説明

電解水生成装置、およびそれを含む歯科用診療装置、並びに歯科用診療装置の給水管路内を殺菌する方法

【課題】 歯科診療に用いられる診療装置内部の給水管路内の水を薬液など添加することなく殺菌するとともに、管内における細菌繁殖を防止する方法、およびこの殺菌手段を組込んだ歯科用診療装置を提供する。
【解決手段】 歯科用診療装置100の内部に複数の電極24からなる電極ユニット25を収めた電解槽21を組み込んだ構成において、この電極ユニット25に直流電圧を印加することでpHが6.5〜8.0かつ残留塩素濃度が1.0〜5.0mg/Lの電解水を生成し、生成された電解水をデンタルチェアーユニット内部に通水することにより、装置の給水管路内部の殺菌を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯科用診療装置に用いられる電解水生成装置および当該電解水生成装置を含む歯科用診療装置に関するものである。また、本発明は歯科用診療装置の給水管路内を殺菌する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科医療に用いられる診療装置は、患者が着座または横になって診療を受ける歯科用診療椅子と、この診療椅子に接続された各種インスツルメントと、患者用のうがい用機器等から構成されている。
インスツルメントとしては、例えば、歯の切削に使用するエアータービンハンドピースやマイクロエンジン、歯垢の除去を行うスケーラ、患者の口腔内を清掃する清浄水を噴射するウォータシリンジなどがある。これらのインスツルメントは、歯の切削箇所を冷却するための冷却水を噴射するための注水手段を内蔵している。冷却に使用される水は給水源から給水管路を経てこれらインスツルメントの先端から歯の治療施術箇所に向けて噴射される。
【0003】
これらのインスツルメント使用を伴う歯科治療後は水源から供給された水がインスツルメント内および給水管路内に残留することとなるが、歯科医院の休日を挟む場合など、水が長期に滞留する場合や、夏の高温時期などに水温が高い状態で滞留する場合には、給水管路内に細菌が繁殖したりバイオフィルムが発生したりするおそれがある。
このように給水管路内に細菌が繁殖したりバイオフィルムが発生したりすると、患者の治療箇所や口内に噴射する水に雑菌等が混入するため、歯科治療患者の治療箇所に雑菌が入り込み、炎症などを引き起こす可能性がある。
【0004】
そこで給水管路内の細菌を殺菌するため、種々の殺菌方法が提案されている。その中でも、給水管路内の水に対する殺菌効果が大きくかつコストが小さいものとして電解水を利用した技術は優れた技術と言える。
【0005】
電解水を利用した歯科診療装置の給水管内の殺菌技術としては、例えば、特許3025146号公報に開示された技術が知られている。特許3025146号公報に開示された技術は、歯切削用のタービンハンドピースに給水する一般水道水に対して、イオン透過性隔膜で分割され、陰電極を挿入した陰極室と陽電極を挿入した陽極室との陰陽電極間に直流電圧を印加して電解槽の電解強度を可変する印加電圧可変手段を設けることにより、電解槽に流入した一般水道水を電解して陽極室から吐水する電解水を生成するものである。電解水はpH2.8以下、酸化還元電位(ORP)1050以上を示し、消毒、殺菌水として十分に機能するものが用いられる。特許3025146号公報の技術では電解水がpH2.8以下であるので金属を腐食させるおそれがあるため長期の滞留はあまり好ましくないとされ、タービンハンドピースに給水系の流路変更を行う弁体を設け、弁体の少なくとも1流路に一般水道水を、他の流路に電解水を流し、所望によって一般水道水と電解水とを切り換える切り換え手段が付設している技術に関するものが開示されている。
【0006】
また、例えば、特開平9−173359号公報に開示された技術は、(a)水に塩化物を溶解してなる電解液を電気分解せしめて、pHが2.7以下で、酸化還元電位が1000mV以上であり、且つ有効塩素が含有せしめられてなる強酸性イオン水を陽極側に生成せしめる一方、水酸基イオンに富んだ強アルカリ性イオン水を陰極側に生成せしめる強電解水生成手段を備え、強酸性イオン水を用いて給水路管内を殺菌する技術が開示されている。
【0007】
また、他には、電解水ではなく、直接的に消毒液を組み込む技術もある。
例えば、特開2000−5200号公報に開示された技術は、給水源から供給された水を医療器具に導出するための給水管路に加え、次亜塩素酸ナトリウム等の薬剤を含む消毒液を貯留した消毒液タンクを備え、給水管路に切替制御弁と、消毒液タンクと給水枝管路部を接続した消毒液注入管路と、途中に開閉弁を設け消毒液タンクに接続された消毒液すすぎ管路とを設け、上記切替制御弁により、上記給水源の接続先を、上記給水枝管路部と、上記消毒液すすぎ管路とに切替接続する構造としている。
また、他には、治療が終了し、長時間治療を行わない場合、残留水を一旦排出してしまう技術もある。
【0008】
【特許文献1】特許3025146号公報
【特許文献2】特開平9−173359号公報
【特許文献3】特開2000−5200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記した従来技術には以下の問題があった。
まず、特許3025146号公報および特開平9−173359号公報に開示された技術では、生成される電解水はpH2.8以下またはpH2.7以下と強酸性を示すものであるため、これらの電解水は高い殺菌性を発揮することが可能である。しかし、同公報中にも記載されているように酸性が強いため、金属部品を錆びさせたり樹脂部品を劣化させたりするおそれが強く、取り扱いが難しいものであった。そのためそれら公報中には、休日を挟むなど使用インターバルが長い場合には長期滞留を防止するため、一般水道水に切り替えるなどの工夫が必要であることが開示されている。しかしそれでは休日を挟むなど使用インターバルが長い場合に一般水道水により満たされた状態が続くため、給水管路内に増殖する菌の殺菌やバイオフィルム付着の防止を行うことができない。
【0010】
次に、特開2000−5200号公報に開示された技術では、次亜塩素酸ナトリウム等の薬剤を含む消毒液を用いた殺菌方法が提案されており、確かに高い殺菌性を発揮することが可能であると言える。しかし、同公報中にも記載されているように次亜塩素酸は酸化力が強いため金属部品を錆びさせたり樹脂部品を劣化させたりするおそれが強く、取り扱いが難しいものであった。そのためそれら公報中には、休日を挟むなど使用インターバルが長い場合には長期滞留を防止するため、消毒液すすぎ管路に切り替えてすすぎ洗浄を行うなどの工夫が必要であることが開示されている。しかしそれでは休日を挟むなど使用インターバルが長い場合にはすすぎ水により満たされた状態が続くため、やはり給水管路内に増殖する菌の殺菌やバイオフィルム付着の防止を行うことができない。
また、これらの強酸性の電解水や、次亜塩素酸ナトリウムの薬剤溶液は人体に対しても悪影響を及ぼす危険性もあるため、溶液の使用に際しては十分に注意する必要があった。
【0011】
本発明は上記の問題点を解消する新たな溶液の生成装置を歯科用診療装置に組み込むことで、歯科用診療装置内の給水配管系を殺菌することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を備える。なお、以下に記載の構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0013】
本発明の歯科用診療装置は、歯科用診療装置の給水管路中に設置され、歯科治療用の電解水を提供する歯科用電解水生成装置であって、複数の電極を備えた電極ユニットと、前記電極ユニットを収めた電解槽と、前記給水管路からの流水を受け入れる給水口と、生成した前記電解水を排出する吐出口と、前記電極ユニットの電極間に直流電圧を印加する電圧印加手段を備え、前記電圧印加手段による前記電極ユニットの電極間への通電により、前記電解槽内の水をpHが6.5〜8.0かつ残留塩素濃度が1.0〜5.0mg/Lの電解水へと変性させて前記給水管路内に通水することで前記給水管路内の殺菌を行うことを特徴とする歯科用電解水生成装置である。
【0014】
このように比較的に弱酸性または中性の電解水を用いつつ残留塩素濃度を1.0〜5.0mg/L程度確保せしめることにより、給水管路内の殺菌を行うことができる。なお、このpH範囲および塩素残留濃度であれば、休日を挟んで電解水がインスツルメント内に長期滞留する場合であっても、装置内の金属を錆びさせたり樹脂部材を劣化させたりするおそれがない。
【0015】
次に、本発明の歯科用診療装置では、電解水生成時に発生する微小気泡を除去する仕組みも備えることが可能である。電解水生成時に発生する微小気泡は陰極からは塩素、陽極からは水素であり、これらは絶縁体であるため多量に発生すると電解水生成の妨げともなる。また、インスツルメントの噴射圧力に影響を与えることがあり、また、口腔内に発射されることで患者にとっても塩素や水素が微量であれ飲み込むことは好ましくない。そこで、本発明の歯科用診療装置では、電解槽から吐出された電解水に含まれる気泡を除去する気液分離装置を設ける構成が可能である。
【0016】
なお、気液分離装置に配置については、気液分離装置を電解槽よりも高い位置に設置し、電解槽で発生した気泡が気液分離装置に導かれやすくすることが好ましい。気液分離装置は装置内部の空気だまりに対して気泡が合わさる形で気体が回収されるため、気液分離装置が電解槽よりも高い位置に設置すると気泡が気液分離装置に導かれやすくなる。
【0017】
次に、微小気泡の除去性能を高めるため、前記電解槽と前記気液分離装置の間にフィルターを備え、前記電解槽で発生する気泡を前記フィルターにより捕捉して凝集し、前記気泡を大きく成長させてから前記フィルターを通過させ、前記気液分離装置に導入する構造として気泡を分離しやすくすることが好ましい。
微小気泡はなかなか気泡が破裂せずに長時間漂うおそれがあるが、フィルターを電解槽と気液分離装置の間に設けることでフィルターにより微小気泡を捉まえて気泡を大きく成長させてからフィルターを通過させ、気液分離装置に導くと、気液分離装置内で大きい気泡は破裂して気体が液中から分離されやすくなる。
なお、電気分解により発生する微細気泡の直径は数10μm〜200μmであることから、上記構成において、この大きさの微細気泡をフィルターにより捉まえるためには、フィルター孔径が0.01〜100μm以下、望ましくは0.01〜10μm以下のものが好ましい。
【0018】
ここで、フィルターにより微小気泡を捉まえやすくするために、前記給水管路の経路において、前記電解水の流方向が天方向から地方向へ流れるように前記給水管路が屈曲した箇所を設け、当該箇所に前記フィルターを設置することが好ましい。このように電解水の流方向が天方向から地方向へ流れる箇所においてフィルターを通過させることにより電解水の流れに沿って移動する微小気泡が浮力によりフィルター内に滞りやすくなり、フィルター内で大きな気泡に成長しやすくなる。
【0019】
なお、給水管路の経路およびフィルターの配置として、電解水の流方向が地方向から天方向へ流れるように給水管路が屈曲した箇所を設けて当該箇所に前記フィルターを設置することを除外するものではない。このような配置であってもフィルターを設けない場合に比べて微小気泡が大きく成長する効果は得られるからである。
【0020】
ここで、気液分離装置はフィルターよりも高い位置に設置することが好ましい。気液分離装置がフィルターより高い位置にあればフィルターにより凝集されて大きく成長した気泡がフィルターを抜け出た後、気液分離装置に導かれやすくなるからである。
【0021】
次に、上記のフィルター配置の工夫に代えて、電解槽から気液分離装置までの給水管路内に電解水の流れを妨げる構造物を設け、気泡が凝集しやすい構造とする工夫も可能である。このように給水管路内に電解水の流れを妨げるように設けた構造物は一時的に微小空気が滞留し、フィルターのように微小空気が凝集して成長する効果が得られる場合がある。
【0022】
次に、微小空気の給水管路内への流入自体を小さく抑える工夫として、前記電解槽内に給水された水はおおむね水平方向に前記電解槽内を通過して吐出され、前記電解槽の吐出口は前記電解槽内部空間の上端よりも低い位置に配置するという工夫がある。このように電解槽の吐出口を内部空間の上端よりも低い位置に配置すれば微小空気は浮力で上昇するため電解槽の上部に集まり、微小空気は電解槽の吐出口から排出されにくくなる。
【0023】
次に、上記構成における電源ユニットに関する工夫について述べる。
電源ユニット内には電極ユニットが設けられているが、電極ユニットは、複数の電極が略一定間隔で並べて構成されており、電極間を溶液が通過するように配置されたものとなっている。
電源ユニットを小型化するため、また生成される電解水の残留塩素濃度を向上させるため、電極ユニットの内壁面と電解槽との間の余剰スペースを少なくすることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の歯科用診療装置および歯科用診療装置の給水管路内を殺菌する方法によれば、比較的に弱酸性または中性の電解水を用いつつ残留塩素濃度を1.0〜5.0mg/L程度確保せしめることにより、給水管路内の殺菌を行うことができる。なお、このpH範囲および塩素残留濃度であれば、休日を挟んで電解水がインスツルメント内に長期滞留する場合であっても、装置内の金属を錆びさせたり樹脂部材を劣化させたりするおそれがない。本発明の歯科用診療装置では、電解槽と給水分岐部との間に気液分離装置を設けることにより、電解水生成時に発生する微小気泡を効率的に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の電解水生成装置、歯科用診療装置、歯科用診療装置の給水管路内を殺菌する方法の実施例を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に示したものに限定されるものではないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0026】
実施例1にかかる本発明の歯科用診療装置100の構成例について説明する。以下、本発明の最良の形態について図面に基づき説明する。
図1は、本発明の歯科用診療装置100の構成を簡単に示す図である。
図1に示すように、実施例1にかかる本発明の歯科用診療装置100は、診療台本体10、給水口11、インスツルメント12、うがい用機器13、電解水生成装置20、電圧印加装置30などを備えた構成となっている。
歯科用診療装置100は、給水源(図示せず)に接続され、給水管路Wを通じて水が供給され、水を必要とする各部分に給水される。ここでは、後述する歯科用診療装置100の電解槽21への給水側はW1、吐出側はW2で表わすこととする。
【0027】
各部を説明する。
診療台本体10は、特に限定されず、歯科用診療台本体であればいずれでも適用することができる。この例では電動式で背もたれやフットレストの角度が変わり、患者の座位、仰臥位のいずれの姿勢にも対応するようになっている。
給水口11は、給水源からの給水管路W1に接続される口であり、給水口11から給水源の水が供給される。なお、給水源は一般の水道源でも良い。
インスツルメント12は、特に限定されず、歯科用診療に用いられる各種歯科治療器具である。たとえば、歯牙切削用のインスツルメントで治療箇所を冷やすため水を噴射するものとする。
うがい用機器13は、患者が折に触れて口腔内をうがいするための水をコップなどに供給する給水管と、患者がうがい後の水を捨てるボウルなどを備えている。
【0028】
電解水生成装置20は、給水口11を介して給水管路W1から取り入れた水を電解水へと変性させたのち給水管路W2へ通水する装置である。
電解水生成装置20は、後述する図4および図5に示すように、電解槽21、電圧印加装置30に加え、フィルター40、気液分離装置50を備えた構成となっている。
【0029】
まず、電解槽21の内部構成例を説明する。
図2は電解槽21の内部構成例を示した図である。図2に示すように、電解水生成装置20は、電解槽21、給水口22、吐出口23、電極24、電極ユニット25、通電用端子26を備えた構造となっている。
【0030】
電解槽21は、電極ユニット25を内蔵する容器であり、内部には給水管路W1から導入された水で満たされ、後述するように生成された電解水が給水管路W2から吐出される。
電解水は電解槽21内にある水を電気分解することで生成される。歯科用診療装置100内部に納められた電解槽21は図1に示すように歯科用診療装置給水源の下流側に取り付けられ、この電解槽21内で生成された電解水が給水分岐部を経て、各インスツルメント12やうがい用機器13など、歯科用診療装置100において水を必要とする全ての部分へ供給される。
【0031】
給水口22は、給水管路W1から電解槽21に水を取り入れる口である。図2の例では筐体の下方に設けられている。
【0032】
吐出口23は、電解槽21から生成した電解水を給水管路W2へ通水する口である。図2の例では筐体の上方に設けられている。
【0033】
電極24は、導電性の良い金属板であれば良く、例えば、銅電極板,銀合金電極板、銅銀合金電極板などがある。他の金属板であっても電極として機能するものであれば良い。
【0034】
電極ユニット25は、電極24を複数枚集積したものであり、各電極24が略一定間隔を持って対向し合うように並べて配置される。電極24間を溶液が通過するように配置されている。図2の例では便宜上、電極24を3枚含んだ構成として描いている。
電極ユニット25は電解槽21の中に収納されているが、後述の実験で触れるように、電源ユニット25と電解槽21との間の余剰スペースを少なくし、残留塩素濃度を向上させる工夫を行うことが好ましい。
【0035】
通電用端子26は、各々の電極24に対して電位を与える端子である。通電用端子26は電圧印加装置30に接続され、所定の電位が各々の電極24に対して与えられるように電気的に配線されている。なお、後述する電圧印加装置30との接続が簡単になるように配線しておくことが好ましい。
【0036】
次に、電解水生成装置20において電解水を生成する原理について説明する。
図3は、本発明の電解水生成装置20における電気分解における化学反応および電解水の変性を簡単に説明する図である。
通電用端子26に先の端子を通じて直流電圧を電極間に印加した場合、電解槽内の水を電気分解して殺菌性を持った電解水に変性させる。
【0037】
原水に用いる水には、一般水道水には塩素イオン(Cl−)が必ず含まれており、電極24間に直流電圧を印加すると、塩素イオン(Cl−)は陽極側の電極24へ引き寄せられる。電極24表面では図4に示す化学変化が行われ、塩素ガス(Cl2)が発生することになるが、Cl2はすぐに周囲の水と反応し、殺菌性を有した次亜塩素酸(HClO)や次亜塩素酸イオン(ClO−)へと変化する。
いわゆる残留塩素と呼ばれるこれらのHClOやClO−を増やす上記の化学変化を行うことで、水自体の殺菌性を高めた電解水へ変性を行っている。
【0038】
本発明の電解水生成装置20において、上記のように生成される電解水の性質について述べておく。
まず、残留塩素濃度とpHについてまとめておく。
電圧印加装置30による電極ユニット25の電極24間への通電により、電解槽21内の水はpHが6.5〜8.0かつ残留塩素濃度が1.0〜5.0mg/Lの電解水へと変性する。後述するように、このpHが6.5〜8.0、残留塩素濃度が1.0〜5.0mg/Lの電解水を給水管路W2内に通水することで給水管路W内の殺菌を行うことができる。また、この程度のpHであれば給水管路内の金属部品を錆びさせたり樹脂部品を劣化させたりする不具合は発生しない。
なお、本発明の電解水生成装置20および歯科用診療装置100を用いて生成した電解水の性質などの測定値に関しては後述する。
【0039】
次に、電解水生成装置20の内部構成について述べる。
図4および図5は、本発明の歯科用診療装置100の構成における電解水生成装置20を取り出してその内部構造を簡単に示した図である。なお、図4および図5では各構成要素は簡単に描いており、また、電解水生成装置20内に設けられた給水管路W1、給水管路W2のなどについては一部図示を省略し、水の流れを示すにとどめている。
図4および図5に示すように、電解水生成装置20は、電解槽21、電圧印加装置30に加え、フィルター40、気液分離装置50を備えた構成となっている。
【0040】
図4は給水管路W2の流れが天方向から地方向となっている箇所においてフィルター40を設けた構成例を示している。
一方、図5は給水管路W2の流れが地方向から天方向となっている箇所においてフィルター40を設けた構成例を示している。
【0041】
まず、電圧印加装置30を説明する。
電圧印加装置30は、各々の電極24に設けられている通電用端子26に対して所定の電位を与える電気ユニットである。なお、電圧印加装置30は外部電源(図示しない)に接続され、電力供給がなされる。後述するように電気分解に用いる電圧は直流電圧であるため、外部電源として商用電源を用いる場合、AC/DCコンバーターが必要である。
【0042】
次に、気液分離装置50について説明する。
本発明の歯科用診療装置100では、電解水生成装置20内で電解水を生成する際に気泡が発生するため、気泡を除去する構成要素を設けておく工夫を施している。一般水道水などの原水中にはCl−以外にも水素イオン(H+)や水酸化イオン(OH−)が含まれている。ここで電極24間に直流電圧を印加すると、これらの物質も変化を受け、それぞれ水素ガス(H2)や酸素ガス(O2)が生成される。
【0043】
電気分解により発生する気泡は電極間に残っていると、残留塩素を増やすための電気分解反応を阻害することとなるので、電極24間にて発生した微細な気泡はなるべく早く電極24間から出したほうがよい。たとえば電極24をおおむね鉛直方向に吊るして各々が対向するように並べ、その電極24間を水で満たし、電解槽21の給水口22を電極ユニット25の下側に、電解槽21の吐出口23を電極ユニット25の上側にして、電極24間にて発生した気泡を気泡自体の浮力も利用しつつ水流で押し出すようにする。
【0044】
しかし、本発明では、生成する電解水は後述するように弱酸性または中性程度であり、印加電圧は一般の電気分解に用いる電圧よりも比較的低いため、電極24表面で発生する水素ガスや酸素ガスは微小気泡である。微小気泡は浮力が小さいために上方に排出されにくく、液中に長期間に漂いやすい。
【0045】
従来技術の電解水生成装置で微小気泡が発生してしまうと、気液分離装置を備えていないため、気液分離が不十分で気泡が除去しきれずに気泡は水流に乗って流れてゆき、水流の弱い管路中の屈曲部分などに気泡が溜まり給水管路W2中にガスだまりを作ってしまうおそれがあった。ガスは液体よりも圧縮されやすいため、ガスは給水配管中を流れている状態では水道圧により圧縮されて電解水中に微小気泡として存在しているが、インスツルメントやうがい用機器などの末端に到達すると、圧が開放されるためガスが膨張してしまうため不具合の原因となるおそれがあった。特に、生成される電解水の殺菌性を高めるために、電解時の電流値を大きくすれば電気分解により発生する気泡の量も多くなってしまうため、微小気泡による上記問題が顕在化しやすい。
【0046】
そこで、本発明では、この発生した微小気泡を給水配管中から除去するため気液分離に関する工夫を行っている。本発明の電解水生成装置20および歯科用診療装置100において、気液分離装置50を電解槽21の下流側に設ける構造とし、さらに給水管路を屈曲させて屈曲箇所にフィルター40を設ける工夫を行っている。
【0047】
まず、気液分離装置50の構造について説明する。
図6は、気液分離装置50の構成例を示す図である。図6に示す構成例では、気液分離装置50の内部にはガス排出口53が設けられており、通常はパッキン51がバネ等で押し当てられて閉じられている。この気液分離装置50内部にガスが溜まってくると、気液分離装置50内の水位が下がり、それに伴い内部のフロート52も下がる。その際、フロート52はガス排出口53に押し付けられているパッキン51を離してガス排出口53を開放、気液分離装置50内部に溜まったガスを放出する。このような構造をとっている関係上、水中のガスを除去するためには水中のガスを気液分離装置内に溜めることが重要となる。
【0048】
ここで、気液分離装置50において効率よく気液分離を行うためには、電解水中の気泡が効率よく気液分離装置50内に導入される必要がある。そこで、図4および図5の構成例では、気液分離装置50が電解槽21よりも高い位置に設置し、電解槽21で発生した気泡が気液分離装置50に導かれやすい構成としている。また、気液分離装置50がフィルター40の排出口よりも高い位置に設置し、フィルター40により凝集されて大きく成長した気泡が気液分離装置50に導かれやすい構成としている。
【0049】
次に、フィルター40の働きについて述べる。
この構成例では図4および図5に示すように、電解槽21と気液分離装置50の間にフィルター40を備えた構成となっている。
上記のように、電気分解により発生する水素ガスや酸素ガスの微小気泡は水流に乗って流れていくこととなるが、小さいまま浮遊を続けやすく、末端の歯科用診療装置のインスツルメントなどの機器まで到達すると、機器内部において不具合を起こしてしまう。それを避けるため、電解槽以降の下流側において気液分離装置50を設け、水中の気泡を除去している。しかし、微小気泡はその体積が小さいため浮力が少なく、そのため大部分が気液分離装置50に到達することができずに素通りして、水流とともに歯科用診療装置100の下流側へ流れていってしまう。また気液分離装置50に到達したとしても、気液分離装置50の中でも気泡がなかなか破裂せずに微小気泡のまま漂い続け、気液分離に時間がかかるおそれがある。つまり、単に下流側へ気液分離装置50を取り付けるだけでは不十分である。
【0050】
このように、一般に普及している気液分離装置50により電気分解で発生した気泡が除去しきれない原因は、気泡の大きさが微細であり浮力が小さいためであった。この課題を解消するため、本発明では、電気分解によって発生した微細な気泡を集めて凝集・成長させ、大きな気泡とすることにより、気液分離装置50による気泡除去を容易とせしめた。
【0051】
フィルター40を活用した微小気泡の成長機能について述べる。
本発明の電解水生成装置20および歯科用診療装置100では、フィルター40を用いることにより微小気泡を一時的にフィルター40内の孔に捕捉し、その孔に到達する他の微小気泡と隣接させ、気泡同士を合体させることにより成長させてゆく。図4および図5に示すように、微小気泡は自らの浮力と給水管路内の水の流れによって徐々にフィルター40を通過してゆくが、フィルター40内の孔から孔へと移動してゆくうち他の気泡と合わさることとなり、フィルター40を抜け出る頃には気液分離装置50により効率的に気液分離できる程度の大きさの気泡に成長するという効果が得られる。つまり、電解槽の下流側にフィルター40を設置することにより、このフィルター40内部を電解槽21内部で生成された電解水が通過する際、電気分解により発生した微細な気泡はフィルターの細かな目により流れを阻害され、乱れた動きをとることとなり、気泡同士が接触することでより大きな気泡になる。
【0052】
このように、電解槽21で発生する気泡をフィルター40により捕捉して凝集し、気泡を大きく成長させてからフィルター40を通過させ、気液分離装置50に導入する構造として気泡を分離しやすくした。
なお、フィルター40のフィルター孔径としてはたとえば10μm以下のものが好ましい。フィルター孔径が大きいと後述するように、微細なスケール片を捕捉したり微小気泡を捉えて成長させたりすることができなくなるため、目の細かいフィルター40を使用することが好ましい。
【0053】
次に、フィルター40の配置について述べる。
この構成例では、フィルター40は、電解槽21から気液分離装置50の間に設けられている。また、気液分離装置50は内部にガスを貯めることで水中に含まれる気泡の除去を行っている関係上、気液分離装置50は他の機器や歯科用診療装置内部の給水系配管よりも高い位置にあることが望ましい。
【0054】
ここで、図4の例では、給水管路W2の経路において、電解水の流方向が天方向から地方向へ流れるように給水管路が屈曲した箇所を設けられており、この屈曲し、流方向が天方向から地方向へ向かう箇所にフィルター40を設置する構成となっている。図4の構成例では微小気泡は、微小気泡自身の浮力により下方への移動に対する抵抗を持っているため、電解水の流れに乗ってゆっくりとフィルター40内を移動することとなる。その過程で前後左右にある他の微小気泡と合体を繰り返して次第に大きな気泡へと成長してゆくこととなる。
つまり、図4に示したように、電解水が通過するフィルター内部や給水管路において、浮力と対抗する“天→地”方向へ流れるようにすれば、微細な気泡の凝集効果はより高まる。
【0055】
一方、図5の例では、給水管路W2の経路において、電解水の流方向が地方向から天方向へ流れるように給水管路が屈曲した箇所を設けられており、この屈曲し、流方向が地方向から天方向へ向かう箇所にフィルター40を設置する構成となっている。図5の構成例では微小気泡は、微小気泡自身の浮力により上方へ昇っていきやすく、また、電解水の流れに乗ってゆっくりとフィルター40内を移動することとなる。その過程で前後左右にある他の微小気泡と合体を繰り返して次第に大きな気泡へと成長してゆくこととなる。
【0056】
これらの凝集効果により、微細な気泡を大きな気泡に成長させることができれば、フィルターの下流側に設けた気液分離装置50で電気分解により発生した気泡を除去することが可能となる。
【0057】
次に、フィルター40を用いる他の効果として、給水管路内の硬質分(スケール)の剥離片の捕捉機能が挙げられる。原水中にはカルシウムイオン(Ca2+)やマグネシウムイオン(Mg3+)などといった硬質成分が含まれている。これらの硬質成分は電気分解を行うと、図3Aに示すような変性を受け、電極24表面に付着していく。電気分解の類型時間が増えるほど、硬質分の電極への付着量は増えていき、残留塩素を増やすための電気分解反応を阻害することとなるため、電極24に付着した硬質分は除去する必要がある。その手段として、図3Bに示すように電極24に印加している極性を反転させ、付着した硬質分を除去する方法が一般的に用いられている。ただし、電極24に付着している硬質分の量が多い時に極性切り替えを行った場合、大きな塊として電極24から硬質分が剥がれる恐れがある。この硬質分の塊が歯科用診療装置の末端の各インスツルメント12まで到達すると、精密機器である各インスツルメント12内部にて不具合を起こしてしまう。
そこで、電極24から剥がれ落ちた硬質分の除去のため、フィルター40を電解槽21の下流側に設けておけばスケールの剥離片をフィルター40にて捕捉することができる。
【0058】
フィルター40は硬質分除去を目的とするほか、前記のように気泡凝縮の効果も求める関係上、フィルター40はなるべく目が細かいほうが適している。たとえばフィルター40のフィルター孔径としては0.01〜100μm程度のものとすれば、管路内で発生する微細なスケール片を捕捉したり微小気泡を捉えて成長させたりすることができる。
なお、軟水器等によりあらかじめ硬質分を除去した水を電解槽21へ供給することにより、電極24へ硬質分が付着しなくすることも効果的である。
【0059】
次に、生成された電解水の特性を測定した結果を示す。
原水として水道水を用い、電解水生成装置20を用いて電解水を生成して一定流速で通水した場合における電解水の特性を調べた。
図7に、電気分解する時間の長さと電気分解に供する電流量を変化させ、生成される電解水の物理的性質を調べた結果をまとめた。電気分解する時間の長さの変化は、電解水生成装置20内部の流量の変化で置き換えることができる。つまり、図7に示すように、装置内の流速の変化、電圧印加装置30から与える電流量を変化させた場合における、電解水のpH、導電率、溶存酸素量、残留塩素濃度の測定結果をまとめた。
なお、電解装置を1度だけ通して電解した時に生成される電解水について測定を行い、その結果を元に電極の性能比較を行った。なお、実験に用いた電極は小型の新規のものを使用し、枚数や加える電流を変化させた。また、電極ユニットと電解槽との空きスペースはなるべく塩ビ材で埋めることにより小さくした。
【0060】
図7に示すように、pHに関しては、原水として水道水そのままを使用しているため、pHはもとの原水とほとんど変わらないpH7〜8付近の結果であった。また、残留塩素濃度に関しても実験に用いた電流値、電解水流量の条件範囲では0.7〜2.0mg/Lの範囲であった。つまり、電解水生成装置20に用いる電流値、電解水流量の条件範囲を調整すれば、pHが6.5〜8.0かつ残留塩素濃度が1.0〜5.0mg/Lの電解水へと変性させることが確認できた。
【0061】
以下に、実験結果を検討した。
電気分解する時間の長さの変化に関しては、電気分解を受ける時間が長いほど、つまり、電解槽21を通過する流速が遅い方が発生する残留塩素の量は多くなる関係にあることが分かる。
また、電極ユニットに通電する電流値が高いほど、残留塩素濃度は高くなることが分かる。図8は縦軸に残留塩素濃度、横軸に電流量をとったグラフである。明らかに電極ユニットに通電する電流値が高いほど、残留塩素濃度は高くなっている。
【0062】
次に、溶存酸素量に関しては、図7に示すように、印加する電流値が上がると溶存酸素量が上がっている、すなわち電気分解により発生した酸素が増えていることが確認できる。水を電気分解すると生じる気泡の発生量は電極24に印加している電流値に比例することが分かる。
【0063】
次に、電解槽21と電極ユニット25の間の空間を大きく取った場合とほとんど無くした場合で生成される電解水の残留塩素濃度を比較した。図9は電解槽21と電極ユニット25の間の空間を大きく取った場合とほとんど無くした場合で生成される電解水の残留塩素濃度比較結果である。図9に示すように、電解槽21と電極ユニット25の間の空間を少なくした方が、電気分解により発生する残留塩素濃度が高くなっていることがわかる。
以上のことから、なるべく高い殺菌性を保有する電解水を生成するためには、電気分解時に印加する電流値を高くし、電解槽21内の余剰スペースを少なくして原水が電極24付近へ到達しやすくするとよい。
【0064】
残留塩素も酸化性物質であるため、濃度が高まれば金属を錆びさせたり、樹脂製品を劣化させたりしてしまうが、本発明の電解水生成装置20で生成される電解水の残留塩素濃度は、1.0〜5.0mg/L程度であり、金属を錆びさせたり、樹脂を劣化させることはない。
【0065】
図10に、従来から用いられている薬剤や電解水と本発明により生成される電解水の対比表を示した。従来から用いられている薬剤や電解水は比較的に高い残留塩素濃度であるため殺菌性は高いが、金属部品を錆びさせたり樹脂部品の劣化を起こさせたりするおそれがあった。一方、本発明における電解水は、残留塩素濃度は1.0〜5.0mg/Lと低い濃度であるので、金属部品を錆びさせたり樹脂部品の劣化を起こさせたりするおそれはない。
【0066】
また、pH値が低く酸性が強い溶液であれば酸化性が強くなり、金属部品を錆びさせたり樹脂部品の劣化を起こさせてしまうおそれがあるが、本発明における電解水のpH値は原水と同じ程度の6.5〜8.0と中性領域であり、金属部品を錆びさせたり樹脂部品の劣化を起こさせてしまうことはない。
【実施例2】
【0067】
実施例2として、フィルターとは異なる構造物により微小気泡を処理する工夫を施した構成例について述べる。
図11は、実施例2にかかる本発明の電解水生成装置20および歯科用診療装置100の構成例を簡単に示したものである。
図11に示すように、実施例2にかかる本発明の電解水生成装置20ではフィルター40に代え、電解槽21から気液分離装置50までの給水管路W2内に電解水の流れを妨げる構造物を設け、気泡が凝集しやすい構造とした。給水管路W2中に電解水の流れを妨げて微小気泡が滞留して集まり、隣接し合う時間が長くなるように工夫することにより気泡の凝集効果が得られる。
【実施例3】
【0068】
実施例3として、気液分離装置を用いずに微小気泡を処理する工夫を施した構成例について述べる。
図12は、実施例3にかかる本発明の電解水生成装置20および歯科用診療装置100の構成例を簡単に示したものである。
図12に示すように、実施例3にかかる本発明の電解水生成装置20では電解槽21は密閉されていないため、給水口22から流入する水は電解槽21に入る時にそれまでかかっていた水圧が無くなった状態で流入される。
流入された水は電解槽21内で電気分解が行われるが、電気分解により発生した微細な気泡はわずかに有する浮力に従って水面へと上がっていく。電解槽21は密閉されていないため、水面から出た微細な気泡は自然に抜け出ていくため、気液分離装置50を設ける必要はない。
なお生成された電解水は水圧のかかっていない状態であるため、実施例1, 2のように水圧を利用して歯科用診療装置の給水管路W2へと送り出すことはできない。そのため吐出口23と給水管路W2の間にポンプなどの送水装置60を設けた。
また電気分解により発生した微細な気泡は浮力により自然に水中から抜け出るため、吐出口23はなるべく電解槽21の下部に設けることが望ましい。
【0069】
以上、本発明の歯科用診療装置および歯科用診療装置用の歯科用診療装置の構成例における好ましい実施例を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の歯科用診療装置は、歯科用診療装置を用いる歯科用診療装置として広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の歯科用診療装置100の構成を簡単に示す図である。
【図2】電解槽21の内部構成例を示した図である。
【図3】本発明の電解水生成装置20内における電気分解における化学反応および電解水の変性を簡単に説明する図である。
【図4】本発明の歯科用診療装置100の構成における電解水生成装置20を取り出してその内部構造を簡単に示した図である(その1)。
【図5】本発明の歯科用診療装置100の構成における電解水生成装置20を取り出してその内部構造を簡単に示した図である(その2)。
【図6】気液分離装置50の構成例を示す図である。
【図7】生成された電解水の各特性値の一例を示す表である。
【図8】縦軸に残留塩素濃度、横軸に電流量をとったグラフである。
【図9】電解槽21と電極ユニット25の間の空間を大きく取った場合とほとんど無くした場合で生成される電解水の残留塩素濃度比較結果を示す図である。
【図10】従来から用いられてきた薬剤や電解水との対比表である。
【図11】実施例2にかかる本発明の電解水生成装置20および歯科用診療装置100の構成例を簡単に示した図である。
【図12】実施例3にかかる本発明の電解水生成装置20および歯科用診療装置100の構成例を簡単に示した図である。
【符号の説明】
【0072】
10 診療台本体
11 給水口
12 インスツルメント
13 うがい用機器
20 電解水生成装置
21 電解槽
22 給水口
23 吐出口
24 電極
25 電極ユニット
26 通電用端子
27 遮へい構造物
28 硬質分
30 電圧印加装置
40 フィルター
50 気液分離装置
51 パッキン
52 フロート
53 ガス放出口
60 送水装置
100 歯科用診療装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用診療装置の給水管路中に設置され、歯科治療用の電解水を提供する歯科用電解水生成装置であって、
複数の電極を備えた電極ユニットと、前記電極ユニットを収めた電解槽と、前記給水管路からの流水を受け入れる給水口と、生成した前記電解水を排出する吐出口と、前記電極ユニットの電極間に直流電圧を印加する電圧印加手段を備え、
前記電圧印加手段による前記電極ユニットの電極間への通電により、前記電解槽内の水をpHが6.5〜8.0かつ残留塩素濃度が1.0〜5.0mg/Lの電解水へと変性させて前記給水管路内に通水することで前記給水管路内の殺菌を行うことを特徴とする歯科用電解水生成装置。
【請求項2】
前記電解槽から吐出された前記電解水に含まれる気泡を除去する気液分離装置を設けたことを特徴とする請求項1に記載の歯科用電解水生成装置。
【請求項3】
前記電解槽と前記気液分離装置の間にフィルターを備え、前記電解槽で発生する気泡を前記フィルターにより捕捉して凝集し、前記気泡を大きく成長させてから前記フィルターを通過させ、前記気液分離装置に導入する構造として気泡を分離しやすくしたことを特徴とする請求項2に記載の歯科用電解水生成装置。
【請求項4】
前記給水管路の経路において、前記電解水の流方向が天方向から地方向へ流れるように前記給水管路が屈曲した箇所を設け、当該箇所に前記フィルターを設置することを特徴とする請求項3に記載の歯科用電解水生成装置。
【請求項5】
前記給水管路の経路において、前記電解水の流方向が地方向から天方向へ流れるように前記給水管路が屈曲した箇所を設け、当該箇所に前記フィルターを設置することを特徴とする請求項3に記載の歯科用電解水生成装置。
【請求項6】
前記フィルターのフィルター孔径が0.01〜100μmのものである請求項3から5のいずれか1項に記載の歯科用電解水生成装置。
【請求項7】
前記気液分離装置が前記電解槽よりも高い位置に設置し、前記電解槽で発生した気泡が前記気液分離装置に導かれやすくしたことを特徴とする請求項2に記載の歯科用電解水生成装置。
【請求項8】
前記気液分離装置が前記フィルターよりも高い位置に設置し、前記フィルターにより凝集されて大きく成長した気泡が前記気液分離装置に導かれやすくしたことを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載の歯科用電解水生成装置。
【請求項9】
前記電解槽から前記気液分離装置までの前記給水管路内に電解水の流れを妨げる構造物を設け、気泡が凝集しやすい構造としたことを特徴とする請求項2に記載の歯科用電解水生成装置。
【請求項10】
前記電解槽内に給水された水はおおむね水平方向に前記電解槽内を通過して吐出され、前記電解槽の吐出口は前記電解槽内部空間の上端よりも低い位置に配置されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の歯科用電解水生成装置。
【請求項11】
前記電極ユニットは、複数の前記電極が略一定間隔で並べて構成されており、前記電極間を溶液が通過するように配置されたことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の歯科用電解水生成装置。
【請求項12】
前記電極ユニットの内壁面と前記電解槽との間の余剰スペースを少なくし、前記電解水中における残留塩素濃度を向上させることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の歯科用電解水生成装置。
【請求項13】
前記電解槽は密閉されておらず、前記電解槽へ流入する水はそれまでかかっていた水圧をなくした状態で前記給水口から流入し、生成した前記電解水を前記給水管路内へ送り出すための送水手段を前記吐出口と前記給水管路の間に設けたことを特徴とする請求項1に記載の歯科用電解水生成装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の歯科用電解水生成装置と、歯科用診療台と、各種インスツルメントを備えた歯科用診療装置。
【請求項15】
歯科用診療装置において電解水を給水管路内に通水することによって殺菌する方法であって、
前記給水管路の経路中に複数の電極を備えた電極ユニットを収めた電解槽を設け、さらに前記電極ユニットの電極間に直流電圧を印加する電圧印加手段を設け、前記電圧印加手段の前記電極ユニットの電極間への通電により、前記電解槽内の水をpHが6.5〜8.0かつ残留塩素濃度が1.0〜5.0mg/Lの電解水へと変性させて前記給水管路内に通水することで前記給水管路内の殺菌を行うことを特徴とする歯科用診療装置の給水管路内を殺菌する方法。
【請求項16】
前記電解槽から吐出された前記電解水に含まれる気泡を除去する気液分離装置を設け、前記電解槽で発生する気泡を除去した前記電解水により前記給水管路内の殺菌を行うことを特徴とする請求項15に記載の歯科用診療装置の給水管路内を殺菌する方法。
【請求項17】
前記電解槽と前記気液分離装置の間にフィルターを備え、前記気泡を前記フィルターにより捕捉して凝集し、前記気泡を大きく成長させてから前記フィルターを通過させる構造として前記気泡を分離しやすくしたことを特徴とする請求項16に記載の歯科用診療装置の給水管路内を殺菌する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−10067(P2013−10067A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143584(P2011−143584)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【特許番号】特許第4902803号(P4902803)
【特許公報発行日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【出願人】(506185182)株式会社セルフメディカル (1)
【Fターム(参考)】