説明

電装ボックス

【課題】インターロック機能を備える電装ボックスであって、その組立てが容易でかつ簡易な構成により、電源スイッチを防水できる電装ボックスを提供すること。
【解決手段】電装ボックスは、スイッチケース40内のメインスイッチ60を覆い、所定の部品の取り外しを規制する遮蔽板54が設けられたスイッチリッド50と、スイッチリッド50に設けられ、このスイッチリッド50の移動に連係してメインスイッチ60の状態を切り換える第1スライド板55及び第2スライド板とを備える。また、電装ボックスは、スイッチケース40とスイッチリッド50との間に設けられ、スイッチリッド50とスイッチケース40との間を密封するシール部材48と、このシール部材48とスイッチリッド50又はスイッチケース40とが摺接しないように、スイッチリッド50の移動を案内するスライドガイド部45,46と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電装ボックスに関する。詳しくは、エネルギーストレージの電源スイッチに連係して、このエネルギーストレージに係る部品の動作を規制するインターロック機能を備える電装ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車や燃料電池自動車等の電動車両には、エネルギーストレージとして高圧バッテリが設けられる。車両整備時においては、この高圧バッテリに係る部品を取り外したりする場合、高圧バッテリの電源スイッチを予めオフ状態にする必要がある。そこで、このような高圧バッテリを収容した電装ボックスには、高圧バッテリに係る部品の誤動作を防止するために、電源スイッチと連係して上述の高圧バッテリに係る部品の動作を規制するインターロック機能を備えるものが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示された電装ボックスでは、具体的には、高圧バッテリの端子台カバーを上述の高圧バッテリに係る部品として、この端子台カバーの取り外しを、電源スイッチの動作に応じて連係する棒状のインターロックバーにより規制する。この電装ボックスでは、電源スイッチがオン状態になるとインターロックバーにより端子台カバーの取り外しを規制し、電源スイッチがオフ状態になるとインターロックバーによる上述の規制を解除する。
この電装ボックスによれば、電源スイッチとインターロックバーを直接的に連係することにより、少ない部品点数で、端子台カバーの動作を規制することができる。
【特許文献1】特開2006−134854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示された電装ボックスでは、電源スイッチの動作に連係して端子台カバーの取り外しを規制するように、インターロックバーを電源スイッチに直接組み付ける必要がある。このため、電装ボックスの組み立てが複雑になり、製造にかかるコストが増大するおそれがある。
【0005】
また、例えば電装ボックスを車室外に設ける場合、この電装ボックスは防水機能を有することが好ましい。しかしながら、特許文献1に示された電装ボックスにおいて、電源スイッチを防水する場合、防水のためのカバーをインターロックバーとは別体で設ける必要がある。このため、電装ボックスの構成が複雑になり、製造にかかるコストが増大するおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した点を考慮してなされたものであり、インターロック機能を備える電装ボックスであって、その組立てが容易でかつ簡易な構成により、電源スイッチを防水できる電装ボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電動車両(例えば、後述の燃料電池車両1)のエネルギーストレージ(例えば、後述の高圧バッテリ31)と当該エネルギーストレージの電源スイッチ(例えば、後述のメインスイッチ60)とを収容する収容ケース(例えば、後述の収容ケース33、及びスイッチケース40)と、前記電源スイッチを覆うとともに、前記エネルギーストレージに係る所定の部品(例えば、後述のリヤアンダーカバー83)の取り外しを規制する取り外し規制部材(例えば、後述のスイッチリッド50)と、前記取り外し規制部材に設けられ、当該取り外し規制部材の移動に連係して前記電源スイッチの状態を切り換える連係部(例えば、後述の第1スライド板55、第2スライド板56、及び押圧板57)と、を備え、前記取り外し規制部材を移動して、前記連係部により前記電源スイッチをオン状態からオフ状態に切り換えることで、前記所定の部品を前記収容ケースから取り外し可能となる電装ボックス(例えば、後述の電装ボックス30)であって、前記収容ケースと前記取り外し規制部材との間に設けられ、前記連係部により前記電源スイッチをオフ状態からオン状態に切り換えた場合には、前記取り外し規制部材と前記収容ケースとの間を密封するシール部材(例えば、後述のシール部材48)と、当該シール部材と前記取り外し規制部材又は前記収容ケースとが摺接しないように、前記取り外し規制部材の移動を案内するガイド手段(例えば、後述のスライドガイド部45,46)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、電源スイッチを覆うとともにエネルギーストレージに係る所定の部品の取り外しを規制する取り外し規制手段に、この取り外し規制手段の移動に連係して電源スイッチの状態を切り換える連係部を設けた。また、電動車両のエネルギーストレージに係る所定の部品の取り外しは、この取り外し規制部材により規制される。
特にここで、上述の所定の部品は、取り外し規制部材を移動して連係部により電源スイッチをオン状態からオフ状態に切り換えることで取り外し可能となる。つまり、上述の所定の部品は、エネルギーストレージの電源スイッチをオフ状態にしなければ取り外すことができない。これにより、組立てが容易でかつ簡易な構成で、インターロック機能を有する電装ボックスを提供することができる。
【0009】
また、連係部で電源スイッチをオフ状態からオン状態に切り換えることで、取り外し規制部材と収容ケースとの間を密封するシール部材を、収容ケースと取り外し規制部材との間に設け、さらに、このシール部材と取り外し規制部材又は収容ケースとが摺接しないように、取り外し規制部材の移動を案内するガイド手段を設けた。これにより、上述のインターロック機能に加えて防水機能を有する電装ボックスを提供することができる。特にここで、上述のようなガイド手段により取り外し規制部材を移動することにより、シール部材が劣化するのを防止し、防水機能を長い期間に亘って維持することができる。
【0010】
この場合、前記収容ケース及び前記取り外し規制部材は、前記電動車両の車室外に設けられ、前記取り外し規制部材は、前記収容ケースよりも下方に設けられることが好ましい。
【0011】
この発明によれば、収容ケース及び取り外し規制部材を、電動車両の車室外に設けるとともに、取り外し規制部材を収容ケースよりも下方に設けた、これにより、取り外し規制部材を収容ケースから取り外す際には、取り外し規制部材の自重を利用して容易に取り外すことができる。より具体的には、例えば、その自重を利用して取り外し規制部材を下方に引き下げることで、シール部材と取り外し規制部材とが摺接しないように、収容ケースから取り外し規制部材を取り外すことができる。
【0012】
この場合、前記所定の部品は、前記エネルギーストレージ及び前記収容ケースを下方から覆う略板状のアンダーカバー(例えば、後述のリヤアンダーカバー83)であり、前記アンダーカバーのうち前記電源スイッチと対向する部分には、前記取り外し規制部材を挿通可能な貫通孔(例えば、後述の貫通孔84)が形成され、前記取り外し規制部材は、前記貫通孔を介して前記収容ケースに、締結部材(例えば、後述の複数のねじ59)により固定されることが好ましい。
【0013】
この発明によれば、エネルギーストレージ及び収容ケースを下方から覆うアンダーカバーを設け、さらにこのアンダーカバーのうち電源スイッチと対向する部分に、取り外し規制部材を挿通可能な貫通孔を設けた。これにより、取り外し規制部材を収容ケースから取り外す際には、アンダーカバーの貫通孔を介して取り外すことができるので、作業性を向上することができる。
【0014】
ところで、アンダーカバーに貫通孔を形成することにより作業性が向上するものの、取り外し規制部材は路面から跳ね上げられた水や塵埃等にさらされるため、電装ボックスには防水機能が要求される。つまり、上述のような防水機能を有する本発明の電装ボックスの配置先として適している。
【0015】
この場合、前記収容ケースには、前記シール部材を保持するシール保持手段(例えば、後述のシール溝442)が設けられることが好ましい。
【0016】
この発明によれば、シール部材を保持するシール保持手段を収容ケースに設けた。これにより、取り外し規制部材を収容ケースから取り外した際に、シール部材が収容ケースから脱落するのを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、エネルギーストレージに係る所定の部品は、エネルギーストレージの電源スイッチをオフ状態にしなければ取り外すことができない。これにより、組立てが容易でかつ簡易な構成で、インターロック機能を有する電装ボックスを提供することができる。シール部材と、ガイド手段とを設けることにより、上述のインターロック機能に加えて防水機能を有する電装ボックスを提供することができる。特にここで、ガイド手段により取り外し規制部材を移動することにより、シール部材が劣化するのを防止し、防水機能を長い期間に亘って維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る電動車両としての燃料電池車両1の概略構成を示す側面図である。
燃料電池車両1は、燃料電池10と、燃料電池10の後方に配置される電装ボックス30と、電装ボックス30の後方に配置され燃料電池10に供給する水素ガスを貯留する水素タンク20と、を備える。
【0019】
燃料電池10、電装ボックス30、及び水素タンク20は、燃料電池車両1の車室の床となるフロアパネル81の下方、すなわち車室外に設けられる。
具体的には、このフロアパネル81には、このフロアパネル81の車幅方向の中央部が車室内方へ向けて凸状となって形成されたセンターコンソール80が設けられている。燃料電池10および電装ボックス30は、このセンターコンソール80内に設けられている。
【0020】
また、燃料電池10及び電装ボックス30は、それぞれ、フロアパネル81の下方に設けられたフロントアンダーカバー82、及びリヤアンダーカバー83により各々の底部側が覆われている。
【0021】
燃料電池10は、例えば、数十個から数百個のセルが積層されたスタック構造である。各セルは、膜電極構造体(MEA)を一対のセパレータで挟持して構成される。膜電極構造体は、アノード電極(陽極)およびカソード電極(陰極)の2つの電極と、これら電極に挟持された固体高分子電解質膜とで構成される。通常、両電極は、固体高分子電解質膜に接して酸化・還元反応を行う触媒層と、この触媒層に接するガス拡散層とから形成される。
【0022】
この燃料電池10には、図示しない反応ガス供給装置により、アノード電極(陽極)側に水素タンク20から水素ガスが供給され、カソード電極(陰極)側に酸素を含むエアが供給される。すると、燃料電池10は、電気化学反応により発電する。また、この燃料電池10により発電された電力は、図示しない駆動モータに供給される。
【0023】
電装ボックス30は、エネルギーストレージとしての高圧バッテリ31と、この高圧バッテリ31の電源スイッチとしてのメインスイッチ60と、これら高圧バッテリ31及びメインスイッチ60を収容する収容ケース33と、を含んで構成される。
【0024】
高圧バッテリ31は、複数の単電池を接続して構成された組電池である。この高圧バッテリ31は、図示しない入出力端子を介して燃料電池10や駆動モータ等に接続されており、燃料電池10で発電した電力や、減速時における駆動モータからの回生電力等を蓄電する。また、この高圧バッテリ31に蓄電された電力は、車両の運転状態に応じて駆動モータに適宜供給される。
【0025】
メインスイッチ60は、高圧バッテリ31と、この高圧バッテリ31の入出力端子(図示せず)との間に電気的に接続され、これら高圧バッテリ31と出力端子との間の通電を接続又は遮断する。なお、このメインスイッチ60の詳細な構成については、後に図4を参照して詳述する。
【0026】
収容ケース33は、高圧バッテリ31を収容するバッテリケース34と、メインスイッチ60を収容する箱状のスイッチケース40との2つのケースを含んで構成される。
【0027】
次に、以上のような電装ボックス30のうちスイッチケース40及びメインスイッチ60の詳細な構成について、図2〜図7を参照して説明する。
図2は、スイッチケース40の構成を示す斜視図である。
スイッチケース40は、バッテリケース34の一側面に沿って、複数のボルト49により固定される。スイッチケース40の一側面には、このスイッチケース40の蓋となり、スイッチケース40内のメインスイッチ60を覆う略板状のスイッチリッド50が、締結部材としての複数のねじ59により固定されている。
【0028】
また、このスイッチケース40のバッテリケース34と反対側の面のうち、図2中上方側には、上述のリヤアンダーカバー83が取り付けられるリヤアンダーカバー取付部41が設けられている。リヤアンダーカバー取付部41には、取付孔411が形成されており、この取付孔411にカバーボルト412を螺合することにより、リヤアンダーカバー83とスイッチケース40とが締結される。
【0029】
なお、この電装ボックス30は、後に図8〜図10を参照して詳述するように、スイッチリッド50をスイッチケース40よりも下方にして、燃料電池車両に取り付けられる。すなわち、この図2における上方は、燃料電池車両の下方となっており、図2における下方は、燃料電池車両の上方となっている。
【0030】
図3は、スイッチケース40及びスイッチリッド50の構成を示す分解斜視図である。
スイッチケース40は、スイッチリッド50が取り付けられるケース上部42と、メインスイッチ60をその内部に収容するケース下部43と、を含んで構成される。なお、この図3では、スイッチケース40のうち、ケース上部42側の構成のみを実線で示し、ケース下部43側の構成を想像線で示す。
【0031】
ケース上部42は、略平らに形成されスイッチリッド50の裏面側が密接するリッド取付部44と、このリッド取付部44の両端側に設けられスイッチリッド50をリッド取付部44の所定の位置に案内するガイド手段としてのスライドガイド部45,46と、を備える。
【0032】
リッド取付部44のうち略中央には、スイッチリッド50の後述の第1スライド板55、第2スライド板56が挿通する略矩形状の貫通孔としてのスイッチ操作孔47が形成されている。また、リッド取付部44の四隅には、それぞれ、4つのねじ59が螺合するねじ穴449が形成されている。
【0033】
また、リッド取付部44には、環状のシール部材48を保持するシール保持手段としてのシール溝442がスイッチ操作孔47の外周に沿って刻設されている。シール部材48は、弾性体で形成されるとともに、このシール溝442に沿って嵌着される。これにより、スイッチリッド50をリッド取付部44に取り付けた状態では、スイッチリッド50とリッド取付部44との間は、シール部材48により密封される。
【0034】
スライドガイド部45には、スイッチリッド50の後述の2つのガイド爪52a,52bがそれぞれ摺動し、スイッチリッド50をリッド取付部44の所定の位置に案内するガイド溝451a,451bが刻設されている。
スライドガイド部46には、スイッチリッド50の後述の2つのガイド爪53a,53bがそれぞれ摺接し、スイッチリッド50をリッド取付部44の所定の位置に案内するガイド溝461a,461bが刻設されている。
なお、これらガイド溝451a,451b,461a,461bの詳細な構成については、後に詳述する。
【0035】
図4は、メインスイッチ60の構成を示す正面図である。
メインスイッチ60は、2つの接続端子63,64が設けられたスイッチ本体61と、このスイッチ本体61に対し揺動可能に設けられたスイッチレバー62と、を備える。
【0036】
スイッチ本体61は、2つの接続端子63,64を電気的に接続した状態(以下、「オン状態」という)と、電気的に切断した状態(以下、「オフ状態」という)との2つの状態を選択的に切り換え可能な電気接触子を備える。また、これら接続端子63,64には、高圧バッテリ及び入出力端子からの配線がそれぞれ接続される。
【0037】
これらスイッチ本体61における2つの状態は、スイッチレバー62を揺動することにより、切り換えることが可能となっている。具体的には、スイッチレバー62を接続端子63側へ斜倒するとスイッチ本体61はオフ状態となり、スイッチレバー62を接続端子64側へ斜倒するとスイッチ本体61はオン状態となる。図4では、オフ状態のスイッチレバー62を実線で示し、オン状態のスイッチレバー62を想像線で示す。
【0038】
また、このメインスイッチ60には、スイッチレバー62の誤動作、すなわち、車両の振動によりスイッチレバー62が何れかの状態へ斜倒するのを防止するために、ロックボタン65が設けられている。ロックボタン65は、スイッチレバー62が接続端子63側から接続端子64側へ斜倒するのを防止するものである。すなわち、スイッチレバー62は、このロックボタン65をスイッチ本体61側へ押圧した状態でのみ、接続端子63側から接続端子64側へ斜倒することが可能となっている。
以上のようなメインスイッチ60は、スイッチレバー62をスイッチ操作孔47へ向けた状態で、ケース下部43内に収容される(上述の図3参照)。
【0039】
図3に戻って、スイッチリッド50は、平板状のリッド本体51と、このリッド本体51の両端部にそれぞれ設けられたガイド爪52a,52b及びガイド爪53a,53bと、このリッド本体51の一端部に設けられた遮蔽板54と、を備える。
【0040】
ガイド爪52a,52bと、ガイド爪53a,53bとは、それぞれ、リッド本体51の両端部のうち互いに対向する位置に設けられている。これらガイド爪52a,52b,53a,53bは、それぞれ、スイッチケース40のガイド溝451a,451b,461a,461bを摺動する。
遮蔽板54は、リッド本体51のうちガイド爪53a,53b側の端部に設けられ、スイッチリッド50をリッド取付部44に取り付けた状態では、リヤアンダーカバー取付部41を覆う(上述の図2参照)。
【0041】
この他、スイッチリッド50には、リッド本体51から凸状に形成された挟持部511と、複数のねじ59がそれぞれ挿通する複数のねじ挿通孔512と、が形成されている。作業者は、この挟持部511を指で挟持してスイッチリッド50を操作することが可能となっている。
【0042】
図5は、スイッチリッド50の裏面側の構成を示す斜視図である。
スイッチリッド50の裏面側には、リッド本体51に対して略垂直に延びる連係部としての第1スライド板55及び第2スライド板56が形成されている。
これら第1スライド板55及び第2スライド板56は、後に図6及び図7を参照して詳述するように、スイッチケース内に収容されたメインスイッチ60のスイッチレバー62に当接し、スイッチリッド50のガイド溝に沿った移動に連係してスイッチレバー62を何れかの方向へ斜倒し、メインスイッチ60の状態を切り換える。
【0043】
また、第1スライド板55の先端側には、この第1スライド板55に対して略垂直に延びる押圧板57が設けられている。
この押圧板57は、後に図6及び図7を参照して詳述するように、スイッチケース内に収容されたメインスイッチ60のロックボタン65を押圧し、スイッチレバー62を斜倒可能な状態にする。
【0044】
図3に戻って、以上のようなスイッチリッド50を、リッド取付部44に案内するガイド溝451a,451b,461a,461bの詳細な構成について説明する。
図3に示すように、これらガイド溝451a,451b,461a,461bは、それぞれ、複数の直線状の溝を組み合わせて構成される。
【0045】
具体的には、スライドガイド部45のガイド溝451a,451bは、それぞれ、スライドガイド部45の上端側からリッド取付部44に対して略垂直に延びる第1ガイド溝452a,452bと、リッド取付部44に対して略平行に延びる第2ガイド溝453a,453bと、リッド取付部44に対して略垂直に延びてリッド取付部44の表面に至る第3ガイド溝454a,454bと、を組み合わせて構成される。
【0046】
また、スライドガイド部46のガイド溝461a,461bは、それぞれ、スライドガイド部46の上端側からリッド取付部44に対して略垂直に延びる第1ガイド溝462a,462bと、リッド取付部44に対して略平行に延びる第2ガイド溝463a,463bと、リッド取付部44に対して略垂直に延びてリッド取付部44の表面に至る第3ガイド溝464a,464bと、を組み合わせて構成される。
【0047】
特にここで、リッド取付部44の表面に至る第3ガイド溝454a,454b及び第3ガイド溝464a,464bを、このリッド取付部44に対して略垂直に設けることにより、スイッチリッド50とシール部材48とが摺接しないように、このスイッチリッド50の移動を案内することができる。
【0048】
次に、図6及び図7を参照して、スイッチリッド50をスイッチケース40に取り付ける手順と、スイッチリッド50をスイッチケース40から取り外す手順と、を説明する。
【0049】
図6は、スイッチリッド50をスイッチケース40に取り付ける手順、すなわち、スイッチリッド50によりメインスイッチ60をオフ状態からオン状態に切り換える手順を示す図である。
【0050】
先ず、図6の(a)に示すように、スイッチリッド50を、その裏面側をリッド取付部44に向けた状態にするとともにリッド取付部44に対して平行にしつつ、このスライドガイド部45,46に接近する。
【0051】
次に、図6の(b)に示すように、スイッチリッド50のガイド爪52a,52b,53a,53bを、それぞれ、第1ガイド溝452a,452b,462a,462bに沿って、リッド取付部44側へ挿入する。すると、スイッチリッド50の押圧板57により、ロックボタン65がスイッチ本体61側へ押圧され、スイッチレバー62のロックが解除、すなわち、スイッチレバー62が接続端子63側から接続端子64側へ斜倒することが可能となる。また同時に、第2スライド板56がスイッチレバー62の先端側に当接する。
【0052】
次に、図6の(c)に示すように、スイッチリッド50のガイド爪52a,52b,53a,53bを、それぞれ、第2ガイド溝453a,453b,463a,463bに沿って、第3ガイド溝454a,454b,464a,464bへ向けて摺動する。すると、このスイッチリッド50の移動に連係して、スイッチレバー62は、第2スライド板56により接続端子64側へ斜倒される。ここで、スイッチレバー62を図6の(c)に示す状態、すなわち、スイッチレバー62を図6の(a)に示す状態から約40度斜倒したところで、メインスイッチ60はオフ状態からオン状態になるとともに、スイッチレバー62は図示しない付勢部材により接続端子64側へ付勢される。
【0053】
次に、図6の(d)に示すように、スイッチリッド50のガイド爪52a,52b,53a,53bを、それぞれ、第2ガイド溝453a,453b,463a,463bに沿って、第3ガイド溝454a,454b,464a,464bに当接するまで摺動する。
【0054】
次に、図6の(e)に示すように、スイッチリッド50のガイド爪52a,52b,53a,53bを、それぞれ、第3ガイド溝454a,454b,464a,464bに沿って、リッド取付部44の表面へ向けて摺動する。さらにスイッチリッド50の裏面でリッド取付部44のシール部材48(上述の図3参照)を押圧しながら、複数のねじ59によりスイッチリッド50をリッド取付部44に固定する。
ところで、上述のように、スイッチリッド50はスイッチケースよりも下方にして燃料電池車両に設けられる。したがって、この図6の(e)に示す工程では、スイッチリッド50を下方から上方へ押し上げるようにして、リッド取付部44の表面に取り付けられる。
【0055】
以上により、スイッチリッド50によりメインスイッチ60をオフ状態からオン状態に切り換える手順を完了する。なお、以上の工程において、スイッチリッド50と、リッド取付部44のシール部材48(上述の図3参照)とが摺接することは無い。
【0056】
図7は、スイッチリッド50をスイッチケース40から取り外す手順、すなわち、スイッチリッド50によりメインスイッチ60をオン状態からオフ状態に切り換える手順を示す図である。
【0057】
先ず、図7の(a)に示すように、複数のねじ59を、ねじ穴449から取り外す。
次に、図7の(b)に示すように、スイッチリッド50のガイド爪52a,52b,53a,53bを、それぞれ、第3ガイド溝454a,454b,464a,464bに沿って、第2ガイド溝453a,453b,463a,463bに当接するまで摺動する。
ところで、上述のように、スイッチリッド50はスイッチケースよりも下方にして燃料電池車両に設けられる。したがって、この図7の(b)に示す工程では、スイッチリッド50を上方から下方へ引き下げるようにして、リッド取付部44の表面から取り外される。
【0058】
次に、図7の(c)に示すように、スイッチリッド50のガイド爪52a,52b,53a,53bを、それぞれ、第2ガイド溝453a,453b,463a,463bに沿って、第1ガイド溝452a,452b,462a,462bへ向けて摺動する。すると、このスイッチリッド50の移動に連係して、スイッチレバー62は、第1スライド板55により接続端子63側へ斜倒される。ここで、スイッチレバー62を図7の(c)に示す状態、すなわち、スイッチレバー62を図7の(a)に示す状態から約40度斜倒したところで、メインスイッチ60はオン状態からオフ状態になるとともに、スイッチレバー62は図示しない付勢部材により接続端子63側へ付勢される。
【0059】
次に、図7の(d)に示すように、スイッチリッド50のガイド爪52a,52b,53a,53bを、それぞれ、第2ガイド溝453a,453b,463a,463bに沿って、第1ガイド溝452a,452b,462a,462bに当接するまで摺動する。
【0060】
次に、図7の(e)に示すように、スイッチリッド50のガイド爪52a,52b,53a,53bを、それぞれ、第1ガイド溝452a,452b,462a,462bに沿って摺動し、スイッチリッド50をスイッチケース40から取り外す。
【0061】
以上により、スイッチリッド50によりメインスイッチ60をオン状態からオフ状態に切り換える手順を完了する。なお、以上の工程において、スイッチリッド50と、リッド取付部44のシール部材48(上述の図3参照)とが摺接することは無い。
【0062】
図8は、燃料電池車両1の構成を示す下面図である。より具体的には、燃料電池車両1の下面のうち、リヤアンダーカバー83の構成を示す図である。
リヤアンダーカバー83は、略板状であり、電装ボックス30のバッテリケース34及びスイッチケース40を下方から覆う。またこの燃料電池車両1において、スイッチリッド50はスイッチケース40よりも下方、すなわち、リヤアンダーカバー83側に設けられる。
【0063】
このように、リヤアンダーカバー83は、バッテリケース34及びスイッチケース40を下方から覆い、バッテリケース34内の高圧バッテリ及びスイッチケース40内のメインスイッチを保護するものである。このため、燃料電池車両の整備時等においては、高圧バッテリのメインスイッチをオン状態からオフ状態に切り換えた後に、リヤアンダーカバー83をスイッチケース40から取り外すことが好ましい。そこで、本実施形態のスイッチリッド50は、上述のようにスイッチケース40内のメインスイッチの状態を切り換える機能に加えて、リヤアンダーカバー83の取り外しを規制するインターロック機能を有する。以下では、このスイッチリッド50によるインターロック機能の詳細について、図8〜図10を参照して説明する。
【0064】
図8に示すように、リヤアンダーカバー83のうちスイッチケース40と対向する部分には、スイッチリッド50を挿通可能な略矩形状の貫通孔84が形成されている。これにより、リヤアンダーカバー83をスイッチケース40に取り付けた状態で、スイッチリッド50を取り付けたり、取り外したりすることが可能となっている。
【0065】
図9は、リヤアンダーカバー83の貫通孔84の構成を示す斜視図であり、スイッチリッド50をスイッチケース40に固定した状態を示す。
図9に示すように、スイッチリッド50をスイッチケース40に固定した状態、すなわちメインスイッチがオン状態である場合には、リヤアンダーカバー83とスイッチケース40のリヤアンダーカバー取付部41(上述の図2参照)とを固定するカバーボルト412は、スイッチリッド50の遮蔽板54により覆われる。このため、メインスイッチがオン状態である場合には、スイッチケース40に固定されたリヤアンダーカバー83の取り外しは規制される。
【0066】
図10は、リヤアンダーカバー83の貫通孔84の構成を示す斜視図であり、スイッチリッド50をスイッチケース40から取り外した状態を示す。
図10に示すように、スイッチリッド50を移動して、スイッチケース40から取り外すとともに、メインスイッチをオン状態からオフ状態に切り換えると、スイッチリッド50の遮蔽板54が上述のカバーボルト412から離れ、このカバーボルト412が露出する。すなわち、スイッチケース40内のメインスイッチがオフ状態になると、リヤアンダーカバー83の取り外しの規制は解除され、リヤアンダーカバー83をスイッチケース40から取り外すことが可能となる。
【0067】
すなわち、本実施形態において、スイッチリッド50は、スイッチケース40に固定されたリヤアンダーカバー83が、このスイッチケース40から取り外されるのを規制する取り外し規制部材として作用する。
【0068】
本実施形態の燃料電池車両1によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)高圧バッテリ31を保護するリヤアンダーカバー83の取り外しを規制するとともに、メインスイッチ60を覆うスイッチリッド50に、このスイッチリッド50の移動に連係してメインスイッチ60の状態を切り換える第1スライド板55、第2スライド板56、及び押圧板57を設けた。また、リヤアンダーカバー83の取り外しは、このスイッチリッド50の遮蔽板54により規制される。
特にここで、上述のリヤアンダーカバー83は、スイッチリッド50を移動して第1スライド板55によりメインスイッチ60をオン状態からオフ状態に切り換えることで取り外し可能となる。つまり、リヤアンダーカバー83は、高圧バッテリ31のメインスイッチ60をオフ状態にしなければ取り外すことができない。これにより、組立てが容易でかつ簡易な構成で、インターロック機能を有する電装ボックス30を提供することができる。
【0069】
また、第2スライド板56でメインスイッチ60をオフ状態からオン状態に切り換えることで、スイッチリッド50とスイッチケース40との間を密封するシール部材48を、スイッチケース40とスイッチリッド50との間に設け、さらに、このシール部材48とスイッチリッド50とが摺接しないように、スイッチリッド50の移動を案内するスライドガイド部45,46を設けた。これにより、上述のインターロック機能に加えて防水機能を有する電装ボックス30を提供することができる。特にここで、上述のようなスライドガイド部45,46によりスイッチリッド50を移動することにより、シール部材48が劣化するのを防止し、防水機能を長い期間に亘って維持することができる。
【0070】
(2)スイッチケース40及びスイッチリッド50を、燃料電池車両1の車室外に設けるとともに、スイッチリッド50をスイッチケース40よりも下方に設けた、これにより、スイッチリッド50をスイッチケース40から取り外す際には、スイッチリッド50の自重を利用して容易に取り外すことができる。より具体的には、その自重を利用してスイッチリッド50を下方に引き下げることで、シール部材48とスイッチリッド50とが摺接しないように、スイッチケース40からスイッチリッド50を取り外すことができる。
【0071】
(3)バッテリケース34及びスイッチケース40を下方から覆うリヤアンダーカバー83を設け、さらにこのリヤアンダーカバー83のうちメインスイッチ60と対向する部分に、スイッチリッド50を挿通可能な貫通孔84を設けた。これにより、スイッチリッド50をスイッチケース40から取り外す際には、リヤアンダーカバー83の貫通孔84を介して取り外すことができるので、作業性を向上することができる。
ところで、リヤアンダーカバー83に貫通孔84を形成することにより作業性が向上するものの、スイッチリッド50は路面から跳ね上げられた水や塵埃等にさらされるため、電装ボックス30には防水機能が要求される。つまり、上述のような防水機能を有する本実施形態の電装ボックス30の配置先として適している。
【0072】
(4)シール部材48を保持するシール溝442をスイッチケース40のリッド取付部44に設けた。これにより、スイッチリッド50をスイッチケース40から取り外した際に、シール部材48がスイッチケース40から脱落するのを防止できる。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
上記実施形態では、スイッチケース40にシール溝442を形成し、このシール溝442にシール部材48を設けたが、これに限らない。例えば、スイッチリッドにシール溝を形成し、このシール溝にシール部材を設けてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、電装ボックス30の収容ケース33を、高圧バッテリ31を収容するバッテリケース34と、メインスイッチ60を収容するスイッチケース40とで別体で構成したが、これに限らない。例えば、高圧バッテリとメインスイッチとを一の収容ケース内に収容してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池車両の概略構成を示す側面図である。
【図2】上記実施形態に係るスイッチケースの構成を示す斜視図である。
【図3】上記実施形態に係るスイッチケース及びスイッチリッドの構成を示す分解斜視図である。
【図4】上記実施形態に係るメインスイッチの構成を示す正面図である。
【図5】上記実施形態に係るスイッチリッドの裏面側の構成を示す斜視図である。
【図6】上記実施形態に係るスイッチリッドをスイッチケースに取り付ける手順を示す図である。
【図7】上記実施形態に係るスイッチリッドをスイッチケースから取り外す手順を示す図である。
【図8】上記実施形態に係る燃料電池車両の構成を示す下面図である。
【図9】上記実施形態に係るリヤアンダーカバーの貫通孔の構成を示す斜視図である。
【図10】上記実施形態に係るリヤアンダーカバーの貫通孔の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0076】
1…燃料電池車両(電動車両)
30…電装ボックス
31…高圧バッテリ(エネルギーストレージ)
33…収容ケース
40…スイッチケース
44…リッド取付部
442…シール溝(シール保持手段)
48…シール部材
45,46…スライドガイド部(ガイド手段)
50…スイッチリッド(取り外し規制部材)
59…ねじ(締結部材)
54…遮蔽板
55…第1スライド板(連係部)
56…第2スライド板(連係部)
57…押圧板(連係部)
60…メインスイッチ(電源スイッチ)
83…リヤアンダーカバー(所定の部品、アンダーカバー)
84…貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両のエネルギーストレージと当該エネルギーストレージの電源スイッチとを収容する収容ケースと、
前記電源スイッチを覆うとともに、前記エネルギーストレージに係る所定の部品の取り外しを規制する取り外し規制部材と、
前記取り外し規制部材に設けられ、当該取り外し規制部材の移動に連係して前記電源スイッチの状態を切り換える連係部と、を備え、
前記取り外し規制部材を移動して、前記連係部により前記電源スイッチをオン状態からオフ状態に切り換えることで、前記所定の部品を前記収容ケースから取り外し可能となる電装ボックスであって、
前記収容ケースと前記取り外し規制部材との間に設けられ、前記連係部により前記電源スイッチをオフ状態からオン状態に切り換えた場合には、前記取り外し規制部材と前記収容ケースとの間を密封するシール部材と、
当該シール部材と前記取り外し規制部材又は前記収容ケースとが摺接しないように、前記取り外し規制部材の移動を案内するガイド手段と、を備えることを特徴とする電装ボックス。
【請求項2】
前記収容ケース及び前記取り外し規制部材は、前記電動車両の車室外に設けられ、
前記取り外し規制部材は、前記収容ケースよりも下方に設けられることを特徴とする請求項1に記載の電装ボックス。
【請求項3】
前記所定の部品は、前記エネルギーストレージ及び前記収容ケースを下方から覆う略板状のアンダーカバーであり、
前記アンダーカバーのうち前記電源スイッチと対向する部分には、前記取り外し規制部材を挿通可能な貫通孔が形成され、
前記取り外し規制部材は、前記貫通孔を介して前記収容ケースに、締結部材により固定されることを特徴とする請求項2に記載の電装ボックス。
【請求項4】
前記収容ケースには、前記シール部材を保持するシール保持手段が設けられることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の電装ボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−272140(P2009−272140A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121435(P2008−121435)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】