1項記載の2成分系現像剤。
26.結着樹脂は、酸価が0.1〜100mgKOH/gである、上記25に記載の2成分系現像剤。
27.結着樹脂は、酸価が0.1〜50mgKOH/gである、上記25に記載の2成分系現像剤。
28.結着樹脂は、ガラス転移点(Tg)が35〜80℃である、上記22乃至27のいずれか1項記載の2成分系現像剤。
29.ワックスが更に含有されている、上記22乃至28のいずれか1項記載の2成分系現像剤。
30.ワックスは融点が70℃〜140℃である、上記29記載のトナー。
31.ワックスは、結着樹脂100質量部当り0.2〜20質量部含有されている、上記29又は30記載のトナー。
32.トナーの体積平均粒径は、2〜15μmである、上記22乃至31のいずれか1項記載の2成分系現像剤。
33.トナーの体積平均粒径は、3〜12μmである、上記22乃至31のいずれか1項記載の2成分系現像剤。
34.キャリアは、樹脂コートキャリアである、上記22乃至33のいずれか1項記載の2成分系現像剤。
35.樹脂コートキャリアは、キャリアコア粒子及び該キャリアコア粒子表面を被覆(コート)する樹脂である被覆材からなり、該被覆(コート)材は、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂から選択される1種以上の樹脂を有している上記34記載の2成分系現像剤。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電荷制御剤は、帯電の立ちあがりが著しく良好であり、従来の電荷制御剤よりも、短い時間でトナーを帯電させ、帯電量についても、高い帯電付与効果を有しており、また、周囲の温度、湿度等の環境の変化に対して、帯電量は安定している。更にクロムといった環境に対し懸念がある金属を含まないこと、及びニトロ基の如き発火性の高い置換基を有していないため、化合物の安全性も高い。
当該電荷制御剤を含有するトナーは、1成分あるいは2成分いずれの現像方式においても、画像濃度、カブリ濃度、ドット再現性あるいは、細線再現性等の画像特性評価に対して、優れた画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のモノアゾ鉄錯体化合物は、環境安定性に優れた化合物であり、かつ帯電制御効果に優れた化合物である。本発明のモノアゾ鉄錯体化合物をトナーに用いることにより、すばやい立ち上がりと高い帯電量を得ることができ、結果として鮮明な画像を得ることができる。
【0019】
本発明のモノアゾ鉄錯体化合物の製造方法については、公知のモノアゾ錯体化合物の製造方法を用いて製造できるが、以下に代表的な製造方法を記載するがこれに限定されるものではない。まず4−クロロ−2−アミノフェノール等のジアゾ成分に、塩酸や硫酸のような鉱酸を加え、内温が5℃以下になったら、水に溶解させた亜硝酸ナトリウムを内温10℃以下に維持しながら滴下する。10℃以下で30分乃至3時間撹拌し反応させることにより、4−クロロ−2−アミノフェノールをジアゾ化する。スルファミン酸を加え、ヨウ化カリウムでんぷん紙により過剰に亜硝酸が残存していないことを確認する。
【0020】
次に、3−メチル−1−(4−クロロフェニル)−5−ピラゾロン等のカップリング成分、水酸化ナトリウムの水溶液、炭酸ナトリウム、ブタノール等の有機溶媒を添加し、室温で攪拌溶解する。そこに前記ジアゾ化合物を注加し、室温で数時間攪拌しカップリングを行う。撹拌後、ジアゾ化合物とレゾルシンとの反応がないことを確認し反応終了とする。水を加えた後十分に攪拌し、静置してから分液する。更に水酸化ナトリウム水溶液を加え、攪拌洗浄し分液を行う。
【0021】
上記カップリングの際のブタノール以外の有機溶媒としては、カップリングの際に、使用できる溶媒であればよく、1価のアルコール、又は2価のアルコールが好ましい。1価のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル(炭素数1〜4)等が挙げられる。2価のアルコールとしては、エチレングリコール等が挙げられ、なかでも、溶剤は、ブタノールが好ましい。
【0022】
上記モノアゾ化合物のブタノール溶液に、水、サリチル酸、n−ブタノール、炭酸ナトリウムを添加し攪拌する。塩化第二鉄水溶液と炭酸ナトリウムを注加する。内温を30〜40℃に昇温し、TLCで反応を追跡する。5〜10時間後、原料のスポットが消失したことを確認し反応終了とする。攪拌停止後静止し、分液を行う。更に水、ブタノール、水酸化ナトリウム水溶液を加え、アルカリ洗浄を行う。濾過を行いケーキを取り出し、水で洗浄する。
【0023】
硫酸アンモニウムを水に加え、昇温しながら攪拌し、内温が85〜90℃になったら、上記のケーキの分散溶液を滴下する。97℃〜99℃でブタノールを留去しながら1時間攪拌し、冷却濾過後、水によりケーキを洗浄する。真空乾燥させ恒量に達したことを確認し、本発明のモノアゾ鉄錯体化合物を得ることができる。
【0024】
次に、第1表、第2表に、本発明のモノアゾ鉄錯体化合物の具体例を列挙するが、本発明は記載の化合物に限定されるものではない。但し、第1表、第2表の記号A1、A2、B1、B2、J、X1、X2、Y1、Y2は前記式[1]に記載のそれぞれに、また、表中の結合部位は、前記式[1]に記載されている置換位置の数字に対応している。また、表2中の化合物No.19、No.20の対イオンJのBu、Prは、それぞれノルマルブチル基、ノルマルプロピル基を示し、化合物No.21の対イオンである、Jは、90%がNH4、5%がNa、5%がHである。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
本発明の電荷制御剤は、前記式[1]、好ましくは前記式[2]、更に好ましくは前記式[4]最も好ましくは前記式[3]、[5]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物であり、前記式[1]乃至[5]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物を1種又は2種以上併用してもよい。また、未反応の原料又は中間体、あるいはサリチル酸の如き反応促進剤が10%以下混入していてもよい。
【0028】
本発明の電荷制御剤は、電荷制御特性、耐環境性、及び耐久性に優れており、トナーに用いた場合に、カブリがなく、画像濃度、ドット再現性、細線再現性が良好な画像を得ることができる。
本発明のモノアゾ鉄錯体化合物を含有したトナーは、高湿あるいは低湿環境下においても帯電特性の変動が少なく、安定した現像特性を保持できる。
【0029】
本発明の電荷制御剤は、体積平均粒径を0.1〜20μmに調整し、使用するのが好ましく、更に好ましくは0.1〜10μmである。上記体積平均粒径が0.1μmより小さいと、トナー表面に出現する該電荷制御剤が極めて少なくなり目的の電荷制御効果が得られなくなり、また20μmより大きいと、トナーから欠落する電荷制御剤が増加し、機内汚染等の悪影響が出るため好ましくない。
【0030】
本発明に使用する電荷制御剤であるモノアゾ鉄錯体化合物をトナーに含有させる方法としては、結着樹脂に着色剤等とともに添加し、混練し、粉砕する方法(粉砕トナー)、又は重合性の単量体モノマーにモノアゾ鉄錯体化合物を添加し、重合せしめてトナーを得る方法(重合トナー)のように、予めトナー粒子の内部に添加する方法(内添)と、予めトナー粒子を製造し、トナー粒子の表面に添加(外添)する方法がある。トナー粒子に内添する場合の好ましい本発明のモノアゾ鉄錯体化合物の添加量としては結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは、0.2〜5質量部で用いられる。また、トナー粒子に外添する場合は、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.01〜2質量部である。また、メカノケミカル的にトナー粒子表面に固着させるのが好ましい。
【0031】
また本発明のモノアゾ鉄錯体化合物を有効成分とする電荷制御剤は、既知の他の負帯電性の電荷制御剤と併用することができる。併用する好ましい電荷制御剤としては、本発明以外のアゾ系鉄錯体又は錯塩、アゾ系クロム錯体又は錯塩、アゾ系マンガン錯体又は錯塩、アゾ系コバルト錯体又は錯塩、アゾ系ジルコニウム錯体又は錯塩、カルボン酸誘導体のクロム錯体又は錯塩、カルボン酸誘導体の亜鉛錯体又は錯塩、カルボン酸誘導体のアルミ錯体又は錯塩、カルボン酸誘導体のジルコニウム錯体又は錯塩が挙げられる。前記カルボン酸誘導体は、芳香族ヒドロキシカルボン酸が好ましく、更に好ましくは、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸がよい。更にホウ素錯体又は錯塩、負帯電性樹脂型電荷制御剤等が挙げられる。
【0032】
本発明の電荷制御剤と他の電荷制御剤を併用する場合の添加量は、結着樹脂100質量部に対して本発明のモノアゾ鉄錯体である電荷制御剤以外の電荷制御剤は、0.1〜10質量部が好ましい。
【0033】
本発明に使用される結着樹脂の種類として、結着樹脂としては、公知のものであればいずれも使用できる。スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等のビニル重合体、又はこれらの単量体2種類以上からなる共重合体等、ポリエステル系重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。
【0034】
前記ビニル重合体、又は共重合体を形成するスチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体について以下に例示するがこれらに限定されるものではない。
【0035】
スチレン系単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フエニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−アミルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−へキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロロスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン、又はその誘導体等が挙げられる。
【0036】
アクリル系単量体としては、アクリル酸、あるいはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸、又はそのエステル類等が挙げられる。
【0037】
メタクリル系単量体としては、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸又はそのエステル類等が挙げられる。
【0038】
前記ビニル重合体、又は共重合体を形成する他のモノマーの例としては、以下の(1)〜(18)が挙げられる。(1)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフイン類;(2)ブタジエン、イソプレン等のポリエン類;(3)塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;(4)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;(5)ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;(6)ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;(7)N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;(8)、ビニルナフタリン類;(9)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体等;(10)マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;(11)マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;(12)マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アルケニルコハク酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、メサコン酸モノメチルエステルの如き不飽和二塩基酸のモノエステル;(13)ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;(14)クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;(15)クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物;(16)該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマー;(17)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;(18)4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルへキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマー。
【0039】
本発明のトナーにおいて、結着樹脂のビニル重合体、又は共重合体は、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有していてもよいが、この場合に用いられる架橋剤は、芳香族ジビニル化合物として例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられる。アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、又は上記の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。
【0040】
エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、又は上記の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたものが挙げられる。
【0041】
その他、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物、又はジメタクリレート化合物も挙げられる。ポリエステル型ジアクリレート類としては例えば、商品名MANDA(日本化薬社)が挙げられる。
【0042】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0043】
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、好ましくは、0.01〜10質量部用いることができ、特に、0.03〜5質量部用いることが好ましい。これらの架橋性モノマーのうち、トナー用樹脂に定着性、耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を1つ含む結合鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。これらの中でも、スチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0044】
本発明のビニル重合体又は共重合体の製造に用いられる重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、1,1'−アゾビス(1−シクロへキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2',4'−ジメチル−4'−メトキシバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパ−オキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロへキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジークミルパーオキサイド、α−(tert−ブチルパーオキシ)イソプロピルべンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルへキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−エトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロへキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサレート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチル−オキシベンゾエ−ト、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキアリルカーボネート、イソアミルパーオキシ−2−エチルへキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシへキサハイドロテレフタレート、tert−ブチルパーオキシアゼレート等が挙げられる。
【0045】
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂の場合、樹脂成分のテトラヒドロフラン(THF)に可溶分のGPCによる分子量分布で、分子量3千〜5万(数平均分子量換算)の領域に少なくとも1つのピークが存在し、分子量10万以上の領域に少なくとも1つのピークが存在する樹脂が、定着性、オフセット性、保存性の点で好ましい。またTHF可溶分は、分子量分布10万以下の成分が50〜90%となるような結着樹脂も好ましい。更に好ましくは、分子量5千〜3万の領域に、最も好ましくは5千〜2万の領域にメインピークを有するのがよい。
【0046】
結着樹脂がスチレン−アクリル系樹脂等のビニル重合体の酸価が、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gが更によく、更に好ましくは0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gがよい。
【0047】
ポリエステル系重合体を構成するモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、又は、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオール等が挙げられる。
【0048】
ポリエステル樹脂を架橋させるために3価以上のアルコールを併用することが好ましい。3価以上の多価アルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチルー1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等が挙げられる。
【0049】
上記ポリエステル系重合体を形成する酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物、こはく酸、アジピン酸、セバシン酸;アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物等があげられる。また、3価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメツト酸、ピロメツト酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0050】
結着樹脂がポリエステル系樹脂の場合は、樹脂成分のTHF可溶成分の分子量分布で、分子量3千〜5万の領域に少なくとも1つのピークが存在するのがトナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましく、また、THF可溶分は、分子量10万以下の成分が60〜100%となるような結着樹脂も好ましい。更に好ましくは、分子量5千〜2万の領域に少なくとも1つのピークが存在するのがよい。
【0051】
結着樹脂がポリエステル樹脂の場合、その酸価が、0.1mgKOH/g〜100mgKOH/gであることが好ましく、0.1mgKOH/g〜70mgKOH/gが更によく、更に好ましくは0.1mgKOH/g〜50mgKOH/gがよい。
本発明において、結着樹脂の分子量分布は、THFを溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0052】
本発明のトナーに使用できる結着樹脂として、前記ビニル重合体成分及び/又はポリエステル系樹脂成分中に、これらの両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含む樹脂も使用することができる。ポリエステル系樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。ビニル重合体成分を構成するモノマーとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸若しくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
また、ポリエステル系重合体、ビニル重合体とその他の結着樹脂を併用する場合、全体の結着樹脂の酸価が0.1〜50mgKOH/gを有する樹脂を60質量%以上有するものが好ましい。
【0053】
本発明において、トナー組成物の結着樹脂成分の酸価は、以下の方法により求め、基本操作はJIS K−0070に準ずる。
(1)試料は予め結着樹脂(重合体成分)以外の添加物を除去して使用するか、結着樹脂及び架橋された結着樹脂以外の成分の酸価及び含有量を予め求めておく。試料の粉砕品0.5〜2.0gを精秤し、重合体成分の重さをWgとする。例えば、トナーから結着樹脂の酸価を測定する場合は、着色剤又は磁性体等の酸価及び含有量を別途測定しておき、計算により結着樹脂の酸価を求める。
(2)300(ml)のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液150(ml)を加え溶解する。
(3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB(ml)とし、以下の式(1)で算出する。ただしfはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)=[(S−B)×f×5.61]/W (1)
【0054】
トナーの結着樹脂及び結着樹脂を含む組成物は、トナー保存性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が好ましくは35〜80℃、特に好ましくは40〜75℃である。Tgが35℃より低いと高温雰囲気下でトナーが劣化しやすく、また定着時にオフセットが発生しやすくなる。またTgが80℃を超えると、定着性が低下する傾向にある。
【0055】
本発明で使用できる磁性体としては、(1)マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き磁性酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄。又は(2)鉄、コバルト、ニッケルのような金属、あるいは、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金。(3)及びこれらの混合物等が用いられる。
【0056】
磁性体として具体的に例示すると、Fe3O4、γ−Fe2O3、ZnFe2O4、Y3Fe5O12、CdFe2O4、Gd3Fe5O12、CuFe2O4、PbFe12O、NiFe2O4、NdFe2O、BaFe12O19、MgFe2O4、MnFe2O4、LaFeO3、鉄粉、コバルト粉、ニッケル粉等が挙げられる、上述した磁性体を単独で或いは2種以上の組合せて使用する。特に好適な磁性体は、四三酸化鉄又はγ−三二酸化鉄の微粉末である。
【0057】
また、異種元素を含有するマグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄、又はその混合物も使用できる。異種元素を例示すると、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ジルコニウム、錫、イオウ、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム等が挙げられる。好ましい異種元素としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、又はジルコニウムから選択される。異種元素は、酸化鉄結晶格子の中に取り込まれていてもよいし、酸化物として酸化鉄中に取り込まれていてもよいし、又は表面に酸化物あるいは水酸化物として存在していてもよいが、酸化物として含有されているのが好ましい。
【0058】
上記の異種元素は、磁性体生成時にそれぞれの異種元素の塩を混在させpH調整により、粒子中に取り込むことができる。また、磁性体粒子生成後にpH調整、あるいは各々の元素の塩を添加しpH調整することにより、粒子表面に析出することができる。
【0059】
上記磁性体の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、磁性体10〜200質量部、好ましくは20〜150質量部使用するのがよい。これらの磁性体は個数平均粒径は0.1〜2μmが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5μmが好ましい。個数平均径は透過電子顕微鏡により拡大撮影した写真をデジタイザー等で測定することにより求めることができる。
【0060】
また、磁性体の磁気特性としては、10Kエルステッド印加での磁気特性がそれぞれ、抗磁力20〜150エルステッド、飽和磁化50〜200emu/g、残留磁化2〜20emu/gのものが好ましい。
【0061】
前記磁性体は、着色剤としても使用することができる。本発明で使用できる着色剤としては黒色トナーの場合、黒色又は青色の染料又は顔料粒子が挙げられる。黒色又は青色の顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等がある。黒色又は青色の染料としてはアゾ系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、メチン系染料等も挙げられる。
【0062】
カラー用トナーとして使用する場合には、着色剤として、次の様なものが挙げられる。マゼンダ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基性染料、レーキ染料、ナフトール染料、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、顔料系のマゼンダ着色剤としては、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,39,40,41,48,49,50,51,52,53,54,55,57,58,60,63,64,68,81,83,87,88,89,90,112,114,122,123,163,202,206,207,209、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35等が挙げられる。
上記顔料を単独で使用しても構わないが、染料と顔料と併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
【0063】
染料系マゼンタ着色剤としては、C.I.ソルベントレッド1,3,8,23,24,25,27,30,49,81,82,83,84,100,109,121、C.I,デイスパースレッド9、C.I.ソルべントバイオレット8,13,14,21,27、C.I.デイスパースパイオレット1等の油溶染料、C.I.べーシックレッド1,2,9,12,13,14,15,17,18,22,23,24,27,29,32,34,35,36,37,38,39,40、C.I.ベーシックバイオレツト1,3,7,10,14,15,21,25,26,27,28等の塩基性染料が挙げられる。
【0064】
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン、塩基染料レーキ化合物が利用できる。具体的に挙げると、顔料系のシアン着色剤としては、C.I.ピグメントブルー2,3,15,16,17、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45又はフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料である。
【0065】
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が用いられる。具体的には、イエロー用顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,7,10,11,12,13,14,15,16,17,23,65,73,83、C.I.バットイエロー1,3,20等が挙げられる。
上記の着色剤の使用量は結着樹脂100量部に対して、0.1〜20質量部が好ましい。
【0066】
本発明のトナーは、キャリアと混合して2成分現像剤として使用してもよい。本発明に使用するキャリアは、通常のフェライト、マグネタイト等のキャリアも樹脂コートキャリアも使用することができる。
【0067】
樹脂コートキャリアは、キャリアコア粒子とキャリアコア粒子表面を被覆(コート)する樹脂である被覆材からなり、該被覆材に使用する樹脂としては、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル系樹脂、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素含有樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂が好ましく、他にはアイオモノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等のキャリアの被覆(コート)材として使用できる樹脂であればよく、これらの樹脂単独、あるいは、複数用いることができる。
【0068】
また、樹脂中に磁性粉が分散されたバインダー型のキャリアコアも用いることができる。
樹脂コートキャリアにおいて、キャリアコアの表面を少なくとも樹脂被覆剤で被覆する方法としては、樹脂を溶剤中に溶解若しくは懸濁せしめて塗布したキャリアコアに付着せしめる方法、あるいは単に粉体状態で混合する方法が適用できる。樹脂コートキャリアに対して樹脂被覆材の割合は、適宜決定すればよいが、樹脂コートキャリアに対し好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%がよい。
【0069】
2種以上の混合物の被覆(コート)剤で磁性体を被覆する使用例としては、(1)酸化チタン微粉体100質量部に対してジメチルジクロロシランとジメチルシリコンオイル(質量比1:5)の混合物12質量部で処理したもの、(2)シリカ微粉体100質量部に対してジメチルジクロロシランとジメチルシリコンオイル(質量比1:5)の混合物20質量部で処理したものが挙げられる。
【0070】
上記の樹脂中、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、含フッ素樹脂とスチレン系共重合体との混合物、又はシリコーン樹脂が好ましく用いられ、特にシリコーン樹脂が好ましい。
【0071】
含フッ素樹脂とスチレン系共重合体との混合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデンとスチレン−メタクリ酸メチル共重合体との混合物、ポリテトラフルオロエチレンとスチレン−メタクリル酸メチル共重合体との混合物、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合(共重合体質量比10:90〜90:10)とスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体(共重合質量比10:90〜90:10)とスチレン−アクリル酸2−エチルヘキシル−メタクリル酸メチル共重合体(共重合体質量比20〜60:5〜30:10:50)との混合物が挙げられる。
【0072】
シリコーン樹脂としては、含窒素シリコーン樹脂、及び含窒素シランカップリング剤とシリコーン樹脂とが反応することにより生成された変性シリコーン樹脂が挙げられる。
【0073】
キャリアコアの磁性材料としては、フェライト、鉄過剰型フェライト、マグネタイト、γ−酸化鉄等の酸化物や、鉄、コバルト、ニッケルのような金属、又はこれらの合金を用いることができる。またこれらの磁性材料に含まれる元素としては、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムが挙げられる。好ましいものとして、銅、亜鉛、及び鉄成分を主成分とする銅−亜鉛−鉄系フェライト、マンガン、マグネシウム及び鉄成分を主成分とするマンガン−マグネシウム−鉄系フェライトが挙げられる。
【0074】
キャリアの抵抗値は、キャリアの表面の凹凸度合い、被覆する樹脂の量を調整して106〜1010Ω・cmにするのがよい。キャリアの粒径は4〜200μmのものが使用できるが、好ましくは、10〜150μm、より好ましくは20〜100μmである。特に、樹脂コートキャリアは、50%粒径が20〜70μmであることが好ましい。
【0075】
2成分系現像剤ではキャリア100質量部に対して、本発明のトナー1〜200質量部で使用することが好ましく、より好ましくは、キャリア100質量部に対して、トナー2〜50質量部で使用するのがよい。
【0076】
本発明のトナーは更に、ワックスを含有していてもよい。本発明に用いられるワックスは次のようなものがある。例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス。酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物。又はそれらのブロック共重合体。キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろうの如き植物系ワックス。みつろう、ラノリン、鯨ろうの如き動物系ワックス。オゾケライト、セレシン、ペテロラタムの如き鉱物系ワックス、モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類。脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したものが挙げられる。
【0077】
ワックスの例としては、更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に直鎖のアルキル基を有する直鎖アルキルカルボン酸類の如き飽和直鎖脂肪酸。プランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸。ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウピルアルコール、セリルアルコール、メシリルアルコール、あるいは長鎖アルキルアルコールの如き飽和アルコール。ソルビトールの如き多価アルコール。リノール酸アミド、オレフィン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド。メチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド。エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'−ジオレイルセパシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類。m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド。ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪酸金属塩。脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス。ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化合物。植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
【0078】
好ましく用いられるワックスとしては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン。高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン。低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒の如き触媒を用いて重合したポリオレフィン。放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン。高分子量ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン。パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィツシャートロプシュワックス。ジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス。炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基の如き官能基を有する炭化水素系ワックス。炭化水素系ワックスと官能基を有する炭化水素系ワックスとの混合物。これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸の如きビニルモノマーでグラフト変性したワックスが挙げられる。
【0079】
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は溶液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものを好ましく用いられる。
【0080】
本発明に使用するワックスは、定着性と耐オフセット性のバランスを取るために融点が70〜140℃であることが好ましく、更には70〜120℃であることが好ましい。70℃未満では耐ブロッキング性が低下する傾向があり、140℃を超えると耐オフセット効果が発現しにくくなる。
【0081】
また、2種以上の異なる種類のワックスを併用することにより、ワックスの作用である可塑化作用と離型作用を同時に発現されることができる。
可塑化作用を有するワックスの種類としては、例えば融点の低いワックス、又は分子の構造上に分岐のあるものや極性基を有する構造のものであり、離型作用を有するワックスとしては、融点の高いワックス、分子の構造では、直鎖構造のものや、官能基を有さない無極性のものが挙げられる。使用例としては、2種以上の異なるワックスの融点の差が10℃〜100℃のものの組み合わせや、ポリオレフィンとグラフト変性ポリオレフィンの組み合わせ等が挙げられる。
【0082】
2種のワックスを選択する場合は、同様構造のワックスの場合は、相対的に、融点の低いワックスが可塑化作用を発揮し、融点の高いワックスが離型作用を発揮する。この時、融点の差が10〜100℃の場合に、機能分離が効果的に発現する。10℃未満では機能分離効果が表れにくく、100℃を超える場合には相互作用による機能の強調が行われにくい。この場合、少なくとも一方のワックスの融点が好ましくは70〜120℃がよく、更に好ましくは、70〜100℃であり、機能分離効果を発揮しやすくなる傾向がある。
【0083】
また、ワックスは、相対的に、枝分かれ構造のものや官能基の如き極性基を有するものや主成分とは異なる成分で変性されたものが可塑作用を発揮し、より直鎖構造のものや官能基を有さない無極性のものや未変性のストレートなものが離型作用を発揮する。好ましい組み合わせとしては、エチレンを主成分とするポリエチレンホモポリマー又はコポリマーとエチレン以外のオレフィンを主成分とするポリオレフィンホモポリマー又はコポリマーの組み合わせ;ポリオレフィンとグラフト変成ポリオレフィンの組み合わせ;アルコールワックス、脂肪酸ワックス又はエステルワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせ;フイシャートロプシュワックス又はポリオレフィンワックスとパラフィンワックス又はマイクロクリスタルワックスの組み合わせ;フィッシャートロプシュワックスとポルリオレフィンワックスの組み合わせ;パラフィンワックスとマイクロクリスタルワックスの組み合わせ;カルナバワックズ、キャンデリラワックス、ライスワックス又はモンタンワックスと炭化水素系ワックスの組み合わせが挙げられる。
【0084】
いずれの場合においてもトナーのDSC測定において観測される吸熱ピークにおいて70〜110℃の領域に最大ピークのピークトップ温度があることが好ましく、更に好ましくは70〜110℃の領域に最大ピークを有しているのがよい。このことより、トナー保存性と定着性のバランスをとりやすくなる。
【0085】
本発明のトナーにおいては、これらのワックスの総含有量は、結着樹脂100質量部に対し、好ましくは、0.2〜20質量部が用いられ、更に好ましくは0.5〜10質量部で用いられるのが効果的である。
【0086】
本発明では、ワックスの融点は、DSCにおいて測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもってワックスの融点とする。
【0087】
本発明においてワックス又はトナーのDSC測定では、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。測定方法は、ASTM D3418−82に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、温度速度10℃/minで、昇温させた時に測定されるDSC曲線を用いる。
【0088】
本発明のトナーには、流動性向上剤を添加してもよい。流動性向上剤は、トナー表面に添加することにより、トナーの流動性を改善(流動しやすくなる)するものである。例えば、カーボンブラック、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナ、それらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤若しくはシリコーンオイルにより表面処理を施した、処理シリカ,処理酸化チタン,処理アルミナが挙げられる。なかでも、微粉末シリカ、微粉未酸化チタン、微粉未アルミナが好ましく、また、これらをシランカップリング剤やシリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカが更に好ましい。流動性向上剤の粒径は、平均一次粒径として、0.001〜2μmであることが好ましく、特に好ましくは、0.002〜0.2μmである。
【0089】
好ましい微粉末シリカは、ケイ素ハロゲン化含物の気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。
【0090】
ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば以下の様な商品名で市販されているものがある。AEROSIL(日本アエロジル社商品名、以下同じ)−130、−300、−380、−TT600、−MOX170、−MOX80、−COK84:Ca−O−SiL(CABOT社商品名)−M−5、−MS−7、−MS−75、−HS−5、−EH−5、Wacker HDK(WACKER−CHEMIEGMBH社商品名)−N20 V15、−N20E、−T30、−T40:D−CFineSi1ica(ダウコーニング社商品名):Franso1(Fransi1社商品名)等が市販されている。
【0091】
更には、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が好ましくは30〜80%の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化は、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的あるいは物理的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する方法がよい。
【0092】
有機ケイ素化合物としては、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルビニルクロロシラン、ジビニルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、へキサメチルジシラン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、α−クロルエチルトリクロロシラン、β−クロロエチルトリクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサン及び1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し、未端に位置する単位にそれぞれSiに結合した水酸基を0〜1個含有するジメチルポリシロキサン等がある。更に、ジメチルシリコーンオイルの如きシリコーンオイルが挙げられる。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
【0093】
流動性向上剤は、個数平均粒径が5〜100nmになるものがよく、更に好ましくは5〜50nmがよい。BET法で測定した窒素吸着による比表面積が好ましくは30m2/g以上、より好ましくは60〜400m2/gのものが好ましく、表面処理された微粉体としては、20m2/g以上が好ましく、特に40〜300m2/gが好ましい。これらの微粉体の好ましい適用量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.03〜8質量部である。
【0094】
本発明のトナーには、他の添加剤として、感光体・キャリアーの保護、クリーニング性の向上、熱特性・電気特性・物理特性の調整、抵抗調整、軟化点調整、定着率向上等を目的として、各種金属石けん、フッ素系界面活性剤、フタル酸ジオクチルや、導電性付与剤として酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化アンチモン等や、酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ等の無機微粉体等を必要に応じて添加することができる。又、これらの無機微粉体は必要に応じて疎水化してもよい。また、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等の滑剤、酸化セシウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、ケーキング防止剤、更に、トナー粒子と逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。
【0095】
これらの添加剤は、帯電量コントロール等の目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤、又は種々の処理剤で処理することも好ましい。
【0096】
本発明の電荷制御剤を、上記の如き添加剤およびトナーと一緒に、ヘンシェルミキサー、ボールミル、ナウターミキサー、V型ミキサー、W型ミキサー、スーパーミキサー等の混合機により充分に混合攪拌し、トナー粒子表面に均一に外添処理することにより目的とする静電荷現像用トナーを得ることもできる。
【0097】
本発明のトナーは熱的にも安定であり電子写真プロセス時に熱的変化を受けることがなく、安定した帯電特性を保持することが可能である。また、どのような結着樹脂にも均一に分散することから、フレッシュトナーの帯電分布が非常に均一である。そのため、本発明のトナーは未転写、回収トナー(廃トナー)においても、フレッシュトナーと較べて飽和摩擦帯電量、帯電分布とも変化はほとんど認められない。しかし、本発明の静電荷像現像用トナーから出る廃トナーを再利用する場合は、脂肪族ジオールを含むポリエステル樹脂を結着樹脂に選択したり、金属架橋されたスチレン−アクリル共重合体を結着樹脂とし、これに多量のポリオレフィンを加えた方法でトナーを製造することによってフレッシュトナーと廃トナーの隔差を更に小さくすることができる。
【0098】
本発明のトナーを製造する方法としては、既知の製造法によって製造することができる。製造方法について例示すると、結着樹脂、電荷制御剤、着色剤等の上述したトナー構成材料をボールミル等の混合機により十分混合する。その混合物を熱ロールニーダの如き加熱混練装置により良く混練し、冷却固化し、粉砕後、分級して得る方法(粉砕法)が好ましい。
【0099】
また上記混合物を溶媒に溶解させ噴霧により微粒化、乾燥、分級して得る方法でも製造できる。更に、結着樹脂を構成すべき単量体に所定の材料を混合して乳化又は懸濁液とした後に、重合させてトナーを得る重合法によるトナー製造法、コア材及びシェル材から成るいわゆるマイクロカプセルトナーにおいて、コア材あるいはシェル材、あるいはこれらの両方に所定の材料を含有させる方法によっても製造できる。更に必要に応じ所望の添加剤とトナー粒子とをヘンシェルミキサーの如き混合機により十分に混合することにより、本発明のトナーを製造することができる。
【0100】
上記粉砕法による本発明のトナーの製造法を更に詳しく説明すると、初めに結着樹脂と着色剤、電荷制御剤、その他必要な添加剤を均一に混合する。混合には既知の攪拌機、例えばヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、ボールミル等を用いて混合することができる。得られた混合物を、密閉式のニーダー、あるいは1軸、又は2軸の押出機を用いて、熱溶融混練する。混練物を冷却後に、クラッシャーやハンマーミルを用いて粗粉砕し、更にジェットミル、高速ローター回転式ミル等の粉砕機で微粉砕する。更に風力分級機、例えばコアンダ効果を利用した慣性分級方式のエルボジェット、サイクロン(遠心)分級方式のミクロプレックス、DSセパレーター等を使用し、所定の粒度にまで分級を行う。更に外添剤等をトナー表面に処理する場合は、トナーと外添剤を高速攪拌機、例えばヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等で攪拌混合する。
【0101】
また、本発明のトナーは、懸濁重合法又は乳化重合法によっても製造できる。懸濁重合法においては、重合性単量体、着色剤、重合開始剤、電荷制御剤、更に必要に応じて架橋剤、その他の添加剤を、均一に溶解又は分散させて、単量体組成物を調整した後、この単量体組成物を分散安定剤を含有する連続相、たとえば水相中に適当な攪拌機及び分散機、例えばホモミキサー、ホモジナイザー、アトマイザー、マイクロフルイダイザー、一液流体ノズル、気液流体ノズル、電気乳化機等を用いて分散せしめる。好ましくは、重合性単量体組成物の液滴が所望のトナー粒子のサイズを有するように撹拌速度、温度、時間を調整し、造粒する。同時に重合反応を40〜90℃で行い、所望の粒径を有するトナー粒子を得ることができる。得られたトナー粒子を洗浄しろ取した後、乾燥する。トナー粒子の製造後の外添処理は前記記載の方法が使用できる。
【0102】
乳化重合法で製造すると上述の懸濁重合法より得られた粒子と比べ、均一性には優れるものの平均粒子径が0.1〜1.0μmと極めて小さいため、場合によっては乳化粒子を核として重合性単量体を後添加し粒子を成長させる、いわゆるシード重合や、乳化粒子を適当な平均粒径にまで合一、融着させる方法で製造することもできる。
【0103】
これらの重合法による製造は、粉砕工程を経ないためトナー粒子に脆性を付与させる必要がなく、更に従来の粉砕法では使用することが困難であった低軟化点物質を多量に使用できることから材料の選択幅を広げることができる。トナー粒子表面に疎水性の材料である離型剤や着色剤が露出しにくく、このためトナー担持部材、感光体、転写ローラーや定着器への汚染が少なくすることができる。
【0104】
本発明のトナーを重合法によって製造することによって、画像再現性、転写性、色再現性の如き特性を更に向上させることができ、微小ドットに対応するためにトナーの粒径を小径化し、比較的容易に粒度分布がシャープなトナーを得ることができる。
【0105】
本発明のトナーを重合方法で製造する際に使用する重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が用いられる。該ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体あるいは多官能性重合性単量体を使用することができる。
【0106】
単官能性重合性単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−フェニルスチレンの如きスチレン系重合性単量体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートメチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ジエチルフォスフェートメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体;不飽和脂肪族モノカルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニルの如きビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンの如きビニルケトン類が挙げられる。
【0107】
多官能性重合性単量体としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル等が挙げられる。
【0108】
本発明においては、前記単官能性重合性単量体を単独あるいは2種以上組み合わせて、また、単官能性重合性単量体と多官能性重合性単量体を組み合わせて使用することができる。また前記多官能性重合性単量体を架橋剤として使用することも可能である。上記した重合性単量体の重合の際に用いられる重合開始剤としては、油溶性開始剤及び/又は水溶性開始剤が用いられる。例えば、油溶性開始剤としては、2,2'−アゾビズイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルの如きアゾ化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、デカノニルパーオキシカーボネート、デカノニルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドの如きパーオキサイド系開始剤が挙げられる。
【0109】
水溶性開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2'−アゾビス(N、N'−ジメチレンイソブチロアミジン)塩酸塩、2,2'−アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩、アゾビス(イソブチルアミジン)塩酸塩、2,2'−アゾビスイソブチロニトリルスルホン酸ナトリウム、硫酸第1鉄又は過酸化水素が挙げられる。
【0110】
重合開始剤は重合性単量体100質量部に対して0.5〜20質量部の添加量が好ましく、単独又は併用してもよい。
重合トナーを製造する際に使用する分散剤としては、例えば無機系酸化物としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等が挙げられる。有機系化合物としては、例えばポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン等が使用されている。これらの分散剤は、重合性単量体100質量部に対して0.2〜2.0質量部を使用することが好ましい。
【0111】
これら分散剤は市販のものをそのまま使用してもよいが細かい均一な粒度を有する分散粒子を得るために、分散媒体中にて高速撹拌下にて該無機化合物を生成させることもできる。
【0112】
上記重合法で得られるトナーは、特別な処理をしない粉砕法によるトナーに較べトナー粒子の凹凸の度合いが小さい傾向にあり、不定形であるために静電潜像担持体とトナーとの接触面積が増加することにより、トナー付着力が高くなり、結果として機内汚染が少なく、より高画像濃度、より高品位な画像を得られやすい。
【0113】
また、粉砕法によるトナーにおいても、トナー粒子を、水中に分散させ加熱する湯浴法、熱気流中を通過させる熱処理法、又は機械的エネルギーを付与して処理する機械的衝撃法等によりトナー表面の凹凸の度合いを小さく方法が挙げられる。凹凸の度合いを小さくするために有効な装置としては、乾式メカノケミカル法を応用したメカノフージョンシステム(ホソカワミクロ社製)、I式ジェットミル、ローターとライナーを有する混合装置であるハイブリダイザー(奈良機械製作所社製)、高速撹拌羽を有する混合機であるヘンシェルミキサー等が挙げられる。
【0114】
前記トナー粒子の凹凸の度合いを示す値の一つとして、平均円形度で表現することができる。平均円形度(C)とは、下式(2)により円形度(Ci)を求め、更に下式(3)で示すように測定された全粒子の円形度の総和を測定された全粒子数(m)で除した値を意味する。
【0115】
【数1】
【0116】
【数2】
【0117】
上記円形度(Ci)は、フロー式粒子像分析装置(例えば、東亜医用電子製FPIA-1000)を用いて測定する。測定方法としては、ノニオン界面活性剤約0.1mgを溶解している水10mlにトナー約5mgを分散させた分散液を調整し、超音波(20kHz、50W)を分散液に5分間照射し、分散液濃度を5000〜20000個/μリットルとして、上記フロー式粒子像測定装置を用い、0.60μm以上159.21μm未満の円相当径を有する粒子の円形度分布を測定する。
【0118】
上記平均円形度の値は、0.955乃至0.990が好ましく、更に好ましくは、0.960乃至0.985にトナー粒子を調整すると、転写残トナーの増加を招くという現象が小さく、再転写を起こしにくい傾向にある。
【0119】
本発明のトナーの場合、画像性とトナーの生産性の面から、例えばミクロンサイザー(例えば、セイシン企業社製)等のレーザー式粒度分布測定機を使用した測定において、トナーの粒子径が体積基準の平均粒径で2〜15μmが好ましい。より好ましくは3〜12μmである。15μmを超える平均粒径になると解像度や鮮鋭性が鈍くなる傾向にあり、また、2μm未満の平均粒径では解像性は良好となるものの、トナー製造時の歩留まりの悪化によるコスト高の問題や機内でのトナー飛散、皮膚浸透等の健康への障害が生じる傾向がある。
【0120】
トナーの粒度分布に関して、本発明のトナーの場合、例えばコールターカウンター(コールター社製TA−II)による粒度測定により、2μm以下の粒子含有量が個数基準で10〜90%のものが望ましく、12.7μm以上の粒子の含有量が体積基準で0〜30%のものが望ましい。
【0121】
本発明の静電荷現像用トナーの場合、トナーの比表面積は、脱吸着ガスを窒素としたBET比表面積測定において、1.2〜5.0m2/gが好ましい。より好ましくは1.5〜3.0m2/gである。比表面積の測定は、例えばBET比表面積測定装置(例えば、島津製作所社製、FlowSorbII2300)を使用し、50℃で30分間トナー表面の吸着ガスを脱離後、液体窒素により急冷して窒素ガスを再吸着し、更に再度50℃に昇温し、このときの脱ガス量から求めた値と定義する。
【0122】
本発明のトナーの場合、見かけ比重(かさ密度)は、例えばパウダーテスター(例えば、ホソカワミクロン社製)を用いて測定した。非磁性トナーの場合は0.2〜0.6g/cm3が好ましく、磁性トナーの場合は磁性粉の種類や含有量にもよるが0.2〜2.0g/cm3が好ましい。
【0123】
本発明のトナーの場合、非磁性トナーの場合の真比重は0.9〜1.2g/cm3が好ましく、磁性トナーの場合は磁性粉の種類や含有量にもよるが0.9〜4.0g/cm3が望ましい。トナーの真比重は、次のようにして算出される。トナー1.000gを精秤し、これを10mmΦの錠剤成型器に入れ、真空下で200kgf/cm2の圧力をかけながら圧縮成型する。この円柱状の成型物の高さをマイクロメーターで測定し、これより真比重を算出する。
【0124】
トナーの流動性は、例えば、安息角測定装置(例えば、筒井理化社製)による流動安息角と静止安息角により定義する。流動安息角は本発明の電荷制御剤を使用した静電荷現像用トナーの場合、5度〜45度のものが望ましい。また静止安息角は10〜50度のものが望ましい。
本発明のトナーは、粉砕型トナーの場合の形状係数(SF−1)の平均値が100〜400が好ましく、形状係数2(SF−2)の平均値が100〜350が好ましい。
【0125】
本発明において、トナーの形状係数を示すSF−1、SF−2とは、例えばCCDカメラを備えた光学顕微鏡(例えば、オリンパス社製BH−2)を用い、1000倍に拡大したトナー粒子群を一視野に30個程度となるようサンプリングし、得られた画像を画像解析装置(例えば、ニレコ社製ルーゼックスFS)に転送し、同作業をトナー粒子に対し約1000個となるまで繰り返し行い形状係数を算出した。形状係数(SF−1)と形状係数2(SF−2)は以下の式によって算出する。
SF−1=((ML2×π)/4A)×100
(式中、MLは粒子の最大長、Aは一粒子の投影面積を示す。)
SF−2=(PM2/4Aπ)×100
(式中、PMは粒子の周囲長、Aは一粒子の投影面積を示す。)
【0126】
SF−1は粒子の歪みを表し、粒子が球に近いものほど100に近く、細長いものであるほど数値が大きくなる。またSF−2は粒子の凹凸を表し、粒子が球に近いものほど100に近く、粒子の形が複雑であるほど数値が大きくなる。
【0127】
本発明のトナーは、トナーの体積抵抗率が、非磁性トナーの場合は1×1012〜1×1016Ω・cmが望ましく、また磁性トナーの場合は磁性粉の種類や含有量にもよるが、1×108〜1×1016Ω・cmのものが望ましい。この場合のトナー体積抵抗率は、トナー粒子を圧縮成型し直径50mm、厚み2mmの円盤状の試験片を作製し、これを固体用電極(例えば、安藤電気社製SE−70)にセットし、高絶縁抵抗計(例えば、ヒューレットパッカッ−ド社製、4339A)を用いて、直流電圧100Vを連続印加した時の1時間経過後の値と定義する。
【0128】
本発明のトナーは、トナーの誘電正接が、非磁性トナーの場合は1.0×10-3〜15.0×10-3が望ましく、また磁性トナーの場合は磁性粉の種類や含有量にもよるが、2×10-3〜30×10-3のものが望ましい。この場合のトナー体積抵抗率は、トナー粒子を圧縮成型し、直径50mm、厚み2mmの円盤状の試験片を作製し、これを固体用電極にセットし、LCRメーター(例えば、ヒューレットパッカッ−ド社製、4284A)を用いて、測定周波数1KHz、ピークトゥーピーク電圧0.1KVで測定した時に得られる誘電正接値(Tanδ)と定義する。
【0129】
本発明のトナーは、トナーのアイゾット衝撃値が0.1〜30kg・cm/cmが望ましい。この場合のトナーのアイゾット衝撃値とは、トナー粒子を熱溶融し板状の試験片を作製し、これをJIS規格K−7110(硬質プラスチックの衝撃試験法)に準じて測定する。
【0130】
本発明のトナーは、トナーのメルトインデクス(MI値)が10〜150g/10minが望ましい。この場合のトナーのメルトインデクス(MI値)とは、JIS規格K−7210(A法)に準じて測定するものである。この場合、測定温度が125℃、加重を10kgとする。
【0131】
本発明のトナーは、トナーの溶融開始温度が80〜180℃が望ましく、4mm降下温度が90〜220℃であることが望ましい。この場合のトナー溶融開始温度は、トナー粒子を圧縮成型し直径10mm、厚み20mmの円柱状の試験片を作製し、これを熱溶融特性測定装置、例えばフローテスター(例えば、島津製作所社製CFT−500C)にセットし、荷重20kgf/cm2で測定した時の溶融が始まりピストンが降下し始める値と定義する。また同様の測定で、ピストンが4mm降下したときの温度を4mm降下温度と定義する。
【0132】
本発明のトナーは、トナーのガラス転移温度(Tg)が35〜80℃が望ましく、より望ましくは40〜75℃である。この場合のトナーのガラス転移温度は、示差熱分析装置(DSC)を用いて測定し、一定温度で昇温後、急冷し、再昇温したときに現れる相変化のピーク値より求めるものと定義する。トナーのTgが35℃を下回ると、耐オフセット性や保存安定性が低下する傾向にあり、80℃を超えると画像の定着強度が低下する傾向がある。
本発明のトナーのDSC測定において観測される吸熱ピークにおいて70〜120℃の領域に最大ピークのピークトップ温度があることが好ましい。
【0133】
本発明のトナーは、トナーの溶融粘度が1000〜50000ポイズが望ましく、より好ましくは1500〜38000ポイズである。この場合のトナー溶融粘度は、トナー粒子を圧縮成型し直径10mm、厚み20mmの円柱状の試験片を作製し、これを熱溶融特性測定装置、例えばフローテスター(島津社製CFT−500C)にセットし、荷重20kgf/cm2で測定した時の値と定義する。
【0134】
本発明のトナーは、トナー表面に存在する電荷制御剤であるモノアゾ鉄錯体化合物の量がトナー1g当たり、少なくとも1mg以上存在するものが好ましい。トナー表面のモノアゾ鉄錯体化合物の定量は、トナーの樹脂、着色剤、ワックスに不溶であり、且つモノアゾ鉄錯体化合物のみ溶解させる有機溶媒、例えばメタノールを用いて、トナー表面のモノアゾ鉄錯体化合物を十分に洗浄し、その洗浄溶液の濃度を吸光光度計等を用いて測定し、予め作成しておいた検量線を用いて比色により行う。
【0135】
本発明のトナーは、トナー表面に存在するモノアゾ鉄錯体化合物の体積基準平均粒径が0.05μm〜3μmであるものが好ましく、より好ましくは0.1μm〜1μmである。トナー表面の電荷制御剤の平均粒径が0.05μmを下回ると、電荷制御剤が十分な効果を発揮せず、また平均粒径が3μm以上の場合は、電荷制御剤が摩擦帯電時に欠落する割合が多くなり、キャリア汚染による帯電量の低下、逆極性トナー増加によるかぶりの発生、トナーの機内飛散といった問題を引き起こすことになる。トナー表面に存在するモノアゾ鉄錯体化合物の粒度測定は、一定量のトナーを熱溶融薄膜化し、これを、例えばCCDカメラを備えた偏光顕微鏡(例えば、オリンパス社製BH−2)を用い、500倍程度に拡大した上で、トナー中のモノアゾ鉄錯体化合物粒子のみ識別出来るようにする。得られた画像を画像解析装置(例えば、ニレコ社製ルーゼックスFS)に転送し、モノアゾ鉄錯体化合物粒子の粒度分布を画像解析により算出する。また、同様の方法により、トナー表面からモノアゾ鉄錯体化合物のみを抽出したトナーを熱溶融薄膜化し、このときの粒度分布も測定した。このようにして得られたトナー全体に存在するモノアゾ鉄錯体化合物の粒度分布とトナー内部のみに存在するモノアゾ鉄錯体化合物の分布の差から、トナー表面に存在しているモノアゾ鉄錯体化合物の粒度分布を推定する。このときの平均粒径を、トナー表面に存在するモノアゾ鉄錯体化合物の平均粒径と定義した。
【0136】
本発明のトナーの溶媒溶解残分は、THF不溶分として0〜30質量%、酢酸エチル不溶分として0〜40質量%及びクロロホルム不溶分として0〜30質量%のものが好ましい。ここでの溶媒溶解残分は、トナー1gをTHF、酢酸エチル及びクロロホルムの各溶剤100mlに均一に溶解/又は分散させ、この溶液/又は分散液を圧ろ過し、ろ液を乾燥させ定量し、この値からトナー中の有機溶剤への不溶解物の割合を算出した値とする。
【0137】
本発明のトナーは画像形成方法の1つである1成分現像方式に使用することができる。1成分現像方式とは、薄膜化させたトナーを潜像担持体に供給して潜像を現像する方式である。トナーの薄膜化は、通常、トナー搬送部材、トナー層厚規制部材及びトナー補給補助部材を備え、かつ該補給補助部材とトナー搬送部材並びにトナー層厚規制部材とトナー搬送部材とがそれぞれ当接している装置を用いて行われる。
【0138】
本発明のトナーを2成分現像法について適用する場合について具体的に説明する。2成分現像方式とは、トナーとキャリア(帯電付与材及びトナー搬送材としての役割を持つもの)を使用する方式であり、キャリアは上述した磁性材やガラスビーズが使用される。現像剤(トナー及びキャリア)は、攪拌部材によって攪拌される事により、所定の電荷量を発生させ、マグネットローラー等によって現像部位にまで搬送される。マグネットローラー上では磁力により、ローラー表面に現像剤が保持され、現像剤規制板等により適当な高さに層規制された磁気ブラシを形成する。現像剤は現像ローラーの回転に伴って、ローラー上を移動し、静電荷潜像保持体と接触又は一定の間隔で非接触状態で対向させ、潜像を現像可視化する。非接触状態での現像の場合は、通常、現像剤と潜像保持体の間に直流電界を生じさせる事によりトナーが一定間隔の空間を飛翔する駆動力を得ることができるが、より鮮明な画像に現像するために、交流を重畳させる方式にも適用することができる。
【0139】
また、更に本発明の電荷制御剤は静電粉体塗装用塗料における電荷制御剤(電荷増強剤)としても好適である。すなわち、この電荷増強剤を用いた静電塗装用塗料は、耐環境性、保存安定性、特に熱安定性と耐久性に優れ、塗着効率が100%に達し、塗膜欠陥のない厚膜を形成することができる。
【0140】
また、本発明の電荷制御剤を二成分現像用のキャリア被覆剤に添加することも極めて有効である。この場合、トナーに与える静電荷は通常トナーに使用した場合の逆の正帯電型となるが、立ち上がり特性に優れている本発明の電荷制御剤は、キャリア側からの帯電付与効果もまた、トナー使用時と同様に立ち上がり性のよい帯電制御効果を付与することができる。また耐熱性・堅牢性に優れており、長期ランニング特性(耐刷性)にも優れている。
【実施例】
【0141】
以下、実施例をもって本発明を説明するが、これらは本発明をなんら制限するものではない。実施例において、「部」は全て「質量部」を表わす。
【0142】
[製造例1](表1中の化合物No.1の製造例)
4−クロロ−2−アミノフェノール10部を水76.5部、及び35%塩酸15.2部に加え、冷却下で攪拌溶解した。内温10℃以下で水24.6部に溶解させた亜硝酸ナトリウム13.6部を前記塩酸水溶液に滴下し、適宜砕氷10部を加えながら5〜10℃を維持した。滴下終了後、10℃で2時間攪拌し反応させた。スルファミン酸0.2部を加え10分反応させた後、ヨウ化カリウムでんぷん紙により過剰に亜硝酸が残存していないことを確認し、ジアゾ溶液を調製した。
【0143】
次に、3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロン12.0部を、水87部、25%水酸化ナトリウム12.1部、炭酸ナトリウム4.9部、及びn−ブタノール104.6部の混合溶液に添加し、室温で攪拌溶解した。そこに上記ジアゾ溶液を注加し、20〜22℃で4時間攪拌しカップリング反応を行った。4時間後、レゾルシンとの反応がないことを確認し反応終了とした。水30.4部を加えた後十分に攪拌し、静置してから下部水層を分液した。更に水92.8部、25%水酸化ナトリウム8.7部を加え攪拌洗浄し、下部水層を分液した。
【0144】
水42.2部、サリチル酸5.9部、n−ブタノール24.6部、及び15%炭酸ナトリウム48.5部を上記反応液に添加し攪拌した。38%塩化第二鉄水溶液15.1部と15%炭酸ナトリウム48.5部を注加し、内温を30℃に昇温後、8時間攪拌し錯体化反応を行った。8時間後、TLCで原料のスポットが消失したことを確認し反応終了とした。攪拌停止後静置し、下部水層を分液した。更に水92.8部、n−ブタノール12.3部、及び25%水酸化ナトリウム8.7部を加え攪拌洗浄し、下部水層を分液した。濾過を行い鉄錯体化合物を取り出し、水253部で洗浄した。
【0145】
水82.3部に硫酸アンモニウム5.9部を加え、昇温しながら攪拌した。内温が90℃になったところで、上記鉄錯体化合物を水113.9部に分散させた混合液をピペットにより滴下した。97℃〜99℃でn−ブタノールを留去しながら1時間攪拌した。冷却濾過後、水253部でケーキを洗浄した。60℃真空乾燥の後、恒量に達したことを確認し、目的化合物24.8部を得た。
【0146】
得られた化合物を赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより、化合物No.1の化合物であることを確認した。
なお、赤外吸収スペクトルについては錠剤法(KBr)によって測定した。以下同様な方法で赤外吸収スペクトルの測定を行った。
【0147】
[製造例2](表1中の化合物No.2の製造法)
4−クロロ−2−アミノフェノール10部を、水76.5部、及び35%塩酸15.2部に加え、冷却下で攪拌溶解した。内温10℃以下で水24.6部に溶解させた亜硝酸ナトリウム13.6部を前記塩酸水溶液に滴下し、適宜砕氷10部を加えながら5〜10℃を維持した。滴下終了後、10℃で2時間攪拌し反応させた。スルファミン酸0.2部を加え10分反応させた後、ヨウ化カリウムでんぷん紙により過剰に亜硝酸が残存していないことを確認し、ジアゾ溶液を調製した。
【0148】
次に、3−メチル−1−(4−クロロフェニル)−5−ピラゾロン14.4部を、水87部、25%水酸化ナトリウム12.1部、炭酸ナトリウム4.9部、及びn−ブタノール104.6部の混合溶液に添加し、室温で攪拌溶解した。そこに上記ジアゾ溶液を注加し、20〜22℃で4時間攪拌しカップリング反応を行った。4時間後、レゾルシンとの反応がないことを確認し反応終了とした。水30.4部を加えた後十分に攪拌し、静置してから下部水層を分液した。更に水92.8部、25%水酸化ナトリウム8.7部を加え攪拌洗浄し、下部水層を分液した。
【0149】
水42.2部、サリチル酸5.9部、n−ブタノール24.6部、及び15%炭酸ナトリウム48.5部を上記反応液に添加し攪拌した。38%塩化第二鉄水溶液15.1部と15%炭酸ナトリウム48.5部を注加し、内温を30℃に昇温後、8時間攪拌し錯体化反応を行った。8時間後、TLCで原料のスポットが消失したことを確認し反応終了とした。攪拌停止後静置し、下部水層を分液した。更に水92.8部、n−ブタノール12.3部、及び5%水酸化ナトリウム8.7部を加え攪拌洗浄し、下部水層を分液した。濾過を行い鉄錯体化合物を取り出し、水253部で洗浄した。
【0150】
水82.3部に硫酸アンモニウム5.9部を加え、昇温しながら攪拌した。内温が90℃になったところで、上記鉄錯体化合物を水113.9部に分散させた溶液をピペットにより滴下した。97℃〜99℃でn−ブタノールを留去しながら1時間攪拌した。冷却濾過後、水253部でケーキを洗浄した。60℃真空乾燥の後、恒量に達したことを確認し、目的化合物27.1部を得た。
得られた化合物を赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより、化合物No.2の化合物であることを確認した。
【0151】
[製造例3](表1中の化合物No.3の製造法)
4−クロロ−2−アミノフェノール10部、水76.5部、及び35%塩酸15.2部を加え、冷却下で攪拌溶解した。内温10℃以下で水24.6部に溶解させた亜硝酸ナトリウム13.6部を滴下し、適宜砕氷10部を加えながら5〜10℃を維持した。滴下終了後、10℃で2時間攪拌し反応させた。スルファミン酸0.2部を加え10分反応させた後、ヨウ化カリウムでんぷん紙により過剰に亜硝酸が残存していないことを確認し、ジアゾ溶液を調製した。
【0152】
次に、3−メチル−1−(4−クロロフェニル)−5−ピラゾロン14.4部、水87部、25%水酸化ナトリウム12.1部、炭酸ナトリウム4.9部、及びn−ブタノール104.6部を添加し、室温で攪拌溶解した。そこに上記ジアゾ溶液を注加し、20〜22℃で4時間攪拌しカップリング反応を行った。4時間後、レゾルシンとの反応がないことを確認し反応終了とした。水30.4部を加えた後十分に攪拌し、静置してから下部水層を分液した。更に水92.8部、25%水酸化ナトリウム8.7部を加え攪拌洗浄し、下部水層を分液した。
【0153】
水42.2部、サリチル酸5.9部、n−ブタノール24.6部、及び15%炭酸ナトリウム48.5部を上記反応液に添加し攪拌した。38%塩化第二鉄水溶液15.1部と15%炭酸ナトリウム18.0部を注加し、酢酸でpHを4.5に調整した。内温を30℃に昇温後、8時間攪拌し錯体化反応を行った。8時間後、TLCで原料のスポットが消失したことを確認し反応終了とした。攪拌停止後静置し、下部水層を分液した。更に水189.9部を加え攪拌洗浄し、下部水層を分液した。濾過後、水253部でケーキを洗浄した。60℃真空乾燥の後、恒量に達したことを確認し、目的化合物26.5部を得た。
【0154】
得られた化合物を赤外吸収スペクトル、可視部吸収スペクトル、元素分析(C,H,N)、原子吸光分析、マススペクトルより、化合物No.3の化合物であることを確認した。
【0155】
[製造例4](表1中の化合物No.4の製造例)
4−クロロ−2−アミノフェノール10部、水76.5部、及び35%塩酸15.2部を加え、冷却下で攪拌溶解した。内温10℃以下で水24.6部に溶解させた亜硝酸ナトリウム13.6部を滴下し、適宣砕氷10部を加えながら5〜10℃を維持した。滴下終了後、10℃で2時間攪拌し反応させた。スルファミン酸0.2gを加え、10分反応させた後、ヨウ化カリウムでんぷん紙により過剰に亜硝酸ナトリウムが残存していないことを確認し、ジアゾ溶液を調製した。
次に3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロン12.0部、水87部、25%水酸化ナトリウム12.1部、炭酸ナトリウム4.9部及びブタノール104.6部を添加し、室温で攪拌溶解した。そこに上記ジアゾ溶液を注加し、20〜22℃で4時間攪拌しカップリング反応を行った。4時間後、レゾルシンとの反応が無いことを確認し反応終了とした。水30.4部を加えた後十分に攪拌し、静置してから下部水層を分液した。更に水92.8部、25%水酸化ナトリウム8.7部を加え攪拌洗浄し、下部水層を分液した。
水42.2部、サリチル酸5.9部、ブタノール24.6部、及び15%炭酸ナトリウム48.5部を上記反応液に添加し攪拌した。38%塩化第二鉄水溶液15.1部と15%炭酸ナトリウム18.0部を注加し、酢酸でpHを4.5に調整した。内温を30℃に昇温後、8時間攪拌し錯体化反応を行った。8時間後、TLCで原料のスポットが消失したことを確認し反応終了とした。攪拌停止後、静置して下部水層を分液した。更に水189.9部を加え攪拌洗浄し、下部水層を分液した。濾過後、水253部でケーキを洗浄した。60℃真空乾燥の後、恒量に達したことを確認し、目的化合物24.2部を得た。
得られた化合物を赤外吸収スペクトル、可使部吸収スペクトル、元素分析(C、H、N)、原子吸光分析、マススペクトルより、化合物No.4の化合物であることを確認した。
【0156】
また、製造例1〜4と同様な方法で表1及び表2に記載した化合物5〜20および化合物22についても製造した。
化合物21は、製造例2の硫酸アンモニウムの量を半分にした以外は製造例2と同様な方法で製造し、化合物21を得た。
【0157】
[比較電荷制御剤1]
既知の電荷制御剤である、以下の構造を有する鉄アゾ錯体(保土谷化学工業社製、商品名:T-77)。下式中、a+b+cは1である。
【0158】
【化6】
【0159】
[比較電荷制御剤2]
既知の電荷制御剤である、以下の構造を有するクロムアゾ錯体(保土谷化学工業社製、商品名:T-95)。
【0160】
【化7】
【0161】
[比較製造例3]
0.5モルの水酸化ナトリウムと水に対して、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸を0.4モル加え、加熱し溶解した。この溶液にAl2(SO4)30.1モルの水溶液を加え反応させた。50℃で3時間反応させた後、析出した白色結晶を濾取した。これを水洗して減圧にて40℃で24時間乾燥した。得られた反応物は目的とするアルミニウム原子に対し、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸が2原子結合する化合物であった。
【0162】
[実施例1]
スチレンーアクリル系共重合体樹脂(酸価0.1mgkOH/g) 91部
(三井化学社製、商品名CPR−100)
製造例1で得られた化合物 1部
カーボンブラック(三菱化学社製、商品名MA−100) 5部
低分子量ポリプロピレン(三洋化成社製、商品名ビスコール550P)
3部
【0163】
上記混合物を130℃の加熱混合装置(2軸押出混練機)により溶融混合し、冷却した混合物をハンマーミルで粗粉砕した。更にジェットミルで微粉砕した後、分級して体積平均粒径9±0.5μmの非磁性トナーを得た。このトナーをシリコンコート系のフェライトキャリア(商品名、F96−100、パウダーテック社製)と4対100質量部(トナー:キャリア)の割合で混合振とうし、トナーを負に帯電させた後、ブローオフ粉体帯電量測定装置で測定した。
【0164】
また帯電立ち上がり性の指標である時定数(τ)についても算出した。時定数(τ)は、飽和帯電に達するまでの帯電量を一定時間ごとにブローオフ帯電量測定装置で測定し、[電子写真学会誌、P307、第27巻、第3号(1988)]に記載される、次式によってln(qmax−q)を算出し、時間tとln(qmax−q)の関係をグラフにプロットし、時定数τを求めた。
(qmax−q)/(qmax-q0)=exp(-t/τ)
ここで、qmaxは飽和帯電量、q0は初期帯電量(ここでは帯電時間10秒のとき)、tが各測定時間であり、そのときの帯電量がqである。
帯電立ち上がりのよいものは、時定数がより小さな値となる。時定数の単位は秒である。
【0165】
また、帯電の環境安定性についての評価も行った。環境安定性の評価方法は、通常の25℃−50%RH(相対湿度)の環境下での測定に加え、低湿環境(10℃−30%RH)と高湿環境(35℃−85%RH)での帯電量測定を行うことにより判定した。帯電量測定は各環境下に24時間暴露した現像剤を、その環境においたままで十分に帯電させ、飽和帯電量をブローオフ帯電量測定器により測定した。3つの環境で帯電量の変動が10%未満であるものを良好(○)、10〜20%であるものを、やや不良(△)、20%を超えるものを不良(×)とした。帯電量、時定数、環境安定性の結果を表3に示した。
【0166】
[実施例2〜22]
「製造例1で得られた化合物」の代わりに、表1及び表2中の化合物No.2〜22をそれぞれ使用した以外は添加量を含めて実施例1と同様の方法で非磁性トナーを調製し、ブローオフ粉体帯電量測定装置による帯電量、時定数、環境安定性を評価し、それぞれ実施例2〜実施例22として結果を表3に示した。
【0167】
[比較例1〜3]
「製造例1で得られた化合物」の代わりに、比較電荷制御剤1、比較電荷制御剤2及び比較製造例3の化合物をそれぞれ使用した以外は添加量を含めて実施例1と同様の方法で非磁性トナーを調製し、ブローオフ粉体帯電量測定装置による帯電量、時定数、環境安定性を評価し、それぞれ比較例1〜3として、結果を表3に示した。
【0168】
【表3】
【0169】
表3から明らかなように、実施例1〜22の非磁性トナーは、実用的に充分な帯電量を有しかつ、時定数が低いことから帯電の立ち上がりが優れ、及び環境安定性に優れた、高い帯電能力を兼備したトナーであることがわかる。
【0170】
(非磁性2成分現像方法による画像特性評価)
実施例1〜4と比較例1〜3で使用した非磁性トナーと、シリコンコート系のフェライトキャリア(パウダーテック社製、F96−100、)とを4:100部の割合で混合した現像剤を用い、非磁性2成分現像方式による画像特性評価を行った。画像特性評価に用いる画像形成装置は市販の非磁性2成分現像方式複写機を改良し、感光体表面電位、現像ローラー印加電圧、転写電圧、定着温度が任意に制御できるようにしてあり、初期画像で印字が最良となるよう各条件を設定した。印刷はトナーを連続補給しながら、テストチャート印刷を開始してからそれぞれ10枚目(初期画像)、5千枚連続印刷後、2万枚連続印刷後の画像をサンプリングし、画像特性評価し、それぞれ実施例23〜26、比較例4〜6とした。
【0171】
画像濃度は普通紙(75g/m2)を使用し、所定の枚数を印刷した後の画像をサンプリングし、黒ベタ部分をマクベス反射濃度計(サカタインクス(株)社製、RD−918)を用いて測定した。かぶり濃度は、未印字部分の反射濃度を測定し、この値からベース値として印刷前の普通紙の反射濃度(0.05)を差し引いた値とした。細線再現性に関してはテストチャートの30μmの細線が忠実に再現できるかどうかで評価した。メモリー発生状況に関しては目視による観察を行った。結果を表4に示した。表4中、細線再現性については、忠実に再現できているものについて良好、忠実に再現できていないものについては不良とした。
【0172】
【表4】
【0173】
実施例23〜26において、画像濃度は複写機で望ましいとされる1.40〜1.45であり良好であった。更に長期の連続印刷において殆ど濃度の変化がなく安定していた。かぶり濃度値も極めて低く、且つ連続印刷においても増加しなかった。細線再現性も良く、安定していた。
【0174】
比較例4〜6では、初期画像では満足できる画像を得たが、5千枚の連続印刷を実施すると画像濃度が若干低下し、かぶり濃度が上昇した。更に2万枚の連続印刷を実施した後では、更にこれらの画像劣化が顕著になり、問題となるレベルとなった。長期の連続印刷により細線再現性は大きく劣化した。
【0175】
[実施例27]
スチレンーアクリル系共重合体樹脂(酸価0.1mgkOH/g) 100部
(三井化学社製、商品名CPR−100、)
製造例1で得られた化合物 2部
磁性酸化鉄 (チタン工業社製、商品名BL−200) 90部
低分子量ポリプロピレン (三洋化成社製、商品名ビスコール550P)
3部
上記混合物を130℃の加熱混合装置(2軸押出混練機)により溶融混合し、冷却した混合物をハンマーミルで粗粉砕した。更にジェットミルで微粉砕した後、分級して体積平均粒径9±0.5μmの磁性トナーを得た。
【0176】
[実施例28〜30]
「製造例1で得られた化合物」の代わりに、それぞれ、「製造例2で得られた化合物」、「製造例3で得られた化合物」及び「製造例4で得られた化合物」を使用した他は、添加量を含めて実施例27と同様にして磁性トナーを調製し、これらをそれぞれ、実施例28、実施例29及び実施例30とした。
【0177】
[比較例7〜9]
「製造例1で得られた化合物」の代わりに、それぞれ、比較電荷制御剤1、比較電荷制御剤2、比較製造例3で得られた化合物を使用した他は、添加量を含めて実施例27と同様にして磁性トナーを調整し、これらをそれぞれ比較例7〜9とした。
【0178】
(磁性1成分現像方式による画像特性評価)
実施例27〜30と比較例7〜9で製造した磁性トナーを用い、磁性1成分現像方式による画像特性評価を行った。
本実施例で適用される画像形成装置は市販の磁性1成分現像方式プリンター(解像度600dpi)を改造し、感光体表面電位、現像ローラー印加電圧、転写電圧、定着温度が任意に制御できるようにしてあり、初期画像で印字が最良となるよう各条件を設定した。
【0179】
印刷はトナーを連続補給しながら、パーソナルコンピューターからテストチャートを転送して行った。印刷開始から10枚までの初期画像と、1000枚連続印刷後、5千枚後の画像をサンプリングし、画像特性評価を行った。
【0180】
画像濃度は普通紙(75g/m2)に所定の枚数を印刷した後の画像をサンプリングし、黒ベタ部分をマクベス反射濃度計(サカタインクス(株)社製、RD−918)を用いて測定した。また、かぶり濃度は、未印字部分の反射濃度を測定し、この値からベース値として印刷前の普通紙の反射濃度(0.05)を差し引いた値とした。ドット再現性に関してはテストチャートのドットが忠実に再現できるかの評価であり、ドット再現は約50μmの孤立ドットパターンが欠損なく再現できるかどうかで判断した。約50個のドットの内、欠損ドットが1割以上ある場合に不良とし、それ以下の場合を良好とした。メモリー発生状況に関しては、その有無を目視観察により判定した。結果を表5に示す。
【0181】
【表5】
【0182】
実施例27〜30において、画像濃度はプリンターで望ましいとされる1.45〜1.55であり良好であった。更に長期の連続印刷において殆ど濃度の変化がなく安定していた。かぶり濃度値も極めて低く、且つ連続印刷においても増加しなかった。ドット再現性も良く、安定していた。
【0183】
比較例7〜9では、初期画像では満足できる画像を得たが、1千枚の連続印刷を実施すると画像濃度が低下し、かぶり濃度が上昇した。更に5千枚の連続印刷を実施した後では、更にこれらの画像劣化が顕著となり、問題となるレベルとなった。長期の連続印刷によりドット再現性は大きく劣化した。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】本発明の表1のNO.1の化合物の赤外線吸収スペクトルのチャート
【図2】本発明の表1のNO.2の化合物の赤外線吸収スペクトルのチャート
【図3】本発明の表1のNO.3の化合物の赤外線吸収スペクトルのチャート
【図4】本発明の表1のNO.4の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【図5】本発明の表1のNO.5の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【図6】本発明の表1のNO.6の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【図7】本発明の表1のNO.11の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【図8】本発明の表2のNO.12の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【図9】本発明の表2のNO.13の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【図10】本発明の表2のNO.14の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【図11】本発明の表2のNO.15の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【図12】本発明の表2のNO.19の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【図13】本発明の表2のNO.21の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【図14】本発明の表2のNO.22の化合物の赤外線吸収スペクトルチャート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[1]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【化1】
式[1]中、A1、A2、B1、B2は、相互に独立して、H、アルキル基又はハロゲン原子を示す。Jは、H、アルカリ金属、NH4、又はアルキルアンモニウムを示し、これらの2種以上であってもよい。X1、X2は相互に独立して、H、アルキル基、ハロゲン原子を示し、Y1、Y2は相互に独立して、H、アルキル基、又はアルキル基若しくはハロゲンで置換された芳香族基又は無置換の芳香族基を示す。ただし、A1、A2、B1、B2、X1、X2、Y1、Y2が同時に水素の場合を除く。
【請求項2】
式[2]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【化2】
式[2]中、Jは、H、Na、NH4、又はアルキルアンモニウムを示し、これらの2種以上であってもよい。X1、X2は、相互に独立して、H、アルキル基、又はハロゲン原子を示し、Z1、Z2は、相互に独立して、H、アルキル基、又はハロゲン原子を示す。
【請求項3】
式[3]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【化3】
式[3]中、Jは、H、Na、NH4、又はアルキルアンモニウムを示し、これらの2種以上であってもよい。
【請求項4】
式[4]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【化4】
式[4]中、Jは、H、Na、NH4、又はアルキルアンモニウムを示し、これらの2種以上であってもよい。
【請求項5】
式[5]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【化5】
【請求項1】
式[1]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【化1】
式[1]中、A1、A2、B1、B2は、相互に独立して、H、アルキル基又はハロゲン原子を示す。Jは、H、アルカリ金属、NH4、又はアルキルアンモニウムを示し、これらの2種以上であってもよい。X1、X2は相互に独立して、H、アルキル基、ハロゲン原子を示し、Y1、Y2は相互に独立して、H、アルキル基、又はアルキル基若しくはハロゲンで置換された芳香族基又は無置換の芳香族基を示す。ただし、A1、A2、B1、B2、X1、X2、Y1、Y2が同時に水素の場合を除く。
【請求項2】
式[2]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【化2】
式[2]中、Jは、H、Na、NH4、又はアルキルアンモニウムを示し、これらの2種以上であってもよい。X1、X2は、相互に独立して、H、アルキル基、又はハロゲン原子を示し、Z1、Z2は、相互に独立して、H、アルキル基、又はハロゲン原子を示す。
【請求項3】
式[3]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【化3】
式[3]中、Jは、H、Na、NH4、又はアルキルアンモニウムを示し、これらの2種以上であってもよい。
【請求項4】
式[4]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【化4】
式[4]中、Jは、H、Na、NH4、又はアルキルアンモニウムを示し、これらの2種以上であってもよい。
【請求項5】
式[5]で表されるモノアゾ鉄錯体化合物。
【化5】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−177253(P2007−177253A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20087(P2007−20087)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【分割の表示】特願2003−356674(P2003−356674)の分割
【原出願日】平成15年10月16日(2003.10.16)
【出願人】(000005315)保土谷化学工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【分割の表示】特願2003−356674(P2003−356674)の分割
【原出願日】平成15年10月16日(2003.10.16)
【出願人】(000005315)保土谷化学工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】
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