説明

電荷注入層および輸送層

正孔輸送層(HTL)または正孔注入層(HIL)に用いられる組成物、ならびに前記組成物を製造する方法および前記組成物より形成されるデバイスが提供される。OLEDデバイスが製造可能である。組成物は、少なくとも一つの導電性共役重合体、前記導電性共役重合体とは異なる少なくとも一つの半導性マトリックス成分、および、任意で、ドーパントを含み、かつ絶縁性マトリックス成分を実質的に含まない。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるMathaiらの2008年10月27日に出願された米国仮特許出願第61/108,844号に対して優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
有機光起電デバイス(OPV)、有機電界発光素子(有機発光ダイオード(OLED)、重合体発光ダイオード(PLED)、およびリン光性有機発光ダイオード(PHOLED)を含む)等の有機電子デバイスは有益な進歩を遂げてきているが、これらのデバイスの処理、製造、および性能には更なる改良が必要である。具体的には、これらのデバイスにおける正孔注入および/または正孔輸送の為の技術向上は特に望ましい。最先端の有機電子デバイスであっても、一般的には、デバイス中の正孔注入層(HIL)および/または正孔輸送層(HTL)を利用してデバイス内の電荷の流れ、電子および正孔の分離または再結合を最適化することがいまだ可能である。処理溶媒における成分材料の溶解性(またはその欠如)や、更に、HILまたはHTLの性能に必要なドーパントおよび/または酸のために、正孔注入層および正孔輸送層は難しい問題を提示する可能性がある。ドーパントおよび酸は、デバイスの劣化への寄与を最小にするために、賢明に選択されるべきである。
【0003】
有機電子デバイスの性能を強化させ、効率と明るさを高め、寿命を延ばすことが可能な改良された正孔注入および電荷輸送材料が必要とされている。更に、異なる応用に対応させることができ、様々な異なる発光層、光活性層、および電極と共に機能できる、改良された正孔注入および正孔輸送材料も必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
概要
本発明は、正孔輸送層(HTL)または正孔注入層(HIL)に使用される組成物、ならびに、その組成物を製造および使用する方法、および、その組成物より形成されるデバイスを提供する。
【0005】
組成物は、少なくとも一つの導電性共役重合体、この導電性共役重合体とは異なる少なくとも一つの半導性マトリックス成分、および、任意のドーパントを含むことができ、絶縁性マトリックス成分を実質的に含まない。組成物は、改良されたHILおよびHTLを作り出すことができ、OLEDやOPV等の電子デバイスに組み入れた場合、デバイスの性能の向上につながる可能性がある。
【0006】
従って、いくつかの局面において、(a)少なくとも一つの導電性共役重合体と、(b)(a)の導電性共役重合体とは異なる少なくとも一つの半導性マトリックス成分と、(c)任意に、少なくとも一つのドーパントとを含み、絶縁性マトリックス成分を実質的に含まない、組成物が提供される。
【0007】
一つの態様において、組成物は、本質的に導電性共役重合体、半導性マトリックス成分、および任意に、ドーパントからなる。
【0008】
一つの態様において、組成物は、約3%未満、または約0.1%未満、または約0.01%未満(w/w)の絶縁性マトリックス成分を含む。
【0009】
一つの態様において、導電性共役重合体はポリチオフェンまたはレジオレギュラーポリチオフェンを含む。
【0010】
一つの態様において、前記組成物は、導電性共役重合体、半導性マトリックス成分、および存在する場合はドーパントの総量に対して約1wt%から約99wt%の導電性共役重合体を含む。
【0011】
一つの態様において、半導性マトリックス成分は半導性重合体である。一つの態様において、半導性重合体は多環芳香族重合体またはポリビニル芳香族重合体を含む。一つの態様において、半導性重合体はポリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセン、またはポリビニルカルバゾールを含む。一つの態様において、半導性重合体はポリアントラセンまたはポリナフタレンを含む。一つの態様において、半導性マトリックス成分は正孔輸送化合物を含む一つまたは複数の反復単位を有する重合体を含む。一つの態様において、半導性マトリックス成分は半導性低分子である。一つの態様において、半導性マトリックス成分は正孔輸送化合物である。一つの態様において、半導性マトリックス成分は、アントラセン、ナフタレン、およびフルオレンより選択される多環芳香族化合物である。一つの態様において、半導性マトリックス成分はトリアリールアミンである。
【0012】
一つの態様において、前記組成物は、導電性共役重合体、半導性マトリックス成分、および存在する場合はドーパントの総量に対して約1wt%から約99wt%の半導性マトリックス成分を含む。
【0013】
一つの態様において、ドーパントは、酸化還元ドーパントである。ドーパントは、キノン、ボラン、カルボカチオン、ボラ‐テトラアザペンタレン、アミニウムまたはアンモニリウム塩、スルホニウム塩、オキソニウム塩、セレノニウム塩、ニトロソニウム塩、アルソニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、金属塩、並びにその組み合わせより選択される酸化還元ドーパントであってよい。一つの態様において、ドーパントは、スルホニウム塩、オキソニウム塩、セレノニウム塩、ニトロソニウム塩、アルソニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、並びにその組み合わせより選択される酸化還元ドーパントである。一つの態様において、ドーパントは光酸である。一つの態様において、ドーパントは

により表されるヨードニウム塩である光酸であって、ここで、独立してR1は置換されていてもよいアリール基、独立してR2は置換されていてもよいアリール基、X-はアニオンである。一つの態様において、ヨードニウム塩は4‐イソプロピル‐4'‐メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ホウ酸ペンタフルオロフェニル)(IMDPIB(PhF5)4)、ヘキサフルオロリン酸ジフェニルヨードニウム(DPIPF6)、パラ‐トルエンスルホン酸ジフェニルヨードニウム(DPITos)、トリフルオロメタンスルホン酸ビス‐(4‐tert‐ブチルフェニル)ヨードニウム(tBDPITFSO3)、およびパーフルオロ‐1‐ブタンスルホン酸ジフェニルヨードニウム(DPIPFBSO3)より選択される。
【0014】
一つの態様において、組成物は、導電性共役重合体、半導性マトリックス成分、および存在する場合はドーパントの総量に対して約0wt%から約75wt%のドーパントを含む。一つの態様において、導電性共役重合体の反復単位毎のドーパントのモル数は約0.01から約0.5である。一つの態様において、ドーパントは導電性共役重合体に共有結合している。
【0015】
一つの態様において、導電性共役重合体はスルホン酸化されている。一つの態様において、導電性共役重合体はスルホン酸化されたレジオレギュラーポリ(3‐置換)チオフェンである。一つの態様において、前記組成物は少なくとも一つのドーパントを含む。
【0016】
一つの態様において、組成物は更に有機溶媒を含む。一つの態様において、溶媒は非極性有機溶媒である。一つの態様において、溶媒はテトラヒドロフラン、クロロホルム、またはトルエンである。
【0017】
別の局面において、(a)少なくとも一つの導電性共役重合体と、(b)(a)の導電性共役重合体とは異なる少なくとも一つの半導性マトリックス成分と、(c)溶媒と、(d)任意に、少なくとも一つのドーパントとを含み、絶縁性マトリックス成分を実質的に含まない、組成物が提供される。
【0018】
一つの態様において、組成物は基本的に、導電性共役重合体、半導性マトリックス成分、溶媒、および任意にドーパントからなる。
【0019】
一つの態様において、組成物は基本的に、導電性共役重合体、半導性マトリックス重合体、有機溶媒、およびドーパントからなる。
【0020】
ある局面において、(a)ドープ導電性重合体の溶液を得るために導電性共役重合体、ドーパント、および溶媒を混合する工程;および(b)組成物を得るために前記ドープ導電性重合体の溶液に半導性マトリックス成分を加える工程を含む、組成物を調製するための方法が提供される。
【0021】
ある局面において、(a)少なくとも一つの導電性共役重合体と、(b)(a)の導電性共役重合体とは異なる少なくとも一つの半導性マトリックス成分と、(c)任意に、少なくとも一つのドーパントとを含む正孔輸送層または正孔注入層を含むデバイスであって、該正孔輸送層または正孔注入層が絶縁性マトリックス成分を実質的に含まない、デバイスが提供される。一つの態様において、デバイスは少なくとも4.00%cd/Aの効率を有する。一つの態様において、正孔輸送層または正孔注入層の厚さは約60nmから約200nmである。一つの態様において、正孔輸送層または正孔注入層は、可視光には実質的に透明である。一つの態様において、導電性共役重合体はレジオレギュラーポリチオフェン等のポリチオフェンであり、半導性マトリックス成分は半導性低分子であり、ドーパントは酸化還元ドーパントである。
【0022】
更に他の局面において、有機電子デバイスの効率を高めるための方法であって:
(a)少なくとも一つの導電性共役重合体と、(b)(a)の導電性共役重合体とは異なる少なくとも一つの半導性マトリックス成分と、(c)任意に、少なくとも一つのドーパントとを含み、絶縁性マトリックス成分を実質的に含まない正孔輸送層または正孔注入層を提供する工程;および有機電子デバイス内に正孔輸送層または正孔注入層を組み入れる工程を含み、有機電子デバイス内への正孔輸送層または正孔注入層の組み入れが少なくとも5%のデバイス効率の向上をもたらす方法が提供される。
【0023】
少なくとも一つの態様の少なくとも一つの利点は、デバイスの寿命の改善である。
【0024】
少なくとも一つの態様の少なくとも一つの利点は、デバイスの性能、および/またはデバイスの寿命を含むデバイスの性質の組み合わせの改善である。
【0025】
少なくとも一つの態様の少なくとも一つの利点は、改善された配合の柔軟性である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1の5つのHILインク配合物の紫外‐可視‐NIR吸収スペクトルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
序論
本明細書に引用された文献は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0028】
本明細書において提供される組成物は、少なくとも一つの導電性共役重合体、(a)の導電性共役重合体とは異なる少なくとも一つの半導性マトリックス成分、および任意のドーパントを含んでいてもよく、絶縁性マトリックス成分を実質的に含まない。組成物は、改善されたHTLまたはHILを得るために使用することができ、これらはOLEDまたはOPV等の電子デバイスに組み入れた場合にデバイスの性能を結果として向上させる。例えば、組成物は、OLEDにHILを作るために使用できるインク配合物を含む。組成物を用いて構築したOLEDは、効率および明るさの向上を示すことができる。従って、本組成物は、有機電界発光が関与する応用、特にOLED並びに他の照明ディスプレイおよび/または応用において使用可能な、改善された正孔注入技術を提供することができる。
【0029】
組成物において、導電性共役重合体と半導性マトリックス成分は、典型的には互いに混和し、混合組成物を作り、デバイス中にHILまたはHTL層として存在する場合、これは層の表面よりはむしろ層の大部分の中に電荷注入が起こることを可能にする。
【0030】
組成物は、更に導電性または半導性重合体あるいはその両方のドープ剤として機能するドーパントを含むことができる。導電性および半導性重合体の両方のドーピングは、有機電子デバイスに組み入れた場合に、本組成物の大部分中における高速な電荷輸送を可能とし、デバイスの性能を向上させる。組成物の高導電性ドープ重合体は、有機電子デバイスの直列抵抗を低下させる高い導電性を有するHILまたはHTLを作り出す。これは、かなり低い導電性を有するHILまたはHTL(結果として、高い直列抵抗を有するデバイス)を作り出す他の正孔注入技術と異なる。
【0031】
ある態様において、組成物は、通常よりも層が厚い場合でも、例えば60nm〜200nmのオーダーであっても、可視光には実質的に透明なHILまたはHTLを作り出す。例えば、HILまたはHTLは、波長が約400〜800nmの光を約85%から約90%以上(即ち、%T>85〜90%)透過させることができる。従って、本組成物の更なる利点は、中程度の厚さを有する、実質的に透明なHILまたはHTLが得られることであってよい。厚いHILまたはHTLは、作動電圧に悪影響を与えず、半導性デバイスのショートをなくすために使用できる。
【0032】
絶縁性マトリックス成分
伝統的に、OLED等の有機電子デバイスは、導電性重合体と一つまたは複数の絶縁性重合体、例えばポリスチレンスルホン酸(PSS)やnafion、を含むHILまたはHTLを用いて形成される。典型的に、絶縁性重合体は、HILまたはHTLにおいてマトリックス成分として使用され、これらの層の大部分を形成する。HIL/HTLマトリックス成分として使用できる絶縁性重合体の例としては、ポリ(スチレン)やポリ(スチレン)誘導体、ポリ(酢酸ビニル)やその誘導体、ポリ(エチレングリコール)やその誘導体、ポリ(エチレン‐コ‐酢酸ビニル)、ポリ(ピロリドン)やその誘導体(例えば、ポリ(1‐ビニルピロリドン‐コ‐酢酸ビニル))、ポリ(ビニルピリジン)やその誘導体、ポリ(メタクリル酸メチル)やその誘導体、ポリ(アクリル酸ブチル)やその誘導体が含まれる。HILまたはHTLにおける絶縁性重合体の利用はHammondらによる米国特許出願第2006/0175582号においてより完全に説明されている。絶縁性重合体は、典型的には、3eV以上のバンドギャップを有する。
【0033】
対照的に、本発明の半導性マトリックス成分は、従来のHILまたはHTLの絶縁性重合体マトリックス成分の代わりに使用される。本組成物は、実質的に絶縁性マトリックス成分を含まない。典型的には、本組成物は約5%(w/w)未満、約3%(w/w)未満、約2%(w/w)未満、約1%(w/w)未満、約0.5%(w/w)未満、約0.25%(w/w)未満、約0.1%(w/w)未満、約0.01%(w/w)未満、約0.001%(w/w)未満の絶縁性マトリックス成分を含む。重量パーセントは、組成物中の全ての固体の重量に基づき計算される。
【0034】
例えば、インク配合物の形態である場合、本組成物は、典型的には、約3%(w/w)未満、約2%(w/w)未満、約1%(w/w)未満、または約0.5%(w/w)未満の絶縁性マトリックス成分を含む。典型的に、インク配合物は、約0.5%(w/w)から約3.0%(w/w)、約0.5%(w/w)から約2.0%(w/w)、約0.5%(w/w)から約1.0%(w/w)の絶縁性マトリックス成分を含むことができる。
【0035】
導電性共役重合体
本組成物は、少なくとも一つの導電性共役重合体を含む。
【0036】
電気伝導性共役重合体およびそれらの有機電子デバイスにおける使用は、当技術分野で公知である。例えば、Friend, “Polymer LEDs” Physics World, November 1992, 5, 11, 42-46を参照のこと。Kraft et al., “Electroluminescent Conjugated Polymers-Seeing Polymers in a New Light,” Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 402-428も参照のこと。
【0037】
電気伝導性共役重合体は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるThe Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Wiley, 1990, pages 298-300においても記述されている。この参考文献には、ポリアセチレン、ポリ(p‐フェニレン)、ポリ(硫化p‐フェニレン)、ポリピロール、およびポリチオフェンを含む導電性共役重合体、並びに、ブロック共重合体形成を含む、重合体の混合および共重合が記述されており、本組成物において使用可能な導電性共役重合体が開示されている。Groenendaal et al., Adv. Materials 15:855-879 (2003);Patil et al., Chem. Rev. 88:183-200 (1988);Roncali, J., Chem. Rev. 97:173-205 (1997);およびYamamoto and Hayashia, Reactive & Functional Polymers 37:1-17 (1998)も参照のこと。
【0038】
本組成物における使用に適した導電性共役重合体の例としては、例えば、Seshadri, V.,およびSotzing, G., “Progress in Optically Transparent Conducting Polymers,” Chpt. 22, Organic Photovoltaics, Sun and Sariciftci, eds., CRC Press, 2005, pp.495-527に開示されているものも含まれる。
【0039】
ある態様において、導電性重合体は、導電性複素環共役重合体を含む。適当な複素環共役重合体としては、例えばポリチオフェン重合体が挙げられる。本配合物およびデバイスにおける使用に適した導電性複素環共役重合体は、Plextronics社ペンシルバニア州ピッツバーグより入手可能であり、その例としては、Plexcore(登録商標)や類似の材料等のポリチオフェン系重合体が挙げられる。
【0040】
ポリチオフェンは、例えばRoncali, J., Chem. Rev. 1992, 92,711、Schopf et al., Polythiophenes: Electrically Conductive Polymers, Springer: Berlin, 1997に記述されている。例えば、米国特許第4,737,557号および同第4,909,959号も参照のこと。更に、側鎖を有するレジオレギュラーポリチオフェンを含む、合成方法、ドーピング、重合体の特徴づけが、例えば参照によりその全体が本明細書に組み入れられるMcCulloughらに付与された米国特許第6,602,974号および同第6,166,172号によって提供される。更なる記述は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるRichard D. McCulloughによる論文“The Chemistry of Conducting Polythiophenes,” Adv. Mater. 1998, 10, No.2, pages 93-116並びにそれに引用された文献にみることができる。当業者が利用できる別の文献は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるHandbook of Conducting Polymers,第2版, 1998, 第9章, McCulloughら著, “Regioregular, Head-to-Tail Coupled Poly(3-alkylthiophene) and its Derivatives,”第225〜258頁である。この文献は、第29章においても“Electroluminescence in Conjugated Polymers”を第823〜846頁に記述しており、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。重合体の半導体は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるKatzらによる“Organic Transistor Semiconductors”, Accounts of Chemical Research, vol. 34, no. 5, 2001、第359頁並びに第365〜367頁に記述されている。
【0041】
本組成物における使用に適した導電性共役重合体は、ホモ重合体、共重合体、またはブロック共重合体の形態であってよい。ブロック共重合体は、例えば、Block Copolymers, Overview and Critical Survey, NoshayおよびMcGrathによる,Academic Press, 1977に記述されている。例えば、本テキストには、A‐B二ブロック共重合体(第5章)、A‐B‐A三ブロック共重合体(第6章)、および‐(AB)n‐マルチブロック共重合体(第7章)が記述されており、これらはここに記載のとおりブロック共重合体種の基礎を作ることができる。ポリチオフェンを含む更なるブロック共重合体は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるFrancois et al., Synth. Met. 1995, 69, 463-466、Yang et al., Macromolecules 1993, 26, 1188-1190、Widawski et al., Nature (London), vol. 369, June 2, 1994, 387-389、Jenekhe et al., Science, 279, March 20, 1998, 1903-1907、Wang et al., J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 6855-6861、Li et al., Macromolecules 1999, 32, 3034-3044、およびHempenius et al., J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 2798-2804にも記述されている。
【0042】
ある態様において、導電性共役重合体は、レジオレギュラー共役重合体を含む。特に、導電性共役重合体は、例えば、レジオレギュラーポリチオフェン重合体等のレジオレギュラーな複素環共役重合体を含むことができる。
【0043】
レジオレギュラリティは多種多様な方法で発生する可能性がある。例えば、ヘッドトゥテール(HT)ポリ(3‐置換)チオフェンを供給するための3‐アルキルチオフェン等の非対称モノマーの重合化により発生可能である。あるいは、例えば、レジオレギュラーHH‐TTおよびTT‐HHポリ(3‐置換)チオフェンを提供する、例えば、ビ‐チオフェン等、その二つの部分の間に対称面を有するモノマーの重合化から発生することも可能である。
【0044】
下記の文献には、97頁以降およびそこに記載されている引用文献において数種類のレジオレギュラーなシステムが記述されている:Richard D. McCulloughによる“The Chemistry of Conducting Polythiophenes”、Adv. Mater. 1998, 10, No. 2, pages 93-116。ポリチオフェン誘導体を含むレジオレギュラー重合体においては、レジオレギュラリティの度合いは、例えば、約90%以上、約95%以上、約98%以上、または約99%以上であってよい。レジオレギュラリティの度合いを測定するために、例えばNMR等、当技術分野において公知の方法を使用できる。ある態様において、レジオレギュラリティの度合いは、約75%より多い。他の態様において、レジオレギュラリティの度合いは約85%から100%の間である。
【0045】
他の態様において、導電性共役重合体は、相対的にレジオイレギュラーな複素環共役重合体を含む。レジオレギュラリティの度合いは、例えば、約90%以下、約80%以下、約70%以下、約60%以下、または約50%以下であってよい。
【0046】
本組成物およびデバイスにおける使用に適したポリチオフェン重合体は、枝の数が例えば3つより多くかつチオフェンユニットを含む星型重合体であってもよい。また、ポリチオフェン重合体はデンドリマーであってもよい。例えば、Anthopoulos et al., Applied Physics Letters, 8, 26, June 30, 2003, 4824-4826を参照のこと。
【0047】
ある態様において、導電性共役重合体は、例えば、HH‐TTまたはTT‐HHポリ(3‐ポリエーテル)チオフェン等のレジオレギュラーHH‐TTまたはTT‐HHポリ(3‐置換)チオフェンを含むレジオレギュラー3‐置換ポリチオフェンを含む。本組成物における使用に適した導電性共役重合体は、例えば、参照により全体が本明細書に組み入れられる、2008年4月11日にSeshadriらにより出願され、標題が“Doped Conjugated Polymers, Devices, and Methods of Making Devices”である米国仮特許出願第61/044,380号(並びに、2009年4月10日に出願された米国特許出願第12/422,159号)に記述されている。適した導電性共役重合体の更なる例は、2008年4月9日にWilliamsらにより出願され、標題が“Hole collection Layer Compositions and Photovoltaic Devices”であるWilliamsら、米国仮特許出願第61/043,654号;標題が“Hole Injection/Transport Layer Compositions and Devices”であるHammondらによる米国特許公報第2006/0175582 A1号;標題が“Quantum Dot Photovoltaic Device”であるHammond, T.による米国特許公報第2008/0216894 A1号;およびMarksら、米国特許出願第2005/0147846 A1号に記述されている。それぞれの特許出願および公報は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0048】
例えば、本組成物のある態様において、導電性共役重合体は、例えばポリ(3,4‐ジアルコキシチオフェン)またはポリ(3,4‐ジ‐ポリエーテル)‐チオフェン等の3,4‐二置換ポリチオフェンを含む。本組成物における使用に適した3,4‐二置換ポリチオフェン、およびその合成方法や電子デバイスにおける使用は、前記のとおり2008年4月11日にSeshadriらにより出願された米国仮特許出願第61/044,380号に記述されている。
【0049】
ポリ(3,4‐ジアルコキシ)チオフェンおよびポリ(3,4‐ジ‐ポリエーテル)‐チオフェンの例としては、非限定的に、ポリ(3,4‐ビス(2‐(2‐ブトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン)‐2,5‐ジイル、ポリ(3,4‐ビス(2‐(2‐エトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン)‐2,5‐ジイル、ポリ(3,4‐ビス(2‐(2‐メトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン)‐2,5‐ジイル、ポリ(3,4‐ビス(2‐(2‐ブトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン)‐2,5‐ジイル、ポリ(3,4‐ビス(2‐(2‐ブトキシブトキシ)ブトキシ)チオフェン)‐2,5‐ジイル、およびポリ(3,4‐ビス(2‐(2‐メトキシメトキシ)メトキシ)チオフェン)‐2,5‐ジイルが挙げられる。
【0050】
例えば、ある態様において導電性重合体は:

で表されるポリ(3,4‐ビス(2‐(2‐ブトキシエトキシ)エトキシ)チオフェン)(PDBEETh)を含む。
【0051】
導電性共役重合体の重合度nは特に限定されないが、例えば2から500,000、5から100,000、10から10,000、10から1,000、または10から100であってよい。ある態様において、導電性重合体は、約5,000と100,000g/molの間の数平均分子量を有する。
【0052】
導電性共役重合体は、中性または酸化状態にあってよく、典型的には有機溶媒中に可溶性および/または分散可能である。例えば、ある態様において、共役重合体は、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、アセトニトリル、シクロヘキサノン、アニソール、クロロベンゼン、o‐ジクロロベンゼン、エチルベンゾエート、およびその混合物に可溶性である。従って、ある態様において、導電性共役重合体は非水性配合物である。
【0053】
他の態様において、導電性共役重合体は水性配合物である。その様な水性配合物の例としては、導電性共役重合体としてスルホン化されたポリチオフェンの水性配合物が含まれる。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるSeshadriらによる、標題が“Sulfonation of Conducting Polymers and OLED, Photovoltaic, and ESD Devices”である米国特許公報第2008/0248313号を参照のこと。本組成物には自己ドープ導電性共役重合体も考慮される。
【0054】
更なる態様は、例えば(i)2008年10月27日に出願された米国仮特許出願第61/108,851号、および(ii)2008年11月18日に出願された米国仮特許出願第61/115,877号に記述されている。
【0055】
本組成物において、導電性共役重合体はドーピングを施すと、典型的には1eV未満のバンドギャップを有するか、または本質的にバンドギャップを有さない。
【0056】
導電性共役重合体は、以下に記述の通り、約0eVの有効なバンドギャップを提供するためにドーピングを施した半導性重合体であってもよい。
【0057】
半導性マトリックス成分
本組成物は、少なくとも一つの半導性マトリックス成分も含む。半導性マトリックス成分は、組成物中の導電性共役重合体とは異なる。
【0058】
半導性マトリックス成分は、正孔輸送化合物等の半導性低分子、あるいは典型的には主鎖および/または側鎖中に正孔輸送単位を含む反復単位を含む半導性重合体であってもよい。半導性マトリックス成分は、中性型であってもドープされていてもよく、典型的にはトルエン、クロロホルム、THF、アセトニトリル、シクロヘキサノン、アニソール、クロロベンゼン、o‐ジクロロベンゼン、エチルベンゾエート、およびその混合物等の有機溶媒に可溶性である。
【0059】
マトリックス成分としての使用に適した半導性低分子および重合体の例は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるMarksらによる、標題が“Hole Transport Layer Compositions and Related Diode Devices”である米国特許出願第2005/0147846 A1号に記述されている。
【0060】
半導性マトリックス成分としての使用に適した低分子の例としては、非限定的に、正孔輸送化合物が挙げられる。適した正孔輸送化合物としては、例えばトリアリールアミンが含まれる。有用なトリアリールアミンの例としては:

に表される1,4‐ビス(ジフェニルアミノ)ベンゼン;

に表されるN‐N’‐ビス(3‐メチルフェニル)‐N‐N’‐ビス(フェニル)ベンジジン(TPD);

に表されるN‐N’‐ビス(4‐メチルフェニル)‐N‐N’‐ビス(フェニル)ベンジジン;

に表されるN‐N’‐ビス(2‐ナフタレニル)‐N‐N’‐ビス(フェニル)ベンジジン;

に表される1,3,5‐トリス(3‐メチルジフェニルアミノ)ベンゼン;および

に表される1,3,5‐トリス[(3‐メチルフェニル)フェニルアミノ]ベンゼンが挙げられる。
【0061】
半導性マトリックス化合物に使用可能な他の適した正孔輸送化合物としては、非限定的に:

に表されるトリ‐p‐トリルアミン;

に表されるN‐N’‐ビス(1‐ナフタレニル)‐N‐N’‐ビス(フェニル)ベンジジン(NPB);

に表される4,4’,4’’‐トリス(N‐N‐フェニル‐3‐メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン;

に表される1,3,5‐トリス(ジフェニルアミノ)ベンゼン;

に表されるN,N’‐ビス(3‐メチルフェニル)‐N,N’‐ジフェニルベンジジン;

に表される4‐(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン;

に表される4‐(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン;

に表される4‐(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン;

に表される4‐(ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン;

に表される4‐(ジベンジルアミノ)ベンズアルデヒド‐N,N‐ジフェニルヒドラゾン;および

に表されるトリス[4‐(ジエチルアミノ)フェニル]アミンが含まれる。
【0062】
更なる適した正孔輸送化合物としては、一つまたは複数のカルバゾール単位に基づくまたはそれを含むもの、例えばトリス(4‐カルバゾイル‐9‐イルフェニル)アミン(TCTA);

に表される4,4’‐ビス(カルバゾル‐9‐イル)‐1,1’‐ビフェニル(CBPまたは4,4’,N,N’‐ジフェニルカルバゾール);

に表される9‐エチル‐3‐カルバゾールカルボキシアルデヒドジフェニルヒドラゾン;

に表される1,3,5‐トリス(2‐(9‐エチルカバジル‐3)エチレン)ベンゼン;および

に表されるトリス(4‐カルバゾイル‐9‐イルフェニル)アミンが含まれる。
【0063】
他の適した半導性マトリックス化合物としては、例えば、

に表される銅(II)フタロシアニン;および

に表されるチタニルフタロシアニン等のポルフィリン系金属錯体が含まれる。
【0064】
半導性マトリックス成分としての使用に適したその他の低分子としては、アントラセン、ナフタレン、およびフルオレン等の多環式芳香族化合物が挙げられる。
【0065】
半導性マトリックス成分は、例えば正孔輸送化合物等の半導性低分子を含む一つまたは複数の反復単位を有する重合体、または前記の半導性低分子の一つを含む一つまたは複数の反復単位を有する重合体も含むことができる。
【0066】
そのような重合体としては、例えば、ポリ‐TPD、ポリ‐N,N’‐ジ(ナフタレン‐1‐イル)‐N,N’‐ジフェニル‐ベンジジン(ポリ‐NPD)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、および同様の重合体等、主鎖および/または側鎖中に正孔輸送化合物を含む反復単位を含む重合体が挙げられる。
【0067】
適した重合体の更なる例としては、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、2008年10月27日に出願されたSeshadriらによる、標題が “Polyarylamine Ketones”である米国仮特許出願第61/108,851号に記述されているポリアリールアミンケトン重合体が挙げられる。
【0068】
更に、適しているものとしては、主鎖および/または側鎖中に多環式芳香族化合物単位を含む一つまたは複数の反復単位を有する重合体であって、その例としては、ポリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセン、ポリアントラセン、またはフルオレンに基づく重合体等の多環芳香族重合体やポリビニル芳香族重合体が挙げられる。
【0069】
適したフルオレンに基づく重合体の例としては、非限定的に:American Dye Source社(カナダ国ケベック州、Baie D’Urfe)よりADS250BEとして販売されている、

に表されるポリ[(9,9‐ジヘキシルフルオレニル‐2,7‐ジイル)‐コ‐(N‐N’‐ビス{p‐ブチルフェニル}‐1,4‐ジアミノ‐フェニレン)];および

に表されるポリ[(9,9‐ジオクチルフルオレニル‐2,7‐ジイル)‐コ‐(N‐N’‐ビス{4‐ブチルフェニル}‐1,1’‐ビフェニリン‐4,4‐ジアミン)]が挙げられる。半導性マトリックス重合体としての使用に適したその他の重合体の例としては、

に表されるポリ(N,N’‐ビス(4‐ブチルフェニル)‐N,N’‐ビス(フェニル)ベンゼジン;および

に表されるポリ(銅フタロシアニン)が挙げられる。
【0070】
本組成物において、半導性マトリックス成分は、典型的には3eV未満のバンドギャップ、例えば約1eVから約3eVのバンドギャップを有する。
【0071】
ドーパント
本組成物は任意に一つまたは複数のドーパントを含む。
【0072】
ドーパントは、典型的には、HILまたはHTLの重合体成分において所望の導電状態を得るために使用され、これはデバイス性能を向上させる結果となることが多い。例えば、酸化還元ドーパントにより共役系導電性重合体が酸化されたとき、電子が導電性重合体の価電子帯から除去される。この酸化状態の変化は、重合体における新たなエネルギーレベルの形成をもたらす。このエネルギーレベルは価電子帯中の残存電子の一部にはアクセスが可能であり、重合体が導体として機能できるようにする。
【0073】
本組成物において、特に導電性共役重合体は酸化還元ドーパントでドープしてもよい。当技術分野において公知の、適した酸化還元ドーパントとしては、例えば、非限定的に、キノン、ボラン、カルボカチオン、ボラ‐テトラアザペンタレン、アミニウムまたはアンモニリウム塩、スルホニウム塩、オキソニウム塩、セレノニウム塩、ニトロソニウム塩、アルソニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、限定された金属(例えば、銀)の塩、またはその組み合わせが挙げられる。適した酸化還元ドーパントとしては、非限定的に、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第5,853,906号および同第5,968,674号に開示されているものが含まれる。
【0074】
酸化還元ドーパントは、適した電荷平衡対アニオンが提供されるように選択することもできる。ドーパントアニオンの種類は導電性重合体のドーピングレベル、並びに、これらの溶液から調製したデバイスの性能に影響を及ぼすことができる。
【0075】
ドーパントアニオンの大きさは、デバイス効率を高めるうえで重要なパラメータである可能性がある。アニオンは、ホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、アンチモン酸塩、スルホン酸アニオン、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、置換されてもよいアリールスルホン酸塩、置換されてもよいアルキルスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、置換されてもよいテトラアリールホウ酸アニオン、または置換されてもよいテトラアルキルホウ酸アニオンであってもよい。
【0076】
最終組成物において、組成物は元の成分の組み合わせと明確に異なっていてもよい(即ち、導電性重合体および/または酸化還元ドーパントは、混合前と同じ形態で最終組成物に存在していても、いなくてもよい)。従って、導電性共役重合体およびドーパント、または酸化還元ドーパントとは、反応することによりドープ導電性共役重合体を形成する成分を意味することができる。加えて、ある態様は、ドーピング過程からの反応副産物の除去を可能にする。例えば、ヨードニウム酸化還元ドーパントは、ドープ重合体より洗い流すことが可能な有機副産物をもたらすことができる。
【0077】
ある態様において、酸化還元ドーパントは光酸である。適した光酸の例としては、非限定的に、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるJournal of Polymer Science Part A, Polymer Chem. 37, 4241-4254, 1999に記述されている、スルホニウムおよびヨードニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。
【0078】
ヨードニウム塩は、当技術分野において公知である。中性ポリチオフェン等の導電性重合体のドーピングは、ヨードニウム塩やジアリールヨードニウム塩などの光酸、特にジフェニルヨードニウム塩を用いて達成することができる。ヨードニウム塩中のフェニル基等のアリール基は、当技術分野において公知のように置換されていてもよい。例えば、酸化還元ドーパントは、親油性ヨードニウム塩であり得る。典型的には、ヨードニウム塩は、

で表され、ここで独立してR1は置換されていてもよいアリール基、独立してR2は置換されていてもよいアリール基、X-はアニオンである。
【0079】
中性ポリチオフェンのドーピングは、スルホニウム塩等の光酸を用いて達成することもできる。スルホニウム塩は、当技術分野において公知である。スルホニウム塩中のアリール基は、当技術分野において公知のように置換されていてもよい。典型的には、スルホニウム塩は、

で表され、ここで独立してR1は置換されていてもよいアレーン、独立してR2は置換されていてもよいアレーン、R3は置換されていてもよいアレーン、X-はアニオンである。
【0080】
ドーパントは、分子量が、例えば、約100g/molから約500g/mol、または約300g/molの置換されていてもよいジフェニルヨードニウム塩を含むことができる。
【0081】
ある態様において、ドーパントは、

で表される光酸、4‐イソプロピル‐4’‐メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ホウ酸ペンタフルオロフェニル)(IMDPIB(PhF54)である。
【0082】
使用してもよい他のヨードニウム塩の例としては、非限定的に、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロリン酸(DPIPF6)、ジフェニルヨードニウムパラ‐トルエンスルホン酸塩(DPITos)、ビス‐(4‐tert‐ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩(tBDPITFSO3)、およびジフェニルヨードニウムパーフルオロ‐1‐ブタンスルホン酸塩(DPIPFBSO3)が挙げられる。ヨードニウム塩は、低分子量化合物であってもよく、それは重合体等の高分子化合物と連結していてもよい。
【0083】
酸化還元ドーパントは、スルホニウム塩であってもよい。適したスルホニウム塩の例としては、非限定的に、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロリン酸塩、トリフェニルスルホニウムパラ‐トルエンスルホン酸塩、ビス‐(4‐tert‐ブチルフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩、およびジフェニルスルホニウムパーフルオロ‐1‐ブタンスルホン酸塩が挙げられる。
【0084】
選択された対イオンに対して有効なドーピングを達成できる限り、他のオニウム塩を使用してもよい。
【0085】
使用可能な別のクラスのドーパントとしてはキノンが挙げられる。ドーピングをもたらすために使用されてもよい、適したキノンの例としては、非限定的に、テトラフルオロテトラシアノ‐p‐キノジメタン(F4TCNQ)、トリフルオロテトラシアノ‐p‐キノジメタン(F3TCNQ)、ジフルオロテトラシアノ‐p‐キノジメタン(F2TCNQ)、フルオロテトラシアノ‐p‐キノジメタン(FTCNQ)、ジクロロジシアノキニン(DDQ)、o‐クロラニル、およびシアニルが挙げられる。
【0086】
適したドーパントの更なる例としては、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、Kuehlらによる米国特許第6,908,783号に開示されているもの等を含むキノンジイミン誘導体が挙げられる。
【0087】
使用可能な別のクラスのドーパントとしては、アミニウム塩が挙げられる。電子移動を起こすために、アミニウムラジカルカチオンを酸化還元添加剤として配合物に使用することができる。形成される副産物も正孔輸送部分であり、輸送に悪影響を及ぼす可能性が低いため、これは組成物から除去する必要は無い。適したアミニウム塩の例としては、非限定的に、トリス‐(4‐ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモン酸塩)が挙げられる。
【0088】
その他の有用な酸化還元ドーパントとしては、ボラ‐テトラアザペンタレンが含まれる。ボラ‐テトラアザペンタレンの例は、

に表され、ここでR1、R2、R3は独立して水素、置換されていてもよいアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、縮合炭素環、または縮合複素環基であり、独立にR4およびR5はハロゲン、水素、置換されていてもよいアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、縮合炭素環、または縮合複素環、またはホウ素原子と共にホウ素含有複素環である。(例えば、Rothe, Carsten, Laser and Photonics Reviews (2007), 1(4), 303-306、WO 2007115540 A1(2007-10-18発表)およびそれらに含まれる参考文献を参照のこと。)
【0089】
また、別のクラスの有用なドーパントは、テトラフルオロホウ酸銀、テトラフェニルホウ酸銀、ヘキサフルオロリン酸銀等の銀塩である。銀イオンは金属銀と導電性重合体塩に電子を出し入れし得る。例えば、米国特許第5,853,906号および同第5,968,674号を参照のこと。
【0090】
本組成物を調整する際、導電性重合体のドーピングを確実にするために、ドーパントは典型的には最初に導電性重合体と配合される。半導性マトリックス成分は次に添加される。
【0091】
例えば、ある態様において、組成物は、導電性共役重合体とドーパントを混合し導電性重合体‐ドーパント混合物が作られるように導電性共役重合体をドーパントと組み合わせることにより調製されるインク配合物である。典型的には、導電性共役重合体の原液(例えば、導電性重合体を有機溶媒中に溶解または分散することにより作成)をドーパントの原液と混合し、重合体‐ドーパント溶液を作る。次に半導性マトリックス成分の原液を導電性重合体‐ドーパント溶液に加え、インク配合物を作る。
【0092】
あるいは、ある態様において、ドーパントは、導電性共役重合体に共有結合している。これらの態様において、組成物は導電性重合体‐ドーパントを半導性マトリックス成分と混合することにより調製される。
【0093】

本組成物は、約1〜99重量%(「wt%」または「%(w/w)」)の間の導電性共役重合体、約1〜99重量%の間の半導性マトリックス成分、およびドーパントが存在する場合は約0〜75重量%の間のドーパントを含むことができる。各成分の重量パーセントは、組成物中の全ての固体の重量に基づいて計算される。
【0094】
例えば、ある態様において、組成物は、導電性重合体、半導性マトリックス成分、および存在する場合はドーパントの総量に対して、重量パーセントとして約10%から約90%、約15%から約80%、約25%から約75%、約30%から約70%、または約35%から約65%の導電性共役重合体を含む。
【0095】
ある態様において、組成物は、導電性共役重合体、半導性マトリックス成分、および存在する場合はドーパントの総量に対して、重量パーセントとして約10%から約90%、約15%から約80%、約25%から約75%、約30%から約70%、または約35%から約65%の半導性マトリックス成分を含む。別の態様において、組成物は、重量パーセントとして約10%から約50%、約10%から約40%、約10%から約30%、または約10%から約20%の半導性マトリックス成分を含む。
【0096】
ある態様において、組成物は、導電性共役重合体、半導性マトリックス成分、およびドーパントの総量に対して、重量パーセントとして約20%から約80%、約25%から約75%、または約25%から約50%のドーパントを含む。ドーパントの存在する組成物において、導電性重合体の重量は、一般的にドーパントの重量よりも多い。
【0097】
更に、ドーパントは、導電性共役重合体の反復単位のモル量に相当する量で存在することができる。組成物中にドーパントは、典型的に、ドーパントのモル/導電性重合体反復単位のモル(「m/ru」)として約0.01 m/ruから約1m/ruの量で存在し、ここでmはドーパントのモル量であり、ruは導電性重合体反復単位のモル量である。ある態様において、ドーパントは約0.01m/ruから約0.5m/ru、約0.1m/ruから約0.4m/ru、または約0.2m/ruから約0.3m/ruの量で存在する。典型的には、ドーパントは約0.2〜0.3m/ruの量で存在する。ある態様において、ドーパントは組成物中に存在しない。
【0098】
デバイス
本組成物は、多数の有機電子デバイスに組み込むことが可能なHILやHTLを作るために使用できる。例えば、溶液または真空処理、並びに印刷工程およびパターニング工程等の当技術分野に公知の方法を用いて、これらのデバイスのために本組成物よりHIL/HTL層を調製できる。
【0099】
本組成物より作成することが可能な有機電子デバイスの例としては、非限定的に、OLED、PLED、PHOLED、SMOLED、ESD、光電池、並びに超コンデンサ、ハイブリッドコンデンサ、カチオン変換器、薬物放出デバイス、エレクトロクロミック、センサー、FET、アクチュエータ、および膜が挙げられる。別の応用としては、有機電界効果トランジスタ(OFETS)のための電極修飾剤を含む電極修飾剤がある。他の応用としては、印刷エレクトロニクス、印刷エレクトロニクスデバイス、およびロールツーロール製造工程の分野のものが含まれる。更に、本明細書に記述されている組成物は電極上のコーティングであり得る。
【0100】
これらの各電子デバイスを形成するために、特にOLEDおよびOPVデバイスを形成するために、当技術分野において公知の方法を用いることができる。
【0101】
例えば、本組成物は、OLEDデバイス用のHILを作るために用いることができる。OLEDデバイスは当技術分野において公知である。例えば、2006年4月13日に公開された米国特許出願第2006/00787661 A1号を参照のこと。2006年8月10日に公開された標題が“Hole Injection/Transport Layer Compositions and Devices”であるHammondらによる米国特許出願第2006/0175582 A1号も参照のこと。デバイスは、例えば、ガラス、PET、またはPEN上にITOをのせたもの等の透明な導体を含むアノード;正孔注入層;重合体層等の電界発光層;LiF等の調整層;および例えばCa、Al、またはBa等のカソードを含む多層構造を含むことができる。米国特許第4,356,429号および同第4,539,507号(Kodak)も参照のこと。
【0102】
これらの層または成分それぞれを調製するための材料および方法は、当技術分野において周知である。例えば、OLED中の電界発光層に用いられる発光性共役重合体は、例えば米国特許第5,247,190号および同第5,401,827号(Cambridge Display Technologies)に記述されている。参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、デバイスの構造、物理的原理、溶液処理、多層形成、混合、および材料合成と配合を含む、Kraft et al., “Electroluminescent Conjugated Polymers-Seeing Polymers in a New Light,” Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 402-428も参照のこと。Sumation社、Merck Yellow、Merck Blue、American Dye Sources(ADS)社、Kodak社(例えば、AlQ3)、およびBEHP-PPV等のAldrich社からも入手可能な物質等のさまざまな導電性重合体並びに有機分子を含む、当技術分野において公知のかつ市販の発光体が利用できる。このような重合体および低分子物質は当技術分野において周知であり、例えばVanSlykeに発行された米国特許第5,047,687号、およびBredas, J.-L., Silbey, R., eds., Conjugated Polymers, Kluwer Academic Press, Dordrecht (1991)に記述されている。OLED成分および層のより完全な説明には、 “Organic Light-Emitting Materials and Devices,” Z. Li およびH. Meng, Eds., CRC Press (Taylor and Francis Group, LLC), Boca Raton (2007)、特に第1章(第1〜44頁)、第2章(第45〜294頁)、第3章(第295〜412頁)、および第10章(第617〜638頁)を参照のこと。
【0103】
同様に、本組成物は有機光起電デバイス(OPV)用のHTLを得るために使用できる。OPVは当技術分野において公知である。例えば、2006年4月13日発行の米国特許第2006/0076050号;およびOPV活性層の記述を含む2008年2月14日発行のWO 2008/018931も参照のこと。参照によりその全体が本明細書に組み入れられるWilliamsらによる、標題が“Hole Collection Layer Compositions and Photovoltaic Devices”である2008年4月9日に出願の米国仮特許出願第61/043,654号も参照のこと。デバイスは、例えば、ガラスまたはPET上にインジウムスズ酸化物(ITO)をのせたもの等の透明な導体を含むアノード;正孔注入層および/または正孔輸送層;P/Nバルクヘテロ接合層; LiF等の調整層等;および例えばCa、Al、またはBa等のカソードを含む多層構造を含むことができる。例えば、OPVデバイスには様々な光活性層が使用できる。光起電デバイスは、例えば米国特許第5,454,880号(カルフォルニア大学)、同第6,812,399号、および同第6,933,436号に記述されている導電性重合体等と混合したフラーレン誘導体を含む光活性層を用いて作製することができる。更に、光活性層は、導電性重合体の混合物、導電性重合体と半導性ナノ粒子の混合物、およびフタロシアニン、フラーレン、ポルフィリン等の低分子の二重層を含み得る。
【0104】
デバイス性能測定
製造されたデバイスに対し当技術分野において公知の方法を使用してデバイス性能の測定を行うことができる。例えば、OLEDの場合、その明るさ、効率、および寿命等のデバイス性能パラメータの測定に当技術分野において公知の方法を使用することができる。
【0105】
OLED性能パラメータの測定に当技術分野において公知の方法を使用することができる。デバイス性能の測定は、典型的には10mA/cm2で実施される。例えば、下記実施例3に概説されているプロトコルは、OLEDデバイス性能パラメータである電流密度(mA/cm2)、作動電圧(V)、明るさ(cd/m2)、および効率(cd/A)の測定に使用できる一つの方法である。
【0106】
典型的なOLEDパラメータの例は、下記のとおりである。
【0107】
典型的なOLEDデバイスの電圧は、例えば、約2から約15、約2から約8、約2から5、約3から約14、または約3から約7であってよい。典型的なデバイスの明るさは、例えば、少なくとも100cd/m2、少なくとも500cd/m2、少なくとも750cd/m2、または少なくとも1,000cd/m2であってよい。典型的なデバイス効率は、例えば、少なくとも0.25cd/A、少なくとも0.45cd/A、少なくとも0.60cd/A、少なくとも0.70cd/A、少なくとも1.00cd/A、少なくとも2.5cd/A、少なくとも4.00cd/A、または少なくとも5.00cd/Aであってよい。典型的なデバイス寿命は、50mA/cm2または最大75mA/cm2において時間単位で測定可能であり、例えば、少なくとも50時間、少なくとも100時間、少なくとも約900時間、少なくとも1,000時間、少なくとも1100時間、少なくとも2,000時間、少なくとも5,000時間、少なくとも10,000時間、少なくとも20,000時間、または少なくとも50,000時間であってよい。
【0108】
本組成物が有機デバイス中でHILまたはHTLとして使用された場合、典型的には、電力効率等のデバイスパラメータの上昇につながる。例えば、ある態様において、本組成物は、OLED中でHILとして使用された場合に、良好な正孔注入層の非存在下においてOLEDの作動電圧および量子効率に応じて、絶縁性マトリックス成分を含む従来型のHILを使用して形成されたOLEDと比較して少なくとも5%、または少なくとも約10%以上、最大約50%の効率上昇をもたらす可能性がある。
【0109】
更なる態様は、一連の非限定的な実施例をもって示される。
【実施例】
【0110】
実施例1:代表的な配合物
下記表1に示すように、PDBEEThおよびIMDPIB(PhF54を導電性共役重合体とドーパントとして含み、NPBを半導性マトリックス重合体として含む一連のHILインク配合物を調製した。
【0111】
下記の一般的な手順を用いてインク配合物を得た:先ず、それぞれ0.5%(w/w)の固体を含有するPDBEEThおよびIMDPIB(PhF54のCHCl3溶液を別々の原液として調製した。表1に示すように、各原液を様々な量で混合した。各配合物において、PDBEETh重合体の反復単位毎のIMDPIB(PhF54ドーパントのモルが0.3に維持されるようにPDBEEThの原液にIMDPIB(PhF54の原液を加えた。結果として得られた混合溶液を窒素雰囲気下で2時間還流させ、グローブボックス内で保存した。ドープPDBEEThに示された重量パーセントのNPBを加え(クロロホルム中0.5%(w/w)の原液として加え)、最終インク配合物を調製した。
【0112】
(表1)ドープPDBEEThおよびNPBを正孔輸送マトリックスとして含むHILの組成

%は、重量を基に、組成物の総重量に対して示されている(%(w/w))
【0113】
膜は、当技術分野において公知の手順を用いて前記配合物より作成された。膜は130℃で15分間アニーリングし、UV‐VIS‐NIR分光法を用いて特徴付けられた。グローブボックス内で溶液を調製し、スピンおよびアニーリングを行った。
【0114】
図1は、表1中の5つのHIL調整物より作成された膜のUV‐VIS‐NIRスペクトルを表す。各配合物中の中性NPBおよびドープPDBEEThの存在が明確に示されている。
【0115】
実施例2:OLEDデバイスの形成
OLEDデバイスは、当技術分野において公知の手順に従って形成された。デバイスは、ガラス基板上に堆積されたインジウムスズ酸化物(ITO)表面上に形成された。0.05cm2のピクセル領域を画定するためにITO表面が予めパターニングされた。デバイス基板は、濃度の薄い石鹸溶液中で超音波処理により20分間洗浄された後、蒸留水により洗浄された。この後、イソプロパノール中で20分間超音波処理を行った。基板は、窒素流下で乾燥された後、300Wで動作するUV‐オゾンチャンバにより20分にわたって処理された。
【0116】
洗浄された基板は、その後、HILインク配合物でコーティングされ、5〜15分間90〜170℃で乾燥させることによりHIL膜層が得られた。乾燥した膜の厚さは約20nm〜60nmに及んだ。コーティングプロセスは、スピンコータ上で行われたが、スプレーコーティング、インクジェット、密着焼付け、または結果として所望の厚さのHIL膜を得ることができる任意の他の堆積方法を用いて同様に達成することができる。その後、基板が真空チャンバへと移送され、ここで物理蒸着法によりデバイスの残りの積層が堆積された。
【0117】
この研究において、ITO表面上にスピンされたHILは、本発明の例(前記実施例1の表1中のHIL#4)および比較基準(「比較のHIL」)を含むものであった。比較のHILは、インク配合物より作られる水性HIL層であり、以下の組成を有する。

【0118】
HIL上に堆積された層は、正孔輸送層(HTL)、放出層(EML)、正孔遮断層(HBL)、電子輸送層(ETL)、および金属カソードを含んでいた。使用された材料は、HTLとしてN,N’(ジナフタレン‐1‐イル)‐N,N’‐ジフェニル‐ベンジジン(NPB)、EMLとしてトリス‐(1‐フェニルイソキノリン)イリジウムIII(Ir(piq)3)でドープビス(2‐メチル‐8‐キノリノラート‐N1,O8)‐(1,1’‐ビフェニル‐4‐オラート)アルミニウム(BAlq)、HBLとしてBAlq、およびETLとしてトリス(8‐ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)であった。これらの材料のすべては、市販されており、典型的には当技術分野におけるOLED構造中に存在する。カソード層は、二つの金属層の連続的な堆積により形成され、5×10-7Torrのベース圧をもって、最初にCaからなる3nmから5nmの層が堆積され(0.1nm/sec)、その後Alからなる200nmの層が堆積された(0.5nm/sec)。
【0119】
このように得られたデバイスは、80W/cm2UV露光4分で硬化されたUV光硬化エポキシ樹脂により周囲状態に曝されることを防止するためにガラスカバースリップで密閉された。
【0120】
実施例3:OLEDデバイス検査
実施例2のOLEDデバイスに対して性能検査を行った。典型的には、性能は、作動電圧(低いべきである)、ニトで表した明るさ(明るく、発光しているべきである)、cd/Aの単位で表した効率(デバイスより光を得るために必要な電荷の量を反映する)、および作動寿命(検査開始時における初期輝度値が半分に至るまでに必要とされる時間)等の異なるパラメータの組み合わせにより定量化される。このように、全体の性能は、HIL性能の比較評価において大変重要である。デバイスの性能は、以下の手順を用いて検査された。
【0121】
OLEDデバイスは、ガラス基板上にピクセルを含み、その電極は、ピクセルの発光部分を含むデバイスの密閉された領域の外へ伸びる。この様なデバイスにおける各ピクセルの典型的な面積は0.05cm2である。デバイスを検査するために、アルミニウム電極を接地しつつ、バイアス電圧をインジウムスズ酸化物電極に印加し、電極をKeithley 2400ソースメーターなどの電流ソースメーターと接触させた。この手順は、励起子を形成し光を発生するデバイス中に正電荷を持つキャリアー(正孔)および負電荷を持つキャリアーが注入される結果をもたらす。本実施例のOLEDデバイスでは、デバイスのHIL層が発光層への電荷担体の注入を補助し、その結果デバイスの作動電圧(ピクセル中に一定の電流密度を流すために必要な電圧、と定義される)が低くなる。
【0122】
同時に、別のKeithley 2400ソースメーターを使用し、大面積シリコンフォトダイオードの検査に取り組んだ。このフォトダイオードは、2400ソースメーターによりゼロボルトバイアスに維持され、OLEDピクセルの明るい部分の真下に位置するガラス基板の部分と直接接触するように配置された。フォトダイオードは、OLEDデバイスより発生した光を集光し、光電流に変換するために用いられ、これが今度はソースメーターにより読み出される。発生したフォトダイオード電流は、ミノルタCS-200クロマメーターの助けを借りて較正することにより、光学的単位(カンデラ/m2)に定量化される。
【0123】
デバイスのOLEDピクセルの電圧‐電流‐輝度、またはIVLデータは、以下のように得られた:デバイス検査の間、OLEDピクセルを測定するKeithley 2400ソースメーターは、デバイスに対して電圧掃引を行った。ピクセル内に結果として流れた電流が測定された。同時に、OLEDピクセル内に流れた電流は、光の発生をもたらし、その結果フォトダイオードに接続されたもう一つのKeithley 2400ソースメーターにより光電流が測定された。この結果、ピクセルへの電気入力のルーメン毎ワット(電力効率)およびピクセル電流のカンデラ毎アンペア等、他のデバイス特性の測定が可能となった。
【0124】
発明のHILおよび比較のHILを含む実施例2のOLEDデバイスに関して、電流密度(mA/cm2)、作動電圧(V)、明るさ(cd/m2)、および効率(cd/A)を測定した。結果は表2に示されている。発明のHILは実施例1のHILインク調整物#4を使用して作成された。比較のHILは、実施例2において上述されているとおりに作成され。発明のHILを含むデバイスは、比較のHILを含むものよりも強い明るさと高い効率を生じた。
【0125】
(表2)

【0126】
OLEDデバイスは、その生涯性能についても検査可能である。生涯性能は、検査されるデバイス中に一定の電流が供給される寿命テスターを用いて測定される。デバイスへの電流は、特定の初期輝度値が得られるように調節される。生涯性能試験において、この値は典型的には1,000カンデラ/m2に設定される。次に、経時的な光度減衰および電圧の上昇が記録される。
【0127】
前記実施例2と同様の方法で形成されるOLEDデバイスは、生涯性能について検査が行われた。OLEDデバイスは、表2に示したデバイス効率測定に使用される比較のHILおよび発明のHILを含み、ITO/HIL/NPB/BAlq:Ir(piq)3(15wt%)/E246/EI-101/A(ここでE246は電子輸送層を示し、EI-101は電子注入層を示し、これらはOLED-T社(英国、エンフィールド)より入手可能である)の一般構造を有した。生涯性能試験の結果は表3に示されている。発明のHILを含むデバイスは比較のHILを含むデバイスよりも明るく、寿命もながかった。
【0128】
(表3)

12,000ニトにおいて

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも一つの導電性共役重合体と、
(b)(a)の導電性共役重合体とは異なる少なくとも一つの半導性マトリックス成分と、
(c)任意で、少なくとも一つのドーパントと
を含み、絶縁性マトリックス成分を実質的に含まない、組成物。
【請求項2】
約3%(w/w)未満の絶縁性マトリックス成分を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
約0.01%(w/w)未満の絶縁性マトリックス成分を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記導電性共役重合体がポリチオフェンを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記導電性共役重合体がレジオレギュラーポリチオフェンを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
導電性共役重合体、半導性マトリックス成分、および、存在する場合はドーパントの総量に対して、約1wt%から約99wt%の導電性共役重合体を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記半導性マトリックス成分が半導性重合体である、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記半導性重合体が多環芳香族重合体またはポリビニル芳香族重合体を含む、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
前記半導性マトリックス成分が正孔輸送化合物を含む一つまたは複数の反復単位を有する重合体を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記半導性マトリックス成分が半導性低分子である、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記ドーパントが酸化還元ドーパントである、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
導電性共役重合体、半導性マトリックス成分、および、存在する場合はドーパントの総量に対して、約0wt%から約75wt%のドーパントを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が少なくとも一つのドーパントを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
(a)少なくとも一つの導電性共役重合体と、
(b)(a)の導電性共役重合体とは異なる少なくとも一つの半導性マトリックス成分と、
(c)溶媒と、
(d)任意で、少なくとも一つのドーパントと
を含み、絶縁性マトリックス成分を実質的に含まない、組成物。
【請求項15】
約1%(w/w)未満の絶縁性マトリックス成分を含む、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
(a)ドープ導電性重合体溶液を作るために導電性共役重合体、ドーパント、および溶媒を混合する工程;および
(b)組成物を作るために前記ドープ導電性重合体溶液に半導性マトリックス成分を加える工程
を含む、請求項34記載の組成物を調製するための方法。
【請求項17】
前記半導性マトリックス成分が半導性重合体である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
(a)少なくとも一つの導電性共役重合体と、
(b)(a)の導電性共役重合体とは異なる少なくとも一つの半導性マトリックス成分と、
(c)任意で、少なくとも一つのドーパントと
を含む正孔輸送層または正孔注入層を含むデバイスであって、該正孔輸送層または正孔注入層が絶縁性マトリックス成分を実質的に含まない、デバイス。
【請求項19】
少なくとも4.00%cd/Aの効率を有する、請求項18記載のデバイス。
【請求項20】
前記正孔輸送層または正孔注入層が約1%(w/w)未満の絶縁性マトリックス成分を含む、請求項18記載のデバイス。
【請求項21】
前記正孔輸送層または正孔注入層が可視光には実質的に透明である、請求項18記載のデバイス。
【請求項22】
前記導電性共役重合体がポリチオフェンである、請求項18記載のデバイス。
【請求項23】
有機電子デバイスの効率を高めるための方法であって:
(a)少なくとも一つの導電性共役重合体と、
(b)(a)の導電性共役重合体とは異なる少なくとも一つの半導性マトリックス成分と、
(c)任意で、少なくとも一つのドーパントと
を含み、絶縁性マトリックス成分を実質的に含まない、正孔輸送層または正孔注入層を提供する工程;および
前記有機電子デバイス内に正孔輸送層または正孔注入層を組み入れる工程
を含み、有機電子デバイス内への正孔輸送層または正孔注入層の組み入れが少なくとも5%のデバイス効率の向上をもたらす、方法。
【請求項24】
前記有機電子デバイスが有機発光ダイオード(OLED)である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記有機電子デバイスが有機光起電デバイス(OPV)である、請求項23記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−507151(P2012−507151A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533406(P2011−533406)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/062065
【国際公開番号】WO2010/062558
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(507094393)プレックストロニクス インコーポレーティッド (24)
【Fターム(参考)】