説明

電荷結合素子

【目的】 チップサイズの増大を回避しつつ、動作の高速化が達成され、しかも、信頼性の高い電荷結合素子の提供
【構成】 CCD電荷転送チャネル1上に第1の転送電極2が所定の間隔をおいて複数設けられ、これらの第1の転送電極2間に複数の第2の電極3が設けられている。転送電極2はポリシリコン膜から構成され、転送電極3は、ポリシリコン膜3aと抵抗が低い高融点金属シリサイド膜3bとから構成されている。電荷転送方向に沿った一対づつの第1,第2の転送電極2,3が、交互に2相のクロックΦ1 ,Φ2 端子に金属配線4,5により接続され、これらを接続するコンタクト部20,21が電極間に跨がるようにして形成されている。各コンタクト部20,21は、電荷転送方向に対して直交する方向に長手軸が位置するコンタクト孔20a,21aと、孔20a,21aに充填された金属などの低抵抗材料20b,21bとから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電荷結合素子に関し、特に、電荷結合素子における電荷転送部の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】電荷結合素子(以下、CCDと略す)は、従来、2層のポリシリコンを転送電極とする構造が主流であった。ところが、この構造では、電極のシート抵抗値が30〜50Ωと高く、また、ゲート容量が大きいことから時定数が大きく、高速駆動する上で不都合が指摘されていた。そこで、このような不都合を解決するために、ゲート抵抗を低減化する技術が種々検討されている。
【0003】例えば、特開平3−165041号公報には、2層の転送電極をポリシリコン層とシリサイド膜とで構成し、ゲート抵抗を低減する技術が開示されている。
【0004】一方、技術文献「テレビジョン学会技術報告 Vo113 No11」pp67〜72、および特開平2−87574号公報には、ポリシリコンの転送電極をアルミニウムで部分的に短絡し、ゲート抵抗を低減する技術が開示されている。
【0005】図3および図4は、上記技術文献ないしは公開公報に示されているCCD構造を示したものであり、同図において、1は、CCDの電荷転送チャネル、2,3は、それぞれがポリシリコンで層状に形成された第1および第2転送電極である。同図に示すCCDは、2相駆動型のものであり、電荷転送方向に沿って隣接する一対の第1および第2転送電極2,3が、それぞれΦ1 およびΦ2 の2相のクロック端子に接続される。
【0006】また、Φ1 ないしはΦ2 のクロック端子に接続された一対の第1,第2転送電極2,3は、コンタクト部6,7を介してアルミニウム配線8,9に接続される。アルミニウム配線8,9は、電荷転送方向に沿って延び、相互に所定の間隔をおいて配置されていて、図3R>3では、アルミニウム配線8がクロックΦ1 側に接続され、アルミニウム配線9がクロックΦ2 側に接続される。
【0007】コンタクト部6,7は、電荷転送方向に沿って千鳥状に配置され、コンタクト部6がクロックΦ1 側の転送電極2,3とアルミニウム配線8とを接続し、コンタクト部7がクロックΦ2 側の転送電極2,3とアルミニウム配線9とを接続している。
【0008】図4は、図3のA−A′断面図であり、CCDは、半導体基板で構成された電荷転送チャネル1上に形成された第1層目のゲート絶縁膜11と、この絶縁膜11上に形成された第1転送電極2と、この転送電極2の上面と側面とを覆う第2層目のゲート絶縁膜12と、この絶縁膜12を挟んで第1転送電極2の間に形成された第2転送電極3とを有し、第1および第2転送電極2,3とがコンタクト部6を介してアルミニウム配線8に接続されている。
【0009】なお、図4中に符号13で示した部分は、例えば、PSG膜などからなる絶縁膜である。この様な構造のCCDでは、アルミニウム配線8,9により第1および第2転送電極2,3が部分的に接続されているので、ゲート抵抗が低くなる。
【0010】そこで、たとえば、転送電極自体を低抵抗化させる前者の技術と図3,4に示した構造とを組み合わせれば、より一層ゲート抵抗を低減させることが考えられるが、仮にこれらの技術を組み合わせたとしても、特に、図3,4に示した構造に以下に説明する技術的課題があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】すなわち、図3,4に示した従来構造では、以下に指摘する4つの欠点があった。■アルミニウム配線8,9が転送電極2,3上に配置されていることから、配線8,9と電極2,3との間における配線容量が大きくなり、クロック駆動能力が低下して、目標とする高速動作が達成されない。
【0012】■転送電極2,3上を直交するようにアルミニウム配線8,9が横切っているので、転送電極2,3上の段差により、アルミニウム配線8,9のステップカバレジが劣化し、その結果、電流容量の低下、断線などの電気的ないしは信頼性上の問題が発生しやすい。
【0013】■転送電極2,3とアルミニウム配線8,9との間を接続するコンタクト部6,7を千鳥状に配置せざるを得ないことから、クロックΦ1 に接続された転送電極2,3と、クロックΦ2 に接続された転送電極2,3との抵抗に微妙な差が生じ、そのためCCDの動作速度に制限を与える。
【0014】■一対のアルミニウム配線8,9が必要なことから、チップ上での配線面積が増大し、他のメタル配線のレイアウトに制限を与えるとともに、チップサイズの増大を招く。
【0015】この発明は、以上のような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、チップサイズの増大を回避しつつ、動作の高速化が達成され、しかも、信頼性の高い電荷結合素子を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、層状に形成される第1および第2の転送電極を備え、2相クロック信号で駆動される電荷結合素子において、前記第2の転送電極は、その全部または一部が前記第1の転送電極よりも低抵抗材料で形成されるとともに、前記2相クロック信号のうち、同じクロック信号で駆動される隣接配置された一対の前記第1および第2の転送電極間のみを接続するコンタクト部を形成し、このコンタクト部を、前記転送電極の電荷転送方向に対して直交する方向に延びるコンタクト孔と、このコンタクト孔に充填された金属などの低抵抗材料とで構成した。
【0017】
【作用】上記構成の電荷結合素子によれば、第2の転送電極にポリオキサイド構造などの第1の転送電極よりも抵抗値の低い材料が用いられているので、従来のポリシリコンのみの転送電極に比べて抵抗が最大で1/10程度に低減できる。
【0018】また、第1および第2の転送電極間にこれらを接続するコンタクト部を設け、このコンタクト部がコンタクト孔と、コンタクト孔に充填された金属などの低抵抗材料とで構成されているので、第1の転送電極の抵抗を実質的に下げることができる。
【0019】さらに、第1および第2の転送電極間を接続するコンタクト部は、同じクロック信号で駆動される隣接配置された一対のみを接続するものなので、寄生配線容量を可及的に低減でき、また、コンタクト孔が電荷転送方向に対して直交する方向に平面的に延びているので、凹凸の多い電極上を複数回横切る必要がないので、ステップカバレジの向上が図れ、電流容量の増加、および信頼性の向上が達成されると同時に、コンタクト部の構造と転送電極の低抵抗化により素子の高速化も達成される。
【0020】さらにまた、上記コンタクト部の構造により、従来のものより配線面積を低減できることから、チップ面積を小さくすることができ、素子の高集積化も可能になる。
【0021】
【実施例】以下本発明の好適な実施例について添附図面を参照にして詳細に説明する。なお、以下の説明では、前述した従来のものと同一もしくは相当する部分に同一符号を用いている。図1および図2は、本発明にかかる電荷結合素子の一実施例を示している。
【0022】同図に示すCCDは、2層ゲート構造で、かつ、2相クロック駆動方式のものであり、CCD電荷転送チャネル1上に第1の転送電極2が所定の間隔をおいて複数設けられ、これらの第1の転送電極2間に複数の第2の電極3が設けられている。ここで、第1の転送電極2はポリシリコン膜から構成されるとともに、第2の転送電極3は、ポリシリコン膜3aとこれよりも抵抗が低い高融点金属シリサイド膜3bとから構成されている。
【0023】これらの第1および第2の転送電極2,3は、電荷の転送方向に対して、直交する方向に延長されている。また、この実施例では、各第2の転送電極3の両側が、平面的に見て、その両側に位置する第1の転送電極2に部分的に重なるように配置されているが、これらの境界がオンライン上に位置する場合や、あるいは、電荷の転送に支障のない程度であれば、離間して配置されても問題はない。
【0024】電荷転送方向に沿った一対づつの第1および第2の転送電極2,3が、交互に2相のクロックΦ1 ,Φ2 端子にアルミニウム等の金属配線4,5により接続される。また、対をなす第1および第2の転送電極2,3上には、これらを接続するコンタクト部20,21が電極間に跨がるようにして形成されている。
【0025】図1に示した例では、コンタクト部20がクロックΦ1 側に接続された第1および第2の転送電極2,3間のみを接続するものであり、また、コンタクト部21がクロックΦ2 側に接続された第1および第2の転送電極2,3間のみを接続している。
【0026】各コンタクト部20,21は、CCDの電荷転送方向に対して直交する方向に長手軸が位置する長方形状に形成され、絶縁膜13と第2層目の絶縁膜12とを貫通するコンタクト孔20a,21aと、これらのコンタクト孔20a,21aに充填された金属などの低抵抗材料20b,21bとから構成されている。
【0027】この場合、低抵抗材料20b,21bとしては、アルミニウムが一般的であるが、その他の金属、例えば、タングステン,チタンなどの他に、不純物を含み低抵抗化したポリシリコンであってもよい。次に、上記構造の電荷結合素子の製造方法について説明する。
【0028】まず、5〜30Ω・cmの抵抗のPまたはN型半導体基板上に100〜500Å厚みの第1層目のゲート絶縁膜11を形成し、その上に2000〜5000Å厚みのNまたはP型の高濃度不純物を含んだポリシリコン膜を形成し、これを所定の形状にパターニングして第1の転送電極2が形成される。
【0029】次いで、第1の転送電極2上などに、第2層目のゲート絶縁膜12(厚み100〜500Å)を形成し、このゲート絶縁膜12上において、第1の転送電極2間に第2の転送電極3を形成する。図2に示した状態では、第1の転送電極2と第2の転送電極3とが互いに重なりあっているが、CCDの電荷転送に支障がない限りにおいては、相互に離間した、重なりがない状態でもよい。
【0030】この実施例では、第2の転送電極3は、NまたはP型の高濃度不純物を含んだ1000から3000Å厚みのポリシリコン膜3aと、その上方に形成された500〜3000Å厚みの高融点金属シリサイド膜3bとからなるいわゆるポリサイド構造になっている。なお、この場合、第2転送電極3は、その全部を高融点金属シリサイド膜3bで構成することも可能である。
【0031】また、第2の転送電極3を第1の転送電極2よりも低抵抗材料で構成する手段としては、高融点金属シリサイド膜3b以外に、高融点金属膜としてWSix,TaSix,MoSixなども使用できる。
【0032】次に、第2の転送電極3および第2相目の絶縁膜12上にPSG膜,BPSG膜などのCVD膜からなる絶縁膜13を形成したのち、第1および第2転送電極2,3間を接続するためのコンタクト孔20a,21aを形成し、この孔20a,21aないにアルミニウムなどの低抵抗材料20b,21bを充填する。
【0033】このとき、コンタクト孔20a,21aは、この実施例では、第1および第2転送電極2,3の重なり部上およびこの隣接部上に形成される。なお、低抵抗材料20b,21bと第1および第2の転送電極2,3との接触部において、要すれば、低抵抗材料20b,21bが電極形成材料を貫通して半導体基板と直接接触し、仕事函数に変動が生じることを防止するために、たとえば、ポリシリコン膜などの保護膜を形成してもよい。
【0034】
【発明の効果】以上、実施例で詳細に説明したように、本発明の電荷結合素子によれば、第2の転送電極に第1の転送電極よりも抵抗値の低い材料が用いられているので、従来のポリシリコンのみの転送電極に比べて抵抗が最大で1/10程度に低減できる。
【0035】また、第1および第2の転送電極間に設けられたコンタクト部は、コンタクト孔と、コンタクト孔に充填された低抵抗材料とで構成されているので、第1の転送電極の抵抗を実質的に下げることができる。
【0036】さらに、転送電極間を接続するコンタクト部は、同じクロック信号で駆動される隣接配置された一対のみを接続するものなので、寄生配線容量を可及的に低減でき、また、コンタクト孔が電荷転送方向に対して直交する方向に平面的に延びているので、凹凸の多い電極上を複数回横切る必要がないので、ステップカバレジの向上が図れ、電流容量の増加、および信頼性の向上が達成されると同時に、コンタクト部の構造と転送電極の低抵抗化により素子の高速化も達成される。
【0037】さらにまた、上記コンタクト部の構造により、従来のものより配線面積を低減できることから、チップ面積を小さくすることができ、素子の高集積化も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる電荷結合素子の一実施例を示す平面図である。
【図2】図1のB−B′線断面図である。
【図3】従来の電荷結合素子の一例を示す平面図である。
【図4】図3のA−A′線断面図である。
【符号の説明】
1 電荷転送チャネル
2 第1の転送電極
3 第2の転送電極
3a ポリシリコン膜
3b 高融点金属シリサイド膜
20,21 コンタクト部
20a,21a コンタクト孔
20b,21b 低抵抗材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】 層状に形成される第1および第2の転送電極を備え、2相クロック信号で駆動される電荷結合素子において、前記第2の転送電極は、その全部または一部が前記第1の転送電極よりも低抵抗材料で形成されるとともに、前記2相クロック信号のうち、同じクロック信号で駆動される隣接配置された一対の前記第1および第2の転送電極間のみを接続するコンタクト部を形成し、このコンタクト部を、前記転送電極の電荷転送方向に対して直交する方向に延びるコンタクト孔と、このコンタクト孔に充填された金属などの低抵抗材料とで構成したことを特徴とする電荷結合素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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